[328]もう少し待ってて(TくんSide)

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翌日。
 
 
また移動して
観光名所で自由時間になると
うちの部の女どもがまとわりついてきた。
 
 
女)JさんとTくんはどこ観るんですかぁ?♡
女)ね、ね、一緒に回ろうよー♡
 
 
お前ら昨日はふざけた真似しやがって…
って文句言いたいところを
俺はなんとかグッと堪えた。
 
 
女)そういえばJさん、
  気をつけた方がいいですよぉ?
J)なにー?
女)Mって子ですよぉ!
女)そうそう!あの子、すっごいぶりっこで
  本性はすごいんですよ!びっくり!
J)へぇ?w
女)あたし達にすごい勢いで
  悪口言ってきて〜〜
  ほんとに怖かったんですよぉ!
女)騙されないように
  気をつけてくださいね?
J)ははははw
  俺ねぇ、どっちのあの子も
  割と好きだよー?w
女)えっ…
J)ご忠告どうもありがとうw
 
 
Jさんが笑顔でサラリとかわすと
女達の視線が今度は俺に向いた。
 
 
女)Tくんも気をつけなよ!
女)そうそう!
  あの海璃って子、おとなしいふりして
  すっごいワガママだよ!
T)……へぇ?
女)先輩に迷惑かけようが
  どうでもいいんだって!
  自分の恋愛が一番大事だって
  開き直ってたんだから!
女)信じらんないよねぇ〜
T)お前ら…
J)Tくんの彼女のこと
  あまり悪く言うと
  Tくん怒っちゃうよー?w
女)えっ
T)…っ
 
 
か、か、彼女?!
 
俺が言い返そうとしたら
Jさんがとんでもないことを言い出した。
 
 
J)あれ?Tくんの彼女の話でしょ?
  海璃ちゃんって。
女)…っ、彼女…?
J)Tくんすっごく可愛がってて
  大事にしてるんだからー
女)は…?
女)マジで…?
J)ねぇ、Tくんw
 
 
Jさんが悪ふざけな顔で舌を出してる。
ほんとにこの人はもう…
 
 
女)付き合ってる…の?
女)嘘でしょ?
T)文句あるか!!
女)うそ…っ
女)やだ!信じらんない!
女)もう行こ!
女)うん!
 
 
女たちが一斉にいなくなると
Jさんは笑いながら俺の肩を叩いた。
 
 
J)これでもう嫌がらせ
  されないんじゃない?w
T)Jさんが嘘つくから…
J)いいじゃん、遅かれ早かれ
  付き合うでしょ。
  俺はちょっとフライングしただけーw
T)……///
 
 
女達の噂は恐ろしいもんで…
俺と海璃が付き合ってるって話は
瞬く間に広がった。
 
 
T)……はぁ…。
 
 
俺は会社の輪から一人抜けて、
ベンチに座って空を見上げた。
 
 
T)疲れたなぁ…
蒼)お疲れさまですw
T)うわっ!!
 
 
いきなり目の前に現れた顔に
思わず声を上げた。
 
 
T)なんだよ!
蒼)海璃と付き合ったんですねーw
T)…っ
 
 
こいつの前ではそういうことにしとこう。
 
 
蒼)Tさん鈍いから
  もう少し時間かかるかと思ったけどw
T)は?
蒼)だって自分の気持ちにも
  気付いてなかったじゃないですかw
T)自分の…気持ち…?
 
 
何言ってんだこいつ。
 
 
蒼)海璃のこと好きなくせに
  無駄にもったいぶって。
T)俺はそんなんじゃ…っ
蒼)昨日だって。
T)…っ
蒼)紅に怒鳴ったのは
  ♡さんと話してて
  ムカついたからじゃなくて…
  海璃と話してる俺にムカついた
  八つ当たりでしょw
T)…っ
 
 
そう…なのか…?
 
 
蒼)帰りは席替わりますんで
  どうぞ海璃とイチャついてくださいw
T)は?!
蒼)Tさんの隣の女性にも話してあるんで。
 
 
蒼はニッコリ笑ってそう言うと
満足そうに去っていった。
 
 
T)なんなんだよ…。
 
 
わけわかんねぇ。
 
あいつも海璃のこと好きなんだろ?
どういうつもりだよ?
 
 
T)はぁぁ……。
 
 
一人になりたくて
もう一度目を閉じると
誰かの話し声が聞こえてきた。
 
 
男)ずっと好きだったんだ///
♡)ありがとうございます…。
男)気持ち伝えられただけで…
  十分だから。ありがとう。
 
 
あれ?
これ、女の方、♡の声じゃね…?
 
そう思って
閉じてた目をゆっくり開けたら…
 
 
♡)あっ、Tくん…
 
 
一人でこっちに歩いてくる♡が見えた。
 
 
T)やっぱりお前かw
 
 
俺が起き上がって隣を空けると
♡がそこへすとんと腰をおろした。
 
 
T)相変わらずモテてますねー
♡)え?
T)連日告白されて。
♡)連日…?
T)昨日も告られてたじゃん。
  原?ってやつに。
♡)あ、あれは違うよ!!
  原くんが好きなのはKちゃんだもん!
  …あっ!言っちゃった!どうしよう!!
T)K…?ああ、そうだったんだ…。
♡)どうしよう!内緒だよ!
  ああ、もう、私のバカ!
  絶対言わないでね!
T)はいはい、ぶくくくw
♡)わーん!もう!
 
 
ほんと嘘つけないもんなぁ、お前はw
 
 
♡)ぐるぐる…ぐるぐる…
T)は?何してんの?
♡)こうやったらTくんが
  今のこと忘れないかなと思って…
T)ぶはっ!あはははw
♡)忘れた?ねぇ!!
T)はいはい、忘れましたーーw
♡)絶対だよ!?
 
 
ほんと可愛いなぁ、こいつはw
 
 
「姫を見て可愛いなぁと思ったり
 あの笑顔を見て嬉しくなったりするのは
 別にみんな同じだよw」
 
 
ふとJさんの言葉を思い出した。
 
 
T)……。
♡)ん…?
 
 
「姫とキスしたいとか思う?」
 
 
……どうしてだろう。
 
あんなに好きで
あんなに何度も抱きしめたいって
キスしたいって
そう思った女なのに…
 
今は海璃の顔が浮かんで
そんなこと、想像できない。
 
 
♡)どしたの?
T)……なんでもないw
 
 
不思議だなぁ…。
 
 
♡)あ、Kちゃんが呼んでるー!
  じゃあねっ!
T)おう。
 
 
元気に走り去っていく後ろ姿を見届けて
俺はまた一人、目を閉じた。
 
 
「なんて言われても、嫌です!!
 Tさんは…私が生まれて初めて
 好きになった人なんです!
 大好きなんです!!
 絶対に諦めません、
 誰になんて言われても嫌です!!」
 
 
あいつ…
なんでそんなに俺のことが好きなんだろう。
 
あんなに一生懸命…真っ直ぐに…
 
 
海)はぁっ、はぁ…っ、
 
 
ん…?
 
 
海)Tさんっ!
T)…っ
 
 
名前を呼ばれて目を開けると
息を切らしてる海璃が目の前にいて…
 
どうしたんだろ。
走ってきたのか?
 
 
海)今、いいですか?
T)えっ
海)来てくださいっ!
T)わっ、ちょっ…
 
 
ぐいっと腕を引かれて
連れていかれた先は…
 
 
T)……うわ…、すげぇ……
海)これを見せたくって!!
 
 
崖から見える景色は
夕日に染まったオレンジ色の綺麗な街並み。
 
 
T)あんな赤い夕日…初めて見た…。
海)真っ赤ですよね!
T)うん…。
 
 
吸い込まれそうなほど
ゆらゆらと揺らめいてる。
 
 
女)ここの夕日スポットって、
  好きな人と見たら結ばれるって
  言い伝えあるんだってー♡
女)えー!うそー!
  あたし達女だらけで意味ないじゃん!
女)やだー!あはははw
 
 
下からそんな笑い声が聞こえてきて…
海璃は慌てたように俺を見た。
 
 
海)ち、違うんです!///
  そんなつもりじゃなくて…
  知りませんでした!
  今初めて聞きました!///
T)…っ
海)そうじゃなくて…っ
  この景色を…っ
T)わかってるよ…w
 
 
俺は海璃の頭にポンと手を乗せた。
 
 
この景色を俺にも見せてくれようと
したんだろ?
 
そんなのわかってるよ。
 
 
あんなに一生懸命
息を切らしながら走ってきて…
 
 
T)なんでお前って…
  俺なんかのこと、そんなに好きなの…?
 
 
「Tさんが誰を好きでも…
 私のことなんか見てなくても…
 私は好きなんです!!」
 
 
昨日の海璃の言葉。
 
地味に胸を打たれたんだけど…。
 
海璃はいつもそうだ。
 
真っ直ぐすぎるくらいピュアな気持ちを
俺に向けてくれてる。
 
 
海)俺なんか、って…
  私の好きな人のこと、
  悪く言わないでくださいっ。
T)え…?w
海)「なんか」じゃないです。
  私の好きな人は
  とってもとっても素敵な人なんです!
T)…っ
 
 
海璃は誇らしそうにそう言うと
地平線の向こうを真っ直ぐに見つめた。
 
 
海)大好きなんです…。
T)…っ
海)初めて好きになった人が…
  Tさんで良かった…。
T)……。
海)ビビビビーって…何か走ったんですよ。
  まるで神様が…
  この人に恋しなさいって
  教えてくれたみたいに…。
 
 
そう言って海璃ははにかむように笑った。
 
そんな夢見がちな言葉さえ
海璃が言うと、可愛いなって思う。
 
 
海)……っくしゅん!
T)ああ、寒い?
 
 
俺は自分のストールを外して
海璃の首に巻いてやった。
 
 
海)////
 
 
海璃はぽーっと俺のことを見つめてて…
 
 
海)心はすっごくあったかいです///
 
 
嬉しそうにストールに顔を埋めて
そう呟いた。
 
 
海)Tさんの匂いがする…///
T)ちょ、嗅がないで///
海)や、です。嗅ぎます。
T)やめろ、返せ!w
海)や、です!w
 
 
笑いながら俺から逃げ回る海璃を
グイッと引き寄せたら…
 
小さな身体が俺の腕の中に
すっぽりとおさまった。
 
 
T)…っ
 
 
抱きしめたわけじゃないんだけど…
慌てて離すのも不自然だし…
 
 
T)……///
 
 
少しくらい、いいかな。
 
 
海)な、なんでしょう…これは///
T)……わかんない///
海)心臓が…爆発しそうです…///
T)爆発してもいいって…言ってたじゃん///
海)…そう…ですけど…///
T)じゃあ離れる?
海)や、です!///
 
 
俺が後ろから
抱きしめてるような感じになってて…
 
海璃はそんな俺の手を、ぎゅっと掴んだ。
 
 
海)爆発を…選びます///
T)勇気あるね…w
海)離れたく…ないです///
T)////
 
 
可愛いなぁ…
なんでこんな素直なんだろ。
 
 
T)……あの…さぁ、
海)はい…。
T)俺たち…付き合ってるって噂、
  立っちゃったけど…、ごめん。
海)えっ!!
T)営業のやつらが…うるさくて。
海)そう…なんですね。
  私は全然いいです!嬉しいです!
T)…っ
海)あ、嬉しいって変ですか?///
  あの、ええと…
  私…Tさんのこと大好きですけど…
  ストーカーになったりはしないので
  安心してくださいね?///
T)…っ、…ばーかw
 
 
俺は海璃の手を上からぎゅっと握り直した。
 
 
T)そんな心配してねーわ。
海)////
 
 
あんな奴らの言うこと、気にしなくていい。
 
 
海)で、でも…
  Tさんは優しいから…
T)え?
海)いっぱい私と一緒にいてくれるけど…
  たまにうざくなったりしないのかなぁって
  心配に…なったりします…。
T)……。
 
 
そう言われてみると確かに…
すげぇ一緒にいるよな、俺たち。
 
会社も一緒で、家でも一緒で。
 
 
なのに、うざいなんて思ったことは
一度もなくて…
 
 
T)……居心地いいなって…思ってる。
海)え…?
T)お前といるの。
海)…っ
 
 
なんでだろう。
 
海璃がすごく素直だからかな。
一緒にいると俺も自然体でいれる。
 
 
海)……嬉しいです///
T)……。
海)ぎゅって…してもいいですか?
T)……え?
 
 
ぎゅって…
 
 
T)うわっ!///
 
 
こっちを振り向いた海璃は
そのまま正面から俺にぎゅーっと
抱きついてきた。
 
 
T)ちょ、こら!外だぞ!///
海)少しだけ、です///
T)誰かに見られる!
海)付き合ってる噂が立ってるらしいから
  気にしません。
T)はっ…、そっか…。
 
 
…って、「そっか」じゃなくて!
 
 
T)離れろ、ほら!///
海)少しだけです!だって…!
T)え…?
海)……居心地いいって…
  言ってもらえたのは…嬉しいですけど…
T)……
海)私は…Tさんといたら
  いつも心臓が爆発しそうなんです。
T)…っ
海)だから…このドキドキ…
  少しでも移ったらいいのに、って…///
 
 
そう言って俺の服をぎゅーっと掴んでる。
 
 
T)……俺が…ドキドキしてないとでも
  思ってんの…?///
海)……えっ
 
 
弾かれたように顔を上げた海璃は
俺をじーっと見つめて頬を染めた。
 
 
海)ドキドキ…して…くれてるんですか…?
T)……///
 
 
そんなに真っ直ぐ見つめないでほしい。
 
 
海)////
T)////
 
 
……ヤバイ、もう限界///
 
 
T)バス戻るぞ!///
海)まだ時間あります!///
 
 
後ろから抱きついてくる海璃を引きずりながら
来た道を戻った。
 
 
海)手…繋いじゃダメですか…?///
T)……は?///
 
 
あ、また勝手に繋ごうとしてる!
 
 
T)ダメ!///
海)あっ…
 
 
……そんなしょぼーんとしないでほしい…。
 
 
T)それはまた今度!///
海)えっ…
  こ、今度ですか?///
  手を繋いでもらえる約束ってことですか?
T)〜〜〜///
 
 
ああ、もう、なんだろう。
なんかすげぇ照れるんだけど。
 
 
T)知らね///
海)ええっ!!
 
 
そのままバスに戻ると、
みんなが一斉に俺たちを見た。
 
 
男)ラブラブカップル戻ってきたぞーw
男)ほんとに付き合ってんだなw
女)あ!Tくんのストール巻いてる!
女)うそ!やだっ!
男)お似合いじゃんw
男)ヒューヒュー♪
 
T)////
海)////
 
 
好き勝手に冷やかされて
席に座ろうとすると…
 
 
海)あれ。
女)あ、あたしね、席替わったの♡
  蒼くんがあたしと話したいからって
  言ってくれてー♡
 
 
蒼が言ってた通り
俺と海璃は隣にされてて…
 
なんだこの恥ずかしい展開は…
って思ったけど、
 
 
海)えへへへ///
 
 
海璃があまりに嬉しそうに笑うから
まぁいいかって思っちゃって。
 
 
そのまま隣に座ると、
戻ってきた♡が俺たちを見て
ニヤァっと笑って、隣に座った。
 
 
T)なんだよ…///
♡)むふふ♡
 
 
『それではみなさん揃いましたでしょうか!
 出発いたしますねー!』
 
 
ゆっくりと走り出したバスの中、
海璃がこそっと俺に耳打ちしてきた。
 
 
海(見えなかったら…いいですか?///)
T)は…?
 
 
そう言った海璃は、
俺のストールで二人の手元を隠して…
 
そっと俺の手を握ってきた。
 
 
T)////
 
 
何してんだよぉぉぉぉおお!
 
 
海)もう約束、使っちゃいました///
T)////
 
 
……可愛くて、文句言う気失せた。
 
 
ダメだ、俺。
なんかもう…、はぁ…///
 
 
……海璃、もう少し待ってて。
 
俺、自分の気持ちの変化というか…
自覚に、いろいろ戸惑いとか照れがあって。
 
そんなすぐにお前に「好き」って
言ってやれないけど…
 
ちゃんと、考えてるから。
整理してるから、自分の気持ち。
 
 
だから…
ケジメついたら俺からちゃんと言うから。
 
だからもう少しだけ待っ…
 
 
海(大好きです///)
T)…っ///
 
 
だーかーらーー!!!
 
そうやって可愛く俺を
ノックアウトしてくるの
やめろぉぉぉおーーー!!!
 
 
 
 
 
 
ーendー

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  1. (。・д・。)/ より:

    キュンキュンするよーー!海璃ちゃん可愛いかよ 男だったら海璃ちゃんみたいな彼女がいいなー

  2. きよママ より:

    待つわーーー❤
    いつまでも待つわぁーーー❤
    でも早く~~~~❤

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