[327]こじらせ男(TくんSide)

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イライライラ。
 
 
俺の後ろに海璃と蒼が並んで座ってて。
 
俺の通路挟んで隣は
♡と紅が並んで座ってる。
 
なんだこの仕組まれたような席は。
 
決めた奴、誰だよッ!
 
 
蒼)海璃、考えてくれた?俺のこと。
 
 
!!!
 
 
蒼)俺と付き合おうって。な?
 
 
この野郎ォォォ〜〜〜怒怒怒
 
あれだけ言ったのに
まだしつこく海璃に言い寄りやがって!
 
 
海)や、やだ、離して…
蒼)いいじゃん、手繋ぐぐらいw
T)は!?
 
 
俺は思わず立ち上がって後ろを見た。
 
 
『お客様ー、運転中は危険ですので
 ご着席くださいねー』
 
 
T)あ、すみません…っ
 
 
運転手に怒られちゃったじゃん!!
 
 
一瞬見た後ろは、
海璃が手を振り払ってたから
繋いではいなかったけど…
 
ムカムカムカ。
 
 
紅)姫さん久しぶりに近くで見たら
  やっぱりくっそ可愛いね///
♡)近くで見なくていいよ。
紅)だって隣だから見えんじゃん!w
♡)窓の外見てたらいいでしょ。
紅)冷たいなぁ〜〜w
T)紅!うるせぇよ!!
紅)…っ、普通に話してただけですけど…
T)♡に何かしたらぶっ殺すからな!
紅)もうしませんよ!!
 
 
すっげぇ不満そうに紅が返事した。
 
ああ、イラつく。くそっ。
 
 
女)ね、Tくん、飴食べるー?♡
T)いらね。
女)えー、じゃあチョコはぁー?
T)いらない。なんも。
女)え〜〜、つまんなぁ〜い。
女)ね、Tくん、今日夜みんなで
  飲みに行こうって話してるんだけど…
T)行かない。
女)断るの早いから!w
  たまには付き合ってよあたし達にもw
T)行かない。
女)もぉ〜〜〜!!
 
 
はぁ、後ろから聞こえる話し声に
イラついて仕方ない。
 
馴れ馴れしく海璃に触んなよ、この野郎。
 
 
『ではここで一旦休憩を取ります。
 休憩は30分。10時半までに
 バスに戻ってきて下さいねー!』
 
 
バスを降りると
みんなトイレやら買い物やら散っていって。
 
 
女)ね、Tくん、ここのソフトクリーム
  美味しいらしいよ!
  一緒に…
T)食べません!
女)もぉっ!w
 
 
まとわりついてくる女どもをかわして
ベンチに一人、腰掛けた。
 
 
海)Tさん…っ
T)…っ
 
 
……あれ、なんだろ今の感覚。
 
イライラしてたのに、
海璃が目の前に現れた途端、
それがスッと和らいだ。
 
 
海)あ、あの…っ
T)どうした?
海)ここのソフトクリーム、
  美味しいらしくて…
 
 
それはさっき聞きました。
 
 
海)一緒に…食べませんか…?///
T)……ん、いいよw
海)////
 
 
俺の返事に嬉しそうに頬を緩ませる海璃が
可愛くて。
 
一緒に売り場へ向かうと、
途中の土産物屋で海璃が足を止めた。
 
 
海)これ…可愛いかも…
T)欲しいの?
海)お姉ちゃんのお土産に買おうかなって…
T)おおお、優しい妹だなーw
海)お姉ちゃん、こーゆーの好きなんです♡
  買ってきてもいいですか?
T)うんw
 
 
嬉しそうにレジに走っていって、
戻ってきた海璃はニッコリご機嫌だった。
 
 
T)姉ちゃん喜んでくれるといいなw
海)はいっ♡
 
 
いい子だなぁ、ほんと。
 
 
T)俺もこんな妹欲しかったわw
海)え…?
T)俺の妹なんか俺にお土産なんて
  買ってきたことねーぞw
海)……。
T)ん…?
 
 
……はっ!しまった!
 
 
T)ち、ちが…っ、今のは…っ
  今のは別に、お前のことを
  まだ妹としてしか見てないとか
  そういう意味じゃないから!
海)…っ
 
 
俺が慌ててそう言うと、
まんまるの瞳がじっと俺を見つめた。
 
 
海)じゃあ私…、
  少しは女の子に…なれてますか…?
T)え…っ
海)Tさんにとって…、
T)…っ
 
 
……そんなの、とっくに。
 
 
妹みたいに思ってたはずなのに。
それは嘘じゃないのに。
 
海璃に好きだって言われたあの日から
俺は間違いなく、
海璃を女の子として意識してる。
 
 
海)あ、急かしてるわけじゃなくて…っ
  ごめんなさい、忘れてください///
T)…っ
 
 
ちゃんと見てるよ、女の子として。
 
俺がそう言ったら
海璃は期待してしまうんだろうか。
 
 
T)ほら、何味にするか選べよ。
海)はいっ!
 
 
俺は最近、自分で自分が嫌になる。
 
 
海璃のことはちゃんと女の子として見てる。
 
見てるし…
普通に可愛いと思ったりする。
 
可愛くて抱きしめたくなったりもする。
 
もちろんドキドキもする。
 
 
そのくせ、心の中から
♡が消えたわけじゃない。
 
 
そんなどっちつかずの自分に嫌気がさすんだ。
 
 
きっと俺の中から♡が消えることは
一生ない。
 
あいつの笑顔を見るたびに
可愛いな、好きだな、って
そう思う気持ちはやっぱり消えはしないし…
 
あいつが笑ってたらやっぱり嬉しくて
あいつがもし泣いてたりなんかしたら
俺はきっと何をさしおいても助けると思う。
 
 
そんなに♡のことが好きなままなら
 
「そばにいさせてください」って
海璃に言われたあの夜、
「わかった」なんて答えなきゃ良かったって
後悔したりもして…。
 
 
あの時は、海璃の涙と真っ直ぐな想いに
揺り動かされて…
 
海璃の気持ちに
ちゃんと向き合おうって思ったけど…
 
いくら向き合っても
出てくる答えはやっぱり
「♡のことを忘れられない」
なんだ。
 
 
海)やっぱり王道のミルクソフトにします!
T)おじさん、ミルク二つ。
海)あっ、私は自分で…
T)いいって、これくらい。
 
 
俺は財布を出しかけた海璃の手を止めた。
 
 
T)あっちで食おーぜ。
海)はいっ♡
 
 
ベンチに並んで座って、
ソフトクリームをひと舐めした。
 
 
T)お、すげぇスッキリ。
  甘すぎない。
海)はい!美味しいですね!
T)うん。
 
 
♡)そっか…、うん。
 
 
ん?
 
 
♡)そんなに好きなんだ…。
原)はい、すみません…
  こんなこと…ほんと…、
 
 
話し声が聞こえて振り向くと
少し距離をあけた向こうのベンチに
♡と男が座ってる。
 
 
海)あ、原さんだ…。
T)原さん?
海)うちに新しく入った中途の人です。
T)……。
 
 
♡)私何もしてあげられなくて
  ごめんね…?
原)いえ!
  こうして僕の気持ち聞いてくれるだけで
  なんか…救われます。
  ありがとうございます。
 
 
また告白されてんのか、あいつ。
 
 
海)……気になりますか…?
T)ん?…いや、気になるっつーか…
  相変わらずモテてんなーってw
海)……だって♡さん、可愛いもん…。
T)え…?
海)みんな好きになるの、わかります。
  私が男でも絶対好きになってるもん。
T)はははは、なんだそれw
 
 
……はっ、もしかして…
蒼が言ってたこと、気にしてんのか?
 
 
「好きですよ、海璃のこともそれなりにw
 それに見た目が姫さんと似てるんで…
 代わりに丁度いいかなーってw」
 
 
思い出しても腹が立つ。
 
 
T)あいつの言ったことなら気にすんな!
海)え…?
T)お前にはお前の良さがあんだから!
海)…っ
T)……あ、やべ、時間だ!
  バス戻るか。
海)あ、あの…っ
T)ん?
海)ごちそうさまでした///
T)ああ、うん。
海)一緒に食べてくれて…
  ありがとうございました///
T)なんだよ、それw
 
 
そんなことでお礼を言う海璃が可愛くて
 
……はっ!
 
危ない。また頭を撫でるとこだった。
ギリギリセーフ!
 
 
 
それから二人でバスに戻って
全員揃うと、再び高速に乗って。
 
 
宿までの道のり、
相変わらず後ろからは
 
「今度デートしようよ。」だの
「お前んち遊びに行っていい?」だの
ムカつく声が聞こえてきて。
 
 
女)Tくんって怒ってる顔もカッコいいね///
T)は!?
 
 
隣の女を無視するように
俺は窓にもたれて目を閉じた。
 
 
宿に着いてからは
みんな温泉に入ったり、周りを散策したり
自由に過ごして…
 
夜は交流会という名の大宴会。
 
美味い酒に美味い料理。
みんなここぞとばかりに羽を伸ばしてる。
 
 
あ、海璃発見。
♡たちと一緒にいんのか。
 
……浴衣可愛いな。
 
あ、男に話しかけられてる。
 
つーか馴れ馴れしく触ってんじゃねぇよ。
 
あ、Kが追い払った。よしよし。
 
 
女)Tくん飲んでるぅ?♡
T)飲んでるよ、見りゃわかんだろ。
女)あははは、ほんと冷たい!w
T)……。
 
 
俺は営業部の女はもううんざりなんだよ。
どいつもこいつもガツガツ肉食だし
性格悪い奴多いし…、はぁ…。
 
 
女)ね、二人でちょっと抜けない?♡
T)抜けねぇよ、触んな。
女)あん!もうっ
 
 
鬱陶しい女を振り払って席を移動すると
今度は別の女が話しかけてきた。
 
 
女)営業部のTさんですよね?
T)はい。
女)お疲れさまです♡
T)あ、どうも…。
 
 
一応お酌を受けて、一口飲んだ。
 
 
女)私、人事課の〇〇っていいます。
T)はい。
女)ずっとTさんとお話ししてみたいなって
  思ってて…///
 
 
げ。
こいつも結局一緒か?!
 
 
女)こういう社員旅行っていいですよね、
  部署間の交流が持てて。
T)そうですね。
  じゃあ俺はこのへんで。
 
 
ニッコリ営業スマイルで席を立った。
 
……はぁ、疲れる。
 
 
J)あ、Tくんだー。
T)お疲れさまです。
J)ちょっとさ、抜けない?w
T)え?
 
 
苦笑いのJさんの後ろには
ギラギラと獲物を見るような目をした女たち。
 
 
T)抜けますか…w
J)うんw
 
 
同じ目に遭ってたJさんと
宴会場を抜け出した。
 
 
J)もうパラパラと抜けたり
  してるみたいだね。
T)あ、ほんとですか?
J)うん、足湯入りに行ってる子達とか
  外に飲みに行ってる子達とか。
  社内カップル組は星を見に行ったり。
T)自由ですねw
J)ははははw
  俺たちもラウンジで一杯どう?
T)はい!
 
 
エレベーターを降りて
ラウンジに向かう2階の通路を歩いてると、
窓から星が綺麗に見えた。
 
 
T)ほんとに星見えるんだ…。
J)ああ、ここからも見えるね。
 
 
少し窓を開けると、
涼しい夜風が流れ込んでくる。
 
 
J)あれ…?
  あそこにいるの…海璃ちゃん?
T)え?
 
 
そう言われて視線を落とすと
足湯の看板のところに、
一人で立ってる海璃が見えた。
 
 
T)あいつ何してんだ?
  おい、海…っ
 
 
上から呼びかけようとしたら、
営業部の女たちがゾロゾロと歩いてきた。
 
 
海)あの、お話って…
女)あんたさぁ、新人のくせに
  自分の立場、全然わかってないよね?
女)身の程わきまえたら?
海)え…?
女)こっちの島まで男漁りに来るなって
  言ってんだよ!
女)ランチぐらい勝手に行けっつーの!
海)…っ
女)なんなの?男目当てで会社来てるわけ?
  恥ずかしくないの?w
女)仕事もろくにできないくせに
  男漁りだけは一人前って?w
  そんなんならもう会社辞めたら?
女)なんとか言ったらどうなの!
海)…っ
 
 
T)ちょ、あいつら何して…
J)シッ。
 
 
何好き勝手言ってやがんだよ!!
ふざけんな!!
 
 
女)JさんもTくんも優しいから
  仕方な〜くあんた達に構ってあげてるけど
  ほんとは迷惑してるって
  あたし達に愚痴ってんだからね?
女)新人のくせに先輩に迷惑かけて
  足引っ張って…
  あんた仕事なめてんの?w
海)…っ
女)わかったら二度と営業の方に来んなよ。
女)あの二人にも近付かないで。
  わかった?
 
 
T)おい、お前…っ
J)Tくん!
 
 
窓から声をかけようとしたけど
Jさんに止められた。
 
 
J)ここでTくんが庇ったら
  余計反感買うよ?
T)でも…っ
J)もう少し様子見てようよ。
T)…っ
 
 
あんなあることないこと言われたら…
あいつ…泣いちゃうじゃん…っ
 
 
女)返事ぐらいしたらどうなの?
  聞いてんの?
海)……や、です!!
女)……は?
海)やです!!
女)何言ってんの?こいつ…
女)嫌だって何が…
海)業務中は用事がない限り
  営業の島へは行きません。
  仕事は少しでも早く一人前になれるように
  精一杯頑張ります。
  でも…っ
  仕事とプライベートは別だから…
  Tさんに近付かないなんて
  そんな約束したくありません!
女)はぁ!?
女)あんたふざけてんの?
  うちらの話、聞いてた?
海)私はTさんが好きなんです!
女)そんなん知るかよ!!
 
 
あっ!!
海璃が突き飛ばされた…!!
 
 
女)Tくんのこと狙ってる女が
  どんだけいると思ってんの?
女)今年入ってきた新人が
  調子に乗ってんなよ。
海)なんて言われても、嫌です!!
  Tさんは…
  私が生まれて初めて
  好きになった人なんです!
  大好きなんです!!
  絶対に諦めません、
  誰になんて言われても嫌です!!
 
 
立ち上がった海璃は
真っ直ぐに力強く、そう言い放った。
 
 
女)バッカじゃないの?
  Tくんはあんたなんか
  相手にしてないっつーの!
女)眼中にないわ!
海)それでも好きです!!
  Tさんが誰を好きでも…
  私のことなんか見てなくても…
  私は好きなんです!!
女)こっわ…
  こいつストーカーじゃんw
女)頭おかしいんじゃない?w
 
M)コラーーーー!!!
 
 
あ、Mちゃんが走ってきた。
 
 
M)あんた達ねぇ!
  こんな大勢で寄ってたかって
  新人いじめて恥ずかしくないわけ!?
女)…っ
M)言いたいことあるなら
  一人ずつ言いなさいよ!!
  ほら!!
女)…っ
M)ほんと営業部の女って
  束にならないと何もできない
  情けない集団ね!!
女)はぁ?!
M)性格悪い女の集まりだって言ってんの!
女)あんたに言われたくないわよ!
  男の前でぶりっこばっかりして!
M)ぶりっこして何が悪いのよ!
  それであんた達に迷惑かけてないでしょ!
 
 
J)ぶくくっw
 
 
隣でJさんは肩を揺らして笑ってて…
 
Mちゃんの怒涛の勢いに
営業の女たちは尻尾を巻いていなくなった。
 
 
M)海璃ちゃん!よく戦った!偉いぞ!
海)ふぇ…っ
M)あああ…っ
  怖かったね、よしよし。
海)Mさぁん…っ
 
 
T)…っ
 
 
やっぱり怖かったんじゃん。
 
なのに…
あんなに頑張って…
 
 
J)Tくん、どこ行くの?
T)海璃んとこです!
J)ちょっと待ったちょっと待ったw
T)わっ
 
 
浴衣の後ろ襟をJさんに掴まれた。
 
 
J)海璃ちゃんはもう大丈夫だよ。
  Mちゃんがいれば。
T)でも…っ
J)俺たちはほら、一杯やろうよ。
T)……。
 
 
そう言われて仕方なく、
予定通りラウンジに向かった。
 
 
J)じゃあ乾杯。
T)乾杯。お疲れさまです。
 
 
グラスを合わせると
Jさんが満足げに笑った。
 
 
J)カッコ良かったねぇ、海璃ちゃん。
T)……はい。
J)あの子ほんと芯はしっかりしてるよね。
  姫にそっくりw
T)……。
J)……で、こじらせTくんは
  一体何に悩んでるのかな?w
T)えっ…、こ、こじらせ…?
J)俺にはそう見えるけどw
T)…っ
 
 
俺って、こじらせてんの?
何を?
 
 
J)海璃ちゃんにまだ返事してないんでしょ?
T)……はい。
J)でも好きでしょ?海璃ちゃんのこと。
T)え…っ
 
 
そんな風にズバリ聞かれたのは、初めてで。
 
 
好きかと聞かれたら、
とっくに好きだと思う。
 
でも…、、
 
 
T)…よく…わかんなくて…
J)……。
T)海璃のことは…好きなんですけど…
  ♡が……、消えないんです。
J)で?
T)え?
J)だから海璃ちゃんとは
  付き合えない、ってこと?
T)……はい。
  もしあいつと付き合う日が来るなら、
  それは♡のことも全部忘れて
  100%海璃のことを
  好きになってからじゃなきゃ
  ダメだと思うから…。
J)……。
 
 
でもそんな日は来ないと思う。
♡のことを忘れる日なんて…
 
 
J)海璃ちゃんが姫を忘れてほしいって
  言ってるの?
T)え…?
  ……いや、そんなことは…、
 
 
言うわけない。
 
それどころか、
♡を好きな俺をそのまま好きだって…
そう言ってくれてるくらいなのに。
 
 
J)姫0:海璃ちゃん100になる日なんて
  待ってたら
  そんな日、永遠に来ないよ。
T)えっ…
J)あんなに好きだったんだから
  姫が0になる日なんて
  来るわけないでしょ。
T)でも…それじゃ…
J)いいじゃん。
  海璃ちゃんの方が1でも多いなら。
T)え…?
J)姫49:海璃ちゃん51で
  もう付き合っていいと思うけど。
T)…っ
J)付き合ってくうちに
  海璃ちゃんがどんどん増えてくよ。
 
 
そう…なのか…?
 
 
J)Tくんは真面目すぎ。
  考えすぎなんだよ。
  ちなみに海璃ちゃんは
  姫99:自分1なだけでも
  涙流して喜ぶと思うよ。
T)…っ
 
 
なんだよそれ。
海璃が1なわけない。
 
 
J)Tくんが姫しか見えてなくて
  姫に100を注ぎ続けてた頃から
  彼女はTくんを好きなんだから。
  自分を1想ってもらえただけでも
  嬉しいと思うよ。
T)…っ
J)そういう健気な子でしょ、彼女は。
T)…っ
 
 
わかってる。
海璃は健気で真っ直ぐで…
だからこそ俺は、
同じくらいの想いを返してやりたくて…
 
そうじゃないなら
付き合う資格なんてないような気がして。
 
 
海璃が1なわけない。
1なわけないけど
じゃあどれくらい好きなんだって言われたら
自分でもわからない。
 
 
T)俺はどうしても…
  ♡がまだ心の中にいる罪悪感みたいのが
  あって…
J)罪悪感…ねぇ…。
T)なんか…こう、
  海璃のこと可愛いなぁって思ったり
  抱きしめたいなって思う瞬間に、
  頭をよぎるんですよ、♡が。
J)へぇ?w
T)で、まだ♡を忘れてない分際で
  俺は何してんだーーー!!
  って、自己嫌悪に陥る、という…
J)あはははw
 
 
Jさんは俺の悩みを笑い飛ばした。
 
 
J)Tくんはさぁ、
  まだ姫と付き合いたいとか思ってるの?
T)いや、それは全然思ってないです!
J)姫が登坂くんと別れて
  やっぱりTくんが好きって
  もし今言ってきたとしたら?
T)えっ…
  いや…、それは全然想像できないし…
  ありえないと思う…。
J)……。
T)ありえないと思えるくらいに
  あいつは…いい意味で、
  俺に少しもフラついたりしないで
  いてくれたから…。
J)それがあの子のいいところだよねぇ…
T)え?
J)少しも迷ったり悩んだり
  してくれなかったから
  いい意味で諦めがついたというか…w
T)はい、そんな感じです、ほんとw
 
 
俺たちは顔を見合わせて、苦笑いした。
 
 
J)じゃあ今は別に姫のこと
  「好き」ってわけじゃないんじゃない?
T)え…っ
J)付き合いたいと思わないんでしょ?
T)…っ
J)姫とキスしたいとか思う?
T)えっ…
 
 
そう言われて、思わず想像したら…
 
 
T)ダメですよ!絶対ダメ!
  海璃が泣く!!
 
 
思わず出た俺の言葉に、
「ほらー」と言ってJさんは笑った。
 
 
J)Tくんが今好きなのは
  海璃ちゃんじゃんw
T)…っ
J)姫のことはさ、
  あれだけ好きだったんだし、
  今も普通に友達みたいな関係だから
  人として「好き」っていう感情が
  残ってるのもわかるし、
  それはこの先あってもいい感情だと
  思うけど…
T)……。
J)それはもう恋愛感情とは
  違うと思うけどな。
T)…っ
J)姫を見て可愛いなぁと思ったり
  あの笑顔を見て嬉しくなったりするのは
  別にみんな同じだよw
T)え?
J)恋愛感情じゃなくてもさ、
  それがあの子の力だからw
T)…っ
 
 
そう言われると、確かにそんな気がしてきた。
 
 
あいつを見たら可愛いなって思うし
笑ってると嬉しくなるけど…
 
前みたいに
付き合いたいとか
キスしたいとか
そういう感情では、もうないと思う。
 
 
J)「忘れられない」=「好き」とは
  違うと思うよ。
T)…っ
J)Tくんが抱きしめたいなぁとか
  キスしたいなぁって思うのは…
  今はもう、海璃ちゃんでしょ?
T)…っ///
 
 
そう言われて、
なんか一気に顔が熱くなった。
 
 
J)Tくんはくそ真面目だから
  すぐ難しく考えて
  こじらせちゃうんだろうけど
  たまには己の欲望に
  正直になってみたら?w
T)え…?
J)抱きしめたかったら抱きしめて、
  キスしたかったらキスすればいいんだよ。
T)////
J)そうやって素直に踏み込んでみれば
  そこから愛しさが生まれたり
  新しいものが見えたりするかもよ?
T)////
 
 
そ、そうなのかな…?
 
 
T)いや、でも、あいつ…
  キスもしたことないだろうし…///
J)思い出に残るファーストキスに
  してあげればいいじゃんw
T)////
J)全部Tくんが初めてなんでしょ?
  大事にしてあげなよw
T)////
 
 
ダメだ、顔が熱い!!
 
俺はもう一杯頼んで、
それを一気に飲み干した。
 
 
T)お、俺の話はもういいですよ!///
  Jさんはどうなんですか!
J)俺ぇ?w
T)そうですよ!
 
 
♡のこと好きだったのは知ってるけど
フラれた後、どうなのかなって。
 
 
J)姫に未練はもうないよ?さすがにw
T)それは…わかってますけど…
  どうなんですか?恋愛事情。
 
 
Jさんのそういうの、聞いたことないし。
 
なんとなく…
女っ気は絶えなそうなイメージだけど。
 
 
J)俺はねぇ…、今は…
  未知なる自分と遭遇中w
T)へ??w
  なんすかそれ、どういう意味ですか?
  どういうことですか?
J)どういうことだろうねぇ?
  あはははw
T)も〜〜〜〜
 
 
Jさんはほんとはぐらかすのが
上手いんだよなぁ。
 
 
 
 
 
ー続ー

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  1. (。・д・。)/ より:

    最近忙しくて全然見れなかった~
    営業部の女たちホントムリ!海璃ちゃんとかみたいにはなれないけどあの人たちみたいにはなりたくないわー

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