〈65〉木っ端微塵(RSide)

スポンサーリンク
スポンサーリンク

あたしは一旦部屋に戻って
メイクを直してから深呼吸をした。
 
 
R)よし…っ!
 
 
臣さんに電話をかけたら、すぐに出てくれて。
 
 
臣『何?どうした?』
R『ごめんなさい、あのね、
  大事なピアスが片方見当たらなくて…っ』
臣『え、ピアス?』
R『うん。どこ探してもないの…っ』
臣『マジで?さっきの店とか?』
R『ううん、電話かけたけどなかったって。』
臣『えーー。』
R『それでね、もしかしたら
  臣さんとぶつかった時かなって。』
臣『え?』
R『ポケットとかに入ってないかな?』
臣『ちょっと待って、見てみる。』
 
 
ドキドキドキ…ドキドキドキ…、
 
 
臣『あったーー!
  あったぞ。赤いやつ?』
R『うん!そう!』
臣『良かったーー。
  落としてたら大変だったじゃん。』
R『うん!良かった!』
臣『どうする?』
R『取りに行ってもいい?』
臣『いや、危ねぇじゃん。』
R『マネージャーと行くから大丈夫。』
臣『ああ、そう?
  いいよ。じゃあロビー降りるわ。』
R『あ、日本の記者いるみたいなの。』
臣『え、うそっ…』
R『だから部屋まで取りに行ってもいい?』
臣『ん、わかった。待ってるわ。』
R『ありがとう!』
 
 
やったーーーー!!
作戦大成功♡
 
これで部屋に行く口実はできたし、
ここからだ!
 
女優の腕の見せどころ!頑張るもんね!
 
 
あたしは部屋から
少しだけアルコールを持ち出して
臣さんのホテルに向かった。
 
 
ドキドキしながらエレベーターに乗って、
部屋の前まで来たら…
 
臣さんが静かにそのドアを開けてくれた。
 
 
臣)はい、ピアス。
R)…っ
 
 
もう渡されちゃった。
中に入れてくれないのかな。
 
 
R)ありがとう…。
臣)ん?どうした?
R)……っ
臣)え、泣いてんの!?
R)ぐす…っ
臣)え、ちょ、大丈夫?どうした?
R)ううっ…
臣)えーーーーっ
  ちょ、こんなとこで泣くなよ!
  とりあえず入れ!
 
 
やった!!
 
 
臣)座れよ…。
R)ぐす…っ
臣)なに、いきなり。どうしたの。
R)ずっと我慢してたんだけど…
  ごめんなさい…。
臣)なんか…やなことでもあった…?
R)……(こくん)///
臣)そっか…。
 
 
あたしをソファーに座らせた臣さんは
向かいのベッドの淵にそっと腰掛けた。
 
隣に座ってくれたらいいのに…。
 
 
臣)つーかお前マネージャーは?
R)喧嘩したから…一人で来ちゃった。
臣)ええっ!危ねぇじゃん!
  だったら連絡しろよ!
  俺が届けたのに!
R)…っ
 
 
臣さんってば優しい…。
嘘ついてごめんね。
 
 
臣)やなことってそれ?
  マネージャーとの喧嘩?
R)ううん、別の話…。
臣)まだあんのかよ。
R)悲しくて眠れないから…
  外に出てヤケ酒しようかと思って…
  これ持って出てきたんだけど…
  臣さんの顔見たら、
  なんか気が緩んじゃった…。
臣)はぁ?
  外で飲もうとしてたの!?
  危ねぇじゃん!何考えてんの!
R)だって…眠れないんだもん…。
臣)だからって女がこんな時間に
  外で一人で飲むな!絶対ダメ!
R)臣さんがお酒付き合って
  くれなかったから…
臣)えっ…
R)ぐすん…っ
臣)いや、ごめん…
  お前がそんな飲みたかったなんて
  知らなかったし…、、
  飲むなら自分の部屋で飲めよ。な?
R)一人は嫌なの…っ
  余計悲しくなるから…っ
臣)…っ
R)ぐすっ…うう…っ
臣)わかった!わかったよ!
  じゃあ今あるそれ、ここで飲め!
  飲んだら送るから帰って寝ろ!
  わかったか?
R)いい…の…?///
 
 
あたしは目に涙をためて
とびっきりの上目遣いをした。
 
 
臣)しょーがねぇだろ。ったく…。
 
 
あれ、あまり効き目なし…?
ま、いーや。
これでしばらくここにいれるもん♡
 
 
R)ね、開けれない。開けて…?
臣)はぁ?もぅ…。
 
 
わざと甘えた声を出して
お酒の蓋を開けてもらったら、
臣さんはまたベッドに戻っちゃった。
 
 
R)なんでそっちに座るの…?
  さみしい…。
 
 
もう一度、甘えてみた。
男なら大体これでイチコロなんだけど…。
 
 
R)隣…、来てくれないの…?
臣)行くわけねーだろ。
  黙って飲め。
R)ひどい!!
臣)優しいだろが!
  俺の部屋で飲ませてやってんだから!
R)こんな泣いてるのに…
  慰めてくれないの…?
臣)それは俺の役目じゃない。
R)…っ
 
 
キッパリ言われた。ひど…。
 
 
臣)話ぐらいなら聞いてやるけど?
R)……。
 
 
別に話なんかないもん。
これ全部演技だし。
 
 
R)……いい。
  臣さんに迷惑かけたくないから
  黙ってこれ飲む。これ飲んで帰る。
 
 
なんちゃって。
絶対帰んないもんね!
 
 
R)臣さんは…一緒に飲んでくれないの…?
  ダメ…?
臣)ダメ。
 
 
ケチ!!
 
いいもん。臣さんが飲んでくれなくても
あたしが酔ったフリすればいいんだもん。
 
 
パチーーン!!!
 
 
R)は!??
 
 
いきなり臣さんが自分の頬を叩いて
びっくりした。
 
 
まさか…
ドレス姿のあたしについムラムラして
そんな自分を戒めるために…??
 
谷間アピール、成功?!
 
 
R)どうしたの…?///
臣)いや、眠くて。寝ちゃいそうだから。
 
 
はぁ!?
眠かっただけーーー?!
失礼しちゃう!!
 
 
R)眠いなら寝てもいいよ…?
臣)いや、だって。
  お前送んなきゃなんないし。
R)……。
 
 
あたしは帰んないんだってば。
 
 
臣)それに…そういうのダメだから。
  怒られる…。
R)え…?
 
 
臣さんはウトウトしながら
なんとか喋ってる。
 
 
臣)隙を見せちゃダメー!!
  って言われるから、あいつに。
R)別に…相手あたしだよ?良くない?w
臣)まぁそうなんだけど…
  あいつが嫌がることはしない。
 
 
臣さんはそう言って
また自分の頬をペチペチ叩いた。
 
 
ふんっ。バッカみたい。
その間にあたしは持ってきたお酒を一気飲み。
 
 
臣)お前…すげぇ勢いで飲むな…。
R)だって…忘れたいんだもん…。
 
 
切なげに言ってみた。
 
 
R)はぁ、暑くなってきたかも…///
臣)水飲む?
R)ううん、いい…///
 
 
わざと目をとろーんとさせて
臣さんを見つめてみた。
 
 
R)ね、なんか…胸が苦しいの…///
臣)は?大丈夫!?
 
 
あたしは立ち上がって
ゆっくり臣さんに近付いた。
 
 
R)苦しいから…
  背中のファスナー、おろしてくれる…?
臣)は!?
  んなことしたら脱げるじゃん!
R)脱ぎたいの…、苦しいんだもん…///
臣)はぁ!?
R)ね、お願い…///
 
 
また目を潤ませて、うなじを見せながら
振り向いた。
 
 
R)脱がせて…?臣さん…///
臣)ダメに決まってんだろが!
  脱ぎたいなら帰れ!送ってやるから。
R)や…、今動けないもん…、、
  あ…っ、クラクラ…する…っ
 
 
ドサッ
 
 
臣)ちょ、何してんだよ!
 
 
倒れるフリして
臣さんをベッドに押し倒したら、
すぐによけられちゃった。
 
 
臣)いきなり酔いすぎだろ!
R)はぁ…///
臣)……横になってた方がラクなの?
  寝る?
R)いい…の…?///
臣)いいけど…脱ぐなよ。
R)あり…がとう…///
 
 
あたしはそのまま上まで上がって
枕に頭を乗せた。
 
 
臣)ほら、水。
R)うん…///
 
 
わざわざ持ってきてくれたんだ。
優しいなぁ…。
 
 
R)はぁ…、胸がきつい…///
 
 
わざと悩ましげな吐息で誘惑してみるけど…
 
 
臣)サイズ合ってねぇんじゃねぇの、それ。
 
 
全然効き目なし。んもぅ!!
 
 
R)ねぇ…このまま臣さんと
  一緒にいても…いい…?///
臣)はぁ?ダメ!
  休んだら帰れ!ダメに決まってんだろ!
 
 
ちぇっ。
 
 
R)どうしてダメなの…?
  同じ部屋にいたら…自信ないの…?
臣)は?自信って…
  お前に手を出す出さないって意味?
R)うん。
臣)んなことあるわけねぇだろ。
  何も起こるわけないっつーの。
 
 
なんでよ!ムカつく!!
あたしがここまで誘惑してんのに!!
 
 
R)じゃあいいじゃない、ここにいたって…。
  自信あるんでしょ?
臣)……そういう問題じゃないの!
  ダメなもんはダメ!モラルの話!
 
 
はぁ、頑固だなぁ…。
 
 
R)ねぇ…本当に気持ち悪いから…
  少しだけ眠ってもいい…?
臣)えーー。うん…。しゃーねぇな。
R)ごめんね…?
臣)いいよ…。
R)ん…ん…、///
 
 
あたしは身をねじって
自分で背中のファスナーをおろした。
 
 
臣)はぁ!?何してんのお前!!
R)だって…苦しいんだもん…///
 
 
無防備になった胸元を手で押さえながら
臣さんを見上げた。
 
 
臣)脱ぐなっつったろ!!
R)ごめん…なさい…///
 
 
そうは言ったって、こんな姿を前にしたら
男だもん。
 
どうにかなるんじゃない?
 
 
臣)はぁ、もう!
 
 
あ。
 
臣さんはあたしに背中を向けて
ドカッと座った。
 
見てくれないの…?
せっかく脱いだのに…。
 
 
R)怒ってるの…?///
臣)もういいから黙ってろ。
  休め。んでとっとと帰れ。
R)…っ
 
 
こんなチャンス、絶対逃さないもん!!
 
 
R)ね…、あたし…、
  人肌ないと…眠れないの…///
臣)はぁ!?
R)少しでいいから…そばにきて…?///
臣)知らねぇよそんなん!
  いつもはどうしてんだよ!
R)いつもは…抱き枕…とかで我慢してる…。
臣)じゃあこれでも抱いてろ!
 
 
ぼすんっ!
 
 
R)ひっどい!
 
 
余ってた枕を投げつけられたんですけど!?
 
 
臣)はぁ、もう…なんでこんなことに…。
 
 
なんかブツブツ言ってるし。
 
 
臣)あいつも今頃…
  シロとモモと寝てるかな…。
R)シロとモモってなぁに?
臣)うわ、起きてたのかよ!
  ひとり言、聞いてんなし!///
R)シロとモモってなんなのよ?
臣)うちにある…抱き枕。
R)は?抱き枕?なんで名前ついてんの?
臣)二個に増えたから…
  あいつと二人でつけたんだもん。
R)抱き枕に?わざわざ名前を?
  何それ、ばっかみたい!
臣)いいんだよ、バカみたいでも!///
 
 
臣さんは照れ臭そうに頭を掻いた。
 
 
臣)バカみたいなことでも…
  あいつとするから、楽しいの。
R)…っ
臣)あいつがいるから…特別になるんだよ。
R)……。
 
 
どうしてだろう。
 
臣さんは今、あたしに背を向けてるのに…
どんな顔をしてるのか
手に取るようにわかる。
 
 
きっとまた、甘々の顔をしてるんだよ。
あの子が好きで仕方ないって、そんな顔。
 
 
R)臣さん…、手…つないで…?
臣)なんでだよ!
R)お願い…///
 
 
必死に甘えてるのに、
臣さんはちっともこっちを見てくれない。
 
 
臣)お前なぁ、男の部屋に来て
  ベッドで寝て勝手に脱ぎ出して、
  マジで警戒心なさすぎ!
  普通の男だったらとっくに食われてるぞ!
R)…っ
 
 
食べて欲しいから、こうしてるんだもん。
 
どうしてわかってくれないの?
 
 
ドンッ
 
 
臣)わっ!!
 
 
もう我慢できなくて、
臣さんの背中に抱きついた。
 
 
臣)ちょ、何してんだよ!
  おっぱい!///
  離れろ!バカ!!!
 
 
あ、耳が赤くなった。
 
少しはあたしのこと、意識してくれた?
 
 
臣)離れろって!!!
R)やだ!///
 
 
あたしはめいっぱいおっぱいを押し付ける。
 
そして、赤くなってる臣さんの耳の淵を
ぺろっと舐めた。
 
 
臣)はぁ!??///
 
 
臣さんが勢いよく立ち上がったせいで、
あたしは振りほどかれて…
 
 
臣)おま、何して…、うわっ!///
 
 
振り返った臣さんは
ドレスが半分脱げてるあたしを見て
慌てたように目を逸らした。
 
 
臣)いい加減にしろ!///
 
 
バサッ!!
 
 
R)…っ
 
 
臣さんのジャケットを
頭からかぶせられちゃった…。
 
 
臣)お前、何考えてんの!?
R)…っ
 
 
やっとこっちを見てくれた。
 
 
R)臣さんの耳が赤くなったから…
  舐めたんだもん…///
臣)意味わかんねぇから!
  つーか全然元気だろ!帰れよ!
R)元気じゃないもんっ!
  やだ、絶対帰らないっ!
臣)はぁ!?
 
 
もうここまで来たら、引き下がれない。
 
 
臣)帰れ!
R)じゃあ…臣さんがぎゅって
  抱きしめてくれたら帰る…///
臣)は!?
 
 
あたしは臣さんのジャケットを肩に羽織って
両手を伸ばした。
 
 
R)ぎゅって…して…?///
 
 
してくれたら、そのまま抱きついて、
ベッドに引きずり込むもん。
 
帰るなんて嘘だもん。
 
 
臣)何言ってんの?酔ってんの?
  お前好きな奴いるんだろ?
R)臣さんだもんっ!!
臣)は!?
 
 
どうしよう、勢いで言っちゃった。
でもいいよね、もう止まんない。
 
 
R)あたしが好きなのは臣さんだもん!///
臣)…っ
R)なんでそんなに鈍いの?
  なんで気付いてくれないの!?
  こんなに好きなのに…っ!
臣)…っ
 
 
あたしの言葉に
臣さんは固まって、動かなくなった。
 
 
R)ずっとずっと…
  臣さんのことが好きだった…///
  大好きだったんだよ…?///
 
 
これは演技じゃない。
あたしの本当の気持ち。
 
ちゃんと伝えたい…。
 
 
R)臣さんが…大好きなの…///
臣)…っ、本気で…言ってる…?
R)……(こくん)///
 
 
あたしが頷くと、
臣さんは深く長い息を吐いて、
そのまま後ろのソファーに力なく座り込んだ。
 
 
臣)……俺は…、
R)やだ!言わないで!
臣)え…?
R)俺は♡が好きだって言うんでしょ?
  あたしの気持ちには応えられないって
  言うんでしょ!?
臣)…っ
 
 
あたしのこと振ろうとしてることなんて
わかるもん!
 
 
R)まだ言わないで。答え出さないで。
  この先何があるかわかんないもん。
  可能性がゼロじゃない。
  0.000001%でもあるなら
  あたしは諦めたくない!
  それくらい臣さんが好きなの!!
臣)…っ
 
 
あたしの勢いに、
臣さんは一瞬、口を閉ざしたけど…
 
しばらくして、あたしを諭すような顔で
あたしと目を合わせた。
 
 
臣)ゼロだよ。
R)…っ
臣)可能性、ゼロだから。ハッキリ言う。
  俺がこの先、気持ちが変わることは
  絶対ない。
  お前がいくら待ってたって
  時間が勿体ないからやめろ。
R)…っ
 
 
そう言われて、涙がじわじわ滲んできた。
 
 
なんで?
なんで嘘泣きの時と違って
こんなに胸が痛くなるの…?
 
 
R)勿体ないとか…臣さんが決めないで…っ
  あたしが臣さんを好きな時間は…
  勿体なくなんかないっ!!
 
 
気付けばあたしは泣きながら叫んでた。
 
 
臣)勿体ないよ。
  お前はまだ若いんだから
  新しい恋愛した方がいい。
R)やだっ!
臣)……子供みたいなこと言うなよ…。
R)やだ!絶対やだっ!
 
 
臣さんを困らせてるってわかるのに
止められない。
 
 
臣)俺がお前のことを好きになることは
  この先一生ない。絶対に。
  だから諦めて。
R)…っ
 
 
……これ以上ないくらいに、
ハッキリ言われた。
 
 
臣)俺が好きなのは♡だけ。
  この先一生、♡だけだから。
R)……ふ…ぇっ……
 
 
どうして…
今返事しないでよ…っ
 
しないでって言ったのに…
どうしてそんな木っ端微塵にするの。
 
 
R)ひど…いっ…
臣)うん。ひどい男だよ、俺。
  だからやめとけ。
R)ひっく…、ひっく…
 
 
違う。
本当はわかってる。
 
こんなハッキリ言ってくれたのは
臣さんの優しさだって。
 
でも胸が張り裂けそうに痛くて苦しいの…っ。
 
 
臣)後ろ向け。
R)…っ
 
 
肩にかけてた臣さんのジャケットは
そっと取り上げられて…
 
臣さんが背中のファスナーを
上まで上げてくれた…。
 
 
臣)全然気付かなくて…ごめんな。
R)…っ
 
 
そんな優しい声で言わないで…。
涙が止まらないから…。
 
 
臣)好きになってくれて…ありがとう。
R)…っ
 
 
ダメ、涙が止まらなくて、喋れないよ…っ
 
 
R)ふぇぇ…っ、えぇぇん…っ
臣)…っ
 
 
臣さんの手が頭にポンと優しく触れた。
 
 
臣)帰りたくない…?
R)……(こくんっ)
臣)わかった。
  じゃあ今日はここ泊まれ。
R)えっ…
臣)俺は別の部屋取るから。
R)…っ
 
 
やだ、行かないで。
お願いだから行かないで。
 
 
そう言いたくても、言えなくて。
 
 
R)こ…れ…っ、
臣)え…?
 
 
あたしは臣さんの腕にかかってるジャケットを
奪い返した。
 
 
R)お願い…これだけ…置いてって…。
臣)…っ
R)ふぇぇ…っ、お願い…っ
臣)…っ
R)ちゃんと返すから…っ
 
 
これくらいのワガママ、許して…
お願いだから。
 
このまま一人、この部屋に残されたら
寂しくて、死んじゃう。
 
 
あたしが泣きながらジャケットをぎゅっと
抱きしめると…
 
臣さんはゆっくりと息を吐いて
もう一度あたしの頭をポンと叩いた。
 
 
臣)ん。わかった。
  じゃあ俺行くから。
 
 
いや、行かないで。
一人にしないで。
 
 
臣)……おやすみ。
 
 
最後の一言は、すごく優しくて甘い声だった。
 
まるで…あの子と話してる時みたいに…。
 
 
………バタン。
 
 
部屋のドアが閉まった音がして…
 
 
R)うわぁぁぁん…っ!!
 
 
あたしはベッドに突っ伏して、
思いきり泣いた。
 
 
ここまでしたのに、ダメだった。
何をしても、ダメだった。
 
 
どんなに好きでも
どんなに想っても
 
臣さんの気持ちなんて
これっぽっちも動かせなかった。
 
 
R)ふぇぇ…っ、えぇぇん…っ
 
 
臣さんが好きなのはあの子だけ。
そんなのわかってる。
 
 
臣さんの瞳が愛おしそうに映すのも…
臣さんの声が優しく語りかけるのも…
 
臣さんの手が愛おしそうに触れるのも…
臣さんの唇が優しく愛を囁くのも…
 
全部全部、あの子だけ…。
 
 
あの子だけが、一人占めしてる。
 
 
R)ぐすっ…ぐす…っ
 
 
どうしてあたしじゃないの、なんて…
何度考えてもくだらないけど
考えてしまうの。
 
 
臣さんに愛されたら
どんなに幸せだったろう…。
 
他に何も望んだりしないのに…
どうしてあたしじゃダメなの…?
 
 
R)ううう…っ、ふぇぇぇ…っ
 
 
さっきまでいてくれた臣さんの気配が
どんどん消えていくのが寂しくて
 
あたしは必死に
臣さんのジャケットを抱きしめた。
 
 
R)はぁ…、ひっく…っ
 
 
臣さんの香水の匂いがする。
 
 
あたし今夜は…
この香りに包まれて、眠りたい…。
 
 
だってこうしてると…
臣さんが抱きしめてくれてるみたいだもん…。
 
 
ごめんね…臣さん…。
 
最後まで優しかった…。
こんなあたしに…。
 
 
ねぇ、このまま…瞳を閉じて…
朝が来たら。
 
まだこの匂いは残ってるのかな。
 
 
もしも…
もしも消えちゃってるなら…
 
その時はあたしのこの気持ちも
同じように消えちゃっていればいい。
 
 
臣さんのことが好きすぎる、こんな気持ち…
 
どうやったら消せるのか
自分ではわからないくらい、
 
 
途方もない話だから……。
 
 
 
 
 
 
ーendー

コメントを残す

  1. ひな より:

    臣くんが帰って包み隠さずちゃんと話してほしいな。Rちゃんの身になると凄く切ないけど、臣くんと♡ちゃんの思いはほんとに太い鉄だから!!何があっても信じる!!早く2人のラブラブが見たいなぁ\(//∇//)\
    更新ありがとうございます♡

  2. のんちゃん より:

    臣くん誘惑に負けなかったね。偉いぞ!もう暗黒期は来ないよね?大丈夫だよね?帰国後が非常に気になる。ほんと◯ーラにしか思えない。臣くん、優しすぎるんだよね。それが臣くんの魅力でもあるけれど、勘違いされやすいから気をつけて。♡ちゃん泣かすような事したら臣くんの臣くんチョッキンするからな?(笑)この2人の今後をずっと見届けたいなぁ〜♡マイコさんまだまだ大変な状況ですが更新ありがとうございます。

    • マイコ より:

      チョッキンされちゃう臣くん。゚(゚^∀^゚)゚。笑
      ローラじゃないってばー!やめてぇぇぇ!!ww

  3. もも より:

    臣くん、誘惑に勝ってくれてよかった~!
    色々あった臣♡だから、これからは幸せになって欲しい(๑•᎑•๑) 
    最近、甘々storyが続いてて嬉しい。
    みんなが、今後どんな風になっていくのか楽しみデス

    • マイコ より:

      ももさんありがとうございます(o^▽^o)
      甘々Story…、、すぐにまた終わってしまいますが…どうか見守ってあげてください〜!( ;゚³゚);゚³゚);゚³゚)

スポンサーリンク
スポンサーリンク