[326]その先を言わないで(海璃Side)

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T)ここの社長はねー、
  感情が読めないクールなタイプ。
  ノリとか勢いは通用しなくて
  数字重視な慎重で堅実な人だから。
海)わかりました!
T)じゃあお願いします。
海)はいっ!
T)こんにちは。
  本日はお忙しい中お時間いただき
  ありがとうございます!
海)……どうも。
T)少しでも御社のお役に立てるような
  ご提案が出来ればと思っておりますので
  どうぞよろしくお願いいたします。
海)ふむ。
 
 
私は今、Tさんのお家で
Tさんのロープレの練習相手になっています。
 
一緒に晩御飯を食べた後は
こんな風にロープレをしたり、
TVを見たり、映画を観たり…
 
少しでもTさんと一緒にいたい私は
それがなんだって、嬉しいのです。
 
 
T)具体的に数字でいうと
  このような変化になります。
海)ふむ。前年の比較データなどは
  ないのかね。
T)もちろんお持ちしております。
  こちらです。
海)ふむ。
 
 
仕事をしてるTさんは
すごくカッコ良くて。
 
こんなキリッと商談してる姿なんて見てたら
もうドキドキしちゃう。
 
 
T)このプランですと、
  ここが弱点になりますが
  それを補うのがこれです。
海)…っ
T)これとこれを組み合わせて
  ご利用いただくことで、
  この数字も夢ではないかと。
海)すごい…っ
T)ちなみに御社の強みである
  これを活かしながら
  こうしていただければ…
海)わぁ!!
 
 
iPadを使いながら
丁寧にわかりやすくスイスイと話し進める
Tさんのプレゼンは本当にすごい。
 
 
海)やります!!
T)……ぶっw
海)はっ…!
 
 
しまった。
 
 
T)あははははw
海)……///
 
 
またやってしまった。
 
 
T)ご契約ありがとうございますw
海)……ごめんなさい…///
 
 
練習相手をしていても、
いつもTさんのプレゼンに
のめり込んでしまって…
 
最後には自分の役を忘れてしまう、
私のダメなところ。
 
 
T)いやーー、笑い堪えるのに必死だったw
海)ええ?!
T)だって…
  お前がキリッとした顔で「ふむ」とか
  連発するから…
  もう面白すぎて…ぶくくくww
海)だって…
  そういう社長さんなのかなと思って///
T)そこまでなりきらなくてもいいのに…
  ぶくくくww
海)////
 
 
なんだかとっても恥ずかしい。
 
 
T)ほんとお前は可愛いなぁ?w
 
 
そう言ってTさんは
すごく優しい表情で笑いながら
私の頭を撫でてくれた。
 
 
海)////
 
 
ぼんっ!
……って顔が熱くなったのを
自覚したのと同時に、
 
Tさんはハッと我に返ったように
私から手を退けた。
 
 
T)ご、ごめん…//
海)……(ふるふる)///
 
 
頭なでなでなんて、すっごく嬉しいのに…。
 
 
海)Tさんは…
  こんなにベテランになっても
  こういう基礎練習をしっかりしてて
  本当にすごいなぁって尊敬します。
T)え、何いきなり…//
海)だって…本当にそう思うから…。
T)まぁ…ロープレはスポーツ選手でいう
  筋トレみたいなもんだからw
海)でも…
 
 
紅くんは大っ嫌いだって言ってたもん、
ロープレするの。
 
 
T)例えば歌手だってさ、
  新しい歌が出来上がって
  それを自分で一度も歌わずに
  いきなりステージで歌う奴なんて
  絶対いないじゃん?
海)はい。
T)それと一緒。
  出来上がったプレゼンを
  一度も自分で練習せずに
  いきなり相手の前で披露するなんて
  絶対あり得ないよ。
  相手の時間ももらってるのに失礼だし。
海)……なるほど…。
 
 
すっごくわかりやすい。
 
 
T)まぁ新人はみんな嫌いなんだけどね、
  ロープレすんのw
海)…Tさんも…嫌いでした?
T)うーん…、俺は…
  嫌いっていうか最初はコツが掴めなくて。
  でもさ、一回Jさんが見本のロープレを
  俺たちに見せてくれたの。
  あの時の衝撃はすごかったねw
海)ええっ!
T)もうさ、ほんっっとカッコ良くて!
  俺もこんなスマートな商談が
  出来る男になりたい!!!
  って猛烈に思ったもんw
海)すごい…。
T)そこから俺はもうひたすら
  Jさんの真似をしまくってw
 
 
それで今ではJさんと肩を並べて
会社のナンバー1、2なんだから
Tさんって本当にすごい。
 
 
T)俺いつかあの人を抜くのが夢なんだー。
海)すごいですね!
T)いや、実現してないから
  何もすごくはないんだけどw
海)Tさんなら絶対できます!
T)…っ
海)私応援してます!
  ロープレの練習も
  いくらでも付き合います!
T)ぷはっw ありがとw
 
 
Tさんは嬉しそうに笑って
私の頭の上まで手を伸ばして、
それをスッと引っ込めた。
 
 
海)…っ
 
 
なでなでしてもらえるのかと思っちゃった…。
 
 
T)ふ、風呂でも洗ってこようかな!///
海)…っ
 
 
ふいに立ち上がって
リビングを出て行く背中をじっと見つめて。
 
抱きつきたい衝動を、ぐっと堪えた。
 
 
私がTさんに告白する前は
頭なでなでとか、よしよしとか、
たくさんしてくれてたし…
私が泣いてる時は
抱きしめてくれたりしたこともあったけど…
 
私が告白してから、
そんなのはほとんどなくなって。
 
たまに不意にしかけても、
Tさんはすぐにハッとしてやめちゃうの。
 
私は…やめないでほしいのに…。
 
 
意識してしないようにしてるってことは
私を無駄に期待させないためなのかな、とか…
そんな風に思って少し凹んだり…。
 
 
でもくよくよしてたって
Tさんが振り向いてくれるわけじゃないから
そんな時は私から「好き」って言ったり
無理やり抱きついたりしちゃってるんだけど…
 
 
はっ…
Tさんが戻ってくる!
 
このままだと、そろそろ帰れって
言われちゃう時間だから…
 
……よーし!
今日は寝たフリしてみちゃう!!
 
 
T)……あれ?海璃?
海)……。
T)寝てんじゃん…w
 
 
はい。私は寝ています。
 
 
T)おーい、起きろー。
 
 
や、です。起きません。
 
 
T)疲れちゃったか…?
 
 
疲れてなんていません。
Tさんと一緒にいれて嬉しくって
元気いっぱいです。
 
 
海)…っ
 
 
私が寝たフリを続けてると、
Tさんの大きな手が
優しく私の頭を撫でてくれた。
 
ドキドキ…、ドキドキ…、ドキドキ…
 
 
海)////
 
 
どうしてこんな優しく…
撫でてくれるんだろう。
 
 
嬉しくって…
気持ち良くって…
 
しばらくその心地良さに
目を閉じたままでいたら…
 
ポツリ、優しい声が降ってきた。
 
 
T)……可愛いなぁ…。
 
 
!!???
 
思わず目を開けそうになるくらい、
びっくりした。
 
 
か、可愛い…って…言った?今!!
 
う、う、うそ…っ///
 
 
どうしよう、ドキドキが大きくなって
Tさんに聞こえちゃいそう。
 
 
だって…だって…
 
こんな優しく頭なでなでしながら
そんなしみじみ…「可愛い」って言うなんて…
Tさん、ずるいもん///
 
 
どうしよう…
私、顔赤くなってないかな?///
 
 
もう…寝てるフリも限界かもしれない。
 
起きます!
 
私は、起きます!!
 
 
……ぱちっ。
 
 
T)わっ!!
  ……あ、ええと…、起きた?
海)ごめんなさい、寝ちゃってました…。
 
 
ごめんなさい、嘘ついて…。
 
 
T)別に…いいけど…///
 
 
とくん、とくん…、
 
どうしよう。
見つめてるだけで、「好き」があふれ出す。
 
 
T)もう遅いし…そろそろ…
海)Tさん…っ!
T)!!!
 
 
思わずぎゅっと、抱きついた。
 
 
海)大好きです///
T)急に何!///
海)急じゃ…ないです。
  いつも…大好きです///
T)わ、わかったから離せ!///
海)……や、です///
T)////
 
 
とくんとくんとくん…
心臓が動きを速めてる。
 
 
Tさんが私の背中に手を回してくれることは
一度もなくて…
 
いつも私が勝手に抱きつくだけだけど…
 
少しでも、こうしてたい。
 
 
海)こんなくっついてたら…
  もっともっと好きになっちゃいそう…///
 
 
思わずぼそっと呟くと、
 
 
T)だったら離れなさい///
 
 
Tさんが先生みたいな口ぶりでそう言った。
 
 
海)ドキドキしすぎて…
  心臓が爆発しちゃいそうです…///
 
 
思わず本音を漏らすと…
 
 
T)だからだったら離れなさい!///
 
 
また先生みたいなTさん。
 
 
海)や、です!///
T)…っ
海)爆発したっていいもん!///
T)////
 
 
爆発したっていいから…
このままぎゅって…してたいです。
 
 
 
……
 
 
 

 
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
女)〇〇部の海璃って女、うざくない?w
女)Mって女といつもくっついてる子でしょ?
女)なんなのあいつらw
女)ランチ行きましょうよぉ〜〜♡
  ってぶりっこ丸出しでねw
女)毎回こっち来るよね。暇なのかよw
  自分の島で食ってろっつーの!
女)ほんとほんとw
 
 
休憩スペースの自販機に
コーヒーを買いに行ったら
そんな会話を意図せず耳にしてしまった
ある日の昼下がり。
 
 
女)海璃って女さぁ、姫の真似してんの
  バレバレじゃね?w
女)わかる!w
  髪型とか服装とかさー
  必死に雰囲気マネてんのねw
女)痛すぎるでしょw
  バカな女〜〜〜w
女)あはははw
 
 
……ガーン…。
 
 
蒼)気にすんな。ほら、どれ。
海)えっ…
 
 
500円玉を握りしめたまま
立ちつくしてた私の前に、蒼くんが現れた。
 
 
蒼)5秒以内なら奢ってやるぞ。
海)ええ?!
 
 
あ!もうお金入れてる!
 
 
蒼)5、4、3、
海)コーヒー!!
 
 
思わず押しちゃった、ちゃっかりな私。
 
 
蒼)ははは、ほらw
海)……ありがと//
 
 
冷たいコーヒーを受け取って、
500円玉はスカートのポッケにしまった。
 
 
海)いただきます。
蒼)ん。
 
 
さっきの営業部の人たちは
反対側のドアからいなくなって
私は蒼くんと一緒に隅のテーブルに腰掛けた。
 
 
海)……私…真似してるわけじゃ…
  ないんだけどな…。
蒼)……。
海)もちろん憧れてはいるけど…。
蒼)わかってるよ。
  海璃のテイストが♡さんと似てるのなんて
  入社した頃からずっとじゃん。
海)…っ
蒼)あんなのただの嫉妬だから気にすんな。
  お前は普通に可愛いよ。
海)////
 
 
蒼くんってばフォロー上手だな。優しい。
 
 
蒼)海璃もMさんも…
  ツートップと仲良いから
  ああやって僻まれてるだけだろ。
海)そう…なのかな…。
蒼)逆を言えば…
  あーゆーのと戦う覚悟がないなら
  Tさんなんてやめとけば?w
海)…っ
蒼)あそこまでモテる人好きになったなら…
海)覚悟してるもん!!
蒼)…っ
海)戦うもん!!
蒼)ふーん?w
 
 
とは言ったものの、
どうやって戦えばいいのか
全然わからないけど…。
 
 
蒼)つーかさぁ、結構経つのに
  まだ落とせないわけ?Tさんのこと。
海)「落とす」とか言い方しないで。
蒼)はいはいw
海)少しずつ…頑張ってるもん…。
蒼)俺が協力してやろっか?
海)えっ!ど、どうやって?!
 
 
思わず食いついてしまった。
 
 
蒼)ほら、噂をすれば…w
  すげぇタイミングで来るな、あの人w
海)えっ…
 
 
蒼くんは私の後ろを見てニヤッと笑って、
 
 
蒼)作戦だからな?
海)…っ
 
 
念押しするようにそう言って、
私の頭をポンと叩いた。
 
 
ゆっくり振り返ると、
すりガラスの向こうに見えたのはTさんの靴。
 
Tさんが入ってくる…
と思った瞬間、
私はどうしてか蒼くんの腕の中にいた。
 
 
海)ちょ、離して!///
蒼)付き合おうよ。
海)…っ
 
 
いきなり蒼くんの声が大きくなって
びっくりした。
 
まるでわざと聞こえるように…。
 
 
蒼)付き合ってやってもいいよ、お前と。
海)え…?
 
 
やっと腕をほどいてくれた蒼くんは
私の頬を撫でながらニヤッと笑った。
 
 
蒼)ほんとは姫さんが良かったけど…
  あの人全然落ちないからさぁw
  代わりにお前と付き合ってやっても
  いいよ?
 
 
ガタンと背中で音がして
Tさんの気配を感じる。
 
 
蒼)お前ってなんか姫さんと似てるしさぁ、
  まぁ、お前でもいいかなってw
 
T)ふざけんな!!
 
海)…っ
 
 
私が振り返ったのと同時に、
Tさんが蒼くんに掴みかかった。
 
 
T)お前何ふざけたことばっか言ってんだよ?
蒼)何がですか?w
  好きだから付き合おうって言って
  何が悪いんですか?
T)は…?好き…?
蒼)好きですよ、海璃のこともそれなりにw
T)…っ
蒼)それに見た目が姫さんと似てるんで…
  代わりに丁度いいかなーってw
T)ふざけんな!!
 
 
Tさんが怒って壁を殴ったけど、
蒼くんは怯みもせずに笑ってる。
 
 
T)海璃は海璃だろ!
  こいつの良さを
  ちゃんと知ろうともしないで
  簡単に好きだとか言ってんじゃねぇよ。
海)…っ
蒼)Tさんに言われたくないですよーw
T)は?
蒼)姫さんにフラれたからって
  海璃を代わりにしてるくせに。
T)俺は海璃を♡の代わりだとか
  そんな風に考えたことは一度もない!
蒼)へぇ、そうなんですか?
T)そんないい加減な気持ちで
  こいつに近付くな。
蒼)海璃が俺のこと好きになれば
  問題ないんですよね?w
T)は?
蒼)Tさんなんてやめて、俺にすれば?w
海)きゃっ///
T)離せ!!
 
 
蒼くんに抱きしめられかけた私の身体は
Tさんに強く引かれて、
Tさんの腕の中に、おさまった。
 
 
蒼)ま、そーゆーことだから。
  海璃、いつでも待ってるぞーw
 
 
蒼くんは笑いながら、
最後、私にしかわからないように
合図みたいなウインクをして
外に出て行った。
 
 
 
それから夜になって…
いつも通りスーパーでお買い物をして
帰ってきたんだけど…
 
Tさんはなんだかご機嫌ナナメで…
 
 
T)お前…あいつだけはやめとけよ。
 
 
人参を切りながら低い声でそう言われた。
 
 
海)あいつって…蒼くんですよね?
T)……。
海)やめとくも…何も…
  選択肢にないです。
T)え…?
 
 
だってあれは蒼くんの演技だし。
 
もしたとえあれが本当だったとしても
私の気持ちは1mmも揺らがない。
 
 
海)私が好きなのは…Tさんだけです。
T)…っ
 
 
そう言ったのに、
Tさんは無反応で人参を切り続けるから
私はお玉を置いて、
Tさんの背中に抱きついた。
 
 
T)こ、こら!何してんだ!
海)……好きです///
T)いきなりすぎる!指切る!!///
海)切ったら手当てしてあげます…。
T)そういう問題じゃなくて!w
 
 
ようやく笑ってくれたTさんにほっとして
後ろから顔を覗き込むと…
 
 
T)なんだよ…///
 
 
少し照れたようなTさんがそこにいて、
なんだかキュンとした。
 
 
海)好きです///
T)わかったから!///
 
 
きっと私の気持ちなんて
1/3も伝わってないんだろうなぁ…。
 
 
 
……
 
 

 
 
 
T)……あのさぁ…。
海)はい。
 
 
二人で作った八宝菜を食べながら
Tさんはなんだか真剣な顔。
 
 
T)俺がお前を…♡の代わりにしてるとか…
  そんな風に感じたこと、一度でもある?
海)あれは蒼くんが勝手に言っただけで…
T)いや、それはわかってるけど…
  海璃自身、そんな風に感じたこと
  もしかしてあんのかなって思って…
海)ないですよ!
T)…っ
海)一度もないです!
T)……そっか。
 
 
Tさんは困り笑いみたいな表情で
うずらの卵を口に運んだ。
 
 
T)あのさ、俺…やっぱり…
海)私、Tさんが好きです。
T)…っ
海)このまま頑張って、それでも
  Tさんに振り向いてもらえなかったり
  Tさんが違う人を好きになる日が
  もし来たとしても…
  別にそれで後悔したりしません!
  Tさんを責めたりもしません!
T)…っ
海)私が勝手にTさんを好きなんです。
  側にいられて、嬉しいんです。
  だから…っ
 
 
その先を、言わないで。
 
 
「俺…やっぱり…」
 
 
やっぱり、♡さんが好き?
やっぱり、お前の気持ちには応えられない?
 
そんなの、聞きたくない。
 
 
T)……ん、わかった。
海)…っ
 
 
わがまま言って、ごめんなさい。
でも、諦めたくないから。
 
まだ終わりにしないで…、お願い。
 
 
Tさんは…
たまにこうして「やっぱり」って
言いかける時がある。
 
それは大体、♡さんと一緒に撮影があった日や
♡さんと過ごす時間が長かった日。
 
 
ああ、きっと、
気持ちを引き戻されたんだろうなぁ…
ってわかってしまう私は
とっても切なくなるけど…
 
そんなの承知の上で好きになったんだから
くよくよしてられない。
 
 
きっとTさんはすごく優しいから
こういう時間にふと
罪悪感を感じるんだと思う。
 
私の気持ちを知っていながら、
一緒に過ごすこと。
 
私がいくらそれでいいって言っても
それが幸せだって言っても、
そうは思ってくれないんだ。
 
 
一生懸命私の気持ちと
向き合おうとしてくれてるのは
すごく嬉しいけど…
 
その反面、そうやって苦しめてしまってるのは
私も辛いところがあって。
 
 
でもだからといって、諦められない恋心。
恋ってワガママで自分勝手なんだなぁ…。
 
でもいつか…
いつか、Tさんが私といてくれることで
心から笑顔になってくれる日が
来たらいいなって…
 
ただそれだけを、願う毎日です。
 
 
海)今日はロープレの練習、ないですか?
T)ああ、今日はないよ、ありがとなw
海)いえ…、
T)今日もお前のおかげで
  上手く商談できたよ。
海)ほんとですか?
T)うん。
海)良かったぁ…♡
 
 
少しでも役に立てたなら、とても嬉しい。
 
 
T)今日は何しよっか。映画でも観る?
海)はいっ♡
 
 
食後の貴重な時間。
1日で、一番幸せな時。
 
 
T)……ちょ、近くない?///
海)えっ…
 
 
嬉しくてついついピッタリ寄り添っちゃった。
 
 
海)……ごめんなさい…//
 
 
遠慮して少し距離を開けると…
 
 
T)いや、別にいいけど///
 
 
そう言って座り直したTさんは
私にピッタリ寄り添ってくれた。
 
 
海)////
T)……な、なんだよ///
海)い、いえ…///
T)お前から先にくっついてきたじゃん///
海)…そう…なんですけど…///
 
 
自分からくっつくのはいいけど
Tさんから来られると
ドキドキして死にそうです。
 
 
T)……うん、ごめん。
 
 
あ、離れちゃった!!
 
 
海)や、です!///
 
 
ぴとっ!!
 
 
T)どっちだよ!///
海)くっつきたいです!///
T)…っ
海)////
T)……うん、///
海)////
 
 
いいの…かな?///
 
 
ドキドキドキ…ドキドキドキ…
 
 
くっついてる左肩に感じるTさんの温もり。
 
左半身が、心臓になったみたい。
 
 
海)…手は…繋いじゃ…ダメですか?///
T)は?!///
 
 
繋ぎたい…な…
…って思って、そっとTさんの顔を見ると…
 
 
T)そんな顔で見んな!///
 
 
って怒られちゃった。
 
 
海)じゃあ映画始まる前に
  一回だけぎゅってしていいですか?///
T)は?…って、オイ!///
 
 
ダメって言われる前に、抱きついた。
 
 
T)お前なぁ!///
 
 
怒られても、離れないもん///
 
 
T)あのなぁ、お前…
  これ普通の男だったら
  お前とっくに襲われてるぞ?!///
海)…っ
 
 
その言葉に、思わず顔を上げた。
 
 
T)……早く…離れろ///
海)私…Tさんにだったら何されても…
T)変なこと言うな!映画観るぞ!///
海)…っ
 
 
変なこと、じゃないのに…。
 
本当に思ってるもん…。
 
 
だって、こんなにこんなに、大好きだから。
 
 
 
……
 
 

 
 
 
♡)あれ…?
 
 
次の日は二泊三日の社員旅行。
 
バス乗り場の前で座席表が配られて
それを見て不思議そうにしてる♡さん。
 
 
蒼)ああ、ちょっと諸事情で…w
  ♡さんは紅の相手でもしてやって下さいw
 
 
蒼くんは笑いながらそう言って
私にも座席表を渡してくれた。
 
……あ、♡さんと紅くんが隣同士になってる。
 
私は…、、
 
 
海)えっ!
 
 
思わず声を上げた私に
蒼くんはニヤッと笑いかけた。
 
 
蒼)作戦変更。
  ただの隣同士よりこっちの方が
  面白くなると思うけど?♪
海)…っ
 
 
私の隣の座席はTさんじゃなくて
蒼くんになってた。
 
 
女)あ、あたしTくんの隣だー♡
  よろしくね♡
T)何がだよ。ただ隣なだけだろ。
女)あははは、冷たーーい♡
 
 
Tさんの隣は営業部の女の人。
 
 
この社員旅行、一体どうなっちゃうんだろう?
 
 
 
 
 
ー続ー

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