[48]天国から地獄へ(隆二Side)

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今日は待ちに待った、♧との初デート。

3日前に、初めて連絡先を交換して
そこから数回のLINEのやりとり。


あの場所に行かないと
会えなかった関係から

こうしてLINEのやりとりが
できるようになっただけでも
俺的にはすごく嬉しい。


仕事が少しおして
今から急いで向かうって連絡して
俺は昨日予約を取った店へと向かった。



店に着いて
「お連れ様、もうお見えですよ。」

そう言われただけで
胸がバクバクしてきて、テンションが上がる。


通されたのは、一番奥の個室。

俺がそのドアを開けると
彼女は俺を見て、少し驚いた。


隆)ごめんね、待たせて。
♧)いえ、全然です。
隆)えっと…とりあえず飲み物頼もっか。
♧)あ、はい。
隆)何飲む?
♧)えっと…


慌ててメニューに目を通す彼女。


♧)ウーロン茶。
隆)え、飲まないの??
♧)え?
隆)お酒。
♧)あ、えっと…飲んだ方がいいですか?//
  じゃあえっと…
隆)いや、無理しなくていいけど。
♧)……じゃあ…ウーロン茶で//
隆)了解w


お酒弱いのかな?と思いつつ、
ウーロン茶とビールを頼んで

俺はサングラスとマスクを外した。


♧)…びっくり、しましたー。
隆)ん?何が?
♧)なんか、お忍びみたいだなーって。
  ふふっw
隆)……


その通りなんだけど…
知らないもんね、俺の仕事。


♧)風邪ですか?
隆)あ、いや、えっと…予防?
♧)ふふっ、偉いですね♡
隆)……//


いつもと同じ、柔らかい彼女の笑顔。


ああ、なんか…
すげぇ嬉しい、ほんと。

どうしよう。

今日は二人でゆっくり話せるんだ。


♧)お料理はどうしますかー?


メニューをパラパラとめくる彼女。

初めて明るい場所で、こうして顔を合わせる。


こんな顔…してたんだぁ……


♧)今市さん?
隆)あ、はい。
♧)聞いてましたー?
隆)ああ、うん。
♧)……どうしたんですか?
隆)いや…その…


見とれてました。

なんて言えない。


♧)(じーーーっ)
隆)……///


え、なんか俺、見られてる?


隆)な、何?
♧)明るいところで、初めて見るなぁって…
  今市さんの顔。
隆)…っ


ドキッとした。

同じことを思ってたわけだけど…
もしかして、気付く?
俺に。


隆)どう…ですか。
♧)何がですかー?
隆)明るいところで見て。
♧)…ふふっ、なんですかその質問w
隆)……


くすくす無邪気に笑う彼女を見て
全然気付かれてないってわかった。

やっぱり知らないよね、三代目。


♧)カッコイイです♡
隆)えっ!!!


思いがけない爆弾が飛んできた!

カ、カ、カッコイイ?!!

カッコイイって言った!?///


♧)おじさんなんて言って、
  すみませんでした。


そう言ってふにゃっと笑った。


隆)////


ドキドキ…ドキドキ…


♧)私はどうですかー?
隆)え?
♧)明るいところで見て。
  今までちゃんと見えてましたー?
隆)見えてたよ!w
♧)そっか……
隆)……


でも…やっぱり、可愛い。

別に特別美人じゃなくても
可愛いわけじゃなくても

俺の目には、可愛く映る。


隆)大人っぽいよね、♧って。
♧)え?


なんか雰囲気が…
すごく落ち着いてるっていうか
大人の女性って感じ。


♧)老けてますか?w
隆)そんな意味じゃなくて!
♧)ふふっ、良かったー。
隆)////


あ〜〜〜〜
その笑い方、ほんと可愛い。


♧)お腹、空いてます?
隆)うん!ペコペコ!
♧)ふふっ、メニューどうぞ♡
隆)あ、ありがとう。


手渡されたメニューをパーっと見て
好き嫌いはないって♧が言うから

食べたいものを適当に色々頼んだ。


隆)じゃあ、乾杯。
♧)乾杯。お仕事お疲れさまです。


さりげないそんな一言が嬉しくて…


隆)……ありがと///


キンキンに冷えてるビールを
喉の奥に、流し込む。

めちゃくちゃ美味い。


♧は洒落たグラスを片手に
ニコッと笑うけど

その中身はウーロン茶。


隆)お酒、苦手?
♧)あ、いえ。
  飲むと寝ちゃうんです。
隆)えっ
♧)すぐ眠たくなっちゃってー。
隆)そっか。


それは、弱いってことか?


♧)せっかく今市さんとご飯食べるのに
  眠くなっちゃったら勿体ないから。
隆)…っ


あの、さ……

たまにそういう思わせぶりな爆弾を
落としてくるのは

わざとなの?
無意識なの?


俺、期待するよ?///


隆)じゃあ今日は寝かせないね。
♧)ふふっ、ちゃんと起きてますよーー
隆)……


ちょっと意味深に言ってみたのに
はい、コレ。

手応え、なし。


隆)♧ってさ、「ふふっ」って笑うの
  クセだよね。
♧)え、そうですか?
  自分じゃわかんないです。ふふっ
隆)ほらw
♧)あ、ほんとだー!w
隆)あはははw


ほんと可愛い。


あともう一つある、

語尾が間延びする話し方も
なんか独特ですごく癒されるから、好き。


♧)自分のクセって、
  自分じゃわからないですよねー。
隆)うーん、確かに。
  俺、なんかあるかな?
♧)うーん…じゃあこれからじっくり見て
  見つけてみますね。
隆)……うん。


じっくり見られるのか…
なんか照れるな///


♧)私は直そうっと。
隆)へ?何を?
♧)え、笑い方…
隆)なんで!直さなくていいって!!!


びっくりして思わず声も大きくなる。

何言い出すんだよ!


♧)だって変なんですよね?
隆)変なんて一言も言ってないじゃん!!
♧)え……
隆)可愛いの!!!
  それすっげー好きなの!!!!
  直さなくていいから!!!!
♧)…っ
隆)…っ


慌てすぎて
必死になりすぎて

言ってから、我に返った。


隆)////


すげぇ恥ずかしい///


♧)なんか恥ずかしいです///
隆)いや、それは俺です///
♧)ふふっ、なんですかそれーー


あ、また笑ってくれた。
よかった。


♧)可愛いなんて…初めて言われました…
隆)え?
♧)男の人に…
隆)……


え、え、ちょっと待って。
そんな可愛いのに言われたことないわけ?

一体どんな人生歩んできたの?
謎すぎる!!


「お待たせしましたーー」


料理がパラパラと運ばれてきて
テーブルを鮮やかに彩っていく。


♧)ふふっ、美味しいーー♡
  幸せ…♡
隆)……


可愛いなーーーー


♧)ふふっ、今市さんって
  すっごく美味しそうに食べますね。
隆)え、そう?///
♧)はい。なんか可愛いです。
隆)んぐっ、ごほっ///
♧)ふふっ、大丈夫ですかー?
隆)///


可愛いって何。
俺、子供みたいじゃん。


♧)今市さんの将来の奥さんは
  幸せ者ですねー。
隆)へ?なんで??
♧)こんな美味しそうに
  食べてくれる旦那さんなら
  絶対幸せですよ♡
隆)……///


そう思うなら…
立候補してくれませんでしょうか。


隆)♧はすごくいい奥さんになりそうだよね。
♧)え??どうしてですか?
隆)なんとなく。
♧)もう…なんですか、それw
  ちょっと嬉しかったのに、
  なんとなくってーw
隆)いや、別に適当に言ったんじゃなくて…
♧)ふふっw
隆)……///


ああ…

なんか…

ほんと♧の雰囲気が好き。
すげぇ癒されるっていうか
落ち着くっていうか…

なんなんだろう。

なんかそういう成分、出してるでしょ?


♧)お料理は得意なんで
  あとは相手を見つけるだけです。
隆)へ??
♧)いい奥さんになるには。
隆)あ、ああ、その話ね?
♧)ふふっ、今市さんってばボーッとしてー。
隆)……///


君のオーラに和んでました。


隆)じゃあうちに来ませんか。
♧)え?
隆)お嫁に。
♧)え?
隆)美味しそうに食べる旦那さん、
  ついてきます。
♧)…っ、あはははっ♡
隆)////


半分冗談で、半分本気だよ?
そんな可愛く笑ってるけど。


♧)じゃあお料理の腕、
  もっと磨いておきますねー♡
隆)……


軽く流されたーーーーーーー


♧)あ、これもすごく美味しい。
  幸せ…♡
隆)……


一口一口、噛み締めるように食べる彼女。

可愛いアヒル口が、
余計に美味しそうに見せる。


もともとタレ目な目尻が
さらに下がって

本当に幸せそうに、頬に手を当てる。


隆)また…美味しいもの食べに行こうね。
♧)……まだ、食べ始めたばっかりですよー?
隆)そうだけど…//
  いいじゃん!次の予約!
♧)ふふっ、気が早いですねー。
隆)……///
♧)行きましょうね♡
隆)////


え、ほ、ほんと??


♧)今市さん、美味しそうに食べるから
  一緒にご飯、楽しいです。
隆)////


そんな嬉しそうに笑ってくれんの?

だから…そんなの俺、
期待するって…!!///


隆)それ、俺のセリフだから///
♧)え…?
隆)すげぇ美味しそうに食べるから…
  また食べさせたくなる。
♧)……なんですか、それー。
  私、小動物みたい。
隆)…っ、ほんとだww
♧)も〜〜〜〜!w


そう言って頬を膨らませる彼女。


隆)いや、でも…ほんとに。
  美味しそうに食べてんの
  すげー可愛いから…
  絶対また行こうね。
♧)……はい、///


あれ?

小さく俯いた顔が…
ゆっくり上がって、また俺を見た。


♧)あの…
隆)ん?
♧)今市さんのクセ、見つけました。
隆)え!!何?!!


この何分かで!??
俺、なんかした???


隆)な、なんでしょう…
♧)……


ドキドキドキ…


隆)それは、直した方がいいやつ?
♧)……はい。
隆)!!!


ガーーン!!

なに?なに?
なんか俺、嫌われるようなことした??


隆)何なんでしょうか…
♧)それは…
隆)……
♧)……


ドキドキドキ!!!


♧)友達にもサラっと
  「可愛い」って言っちゃうところです!!
隆)……


……へ?


なんか…
ドヤー!みたいな顔してるけど…


はい???


隆)……ダメなの?
♧)えっ
隆)……
♧)……他の女友達にはいいですけど…
  できれば私には、やめてください。
隆)なんで。
♧)…この間も言いましたけど、
  私本当に、男性に免疫がないので…
  ちょっと…その、困るんです…///
隆)……


赤くなった彼女を見て
俺のS心が顔を覗かせる。


隆)じゃあ、♧が可愛い時は
  どうしたらいいの?
♧)はいっ?
隆)可愛い時、たくさんあるんだけど
  どうしたらいいの?
♧)なっ…///
隆)……


また赤くなっていく、彼女の顔。

ヤバい。楽しい。


隆)可愛いのに可愛いって言っちゃダメなんて
  逆に俺が困ります。
♧)////
隆)それに俺、別にこれ
  クセとかじゃないから。
♧)……え?
隆)誰かれ構わず言うわけじゃないし。
♧)…えっと……
隆)♧が可愛いから言ってんの。
♧)////


♧は顔を赤くしたまま、もごもご口を開いた。


♧)私に…っ、可愛いとか言っても…
  何も出てきませんよっ///
隆)あはははw
  残念、なんか出してよw
♧)もぅっっ///
隆)はははw


何も出てこないことないじゃん。

そんな可愛い反応見れるだけで
俺にとっては十分、スペシャル。


隆)……男性に免疫ないって、なんで?
♧)えっ…
隆)普通に彼氏とかいたでしょ?
♧)…っ
隆)いつから彼氏いないの?
♧)……に…っねんまえ…とか…
隆)2年前?
  ふーん…、そっか。


2年も彼氏いないんだ。
引きずってるとか?


♧)私…っ、女子校だったんです!
隆)あ、そうなんだ。
♧)高校も大学も女子ばっかりだったから
  ほんとに…男の人に関わることがなくて…
隆)なるほど。
♧)だから…
隆)……
♧)初めての男友達、すごく嬉しいです♡
隆)……


そんな嬉しそうに言われたら…
なんか…ずるい///


隆)男兄弟とかもいないの?
♧)あ、はい。
隆)一人っ子?
♧)あ…、えっと…はい。
隆)そっかーー
♧)……今市さんは?
隆)俺は兄貴と妹がいる。
♧)わぁ!いいなーー♡
  今市さんの家族の話が聞きたいです♡
隆)えっ?w


彼女が目を輝かせてそう言うから
俺は適当に家族の話をして聞かせた。

どんなネタでも
彼女は本当に嬉しそうに聞いてくれて…


♧)厳しいお父さんだったんですね。
隆)そうだよーー
  ほんと外とかに出されんだから。
♧)ふふっw
  でもお母さんが私と同じ仕事だったのは
  なんだか嬉しいですー
隆)でも、♧みたいな感じじゃないよ?
♧)え?
隆)うちのお母さん、すげぇドライだし。
♧)そうなんですか?
隆)♧は俺の中で
  保母さんのイメージにピッタリだけど
  うちのお母さんはなーー
♧)私、ピッタリなんですか?
隆)うん。癒し系じゃん。
♧)癒し系!?
隆)よく言われない?
♧)……///
隆)……


俺がそう聞くと、彼女は黙り込んで
恥ずかしそうに小さな声で


♧)一度だけ…言われたことあります///
隆)……


その雰囲気でなんとなく
その「一度」を言ったのが男な気がして
俺はそれ以上聞かなかった。


隆)♧の家族の話も聞かせてよ。
♧)…っ
隆)お父さんとお母さん、どんな人なの?
♧)……えっと……


彼女はふわっと笑って
俺の顔を見た。


♧)私、両親いないんです。
隆)え…?


いないって…
どういう…


♧)私、施設で育ったんです。
隆)…っ


彼女は柔らかく笑って
その後を続けた。


♧)本当に小さい時に
  施設の前に捨てられてたらしくて
  だから両親の顔も知らないんです。
隆)……


捨てられてた…?

自分の子供を…捨てたってこと?


♧)あ、でもそんな悲しい話とかじゃ
  ないですよー?
隆)……


何も返せない俺に、
彼女は優しくそう言った。


♧)じゃあ、私の憧れの人の話、
  してもいいですか?♡
隆)え…、憧れの…人?
♧)はい♡


一瞬ドキッとする言葉。


隆)……うん。


キラキラ輝く彼女の目に、
俺は頷くしかない。


♧)その人は…
  必ず月に一回、うちの施設に
  寄付のお金を届けてくれるおじさんで…
隆)……
♧)本当に優しいおじさんで
  みんなそのおじさんのことが
  大好きだったんです♡
隆)うん……


おじさんか。

どこか少しほっとした。


♧)私が捨てられたのは赤ちゃんの時だから
  本当に記憶になくて、
  でも…小学校に上がるくらいの頃には
  なんで捨てられたんだろうって
  そんな気持ちも芽生える年頃になってて…
隆)うん……
♧)そしたらそのおじさんが言ったんです。
  おじさんも赤ちゃんの時に
  同じ場所に捨てられてたんだよ、って。
隆)……
♧)一緒だな、って…笑ってくれて。
隆)……
♧)そのおじさんも私と同じように捨てられて
  同じ施設で育って…
  だから大人になってからも
  寄付のお金を持ってきてくれてたみたいで。
隆)……
♧)いつも笑顔で
  すごくあたたかい人だったんです。
隆)……うん。
♧)だから…私もいつか大人になったら
  おじさんみたいに
  この施設に寄付しようって決めてて…
隆)……だから、それで?
♧)はい♡
隆)……


そうだったんだ。

何も…知らなかった。


♧)施設の子、みんなじゃないですけど…
  やっぱり中には
  学校で虐められちゃう子もいて…
隆)え、なんで?
♧)え…?
隆)なんで虐められんの?
♧)えっと…
  お前親いないんだろー、とか
  施設にいるんだろー、とか…
隆)何それ!!
♧)…っ


なんでそんなんで
虐められるんだよ?!

意味わかんねぇし!!!!


♧)ふふ…っ
隆)……
♧)怒ってくれるんですね。
隆)だっておかしいじゃん!そんなの!
♧)……子供って…
  全然おかしいようなことが
  虐めの原因になったりするんですよ。
隆)……


そんなの許せない。


♧)でも、そんな時
  そのおじさんが言ってくれたんです。
隆)……
♧)私たちもそうだし、世界中の人も。
  肌の色や、髪や瞳の色が違っても
  何一つおかしいことなんてなくて
  みんな同じ人間なのに
  人はそうやって
  偏見を持ってしまったりする。
隆)……
♧)だからお前たちは
  ちゃんと自分の目で真実を見れる大人に
  なるんだよ、って。
隆)……
♧)人生は、親子の愛だけじゃなくて
  いろんな形の愛がある。
  親がいなくても、愛はたくさんあるし
  これから生きていく中で
  色んな愛に出会えるから
  強く生きていきなさいって。
隆)…っ
♧)そう教えてくれたんです…
隆)……


♧は顔をあげて優しく笑った。


♧)施設の子たちは
  みんな仲が良かったし…
  こうやって仲間を思う気持ちも
  一つの愛なんだなって思ったし…
隆)……
♧)そのおじさんが…大切なことをたくさん
  私たちに教えてくれたんです。
隆)……
♧)カッコイイでしょう?
  私の憧れの人♡
隆)……うん、すげぇカッコイイ…
♧)ふふーっ♡
隆)……


そうだったんだ。

♧には家族がいなくて…

でもこうして笑っていられるのは
いろんな愛を、知ってきたから。


さっき俺の家族の話を
すごく嬉しそうに聞いてくれたのも…


♧)だから私、いつか自分の家族を作るのが
  小さい頃からの夢なんです。
隆)…っ
♧)だから…
  今市さんが「いい奥さんになりそう」
  って言ってくれたの…
  お世辞でもすごく嬉しかったです///
隆)…っ


なんか…
なんだろうこの気持ち。


隆)お世辞なんかじゃないよ。
♧)……だったらもっと嬉しいです。
  ふふっ…♡
隆)…っ


お世辞なんかじゃなくて…
本当にそう思ったし

それに…


隆)本当に…


「お嫁に来ませんか。」


また言いそうになった言葉。


♧)なんですか?
隆)……ううん。


そんな軽々しく言っちゃダメだ。

でも…


♧の小さい頃からのその夢を
叶えてあげたいって思った俺の気持ちも
嘘じゃなくて…


♧)今市さん、ビールおかわりしますか?
隆)…ああ、…うん。


俺、好きなんだ。

同情とかじゃない。


ほんとに…


隆)素敵なおじさんだね……


しばらくして俺がそう言うと
♧は誇らしげに笑って見せた。


♧)ふふ…♡
  本当に憧れの人なんです。
  でも「おじさん」って言っていいのか…
  みんなおじさんって呼んでたけど
  全然若くてカッコ良かったんですよー
隆)えっ!!


なんだって?!!


「おじさん」って言うから
足長おじさんみたいなの想像して
完全に油断してたのに…

若くてカッコイイ!!?


隆)す、す、好きなの!?
♧)えっ……
  …そうだなぁ……
  もしかしたら私の初恋かも///
隆)えっ!!!


初恋ってことは…
今は違うよな?

どうなの?

今も好きだったり…


♧)でもそのおじさん、家族がいたし
  奥さんの事、すっっごく大事にしてて…
隆)……ああ…っ


よかった〜〜〜〜〜〜〜


♧)そこがまた素敵でした♡
隆)……


飲み物のおかわりがくると
彼女はニコッと笑って


♧)私の小さい頃の話はもういいですよー
  今市さんの話が聞きたいです♡


そう言った。


♧の話を聞いた後だと
俺なんて、なんてぬるい環境で
育ったんだろうって思うくらい
なんか情けなくなったけど

どんな話をしても
やっぱり♧はすごく嬉しそうに聞いてくれて

そんな姿が可愛くて嬉しくて
なんかすごく癒された。


♧)へ〜〜〜
  じゃあ今市さんはピアノ弾けるんですね!
隆)意外でしょw
♧)はいっ!
隆)あはははw
  俺もね、それはほんと感謝してる。
♧)お母さんにありがとうですね♡
隆)うんw


じゃなきゃ…
LIVEで弾き語りとかすることも
なかっただろうし…


♧)私も感謝してるんです♡
隆)え…?
♧)おじさんに♡
隆)出た!!!w
  おじさんの武勇伝、聞かせてよw
♧)ふふーーっ♡


嬉しそうにドヤるアヒル口が可愛い。


♧)私たち、もちろん習い事なんて
  出来なかったんですけど…
  そのおじさんが、子供たちの側には
  いつも音楽があった方がいいって。
隆)……
♧)音楽は人の心を
  幸せにしてくれるからって。
隆)……
♧)うちに、ピアノを置いてくれたんです。
隆)ええっ!!
♧)だからみんなで交代で使ったり…
  私はもう独学で弾く練習をして…
隆)……すげぇ。
♧)ふふーー♡
  今でもあるんですよ、そのピアノ。
  今も子供たちが使ってます。
隆)すごいな……


なんか…
聞けば聞くほど、なんて素敵なおじさん。


♧)今市さんは今でも弾いたりしますー?
隆)うん、するよ。
♧)いいな〜〜〜♡
隆)……


なんか…
そんなこと言われたらプレゼントしたくなる。

…って、俺は臣か!って。


隆)今さ、友達が…
  彼女の誕生日プレゼントに
  必死でピアノ探してて…w
♧)えっ!ピアノをプレゼントに?!
隆)そう。
♧)……素敵…。
隆)そいつさ、もうほんっっっとに
  彼女のこと好きなのw
♧)へぇ……
隆)で、何色がいいかなーとか
  すげぇ必死に悩んでてw
♧)……ふふっ♡
  彼女絶対喜んでくれますねー♡
隆)うん、そう思う。


そして
そんな♡ちゃんを見て
臣もまた喜ぶんだろうなーー

あーあ……
俺も♧を喜ばせたい。

笑顔にさせたい。


どうやったら君は、笑ってくれる?

何をしたら…喜んでくれる?


早く君の「特別」になりたい。


♧)美味しかったですねーー♡
隆)そうだねw
♧)はぁ…楽しかったなー♡
隆)よかった♡


俺といてそう思ってくれるなんて
めちゃめちゃ嬉しい。


隆)じゃあそろそろ行こうか。
♧)はい。


時間はまだあるし
上のバーに連れていきたいな。

付き合ってくれるかな?


隆)ごちそうさまでしたー
店)またお待ちしております!


店の人に見送られて
そのまま外へ出ると

♧がキョロキョロして、俺の袖を引いた。


♧)今市さん!お会計は?
隆)ああ、済んでるよ。ねぇ、この後さ…
♧)え!!済んでる?!
隆)ああ、うん。
♧)え?!!
隆)……


そんなに驚く?

♧が席を立ってる間に
済ませておいたけど…


♧)いくらでしたか??
隆)えっ


慌てたように財布を出す彼女。


隆)いいって、いいってw
♧)ダメです!!
隆)ほんとにいいからw
♧)…っ


♧が困ったように俺を見上げた。

男に免疫がないなら
こうして奢られることもなかったのかな?

いや、彼氏はいたんだから
それはないか。


隆)いいこと教えてあげよっか。
♧)え…?
隆)女の子はね、お金は出さなくていいの。
♧)……


俺は少し体勢を屈めて
♧の前に顔を近付ける。


隆)こういう時は女の子は
  ありがとう、って
  ほっぺにキスしてくれたら
  それでいいんだよ。
♧)えっ?!!!
隆)知らないのー?
♧)え……


ほっぺむにむにの刑の時みたいに
まるでそれが当たり前みたいな温度で
言ってみる。


隆)それが正解なの。
  はい、どーぞ♡
♧)…っ!??


なんてね。

ほろ酔いな俺の戯言なんて
怒られちゃうかな……




……チュッ!




隆)!!!!!




目を閉じてる間に頬に触れた、柔らかい感触。


♧)あ、ありがとう…ございます///
隆)////


え、え、うそ…っ

嘘でしょ!??


ほんとに…した?!!!


目の前の♧を見つめても
♧はただ、俯くばかり。


隆)今…、何したの?///
♧)何って…、ほっぺに…キス…///

隆)も…、もっかい///
♧)え…?

隆)もっかい…して?///
♧)えっ!///


ドキドキ…ドキドキ…


こんなに胸が高揚してるのは
ほろ酔いだからじゃない。


隆)もっかい、して///
♧)だ、だめです…///
隆)やだ!して!
♧)////




……チュッ


隆)////
♧)////


ねぇ…
これって、そういうこと?

俺、すっごい期待してる。


このまま家にさらって帰りたい。


♧)ごちそう…さまでした…///
隆)////


それは俺のセリフです。


♧)あの……
隆)ねぇ、この後…
♧)私、帰りますね!///
隆)えっ…


エレベーターに向かう♧を
慌てて引き止める。


隆)待って待って。
  もう一杯、付き合ってよ!上の…
♧)帰ります!/// もう遅いし…

隆)帰りは送ってくから!
♧)…っ

隆)だからもう少しだけ…

♧)帰りますっ///
隆)なんで!!

♧)……恥ずかしく…なっちゃったから///
隆)////


え、え、何。

ほんっっっっっっっっとに可愛い。

今すぐ食べちゃいたい。


どうしよう。
もうほんとに…今すぐ抱きしめたくて
身体がすげぇ熱い。


♧)帰り…ます…///
隆)……じゃあ…送る///


すっげぇドキドキして
すっげぇ嬉しくて


バーでの時間を失った代わりにもらった
2回のキス。


それは、俺を舞い上がらせるには
十分すぎて

俺はずっとニヤニヤを隠すのに必死で。


舞い上がりすぎてたから
強気な言葉だっていくらでも出てきて…


1階に着いたエレベーター。


隆)ほんとに…帰るの…?
♧)……(コクン)///

隆)俺は…まだ一緒にいたい。
♧)///

隆)帰っちゃう…?
♧)///


彼女の手を取ってそう言うと
しばらく彼女は俯いたままで…


もう少し…押してみてもいいかな?


隆)まだ、帰したくない。
♧)///


俺がそう言うと…


♧)今日は…帰ります。
隆)……


そう言われて…


これ以上言ったら
さすがにしつこいなって思って
今日は諦めることにした。


だって
「今日は」ってことは
また次があるってことだから。


それに今日の俺は
さっきの2回のキスだけでもう
舞い上がるくらい、嬉しいから。



♧)今市さん、酔ってるんですか…?
隆)うん。


帰りのタクシーで手を繋ぐ俺に
少し困ったようにそう聞いてきた彼女。


酔ってるせいにして
触れていたい。

少しでも、君に。


♧)今市さんってば…お酒弱いんだ…
隆)……


うん。

そんな可愛い誤解、しといてよ。


♧)……
隆)……


繋いだ手から伝わる彼女の温度に
ドキドキはもちろんすれど
なんだかすごく癒されて


さっきのキスを思い出したり
今繋いでる手の温度を噛み締めたり

そんな忙しさに気持ちが追いつかなくて


俺が幸せなのは、この時までだった。



嘘をついて、キスさせた罰?

酔ってるフリをして、手をつないだ罰?


最後に俺は、地の底に突き落とされる。


♧)今市さん、送ってくれて
  ありがとうございました。
隆)うん。


名残惜しくその手を離して
彼女が車を降りようとすると、

彼女の携帯が足元に転がってきた。


♧)あっ…
隆)ああ、落としたよ。


それを拾おうとした瞬間、
画面に映し出されたのは…


♧)わっ///


慌てたように、俺の手から
それを奪い取る彼女。


♧)み、見ました?///
隆)……


言葉が出てこない俺。


♧)恥ずかしい…///
隆)……


そう言って動揺する彼女は
さっき俺に恥ずかしいって言った時とは
全然違って…


そう。
恋する女の顔をしていて…


♧)好きな人なんです///


__その言葉に俺は、


その後なんて返したかも

もう、覚えていない。


どうやって自分の家に帰ってきたかも
よく覚えていない。


彼女の携帯の待ち受けは

彼女と男のツーショット。


一瞬しか見えなかったけど
幸せそうに笑い合う、二人の写真だった。




ー続ー

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