〈67〉ついてしまった嘘

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H)みんな、ごめんね。
  部長ちょっと冷静じゃなくて。
  あのままじゃ冷静な話し合い
  出来なかったから。
 
 
部長が出て行って静まり返った会議室で、
HIROさんが申し訳なさそうにそう言った。
 
HIROさんが謝ることじゃないのに。
 
 
隆)ちょっと待って、俺なんかもう…
  目が回っちゃって…
健)せやんな。
  ちょっと一息つこ、うん。
隆)はぁぁぁぁ…。
N)岩ちゃん、大丈夫?
岩)はい。
直)臣も、少し落ち着いて。
  気持ちはわかるけど。
臣)はい…。
 
 
みんなが少し息をついたところで、
Sさんが口を開いた。
 
 
S)HIROさん、すみません。
  今回の件の前に、
  報告できていない件があって…。
H)え?
S)先月、臣が橘に襲われてるんです。
H)ええ!?
S)襲われてたと言っても
  未遂ではあるんですが…。
H)どういうこと?
臣)……橘が、裸になって迫ってきて。
H)ええ!?
臣)俺は逃げたんですけど…
  その後なんでかあいつは
  俺に脱がされた、俺に襲われた、の
  一点張りで。
H)…っ
S)臣を襲ったことについては
  証拠もないのにひどい、と…
  一切事実を認めませんでした。
H)…っ
S)HIROさんに報告しようと思ったんですが
  証拠がないのは事実だし、
  部長の耳に入っても
  厄介だと思ってしまって…
  そのまま保留にしてました。
  本当にすみません。
K)でもそれ以外にも
  有り余る行動がありました!
M)現場のスタッフからも声は上がっていて!
 
 
KさんとMさんも口添えしてくれて、
HIROさんは「そうだったのか、」って
ため息をついた。
 
 
H)橘は結局、登坂のことが好きなの?
岩)はい。いつも臣さんの話ばっかりです。
  仕事もろくにしないし。
H)仕事しないの!?
岩)サボってばっかりです。
H)えーーー。
S)三代目から外そうかとも
  考えたんですけど…
  本人が三代目の現場を熱望してて…
H)そりゃそうだよね、登坂のこと好きなら。
S)それで…何かしでかした時に
  岩ちゃんなら上手く対処してくれるんじゃ
  ないかって…
  岩ちゃんの担当にしてたんです。
H)そりゃ岩ちゃん…大変だったね、
  お疲れさま。
岩)いえ。
S)僕の勝手な判断で
  申し訳ありませんでした。
K)いや、マネージャーの総意だったんで!
M)みんなで決めたんです!
H)うん。
  部長の親戚だし、
  対応に悩んだよね、みんなきっと。
  気付かなくてごめんね。
 
 
HIROさんに頭を下げられちゃうと、
俺らは何も言えない…。
 
 
岩)あと…、これは
  部長の耳に入れたくなかったから
  言わなかったんだけど…
  橘、写真持ってたんだ。
臣)え?
岩)酔ってる臣さんの横で
  勝手に裸になったんだと思うんだけど、
  ツーショット写真、持ってた。
臣)は!??
岩)それを♡ちゃんに見せて
  別れろって詰め寄ったんだよ。
隆)げぇ!何それ!!
健)♡ちゃん大丈夫やったんか?!
  そんなもん見せられて!
臣)…っ
 
 
いつの間にそんな写真撮ってたんだあいつ…
ふざけやがって…。
 
しかもそれを♡に見せるとか…
 
 
岩)臣さんに抱かれたとか愛し合ったとか
  散々言い張ってたけど…
  臣くんは絶対にそんなことしない、
  信じてるって、♡ちゃんはつっぱねてた。
臣)…っ
 
 
それを聞いて…
なんか泣きそうになった。
 
そんなもん見せられて、
絶対嫌な思いしたはずなのに…
♡はそう言ってくれたんだ。
 
 
岩)で、♡ちゃんが怒ったんだよ。
  臣さんを困らせるな、迷惑かけるな、
  傷つけるな、って。
  そんなことしたら絶対許さない、って。
臣)…っ
隆)すげぇ…♡ちゃん…。
健)むっちゃ逞しいやんけ…。
E)カッコイイ…。
N)それで橘が逆上したのか、なるほど。
直)橘にとってその写真はきっと
  切り札だったんだろうね。
  でもそれがなんの効果もなくて
  悔しくて腹立って、襲いかかったのかな。
臣)岩ちゃん、大丈夫だったの?
  ♡、守ってくれたんでしょ?
隆)怪我しなかった?
岩)俺は全然大丈夫。
  守ったって言ったら大袈裟だけど…
  橘を止めただけだよ。
  ◇も間に入ったし。
臣)ええ!◇ちゃんが?!
隆)危ないじゃん!何やってんのあの子!
岩)身体が勝手に動いたんだって。
  ♡ちゃんに何かしたらぶっ飛ばすって
  橘にブチギレてたよ。
隆)すげぇ…◇ちゃん…。
健)むっちゃ逞しいやんけ…。
E)カッコイイ…。
岩)でもさ、♡ちゃんは
  自分で橘投げ飛ばそうとしてたんだって。
臣)は!?
岩)護身術やってるんだって?
  それで隙見て投げ飛ばそうと
  してたらしいよ。
臣)…っ
岩)自分の身は自分で守らなきゃ
  臣くんが心配しちゃうから、って。
臣)…っ
 
 
あいつは…、もう…、、
 
 
臣)はぁぁぁぁ…っ
 
 
俺はもう力が抜けて、テーブルに突っ伏した。
 
 
N)マジで逞しいな、♡ちゃん。
直)でももし橘が刃物とか持ってたら
  シャレになんないですよ。
N)確かに…!
隆)てゆーかもう橘おかしいって!ほんとに!
  クビに出来ないんですか?HIROさん!
健)クビにしてください、頼みます!
H)うん…、本当なら今すぐ
  処分したいんだけど…
  本人の言う通り証拠がないっていうのと
  部長をどう説得するかだな…。
健)証拠なら駐車場に防犯カメラないん?
岩)あ、あるかも!
健)それ見たら♡ちゃん襲おうとしてるとこ
  映ってるんちゃう?
H)よし。じゃあこの件は一旦
  こっちで預かるよ。
  ごめんね、みんな。
岩)ありがとうございます…。
臣)よろしくお願いします。
 
 
HIROさんが出て行って、
俺たちはみんな一斉に息を吐いた。
 
 
隆)はぁ…なんか疲れた…。頭が疲れた…。
E)うん。
健)でもこれで間違いなくクビやろ、橘。
N)だよね。
岩)臣さん、ごめんね。
  すぐに連絡しなくて。
臣)ああ、うん…。
 
 
確かに…。
なんですぐ教えてくれなかったんだろ。
 
 
岩)♡ちゃんが…
  向こうで臣さんに心配させたくないから
  臣さんが帰ってきてからにしてほしいって。
臣)…っ
岩)だから言わなかった。
臣)…っ
 
 
♡は…
なんでいつも俺のことばっかり…
 
俺のことばっかり一番に考えるんだ。
 
 
E)♡ちゃんって…そういう子だよね…。
隆)うん…。
臣)…っ
健)でもこれで橘問題はほぼ解決やろ!
  良かったやん!
 
 
健ちゃんがバシッと俺の背中を叩いた。
 
 
直)てゆーか俺思ったんだけどさ、
臣)え…?
直)橘、やっぱり精神病じゃない?
臣)えっ…
 
 
直己さんが神妙な面持ちで
そんなことを言い出した。
 
 
E)それ前にも言ってましたよね、直己さん。
直)うん。だってさ、おかしくない?
  臣のこと襲ってさ、でも俺たちには
  自分が襲われたって言い張ってて。
N)うん。
直)でも♡ちゃんには
  臣と愛し合ったとか言ってたんでしょ?
  言ってることが一致してない。
隆)……ほんとだ。
直)しかもさ、♡ちゃんと二人の時に
  そういう行動に出るならわかるけど
  岩ちゃんと◇ちゃんもいたんでしょ?
岩)はい。
直)そんなの、あとあとバレるって
  わかるじゃん。
隆)橘…バカなのかな…。
岩)でも言ってました、
  臣さんには言わないでくれって。
臣)はぁ!?
N)なんだそれ!
岩)なんかあいつ頭おかしくて、
  俺と◇が自分の味方だとか
  思い込んでたみたいで。
臣)はぁ?!
健)なんでやねんな。アホか。
直)ほら、思考がマトモじゃない。
  病気だよ絶対。
臣)え…っ
 
 
直己さんは自信ありげにそう言った。
 
 
N)そのこともHIROさんに
  言っといた方がいいかな?
直)あとで言っときます、俺から。
N)うん。
臣)……。
 
 
俺は…橘が病気だろうがなんだろうが
どうでもいい。
俺らの前から消えてくれるなら。
 
 
隆)つーか俺、さっきめちゃくちゃ
  ムカついた。部長に。
健)ああ、俺も。岩ちゃんに向かってな。
隆)そう!
  俺、我慢出来なくて言い返そうとしたら
  NAOTOさんが先に言ってくれた。
臣)…っ
 
 
隆二も同じだったんだ。
 
 
N)気にすんなよ、岩ちゃん、あんなの。
岩)はい。
  ありがとうございました、NAOTOさん。
  NAOTOさんが
  ああ言ってくれたことの方が
  嬉しかったです、俺w
N)えっ…、なんだよ…照れるじゃん///
隆)NAOTOさん、リーダーっぽかった!
  カッコ良かった!
N)「ぽい」じゃなくて
  リーダーなんだよ、俺は!w
E)あははは!w
S)臣も…ありがとな。
臣)え?
S)臣がああ言ってくれて嬉しかった。
K)うん。
M)ありがとう。
臣)…っ
 
 
「ここにいるのは全員、
 大事なスタッフです、仲間です。」
 
 
だって、本当にそう思ってるから。
 
 
健)もう部長もクビになったらええんちゃう。
 
 
ぼそっと健ちゃんが呟いた。
 
 
N)こらこらw
隆)みんな思ってるでしょ、それ。
岩)でもねぇ、w
直)俺たちは結局しがない会社員だからね。
岩)そうなんすよねぇ…。
臣)……。
 
 
そう。
縦社会には逆らえない。悔しいけど。
 
 
N)でも今回のことは
  HIROさんがきっとなんとか
  してくれるよ。
直)うん。
  とりあえず報告できて良かった。
健)なんでこんな変な女一人に
  俺らが振り回されなあかんねん。
  腹立つわー。
隆)ほんとだよ!
E)橘なんかに負けねーぞー!
  俺らは俺らで頑張ろう!
岩)うん。
E)よし、円陣組も!!
N)え、ここで!?w
E)ここで!ほら!みんな!
  マネージャーもみんな!!
 
 
ELLYに言われて、
狭い会議室でみんな集まって
円陣を組んだ。
 
 
E)2020年まで突っ走るぞー!
皆)オーー!w
岩)橘なんかに負けねーぞー!
皆)オーー!
N)三代目はいつでも無敵だー!
皆)オーー!
直)みんなで力を一つに頑張ろう!
皆)オーー!
健)とりあえずアルバムめちゃくちゃ
  売ったんでーー!
皆)オーー!
臣隆)3、2、1、
皆)Do it !!!!!!
 
 
みんなで床を踏み鳴らしたら、
めちゃくちゃいい音がした。
 
 
そうだ、俺らは一人じゃない。
このメンバーだからいつでも頑張れるんだ。
 
 
ああ、早く家に帰って
♡を抱きしめてやりたい。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
「♡ちゃん…♡ちゃん…ありがとう…っ」
 
 
ん…?
誰かの声が聞こえる…。
 
 
シ)♡ちゃん、ありがとう!
モ)♡ちゃん、ありがとう!
 
 
はっ!
 
 
シ)ぼくたち、しあわせになります♡
モ)ふたりで、しあわせになります♡
 
 
シロ…っ
モモちゃん…っ
 
 
二人はとても嬉しそうに笑ってる。
 
臣くん、大変だよ!
臣くんにも教えてあげなくっちゃ…!
 
 
♡)臣く…、っ……、はっ!
 
 
……私ってば…
ソファーでうたた寝しちゃってた…!
 
 
♡)……そうだ!
  シロとモモちゃん!
 
 
私は寝室に走って、二人を抱き上げた。
 
 
♡)ね、シロ、モモちゃん。
  今ね、二人が夢に出てきたんだよ!
  ありがとう、って。
  二人で幸せになりますって!
 
 
なんでそんな夢見たのかな。
 
もしかして夢じゃなかったり…、、
 
 
♡)あ、今何時だろ!
 
 
二人を仲良く並べてリビングに戻ると、
臣くんからLINEが来てた。
 
 
『今から帰るよ😊』
 
 
あ、岩ちゃんからも来てる!
 
 
『臣さんに話したよ。
 結局会議でみんなで話して、
 この件はHIROさんが
 預かることになったよ。』
 
 
♡)…っ
 
 
そっか…、大ごとになってないといいな…。
 
 
臣)ただいまー!
 
 
はっ!もう帰ってきた!
 
 
♡)臣くんっっ!!!
 
 
私が勢いよくリビングのドアを開けると、
臣くんは笑いながら靴を脱いだ。
 
 
臣)たーだいまw
♡)おかえりなさーい!
  おかえり!おかえり!
臣)わーかったからw
♡)おかえりーーー!♡
臣)手洗うから待ちなさいw
♡)臣くんっ!臣くんっ!♡
 
 
わーい♡
臣くんが帰ってきたよー♡
 
 
臣)はい、いいよw
♡)臣くーーんっ!♡
 
 
両手を広げてくれた臣くんに
思いっきり飛び込んだ。
 
 
♡)ううう!うううっ!♡
臣)相変わらず激しいな…w
♡)だってイノシシになっていいって!
臣)言いましたねw
♡)だからだもんっ!!
 
 
スリスリスリ!スリスリスリ!
 
 
♡)はぁぁぁ〜〜臣くんだぁぁ♡♡
臣)臣くんですよーw
♡)やっとぎゅーできたー♡
臣)んー、俺も…♡
♡)ん?
臣)やっとぎゅーできた♡
♡)////
 
 
ぎゅってしてくれる臣くんの腕が優しくて…
このぬくもりに包まれると、
キュンキュンする。
 
 
♡)ぎゅー、落ち着くね♡
臣)うん♡
♡)幸せだね♡
臣)うん♡
♡)臣くん、だぁいすき♡
臣)俺も大好きだよ♡
♡)えへへ…だいだいだーいすき♡
臣)うん♡
 
 
臣くんとたっぷりぎゅーして、
めいっぱいぎゅーして、
私たちは一緒にリビングに戻ってきた。
 
 
♡)ね、写真いっぱいありがとう♡
  グラミー賞、すごかったんだね♡
臣)うん。LAめっちゃ暑かったわー。
  日本帰ってきたらいきなり寒くて。
  温度差がw
♡)そっか、向こうは夏なの?!
臣)気候的には初夏って感じかな。
♡)そうなんだ!
臣)ん、ここおいで。
♡)…っ
 
 
臣くんが膝の上をポンポンしてる。
 
 
♡)抱っこ…?///
臣)うん。やだ?
♡)やじゃない!抱っこー!♡
臣)はいはいw
 
 
私はすぐに飛びついて臣くんにしがみついた。
 
 
♡)えへへ、抱っこ抱っこ♡
臣)お前は子供みたいな奴だなw
♡)はっ…
 
 
しまった。
また子供扱いされてる。
 
 
♡)抱っこ…やめる…。
臣)いや、いいから!素直に甘えなさいw
♡)ううう…///
 
 
臣くんは優しく頭をなでなでして
背中をトントンしてくれた。
 
 
臣)あのさ、橘のことだけど…
♡)…っ、うん…。
 
 
臣くんの声が、真剣になった。
 
 
臣)今日みんなで話して…
  今はHIROさんが預かってくれてる。
  多分クビになると思うけど。
♡)そっか…。
臣)うん。
 
 
臣くんが心配だから…
それなら私も安心だ…。
 
 
臣)ありがとな…。
♡)え…?
臣)岩ちゃんから全部聞いたよ。
♡)…っ
臣)嫌な思いさせて…ごめんな?
♡)ううん…っ、
  臣くんは何も悪くないよ!
臣)でも…、写真撮られたのは…
  俺に隙があったせいだし。
  何もなかったにせよ、そんな写真見たら
  嫌じゃん、お前だって。
♡)……うん…。
臣)ごめんな。
♡)うん…。
臣)そばにいてやれなくて…
  守ってやれなくて…ごめん。
 
 
臣くんの腕が、ぎゅっと…強くなった。
 
 
臣)信じてくれてありがとう。
  戦ってくれてありがとう。
♡)…っ、うん。
 
 
私もぎゅっと臣くんを抱き返した。
 
 
♡)私なら大丈夫だよ!
  何があっても戦うよ!
  臣くんのこと、守るからねっ!
 
 
大事な大事な臣くんのこと、
絶対絶対、守るもん!
 
 
臣)♡…、
♡)…っ
 
 
優しく名前を呼ばれて、ドキッとして…
 
そっと瞳を見つめたら…
 
 
臣)♡…、
♡)////
 
 
もう一度優しく名前を呼ばれて…
 
まるで引き寄せられるように、
唇と唇が重なった。
 
 
臣)♡、愛してる。
♡)////
 
 
真っ直ぐにそう言われると、
トクントクンって…胸が高鳴って…
私の想いも、高まるの…。
 
 
♡)私も愛してる、臣くん///
臣)うん…。
 
 
臣くんは嬉しそうに微笑んで、
また優しいキスをくれた。
 
 
大好き。大好き。臣くんが大好き。
 
 
臣)……はぁ、このままキスしてたらダメだ。
  抱きたくなる///
♡)えっ///
臣)先に風呂入ってきていい?
♡)あ、うん…///
臣)一緒に入る?
♡)……ううん、もう入ったもん///
臣)じゃあ待っててw
 
 
クスッと笑った臣くんは
私のおでこにチュッとキスをして
立ち上がった。
 
 
戻ってきたら…
またいっぱいいっぱい…チューしようね///
 
 
ピロピロ♪ピロピロ♪
 
 
♡)あ。
 
 
臣くん、珍しく携帯忘れて行っちゃった。
届けてあげようかな。
 
 
ピロピロ♪ピロピロ♪
 
 
♡)ん…?
 
 
ふと目に入った画面には、「R」の名前。
 
 
♡)…っ
 
 
私は思わず、表示されてるメッセージを
読んじゃった。
 
 
『臣さん、昨日はありがとう。
 ご馳走様でした。
 それから…迷惑かけて…ごめんね。
 困らせてごめ…』
 
 
途中までしか表示されなくて、
その先はわからない。
 
 
なんで…?
昨日はありがとうって…何?
LAで会ってたの…?
 
ご馳走様でしたって…
ご飯…一緒に食べたってこと…?
 
 
♡)…っ
 
 
そのメッセージにすごく動揺してる自分がいて
ちょっとパニック…。
 
 
迷惑かけたって…何?
困らせたって…何?
 
一体何があったの?
 
 
胸の中に一気に広がる、黒いモヤモヤ。
 
 
臣くんに聞いたら…
ちゃんと教えてくれるかな?
 
 
そうだよね、嘘なんかつかない。
ちゃんと話してくれるよ、絶対。
 
私は臣くんのこと、信じてるもん。
 
 
 
……
 
 
 

 
 
 
臣)ふぅ、さっぱりしたーw
 
♡)はっ…
 
 
悶々としてる間に
臣くんが上がってきちゃった…!
 
はっ…
悶々と…って、私何言ってるの?
なんで悶々としてるの!?
 
臣くんのこと…信じてるんだから…
不安になることないのに。
悶々とするなんて変だよね、おかしいよ。
 
 
大丈夫。
絶対何もないもん。
 
臣くんは普通に話してくれるはず。
 
 
臣)あ、俺、携帯忘れてってた?
♡)うん。
 
 
テーブルに置いてあった携帯を
手に取った臣くんは…
 
たぶん今、RからのLINEを読んでると思う。
 
 
臣)……。
 
 
どうしよう…
なんかドキドキする。
 
あのメッセージの続きは何…?
臣くんは何を思ってるの?
 
 
臣)……よし、ベッド行こっか。
♡)え…?
 
 
返事…しないの?
 
 
臣)え?って何?どうした?
♡)ああ、えっと…、
 
 
どうしよう。すごく気になる。
 
 
♡)……ねぇ、臣くん。
臣)んー?
 
 
一緒にベッドに入ったら、
臣くんはすぐに腕枕して
私を抱きしめてくれた。
 
 
♡)LAで、何食べたの?
臣)へ?
♡)ご飯。美味しいもの、食べた?
 
 
……なんかやだな、こんな聞き方。
遠回しに探ってるみたいで…すごくやだ。
 
でもなんて聞けばいいのか…わかんなくて。
 
 
臣)うん。
♡)何食べたの?
臣)……日本食とか。
♡)日本食?
臣)うん。マネージャーと二人で
  食いに行った。
♡)…っ
 
 
二人で?
Rは一緒じゃなかったの?
 
 
♡)食事に行ったの…それだけ?
臣)うん。あとはホテルで食ったり
  テイクアウトしたから。
♡)…そ…っか…。
 
 
じゃあRの「ご馳走様でした」は
一体なんだったんだろう…。
 
 
♡)日本食って…お寿司?
臣)ううん、普通の料理だったよ。
♡)お酒飲んだの?
臣)ううん、俺もマネージャーも
  ジュースだけ。
♡)そうなんだ…。
  ご飯食べてすぐホテル帰ったの?
臣)うん。
♡)…そっか…。
 
 
どうしよう。
信じてるって言いながら…
私どこかで臣くんのこと疑ってるの?
 
聞けば聞くほどモヤモヤして、
そんな自分が嫌になる。
 
 
♡)向こうで…誰かに会った?
臣)え?
♡)日本人…。
臣)ああ、松尾さん。写真送ったじゃん。
♡)ああ、うん…。
臣)マスコミもちらほら来てたよ。
♡)そっか…。
臣)うん。
 
 
どうしよう…
もうハッキリ聞いた方がいいかな。
 
 
♡)Rは?
臣)えっ…
♡)Rは、会った?
臣)……うん。会場で。なんで?
♡)…っ、インスタに…写真載せてたから…
  臣くんと同じ構図だったから…
  会ったのかなーって思って…。
臣)ああ、みんなあそこで写真撮るからねw
♡)なんか話したの?
臣)うん、挨拶だけ。
♡)挨拶…?それだけ?
臣)うん、すぐ別れたよ。
♡)…っ
 
 
じゃあRのあのメッセージは何なんだろう。
 
 
♡)Rとはそれだけ?
臣)うん、なんで?w
♡)…っ
臣)それだけだよ?
♡)……。
 
 
臣くんが嘘をついてるなんて思いたくない。
でも…、
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
俺は知らなかったけど…
Rは♡に宣戦布告したって言ってたから…
 
♡はとっくにRの気持ちを知ってたわけで。
 
 
でも♡は俺に何も言わなかった。
 
 
あの子は臣くんのこと好きなんだよ、
だからもう近付かないで、とか…
いくらでもそんなこと言えたはずなのに
言わなかったんだ。
 
 
そこが♡らしいなって思う。
 
 
臣)大丈夫だよ…。なんもないよ…。
 
 
俺がそう言って♡を抱きしめたら、
♡がピクンと反応した。
 
 
♡)大丈夫って…、何?
  どういう意味?
臣)えっ…
 
 
俺なんか変なこと言った?
 
 
臣)いや、お前がRのこと…
  すげぇ聞いてくるから。
♡)…っ
 
 
心配してんのかなって思ったんだけど…。
 
 
♡)臣くん、気付いてるの?
臣)え?
♡)気付いてるから大丈夫って言ったの?
臣)気付いてるって…何が?
♡)Rの気持ち。
臣)…っ
 
 
あれ、そっか、そうなる?
どうしよう。
 
 
臣)Rの気持ちって?
  いや、ほら。俺が間違って
  あいつの太もも触っちゃったじゃん?
  それでお前怒ってたから…
♡)…っ
臣)なんもないよ、って。
  そんな深い意味はなかったんだけど…
♡)…っ
 
 
誤魔化せたかな…?
 
 
Rとのことは、♡に言うつもりはない。
余計な心配させたくないから。
 
 
臣)お前は?
  俺いない間、何してたの?
  あ、そーだ。隆二来たんだろ?
♡)うん…。
臣)サマンサ女子会してたんだって?
♡)うん…。
臣)なんだよそれ、楽しそうじゃんw
 
 
よし、このまま話題を変えちゃおう。
 
 
臣)ビーフストロガノフ?だっけ?
  美味しそうじゃん。
  今度俺にも作って♡
♡)うん…。
 
 
よし、じゃあそろそろHに…、
 
 
♡)……や。
臣)え…?
 
 
♡のナイトウェアに手を忍ばせようとしたら
拒否された。
 
 
臣)やだった…?え?
♡)ごめんね…、今日は…やだ。
臣)えっ!!
 
 
なんで!?
 
 
臣)俺…、なんか…した?
♡)……ううん。
 
 
じゃあなんで!?
 
 
♡)自分が…やなの…。
臣)え!?
 
 
何?
どういう意味!?
 
 
♡)ごめんね…、おやすみなさい…。
 
 
えええええええ!!!
 
 
臣)…っ
 
 
そう言われたら、これ以上何も出来ない。
 
めっちゃ抱きたかったのに…。
 
 
自分が嫌って、何?
 
 
だって…、だって…、
俺が風呂入るまでは普通だったよな?
 
 
俺が帰ってきた時だって
喜んで飛んできてくれて…
イノシシになってぎゅーしたし。
 
 
その後ソファーでも抱っこしてチューしたし…
 
なんで?
 
なんで急にこうなんの?!
 
 
臣)…っ
 
 
意味がわからなくて悶々とする俺は、
 
嘘はいつか必ずバレる日が来るってことを
忘れてたんだ。
 
 
あんなに、学習したのに。
反省したのに。
 
 
バカだよな…。
 
 
 
 
 
ーendー

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  1. みぃ より:

    うわぁ〰️
    正直に話すと信じてたのに…
    何故⁉️何故⁉️
    もぅ学習能力なさ過ぎだぁ…

  2. もも より:

    こんなにも学習しない人がいるなんて・・・
    もう別れても良いハズ(*`Д´)ノ!!!
    一緒になっても、相手の気持ちに気付けないなら、また繰り返しそう(¯―¯٥)
    とにかく、早くミスに気付いて欲しい!
    あと…ここまでくると、ひたすら♡ちゃんに早く幸せになってもらいたい!!!

    落ち着きます(笑)
    続きを楽しみにしています☆

    • マイコ より:

      ♡ちゃんが幸せになれる日はまだまだ遠そうだなぁ…。゚(゚^∀^゚)゚。

  3. さっちゃん より:

    臣君(´༎ຶོρ༎ຶོ`)学習してー!
    でも、優しい嘘ってのもあるしね。゚(゚´ω`゚)゚。臣君は、心配させまいと思って言わなかったのかなー。
    でも、後になればなるほど言いにくくなるのに。゚(゚´ω`゚)゚。

    • のんちゃん より:

      臣くん学習能力無さ過ぎるよ。心配かけたくなくて付いた臣くんの優しさの嘘でも時にはその優しさが辛い事だってあるんだよ。♡ちゃんの黒いモヤモヤが早く消えちゃいますように。やっぱり臣くん、チョッキンだね(笑)♡ちゃんは臣くんを信じてるのに、守ってるのに!もう臣くんのバカ!臣くんstoryの続きが気になる。マイコさんの予告書いてくれてるの凄い助かります。

    • マイコ より:

      やっぱりチョッキン決定?。゚(゚^∀^゚)゚。笑

    • マイコ より:

      そうそう、一度嘘ついちゃうとねぇ…。゚(゚´ω`゚)゚。

  4. ひな より:

    もぉー!!!!!臣くん(`・ω・´)
    ほんとにおバカさんなんですけど!!
    ムズムズする!何回同じこと繰り返してるのぉぉ!ほんとに-_-bしっかりして!!笑
    感情爆発させながら読んでました笑
    更新ありがとうございます♡

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