【222】相容れない価値観(隆二Side)

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最近…

夜に川沿いを通ると
歌声が聞こえる。


すごくすごく…澄んだ声。


どうしてか…

俺はその声に、すごく心惹かれる。


空耳だったら怖いな…
なんて思いつつ

今日もまたリハが始まる。


ゲネプロまであと一週間。


内容はほぼほぼ固まって
微調整とかバンドとの音確認をしながら

時間が空けばひたすらピアノの練習。


先)大分弾けるようになってきたね〜!
隆)マジっすか?!
  あと一週間でほんとに俺大丈夫かなって
  もう今からヤバイんすけど…w
先)大丈夫大丈夫!!

バシッッ

隆)いてっ!w
先)ほら、ピアノの時間は終わり〜〜
  相方待ってるよ。
隆)あっ


臣がホワイトボードを見ながら
ボーッとしてる。


隆)じゃあ先生、ありがとうございました!
先)おう!!

隆)臣、ごめん!お待たせ!
臣)おう。
隆)じゃあやろっか!
臣)おう。
隆)……


臣は…
仕事はもちろんキッチリやるけど
やっぱりずっと元気がない。


隆)ねぇ、ここさ、
臣)……
隆)臣…?
臣)ああ、ごめん、何?
隆)STORM RIDERSのここさ、
  シャウトする前に
  こうやって背中合わせになんない?
臣)…ああ、うん……
隆)……


覇気がなさすぎる……


M)隆二ー!そろそろ出るよー!
隆)はいっ!!
臣)……
隆)ごめん、じゃあ行くわ。
  また夕方に。
臣)ん、行ってらっしゃい。
隆)……


ワゴンに乗り込んで
健ちゃんと岩ちゃんと移動。


M)ああ、はい、わかりました。
  では14時入りで、はい。

ピッ

岩)Mさんどうしたのー?
M)なんか収録押してるみたいで
  入り1時間遅れになったわ。
岩)えっ、マジー?
健)俺、腹減ったーーー
岩)俺もーー!
隆)どっかで食べてこーよ。
岩)いいねっ!!
M)お、じゃあ誰か店おさえて。
  このまま走るから。
健)あーーい!♪


健ちゃんがるんるんで個室を取ってくれて
店に着くまでの車中、

俺たちは腹を減らしながら
あれやこれや話してて…

話題は臣のことになった。


健)俺まだ今日会ってへんねん。
隆)今日も元気なかったよ…
M)あ…っ
隆)え…?
M)昨日…Sさんに聞いたんだけどさ、
  彼女の会社まで会いに行ったけど
  仲直りできずに帰ってきたって。
岩)えっ!!そうなの?!
M)そう言ってたよ。
隆)マジか……


臣…あのまま会いに行ったんだ…


健)仲直り出来ひんかったって…
  なんでやろ…
岩)またもめたのかなぁ?
M)そのへんは聞いてないけど。
健)もう〜〜!♡ちゃーーん!!
  帰ってこいやーーーっ!!
岩)ほんとだよーー頼むよーーー
隆)……


健ちゃんが電話しても
岩ちゃんが電話しても

ダメだった。


でも…

♡ちゃんが臣のことを
好きじゃなくなるなんて
俺は絶対に考えられない。

何か…
俺に出来ること、ないのかな……


岩)あ……
健)んー?
岩)このへん……
健)なんや。
岩)♡ちゃんの会社がある通り。
隆)!!!
健)なんで知ってんねん。
岩)まぁ、ほら、大手だし。
健)ふーーん。
隆)♡ちゃん…いたりしないかな?
岩)すげぇでかいビルだし
  いても見つけられないでしょw
健)てゆーかタイミングよく
  そのへん歩いてるわけないしなw
岩)あ、あれだよ、あのガラス張りの。
健)うわっ!でっか!!!
隆)これは見つけられないか……
健)見つかるわけ…、…って、
  おるやん!!!!
岩)えっ!うそ!!あっっっ!!!
  いた!!!本物!??
健)Kちゃんとおるから本物やろ!!
隆)ちょ、Mさん!!!
M)えっ!なに!!
隆)停めてよ!!!
M)えええっっ!!!


Mさんは慌てて車を停めてくれた。


健)停めてどうすんねん…
隆)いや、思わず…
岩)ああ、ちょうどランチの時間なのかな。
隆)…っ
健)呼んでくる…?
隆)さらってくる!!!
岩)ええっ!ちょ、隆二さん!!!


自分でもびっくりしたけど
身体が勝手に動いてた。


俺は…♡ちゃんに伝えたい。


隆)♡ちゃん!!!


名前を呼ぶと
Kちゃんが先に俺に気付いて
Kちゃんに指をさされて
俺を見た♡ちゃんは目を丸くした。


隆)Kちゃん、ごめん!
  ♡ちゃん借りてくね!!
K)えっっ!!
♡)えっ、隆二くん?!
隆)ごめん!!!


♡ちゃんの手を引いて
車まで連れてくると
岩ちゃんがドアを開けてくれた。


♡ちゃんを無理矢理車に押し込むと
♡ちゃんはパニックになりながら
車内を見渡して

たぶん…
臣の姿がないことに
少しホッとした。


♡)隆二くん…何?これ…
健)よし!♡ちゃんも一緒にランチ行こ!!
♡)え?!!
岩)すぐそこだから!
♡)え!!?
健)よっし、Mさん出してーー!
M)はーい。
隆)……


♡ちゃんが目をぱちくりさせてる。


隆)えっと…いきなりごめんね?
  びっくりしたよね?
♡)……
隆)丁度通ったら
  ♡ちゃんの姿見かけてさ、
  すごいタイミングだなって思って
  思わず声かけちゃった!


…ってゆーか、さらってきちゃった。


岩)あ、言っとくけど
  ストーカーじゃないよ?w
  ほんと偶然だからね??
♡)……うん。
健)ご馳走したるから美味いもん食お!
♡)……


戸惑うよな。そうだよな。


隆)ランチ行くところだったんでしょ?
♡)うん。
隆)美味しいお店だからさ、
  いっぱい食べよ?
♡)……うん。
隆)……


ああ…なんか…
臣みたいだな…


いつもの♡ちゃんとは全然違う。
全然…笑ってくれない。


でも…
それでも…

その薬指には臣があげた指輪が光ってて
すごく安心した。


♡ちゃんは臣が好き。
絶対今でも。

臣は昨日…この指輪に気付いたかな?



店に着いて車を降りると
Mさんは気を遣って車に残った。

俺たちは♡ちゃんを連れて
予約した個室に入る。


健ちゃんと岩ちゃんが並んで
♡ちゃんは俺の隣。


健)よっし!なんでもええで〜!
  ♡ちゃん、好きな物頼みぃ〜〜
♡)…ありがとう。
岩)これとかめっちゃ美味しいよ。
♡)そうなんだ…
健)これも美味いで〜〜!
♡)うん…


二人が一生懸命話しかけるけど
♡ちゃんは元気が無くて…

料理を注文し終わると
健ちゃんが口を開いた。


健)ええと…、♡ちゃん…
♡)…
健)この前は…ごめん。
♡)……
岩)俺もごめん。
♡)……
岩)無神経なこと言って…ごめんね?
♡)……(ふるふる)
岩)……
健)……
♡)あんなこと…本当は思ってないよ…


「他の女の人のところに行くなら
 行けばいいもんっ!!
 いっぱいいるんでしょっ!!」


隆)……


あれが♡ちゃんの本心だなんて
誰も思ってない。


♡)ごめんなさい……
岩)いや…俺が余計なこと言ったから…
  てゆーかさ、そんな女いないから。
♡)……
岩)……
♡)わかってるよ……
岩)……
健)……
隆)……
健)ええと…
♡)……
健)俺らと話すんも…嫌?
♡)…っ


「…健二郎くんたちも…同じなんでしょ?
 遊んでるんでしょ?」


隆)……


そうだった。


大好きな臣のことまで
顔を見たくなくなるほどなら

俺たちのことなんてもう…
軽蔑してんじゃないかな…


隆)無理矢理連れてきて…ごめん。
  嫌だった…?
♡)……


♡ちゃんは何も言わずに俯いて…
その瞳はどんどん潤んでいった。


隆)…っ


どうしよう!
泣く?!!

うそっ…、え、ちょっ…


♡)もう…よくわかんない…っ


ぽろっ…


♡)みんなのことは…
  大好きだもん…っ


ぽろぽろ…っ


♡)でも…女遊びしてるって聞いて…
  最低って思った…っ
隆)…っ


喉を詰まらせながらそう言って
涙をぽろぽろ流す♡ちゃんに

心臓を鷲掴みにされた気分だった。


多分…

健ちゃんも岩ちゃんも
同じだと思う。

そんな顔をしてる……


♡)最低って…思ったけど…
  大好きなのは変わらなくて…
岩)……
♡)大好きな人たちだから
  余計苦しいよっ…
健)……
♡)でも最低だよっ!!
隆)……
♡)なん…でっ…
  好きでもない人と…平気で…
  そういうこと…出来るの…?
隆)…っ
♡)全然…意味がわかんないよっ…
隆)……


♡ちゃんに…わかるわけがない。


汚れなんて知らない
♡ちゃんのキレイな涙が
ぽろぽろ頬を伝って…

自分がどれだけ真っ黒か思い知らされて
罪悪感でいっぱいになる……


自分の彼女じゃないのに
こんな気持ちになるなら

♡ちゃんのことを
あんなに大事に思ってる臣は
目の前でこんな風に泣かれて

どれだけ胸が痛んだんだろう……


♡)ううっ、ぐすっ…
岩)……
♡)…っ
岩)臣さんは…もう…
  そんなことしてないよ?
健)せや…で…、してへんよっ!
岩)今の臣さんは…
  最低なんかじゃないよ。
♡)……っ
健)せやでせやで?!
  俺らのことは置いといて…
  臣は今は♡ちゃん一筋やし
  むっちゃ真面目やし…
♡)……
隆)……


多分そんなことは
俺らから言わなくたって
♡ちゃんはわかってる。

でも俺らは…
何をどう伝えたら
♡ちゃんが戻ってきてくれるのか
わかんなくて…


岩)過去の女遊びが許せない
  ♡ちゃんの気持ちもわかるけどさ?
  そんなの臣さんにしたら
  何の意味もないことなんだよ?
♡)……え…?
岩)そんな意味のないことで
  今こんなに臣さんに愛されてる♡ちゃんが
  傷つくなんて
  なんてゆーか…もったいない…?
  なんだろ…上手く言えないけど…
健)わかる。
  臣にしたらほんっっっまに
  どうでもええことやねん。
♡)意味がないとか…どうでもいいとか…
  どういうこと…?
岩)だから…さ、えっと、健二郎さん
  なんだっけ、あれ。
健)へ?
岩)名言あったじゃん、ほら。
健)ああ!!


まさか…健ちゃん…っ
それは…っ!!


健)愛のないSEXは
  贅沢なオナニーやねん!!


シーン……


隆)…っ


ああ…やっちゃった…
そんなことをドヤって大きな声で…


♡)……


ヤバい…
♡ちゃんの口が開いてる。
完全にドン引きしてる!!


岩)ほんとにそう!!
  何の意味もないの!!


ええっっ!!岩ちゃん!!
そこ、続ける?!!


健)ほんまに意味ないねん。
岩)そうそう。
  臣さんにしてみたら
  そのへんに転がってる飴を
  ただ食べただけ。
  たまたまそこにあったから食べただけで
  その飴に何の執着も愛情もない。
  色形や味だって
  食べ終わったら覚えてないくらい
  どうでもいい話なんだよ。
♡)……
隆)……


その例えはすごくわかりやすいかも。
ワンナイトなんて
ほんとそんなもんだし…


岩)腹が減ってたら
  よっぽどクソ不味い飴じゃなければ
  目の前にあるのを普通に食べるでしょ?
♡)……
岩)……
♡)みんな…そういう感覚なの?
岩)え…?
♡)そういう感覚で…女遊びしてるの?
岩)……
♡)そういう感覚で…
  彼女がいても浮気するの…?
健)いやいや!せやから臣は今は…
♡)前はしてたんでしょ?!
健)…っ
♡)彼女がいても…そういうこと…っ
健)……
岩)今してないんだからいいじゃん。
  前の彼女と付き合ってた時のことなんて
  ♡ちゃんに関係なくない?
隆)…っ


岩ちゃんっ…
なんつー言い方を…!


♡)そんなの…臣くんにも言われたもん…
岩)……
隆)……
健)なんて言うたらええんかな…
  「浮気」とは…ちゃうねん!
♡)何が?!
健)…っ
岩)だから言ったじゃん。
  何の執着も愛情もないんだよ。
♡)……
岩)気持ちなんてこれっぽっちもない。
  それでも「浮気」になる?
♡)何それ……開き直ってるの…?
岩)まぁそう聞こえちゃうかもしれないけど
  そうじゃなくて…
♡)彼女がいるのに…
  他の女の子に同じように
  キスしたり触ったりするんでしょ…?
岩)違うっ!!
♡)…っ
岩)それは違う!全然違う!!
健)うん。「同じように」ではないな。
岩)どうでもいい女に
  大事に触れたりなんかしない。
♡)……
岩)好きでもない女とのSEXなんて
  何の意味もないんだよ。
♡)何…言ってるの?
健)言うたやん!
  「贅沢なオナニー」やって!


あああっ!!
健ちゃんがまた爆弾を〜〜〜!!!

ハラハラしながらも
口を挟めずにいる俺……


岩)ほんと無意味なの。
♡)じゃあどうして無意味なのにするの?!
  おかしいよっ!!
岩)理由は特にないっていうか…
健)ほら!腹減ってたら
  ♡ちゃんやって何か食うやん?
♡)……
岩)そう。それがそのへんで手に入る
  安いカップ麺なら
  適当に食ってスープも残すし。
  食っても感動も何もない。
  ただ空腹を満たすだけ。
♡)……
岩)でも他でなんか食べられないくらい
  高級料理だったら
  一口一口を大切にしながら
  噛みしめるように味わう。
♡)……
岩)どうでもいい女と好きな子は
  それくらい別物ってこと。
♡)……
隆)……


だ、大丈夫かな…っ
岩ちゃん…そんなつらつらと言ってるけど…
♡ちゃん…またドン引きしそうで…


健)その例え微妙やない?
岩)え、そうっすか?
健)ほら、♡ちゃん、釣りで考えてや!
♡)……
健)大した準備せんくても
  やっすい餌で…いや、へたしたら
  餌なんかつけんでも
  簡単に引っかかる魚。
  そのへんにごろごろおるような。
♡)……
健)かたや入念に準備して
  高級な餌つけて
  やっとの思いで釣れた念願の魚!!!
♡)……
健)な??全然ちゃうやろ??
♡)……
隆)!!!


止まってた♡ちゃんの涙が…また…っ


♡)意味わかんないっ!!
  全然意味わかんないよっ!!!
隆)…っ


♡ちゃんが泣きながら叫んだ。


♡)おかしいよ!
  みんなおかしいよ!!
  なんで?どうして?!!
  何か麻痺してるの!??
  女の子は食べ物でも魚でもないよ!!
  そんな変な例えされたって
  全然わかんないっ!!!!!!
隆)…っ


だよね……


岩)わかんなくても…それが男なんだよ…
♡)「それが男」って何?!
  男が全員そうみたいな言い方しないで!!
岩)…っ
♡)そうじゃない人だっているもん!!
  女の人がいくら寄ってきたって
  そんなことしない人だっている!!
  そんな節操ない人ばっかりじゃない!!
岩)……
健)……
隆)……


その通り過ぎて…
誰も何も言えなくなった。


♡)男だから仕方ないって…
  男だからそんなの当たり前って
  そう思ってるの?!
岩)……
♡)お腹が空いたら適当にご飯食べるみたいに
  そういうことしたくなったら
  そのへんの女の人と
  適当にそういうことして
  それが普通で正しいって思ってるの!?
健)…っ
岩)正しいとは…思ってないよ…
♡)でもおかしいとも思ってないんでしょ?!
  だからするんでしょ!?
岩)…っ
隆)……


泣きながら♡ちゃんから降ってくる言葉。
俺は返す言葉もなくて…


♡)もういいよ…っ
  …本当は嫌だけど…もういいっ…
隆)え…っ
♡)みんながそういうことしてるの
  本当はすごく嫌だけど
  でも…私に何か言う権利なんて…
  …ないもん…っ
隆)…っ
♡)でも……
隆)……
♡)臣くんは…嫌なのっ…
  臣くんだけは…嫌なのっ…悲しいの…っ
隆)…っ


またこぼれる…大粒の涙。


♡)好きでもない女の人と…
  平気でそういうことする人だなんて
  思いたくない…っ
岩)だからしてないって!!!
♡)だって……
岩)……
♡)ホテル行ったって…言ってたもん…っ
岩)…ああ…、聞いたんだっけ…
♡)好きでもない…女の人と…っ
岩)でも何もしてないよ?
  途中で帰ったって、聞いたでしょ?
♡)…っ
岩)♡ちゃんのことが好きだから
  途中で帰ったんだよ?
隆)♡ちゃん……
♡)うっ…ふぇぇ…っ
岩)俺らからしたら信じられないよ。
健)う、うん…、せやんな…
隆)俺…さ、それ聞いた時…
  感動したんだよ。
  臣、ほんとに♡ちゃんの…
♡)途中って…!!
隆)え…?
♡)途中って…だって…
  キスとかはしたんでしょ?
岩)……
♡)何もじゃないもんっ!!
隆)…っ
♡)想像したら…すごく悲しいのっ…
  みんなからしたら
  大したことじゃなくても…
  私は…っ


♡ちゃんの涙が
ぽろぽろと止まらずにこぼれ落ちる。


岩)さっきも言ったけど…
隆)……
岩)その時その女にしたキスと
  ♡ちゃんにいつもしてるキスとは
  全然別物だよ。
♡)…っ
岩)どうでもいい女に触れるのと
  本当に好きな子に
  愛しいって想って触れるのとじゃ
  全然大違いなんだよ。
♡)……
隆)……
♡)意味が…わかんない…
隆)……


そうだろうな。


岩)♡ちゃんから見たら最低だろうし
  意味もわかんないと思うけど…
♡)……
岩)それと同じように
  俺には♡ちゃんがわかんないよ。
♡)…っ
健)…岩…ちゃん…?
岩)臣さんが♡ちゃんに何をしたの?
  浮気したりした?
  ♡ちゃんを裏切ったりした?
  ♡ちゃんが傷つくようなことした?
♡)…っ
岩)何もしてない。
  臣さんはあんなに♡ちゃんが好きで
  ♡ちゃんを大事にしてて…
♡)……
岩)それが何?
  過去にちょっと女遊びしてたくらいで
  こんな風になるの?
♡)…っ
岩)女遊びが最低だって
  ♡ちゃんが言うのはわかるよ?
  だけど……
♡)……
岩)♡ちゃんに対して…
  臣さんが何かしたわけじゃないのに…
  こんな無意味なことで
  こんな傷ついたり泣かれたりしたら…
  どうしていいのかわかんないよっ…
♡)…っ
健)岩ちゃん…?
岩)…っ
隆)……
♡)私だって…わかんないんだもん!!


♡ちゃんが立ち上がった。


♡)もう帰る…!!!
隆)え、ちょっと!待って!!!
岩)…っ
健)♡ちゃん!!
隆)待って!!


俺は部屋から出て行った♡ちゃんを
追いかけた。


隆)♡ちゃん!待って!!
♡)…っ


肩を掴んで振り向かせると
♡ちゃんが涙をいっぱいためて
俺を見上げた。


隆)…っ


こんなに泣かせて…ごめん…


隆)♡ちゃん…
♡)……


俺は…♡ちゃんに伝えたい。


隆)……
♡)……
隆)臣…さ、前に言ってたんだ。
♡)……


「まぁ臣がそんなことしたら
 絶対♡ちゃん、泣くよね。」

「そんなんぜっっってぇやだ。」


隆)……
♡)……
隆)♡ちゃんのこと…
  「死んでも泣かせたくない…」って…。
♡)…っ
隆)……


大事にしたい
大事にしたい
って…

いつだって伝わってくる。


隆)……



「俺…幸せすぎて死にそう…」

「あ~~もう
 俺あいつといたらキュン死するかも!!!」

「なんかもう…愛しすぎんだもん…」

「めっちゃ好きーーー!!!!!」



隆)……


臣はいつだって
♡ちゃんのことが大好きで…


隆)泣かせたくない…
  大事にしたいって…
  臣はいつもそう思ってるよ。
♡)…っ
隆)本当に好きだとさ…
  自分が泣いたり傷ついたりするよりも
  大事な相手が傷ついた痛みの方が
  ずっと大きいんだと思う。
♡)……
隆)大事な相手を悲しませた自分を…
  泣かせた自分を…
  責めて…余計にまた苦しくなる。
♡)…っ
隆)……


臣はずっと苦しんでる…

もう…許してあげて…


隆)……
♡)…隆二…くん……
隆)……
♡)あり…がとう…
隆)……
♡)臣くん…ごめ…なさ…っ
隆)…っ
♡)ごめん…なさ…いっ…
隆)♡ちゃん…っ
♡)ふぇぇぇっっ…
隆)…っ


ああ、そうか…
なんで俺…気付かなかったんだろう。


相手を悲しませて泣かせて
そんな自分が嫌になって苦しくなる。

それはきっと…
♡ちゃんも一緒なんだ。


臣を悲しませて…
♡ちゃんも傷ついてる。


隆)♡ちゃん……
♡)臣く…っ、うっ…ごめ…なさっ…
隆)もう泣かないで…!
♡)…ふ…ぇえっ…
隆)…っ



♡ちゃんが泣き止むまで
肩をさすってあげることしか出来なくて…



♡)いっぱい泣いて…ごめんなさい…
隆)……
♡)私…もう戻るね……
隆)……



俺は何も言えずに
♡ちゃんの背中を見送った。


こんなに想い合ってるのに
なんでこうなるんだろう…



隆)…っ



早く…早く仲直りできますように。
どうか…

どうか。




ー続ー

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