[357]切ない気持ち(Jさん&MちゃんSide)

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J)おいで…。
M)……///
 
 
優しく抱き寄せてくれる腕に
身を委ねて…
 
 
Jさんは私が眠るまでずっと優しく
髪を撫でてくれるの…。
 
 
それがすごく気持ち良くて…
安心して…
 
私はそのまま、腕枕の中で眠りに落ちてしまう。
 
 
深い深い…眠りの中へ…
 
 
 
 
……
 
 
 

 
 
 
 
M)…っ!
 
 
まただ…!
また寝ちゃった!!
 
 
ハッとして目が覚めると、もう朝で。
 
最近、いつもそう。
 
 
M)……。
 
 
Jさんは私を抱いてくれなくなった。
 
 
前までは…
寝る時に必ず「今日はどうしますか?」
って聞いてくれて…
 
私が頷いたら、抱いてくれてたのに…
 
その言葉がなくなってからは
自分から抱いてほしいなんて
言えるわけもなくて…。
 
優しい腕枕の中で、眠りに落ちちゃう毎日…。
 
 
最後に抱いてくれたのは、あの夜。
 
 
私が寂しくなって夜中に電話したら…
Jさんが会いたいって言ってくれて…
 
私はすぐにタクシーに飛び乗って
この部屋まで来たんだ。
 
 
私が会いたくて仕方ないことに気付いて
優しいJさんが自分も会いたいって
言ってくれたのかなって思って…
 
わがままばっかり言ってる自分が
本当に申し訳なくなって、
でも抑えられなくて…
 
気持ちがあふれて泣き出した私を
Jさんは力強く抱きしめてくれた。
 
 
「わがままとかじゃないから。
 迷惑だとか思ってないから。
 俺が…、、俺が会いたかったんだよ。」
 
 
そう言ってくれて…
私は涙が止まらなくて…。
 
 
……そ、その…後のことは…
思い出すと、今でも腰が砕けそうになる…。
 
 
M)////
 
 
あんな風に抱かれたのは、初めてだったから。
 
 
いつも甘くて優しいJさんが…
……すごく…激しくて…///
 
激しくて、って言っても…
乱暴だったりするわけじゃなくて
 
少し強引で、それでいて情熱的で…
なんていうか…なんていうか…
 
初めて、「求められてる」って
感じがしたの////
 
 
いつもは私がねだってばかりで
それにJさんが優しく応えてくれてる
感じだったけど…
 
あの夜だけは違って。
 
 
思い出すだけで顔から湯気が出そうなくらい…
 
熱くて、熱くて、激しかった…///
 
 
M)////
 
 
あ、やっぱりダメ…///
思い出すだけで腰が砕けそうになる。
力が抜けちゃう。
 
 
私はあの夜が忘れられない…。
 
Jさんとの夜はどれも特別だけど…
あの日だけは、かけがえのない時間だったの。
 
お酒の匂いもしたし…
私の勘違いなのかもしれないけど、
それでもいい。
 
 
あんな風に熱く求められて、嬉しくて、
泣きそうなくらいに幸せだったから。
 
 
M)……///
 
 
……でも、夜がパタリと途絶えたのは
あの日からで。
 
 
どうして…なのかな…?
理由はわからない。
 
 
「たまにはいいんじゃない?
 何もしないで眠る日があったって。」
 
 
Jさんは前にそうは言ってたけど…
あんなに毎回してたのに
それがいきなりゼロになるとやっぱり不安で…。
 
 
………私、何か変なことしちゃったかな?
 
 
最後の夜に…
私があまりにとろけちゃって、
呆れられた…とか?
 
 
……それか…
私の身体に、もう飽きちゃった…とか…。
 
 
そうだよね…。
そもそもJさんが
私なんかを抱いてくれてるのが
おかしな話で。
 
こんな…なんの変哲もない身体…、、
 
 
J)おはよ…w
M)ひゃぁっ!///
 
 
いきなり声をかけられてびっくりした。
 
 
J)さっきからくるくる百面相だねぇ…w
M)////
 
 
み、見られてたの!?
いつから起きてたんですか?!
 
 
J)ほんとMちゃんって…可愛いよねぇ…
M)え?///
 
 
Jさん…寝ぼけてる…?
 
抱き寄せられて頭を撫でられてる私は
ドキドキして顔が熱い。
 
 
J)俺…もう少し寝てもいい…?
M)は、はいっ!///
 
 
眠そうなその声があまりに色っぽくて
ドキドキする。
 
 
………あ、ほんとに寝ちゃった。
 
 
腕の中から、そーっと見上げると…
……整った綺麗な寝顔…。
 
いくら見てても飽きないの…。
 
 
ずっとこうして、この腕の中にいたい。
 
抱きしめられていたい…。
 
 
……大好き。
 
Jさんが大好き……。
 
 
あの夜、勝手に涙が出てきたのは…
私がJさんを好きだから。
 
 
好きで、好きで、仕方なくて…
 
自分で気付く前に、
気持ちが涙になって流れていった。
 
身体が先に教えてくれたの。
 
この人のことが
大好きで大好きで仕方ないんだよ…って。
 
 
ずっと気付かないフリをしてたのに
違うって言い聞かせてたのに、
もう認めざるを得ないくらい、
気付いたらこんなに好きになってて…。
 
 
絶対好きにならないって決めてたのに…
Jさんにもそう言ってたのに…
 
……私って本当に馬鹿だなぁ…。
 
 
こんな素敵な人と一緒にいて
好きにならないなんて
そもそもが無理な話だったと今では思う。
 
 
……Jさん…ごめんなさい。
 
嘘をついてごめんなさい。
 
約束を守れなくてごめんなさい。
 
 
でも私はずるいから…
あなたと一緒にいるためなら
嘘をつき続けます…。
 
 
いつか私の気持ちがバレて…
Jさんに愛想を尽かされるまでは。
 
隠せる限り、隠し通すの。
 
 
少しでもあなたの側に、いたいから…。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
M)……Jさん…、
  朝ごはん出来ましたよぉーー
J)ん……、
 
 
……ああ、本当だ。
なんだかいい匂いがする。
 
 
眠たい瞼をゆっくり持ち上げたら
「おはようございます」って
優しく微笑む彼女がいた。
 
 
J)ああ…俺ほんとに二度寝しちゃった…?
M)はい。
 
 
確か…
Mちゃんを抱き寄せたら…
そのぬくもりが心地良くて
すぐに眠りに落ちた気がする。
 
 
J)Mちゃんは相変わらず早起きだねぇ…
 
 
いつの間に俺の腕を抜け出したんだろ。
 
 
J)おはよ。
 
 
チュッ。
 
 
M)////
 
 
ベッドを降りて彼女のおでこにキスしたら
彼女は顔を真っ赤にして
キッチンへ走っていった。
 
 
J)……。
 
 
相変わらず…可愛い反応するよねぇ…。
 
 
J)うん、美味しい…。
  朝から癒される…。
M)ほんとですか…?
J)うん。
 
 
今日も彼女が作ってくれた朝食をいただいて
健康的な朝を迎えてる俺。
 
ほんとありがたいよなぁ…。
 
 
J)絶対いいお嫁さんになれるよ、Mちゃん。
M)え…?
 
 
玉の輿に乗るために
腕を磨いてただけのことはある。
こんなん男は絶対嬉しいでしょ。
 
 
M)ありがとう…ございます…。
J)……。
 
 
あれ?
明らかにMちゃんのテンションが
下がった気が…、、
 
 
……あ、もしかして。
 
さっきの俺の言葉を
「早く相手見つけろよ」みたいに
解釈しちゃった、とか…?
 
 
………はぁ…、ほんとにもう…
いじらしくて可愛いんだよなぁ…。
 
 
でも彼女は相変わらず、絶対に認めないんだ。
 
 
J)Mちゃんの料理ってなんでこんなに
  美味しいんだろ。
M)えっ…
J)愛情がこもってるから?w
M)!!!
  あ、あの…っ
  変なものは入れてません!!///
  あ、愛情とか…そんなのないので
  安心してください!!
  Jさんのこと好きになったり
  してませんから!絶対!!
 
 
ほら、ね…。
 
 
J)じゃあなんでこんなに美味しいのかなー
M)そ、それはわかりませんっ!///
 
 
ぶくくく…
可愛すぎる…ww
 
あ〜〜〜〜、ほんとツボ。
 
 
M)あの、じゃあ先に行きますね…。
J)うん。
 
 
そして今日も時間をずらして出社する彼女を
玄関までお見送り。
 
 
M)あ、あの…、///
J)ん?
M)今日…も…、その…
  お泊まりしても…いいですか?///
J)……。
 
 
いつでも来ていいって言ってるのに。
合鍵だって渡してるのに。
 
それでも毎回こうして
律儀に聞いてくるんだよね。
 
 
J)いいよ?
M)ありがとう…ございます///
  あの、それじゃ…行ってきます!///
 
 
……バタン。
 
 
J)……。
 
 
どうして彼女はいつでもなんでも
遠慮がちなんだろう。
 
もっとワガママ言ってくれていいし
もっと甘えてくれていいのに。
 
 
……なんて思っていたら、その日の夜も。
 
 
俺がクライアントとの会食を終えて
帰ってきたら、
その少し後にうちに来た彼女。
 
 
J)あれ?お風呂入ってきたの?
M)はい、自分の家で入ってきました!
J)なんで?
M)今日ジムに行ってたので、汗もかいたし…
J)いや、うちで入ればいいじゃん。
M)ええと…いつもお借りするのは
  申し訳なくて…
J)何が??
M)光熱費とか…何も払ってないので…///
J)そんなの気にしなくていいから!
 
 
こういうところなんだよなぁ…。
ほんと遠慮がちというか、律儀というか。
 
 
M)家で洗濯もしたかったので
  ちょうど良かったんで大丈夫です!
J)洗濯も…うちの洗濯機使っていいからね?
M)ええと…、でも…、
 
 
Mちゃんはためらいがちに俯いた。
 
 
M)あまりに私の生活を持ち込むのは
  さすがに申し訳ないので…。
J)……。
 
 
俺がいくらいいって言っても
遠慮するんだよなぁ…。
 
 
M)私は…こうして一緒に過ごせるだけで…
  ありがたいというか…感謝してるので…
  本当に私のことは気にしないで下さい…。
J)……。
M)あっ!変な意味じゃないですよ!?///
  好きとかじゃないですからね?!///
J)……。
 
 
この決まり文句も
もう何度聞いたことだろう。
 
 
ピロリロリロ♪ピロリロリロ♪
 
 
M)あっ…
J)出ていいよ。
M)……えと、いいです、大丈夫です。
J)なんで?出なよ。ずっと鳴ってるよ。
M)…っ、ええと…、
 
 
そこまで遠慮しなくていいのにって思ってたら
電話に出た彼女の様子を見て、
ためらっていた理由がわかった。
 
 
M)うん、うん、元気…だけど…
  ……んー、……ごめんね、ちょっと。
 
 
相手は男だ。
すぐにわかった。
 
 
M)忙しくて時間ないんだ、ごめん…。
  ……あ、えっと…そうじゃなくて…
  ごめんね、会えないの。
  ……クリスマス?
  え、予定はないけど…
  だからそうじゃなくて、会えないの。
  ……え?彼氏?…は出来てないけど…
 
 
電話は…
相手が割と強引な感じで
断るのに困ってる様子。
 
たぶんセフレだろうなぁ。
 
 
M)もう会えない。ごめんね。
  …っ、だから彼氏とかじゃなくて…
 
 
そうだよなぁ。
相手にしたら
彼氏ができたわけでもないのに断られたら
納得いかないよなぁ…。
 
 
M)え?最後に?
  いや、だから…
  クリスマスとか関係なくて…
 
 
最後に一回会いたいとか言われてんのかなー
割としつこいなー
 
 
M)そういうのもうやめたのっ!!
  じゃあね!もう切るからっ!!
 
 
おおっ…
強硬手段に出た…!
 
 
M)……あ、えっと…ごめんなさい。
J)いや、うん…。
 
 
電話を終えたMちゃんは
気まずそうにこっちを向いた。
 
 
J)クリスマスのお誘い?
M)えっ…、あ、そんなんじゃないです!
 
 
いやいや、絶対そうでしょw
 
 
J)……。
 
 
予定もないのに断るのって
確かに断りにくいよねーー
 
てゆーかMちゃんって
どれくらいセフレいたんだろ…。
 
相当遊んでたのは知ってるけど…
 
 
この調子じゃ、
またこういう電話、かかってくるんじゃない?
 
 
J)……クリスマス、さぁ…。
M)え?は、はいっ!
J)どっか行く…?
M)えっ!!!
J)……クリスマスディナーとか。
M)…っ、いいんですか…?///
 
 
あ、目がキラキラしてる…
かわいーーw
 
 
M)行きたい…です…///
 
 
うん、今回は素直。
 
 
J)じゃあ約束ね。
M)……(こくん)///
 
 
嬉しそうに頷いた彼女があまりに可愛くて
思わず抱きしめそうになった。
 
 
M)……あ、えっとじゃあ…
  私、お風呂の準備してきます!///
J)え?Mちゃん入ったんでしょ?
M)はい、でも…
  Jさん今帰ってきたんですよね?
  入りますよね?
J)いいよ、自分でやるからw
M)Jさんは休んでてください!!///
J)あ…っ
 
 
そう言って彼女は風呂場へと走っていった。
 
どこまで尽くす子なんだ…あの子は…w
 
 
それから俺は結局
Mちゃんが用意してくれた風呂に入って。
 
 
寝る前に二人で一緒に観た映画は
思いのほか、コメディ要素が強くて。
 
無邪気に楽しそうに笑う彼女を横目で見ながら
こんな風にもっと
俺に心を許して欲しいなーとか
甘えて欲しいなーなんて思う自分がいた。
 
 
J)じゃあそろそろ寝ようか。
 
 
二人で寝室に移動して
冷たいベッドに足を入れる。
 
 
J)Mちゃんってさ、体温高めだよね?w
M)えっ!そうですか?
J)うん。
  冬場って…一人で寝る時いつも
  足が冷たいんだけど…
  Mちゃんがいるとすぐにあったまるw
M)それは…良かったです…
  ぜひ湯たんぽとしてご利用ください…///
J)あははは、何それw
 
 
もじもじしながらこっちを見てるMちゃんを
右腕でそっと抱き寄せた。
 
 
J)おいで。
M)////
 
 
柔らかい髪をそっと撫でてると、
彼女はいつの間にか眠りに落ちている…。
 
……最近はいつもそう。
 
 
俺はあの夜から、彼女を抱いてない。
 
 
理由は、俺が自分の気持ちを自覚したから。
 
 
あの日は気持ちがあふれて愛しくて
止まらなくて…
 
本能のままに彼女を求めて、愛したけど…
 
 
俺が抱きたくて抱くのは、
契約違反だと思うから。
 
 
それまでは…
彼女の希望に応えて
彼女がしてほしいならしてあげる、
っていうスタンスでいたけど…
 
あの夜だけは違ったんだ。
 
 
俺が、彼女を欲しかった。
 
 
抑えられなかった。
 
 
彼女がちゃんとした恋愛が
出来るようになるまで
夜遊び防止のストッパーとして側にいる俺が
自分の気持ちも入れて彼女を抱くのは
ずるいと思うから…
 
だから、反省したんだ。
 
 
ちゃんと付き合うまでは
もう抱かないって。
 
 
……って言っても、
「ちゃんと付き合う」のが
彼女相手だと、簡単な話じゃなくて。
 
 
彼女の場合、
ちゃんとした恋愛をしたいっていう話の前に
玉の輿に乗りたいっていうのが
大前提にあるわけで…
 
そんな彼女のあれこれを知ってる立場の俺が
簡単に好きだとか付き合おうとか言うのは
ちょっとずるいかなって。
 
 
まぁ俺が家を継げば彼女のその夢は
叶うのかもしれないけど…
俺にはその気がないし。
 
親は俺に継げって言ってくるけど
俺は弟に継がせたいから
年末年始に実家に帰って
その話もカタを付けようと思ってる。
 
 
だから…
そういうのが全部落ち着いたら
ちゃんと彼女に話そうかと思ってるんだけど…
 
 
それまで待っててくれますか…?
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
また何もしないで寝ちゃった!!
 
 
外から差し込む朝陽で目が覚めて
隣にはスヤスヤ眠るJさん。
 
 
M)……。
 
 
私…いよいよ女として
何か問題があるんじゃ…。
 
 
だって…
だって…
 
こんなパタリといきなり
抱いてもらえなくなるなんて、
おかしいもん…!!
 
 
M)……。
 
 
このお腹の…お肉のせい…?
 
こんなポチャ子…
Jさんの過去の女には
一人もいないんじゃ……。
 
 
そう思ったら、
自分が一気に恥ずかしくなってきた。
 
 
……よし、私…痩せる!!
クリスマスまでに3kgは痩せる…!!
 
そうと決まれば今日もジムへ行かなくちゃ!
 
 
J)おはよ…w
M)ひゃぁっ!///
  起きてたんですか!?
 
 
まさか…また見られてた…?
 
 
J)今日も元気に百面相だねぇ…w
M)////
 
 
恥ずかしい…。消えたい。
 
 
M)あの…まだ寝てていいですよ…///
  私、準備してきます…。
J)んー、今日は俺も起きるよ。
 
 
そう言ったJさんは私と一緒に起き上がって…
 
 
J)……
M)……
 
 
じっと、視線がぶつかると、
くすっと優しく微笑んで
私のおでこにキスをした。
 
 
M)////
 
 
私はそのままぽーっとして動けなくて。
 
 
J)もう一回?
M)え…?
 
 
チュッ。
 
 
M)!!!
 
 
ま、またチューされた…///
 
 
J)もう一回…?w
M)ももももういいですっ!///
 
 
顔から火が出そうで
Jさんがクスクス笑う声を背中に聞きながら
私は慌てて寝室を飛び出した。
 
 
M)……///
 
 
私、完全に遊ばれてる…。
 
 
Jさんはいつも余裕で…
私は振り回されっぱなし。
 
ほんとずるいなぁ…///
 
 
Jさんのこと好きって自分で認めてから
私は前よりもっと余裕がないんだもん…。
 
 
M)はぁ……///
 
 
それから顔を洗ってメイクして
朝食の準備をしてると
Jさんは優雅にコーヒーを飲みながら
iPadで今日の新聞を見てて…
 
たまに私をチラッと見て目が合うと
優しくニッコリ微笑んでくれるの。
 
 
ただそれだけのことで、
私の胸はドキドキうるさくて…。
 
 
Jさんに迷惑をかけたくないから
出社時間は必ずずらしてるんだけど…
 
玄関で私を見送ってくれるJさんは
今日もまた「行ってらっしゃい」って
おでこにキスをしてくれて…、
 
……私、もうダメ///
 
 
Jさんの一挙手一投足に
ドキドキして振り回されて、
好きがどんどん加速していっちゃう。
 
 
自分の気持ちに気付かないままの方が
良かったのかな…。
 
 
そんなことを考えながら仕事していたら
あっという間にランチの時間になって。
 
 
Tさんがクリスマスケーキの話を始めたら、
誰にもわからないようにこっそりと
「ケーキ食べたい?」って
私の耳元で囁いたJさん。
 
 
その色っぽい仕草にドキッとして、
クリスマスの約束を思い出してキュンとして。
 
私の胸は、忙しい。
 
 
こんな片思い、初めてだから…
どうしていいのかわからないけど…
 
ただ一つ、わかっているのは。
私のこの気持ちは、バレちゃダメってこと。
 
もしバレたら、側にいられなくなるから。
 
 
J)あれ、Mちゃんだw
M)Jさん!///
 
 
ランチから戻ってきてしばらくして
給湯室でお茶を淹れてたら
タイミング良くJさんも入ってきた。
 
 
M)偶然ですね!
J)ですねー
  ……あ、そーだ。
  Tくんにケーキ頼んでおいたよー
  一番小さいやつ。
M)あっ!ありがとうございます…っ///
J)誰と食べるんですか?
  とか聞かれちゃったよw
M)ええっ!!
 
 
Tさんってば…まさか…
何か勘付いてる…!?
 
 
M)なんて…答えたんですか?
J)んー?
  可愛い女の子とー、って。
M)!!!
 
 
そうか、なるほど…!
 
 
M)そう言っておけば
  絶対私だとは思わないですもんね!
  ありがとうございます!
J)はい…?w
M)Jさんには絶対迷惑かけたくないので…
  誤魔化してくれてありがとうございます。
J)ええと…w
 
 
私が頭を下げると
Jさんはなぜか困ったように笑っていて…
 
 
J)Mちゃんの思考回路がどうなってんのか
  見てみたいなw
 
 
そう言って、私の頭を優しく撫でた。
 
 
M)え?///
 
 
こんなところ…誰かに見られたら…
……あ、でも…
頭ポンポンくらい…
Jさん、誰にでもするもんね。
大丈夫だよね?
 
 
J)何キョロキョロしてんの?w
M)大丈夫です!
J)だから何が?w
M)え…っ
 
 
Jさんは肩を揺らしながら笑ってる。
どうしたんだろう。
 
 
J)……今日は…うち来る?
M)えっ…
 
 
コーヒーメーカーから
カップを手に取ったJさんは
ゆっくりと口をつけて
私をじっと見つめた。
 
 
M)ええと…、あの…、
 
 
今日はさすがに自分の家に
帰ろうかと思ってたんだけど…
 
 
M)迷惑じゃ…ないんですか…?//
J)だから迷惑だったら言わないってw
M)……じゃあ…
  お邪魔…したいです…///
J)了解w
 
 
本当に…いいのかな…。
 
 
私もしかして
「Jさんと一緒にいたい」って
顔に書いてあるんじゃないかな。
 
Jさんはいつも
私の気持ち、なんでもお見通しな人だし…
それをわかった上で
気を遣って声をかけてくれてるんじゃ…
 
 
J)あ、今ちょっと見えた気がする。
M)え?
J)Mちゃんの思考回路。
M)ええっ!///
 
 
うそ…、うそ…っ
見られたらバレちゃう!!
私がJさんを好きなこと!!
 
 
M)勝手に見ないでもらえますか!?///
J)なんでそんな焦るの、あはははw
 
 
だって…
バレたらもう側にいられなくなる…。
 
 
J)言っとくけど、
  俺がMちゃんといたいから
  今日来る?って聞いたんだからね?
M)え…?
J)誤解しないでね。
M)え…?
 
 
そう言われて、数秒、時が止まった。
その意味を理解しようとして。
 
 
M)え…?
J)もう一回言う?
M)え…?
J)俺がMちゃんと…
M)ももももういいです!///
J)…っ
 
 
どうしよう。
顔が一気に熱い。
 
 
それ以上甘い言葉を言われたら
勘違いしそうになるから。
 
やめて。
 
 
M)で、では、今日お邪魔しますので!
  それでは!///
 
 
ティーカップを持って
足早にいなくなろうとすると…
 
 
J)待った待ったw
M)…っ///
 
 
Jさんは余裕の表情で
私に壁ドンしてきて…
 
私は顔から湯気が出そうで、
思わず下を向いた。
 
 
J)何時くらいに来る?
M)…っ、今日は…ジムに…
J)ジム?
M)////
 
 
距離が近すぎて、上手く喋れない。
 
 
M)ジムに…行こうと思ってて…
J)ああ、じゃあ迎えに行ってあげるよ。
M)え…?
J)俺今日なんもないから。
  終わる頃に車で迎えに行くよ。
M)…っ
 
 
そんなとんでもない申し出を受けて
慌てて顔を上げると…
 
 
J)ん?
 
 
優しくニッコリ微笑むJさんが
キス出来そうなくらいの距離で目の前にいて…
 
 
M)////
 
 
私はもう、ドキドキしておかしくなりそう。
 
 
J)なんでこんな顔赤いの…?
M)////
 
 
それは…Jさんのせいで…
 
 
J)熱ある?大丈夫…?
 
 
そう言ったJさんが前屈みになって…
近すぎた距離がゼロになりそうで…
 
おでことおでこがぶつかるのかなって
ぎゅっと目を瞑ったら…
 
 
チュッ。
 
 
おでこに触れたのは、柔らかい唇だった。
 
 
M)!!???///
 
 
思わず瞬間的に顔を上げると…
 
 
J)熱はないみたい。良かった。
 
 
何を考えてるのか全然わからないJさんが
ただニコニコと笑っていた。
 
 
M)////
 
 
……もう、無理!!!
 
 
M)ししし失礼します!!///
 
 
私は今度こそJさんから逃げ出して
給湯室を後にした。
 
 
ど、ど、どうしよう。
顔がシューシューしてる…。
 
 
Jさんって…
会社であんなことする人だったの?
 
しかもあんな余裕な感じでサラッと……
 
 
M)////
 
 
私、からかわれて遊ばれてるだけかな…?
 
心臓に悪いから…やめてほしい///
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
……さて。何作ろうかな。
 
 
仕事から帰ってきて
一人、キッチンに立ってみた。
 
 
冷蔵庫にはMちゃんのおかげで
食材が豊富にあるし。
 
Mちゃんがジムから帰ってきたら
一緒に食べれるように
何か作ろうかなー、なんて。
 
 
いつも朝食ごちそうになってるお礼にね。
 
 
ピロリロリロ♪ピロリロリロ♪
 
 
J)ん?
 
 
ああ、某アパレルの女社長だ。
 
 
J『もしもし?』
女『ああ、Jくん?元気にしてるー?
  今夜付き合ってくれない?』
J『今日はちょっと。ごめんなさい。』
女『あら、残念。じゃあ明日は?』
J『……。』
 
 
この人必ず毎回夜も誘ってくるんだよなー。
 
 
J『お酒だけだったら。』
女『あら、どうしたのー?w
  彼女でも出来た?』
J『んー、彼女ではないですけど。』
女『じゃあ好きな子?』
J『まぁ…そんなところですw』
女『前に好きな子がいた時だって
  あたしと寝てたじゃない。』
J『……そうでしたねぇw
  まぁでも…、今回の子は…
  そういうの泣いちゃう子なんで。
  ごめんなさいw』
女『へぇ〜〜〜〜〜
  Jくんなら上手く隠せると思うけど。』
 
 
確かにそうなんだけど。
 
 
J『泣かせることを隠れてするのって
  結局泣かせてることと
  一緒だと思うんで。』
女『あら…やだ。』
J『え?』
女『ちょっと会わない間に
  ますますイイ男になってるーー』
J『あはははw』
女『仕方ないわねーー
  残念だけどその可愛い子に免じて
  諦めてあげるーー』
J『ありがとうございますw』
女『じゃあ今度お酒だけでも付き合って。
  Jくんと話すの楽しいし。』
J『はい、ぜひw』
 
 
そう言って携帯を置いたら、
また違う子から電話がかかってきた。
 
 
J『もしもし?』
女『あ、出てくれたーー♡
  ねぇ、どうしてLINE返事くれないのー?』
J『んー?くれてた?』
女『送ってたよぉーーひどいっ』
J『ごめんごめんw』
女『ね、会いたいの。いつなら会える?』
J『うーん…、会えないかなぁ。
  ごめんねー。』
女『どうして?彼女出来たの?』
 
 
この子はそういうことにしといた方が
話が早そうだな。
 
 
J『そう。彼女出来たの。ごめんねー。』
女『大丈夫。
  彼女には内緒にしてあげるから♡』
J『こらこらw
  俺を悪い男にする気?w』
女『だってぇ…
  JくんとHしたいんだもん…。』
 
 
素直か!w
 
 
J『ダメだよ。』
女『じゃあ彼女にバラしちゃうもん…。』
J『何を?w』
女『Jくんって…女の子といっぱい遊んでる
  悪い男なんだよーって。』
J『もうバレてるよそれw』
女『ええっ!』
J『じゃ、そーゆーことだから。
  じゃあね。』
女『やだ!待って…っ!
  じゃあ…お願い。
  最後に一回だけでいいから…。』
J『ダメ。』
女『…っ、一回だけでも…ダメなの?』
J『ダメ。』
女『もういいもんっ!Jくんのケチっ!!』
J『……あ。』
 
 
電話切れた。
 
 
……うーん…
そのうちまたかかってきそうだなぁ。
 
ま、また断ればいいだけだけど。
 
 
それから俺は簡単なリゾットとサラダを作って
家を出た。
 
 
ジムの前にちょうど車を停めて
着いたよってLINEしたら
すぐに出てくる彼女の姿が見えて。
 
 
荷物が多そうだから運転席を降りたら、
彼女の後ろから男が一人、
追いかけてきたのがわかった。
 
 
M)Jさん、お待たせしましたっ!
J)ああ、うん。ええと…
M)え?
 
 
俺の視線に気付いて後ろを振り返った彼女は
ハッとして気まずそうに表情を曇らせた。
 
 
M)あ、ちょっと…
 
 
彼女は俺から離れて
男のところに駆け寄ったけど、
声は全然聞こえる距離で。
 
 
男)用事って男?彼氏いたんだ?
M)えっと…
男)俺に嘘ついたの?
M)彼氏じゃ…ないよ。
男)ふーん…。
 
 
俺を上から下まで挑戦的に見つめる男の視線。
 
 
男)だったらいいじゃん。また遊ぼうよ。
M)だから…それは…
男)なんか問題あるの?
M)問題とかじゃなくて…ごめんね?
男)納得いかない。
M)…っ
 
 
うーん…
セフレか、はたまたワンナイした男とかかなー
 
 
M)とにかく…もう会わないから!!
男)あ…っ
 
 
Mちゃんが強引に話を終わらせて
こっちに来ようとしたら
男がその腕を慌てて掴んだ。
 
 
男)なんでだよ。
  また会いたいって言ってくれたじゃん!
M)や、やめて…っ
J)はいはい、離してあげてねー。
男)…っ
 
 
割って入った俺は
あからさまに睨まれた。
 
 
J)車乗ってな。
M)…っ
 
 
Mちゃんの背中をポンと押したけど、
 
 
男)待ってよ。
 
 
男は引き下がる気配なし。
 
 
男)俺なんだったわけ?ただの遊び?
M)やめて…!
男)気持ちいいって…
  朝まであんなにしたじゃん。
M)やだ、やめて!!
J)……。
 
 
あーあ、こりゃないなーー。
 
 
俺は助手席のドアを開けて
そこにMちゃんを乗せてドアを閉めた。
 
声はもう聞こえないだろ。
 
 
J)君さぁ、
男)…っ
J)セフレ相手に独占欲見せるのって
  どうかと思うよ?
男)…っ、俺は…セフレのつもりじゃ…
J)じゃあこれから彼女と
  恋愛関係築いていこうとか思ってたわけ?
男)…っ
J)だとしたら。
  たった今フラれたわけだから
  諦めてくれる?
男)…っ
J)あと、最後に。
  こういう場で夜の話持ち出すのは
  マナー違反だよ。
男)…っ
J)女の子の気持ちわかんないの?
  そんなことばっかしてたら
  男の価値下がるよー?
男)…っ
J)じゃあね。
 
 
何も言い返せない男を残して
俺はそのまま運転席に戻ってドアを閉めた。
 
 
J)じゃあ帰ろっか。
M)……。
 
 
そう言って
すぐに車を走らせて来た道を戻ったけど…
Mちゃんはずっと俯いたまま喋らなかった。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
J)お腹空いてる?
M)……え…?
 
 
ずっと無言で運転してたJさんが
不意に私にそう聞いた。
 
 
M)ええと…、
 
 
お腹…空いてるの…かな…。
 
 
そんなのわかんないくらい…
私はさっきのことがショックで
言葉が出てこなくて…。
 
 
そしたら赤信号で車を止めたJさんが
私の頭をそっと優しく撫でてくれて…
 
……その瞬間、
私は急に糸が切れたように泣いてしまった。
 
 
J)えっ…?
M)…っ
 
 
ぽろぽろぽろぽろこぼれてきて…
自分でもよくわからない。
 
 
J)…っ
 
 
信号が青に変わって
頭の上から消えたあたたかい手の感触。
 
私はこんな自分を見られたくなくて…
 
必死に窓の外に目をやったら、
流れていた景色が、途中でピタリと止まった。
 
 
J)ん…。
 
 
優しい声に、グイッと抱き寄せられて…
 
 
M)…っ
 
 
私は気付いたら、
Jさんの腕の中で、泣いていた。
 
 
もしかして…
私が泣いてるから
わざわざ車を停めてくれたの…?
 
こうして私を抱きしめるために
そうしてくれたの…?
 
 
M)…っ
 
 
Jさんの優しさに、余計に涙が出てくる。
 
 
M)…ぐ…す…っ
 
 
……自業自得なんだけど…
 
あんなところ、見られたくなかった。
 
Jさんの前で
あんなこと言われたくなかった。
 
 
私が散々遊んでたことなんて
Jさんは全部わかってて…
そんなこと、私もわかってる。
 
わかってたはずなのに…
どうして今更こんな風に思うのかな…。
 
 
……好きだから…。
 
Jさんを好きになっちゃったから。
 
 
過去を消したいなんて
今更思っても仕方ないのに。遅いのに。
 
 
M)わた…し…っ
J)…うん…?
M)ちゃんとした恋愛なんて…
  …出来る気…、しないです…っ
J)なんで…?
M)今まで…散々好き勝手に…遊んでたのに…
J)えーー、それ言うなら俺もそうじゃんw
M)え…?
J)俺だって散々好き勝手に
  遊んできましたけど…?
M)…っ
J)ちゃんとした恋愛する資格、
  ナシですか?w
M)そんなこと…っ、ないです…!!
J)じゃあMちゃんだって同じでしょ。
M)…っ
 
 
Jさんはそっと腕をほどいて
私の頭に優しくポンと手を置いた。
 
 
J)ちゃんと断ってたじゃん。
M)…っ、そんなの断るに決まってます!
J)ならそれでいいんじゃない?
M)え…?
J)変わりたいって思って
  それをちゃんと行動に移してるんだから。
M)…っ
J)これから先は、自分次第でしょ?
M)…っ
J)大丈夫だよ。
 
 
優しく諭すようにそう言ったJさんは
また私をそっと抱きしめてくれた。
 
 
J)俺も一緒。
M)……。
J)これからも全部断るし、全部精算するし。
M)……。
J)Mちゃんが困ってたらいつでも助けるし
  だから、大丈夫。
M)…っ
 
 
どうしてそんなに優しいの…。
 
 
J)だから泣かなーいの。
M)…っ
 
 
優しくて、あたたかくて…
私をとことん甘やかしてくれる、大きな人。
 
 
でもJさんは…
私に協力してくれてるだけだから。
 
 
好きになればなるほど切ない…。
 
いつか離れなきゃいけないって、
わかってるから。
 
 
 
……
 
 
 

 
 
 
M)えっ!!!
  Jさんが作ってくれたんですか!?
J)うんw
 
 
Jさんのおうちに着いて、
テーブルの上に並べられたのは
美味しそうなリゾットと色鮮やかなサラダ。
 
  
M)どう…して…
J)いつものお礼w
M)え?
J)朝食の。
M)…っ
 
 
そう言ってこの間だって
パスタを作ってくれたのに…
 
 
J)どうしたの?お腹空いてない?
M)あ、いえ…っ
  感動してました…///
J)感動!?w
M)だって…
 
 
Jさんが私のためにわざわざ時間を割いて
料理を作ってくれるなんて…
 
 
M)本当に…ありがとうございます…。
J)いや、そんな深々と頭を下げられるほどの
  メニューじゃないよw
M)だってすごく美味しそうですよ!!
J)じゃあ食べよっかw
M)はい…///
 
 
本当に私、なんて贅沢なんだろう。
 
好きっていう気持ちを隠しながら
そばにいさせてもらってるずるい女なのに…
 
優しくされればされるほど
申し訳なく思ってしまう…。
 
 
M)美味しいです…っ!///
J)あはは、良かったw
M)////
 
 
でもやっぱり、そばにいたい。
この笑顔を、見ていたい。
 
 
いつか終わりが来るってわかってても
それでもいいから…
 
 
お願い、そばにいさせて…。
 
 
 
 
 
 
 
ー続ー

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