一日、浮かない気分で仕事をして…
夕方になると岩ちゃんから連絡が来た。
写真の件、相談したいから
事務所まで来れる?って。
Mちゃんが心配して
一緒に来てくれるって言ったけど
これ以上迷惑かけたくなくて、
私は一人で行くことにした。
会社を出る時はMちゃんとJさんが
一緒に来てくれて…
少しビクビクしてたけど、
ファンの子達はもういなくなってた。
♡)本当にすみません、迷惑かけて…。
J)だーかーら。
お昼にも言ったでしょ、
迷惑なんかじゃないって。
M)そうですよ!
みんな言ってたじゃないですか!
みんな先輩の味方ですよ!
♡)…っ
そう言われれば言われるほど、
なんだか今はつらい。
全部私が悪いんだもん…。
私のせいなんだもん…。
♡)ありがとう…
じゃあ私、行くね…。
M)はい!気をつけてくださいね!
何かあったらすぐに連絡くださいね!
♡)うん。
二人に見送ってもらって、
私はすぐにタクシーに乗り込んだ。
中目黒に着くまで、
また携帯をポチポチしてみたら…
当たり前だけど、
炎上がおさまってるわけもなくて。
私が罵声を浴びるのは構わないけど、
私のせいで岩ちゃんが叩かれたり
三代目が文句を言われてるのが
すごくすごく、悲しかった。
今回のMVだって
最初はすごく評判が良かったのに…、、
私のせいでもう見たくないって…
絶対二度と見ないって言ってるファンも
たくさんいて…
みんなが頑張って作り上げたMVなのに…
臣くんと隆二くんが
一生懸命歌った歌なのに…
私のせいで、って思ったら…
胸が抉られたみたいに苦しくなった。
運)着きましたよー。
♡)ありがとうございます…。
私は泣きそうな気持ちをぐっと堪えて
車を降りた。
中に入ったら、
すぐに岩ちゃんが迎えに来てくれて…
岩)ごめんね、来てもらっちゃって。
♡)ううん…。
岩)こっちだよ。
案内された会議室には
HIROさんとSさんと…、臣くんがいた。
♡)…っ
私は臣くんの顔を見れなくて…
離れて座りたかったのに、
岩ちゃんが間を一つ開けて座ったから、
私は仕方なく二人の間に座った。
H)ごめんね♡ちゃん、
来てくれてありがとう。
♡)いえ…。
H)今回の二人の写真、
撮ったのはうちの橘なんだ。
♡)…っ
H)防犯カメラにも証拠が残ってた。
♡)…っ
あの時感じた視線は…
やっぱり橘さんだったの…?
わざわざ忍び込んで
写真を撮りに来たってこと…?
そこまでするの?
H)うちの社員が迷惑かけて…
本当に申し訳ない。
♡)やめてください!
HIROさんが頭を下げるようなことじゃない。
H)それで…その件については
この後、橘本人と部長が来るから
それから話すとして、
相談したいのは対処をどうするかなんだ。
♡)はい…。
H)♡ちゃんにとっても岩ちゃんにとっても
今回のことはマイナスっていうか…
イメージダウンにしかなってない。
♡)はい…。
H)ガセネタでこんな風になるのは
不本意だと思うから…
ファンの誤解を解いた方が
いいと思うんだ。
♡)はい…。
H)週刊誌に抜かれたわけでもないのに
コメント出すのも変な話だけど
それくらい炎上してるから。
岩)はい。
H)もしかしたらこれからは
こういう時代なのかもね。
岩)え?
H)週刊誌じゃなくても…
一般人とかが普通にSNSで
写真を広めちゃうってことが
当たり前になってくるのかも。
臣)…っ
H)怖い時代だよね。
岩)そうですね…。
♡)…っ
事実じゃないことが
まるで本当のことみたいに、
拡散されてしまう。
SNSが普及して、
私たちは今、そういう時を生きてるんだ。
そういう時代になっちゃったんだ。
岩)じゃあ俺はモバで否定コメント出すね。
♡)うん…。
私はSNSはやってないから…、
ホームページに載せておくね。
岩)うん。
H)それさ、載せる前に一回送ってくれる?
添削させてもらっていい?
♡)はい、わかりました。
H)本当にごめんね。
♡)いえ…、
HIROさんは悪くないのに…
ごめんねって言われると、苦しくなる。
♡)悪いのは…私です。
H)え?
♡)全部…私が…、
私のせいでみんなに迷惑かけてる。
岩)何言ってんの?
♡ちゃん何も悪くないじゃん!
みんなそう言ってくれるけど、違うもん…っ
岩)悪いのは橘だよ、全部!
♡)ふぇ…っ
臣)♡…?
♡)私だもん…っ
私が悪いんだもん…っ!
臣)♡!
涙が勝手にこぼれてきて、
肩に触れた臣くんの手を、
私は振り払った。
♡)触らないで!
臣)…っ
もうやだ…っ
ぐちゃぐちゃだよ…っ
情けない、こんな泣いたりして。
ずっと我慢してたのに。
今日はもう…いっぱいいっぱいで…、
♡)ふぇ…っ
岩ちゃんが背中をポンポンしてくれてる…。
♡)ごめん…なさい…っ
岩)♡ちゃんは悪くないって。
♡)ごめん…なさい…っ
岩)…っ
ファンの子達、怒ってた。泣いてた。
みんなにも心配かけて…
もうやだよ…っ
岩)いっぱいいっぱいになっちゃうよね…、
朝からバタバタだったでしょ?
♡)…っ
岩)気持ちが追いつかないかもしれないけど…
一旦落ち着いて、ね?
ほら、ゆっくり深呼吸。
♡)…っ
岩)ぐちゃぐちゃしてパニックになって
自分責めちゃうかもしれないけど
間違わないで。
みんなが♡ちゃんを心配することは
♡ちゃんがみんなに迷惑をかけてるって
ことじゃない。全然違う。
♡)…っ
岩)みんな♡ちゃんが大好きで
♡ちゃんのことが大事だから、
力になりたいんだよ。支えたいんだよ。
「迷惑」なんかじゃ絶対ないから。
♡)…っ
岩ちゃんの優しい言葉が…
スーッと胸に溶けていく…。
岩)♡ちゃんの会社の人たちも、◇も、
みんな同じだよ。
♡)……ぐす…っ、
私、パニックになってたのかな…。
情けない…。
♡)ありがとう…岩ちゃん…。
岩)うん。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
♡が急に取り乱してびっくりしたけど…
岩ちゃんの言葉で落ち着きを取り戻した。
臣)…っ
なんも出来ない自分が
情けないし、歯がゆい。
♡とまだ話せてないから
♡が俺を拒絶するのは当たり前なんだけど…
手を振り払われて、すげぇショックだった。
H)じゃあ二人はそういうことで。
登坂は?どうする?
コメント出す?
臣)…っ
H)二人みたいに
キスしてるみたいな写真とかじゃないから
スルーしてもいいけど…。
臣)あの、俺の方は…
さっきRから連絡があって、
Rも否定コメント出してくれるそうなんで
俺も出したいです。
♡)…っ
俺がRの名前を出したら、
♡がぴくっと反応した。
♡とちゃんと話せてない状況で
こんな話、したくないんだけど…
俺が悪いから仕方ない。
H)そっか、じゃあRちゃんにも
事前に一回こっちに送ってもらって。
臣)はい、わかりました。
そう返事をしたところで、
ドンドンって強めのノック音が聞こえて、
部長と橘が入ってきた。
H)お疲れ様です。
そちらにどうぞ。
部)はい。
部長は相変わらず威圧感を全面に出して
俺たちを見据えた。
その後ろにいる橘の姿を見ただけで、
俺は怒りがこみ上げてきて、
ぐっと拳を握った。
橘)登坂さん、お久しぶりです♡
臣)は…?
何こいつ。
なんでこんな普通に挨拶出来んの?
頭おかしいだろ。
H)Sさん、いい?
S)はい。
全員揃ったところで、
Sさんが今回の証拠となる映像を
パソコンで再生してくれた。
S)こっちが、♡ちゃんと揉めた時の。
で、こっちが盗撮してる時の映像です。
一通り見終えると、部長がフンと鼻で笑った。
部)これがなんだって言うんだw
は…?
部)最初のは前にも言った通り、
ただの女同士の喧嘩だろうw
臣)…っ
部)二つ目は登坂の彼女と岩ちゃんが
浮気してるところを
この子が撮っただけだw
臣)は…?
岩)何言ってるんですか?
部)写真見たよ。
仲良くキスしてたじゃないかw
岩)してません!
そう見えるだけであれは…っ
部)してない?
証拠写真があるのに
何を言ってるんだお前はw
岩)あれは違います!
部)うるさい!いい加減にしろ!
岩)…っ
部)登坂よ、お前も残念だったな、
彼女に裏切られてw
その相手が岩ちゃんだったなんてw
臣)…っ
部)丁度いいじゃないかw
おとなしくこの子と付き合ったらどうだ。
たぶらかした責任を取れよw
部長が橘の背中をポンと叩いて
橘はニヤッと笑った。
臣)♡は俺を裏切ってません。
橘をたぶらかしたつもりも
一切ありません!
橘)ひどいっ!
あんなに優しくしてくれたくせに…!
臣)は?
橘)朝まで抱いてくれたじゃないですか。
臣)だから…っ
まだ言ってんのかよこいつは!
橘)これがその時の写真です!
臣)…っ
これが…♡に見せた写真かよ。
部)ほら見ろ!
お前はこの子に手を出しておきながら
今更責任逃れか!男のクズだな!
臣)…っ
橘)好きだって…愛してるって…
あんなに言ってくれたのに…
あんなに私たち、愛し合ったのに…っ
臣)お前、いい加減にしろよ、マジで。
部)いい加減にするのはお前だ登坂!
臣)…っ
部)こんな証拠があるというのに
恥ずかしくないのか!
岩)それは橘が勝手に撮った写真です。
臣さんは何もしてません。
部)お前は黙ってろ!関係ないだろ!
岩)…っ
ダメだ、埒が明かない。
話が通じなすぎて…
H)部長、橘には退職してもらおうと
思っています。
部)は…?
HIROさんの一言に、
部長と橘の顔色が変わった。
H)今見せてもらった映像ですが…
これは岩ちゃんが止めていなかったら
橘は♡ちゃんに
危害を加えていたと思います。
部)…っ
H)そして写真盗撮の件。
マネージャー業務ではなく
自宅待機を命じられている間に
勝手に駐車場に入り込んだのは
不法侵入です。
しかもそれをネットに上げて拡散した。
まだ社員という立場でありながら
会社に不利益になるような行動を取った。
その責任は取ってもらいます。
部)なん…で、おかしいでしょう…?
橘)私が登坂さんに襲われた件は
どうするんですか?
H)え…?
橘)まるで私ばかりが加害者みたいに
仰ってますけど…
私は登坂さんに脱がされて
襲われたんですよ?
臣)は…?
今度は何言ってんの、こいつ。
主張が前に戻ってる。
H)いや、君さっきは登坂と愛し合ったって…
橘)私は襲われたんです!
無理やり脱がされて、
泣いたのにやめてくれなくて!
この写真を持って出るとこ出たって
いいんですよ?
臣)は…?
H)いや、言ってる事おかしいよね?
部)おかしいのは今回の決定でしょう。
この子が処分を受けるなんて
間違ってる!
臣)…っ
ダメだ…
こいつら二人揃って頭おかしい…!
部)君もどうなんだね?
さっきからだんまりだが…
岩ちゃんと浮気してるなら
もういいだろう?
登坂と別れてやったらどうだ?w
臣)…っ
部長が今度は♡に絡んできた。
部)君も岩ちゃんとの火遊びを
楽しんでいたんだろう?w
登坂も岩ちゃんも彼女がいながら
平気で他の女に手を出すような男だw
♡)…っ
部)大して努力もしないで
運良く売れた奴はこれだから困るw
♡)いい加減にしてください。
部)なんだと…?
♡)私は何を言われても構いませんが
臣くんと岩ちゃんを侮辱するのは
やめてください!
臣)…っ
♡が勢いよく立ち上がった。
♡)二人に謝ってください!
部)はっw
何を言ってるんだお前はw
♡)謝ってください!!
部)黙れ!小娘が!!
誰に向かって口を聞いてる!
♡)黙りません!!
部)…っ
♡)誰に向かってってなんですか?
人としておかしいから言ってるんです。
部)なんだと…、、
お前、私を誰だと思ってる!
♡)あなたはこの会社の部長かもしれませんが
私の上司じゃありません。
それにもし上司だったとしても
それが何なんですか?
権力を振りかざして
下の人間を抑え込むんですか?
うるさい、黙れ、って威圧して
相手を侮辱して否定するんですか?
そんな人に上司として上に立つ資格なんて
ありません!!
部)ふざけるな!!
部長も立ち上がったから
俺も咄嗟に♡を庇うように立ち上がった。
部)調子に乗るなよ、ただの小娘が!
♡)一緒に働いている仲間だったら
この二人がどんなに真摯に
仕事に向き合ってるか、
どれだけ頑張ってるか、わかるはずです!
あなたは二人の何を見てきたんですか!
部)私がいちいちこいつらのことなんて
見ているわけないだろう!
そんなに暇じゃないんだよ私は!w
♡)だったら尚更、知りもしないくせに
勝手なこと言わないでください!
部)お前は登坂に浮気されて
自分も浮気している分際で
随分と偉そうだな、ええ?
♡)臣くんも私も浮気なんてしてません。
岩ちゃんだって彼女を大切にしてます。
言いがかりはやめてください。
部)言いがかりだと…?
♡)二人に言った言葉、撤回してください。
謝ってください!
いくら部長が怒鳴っても
♡は一切怯まなくて…
俺たちのために
真っ直ぐぶつかってくれるその姿に、
俺は胸が熱くなった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
こんな人が部長だなんて、信じられない。
許せない。
部長は私を睨んだ後、
私を小馬鹿にしたようにフンと鼻を鳴らした。
部)こんな小娘相手に馬鹿馬鹿しいw
小娘の戯言などどうでもいいわ。
♡)…っ
その隣で橘さんがニヤッと笑った。
♡)橘さん、あなたもいい加減にして。
橘)は…?
♡)私言ったでしょう、
臣くんに何かしたら許さないって。
橘)…っ
♡)さっきからニヤニヤしてるけど
反省してるの?
橘)反省…?
なんで私が…w
♡)自分が何したかわかってるの?
橘)何か文句あるの?
いい気味だわ、炎上して叩かれてw
♡)…っ
橘)ファンもあっさりあのネタ信じて…w
あのMVも気に入らなかったのよ。
お蔵入りしたらいいわ。
♡)あなた、三代目のマネージャーとして
働いてたんでしょ…?
一生懸命仕事してるメンバーや
一生懸命応援してるファンの気持ちを
なんだと思ってるの?
橘)うるさいわね!
あんたに関係ないでしょ!
とっとと登坂さんと別れなさいよ!
♡)!!!
橘さんが身を乗り出して
私に掴みかかってこようとして…
その手を掴んだ私の手は、
部長に力強く掴まれた。
臣岩)離してください!!
♡)…っ
私の手首を掴んでる部長の手を
臣くんと岩ちゃんがすかさずグッと掴んで…
部)痛いな、離せ!馬鹿力が!!!
離せと言ってる!!!!
部長が怒鳴っても、
二人は部長の手を離さなかった。
臣)♡に手を出したら殺しますよ。
♡)…っ
臣くんは部長を睨みつけて、
その後に橘さんを見た。
臣)お前もだ、橘。
橘)…っ
臣)♡になんかしたら
俺普通に殺せるからな、お前のこと。
橘)…っ
H)登坂、落ち着いて…。
みんな一旦座って。
HIROさんにそう言われて、
臣くんと岩ちゃんは部長の手を離して、
みんな席に座り直した。
H)部長。
今回の決定を変えるつもりはありません。
橘には退職してもらいたいと
思っています。
部)…っ
H)それから…、橘。
お前は一度、心療内科に行った方がいい。
橘)は…?
H)ちょっと心が病んでるんじゃないかと
思う。
橘)…っ
H)このまま放っておいたら
お前のためにもならないから
一度診てもらったらいいよ。
橘)なんで…私が…っ
H)え?
橘)私が頭おかしいとでも言うんですか?
私は登坂さんと愛し合ってるのに!
頭おかしいのはお前だろ!
♡)…っ
橘さんはまた立ち上がって私を指差した。
橘)私は登坂さんに抱かれたの!
愛し合ってるの!
まだ言ってる…。
本当に病気なのかもしれない、この人…。
臣)橘、黙れ。
橘)うるさいっ!
私のことを襲ったくせに!!
臣)は?
橘)ふざけるな!!
臣)いや、お前ほんと言ってること
ちぐはぐすぎておかしいから。
橘)私はおかしくなんかない!!
H)橘!
橘)うあああああああっっ!!
叫び出した橘さんに、
みんな言葉を失った。
H)部長。
部)おい、落ち着け、どうしたんだ!
橘)きぃぃぃぃッッ!!
部)おい、しっかりしろ!!
橘)うるさいうるさいうるさいッッ!!
部)…っ
H)部長、やっぱり橘は病院に…、
部)はい、わかりました…っ
部長はそのまま
気が狂ったような橘さんを連れて
部屋を出て行った。
岩)あれ…マジでヤバイでしょ…
S)重症だよ…、、
H)♡ちゃんごめんね、怖かったでしょ。
♡)いえ、
H)直己からも聞いてたんだけど…
彼女本当に病んでると思う。
何かの病気だよあれは…。
♡)はい…。
S)でも♡ちゃんが…
相変わらず逞しくて
俺はヒヤヒヤしてしまった…。
岩)♡ちゃん強すぎるよ…
俺、感動しちゃったもん…。
♡)え…?
岩)あんなでっかい部長に
果敢に挑んでいくから…。
♡)だって…
H)うん、俺もヒヤヒヤしたw
岩)ええ、HIROさんも!?w
H)でもほんとにカッコ良かったね、
♡ちゃん。
本当に君は真っ直ぐで強いね。
♡)…っ
H)部長の心無い言葉の数々、
会社を代表して俺が謝るよ、ごめんね。
♡)やめてくださいっ!
H)登坂も岩ちゃんも、ごめんね。
臣)やめてください、HIROさん!
岩)そうですよ!
HIROさんは困ったように笑って
深い息を吐いた。
H)部長と橘の件は
あとはこっちに任せてくれる?
臣)はい。
岩)お願いします。
H)Sさんも本当に大変だったね。
いつも現場まとめてくれてありがとう。
S)いえ…っ!
HIROさんは立ち上がって
部屋を出て行く間際、
臣くんの肩をポンと叩いた。
H)殺すのはダメだけど…w
お前が♡ちゃんを
それだけ大事に想ってるのは
よくわかってるから。
守ってやれ。
臣)はい…っ
臣くんが頭を下げると、
HIROさんはそのまま部屋を出て行った。
S)とりあえず…お疲れさま…。
みんな送るよ、うん。
それから私たちは4人で駐車場に降りた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
なんか、疲れ切った…。
みんな同じだと思う。
帰りの車は、誰も何も喋らなくて…
でも車がマンションに入ると、
岩ちゃんがポツリと口を開いた。
岩)♡ちゃんが言ってくれた言葉、
嬉しかったよ。
ありがとね…。
♡)ううん…っ!
私こそ、ありがとう!
岩ちゃんが言ってくれた言葉、
すごく刺さったの。
本当にありがとう!
岩)…っ
♡)めそめそしたりして…ごめんね?
なんか、心が弱くなってたんだ。
岩)そうなの?
♡)うん。
でも部長と橘さんと話してたら
すっごくメラメラして、
めそめそしてる場合じゃない!って
闘志が湧いたの!!
岩)あはははw
♡)ちゃんとコメント出したら…
ファンの人たち、
わかってくれるといいなぁ…。
岩)うん、そうだね…。
二人が話し終えて、車もちょうど止まって。
俺たちはSさんに挨拶をして
車を降りた。
3人で乗ったエレベーターは
岩ちゃんが先に降りて…
二人きりになった俺たち。
お互い何も言わないまま、部屋に着いたけど…
ちゃんと話さなきゃならない。
謝りたいんだ、♡に。
臣)あのさ、♡…、
♡)臣くんごめんね。
昨日は泣いちゃって…
ぐちゃぐちゃになって。
臣)…っ
♡)ちゃんと話そう…?
♡がそう言ってくれて…
俺はすげぇほっとして、泣きそうになった。
臣)うん、ありがとう…。
俺たちはソファーに並んで座った。
臣)Rとのこと、嘘ついてごめん。
♡)……。
臣)ほんとにごめん。
♡)……。
臣)ちゃんと話すから、聞いてくれる?
♡)……。
臣)もう絶対、嘘つかないから。
♡)……わかったよ…。
♡が頷いてくれて…
俺は今回のLAでの出来事を、
包み隠さず全部、♡に話した。
♡)…そっか…、そうだったんだ……。
♡はそう言って、しばらく黙り込んだ。
臣)嘘ついたこと、本当にごめん…。
咄嗟に…お前に心配かけたくないって
そう思って…、
♡)……。
臣)でも、隆二に言われたんだ。
相手のためについた嘘って
本当に相手のためなのか、って。
自分がそう思いたい
だけなんじゃないのかって。
♡)…っ
臣)そう言われたら、自信なくなった。
♡が心配しないように、
♡に嫌な思いさせないように、
だから自分は嘘をついたって思ってたけど
本当は…、違うのかもしれない、って。
♡)……。
臣)Rの気持ちに気付かなかったとはいえ
部屋には入れちゃったわけだし、
脱いだり抱きつかれたりはしたわけで…
俺はどこかで…そんな隙があった自分を
隠したかったんじゃないのかな…、とか
そんな風にも思えてきて…
頭ん中ごっちゃごちゃになった。
♡)……うん…。
臣)それで俺、思い出したんだ。
♡)……え…?
臣)前にお前と約束したこと。
♡)…っ
俺の言葉に、♡がハッとしたように俺を見た。
臣)言ったじゃん、俺…。
心配かけたくないとか…
不安にさせたくないとか…
そう思ったらつい相手に
嘘つきそうになるけど…
そういうのやめようって。
♡)…っ
臣)お前が俺に心配かけまいと
言葉濁してた時にさ、
♡)うん…っ
臣)何かあった時は
ちゃんと二人で一緒に考えよう、
嘘も隠し事もなしにしよう、って。
♡)うん…っ
♡の目に、涙がじわじわ浮かんできてる。
臣)俺が言ったくせに…、守れてなかった。
約束破って、ごめん。
♡)思い出して…くれたんだ…っ
臣)うん。
♡)ふぇ…っ
臣)…っ
♡の目に溜まってた涙が
パタパタとこぼれ落ちていく。
♡)あのね…っ、
臣)うん…、
♡)あの写真やツイートの内容を見ても
臣くんが浮気したなんて
これっぽっちも思わなかったの…っ
臣)…っ
♡)それだけは信じてほしい…っ
臣)…うん、ありがとう…。
俺も…お前の気持ちを
疑ったわけじゃなくて…
ちょっとパニックで
あんな言い方しちゃって、
ほんとにごめん。
♡)うん…。
♡はぎゅっとスカートを握った。
♡)あの写真見て、
Rが臣くんにベタベタしてたのは
単純に嫌だし…、
ホテルの部屋まで来て
ドレス脱いだり臣くんに抱きついたり…
Rが臣くんにしたことは
全部全部嫌だけど、
でも仕方ないって思ってる。
臣)…っ
♡)だってRは臣くんが好きで
ただ自分の恋を
全力で頑張っただけだと思うから。
臣)…っ
♡)それに、臣くんがRに優しくしたことも
全部全部嫌だけど、
それも仕方ないって思ってる。
臣)…っ
♡)だって臣くんにとってRは
友達っていうか…妹みたいなものだって
前に言ってたから。
そんな相手が泣いてたら
ほっとけないのもわかるもん…。
臣)…っ
♡)確かに全部嫌だけど
仕方ないって思うんだよ。
……だからこそ、
ちゃんと話してほしかった…。
私は臣くんが嘘をついたことが
一番、悲しかった…っ
臣)…っ
♡の言葉と涙に、胸が締め付けられる。
♡)臣くんが帰ってきた夜、
私ね、LINE見えちゃったの。
臣くんの携帯の…。
臣)え…?
♡)Rから来てたLINE。
最初のとこだけ読んじゃって…
臣)…っ
♡)だからわかったの、
臣くんが嘘をついてること。
……ごめんなさい。
臣)いや、うん…。
そうか、だから…
だからあの時から♡はずっと変だったんだ。
何も気付かない馬鹿な俺は
♡をずっと苦しめてたんだ…。
♡)どうして言ってくれないんだろう…
どうして嘘をついたんだろう…って…
ずっとモヤモヤして…苦しかった…っ
臣)うん、ごめん…っ
本当にごめん!
♡)ふぇぇ…っ
泣いてる♡を
俺はもう我慢できなくて、
ぎゅっと抱きしめた。
臣)ごめん、本当にごめんな…っ
♡)嘘は…やだよ…っ
臣)うん、本当にごめん…!
♡)絶対にやだよぉ…っ
臣)うん…っ
こんな泣かせて…本当にごめん。
♡)でもね…、臣くんが…っ
約束、思い出してくれて…
安心した…っ
臣)うん…、っ
♡)もう…嘘、つかないでね…?
臣)うん、絶対、約束する。
♡)二人でなんでも話そうね?
臣)うん。
俺たちはぎゅって強く抱き合いながら、
もう一度、同じ約束をした。
もう泣かせない、絶対に。
本当にごめんな、♡…。
♡)私ね、ぐちゃぐちゃして…
今日めそめそしちゃってたのは…
臣くんとこんな状態で
心が弱ってたからだってわかったの…。
臣)え…?
♡)だって本当なら…
めそめそすることなかった!
臣)…っ
♡)三代目のファンの子たちにだって
岩ちゃんとは付き合ってないよって
そう言えば良かっただけだし…
心配して助けてくれるみんなにも
ごめんねじゃなくて
ありがとうって言うべきだった。
臣)…っ
♡)心が弱ってるせいで
すごくネガティブになっちゃってたんだ。
臣)うん…。
全部、俺のせいだよな…。
♡)やっぱり私のパワーの源は
臣くんなんだよっ!
臣)え…?
♡)臣くんとちゃんとラブラブでいなきゃ
いろんなものと闘っていけない!
それがね、今回よくわかったの!
臣)…っ
♡)橘さんとか部長みたいな悪と
負けずに闘っていくためにも
私たちはちゃんとラブラブでいよう?!
臣)…っ
そう言ってくれた♡は、
まるであの日唐突に
円陣を組もうって言い出したELLYみたいに
真っ直ぐで純粋だった。
臣)うん、そうだよな…。
俺たちはちゃんと繋がってないと。
♡)そうだよ!
臣)ありがとう、♡。
♡)うん!
さっきまで泣いてたのに…
俺のせいで泣かせてたのに…
今は強い瞳で前を向いてる。
ほんとお前は、真っ直ぐで強い。
臣)岩ちゃんも言ってたけど…
俺も感動したんだ、
お前が言ってくれたこと。
♡)え…?
臣)あんな強面で図体のでかい部長に
果敢に挑むんだもん、お前。
♡)だって、悔しくて!
臣)うん。ありがとうな。
♡)臣くんも…、庇ってくれたよね。
ありがとう。
臣)だってあいつ、お前の手首掴むから!
あんなふっとい手で掴まれたら
お前の細い手首なんて折れそうじゃん!
マジでふざけんなよって殺意湧いたわ!
♡)…っ
俺はもっかい♡をむぎゅっと抱きしめた。
♡)臣くんが…殺すって言った時、
本当に本気っぽくて怖くて、
部長、黙っちゃったもんね。
それまであんなに偉そうにしてたのに。
臣)俺の本気の殺意が伝わったんじゃね。
♡)あははは、もうw
臣)俺ほんとに…、お前に何かする奴は
絶対に許さない。
死んでも俺が守るから。
♡)…っ、……死んじゃ…ダメだよ。
臣)それくらい大事ってこと!
♡)だったら…っ
そんなに私のこと大事に思ってくれるなら
同じくらい、自分も大事にしてね?
臣)…っ
♡)私だって臣くんのこと、
命がけで守るから…っ
だから臣くんも自分を大事にして!
臣)……うん、わかった。
約束。
俺たちはおでことおでこをこつんと重ねて、
小さく笑い合った。
♡)良かった…。
臣)え…?
♡)仲直りできて、良かった…。
臣)…っ
♡)臣くんとこうしてぎゅーしてたらね?
無限にパワーが湧いてくるんだ…♡
そう言って俺を抱きしめてくれる
小さくて柔らかい身体。
いつも俺の心を溶かして癒してくれる。
パワーをもらってるのは俺の方だよ。
♡)臣くん、大好き…。
臣)…っ
♡)大好きだよ…♡
臣)…っ
♡の愛情がすげぇあったかくて優しくて…
気付けば涙が頬を滑り落ちていった。
♡)臣くん…っ?
臣)ごめ、っ…
♡)どうして泣いてるの!?
臣)…っ
俺なんて全然ダメな彼氏なのに…
♡はいつも許してくれる。
受け入れてくれる。
大事にしたいんだ…本当に。
守りたいんだよ、何よりも…。
臣)♡、本当にごめんな…、ありがとう。
♡)ごめんはもう言わないで!
臣)うん、…っ
♡の真っ直ぐで純粋な愛情に触れると、
いつも心が洗われたみたいになって…
臣)なんか俺…、最近やたら泣いてるな///
恥ずかしくなった。
♡)臣くん…っ、…臣くん…っ!
♡は俺の涙を拭いて
めいっぱい俺を抱きしめてくれてる。
臣)♡、ありがとう…、愛してる。
♡)…っ
臣)愛してるよ。
♡)……うん…っ!
♡の言う通りだ。
俺らがちゃんと愛し合って
揺るぎない絆で結ばれてないと
これから襲ってくるであろう難関に
立ち向かっていけない。
俺らはまだまだこの先、
二人で力を合わせて
闘っていかなきゃならないんだ。
♡)私も愛してる…。
大好きだよ、臣くん♡
ーendー
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橘の件解決できてよかったー(;ω;)しばらくは、2人ともホッとできるね。
絆が深まってよきよき(*´∇`*)更新ありがとうございます(≧∇≦)
これで本当に解決なのかどうか…(❁´ω`❁)ふふ…
ラブラブになったぁ!!!!
色々と凄かったけど、仲直りできたことが嬉しすぎてほんとによかった\(//∇//)\橘さん一気に嵐が去ってった感じです笑一安心♡
はじめてコメントします!!
いつも楽しく読ませていただいてます!!
マイコさんが描くStoryが大好きです♡♡♡
どうもありがとうございます٩(๑^o^๑)۶
やっと一安心ですね(❁´ω`❁)