[280]戸惑い(TくんSide)

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頭が真っ白になった。
 
 
海)じゃあ私も当たって砕けます!!
T)え?!
 
 
海璃はいきなり覚悟を決めたような顔をして。
 
 
海)好きです!!!
T)え?
海)好きです!!!
T)……。
 
 
俺を真っ直ぐに見て、そう言った。
 
 
俺は一瞬驚いたけど、
ああ、本命に告白する練習か、って思って。
 
 
T)お前…俺で練習すんなよ。
海)…っ
T)でもいいぞ、その勢い!
  勢いも大事だしな。
  よし、本番も頑張…
海)Tさんが好きです!!!
T)……
海)私はTさんが好きなんです!!!
T)……は…?
 
 
今度はハッキリ、そう言われた。
 
 
海)Tさんが…好きなんです…っ
 
 
そう言った途端に、
海璃の瞳には涙が一気に浮かんできて…
 
 
T)え、ちょ…っ、え?!
海)好き…っ
T)…っ
海)Tさんが…好き…っ
 
 
ぽろぽろと零れていく、涙の粒。
 
 
T)え…?
 
 
何が起きてるのか、わからなくて。
パニックで。
 
 
海)…好き…です…、っ…ふぇ…っ
T)わ、わ、泣くなよ…っ
 
 
とにかく海璃が泣いてるから
どうしよう、って。
 
思わず抱きしめそうになって…
 
でも。
 
 
海)大好きなんです…っ、ぐすっ…
T)…っ
 
 
伸ばした手はそれ以上どうにも出来なくて
宙で止まった。
 
 
抱きしめられるわけがない。
 
前に海璃が泣いた時は
よしよし、ってそうしたことはあったけど
 
あの時と今じゃ、状況が違う。
 
 
今抱きしめたら、
海璃の気持ちを受け入れたことになる。
 
 
T)…っ
 
 
俺が好き、って…
なんで…
 
頭が追いつかなくて
俺が固まってると…
 
 
どんっ…
 
 
海璃が俺の胸に飛び込んできた。
 
 
T)ちょ、…っ
 
 
ぎゅっ…!
 
 
小さな手が俺の背中でぎゅっと
シャツを握ってる。
 
 
海)…ぐす…っ、好き…っ
T)…っ
海)好き…です…っ
T)……
 
 
海璃は泣きながら、
何度もそう繰り返す。
 
 
海)Tさん…っ
T)……
海)……好き…ぃっ……ふぇぇっ
T)……
 
 
抱きしめてやりたいけど、
それは出来ない。
 
 
抱きつかれたまま、
俺の両腕は真っ直ぐに下に降りたまま。
 
ただ、その場に立ち尽くしていた。
 
 
好きって…なんで?
 
なんで?
 
なんで…俺?
 
 
そればかりが頭の中をぐるぐるしてる。
 
 
海璃の好きな人が……、俺…?
 
嘘だろ…?
 
 
だって…
 
なんで…
 
いつから…
 
 
T)……
 
 
海璃が一番最初にうちに来たのは…
俺が♡に決定的にフラれた、あの夜。
 
 
いきなりシチューの鍋を抱えて
うちに来たんだ。
 
 
「一緒に食べてくださいっ!!」
 
 
そう言いながら、なんでか泣いてて。
 
 
「泣いてないから…
 一緒にシチュー…食べてくださいっ」
 
 
俺は自分でいっぱいいっぱいなのもあったし
海璃も誰かにフラれたのかな、なんて…
 
そんな程度に思ってた。
 
 
だって、そうだよ!
 
海璃の好きな奴は…
 
 
「私の好きな人…
 ♡さんのことが好きなんです。」
 
 
T)…っ
 
 
……俺?
 
 
「私の…好きな人は…
 すごく優しくて…お人好しで…
 純粋で…素直で…真っ直ぐで…」
 
 
…俺の…ことだった…?
 
 
T)ちょっと…待って…。
 
 
ダメだ。
頭が…いっぱいいっぱいだ。
 
 
T)ごめん。
海)…っ
 
 
俺はそっと、海璃の身体を離した。
 
 
T)一人にして。
海)…っ
 
 
海璃の頬は涙でびしょびしょで…
俺はそれを拭ってやることしか出来ない。
 
 
T)ごめんな。
海)……(ふるふる)
 
 
海璃は静かに首を横に振って、
玄関に向かった。
 
 
海)突然すみませんでした…。
T)……ごめん。
 
 
一人にしてくれって、
追い返すみたいで悪いけど…
 
でも…
 
 
海)あの…、
T)……
海)今日は一緒に食べられなかったので
  明日は私が美味しいご飯作ります!
T)……え?
 
 
明日…?
 
 
海)絶対絶対、美味しいの作ります!!
T)…っ
海)だから…っ
  もし元カノさんに誘われても
  絶対に行かないでくださいっ!
 
 
……バタン。
 
 
何も言えないまま、閉まったドア。
 
 
T)…、っ
 
 
俺はしばらくその場に立ち尽くして、
必死に今までを思い返した。
 
 
T)……
 
 
ほんとに…
 
ほんとに俺が…海璃の好きな人…?
 
 
「私…好きな人のために
 お料理の勉強したいんです!!」
 
「じゃあその男が何好きか
 リサーチしとけよーーw」
 
「Tさんは何が好きですか…?」
 
「俺をリサーチしてどーすんだよw」
 
 
T)…っ
 
 
料理を練習してたのも…
俺のためだった…?
 
 
すごく健気で…一生懸命で…
毎日、毎日、頑張ってた。
 
 
「Tさんだったら…?
 Tさんだったら…嬉しいですか…?」
 
「俺?!w
 なんで俺なんだよww」
 
 
海璃の好きな相手がすげぇ鈍いから
もういっそ告白しろみたいな話になった時も…
 
 
俺、なんて言ったっけ?
 
 
「うーん…
 まぁ俺から見たらお前は妹だから
 それはないけど…
 その好きな奴には効果的だと思うよ。
 好きだって言ってみるの。」
 
 
思い出した。
 
俺…ひどいこと言ったかも…。
 
 
「私…、急いだり焦ったりしても…
 何もいいことないから…
 少しずつ頑張るから…いいです…。」
 
 
そうだ。
 
海璃はしょんぼりしてそう言ったんだった。
 
 
T)…っ
 
 
俺、今まで知らず知らずに
海璃のことすげぇ傷つけてたんじゃ…
 
 
だって。
 
俺、あいつにだけは全部話してたもん。
 
♡のことが好きだって。
忘れられないし忘れるつもりもないって。
 
どんだけ好きか、散々話してきた。
 
 
……それをあいつは…
一体どんな気持ちで聞いてたんだろう…。
 
 
T)…っ
 
 
なんで気付かなかった?
 
俺…どんだけ♡しか見えてないんだよ。
 
 
「♡さんのこと……まだ…好きですか…?」
 
 
どんな気持ちで聞いたんだろう。
 
 
「幸せに…なって…ください…っ」
 
 
どんな気持ちで言ったんだろう。
 
 
T)…っ
 
 
海璃の心を思ったら、
とても居たたまれなくなった。
 
 
最初は…
なんとなく雰囲気が♡に似てて
おっちょこちょいで鈍くさいところまで
♡に似てて…
 
なんかほっとけない奴、って
そんな印象だった。
 
 
いちいちテンパって
すぐ赤くなるし
でもいつも一生懸命で
 
海璃に好きな人がいるってわかってからは
健気に、一途に、想い続けてる姿が
いじらしいなって思って…
 
 
それがまさか自分だなんて
これっぽっちも思わなかった。
 
 
T)……ダメだ。
 
 
いくら考えても
 
なんで俺なんだろう
なんで気付かなかったんだろう
 
そればかりが頭ん中をぐるぐる
行ったり来たり。
 
 
ずっとぐるぐる…ぐるぐる…
 
一晩眠れずに、
海璃のことばかりを考えて。
 
 
辿り着いた答えは。
 
考える前からわかってた。
 
 
____俺は海璃の気持ちには応えられない。
 
 
T)……
 
 
今日ちゃんと伝えよう。
 
 
ご飯作るとか言ってたけど…
それもダメだろ。
 
もうこういうのはナシにしなきゃ。
 
今までほとんど一緒に食べてたし
ずっと一緒にいたけど…
 
 
海璃の気持ちを知ってしまった以上、
それは出来ない。
 
 
気持ちに応えられないのに
そんな思わせぶりなこと、出来ないから。
 
 
きっと俺は今までたくさん
海璃を傷つけた。
 
もうこれ以上、傷つけられない。
 
 
あいつは可愛いし
本当に良い子なんだから…
 
俺なんかとっととやめて
次の恋を探した方がずっと幸せになれる。
 
 
T)……はぁ。
 
 
スッキリしない頭で
熱いシャワーを浴びて、ネクタイを結んで。
 
 
いつもと同じ時間の電車に乗って、
会社に向かう。
 
いつもと同じ、駅からの道。
空は晴れてて、太陽が眩しい。
 
 
……あいつは…
あいつは昨夜、どんな夜を過ごしたんだろう。
 
 
泣いてた。
 
すげぇ泣いてた。
 
 
きっと部屋に戻ってからも
一人で泣いてたんじゃないかな…。
 
 
♡)おはよっ!
T)うわぁっ!
 
 
後ろから肩を叩かれて思わず飛び上がった。
 
 
♡)そんなにびっくりするー?
T)……おはよ。
♡)あれ?元気ない…?どうしたの?
T)……
 
 
元気ないわけじゃないけど…
一睡もしてないだけで。
 
 
♡)ふっふっふ、
  じゃあTくんが元気になるニュース!
T)え、何?
♡)♧さんに頼んでたiPadケースが
  完成したよーーー♡
T)あ、♧さんっていうの?作ってる人。
♡)うんっ!
  見たい?見たい?♡
T)……
 
 
朝から元気だなぁ、コイツは。
いつも元気だもんなぁ。
 
 
♡)見たい人ぉーー!
T)……はーい。
♡)えへへ、じゃあ見せてあげる♡
T)……
 
 
可愛いなぁ…。
 
うん、やっぱり。
俺の心はまだ、こんなに♡でいっぱいだ。
 
こいつの笑顔を見るだけで
やっぱり好きだなぁって…
 
毎回、そう思わされるんだ。
今もこれからも、きっとずっと。
 
 
♡)この中から好きなの選んでいいんだって♡
T)え、めっちゃあるじゃん!
♡)うん!
T)どれにしよう。どれもカッコイイ。
♡)でね、お願いがあるの。
T)ん?
♡)お代はいらないので、
  宣伝のご協力をお願いします、
  とのことです。
T)宣伝?
  協力できる事ならなんでもするけど。
♡)わーい!やったーーー♡
  ありがとうTくん♡
T)うん。
♡)わわっ!
T)……っと、危ないから前見て歩け。
♡)ごめんね、ありがとう。
T)……
 
 
ほら、俺はやっぱり♡が好き。
 
♡が笑ってるだけで嬉しくなるし
 
♡が転びそうになったら
こうして勝手に身体が動くし。
 
もう反射的にそうなってんだもん。
 
 
なのに…
 
なのに…
 
 
なんでこんなに海璃のことばかりが
気になるんだろう…。
 
 
T)……はぁ。
 
 
♡と別れて、自分の島まで来て。
デスクに座ったけどそのまま突っ伏した。
 
 
J)あれーーおはよーー。
T)あ、おはようございます。
J)どうしたの。
  いつでも朝から爽やかな好青年Tくんが
  今日はどんより。
T)なんすか、それ…w
J)なんか悩み事かな〜〜〜
T)……なんでも…ないです。
 
 
…って、言ったのに。
 
 
アポに行って戻って来たら丁度昼の時間で。
さくっと食いに行こうと思って
オフィスを出たら
 
偶然、出くわした3人。
 
 
Jさんと、Mちゃんと、……海璃。
 
 
Mちゃんが俺を見つけて
「あっ」て顔をしたから
俺は気付かないフリをして回れ右をした。
 
今はまだ…
どんな風に海璃と顔合わせていいか
わかんねぇ。
 
 
T)うわっ!!
M)どこ行くんですか〜〜〜
 
 
捕まった!!
 
 
J)ランチ行こうよ。
M)そうですよ〜〜〜
海)……
 
 
そっちを向けない。
 
 
J)なんかTくん変だよねぇ、今日。
T)…っ
 
 
海璃の前で変なこと言うなーー!!
 
 
M)どうしたんですか?
  ほら、行きましょ?
T)いや、俺…今日は…
J)体調悪いの?
T)いや…ええと…
海)私がTさんに告白したんです!///
T)!!!
JM)は!??!!
 
 
後ろから聞こえた声に
思わずぐるんと振り返った。
 
 
T)ちょ、おまっ…///
海)私が告白したから…っ
  ちょっと…気まずくて…
T)…っ
海)でも…避けられたら…寂しいです…。
T)…っ
 
 
目の前でしょんぼりする海璃に
俺の手は勝手に頭を撫でようとしてて
ハッと我に返った。
 
危ない。何やってんだ俺。
 
 
J)海璃ちゃんにここまで言わせて
  また回れ右なんてしないよねぇ?w
M)一緒にランチ行きますよねぇ?w
T)…っ
 
 
ニヤニヤしてる二人に逆らえなくて…
結局4人で定食屋に入ったけど…
 
 
T)……
海)……
 
 
気まずっ!!
 
どうすんだよ、この空気!!
 
 
M)ねぇねぇ、どうやって告白したの?♡
T)ぶっ
M)本人目の前にして聞くのもあれだけどw
 
 
じゃあ聞くなよ!!
 
 
海)私が…我慢できなくなっちゃって…///
J)えーーー
  好きで好きでってこと?
海)……(こくん)///
J)かわい〜〜〜〜〜w
T)////
 
 
何これ。
何この展開。
 
 
J)ずーっと好きだったもんねぇ海璃ちゃん。
T)え。
M)誰かさんは驚くくらい
  鈍かったですけどねぇ。
T)…っ
J)それでも健気に想い続けてたもんねぇ。
M)ほんと一途ですよねぇ。
J)可愛いなぁ。たまんないなぁ。
M)私だったら絶対付き合うなぁ♡
T)……
 
 
もしかして
知らなかったの、俺だけ?
 
 
M)で、で、なんて言ったの?♡
海)////
 
 
だから俺の前で聞くなよ!!///
 
 
海)大好き、って…///
M)やだーー!可愛い〜〜〜♡
海)いっぱい言っちゃって…
  すみませんでした///
T)……い、いや……///
J)そっか。気持ちは伝えて
  あとはTくんの返事待ちなんだ〜〜
T)…っ
M)そっかー♡
J)そっかそっかw
T)……
 
 
お前もちろん断ったりしねぇよな?
みたいなこの圧はなんだろ。
 
俺の気のせい?
 
 
T)ええと…
 
 
今日仕事終わった後に
二人で話したかったんだけど…
 
 
海)今日…何食べたいですか!///
T)えっ…
 
 
ほんとに何か作る気なのかな?
 
 
T)いや、ご飯は…
 
 
そう言いかけて、気が付いた。
 
海璃の手が、震えてること。
 
 
T)……
 
 
顔を真っ赤にして、
きっとすげぇ頑張ってるんだ、今。
 
 
T)……シチュー。
 
 
気付いたら、リクエストしてた。
 
いらない…なんて、言えなくて。
 
 
海)シチューですね!わかりました!
  美味しいの作ります!///
T)……
 
 
なんでこんなに一生懸命なんだろ…。
 
ほんとに俺のこと…好きなんだ。
 
 
それから俺は…
午後の仕事もいまいち手につかなくて
 
って言っても商談はちゃんとやったけど。
 
 
気付けば頭の中は海璃でいっぱいで
 
って言っても契約はちゃんと取ったけど。
 
 
T)……はぁぁぁ…。
 
 
定時の時間は過ぎたけど
まだデスクで事務処理してる俺。
 
いつもなら帰るぞーって
海璃を迎えに行って
そのままスーパー寄って帰るんだけど…
 
 
いいのかな。
 
そんないつも通りシチュー食っていいのか?
 
いや、いつも通りではないけど。
 
 
……やっぱりダメだろ。
飯食ってる場合じゃねぇ。
 
ちゃんと気持ち伝えなきゃ。
 
 
俺は、海璃の気持ちには…応えられ…
 
 
海)Tさんっ///
T)!!!
 
 
目の前に現れた海璃は
バッグをぎゅっと握りしめて、俺を見てる。
 
 
海)帰りましょう///
T)……
 
 
また震えてる、小さい手。
 
なんか…腹の奥がぎゅっと苦しくなる。
 
 
いつも営業の方に来るのなんて
ビビるくせに
 
一人で勇気出して来たのかな。
 
 
T)ん。
 
 
席を立って、一緒にオフィスを出て。
 
その話題には触れずに食材を買って
いつも通り帰って来た、俺の家。
 
 
海)急いで作っちゃいますね!
 
 
そう言って腕まくりをした海璃の手を
思わず掴んだ。
 
 
T)……あの…さ、
海)…っ
 
 
そう言いかけた途端、
海璃の目には涙がいっぱい浮かんできて…
 
 
海)作らせて…ください…。
T)…っ
海)最後かも…しれないから…
  作らせて…ください…っ
T)…っ
 
 
浮かんだ涙の粒は
次から次へとその瞳から溢れるのに、
 
なのに海璃は笑ってる。
 
唇を震わせて、笑ってる。
 
 
海)美味しいの作るから…
  だから…っ
T)…っ
海)帰れって…言わないでください…っ
T)…っ
 
 
気付いたら俺まで泣けてきて…
 
もう、こんなの無理だ。
 
 
俺は我慢できずに海璃を抱きしめてた。
 
 
T)なんで…っ
 
 
なんで俺なんだよ。
 
 
こんな鈍くて
お前のこと全然わかってやれなくて
 
散々傷つけて。
 
 
いつまで経っても♡のことが好きで。
 
こんな未練がましい男、
なんで好きになるんだよ!
 
 
海)どうして…っ
  Tさんが…泣いてるんですか…?
 
 
わからない。
 
自分でもわかんないけど
涙が出てくる。
 
 
海)大丈夫ですよ…。
T)…っ
海)ちゃんとフラれるって…わかってます。
T)……
海)それくらい覚悟してここに来てるから…
  大丈夫ですよ。
 
 
震えた声で、そんなこと言って。
 
 
海)Tさん…。
 
 
海璃はそっと俺の腕をほどいて、
俺を真っ直ぐに見上げた。
 
 
海)私…Tさんにそんな顔させたくて…
  好きって言ったんじゃないです。
T)…っ
海)そんな顔させて…ごめんなさい。
T)……
 
 
スッと伸びてきたあたたかい指先に
涙を拭われた。
 
 
海)迷惑…でしたね。
T)……迷惑じゃない。
海)……
T)迷惑じゃないけど、
  嬉しいとも思えない。
海)……
T)知らないで…
  いっぱい傷つけてごめん。
海)……(ふるふる)
 
 
海璃は泣きながら
また優しく笑った。
 
 
海)私は♡さんを好きなTさんを
  そのまま好きになったんですよ。
T)……
海)好きになった時点で、覚悟の上です。
  へっちゃらです。
 
 
えへへって笑いながら…
その綺麗な目から、こぼれていく涙。
 
 
海)今まで…嘘ついててごめんなさい…。
T)え…?
海)Tさんは…
  私に協力してくれてるつもりで
  一緒にご飯作ってくれてたのに…。
T)……
海)でも、好きな人のために
  お料理上手になりたいって思った気持ちは
  嘘じゃないです…。
T)うん…。
海)Tさんといっぱい一緒にいられて
  私は勝手に嬉しくて…
T)……
海)勝手に幸せでした。ごめんなさい。
T)…っ
 
 
謝らなくていいのに…
 
泣きながら無理して笑わなくていいのに…
 
 
海)女として見られてないのも
  わかってました。
T)…っ
海)でも…妹みたいに可愛がってくれるだけで
  すごく嬉しかったです。
T)……
海)Tさんの笑顔のそばにいられるだけで
  ただそれだけで、嬉しかったです。
T)……
 
 
海璃の言葉を、ただ黙って聞いてたけど…
 
また知らず知らずに泣いてたのか、
海璃が俺の頬を拭ってくれた。
 
 
海)もしも…もしも迷惑じゃないなら…
  わがまま一つだけ…言ってもいいですか?
T)……
 
 
「いいよ」って言葉にならなくて
俺はゆっくり頷いた。
 
 
海)どんなに時間がかかってもいいです。
  何年先になってもいいから…
  私のこと…妹じゃなく…
  女の子として…見て欲しいです。
T)……
海)ほんとに何年先でもいいですから!
  私ずっと待ってます…
  何年でも待ってます。
  だから…っ
T)……
海)そういう風に…
  見てもらえるようになるまでは…
  まだ…そばにいさせてください…っ
T)……っ
海)Tさんのそばに…いたいです…っ
 
 
……心が、揺れる。
 
 
海璃の心が
あまりに綺麗で、真っ直ぐで。
 
 
それに揺り動かされそうな自分がいる。
 
 
♡のことをまだ好きだから、とか…
これ以上傷つけたくないから、とか…
 
そんな言い訳は何も通用しない。
 
 
だって…
 
全部わかった上で…
 
覚悟の上だってそう言われたら…
 
俺はもう、向き合うしかないんだ。
 
 
この真っ直ぐすぎるほど、純粋な想いと。
 
 
T)……わかった。
海)…っ
 
 
ハッと俺の顔を見た海璃は
しばらく俺を見つめた後、
 
 
海)じゃあ…シチュー作ってもいいですか?
 
 
泣いてんのか笑ってんのか
わかんないような顔で、そう言った。
 
 
T)俺も手伝う。
海)……はいっ。
 
 
前は泣きながら一緒にシチューを食って
今は泣きながら一緒にシチューを作って
 
俺たち、何してんだろ…w
 
 
T)てかさ、なんでしめじ買ったの?
海)シチューに入れるんです。
T)え?前入ってた?
海)前は入れ忘れたんです!
T)シチューにしめじ??
海)美味しいんですよ!
  Tさんはなんでブロッコリー
  買ったんですか?
T)シチューに入れるから。
海)え、ブロッコリーを?サラダじゃなく?
T)そ、シチュー!美味しいんだよ!
海)じゃあ今日は…
  しめじvsブロッコリーですね…。
T)だな。負けねぇぞ。
海)あははは♡
 
 
いつもみたいに笑い合って並ぶキッチン。
 
なのに、いつもとは全然違う。
 
いや、俺が気付いてなかっただけなのかな。
 
 
海)あ、美味しいーーー♡
 
 
今までも…こんなに眩しく笑ってた…?
 
 
T)俺も味見する。
海)どうぞ♡
T)……うん、いいじゃん。
海)じゃあ食べましょう♡
 
 
今までも…こんなに嬉しそうに
俺を見つめてた…?
 
 
T海)いただきます。
 
 
二人で手を合わせて、
シチューにスプーンを沈めた。
 
 
海)あ、ブロッコリー美味しい♡
T)だろー?
海)しめじちゃんはどうですか?
T)しめじちゃんは…合うね。
海)やったーー♡
T)……
 
 
海璃の手はもう震えてない。
無理してない、自然体。
 
さっきまでいっぱい泣かせたのに
今は笑ってくれてる。
 
 
海)良かった…
  Tさんが笑ってくれて…。
T)え…?
 
 
海璃は嬉しそうにニッコリ笑って…
 
 
海)……大好き。
  大好きです、Tさん。
T)…っ
海)好きな人には笑顔でいてほしいから…
  Tさんが笑ってると
  私とても嬉しいです♡
T)……
海)Tさん、大好きです♡
T)////
 
 
不意打ちの、言葉と笑顔に
 
心臓が音を立ててるのが、わかる。
 
 
T)あのさぁ!///
 
 
それをごまかすように水をガブ飲みした。
 
 
T)最初に…シチュー持って
  うち来た時あったじゃん?
海)はい。
T)あん時…なんで泣いてたの?
海)え…?
 
 
俺は勝手に海璃もフラれたんだと思ってたけど
そうじゃないなら
なんで泣いてたんだろうって。
 
 
海)わかん…ない…です。
T)え?
海)……Tさんが…泣いてたから。
T)……え?
海)だから……。
T)……。
 
 
俺が泣いてたから、泣いたの…?
 
 
俺が泣いてたら…自分まで泣いて…
 
俺が笑ってたら…
嬉しいって言って自分も笑って…
 
 
T)……
 
 
なんでこんなにピュアなんだろう…。
 
 
海)そ、そんな…
  ジッと見ないでください!///
T)あ、…ごめん…///
 
 
なんで俺の心臓は
さっきからうるさいんだろう…。
 
 
海)私、Tさんに
  女の子として見てもらうために
  なんだって頑張ります!
T)へ?!
海)何かアドバイスがあれば
  言ってくださいね!
T)…アド…バイス…って…
海)だってTさん、
  妹の恋を応援するって言ってくれたもん…
T)…っ
 
 
それは相手が俺だって
知らない時だろーー!!
 
 
海)あ、でもっ…それだと…
  応援してもらってる間は
  妹になっちゃうのか…ダメだ…。
 
 
なんか真剣な顔して考え込んでる。
 
 
海)今日からは一人で頑張らなくっちゃ…
 
 
そう呟いた海璃は
また俺を真っ直ぐに見て…
 
 
海)えへへ、大好きです///
 
 
照れたようにそう言って笑った。
 
 
T)……わかったから…///
海)これからは好きって思った時に
  好きって言ってもいいですか?///
T)……は?!///
海)今までずっと我慢してたんですけど…
  もう気持ちもバレちゃったから…
T)…っ
海)思った時に言います!
 
 
そう宣言した海璃は
その夜、俺に何度「好き」と言ったか
わからない。
 
 
言われる度に、
どう反応していいのかわからない俺は
固まって。
 
そんな俺を見て、また「好きです」って
追い討ちをかけてくるから、
もうお手上げ。
 
 
T)……は?!
  お前、ちょっ、何してんの!///
 
 
洗い物を終えて手を拭いてたら
食器を片付けた海璃が
後ろから抱きついてきて。
 
 
T)離せって、///
海)早く…女の子として
  見てもらえますように…///
T)////
 
 
な、なんだ…
 
なんで俺…
こんな心臓バクバクしてんだ?!
 
 
海)あ、急かしてるわけじゃないです!
T)……わかってるよ。
海)何年でも待ちます、ほんとに!
T)……うん。
海)……大好き///
T)…っ
海)大好きです///
T)////
 
 
恋する女は無敵すぎる。
 
 
そばにいさせてくださいって言われて
「わかった」って答えたこの日の夜を
 
俺が後悔するのは、もう少し先のこと。
 
 
 
 
 
 
ーendー

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コメント

  1. 外山咲良 より:

    ほんとに切ない話になってる笑笑
    泣ける話だったな。Tくん頑張ってね。

  2. *** より:

    海璃©メッカワーー!
    Tくんも可愛いよーー。ホッコリ&キュンキュンだよ~この二人すごい好き

  3. あやらん より:

    はぁ・・・なんなの・・・このストーリー
    こっちも涙止まんない
    明日朝早いのに・・・目が腫れてしまった
    なんて作品を作るの・・・・大好き(๑╹ω╹๑)
    毎回のストーリーが心に染みて最高です
    (◍ ´꒳` ◍)b

    • マイコ より:

      おおおお。゚(゚´ω`゚)゚。ありがとうございます…ほろり…
      これからも頑張ります!

  4. さゆがん より:

    海璃ちゃんむくわれないけど
    すごく強い子になりましたね。゚(゚´ω`゚)゚。
    最後の伏線はなんだろう。。
    逃した魚はでかいパターンかな???
    新たなキャラ登場かな♬

    • マイコ より:

      ほんと強くなったー。゚(゚´ω`゚)゚。頑張ったぞ海璃ちゃん!!

  5. 臣すき より:

    個人的にこの妄想ストーリー本にしてほしいって思うねんけど_。笑

    絶対買うし笑

  6. 臣すき より:

    Tくんかわい。

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