[358]真冬の朝(Jさん&MちゃんSide)

スポンサーリンク
スポンサーリンク

結局あれからも
Jさんは私を抱いてくれないままで…
 
私は頑張ってジムに通い詰めたけど
落とせたのはたった1kgだけ。
 
 
お腹のお肉を恨みながら呪いながら迎えた
仕事納めの22日。
 
 
忘年会の準備でバタバタしてて
たまたまTさんと
遅めのランチをご一緒したら…
 
 
「Mちゃんはどうなの?恋愛事情。」
 
 
なんて聞かれて。
 
何もないですって
サラリとかわしたはずだったのに…
最後の最後で…、、
 
 
T)ケーキ注文ありがとね。
  Jさんと食べるんでしょ?w
M)な、えっ…、ど、どうし…っ
  えっ…、ど…っ///
T)じゃーねw
 
 
Tさんは笑いながら戻っていって…
一人残された私は、完全にパニック。
 
 
どうして?なんで?
Jさんは誤魔化してくれたんだよね?
可愛い女の子と食べる、って。
 
なのにどうしてバレるの!?
 
 
M)…っ
 
 
Jさんには絶っっ対に迷惑かけたくないから
誰にも言ってなかったのに…
 
まさかのTさんにバレるなんて…
 
 
あ、でも…!
私たちの関係がバレたわけじゃないよね!?
 
たまたまケーキだけ一緒に食べるってことで
まだ全然ごまかせるはず…!!
 
 
……なんて思ってたのに。
 
 
忘年会の会場に向かう道中で…
 
 
J)さっきTくんに
  Mちゃんと付き合ってるんですか?
  って聞かれちゃったーw
 
 
なんて、呑気に笑ってるJさん。
 
 
M)な、な、なんて答えたんですか!?
J)さぁねーーってw
M)そ、それだけですか!?
  それ以上何か聞かれました?!
J)ううん。
M)…っ
 
 
どうしよう。
大丈夫なのかな。
何か勘付かれてるのかな。
 
 
J)なんでそんな深刻な顔してるのw
M)だって…、
J)「Jさんに迷惑かけたくないから」。
M)!!!
J)また見えちゃった、思考回路…w
M)…っ
 
 
Jさんはクスッと笑って
私の背中を優しく叩いた。
 
 
J)言っとくけど俺、迷惑とかじゃないから。
M)え…?
J)Tくんにバレたとしても。
M)…っ
J)Tくんだけじゃなくて、
  誰に知られても別に迷惑じゃないよ。
M)…な、何言ってるんですか…っ!
  そんなの…っ
  Jさんの株が大暴落しちゃうから
  絶対ダメです!!!
J)はいー?w
M)私なんかと噂になるなんて…
  絶対にダメです!!
J)俺がいいって言ってんのに?w
M)ダメです!!!
 
 
先輩とかKさんとか
それくらいの女性と噂になるなら
何も問題ないけど…
 
Jさんほどの人が
私みたいな女と噂になるなんて
イメージダウンでしかないもん!!
 
 
M)……はっ!
 
 
てゆーか!
こんな一緒に会場に向かってるのも
良くないんじゃ…!!
 
 
M)私、先に行きますねっ!!
J)えー?
M)失礼します!!
J)普段散々ランチとか行ってるのにー?
  今更じゃない?
M)…っ
 
 
ほんとだ!
そういうのもやめた方がいいのかな?
 
何もない時なら良かったけど
Jさんとこういう関係になった以上、
火のないところに煙は……、
みたいになっちゃう!!
 
 
J)だーかーらー。
  俺は気にしないってば。
  はい、行くよ。
M)…っ///
 
 
Jさんは逃げようとした私を捕まえるように
ぐいっと肩を抱き寄せてくれた。
 
 
それから会場に着いて
すぐに忘年会が始まって。
 
私たちは出し物の準備で
浴衣に着替えたり色々バタバタで。
 
 
ステージは予想通り、大成功。
 
二曲目の三人が歌い終わった時の歓声なんて
本当にすごかったんだから。
 
 
鬼)はぁ、緊張したわーー///
猿)でも思ってたより楽しかったかもw
多)スカッとしましたね!w
M)あはははw
  お疲れさまでしたーー♡
 
 
それから恒例の写真撮影を終えて、
そろそろ着替えようかと会場を出たら…
 
 
M)げ。
 
 
Tさんが営業の女たちに囲まれてて…
 
Tさんに置いていかれたその人たちは
私を見つけるなり
嫌な顔をしてニヤッと笑った。
 
 
女)あー、目立ちたがりのぶりっ子女だーw
女)わざわざ浴衣まで着てお疲れさまーw
M)……どーも。
女)自分から引き立て役になるなんて
  あんたドMなのー?w
M)は?
女)姫とKとステージに上がるとか
  度胸あるよね〜、毎回w
女)完全に一人だけ引き立て役でしょw
M)そうですよーー
  それでなんか文句あります?
女)別にーーw
  かわいそーって思っただけw
M)同情していただかなくても結構です。
  別に私、可哀想でもなんでもないんで。
女)ブスが調子乗るなって言ってんのw
女)身の程わきまえろよw
M)調子になんか乗ってません!
  私がブスなことなんてわかってるし。
  それであんた達に迷惑かけたわけ!?
  顔がブスなことよりあんた達みたいな
  性格ブスな方がよっぽど公害でしょ!
女)はぁ!??
女)ムッカつく、何こいつ!
M)話してる時間さえ無駄なんでさようなら。
女)はぁ?!!
女)ふざけんな!!
 
 
女たちの声を無視して
着替えに行こうとしたら、
 
 
J)ぶくくくw
 
 
階段の横から、
Jさんの声が聞こえて思わず足を止めた。
 
 
J)カッコイイねぇ、相変わらずw
M)えっ…
 
 
まさか今の、聞かれてた?
 
 
J)Mちゃんは可愛いよ。
M)……、は?…え?
 
 
思いがけない言葉に
まぬけな声が出ちゃった。
 
 
J)Mちゃんは可愛いよ。
M)……は…い…?
J)Mちゃんは可愛いよ。
M)…っ
J)Mちゃんは可愛いよ。
M)!??///
J)Mちゃんは…
M)ももももういいです!///
  それ以上言わなくていいです!!///
J)あはははw
M)////
 
 
またからかわれてるのかな、もう///
  
 
J)だってMちゃんって
  謎に自己評価低いからさぁ〜〜
  ちゃんと言っとかないと。
M)……慰めてもらって
  ありがとうございます…///
J)……だからそうじゃないって。
M)!!!
 
 
Jさんの声がいきなり真剣になって…
 
ま、ま、また…っ
壁ドンされてるんですけど!!!
 
 
M)あ、あの…っ///
J)Mちゃんは可愛いから。
M)…わか、わかりました…から…
  あの…っ///
 
 
距離が近すぎて、顔を上げられない。
 
 
J)この浴衣も可愛いね。
M)え…?
 
 
Jさんの声のトーンが
いつもの明るい感じに戻ったから
ふと顔を上げたら…
 
 
J)似合ってるよ。
 
 
とびきりの笑顔で微笑むJさんが
すぐ目の前にいて…
 
 
M)////
 
 
私は自分の顔が一気に赤くなるのが
わかった気がした。
 
 
J)なんでこんな顔赤いの…?
M)////
 
 
それは…Jさんのせいで…
 
 
J)熱ある?大丈夫…?
 
 
そう言ったJさんが前屈みになって…
近すぎた距離がゼロになりそうで…
 
ま、ま、まさかこれは…
給湯室の時と同じ…っ
 
 
チュッ。
 
 
M)!!!///
 
 
おでこに触れた、柔らかい唇。
 
 
J)熱はないみたい。良かったw
 
 
悪戯に笑うJさん。
 
 
M)////
 
 
やっぱり…給湯室アゲインだった。
顔がシューシューする…///
 
 
M)こんな…ところ…っ
  誰かに見られたら…
J)だから誰に見られても
  俺は困んないって言ってるじゃん。
M)…っ
 
 
どうして…
 
 
J)あ、ごめんね。引き止めて。
  浴衣着替えるんだよね?
M)あっ、はい…
J)手伝おうか?
M)え?
J)着替え。
M)え?
J)脱がせてあげようか?
M)え?
 
 
……それって…
 
 
M)あ、あの、自分で出来ます!!
  大丈夫です!!///
J)あはははw
 
 
私はJさんの腕をすり抜けて
急いで着替えの部屋まで走った。
 
完全にからかわれてる。もうっ!///
 
 
脱がせてあげようか?なんて…
最近全然抱いてくれないくせに…
 
 
M)////
 
 
……って、私何言ってるんだろう。
 
 
そもそも抱いてもらってただけでも
とんでもなくありがたい話なのに…
 
まるで拗ねてるみたい。
 
 
でも…
でも…
 
 
私がしたい時は…してくれるって…
そういう約束だったのに…
 
 
M)////
 
 
どうしてなのかな…。
 
私からちゃんとお願いしたら
また抱いてもらえるのかな。
 
 
Jさんが何を考えてるのか
全然わからなくて…
 
……少し苦しい…。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
会場に戻ってしばらくすると
最後の契約書を無事回収したTくんが
遅れてやってきて。
 
あっという間にみんなに囲まれて
嬉しそうに笑っていた。
 
 
今月相当頑張ってたもんなぁ。
全部やりきったいい笑顔をしてる、うん。
 
 
M)あ、Jさん。
J)はい。
M)え、持ってきてくれたんですか?
J)うん。おかわりいるかなーって。
M)ありがとうございます…///
 
 
新しいカクテルを渡すと
Mちゃんははにかみながら俯いた。
 
 
M)今月、Tさんが1位になったんですね。
J)そうなんだよー。
  すごいよね、Tくん。
  この俺を抜くなんて。
M)あはははw
J)慰めてくれるー?
M)えっ…
 
 
Mちゃんの耳に顔を近付けたら
彼女はまた顔を真っ赤にして俺から逃げた。
 
 
M)な、慰めるって…///
J)Tくんに抜かれちゃってさー
  ショック受けてるから。
M)……。
 
 
俺がそう言うと
彼女は俺の顔をじーっと見て。
 
 
M)ふふ、嘘ばっかり、Jさん。
J)え?
M)そんな顔、してないですよ?
J)……じゃあどんな顔してる?w
M)清々しい顔。
J)……。
M)本当は…Tさんが抜いてくれるの、
  待ってたんじゃないですか…?
J)……。
 
 
驚いたな。
管理職の話は誰にもしてないから
彼女は知るわけがないのに…
 
 
J)なんでそう思うの?
M)なんとなくです。
 
 
そう言って彼女は柔らかく笑った。
 
 
J)……。
 
 
よく見てるねぇ、俺のこと。
 
まぁ俺に限らず。
彼女は周りをよく見てるんだよな、いつも。
 
 
J)じゃあ慰めてくれないの?w
M)えっ…
J)残念だなーー
M)////
 
 
わざと距離を詰めたら、また赤くなって。
 
 
J)ほんと可愛いね?Mちゃんw
M)あ…のっ、からかわないでください///
J)からかってないってw
M)…っ
J)ほんとに可愛いんだもん。
M)////
 
 
……ああ、帰したくないな。
 
 
J)今日は来る?
M)…えっと…、
J)おいでよ。
M)////
 
 
彼女は少し困ったように俺を見上げて…
 
 
M)いいんですか…?///
 
 
少し目を潤ませて
ためらいがちに動いた唇に、
なんだかグッときた。
 
 
J)いいよ?
M)……じゃあ…行きたいです///
J)じゃあ一緒に帰ろ、終わったら。
M)……(こくん)///
 
 
ああ、可愛いな…。
 
彼女を抱かないって決意が
揺らぎそうになる。
 
 
それから忘年会は
社長の締めの挨拶で、お開きになって。
 
二次会、三次会と顔を出して
時計を見たら
もう0時をまわってた。
 
 
Mちゃんが誰にも見られたくないって言うから
裏通りまで移動して、タクシーを呼んで
二人でそこへ乗り込んだ。
 
 
J)明後日、ディナーは予約してるけど
  他に行きたいところある?
M)えっ…
J)どこでもいいよ?車だし。
M)…Jさんと一緒なら…
  どこでもいいです///
J)またそんな可愛いこと言ってw
M)はっ!違いますからね!?///
  Jさんのこと…
J)好きとかじゃないですからねっ!
 
 
Mちゃんの口ぶりを真似して
俺が先に言うと、
Mちゃんは目を丸くした後に笑い出した。
 
 
J)イルミネーションでも見に行く?
  ありきたりかなー。
M)見たいですっ!///
J)え…っ
 
 
力強い返事に、隣を見たら…
Mちゃんは本当に嬉しそうに
目を輝かせてる。
 
 
J)見たいの?w
M)はいっ!
 
 
そんなありきたりデートでいいのかな?w
 
 
M)どうしよう…すごく楽しみ…///
 
 
Mちゃんは嬉しさを
抑えきれないといった感じで
両手をほっぺに当てて
もじもじニコニコしてる。
 
 
J)……。
 
 
可愛いな…///

 
きっと頑張って
オシャレしてくるんだろうなぁ…
 
……ほんと愛しいな。
 
 
運)こちらでよろしいですか?
J)はい、ありがとうございます。
 
 
家に着いて二人でタクシーを降りて。
 
寒そうに息を吐く彼女の手を握ろうとしたら…
 
 
メ)Jくんっ!!///
 
 
聞き覚えのある声が、俺たちの足を止めた。
 
 
J)……メグ…ちゃん。
 
 
マジか。
また来たの。
 
 
メ)あたしやっぱり、Jくんじゃなきゃダメ。
J)その話はこの間終わったでしょ?
 
 
いつからいたんだろ。
こんな時間にいるって、ヤバくない?
 
 
俺はMちゃんを庇うように一歩前へ出た。
 
 
メ)あたしの中じゃ終わってないの!
J)そう言われてもねーー
メ)……彼女なの…?
 
 
メグちゃんの視線が
俺から後ろへ移動した。
 
 
J)そう。彼女。だからごめんね?
メ)…っ
J)今はこの子だけだから。
メ)…っ
 
 
俺の言葉に、メグちゃんの目には
みるみる涙がたまっていって…
 
 
メ)やだ…っ!!絶対やだ…!!
 
 
泣きながら抱きつこうとしてくるから、
俺はそれを止めるように
彼女の腕を掴んだ。
 
 
メ)好きなの!Jくんじゃなきゃやだ!!
J)俺が好きなのはこの子だから。
メ)…っ、二番目でいいから…お願い。
J)そんな話、彼女の前でやめてくれる?w
メ)…っ
J)二番目でいいとか
  簡単に言っちゃダメだよ。
  もっと自分大事にして。ね。
メ)だってそれくらいJくんが
  好きなんだもんっ!!
 
 
困ったなーーー
全然引き下がってくれないなーーー
 
 
メ)あなた、諦めてよ!
 
 
はい?????
 
 
メ)あたしはJくんじゃなきゃダメなの!
  あなたが引いてよ!!
 
 
無茶苦茶だな、おい…
 
 
M)私は…、
メ)Jくんすごく優しいでしょ?
  一度でも抱かれたら
  もう離れられなくなっちゃうでしょ?
M)…っ
J)ちょっと、メグちゃん。
メ)あたしはもうダメなの!
  Jくんじゃなきゃダメなの!
J)ちょっと!
メ)今更他の人なんて考えられない!
  こんな身体にしたの、Jくんでしょ!
 
 
……そんな大袈裟な…。
 
 
J)あのさ…、
M)私、帰ります…。
J)えっ…
メ)やっとわかってくれたの?ありがとう。
  もうJくんに近付かないでね!
J)いやいや、ちょっと!
 
 
俺はしがみついてくる
メグちゃんの腕を振り払って
Mちゃんを追いかけた。
 
 
J)Mちゃん!待って!!
メ)行かないで!!
J)…っ、離して!!
メ)いや!離さない!!!
 
 
そうこうしてる間に
流れてきたタクシーに乗り込む
Mちゃんの姿が見えて…
 
 
J)…っ
 
 
……間に合わなかった。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
現実から目を背けるように
携帯の電源を切って
 
気がついたら、窓の外が
うっすら明るくなってきてて…。
 
 
M)……。
 
 
私、いつからここに座ってるんだっけ。
どうやって帰ってきたんだっけ。
 
ソファーの上でボーッとしたまま
そんなことをぼんやり考える。
 
 
……とりあえずシャワー浴びようかな。
メイクも服も、全部そのままだし…。
 
そう決めて、重たい腰を持ち上げて
洗面所に向かった。
 
 
M)……。
 
 
ほんとにブスだなぁ、私…。
 
鏡に映った自分を見て、嫌になる。
 
 
服を脱ぎ捨てたら、余計に醜い姿が
鏡に映し出されて。
 
 
M)はぁ……。
 
 
力無いため息をついて、
シャワーの蛇口をひねった。
 
 
………あの女の人はモデルさん。
雑誌で見たことがある。
 
すごくスタイルが良くて、美人で。
 
 
やっぱりJさんは
ああいう人たちと遊んでたんだよ。
 
私みたいな女なんて
本来、相手にもされないはず。
 
 
M)……。
 
 
私も先輩みたいに可愛かったら、
もっと違ったのかなぁ…。
 
 
あんなに可愛くて、スタイルも良くて。
いつもいい匂いがして、
ふわふわ柔らかそうで。
 
女の私でも、抱きしめたくなる。
 
 
もしも私が先輩だったら
あのモデルの人にも
立ち向かえたのかな。
 
……って、何言ってるんだろう、私。
 
立ち向かうも何も、
私の気持ちは隠さなきゃいけないんだから。
 
 
あ、でも…っ
もしも私が先輩だったら
隠さなくてもいいんだ。
 
堂々とJさんに好きって言っていいんだ。
 
 
M)…っ
 
 
いいな…。
……羨ましい…。
 
 
どんなに頑張っても…
私のウエストは大してくびれないし
顔だって普通だし…
 
 
M)はぁ……。
 
 
何回目だろう、こんなため息。
もう嫌になる…。
 
 
「Jくんすごく優しいでしょ?
 一度でも抱かれたら
 もう離れられなくなっちゃうでしょ?」
 
 
あの人にも…優しくしたんだよね…。
 
 
「今更他の人なんて考えられない!
 こんな身体にしたの、Jくんでしょ!」
 
 
そんな風に思うほど…
きっとJさんと…何度も…、、
 
 
M)…っ
 
 
……なんで私、泣いてるの?
変なの。
 
Jさんが遊んでたことなんて知ってるのに。
 
 
……でも…
その相手が目の前に現れると
やっぱりしんどい。
 
いやでも想像しちゃうから。
 
 
「俺なんだったわけ?ただの遊び?
 気持ちいいって…
 朝まであんなにしたじゃん。」
 
 
私がワンナイの男にそう言われた時は
Jさんは全く動揺なんてせずに
いつもの余裕の表情だった。
 
そりゃそうだよね…。
 
Jさんが私に嫉妬したり
独占欲を感じたりなんて、
するわけないんだから。
 
 
M)…っ
 
 
私、馬鹿みたい。
 
一人でこんなに苦しくなって…
勝手にこんな嫉妬して。
 
 
勝手にJさんのこと、
こんなにこんなに好きになって。
 
本当、馬鹿みたい。
 
 
M)はぁぁ……。
 
 
シャワーから上がったら
鏡には泣きすぎてひどい顔をした自分が
映ってて。
 
どんよりした気持ちを誤魔化すように
私はソファーの上でパソコンを開いた。
 
 
もうJさんのことは考えない。
今は忘れよう。
 
私には忘年会の動画を
編集する使命があるから!
 
なんて自分を騙し騙し、
一日中作業に没頭して。

気付いたらもう日付けが変わって
朝になってた。
 
 
M)もうイブか…。
  私…、何してるんだろう…。
 
 
本当だったら今頃、
夜のデートに備えてウキウキ準備とか
してたのかな…。
 
……今日、どうしよう。
 
 
M)……。
 
 
電源を切りっぱなしにしてた携帯を
そっと手に取って…
 
恐る恐る、電源を入れたら…
 
 
M)!!!
 
 
どうしよう。
Jさんから着信の嵐だ。
 
 
M)…っ
 
 
私があの場から逃げ出したりしたから…
心配して電話くれてたのかな…?
 
……あ、LINEも来てる。
 
 
『今どこにいる?
 家に帰っちゃった?』
 
『さっきはごめんね。
 もう話ついて帰ってもらったから。』
 
『電話出て。』
 
『家に帰ってる?
 心配だから連絡ちょうだい。』
 
『今どこにいるの?』
 
『会いたいから
 Mちゃんのマンションの下で
 待ってる。』
 
 
M)えっ…
 
 
二日間に渡るLINEの最後のメッセージは、
夜中の3時。
 
 
待ってるって…、うそ…っ
 
さすがにもういないよね!?
 
 
M)…っ
 
 
私は急いで玄関を出て
エレベーターに飛び乗った。
 
 
そわそわしながら、足踏みして…
1Fに着いた瞬間、
エレベーターを飛び出したら…
 
大きなガラス扉の向こうに見えたのは、
壁にもたれる大好きな人の姿だった。
 
 
M)Jさん…っ!!
 
 
急いでオートロックを開けると…
 
 
J)ああ、良かった。無事だった。
 
 
Jさんは安心したように笑って…
 
 
M)…っ
 
 
私は涙があふれてきて、
思わずその胸に飛び込んだ。
 
 
M)どう…して…っ
 
 
Jさん…、すごく冷たい。
 
こんな真冬に、こんなところで…
 
ずっと待っててくれたんですか?
私なんかのこと…
 
 
M)どうして…っ
 
 
……涙が止まらない。
次から次へとこぼれてきて…。
 
 
J)無事で良かったw
M)…っ
 
 
私が電源切ったりしたせいで…
Jさんは…
 
 
M)ごめんなさいっ…!
J)…っ
M)ごめんなさい!!
 
 
いくら謝っても足りないくらい、
私は申し訳ない気持ちでいっぱいで
涙が止まらなかった。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
Mちゃんは何度も俺に謝って
ずっと泣いてて。
 
 
J)ええと…
 
 
こんなマンションのエントランスで
ずっと女の子泣かせっぱなしって…
さすがにまずいよな。
 
 
J)迷惑じゃなかったら、
  部屋行ってもいい?
M)あ、はいっ!!
  すみません、寒いですよね!!
 
 
いや、そうじゃないんだけど…w
 
 
M)あのっ!!
  お風呂入ってください!!
 
 
部屋に着いたら、
おもむろにそう言われて。
 
 
M)Jさんのおうちみたいな
  ラグジュアリーなお風呂じゃないし
  Jさんの長い脚が全部おさまるか
  心配なくらい狭いお風呂ですけど、
  風邪引いちゃうので…
  あたたまってきてください!
  お願いします!!
J)……。
 
 
確かに身体は少し冷えたけど
そこまで心配されるほどじゃなくて…
 
でもMちゃんが必死にそう言うから、
俺はお風呂を借りることにした。
 
シャワーは浴びたかったし。
 
 
J)なんか…俺が無理矢理、来たせいで…
  色々気を遣わせてごめんね?
M)…っ
 
 
俺がそう言うと、
Mちゃんの目にはまた涙が浮かんできて…
 
 
M)電源切ってた私が悪いんです…っ!
  Jさんに心配かけたりして…
  私なんかの分際で…
  本当にすみませんでした!!
J)……。
 
 
なんかもう、ツッコミどころが満載すぎて…
どうしたら。
 
 
M)あの、着替えなんですけど…
J)うん。
M)弟がたまに泊まりに来るから
  弟の着替えならあるよ。
J)え?
 
 
Mちゃん、三姉妹じゃなかったっけ?
 
 
M)って嘘ついて泊まりに来た人に貸す用の
  スウェットしかないんですけど…
  それでもいいですか…?
J)ぶっ…w
 
 
そういうことね!?
しかもそれを素直に言っちゃうとか!w
 
 
J)全然いいよ、それでw
  借りてもいい?
M)……はい。
 
 
そんなこと気にしたり
そんなのに嫉妬するような歳でもないし、
俺も。
 
 
M)では、どうぞ!
  ごゆっくりあたたまってくださいね!
J)はーいw
 
 
Mちゃんのお言葉に甘えて
俺は冷えた身体を熱いシャワーで流して
風呂に浸からせてもらった。
 
 
J)……。
 
 
すごく綺麗にしてるなぁ…
 
まだそんなまじまじとは見てないけど
部屋も綺麗だったし。
 
それも玉の輿に乗るための
家事力とかなのかな?
さすがだな。
 
 
いくら自分だけ綺麗に着飾ってても
部屋の掃除が疎かな女の子って
結構いるんだよねぇ…。
 
…って、そんなことはどうでもよくて。
 
 
Mちゃんはなんであんなに泣いてたのかな。
 
ごめんなさいって何度も謝って…
「私なんかの分際で」とか
自虐的すぎる発言までしてたし。
 
 
J)……。
 
 
メグちゃんのこと、誤解してたりするかな?
期間かぶってた、とか。
 
いや、それはないかな。
 
 
でも…
 
だったらあの場からMちゃんが
逃げるようにいなくなった意味が
よくわからない。
 
 
あんな時間に
ちゃんと家に帰れたのかもわからないから
心配だったけど…
 
無事で良かった。
 
 
……って、俺…、
心配で家まで来ちゃうとかヤバくない?
 
心配でずっと待っちゃうとか、
絶対ヤバいよな?
 
 
J)………はぁ。
 
 
こんな振り回されてる俺を見たら
工、絶対笑うな。
 
 
 
 
 
 
ー続ー

コメントを残す

  1. はな より:

    何度読んでも気になって…
    私の理解力の無さなのかもしれないんだけど、忘年会は22日だったよね?
    Mちゃんがイブの朝にようやくメールに気付くってことは、Jさんは、丸一日と一晩、外で待ち続けた事になる???
    そもそも、忘年会の日を私が勘違いしてる?(笑)

    • マイコ より:

      あとで確認します!。゚(゚^ω^゚)゚。すみません!!!笑

スポンサーリンク
スポンサーリンク