[271]レイコStory ②

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レ)玲司…っ!!
玲)お、来た来たw
 
 
それからあたしはすっかり玲司に懐いて
よくこのコンビニで
昼飯を一緒に食うようになった。
 
 
玲)お前、甘いもんばっか食ってないで
  たまには栄養あるもん食えよ。
レ)うっせ。
玲)貧相な身体になるぞ。
レ)…っ
 
 
玲司は…
どんな女が好きなんだろう…
 
 
レ)胸でかい方がいいの?
玲)ぶっ…ww
  なんだよいきなり!
レ)どんな身体が好きなんだよ。
玲)お前…生々しい質問はやめろ///
レ)…っ
 
 
なんだよ。
年上のくせに照れやがって。
 
 
玲)ほーら、またジャムつけてんぞ。
レ)…っ
 
 
強引に拭われた、口の端。
 
 
玲)ガーキw
レ)////
 
 
いつもこうやって…
子供扱いされて…
 
玲司の目にあたしは
どう映ってるんだろう。
 
 
……ニャーー
 
 
玲)お?!
レ)ねこ!?
 
 
鳴き声が聞こえて振り返ると
 
この間の子ねこが、またそこにいた。
 
 
玲)久しぶりだな〜〜♡
  元気だったかー?
 
 
ニャーー
 
 
レ)あはっww
  可愛い////
 
 
玲司が差し出した手に
すりすりと頬を寄せてる。
 
 
レ)玲司ばっかりずるい…
玲)……お前も手、出してみ…?
レ)…っ
 
 
だって…
きっとまた、怯えるもん。
 
 
玲)ゆっくり…、ほら。
レ)……
 
 
玲司にそう言われて
ゆっくりゆっくり…右手を差し出すと…
 
 
ニャーー
 
 
レ)!!!!!
 
 
子ねこがあたしの手にも
頰ずりしてくれた。
 
 
レ)可愛い…/////
玲)……
レ)すっごく可愛い♡♡
玲)……ぶはっww
 
 
え…?
 
 
玲)あははははww
レ)……
 
 
隣で嬉しそうに大笑いする玲司。
 
 
レ)なんだよ。
玲)いや、ほんと可愛いなってw
レ)うん。
 
 
何言ってんだよ。
 
 
玲)子ねこじゃなくて、お前な?
レ)……は?
玲)お前が可愛いって言ってんの。
レ)……は!?///
 
 
何なんだよいきなり!!
意味わかんねぇし!!
 
 
玲)そんな可愛い顔、
  ねこにしか見せてくんねぇんだなーって…
レ)…っ
玲)あの日からずっと思ってた。
レ)……
 
 
あの日って…
 
 
玲)お前、笑ったら可愛いのに。
 
 
そう言ってあたしの頭を
くしゃっと撫でる、優しい手のひら。
 
 
レ)////
 
 
あたしはそれを、振り払うこともできずに
ただ俯いて、子ねこを撫で続けた。
 
 
 
……
 
 

 
 
 
玲司と別れた後、
行く場所がないあたしはそのままいつもの
溜まり場へ向かった。
 
 
こんな時間に誰もいないだろうと思ったのに…
 
 
レ)……サチ……?
サ)レイコ……。
 
 
そこには一人で海を見ながら佇む
サチがいた。
 
 
あたし達は日差しをさけるように
日陰の防波堤に、並んで座った。
 
 
サ)学校、サボっちゃった…。
レ)…あたしなんて毎日だよ。
 
 
サチはあははと笑った後、
しばらく黙って…
 
あたしの手を、キュッと握った。
 
 
サ)ねぇレイコ……
レ)ん…?
サ)好きな人、いる…?
レ)…っ
 
 
「好きな人」
 
 
その言葉に真っ先に浮かんできたのは
 
さっき別れたばかりの、あいつの顔。
 
 
サ)あたし…
  将史が好きなの…
レ)……え?
 
 
まさ…し…?
 
 
サ)こんなあたしじゃ…
  お荷物になるだけだから…
  気持ちなんて伝えられないけど…
レ)…っ
サ)ずっと好きだったんだ…
レ)……
 
 
知らなかった。
 
サチが…将史を…
 
 
サ)将史、優しいよね…
レ)……うん。
サ)……
レ)ここの奴らは…みんな優しいよ。
サ)うん。
レ)……
 
 
みんな学校では疎まれて
不良だとか言われて厄介者扱いされてるけど
 
本当はみんな…イイ奴なんだ。
 
 
サ)あのね、レイコ……
レ)……
 
 
あたしの手を握ってるサチの手が
今度は少し、震えてる。
 
 
レ)どうした…?
サ)……
レ)……
サ)お母さんが…出て行ったの…
レ)…は……?
 
 
出て行ったって…
 
 
レ)どこに…?
サ)わかんない。
レ)…っ
サ)もう限界だったんだと思う…
  出て行っちゃった…。
レ)…っ
 
 
力なく笑うサチの瞳に、涙がにじんでる。
 
 
レ)なんで…サチを置いて…っ
 
 
娘を捨てて行ったのかよ!!
 
 
サ)仕方ないの…
レ)仕方ないって…
サ)お父さん、帰ってくるの。
レ)え…っ
 
 
あの暴力親父が…?
 
 
レ)警察に捕まったんじゃねぇのかよ!
サ)うん、そうなんだけど…
  ……帰ってくるんだって。
レ)…っ
 
 
くっそ…
そんなクソ野郎、
刑務所にブチ込んでくれりゃいいのに!!
 
 
レ)それで…お母さん…、逃げたの?
サ)うん…、、
レ)…っ
 
 
サチを置いて…?
 
なんで…
 
なんで連れてってやんねぇんだよ。
 
 
サ)でも…これでお母さんが
  自由になったんだって思ったら
  それで…いいんだ…
レ)…っ
 
 
……サチはいつだって
自分のことより人のことを思いやる
優しい子なんだ。
 
 
 
夜、いつものように
みんなが集まってきて…
 
サチの話を聞いて、
みんなが眉をしかめた。
 
 
わかってる。
あの男が戻ってきたら、サチはまた殴られる。
 
 
みんなは…自分の家に避難しろって
次々にそう言うけど
 
長期的に見れば、どれも現実的じゃない。
 
 
レ)……
 
 
あたしは将史を連れて、
みんなの輪から外れた。
 
 
将)どうした…?
レ)……将史。
 
 
あたしは今から…
最低なことを将史に言う。
 
 
でも…
 
でも…
 
あんたを信じてるから…
お願い。
 
 
レ)中学…卒業したら…
将)うん。
レ)働くんだろ…?
将)ああ。
レ)……
将)……
レ)サチのこと…連れてってやってよ。
将)…っ
 
 
あたしの言葉に
将史の顔色が変わった。
 
 
レ)頼むから…
  サチを助けてやって…っ
将)…っ
 
 
しばらく頭を下げ続けると
将史の手がそっと、あたしの肩に触れた。
 
 
将)俺は…お前が…
レ)頼む!!
将)…っ
 
 
知ってるよ。
 
あんたがあたしを
ずっと想ってくれてたことは
知ってた。
 
 
でも…
 
でも…っ
 
 
レ)こんなこと頼めるの…
  将史しかいないから…っ
将)……
レ)頼む…っ
将)……
 
 
あたしが顔を上げると
将史は泣きそうな顔をしていて…
 
 
将)お前は…どうすんの…?
レ)…っ
将)お前だって…
  家に居場所、ないだろ?
レ)…っ
 
 
あたしなんて…
どうだっていい。
 
今はサチを助けたい。
 
 
将)なんでお前が泣くんだよ。
レ)…っ
 
 
将史は優しくあたしの涙を拭ってくれた。
 
 
将)お前のそういう優しいところが
  俺は好きだったよ。
レ)…っ
 
 
そう言って悲しそうに微笑んだ後、
将史は一人でみんなのところへ戻って行った。
 
 
あたしは…
 
あたしは優しくなんかない。
 
 
将史の気持ちを知ってて
こんなこと頼んで…
 
あんな顔をさせて
 
最低だ。
 
 
でも…
 
でも…
 
 
レ)はぁ……
 
 
一人で防波堤にもたれて目を閉じる。
 
 
あたしが今、
ものすごく金持ちだったら
どうしただろう。
 
金があれば
ここにいる奴らみんな、
幸せにしてやれるのに。
 
 
……でも…
金があっても違うのかな。
 
こんな歳じゃ
やっぱり出来ないことの方が多くて…
 
 
子供はいつだって、不自由だ。
 
 
将)レイコーーーー!
 
レ)…っ
 
 
もう空が白み始めてきた頃、
将史が向こうから手を振ってるのが見えた。
 
 
動こうとしないあたしのところに
将史は走ってきて…
 
 
将)ほら、そろそろ帰るぞ。
レ)…っ
 
 
あたしの手を引いて、立ち上がらせた。
 
 
レ)サチは…?
将)今日はあいつらが送ってく。
 
 
そう言われて向こうを見ると
 
もう別の仲間の後ろに乗って
走り出すサチの姿が見えた。
 
 
将)お前は俺が送ってくから…
レ)……
将)最後くらい…、俺に送らせて…?
レ)…っ
 
 
あたしはその言葉に涙が出そうになるのを
必死にこらえて
 
将史の背中にしがみついた。
 
 
ごめんね…
 
ごめんね、将史。
 
 
あたし、あんたのことが好きだよ。
いつも仲間思いで…優しくて…
 
本当に、大好きだった。
 
 
これからも…
いい仲間でいてくれる…?
 
 
将)……
レ)…ありがとう…。
 
 
バイクから降りて、メットを返すと…
 
 
将)そんな顔、すんな。
レ)…っ
将)サチは…俺が面倒みる。
レ)…っ
 
 
そう言った将史は
もう覚悟が決まってる、男の顔をしていた。
 
 
将)だからお前も…
  ちゃんと笑っててよ。
レ)…っ
将)お前が笑ってないと…
レ)笑ってる!!!!
将)…っ
レ)笑ってるから…っ
将)……ばか…w
 
 
将史はあたしの頭を乱暴に撫でると
そのまま片手を上げて、
バイクで走り去って行った。
 
 
ありがとう。
 
ありがとう、将史。
 
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
 
玲)お前は…
  どんな大人になりたいんだ?
レ)…っ
 
 
次の日の昼下がり、
いつものように二人で昼飯を食べ終えると
 
急に突きつけられた質問。
 
 
レ)別になんでもいいだろ…
玲)……
 
 
学校もサボってて
家にもろくに帰ってなくて…
 
早く大人になりたいと言いながら
あたしはろくな大人になれない気がする。
 
 
玲)答えたくないなら
  無視してくれていいけど…
レ)…っ
玲)昼間は学校サボって…
  夜は家にいるのか?
レ)……
玲)親、心配してない?
レ)……
 
 
……うるさい。
 
ほっとけよ。
 
 
玲司が心配してくれてるのは
わかってても…
 
その言葉を素直に聞けるほど
あたしはまだ、大人じゃない。
 
 
玲)なぁ、レイコ…
レ)あーあ、クソジジイがうるせぇから
  今日はとっとと帰ろっと。
 
 
ガコンッ
 
 
空き缶をゴミ箱にぶん投げた。
 
 
玲)待てよ。
レ)うるせーな、離せよ!
玲)レイコ!
レ)離せ!!!!
 
 
あたしは玲司の手を振りほどいた。
 
 
レ)お前に何がわかんだよ!!
玲)…っ
レ)どうせお前なんて
  何も苦労せずに育ったんだろ?
玲)……
 
 
首からそんな
高そうなカメラぶら下げて
 
食べるものに困ったこともないくせに…
 
 
レ)いつもへらへら笑いやがって…
  人のことはほっとけよ!!!
玲)……
 
 
玲司が一瞬、傷ついたような顔をして
でもあたしはそれを
見て見ぬフリをして
 
気付いたら、その場から逃げ出していた。
 
 
 
 
……
 
 
 

 
 
 
 
玲司にひどいことを言って
顔を合わせづらかったあたしは
 
しばらくはコンビニに行かず
 
久しぶりに、学校へ行った。
 
 
相変わらず居心地の悪い教室。
 
あたしの居場所なんてない、疎外感。
 
 
女)わっ…レイコちゃん来てる…
女)怖いね…あっち行こ…
女)うん…っ
 
レ)……
 
 
別に何もしねぇっつーの。
馬鹿馬鹿しい。
 
 
先)おい!お前!!
  久々に来たと思ったら
  なんだその格好は!!
 
レ)うるっせーな……
 
 
廊下で意気揚々と怒鳴りつけてくる先公。
 
 
先)こんな長いスカートを履いて!!
レ)うるせぇ!触んな!!!
先)なんだその態度は!!
レ)いちいちうるせぇっつってんだよ!!
 
 
あたしが睨み上げると
体格のいい男が、偉そうにあたしを
見下ろしてきた。
 
 
先)お前のご両親も可哀想になぁ?
レ)は…?
先)お前みたいな「ハズレ」を引いて
  可哀想にな!!
レ)…っ
 
 
ガシャーーーン!!
 
 
あたしは先公が持ってた荷物を
蹴り飛ばした。
 
 
先)何をする!!!!
  待ちなさい!!!!
 
 
後ろから叫んでくるやかましい声を無視して
 
あたしは走りながら
家に帰ってきた。
 
 
女)あら、レイコちゃん…
  おかえりなさい…
レ)……
 
 
あたしを見るなり怪訝そうなおばさん。
 
 
女)あまり…派手なこと
  しないでちょうだいね?
  ご近所さんの目もあるから…
レ)……
 
 
あたしは無視して、
自分の部屋のドアを閉めた。
 
 
バタン!!!!
 
 
どいつもこいつもうるせぇ!!!
 
 
世間体ばかり気にするおばさんは
あたしにとっては赤の他人で
 
施設にいたあたしが中学に入る前に
この家に引き取ってくれた。
 
 
あたしを引き取ると
おじさんの立場が優遇されるだか何だか
 
夜、二人で話していたのを
あたしは聞いた。
 
 
打算的な大人。
 
 
いつも疎ましい目で見られるくらいなら
施設にいた方が良かった。
 
 
でも…
あたしがいた施設は経営がギリギリで…
 
あたしは仕方なく、この家に来た。
 
 
居心地の悪い家。
 
居心地の悪い学校。
 
 
あたしは今日も、仲間に会いに
いつもの溜まり場へ行く。
 
 
サ)レイコ!!!
 
 
大きな声であたしを呼んで
駆け寄ってきたのは、サチ。
 
 
レ)どうしたの?
サ)聞いて!レイコ!あのねっ////
 
 
嬉しそうに頬を染めたサチが
報告してくれたのは
 
中学を卒業したら
一緒に暮らそうと、将史に言われて…
 
俺がずっと守ってやるから、
 
そう言われたという内容だった。
 
 
サ)あたしもう…嬉しくて…っ
レ)あ〜〜もう…っw
  あんたは喜んだり泣いたり忙しいな…w
サ)だって…////
 
 
良かった。
 
これで良かったんだ。
 
 
将史なら絶対サチを幸せにしてくれる。
 
 
少し離れた海岸では
将史がみんなに冷やかされてる様子が見えて
 
きっと同じ報告をしてるんだろうな…、
そう思った。
 
 
サ)ねぇレイコ…、レイコは?
レ)……え?
サ)この間…あたしから聞いたくせに
  あたしの話で終わっちゃったから…///
レ)…っ
サ)レイコは…好きな人、いるの?
レ)……
 
 
好きなのか何なのか、
自分でもわからない。
 
でも…
 
いつでも頭に浮かぶ、あいつの顔。
 
 
サ)レイコ…?
レ)……
 
 
あたしが答えられずに黙ってると…
 
 
男)レイジさんだ!!!
男)レイジさんが来たぞ!!!!
 
 
男たちが嬉しそうにはしゃぐ声が
こっちにまで聞こえて…
 
 
レ)レイ…ジ…?
 
 
その名前に、あたしの胸は
うるさく音を立て始めた。
 
 
なんで…
 
まさか…
 
同じ名前…?
 
 
こんな時間に…こんな場所に…
いるはずがない。
 
 
でも…あたしは…
あいつの姿を、見間違えるはずもない。
 
 
レ)…っ
 
 
あたしの仲間に囲まれて笑ってるのは
間違いなく、「玲司」だった。
 
 
レ)なんで…あいつが…
  ここにいんの…?
男)え、レイコ知ってんの?レイジさん。
レ)…っ
サ)なんか男前な人だね…///
男)あったりめぇじゃん!
  レイジさんだぞー?w
レ)…っ
 
 
なんで…
 
なんで…
 
 
男)昔はさ、この溜まり場にも
  よくいたらしいよ。
レ)え!??
男)レイジさんがまだ、悪かった頃…ww
レ)…っ
 
 
悪かった頃?!!
 
 
男)レイジさん、めちゃめちゃ強くてさ。
  憧れてるヤツ多かったらしくて…
  男たちの間では伝説として
  語り継がれてんの。
 
 
誇らしげにそう言われても…
全然想像できない。
 
 
レ)だってあいつ…そもそも…何歳なの?!
男)あいつって…w
  お前、あのレイジさんを
  あいつ呼ばわりしたら
  ぶっ殺されっぞ?w
サ)え、そんな怖い人なの?
男)いや、嘘w
  女と子供には、めちゃめちゃ優しい。
  あ、あと、ねこ!!w
レ)ねこ…?
男)ねこっていうか、動物かな?
レ)…っ
 
 
やっと、あたしが知ってる玲司と
少しだけ一致する。
 
 
男)俺らってさ、結構…
  ワケありな家の奴が多いじゃん?
レ)……うん。
男)でも…レイジさんが言ってたんだって。
レ)……
男)「親を、自分の人生の言い訳にするな。」
  って…
レ)…っ
 
 
……その言葉に、
頭を打たれたような気がした。
 
 
あたしは…
 
 
男)自分の人生は、自分のもの。
  途中で諦めるな、
  這いつくばってでも生きろ、って…
  いつもそう言ってたんだって。
レ)…っ
サ)なんかカッコイイ人だねぇ♡
男)レイジさんの武勇伝なら
  まだまだあんだぜ??
 
 
話を聞きながら…
あたしは遠くにいる玲司から
視線を外せずにいて…
 
 
すると
 
玲司がこっちを見て、
こっちに向かって歩いてきた。
 
 
サ)え、え、レイジさんこっち来るよ!///
男)おぅええええ?!////
 
 
すっとんきょうな声を出す仲間の横で
あたしはただ、立ってるしか出来なくて…
 
 
玲)見つけたw
レ)…っ
 
 
いつもと同じように笑う玲司。
 
 
玲)こいつ、借りてっていい?
男)は、は、はいっ!////
玲)サンキュ…w
レ)////
 
 
頭にポンと乗っかった、大きな手のひら。
 
バクバクと壊れそうな、あたしの心臓。
 
 
あたしは玲司に手を引かれて
足をもつれさせながら
砂浜を歩いた。
 
 
 
玲)ふぅ……
 
 
しばらくすると玲司はあたしの手を離して
自分が着てた革ジャンを、砂の上にひいて
その横に腰をおろした。
 
 
レ)……
 
 
ここに…座れってことかな…。
 
 
あたしが突っ立ったままでいると
手をグイッと引かれて
 
革ジャンの上にぺたんと、座らされた。
 
 
玲)こんな時間にこんなとこで…
  相変わらずヤンチャだなー?w
レ)////
 
 
玲司がクスクス笑ってて
あたしはその目を見れない。
 
 
だってきっとまた…
あの柔らかい優しい瞳で
あたしを見てるんだ。
 
 
どうしよう…
 
この間言ったこと…
謝らなくちゃ…
 
 
そんな思いと、今さっき聞いた
思いがけない玲司の話で
 
頭の中は混乱してて…
 
 
繋がれてる手まで、心臓になったように
ドキドキ、バクバク、わけがわからない。
 
 
玲)全然コンビニ来ねぇじゃん。
レ)…っ
玲)ちゃんと…食ってんの?
レ)……
 
 
あたしが来るの…待ってたの…?
 
 
玲)……
レ)……
 
 
……そっと離れた手と手。
 
 
玲司は夜空に向けて、シャッターを切って…
 
 
玲)星、綺麗だよなーー
レ)…っ
 
 
そう言って、そのまま後ろに寝転んだ。
 
 
レ)砂、つくよ…
玲)いいじゃん。
レ)……
玲)この空、見ない方がもったいない。
レ)……
 
 
そう言われて…
あたしも革ジャンを枕に、寝転がった。
 
 
玲)素直じゃん…w
レ)……///
 
 
普段、見上げることなんてない夜空は
玲司の言う通り、星が綺麗に輝いてる。
 
 
玲)俺…さ、、
レ)……
玲)このカメラ、盗んだの。
レ)……えっっ!!!
 
 
その言葉に、あたしは思わず飛び起きた。
 
 
レ)盗んだって…
 
 
いつも首からさげてる、高そうなカメラ。
 
嬉しそうに色んなものを撮ってるのを、
いつも隣で見てた。
 
 
玲)一郎さんがさ、
  今の俺みたいに…こうやって
  砂浜に寝転んでたんだ。
レ)……
 
 
イチローさん??
 
 
玲)俺は、いつもカメラを持って徘徊してる
  一郎さんのことは知ってて。
レ)……
玲)いつも楽しそうに…嬉しそうに
  色んな写真撮ってるから
  羨ましくて。
レ)……
玲)俺も撮ってみたくて、
  いつも撮りたいアングルを見つけては
  こうやって、真似してたの。
 
 
玲司はそう言って
両手で長方形を作って、あたしを覗いた。
 
 
玲)でもある日、一郎さんが
  俺が喉から手が出るくらい欲しいコイツを
  横に置いて、居眠りなんかしてるから
  俺は今しかないと思って…盗んだわけ。
レ)…っ
 
 
玲司がニヤッと笑った。
 
 
玲)そのまま持ち去ろうとしたら
  一郎さんは目を閉じたまま言ったんだ。
  「お前が撮りたいものを撮って
   1ヶ月後、またここに来い。」って。
レ)え…っ
玲)俺は…意味がわかんなくて…
  カメラを手に取ったままオロオロしてて…
  そしたら一郎さん、
  「早く行かないと俺は起きるぞーー
   盗まれたことに気づくぞーー」ってww
レ)なんだよそれ…っww
 
 
思わずあたしも爆笑した。
 
 
玲)よくわかんないけど
  念願のコイツを手にした俺は
  それから夢中で写真を撮りまくったわけ。
レ)うん。
 
 
あたしは気付けば玲司の話に
夢中になっていた。
 
 
玲)ずっと撮りたかったもん、色々撮って…
  毎日コイツを持ち歩いて。
レ)うんっ。
玲)で、1ヶ月後、約束通り
  盗んだ場所に戻ってきたんだ。
レ)うん…
 
 
ドキドキ…
 
 
玲)そしたら…
  一郎さんが、俺が撮った写真
  全部見てくれて…
レ)……
玲)お前は才能があるから
  真剣にカメラを始めろ、って
  そのままコレを、俺にくれた。
レ)イチローさん、すっげぇ!!///
玲)だろー?w
レ)かっけぇ!!!///
 
 
話を聞いてるだけで
あたしまで興奮してきた。
 
 
玲)で、中学卒業と同時に
  俺を引き取ってくれて…
  高校は行っておいた方がいいって
  学費まで出してくれて…
レ)…っ
 
 
引き取って…くれて…?
 
 
玲)今年やっと高校を卒業して
  カメラで仕事ができるようになって
  すげぇ楽しいんだ。
レ)…っ
玲)これからガンガン稼いで
  一郎さんと華子さんにも
  恩返ししたいし。
レ)……
 
 
あたしは恐る恐る、玲司に聞いた。
 
 
レ)その人たち…
  本当の…お父さんとお母さんじゃ…
  ないの…?
玲)……
レ)……
玲)そうだよ。
レ)…っ
 
 
あたし…
 
あたし…
 
 
玲司に…ひどいことを…
 
 
玲)中学までは俺、施設にいたんだ。
レ)…っ
 
 
あたしと…一緒…?
 
 
玲)今は二人に世話になったままで…
  一緒に暮らしてる。
  こんな俺を引き取ってくれて
  本当に感謝してるし、
  絶対恩返ししたいんだ。
レ)…っ
 
 
あたしは…
何も知らずに…
 
 
ひどいことを、玲司に言った。
 
 
レ)ご…め…っ
 
 
涙で…言葉が出てこなくて…
 
 
そんなあたしにすぐ気付いた玲司が
慌てて起き上がった。
 
 
玲)なんで泣いてんだよ!!え?!!
 
 
焦ってあたしの肩を掴む、優しい手。
 
 
玲)え、え、なんで…っ
レ)…っ
 
 
何も苦労しないで
平和に育ったんだと思ってた。
 
高そうなカメラ持って
のんきでいいなって…
 
 
レ)ひどいこと…言った…っ
玲)…っ
レ)ごめ…な…さっ…
玲)泣くなって…!!
レ)…っ
 
 
ぎゅっと抱きしめられた腕の中は
玲司の匂いと潮の匂いでいっぱいで…
 
 
あたしは、初めて男に抱きしめられて
その力強さを…
 
生まれて初めて、体で知った。
 
 
レ)あた…し…っ
  ……あ…たし…っ
 
 
自分が嫌いだ。
 
 
レ)最低だ…っ
玲)最低なんかじゃないよ。
レ)…何も知らないで…
  玲司を…傷つけた…っ
玲)…俺は傷ついてないよ。
レ)…っ
 
 
なんでそんな…優しいんだよ……
 
 
レ)傷ついた顔、しただろ!!
玲)…っ
レ)あたしが…っ
  ひどいこと…言って…
玲)……
レ)あたしは最低なんだよ!!
玲)…っ
 
 
もう、どうしていいかわかんないんだ。
 
 
レ)早く…大人になりたい。
  なりたいけど…っ
 
 
涙がボロボロこぼれてくる。
 
 
レ)あたしなんかが
  まともな大人になれるわけねぇって…
 
 
いつも不安で…苦しくて…
 
 
レ)親に捨てられたからだって…
  親が悪いんだって…
  いつもそう思ってた。
玲)…っ
レ)いつもいつも…
 
 
そう思って…生きてきたのに…
 
 
「親を、自分の人生の言い訳にするな。」
 
 
そんなこと言われたら、逃げ場がない。
 
それを言い訳にしてた自分に、
気付かされる。
 
 
玲)お前も…本当の親じゃないの…?
レ)…っ
 
 
だって…
 
だって…
 
 
レ)父親はあたしを捨てて出て行った。
玲)…っ
レ)顔も知らない…っ
玲)……
レ)あたしが小さい頃に出て行って
  そのせいで母親は酒ばかり飲んで…
 
 
お前は父親に捨てられたんだ
捨てられたんだ!!
 
何度も母親から繰り返された言葉。
 
 
自分も捨てられたくせに
それをあたしにぶつけるように
 
毎日、毎日、言われ続けた。
 
 
レ)あたしは…いらなかったんだって…
  捨てられたんだって…
  毎日思ってた。
玲)…っ
レ)小学校に入ったばかりくらいで
  あたしは施設に入れられて…
 
 
それから、母親が迎えに来ることは
一度もなかった。
 
 
連絡が取れなくなった母親に
施設の人も困ってて…
 
捨てられたんだと噂された。
 
 
レ)あたしは…二回捨てられたの…っ
玲)……
 
 
生まれてこなきゃ良かった。
 
何のために生まれてきたんだろうって
何度もそう思った。
 
 
レ)中学に入る前に…今の家の人が
  あたしを引き取ってくれたけど…
 
 
玲司の家の人とは全然違う。
 
 
レ)……
 
 
そこから喋れなくなったあたしは
ずっと…ぎゅっと…
玲司に抱きしめられてた。
 
 
玲)居場所…ない…?
レ)……(こくん)
 
 
あたしは泣きながら頷いた。
 
 
居場所なんてない。
 
ここで仲間たちとたむろしてても
やっぱりどこか寂しくて…
 
あたしはずっと、孤独だった。
 
 
レ)あんな親の元に…生まれたからだって…
玲)……
レ)あんな親のせいだって…
  ずっとそう思ってたのに…っ
玲)……
レ)親を…自分の人生の…
  …言い訳にするなって…、…っ
玲)…それ…、、
レ)あたしは言い訳にしてたの?!
玲)…っ
レ)もうどうしたらいいのか
  わかんねぇよ!!!
玲)…っ
 
 
玲司にぶつけたって仕方ないのに
あたしはバカみたいに泣きじゃくって…
 
 
レ)みんなそうだよっ!
  ここにいる奴ら…みんなみんな…
  親のせいでっ…
 
 
暴力を受けたり…
まともに飯が食えなかったり…
 
 
レ)子供は親を選べないんだっ!!
  
 
みんな…みんな…
孤独と戦ってる。
 
 
レ)……本当は…っ
 
 
喉が詰まって…
また涙が溢れてきた。
 
 
玲)……
 
 
ぎゅっと抱きしめてくれた、
玲司の腕。
 
 
レ)本当は…、…愛されたかった…っ
 
 
初めて…本音が言葉になって
口からこぼれた。
 
 
レ)あたし…っ、ほんとは……
 
 
愛してくれる、両親が欲しかった。
 
 
なんであたしは捨てられたんだろうって…
 
何度考えても
答えなんてなくて…
 
 
ただただ、愛されたかっただけなのに…
 
そこらへんの奴らが
当たり前に与えられてる愛情を
 
あたしは誰からも、もらえなかった。
 
 
レ)うう…っ、…、っ
玲)……
 
 
玲司は黙ってあたしを抱きしめながら
ずっと、頭を撫でてくれてた。
 
 
初めて…
自分の心の底にある、本当の気持ちを
誰かに話した。
 
 
なんで…それが玲司だったんだろう。
 
 
答えはきっと簡単で、
 
 
玲司がそれだけ
あたしの中でもう
 
特別な存在になってたんだ。
 
 
玲)お前はまだ中学生だろ…?
レ)…っ
玲)生きてく上で出会う愛は、
  家族の愛だけじゃないよ……
レ)……
 
 
玲司の声が…ゆっくり優しく
耳の中に…スゥーーッと
 
入ってくる。
 
 
玲)血の繋がりなんかより…
  大事なのはお互いに想い合える、
  心の絆だって、俺は思ってる。
レ)……
 
 
心の…絆…?
 
  
玲)大丈夫。必ず出会うから。
レ)…っ
玲)いろんな形の愛が…待ってるから。
レ)……
 
 
玲司がそう言うと…
そんな気がしてくるのはなんで…?
 
 
玲)親を自分の人生の言い訳にするな、
  ってのはさ…
  もったいないじゃん、って意味。
レ)……え?
玲)自分の人生は誰かのせいで不幸なんだって
  そんな風に思いながら生きてくのって
  すげぇもったいないじゃん?
レ)……
玲)どんな形であれ…
  自分がこの世に生まれて
  こうして生きてるのに、さ?
レ)……
玲)だから…
  誰かの存在を言い訳にするんじゃなくて
  這いつくばってでも…
  自分の人生、自分で切り開いていけたら
  きっと違う世界が見えてくるよ。
レ)……
玲)中学生の世界は…まだ狭い。
  俺もそうだった。
  でも、まだまだ世界は広いから…
  可能性は無限だから…
  人生を諦めるな。
レ)…っ
玲)自分を諦めるな。
レ)…っ
  
 
一つ一つの言葉が力強くて…
あたしの心を守ってくれるみたい。
 
 
あたし…
変われるのかな…
 
 
玲司の言う通り、違う世界が見てみたい。
 
あたしはまだ、あたしを
諦めたくない。
 
 
そしていつか、玲司が言ってくれたみたいに
もし誰かが
あたしを愛してくれるなら
 
 
あたしはそれは、玲司がいい。
 
 
 
玲司が好き。
 
 
玲司に、愛されたい。
 
 
 
 
あたしは玲司に抱きしめられながら
そんなことを願ったんだ。
 
 
 
 
 
 
ー続ー

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コメント

  1. あやらん より:

    ・・・レイコさんとレイジさんの話好きすぎる・・・もう、これで長編でも見たいくらい好き!←

    • マイコ より:

      おおおお。゚(゚´ω`゚)゚。嬉しい…
      ありがとうございます!!!

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