[91]小さな手紙(ハルキSide)

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クラス会当日。

ア)ハル、もう行って!
ハ)でも…っ

仕事で急なトラブルが舞い込んで
その処理に追われてしまって…

ア)明日のスケジュール調整すれば
  なんとかなるから!
ハ)ごめん、ありがとうアキ!

俺はそのまま急いでタクシーに乗り込み、
店に向かった。

心臓がバクバク、音を立ててるのがわかる。

♡に会いたい。

早く会いたい。

1時間遅れで到着した会場は
もうみんなの笑い声で盛り上がっていて…

女)あーー!ハルくんだーー!
男)ハルキー!おせーよ!w

中に入ろうとしたら、
入り口で数人に囲まれた。

男)元気だったか?
ハ)うん!
男)会いたかったんだぞ〜〜!
女)そうだよそうだよ〜!
男)お前すげぇ背伸びたな!
女)ちょっと、いつと比べてんのよw
ハ)あはははw

懐かしい顔ぶれに…
いっきに昔に戻ったみたいに、嬉しくなる。

先)おおハルキ!遅かったな!
ハ)先生っ!!

先生は少し白髪が増えたけど
優しい笑顔は昔のままで…

先)お前は全然変わらないなぁ!

そう言って、くしゃっと笑った。

先)お前と♡は、本当に変わらない。
ハ)えっ…
先)澄んだ綺麗な瞳が昔のままだよ。
ハ)……

すごく懐かしそうにそう言われて、
なんだか胸が熱くなった。

先)お父さんの会社を継いだんだって?
ハ)はい!!
先)夢が叶って良かったな、うん。
ハ)ありがとうございます…っ

ああ、なんか…
じーんとするな。

男)ハルキ!こっち来いよ!!
女)ハルくんお腹空いてるー?
ハ)ああ、ありがとう。

誘われるままに、空いてる席に座って
♡の姿を探したけど…

♡は一番奥のテーブルで
女子に囲まれて笑ってる。

ハ)……っ

その笑顔が見れただけで、
なんだか泣きそうなくらいに嬉しかった。

男)あん時の遠足はほんとキツかったよなw
女)男子なんてふざけっぱなしだったじゃん!
男)あはははw
女)ハルキくん…?聞いてる?
ハ)ああ、ごめん!なんだっけ。

みんなの会話に入ってるつもりでも
目はどうしても、♡を追ってしまう。

全然話せる距離じゃないから…
遠くからその笑顔だけ見つめてると…

しばらくして、
♡がふっと…こっちを見て。

ハ)…っ

目が、合った。

合ったまま、しばらくお互いに動けなくて…

女)ねぇハルキくんってばw
ハ)…っ、あ…、ごめん。

呼びかけられて、外れた視線。

次に見た時には、もう目が合わなかった。

男)あ、♡見てたの?
ハ)…そういう…わけじゃ…
男)♡さー、すっげー可愛くなったよなー
女)♡ちゃんは昔から可愛いもん!
男)いや、だからさ?
  そのまま大人になってて
  嬉しいっていうかなんつーかw
男)初恋の子にはずっと可愛くいてほしいw
男)それそれーーw
女)どうせ男子はみんな
  ♡が初恋なんでしょw
女)あははは、絶対そうw

♡のテーブルとは距離があるから
こっちの会話は聞こえてないと思うけど…

それからしばらく話題は♡のことで。

女)あたしが一番びっくりしたのは
  三代目の臣くんと雑誌に載ってたこと!
女)ね!びっくりした!!
男)え、何それ!知らない!
男)♡が三代目と?!
ハ)……

三代目…、聞いた事はある。

確か…EXILEと同じ事務所の…

男)あんなチャラいのと一緒に仕事したら
  ♡食われるって!
男)そうだよ!ダメダメ!
女)え、三代目ってチャラいの?
男)女食いまくりじゃん!
女)えーー!そんなイメージないけど!
男)♡なんか絶対狙われてる。
  あんな可愛いんだもん。
女)えーーいいなぁーー♡
  臣くんになら狙われたい♡
女)食われても全然いい♡
男)バッカじゃねーのお前ら。
ハ)……

俺は修二に聞いてから
毎月のファッション誌しか見てないから
その雑誌は知らない。

女)あ、これこれ!ほら!

女子の一人がその雑誌の写真を
スマホで見せてくれて…

男)うわ!マジだ!何これ!!!
男)えっ!すげーラブラブじゃん!!
女)そういうテーマなんだよ♡
  ヤバいよね〜〜♡
女)ほんとのカップルみたいだもん♡
男)うわ〜〜〜〜
ハ)……

小学生の頃に比べたら
もちろん当たり前に大人になってるけど

その笑顔は俺が知ってる♡の笑顔
そのままで…

幸せそうに無邪気に笑う、
陽だまりみたいな笑顔。

どうしてこんなに変わらないんだろう…

いつも隣で見ていた
俺が大好きな笑顔…、そのままだ。

女)ハルくんといる時も
  ♡ちゃんいつもこんな顔して
  笑ってたよね。
ハ)……
男)だってこいつら
  すげーラブラブだったもんw
男)ほんとなーー
女)男子もハルくん相手じゃ
  誰も敵わないもんねw
男)おいw
女)ねーねー、今はどうなの…?
  仲良いの?
ハ)……いや、…えっと……
女)え、もしかして♡ちゃんの彼氏って
  ハルくん?!
男)あ、そうなの!?
ハ)違うよ!!
男)なんだ、ちげーのか…
女)さっき彼氏いるって話してたから…
男)それがハルキだったら
  なんか俺感動しちゃうわ。
男)だよな。何年越しの恋だよって。
女)運命感じちゃうーー♡
ハ)……

そんな会話の中で、ふとまた
向こうに目をやれば…

♡の左手の薬指に、
綺麗に光るリングが見えた。

ハ)……

4月に会った時には、つけてなかった。

ハ)……ごめん、ちょっと。

そのまま俺は席を立って、
トイレに向かった。

ハ)……はぁ……。

どうしたら♡と話せるかな。

次に戻ったら…
一番奥のテーブルまで行ってみようか。

そんなことを考えながら扉を開けると…

女)ハル…くん…っ//

俺を呼び止めたのは、違う女子の声だった。

ハ)あ、えっと……、みゆちゃん…?
み)覚えてて…くれたんだ…//
ハ)うん、どうしたの?
み)……少し…いい?
ハ)うん。

そう言われて、
二人で店の入り口まで場所を移した。

み)あの…、急にごめんね?
ハ)うん、全然いいよ?
み)ハルくん…、今…♡ちゃんとは
  付き合ってないんだよね…?
ハ)……うん。
み)わた、わたし…っ!
  ハルくんのことが好きなの!!!
ハ)…っ

それは思いもよらない、急な告白だった。

み)小学校の時からずっと好きで…///
  でも、ハルくんはいつも
  ♡ちゃんと一緒で……
  バレンタインも受け取ってくれないって
  有名だったし…
ハ)……
み)気持ちを伝えるチャンスが…全然なくて…
ハ)……
み)やっと言えた……っ

そう言って彼女は目を滲ませて…

み)ずっとずっと、好きだったの。
  大好きだったの。
  忘れられなかった。
ハ)……
み)今日こうして会えて、
  やっぱり好きって思った。
ハ)……
み)もし…ハルくんが今、彼女いないなら…
ハ)ごめん。
み)…っ

彼女の表情が、一瞬で曇ってしまった。

でも…
俺はもう決めたんだ。

♡が心にいるのに…
こんなに♡が好きなのに…

もう誰とも付き合ったりしない、って。

ハ)好きな子が…いるんだ。
み)…っ
ハ)何よりも…誰よりも…大事な子。
み)…そう…なの…?

みるみる潤んでしまった彼女の瞳から
涙がこぼれて…

俺はハンカチを差し出した。

ハ)気持ちは嬉しいよ…すごく。
  ありがとう。

ずっと好きだったって言ってくれて…

それが自分の♡への想いと重なって
自然とそう思った。

み)……ふふ、…っ
  もうやだ…ハルくんってば…
  相変わらず優しい……っ
ハ)え…?
み)ありがとう。

彼女は俺のハンカチを
手のひらで優しく押し返して…

み)気持ち伝えられただけで、スッキリした。
ハ)……
み)ハルくんが急にいなくなっちゃって…
  不完全燃焼みたいな恋だったから。
ハ)……
み)ありがとう、聞いてくれて。
ハ)ううん。
み)……じゃあ私、先に戻るね。

そう言って彼女は最後にニコッと笑って
戻っていった。

ハ)……

不完全燃焼みたいな…恋、か…。

俺もそうなんだろうか。

あんなに好きだったまま別れて、
会いたくて会えなくて

好きで好きで

何年も経って、今またこうして
会うことが出来て。

ハ)……

こんなに♡を好きだと思う俺の気持ちは…
昔の俺?
それとも、今の俺?

__カタン。

♡)あっ…

ハ)!!!

その声に振り返ると…

♡)……
ハ)……

俺と目が合った♡は…
その瞳に戸惑いの色を滲ませて

そこに立っている。

♡)ご、ごめんね…っ
ハ)えっ……

そう言って♡は戻っていって…

ハ)……

何が…ごめんねなんだろう。

いつから…いた?
さっきの…聞いてたのかな?

ハ)……♡、待って…!

すぐに追いかけたけど、声は届かなくて。

ハ)♡……!

俺の声に、♡が振り返ったと同時に
♡はみんなに囲まれた。

女)ねぇねぇ一緒に写真撮ろー!♡
男)俺も俺も!!
女)インスタに載せてもいい?
♡)あ、えっと…うん。
男)載せていいの?自慢するよ、俺!
女)あたしもーー!
♡)……

♡と話したかったのは
俺だけじゃなかったみたいで…

女)ねぇ、なんでこんな
  10代みたいなお肌してんの??
女)何使ってるか教えて〜〜!
男)♡!俺ともツーショット撮って!
男)お前ずりーじゃん!

なんかもうてんやわんやになったのを見かねて
修二が声をかけてくれた。

修)もう〜〜〜〜
  お前らは芸能人に群がる一般人かよ!w
男)だって♡だってもう
  芸能人みたいなもんじゃん!
♡)そんなことないよっ!
修)じゃあほら!そろそろみんなで
  集合写真撮るぞーー!
女)あ、それいいね!!

みんなが♡を囲うように
中央のテーブルに集まってきて…

修)ほらハルキ!お前も!

そう言って俺の肩を組んだ修二は
もう片方の腕で、♡の肩を組んでて…

ハ)…っ
♡)…っ

今日一番近い、♡との距離に…
身体が緊張する。

修)見切れてる奴いねーかー?
  じゃあ店員さん、お願いします!

そう言った修二が
グッと俺たちを抱き寄せるから

俺たちの肩と肩が触れて……

店)はい、チーズ!

パシャッ

店)もう一枚いきますねーー!
  はい、チーズ♪

パシャッ

修)ありがとうございましたー!♪

写真を撮っている間、
うまく息を吸えてたのかも自分でわからない。

ハ)♡……

離れかけた小さな身体を呼び止めたけど、

女)この写真、♡のホームページに
  載せていいよ!!
男)おお!むしろ載せて載せて!

クラスメイトの声で
すぐにかき消された。

♡)え、いいの?
女)いいよーー!!
男)記念になるし、自慢になるしw
♡)じゃあ載せるね!みんなありがとう♡

それからも、♡に話しかけるチャンスは
全然なくて…

修)お前全然話せてねーじゃん。
ハ)ああ、うん……
修)このあと、二次会行くだろ?
ハ)……
修)カラオケにする予定だから
  部屋抜け出して話せば?
ハ)うん、ありがとう。

そう話してたんだけど…

女)えーー!♡帰っちゃうの!?
男)二次会行こうよ!!
♡)うん、ごめんね……
男)なんでーー!!
女)行こうよ〜!やだやだ〜〜!!

♡はみんなの誘いを断って。

それぞれバラバラに外に出る中、
店から少し離れたところで
誰かに電話してるみたいだった。

その電話が終わったら、
今度こそ話しかけようってそう決めて。

その後ろで待っていると、
聞こえてきた会話。

♡)え、来れないの…?
  …うん、全然大丈夫だけど…
  ……えっ!
  二次会は行かないよ?
  どうして……

パッパーーーーッ!!

後ろから聞こえた、車のクラクション。

その音に反応した♡は
あたりを見渡して…

一台の車を見つけて、微笑んだ。

♡)どうして…嘘つくの…?
  ……もう、切るよ?

そう言って、車の方へ走って行ってしまった。

女)え、♡ちゃんもしかして
  彼氏のお迎えだったの?
男)マジ?!
ハ)いや、わかんないけど…
女)彼氏見たーい!
男)顔見える!?

みんな興味津々で…

運転席に見えたのは、ハットをかぶって
マスクとサングラスをした男。

女)え!不審者じゃん!こわ!!
男)サングラスにマスク?!
  ほんとに彼氏かよ…
女)あ…っ
ハ)…っ

♡はその助手席に乗り込むと、
その男に抱きついた。

女)わわわ…///
  やっぱり彼氏だった……
男)……///

その光景を見たみんなは
照れたように戻って行って…

ハ)……

その場に立ち尽くして動けない俺を
迎えに来てくれたのは、修二だった。

修)ハルキ、二次会行くぞ。
ハ)……ん。

♡を乗せた車はもうとっくにいなくなってた。

修)…彼氏、迎えに来てたんだって?
ハ)ああ、うん。
修)……
ハ)……
修)全然話せなかったろ?
ハ)そうだね。
  ごめん、せっかく修二が…
修)いや、俺はいいんだけどさ…
ハ)……
修)なんで…両思いだったのに…
  こんなタイミング合わねんだろな。
ハ)え…?
修)あいつさ、言ってたんだよ。
ハ)……
修)6年のバレンタイン、
  もうお前がいないってわかってるのに
  お前の家までチョコレート、
  届けたんだって。
ハ)……え?

6年生の…バレンタイン…?

俺がいなくなったのは、冬休みに入ってすぐ。
最後の三学期はいなかったから
バレンタインだって…

修)バレンタインだけじゃねーよ。
  中学入ってからだって…ずっと…
  あいつ、お前のこと忘れられなくて…
  好きだったのに。
ハ)……っ

俺だって、好きだった。

今でもこんなに好きで…

本当は、もう見えなくなったあの車を
走って追いかけたいくらいで……

俺は結局、その夜。

ほとんど眠れずに
♡のことばかりを考えていた。

次の日も…

その次の日も……

頭の中は、♡のことばかり。

クラス会から三日が経った土曜日。

俺は修二の言葉が忘れられなくて
昔住んでいた町へと一人で出かけた。

ハ)……うわぁ……

もちろん変わっている場所もあるけど
昔のままな場所もたくさん残っていて…

その景色に、胸があたたかくなる。

♡と通っていた小学校。

手を繋いで歩いた登下校の道。

一緒に遊んだ公園。

ハ)全部…変わってない……

このままここを進めば……

ハ)……っ

♡の家も、そのままだ。

今も誰か住んでいるんだろうか。

……ここで過ごした時間は
どれもあたたかくて、幸せで……

そんな優しい記憶が、一気に蘇る。

そのままゆっくり裏へ回れば…

すぐに見つけた、小さなアパート。

俺と父さんが二人で住んでいたアパートは
壁の色が少し真新しくなっているけど

当時のままで。

住んでいた部屋の扉まで
ゆっくりと近付いた。

……ここに、♡が来たんだろうか。

6年生の♡が…
チョコレートを持って…

ハ)……

そんな姿を想像しただけで、
なんだか泣きそうになる。

しばらくその場に立ち尽くしていると…

男)おや。どなたですか?
ハ)…っ、すみません……
  以前ここに住んでいた者で……
男)……

俺に声をかけてきたのは大家さん。

白髪がすごく増えているけど、
顔は覚えてる。

ハ)小学生の頃、
  父と二人で住んでいたんです。

俺がそう言うと、大家さんは空を仰いで。

男)うーーん……、覚えて…ます。
  それで、どうかしましたか?
ハ)ええと……

あまりちゃんと思い出してもらえて
なさそうだけど…

ハ)僕たちが引っ越した後に、
  女の子がチョコレートを
  持ってきたと思うんですけど…
  ご存知ないですか?
男)…チョコ…レート?
ハ)はい、バレンタインに。
男)……

ポストに入れたのか、ドアにかけたのか
玄関に置いていったのか、
♡がどうしたのかはわからないし

そんな何年も前のことを
大家さんが覚えているかも知っているかも
わからないけど…

俺は一縷の望みをかけて聞いてみた。

ハ)すごく可愛い女の子で…
  よく遊びに来てたんですけど…
男)……
ハ)冬にはふわふわした雪うさぎみたいな…
男)ああ!!
ハ)…っ
男)いつも元気に挨拶してくれてた
  あの女の子かな…?
ハ)覚えてますか?!
男)雪うさぎ…真っ白なもふもふの…
ハ)はい!!
男)ああ、あの子は覚えてるよ!
ハ)……っ

良かった……!!

ハ)その女の子が…チョコレートを…
男)んんっ……もしかして……
  ちょっと、一緒に来てくれるかい?
ハ)はい!

大家さんの部屋まで一緒についていくと
中から元気な奥さんが出てきて…

女)あらどうしたんだいあんた!
  そんなイケメン連れてきて!
男)いやぁ、お前さぁ、昔…
  なんか拾ってきたよなぁ、確か。
女)え?
男)冬の日に、なんかあったっつってぇ…
  ほら。
女)何言ってんだい。
男)バレンタインのチョコレート。
女)は?
男)このお兄ちゃんが探してるんだよ。
ハ)…っ
女)バレンタインのチョコレートぉ??
ハ)はい。すごく昔なんですけど…
  

俺が事情を説明すると、
奥さんは思い出してくれたようで…

女)あったよ、あったあった!
  赤い袋に入ったチョコレート!
ハ)…っ
女)もう誰もいない部屋のドアに
  ぶら下がってたんだよ!
ハ)それ…、まだありますか?!
女)あるわけないだろ!あっはっはw
  あっても腐ってるわい!w
ハ)…っ

そう…だよな。

何年経ってると思ってんだよ……

女)でもね、手紙はまだある。
ハ)え…っ

……手紙?

女)チョコは悪いけど捨てちまったよ。
  でも、手紙は…
  子供が一生懸命書いたんだろうなって…
  あ、悪いけど読ませてもらったよ。
ハ)はい。
女)で、捨てるにはあれだから…
  確か取ってある。
ハ)ほんとですか?!

奥さんはそのまま部屋の奥に姿を消した。

男)よかったなぁ、兄ちゃん。
  うちの母ちゃんはな〜んでも捨てずに
  取っておくタチだからw
ハ)ありがとうございます!
男)チョコも残ってたら良かったんだけど…

女)あったあったーーー!!

奥さんが走って持ってきてくれたのは
ピンク色の封筒の小さな手紙。

表には「ハルくんへ」とだけ、書かれてた。

ハ)……っ

俺はそれを、大事に受け取って…

二人に何度も何度も感謝を伝えて

アパートを後にした。

……手紙を受け取って、

俺が真っ直ぐに向かったのは
一番近くの公園。

ここでよく、♡と瞬と遊んだっけ。

ハ)……

昔と変わらない懐かしい景色。

綺麗に整えられた芝生の脇にあるベンチに
俺は静かに腰掛けた。

砂場からは子供たちの笑い声が聞こえて来る。

ブランコで仲良さそうに遊んでいるのは
兄妹かな。

ハ)……

手紙を受け取った時、
泣いてしまいそうだった。

今も、読みたいのに読めないのは…
読んだら絶対に、泣いてしまうから。

情けないな、俺は。

俺がいなくなって…
それでも俺を想ってくれてて…

6年生の♡が、俺に書いてくれた手紙。

もう会えないのに…
毎年くれてたチョコレートも、
用意してくれて……

ハ)……

俺は深呼吸をして、
封筒の中から手紙を取り出した。

広げてみると、
そこには懐かしい♡の文字が並んでいて。

『ハルくんへ

 大好きです。

 ♡より』

書かれていたのはたったそれだけ。

たったそれだけなのに……

ハ)……っ

便箋に涙がこぼれて、慌てて閉じた。

言葉に、ならない。

その代わりに、涙が次から次へと
勝手にあふれて来て……

ハ)…っ

喉が詰まって苦しくて、
うまく息が吸えない。

♡……、

♡……、

ごめん。

本当にごめん。

何も言わずにいなくなって…

どんな思いをさせたんだろう。

きっと泣かせた。

俺が泣いた以上に、♡は泣いたかもしれない。

いつも隣にいて…
何度も一緒に笑って
何度も抱きしめた。

大事な大事な女の子。

ずっとずっと…大切で…
一度も忘れたことなんてない。

いつも俺の心の真ん中にいる
陽だまりのような存在。

側にいるだけで

そのあたたかい優しさに…
明るい笑顔に…

心が癒されていくようだった。

大事で大事で…
何よりも守りたかったのに…

どうして俺はあの日、
何も言わずに離れてしまったんだろう。

「大好きです」

たった一言に込められた想いに、
涙が止まらない。

好きだよ、♡……

こんなに……

こんなに愛してる。

会いたい。

会って、抱きしめたい。

こんな自分勝手な俺は、最低だろうか。

それでもこの気持ちはもう消せない。

___俺は♡を、愛してる。

ーendー

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