(74)桜の木の下で

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それから俺が
ジュースを2本買って戻って来ると…
 
 
臣)おい…死体かってw
 
 
♡はレジャーシートの上で爆睡してて。
 
顔に上着をかけて、ぴくりともしない。
 
 
臣)こえーわ!w
 
 
少し上着をめくってみると
気持ち良さそうな顔して眠ってる。
 
 
つーかこんなとこで一人で無防備すぎんだろ!
っとに…
 
 
あーあ…
寝顔可愛いし…
 
 
臣)……
 
 
つーかなんでこいつって
こんなに寝顔可愛いわけ?
 
普通寝顔って不細工じゃね?
全員とは言わねぇけど
不細工率高いと思うんだけど…
 
あ~~~もう///
 
 
♡の髪を少し撫でると
相変わらずふわっふわで。
 
 
臣)ん…?
 
 
俺がしばらく♡の髪を撫でてると
♡の頬に桜の花びらが落ちてきた。
 
 
え???
 
 
周りを見渡しても桜の木なんかない。
どっから飛んできたんだろ。
 
 
俺がその花びらを取ろうとすると
♡がぴくんと動いた。
 
 
♡)んん……っ
臣)…っ
 
 
……あ、まだ寝てる。
 
 
花びらを摘んでほっぺを少し撫でると
また少し動いた。
 
 
♡)…ふにゃ……
臣)ぷっ…w
 
 
お前は猫かってw
あ~~ほんと可愛いな~~
 
 
つーか…
 
 
臣)……
 
 
こんな風に触ってると
この間のこと思い出すな…。
 
 
♡の家で看病した日のこと。
 
 
寝てるこいつに…
何回も…
 
 
臣)……///
 
 
あ~~~~
死ぬほど柔らかかったよな…///
 
 
……ふにっ
 
 
♡)んっ…
 
 
俺が思わず唇に触れると、
♡が目を覚ました。
 
 
臣)おはよ。
♡)ほわ…ぁ…
  ……寝ちゃってた!!
臣)うん。
♡)なんか気持ち良くって…
臣)うん。そんな顔してた。
♡)えっ!!
臣)あほな顔して寝てた。
♡)え!!また?!
  ガーーン……
臣)ははははw
  ジュースどっちがいい?
♡)え?…あ、ありがとう!!
  じゃあこっちーー♡
臣)ん。
♡)ありがとう♡♡
  あ、そうだ。はい、おしぼり。
臣)さんきゅー。
  え、お前こんなん持ち歩いてんの?
♡)うん。
  ハンカチとティッシュと
  ウエットティッシュは
  3点セットでいつも持ってるよー♡
臣)女子ですなぁ。
♡)にひひ♡
臣)にひひってww
♡)じゃあいただきまーす♡
 
 
ジュースを一口飲んで、パンをかじると…
 
 
臣)おわ!うめぇっ!!
♡)美味しい~~!!♡♡
臣)何このパン!!
 
 
予想してた普通のパンの味とは全然違って
めちゃくちゃ美味しい。
 
 
♡)すごいねっ!!
臣)すげぇっ!!
 
 
俺たちはあっという間に食べ終わって
また寝転がった。
 
 
♡)美味しかったぁぁ♡
臣)うん。また食いたい。
♡)あははw
  また行こーー♪
臣)うん。
♡)……
臣)……
♡)……
臣)……
 
 
しばらく二人で何も喋らずに
青空を見上げて。
 
 
喋らなくても…
 
なんかこの空気感が心地いい…
 
 
♡)……
臣)……
 
 
白い雲が
ゆっくり流れていく…
 
 
♡)……
臣)……
♡)あ、あの雲…
  臣くんの帽子みたいな形してるー!
臣)え?どれ?
♡)ほら、あれー!
臣)ぶっw ほんとだw
  ……あっちはねこみたい。
♡)え?……あ!ほんとだー!
  あははは♡
臣)なんか…のどかだなぁ~~
♡)のどかだねぇ~~
臣)癒されんなーー
♡)癒されるねーー
臣)時間止まってるみたいだなーー
♡)止まってるみたいだねーー
臣)つーか…
  俺らはじーちゃんばーちゃんかってw
♡)あはははっw
 
 
隣を見ると、♡が可愛く笑ってて。
 
 
なんか…幸せだなぁ…。
 
こんな時間もいいよな~~~
 
♡とこんな風にのんびりできるとか…
 
すげぇ癒しの時間。
 
 
臣)はぁ……。
 
 
空気が気持ち良くて
 
深呼吸をして
その空気を思いきり吸い込む。
 
 
身体が生き返るみたいに
リフレッシュされる気分。
 
 
臣)あのさ、
 
 
ふと隣を見ると、♡はまた寝てる。
 
 
臣)……どんだけ寝んだよw
 
 
働いたから疲れたのかな。
 
まぁ、すげぇ頑張ってたしな。
ほんと…惚れ直したし。
 
 
臣)あーあ。
 
 
夜…なんて言おっかな。
 
早く好きだって言いたい。
OKだったら今度こそ堂々とチューしてやる。
 
 
むにっ。
 
 
柔らかい♡のほっぺをつねってみたけど
全然起きない。
 
 
サワサワサワ…
 
 
少しそよ風が吹くと、♡の髪が揺れて。
 
 
臣)髪食ってる…w
 
 
俺が唇から髪の毛をよけてやると
♡がぴくんと動いた。
 
 
♡)…ふふ…っ……
 
 
……笑ってる。
 
 
臣)……
 
 
なんなんだよw
 
あ~~あ!可愛いな~~
くそーーーー///
 
 
俺は♡の方を向いたまま、
自分の肘に頭を乗せて
しばらくその寝顔を眺めてた。
 
 
風が吹く度に…
♡の髪をよけながら…
 
 
なんか…
 
俺も眠くなってきたかも…
 
 
臣)……
♡)…zzz………
臣)……zzzz…
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
♡)…ん……、
 
 
寝返りを打って目を開けると…
 
目の前に臣くんの顔があって。
 
 
♡)わぁっ!///
 
 
びっくりして、一瞬で目が覚めた。
 
 
♡)…っ
 
 
あれ?
私…寝ちゃってたんだ。
 
臣くんも…寝てる…。
 
 
♡)……
 
 
私はそのまましばらく
臣くんの寝顔を見つめてみた。
 
 
綺麗な寝顔だなぁ…
こんな綺麗に寝る人いるのかな…。
 
 
 
……てゆーか…
私…
 
 
臣くんと一緒にいるのがすごく楽しくて
忘れちゃってたけど…
 
今日、告白するんだよね…??
 
 
♡)…っ
 
 
わわわっ…
 
すっかり頭から抜けてた!!
どうしよう!!///
 
 
今は…、もう17時かぁ…。
 
この後は4人でお祝いだし…
 
今じゃなくて…
お祝いが終わってからの方がいいよね?
 
 
じゃあ帰りに…
別れる前に言おうかな…?
 
 
♡)……///
 
 
ど、ど、どうしよう!!
ドキドキしてきた!!
 
にゃんこーー!!!
うわーんっ!!!///
 
 
 
……つん。
 
 
♡)えっ…
臣)……おはよ…。
 
 
私が振り向くと
臣くんが横になったまま
私をつんつんしてる。
 
 
♡)…おはよ///
臣)俺まで寝てたぁ~
♡)うん。
臣)お前の眠気うつった。
♡)え!私のせい?w
臣)うん。
  お前ほんとどこでも寝るなーー
♡)なんか急に眠くなっちゃったんだもん。
臣)で、起きたら元気なんだろ?w
♡)元気いっぱいだよー!
臣)ぷっw
♡)臣くんはー?
臣)俺別に寝なくても元気だしw
♡)えーー!
臣)んーー、今何時ー?
♡)17時だよー
臣)マジか。1時間くらい寝てたんだーー。
♡)……
 
 
なんか…
寝転がったまま話しかけてくる臣くんが
可愛い…///
 
 
触りたく…なっちゃう…
うずうず。
 
 
つん。
 
 
臣)ん??
 
 
つん。
 
 
臣)なんだよ!!w
 
 
臣くんのほっぺをつんつんしてみた。
 
 
臣)つんつんすんなしw
♡)臣くんだってしたもん~!
臣)つんつん返しですか。
♡)そうです。へへへー♡
 
 
つん。
 
 
臣)……///
 
 
つん。
 
 
臣)なんなんだよお前は!///
♡)きゃあっ///
 
 
つんつんしてた腕を臣くんに引っ張られて…
 
 
ぽすんっっ
 
 
♡)わ、わ、ごめんっ///
 
 
臣くんの身体の上に乗っかっちゃった!
 
 
♡)ごめんねっ///
 
 
慌てて起き上がろうとすると…
 
 
……ぎゅっ
 
 
♡)えっ?
 
 
一瞬、ぎゅって抱きしめられた感触。
 
 
臣)つーか俺ら、パン食って
  寝てただけじゃんw
 
 
臣くんは何事もなかったように
すぐに起き上がって。
 
 
♡)……///
 
 
今の…なに??
 
 
臣)よーし、もうちょっと歩いてみる?
♡)え…っと、…うん///
 
 
ぎゅってされたのは気のせいだったのかな?
びっくりした…///
 
 
 
それからしばらく二人で園内を散歩してると、
 
絵を描いてる人や
本格的に三脚を使って撮影してる人を
たくさん見かけた。
 
 
臣)なんかみんな自由だなー
♡)だねーー
臣)あ、子供たちも増えてる。
  サッカーいいなーw
♡)あはは、また入れてもらうー?w
臣)いや、今日はやめとくw
  ……あ、…すげぇキレイ……
♡)ん…?
 
 
臣くんが目を留めたのは、
おじいさんが描いてる桜の絵。
 
 
♡)わ…ほんとにキレイだね…!
臣)うん。
 
 
私たちは思わず近寄って、
その様子を眺めてた。
 
 
臣)なんか…芸術に触れると
  心が洗われんなぁ…
  …って、さっきも思ったけどさ。
♡)あ、おじさん?
臣)だからおじさんじゃねぇだろw
♡)あ、そうだった!先生だ!
臣)ははははw
 
 
私たちがそんな話をしてると
おじいさんが振り返って…
 
 
♡)あ、ごめんなさいっ…
 
 
うるさかったかな、って謝ろうとすると
おじいさんは優しく笑った。
 
 
♡)…っ
 
 
綺麗な白髪で…白い髭も生やしてて…
目元がすごく優しいおじいさん。
 
 
おじいさんが描いてるのは桜だけど…
おじいさんがずっと見ている木には
桜は咲いてない。
 
 
♡)あの…
男)なんだい?
 
 
おじいさんが優しく返事をしてくれた。
 
 
♡)桜、すごくキレイですね…
男)……
♡)この木を…描いてるんですか?
男)そうだよ。
♡)……
男)この木は…まだ咲いてないけれど
  桜の木なんだよ。
♡)そうなんだ…!
臣)咲いてないとわかんないよな。
♡)ね。
 
 
今日は桜は一本しか見かけなかったし。
 
 
♡)咲くのが待ち遠しいですね♡
 
 
私がそう言うと…
 
 
男)妻もそう言っていた…。
 
 
おじいさんが静かにそう言った。
 
 
男)この木が…
  桜が咲くのが…
  楽しみで仕方ないって。
  早く桜が見たいって…
♡)……
男)桜が咲くのを楽しみにしては
  毎日嬉しそうに笑ってた…。
臣)……
♡)奥さんは…
男)桜を待てずに…先月、先立ったよ…
♡)……っ
男)だから…まだ咲いてないけれど…
  二人で毎年見てた桜を思い出しながら
  こうして絵にしてるんだ。
臣)……
男)早くあいつに…
  プレゼントしてやりたくて…
♡)…っ
 
 
おじいさんは…
毎年奥さんと…桜を見てたんだ。
 
 
奥さんのために…
まだ花なんて咲いてないのに
 
こんな綺麗な桜を描いてあげてる。
 
 
♡)うう~~~
臣)泣くな。
♡)だって…っ
 
 
臣くんが私の涙をごしごしした。
 
 
男)おや、泣かせてしまって申し訳ない…
♡)いえ、ごめんなさいっ…
 
 
なんか…
おじいさんの想いが伝わってきて…
我慢出来なかった。
 
 
臣)こんな綺麗な桜の絵…、
  きっと奥さん喜びますね。
 
 
臣くんが…すごく優しい表情でそう言った。
 
 
男)そうかい…?
  ヘタクソだって怒られないと
  いいんだけど…w
臣)すごくあったかいです…
  愛情がいっぱい詰まってる。
♡)うんっ…ぐす…、……詰まってる!
臣)お前は泣くなって…w
  ほんとにもう…しょうがねぇ奴。
 
 
臣くんはそう言って
私の頭を優しく撫でてくれた。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
子)危ないっ!!!
 
 
その声に振り返ると、ボールが飛んできて。
 
声を上げたのは、
隣でサッカーをしていた子供たち。
 
 
ガシャンッ…
 
 
臣)…っ
 
 
気付いたら、♡が全身で絵を庇ってて
 
ボールは筆洗いバケツに直撃して
引っくり返ったバケツの水が
♡の背中に見事にかかった。
 
 
臣)大丈夫か!?
♡)…っ、大丈夫だった!!
  良かったぁ~〜!!
 
 
俺は♡を心配してそう言ったのに、
 
♡は絵を見て安心したように笑った。
 
 
男)お嬢さん、大丈夫かい??
♡)私は大丈夫ですよー!
  びっくりしたぁ!!
  絵が無事で良かったです♡
 
 
そう言うと♡はボールを持って
子供たちのところへ走っていった。
 
 
♡)ねぇねぇ!
  ここちょっと危ないから
  もうちょっとあっちで遊ぼう?♪
子)すみませんでしたぁ!!
子)ごめんなさい!!
 
 
俺はひっくり返ったバケツを拾った。
 
 
臣)水…汲んできますか?
男)いや、いいんだよありがとう。
  そろそろ陽も落ちてくるし…
  切り上げようと思ってたんだ。
臣)そうなんですね…
 
 
おじいさんはそう言って
絵の具道具を片付け始めた。
 
 
男)本当はね…、
臣)……
男)ずっと隣にいてくれたあいつが
  突然いなくなって…
  何をどうしたらいいのか
  わからないんだ…。
臣)……っ
 
 
少し寂しそうな、おじいさんの声。
 
 
男)もうあいつにしてやれることは
  何もないのかって…
  そんなことを考えて……
臣)……だから……
  絵を描いてるんですか…?
男)そうだね…
臣)……
男)あいつが楽しみにしていた桜が…
  今年咲いても…
  もう一緒に見られないんだなぁ…
 
 
そう言って、ものすごく寂しそうに
桜の木を見つめるおじいさん。
 
 
臣)…っ
 
 
ヤバい…
なんか…俺まで泣きそうだ。
 
 
男)ずっと一緒にいたのに…
  一緒にいられた時間が
  一瞬のように感じてしまう…
臣)……
男)いつか必ず…
  死が二人を分かつ時が来ると
  わかっていたはずなのに…
  ……実際には…
  わかっていなかったのかもしれない。
臣)……
男)彼女は…君の大切な人かい?
臣)…はい。
男)そうか…。
 
 
俺の返事に、
おじいさんはすごく優しく微笑んだ。
 
 
男)限りある時間を…
  どうか大切に過ごしてください。
臣)……
男)二人でいられる時間を…
  笑い合える時間を…
臣)……っ
男)おやおや、申し訳ない!!
  泣かせるつもりじゃ…
臣)いえ、すみません…
 
 
大切な人に
会えなくなってしまったおじいさんに
そう言われて…
 
 
おじいさんの言葉が、胸に染み込んできて…
俺は涙を我慢出来なかった。
 
 
♡)あっ!!
 
 
♡が走って戻ってきて…
 
 
♡)臣くん…
  どうして泣いてるの…?
臣)……っ
 
 
俺は思わず顔を隠して横を向いた。
 
 
♡)臣くん…っ
  …ううう~~~
臣)えっ
 
 
またポロポロ泣いてる!!
 
 
臣)なんで!!
♡)だって臣くんが泣いてるからぁぁ…っ
臣)お前まで泣くな!
♡)ううう…っ、ぐすっ、
 
 
俺は慌てて♡の頭を撫でた。
 
 
そんな俺たちを見て、
 
 
男)二人とも…優しい子だね。
 
 
おじいさんは優しく笑いかけてくれて…
 
 
男)じゃあ…私はこれで…
  お嬢さん、さっきはありがとう。
  それじゃ…
 
 
そう言って、立ち去ろうとして。
 
 
♡)…あのっ!!
 
 
♡はおじいさんを追いかけて
おじいさんの手を取って、目を閉じた。
 
 
♡)……
男)……
♡)キレイな桜が咲きますように。
  おじいさんの想いが
  届きますようにっ!!
 
 
♡は…
願いを込めるようにそう言った。
 
 
♡)おじいさん…
男)……
♡)会えなくなっちゃって…
  寂しくて…寂しくて仕方なくて
  泣きたくなったりもするけど…
  でも…奥さんはおじいさんのこと
  絶対見てます!!
男)……っ
♡)桜が咲いて、それを見る時は…
  寂しい気持ちよりも…
  奥さんと一緒に桜を見て
  幸せだった気持ちを…
男)……
♡)奥さんの笑顔を
  思い出してあげてください!!
男)…笑顔…を…?
♡)はい。
 
 
そう言って♡はにっこり笑った。
 
 
♡)私だったら…
  大切な人には…いつまでも
  自分の笑顔を覚えていてほしいから…
男)…っ
 
 
♡がそう言うと…
 
一筋の涙が、おじいさんの頬を伝った。
 
 
男)あいつの笑顔が…
  本当に…好きだった。
♡)……はい…。
男)……っ
♡)奥さんも…
  …おじいさんの笑顔が…
  大好きなはずです♡
男)……っ
♡)笑っていてほしいって…
  きっと思ってます。
 
 
♡が泣きながらそう言うと
おじいさんは少し笑って、
♡の手を握り返した。
 
 
臣)……
 
 
大切な人を残していく悲しみと
残される哀しみ…。
 
 
でもきっと…
一緒に過ごしてきた時間は
悲しい記憶なんかじゃなくて…
 
お互いに願っているのは
相手の笑顔と幸せ。
 
 
臣)……
 
 
♡は…
お父さんとの別れを重ねてるんだろうか…。
 
 
男)ありがとう…
  ……ありがとうっ……
 
 
おじいさんは何度もそう言って、
♡の頭を撫でると…
 
そのまま静かに去っていった。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
♡)…頭…なでなでされた…
臣)うん。
♡)あったかかった…
臣)うん。
♡)……
臣)……
♡)桜の絵…
  …早く…出来上がるといいね♡
臣)うん。
 
 
臣くんの顔を見上げると、
まだまつ毛が濡れてる。
 
 
♡)……
 
 
臣くんは帽子をかぶってるから…
頭なでなで出来ない…。
 
 
臣)……え?
 
 
私は臣くんの前に立って、
ほっぺをなでなでした。
 
 
臣)…なんだよっ///
♡)泣いてたから…
臣)泣いてねぇし!///
♡)なでなで…
臣)やめろっ///
 
 
臣くんは恥ずかしそうに
そっぽを向いた。
 
 
♡)……
 
 
臣くん…。
 
 
きゅっ
 
 
私が臣くんの服の裾をそっと掴むと、
その手を臣くんがキュッと握った。
 
 
♡)…っ
 
 
私がもう片方の手で
もう一回臣くんのほっぺをなでなですると、
 
臣くんは私の頭をなでなでしてきた。
 
 
♡)……///
臣)……///
 
 
なんか…
照れくさいけど、あったかい。
 
 
♡)臣くん…
臣)……
♡)はっくしゅんっ!!
臣)え…っ
 
 
いきなり寒気がした。
 
 
臣)つーか!!
  お前さっき思いっきり水かぶったろ!!
♡)あ…っ
 
 
そうだった。
 
 
臣)あちゃーーー
 
 
臣くんは私の肩を掴んで
私の身体を反転させた。
 
 
♡)やっぱり…あちゃーなカンジ?
臣)よし、買いに行くか。
♡)え?
臣)服。ほら、行くぞっ。
♡)えっ!
 
 
私はそのまま臣くんに手を引かれて
出口に向かった。
 
 
 
……
 
 

 
 
 
臣)好きなん選んでいーよ。
♡)え??
 
 
臣くんが連れてきてくれた服屋さん。
 
 
臣)つーかこれ、可愛かったのにな…
  水彩だから落ちるかな?
 
 
私の背中を見て、臣くんがそう言った。
 
 
♡)…っ
 
 
今、可愛いって言った??
 
 
♡)これ…可愛かった??
臣)え…、うん。
♡)ほんとっ??
臣)…うん…//
♡)////
 
 
デートだからオシャレして良かった///
えへへ…♡♡
 
 
臣)でも派手に色付いちゃったから
  もったいねぇなって。
 
 
そう言われて鏡で背中を見てみると、
白いワンピースが桜色に染まってる。
 
 
♡)こんなにかかってたんだ!!
臣)そ。
♡)これは…着替えなきゃ…
臣)だから好きなん選んでいいよ。
♡)え??
  えっと…自分で買うよ??
臣)いいって。
  お前が無茶した時は
  俺が面倒見るって決めてるからw
♡)えっ…
臣)ほんと身体が先に動くんだもんなー
♡)……
臣)でもちゃんと…、絵…守れたから…
  えらいえらいw
 
 
臣くんはニコッと笑って…
 
 
臣)だから、好きな服選べよー?
 
 
優しく頭をポンポンしてくれた。
 
 
♡)えっと…///
 
 
ほんとに買ってくれるのかな?
どうしよう。
 
 
私が無茶した時は…
臣くんが面倒見てくれるの…?
 
そんなのいつ決めたんだろう///
 
なんかサラッと言われたけど…
ううう…///
 
 
臣)これとかどうー?
♡)え??
 
 
臣くんが持ってきたのは、
水着並に露出が高い服。
 
 
♡)何それっ!絶対着ない!///
臣)だろうねw
♡)~~~もうっ!///
臣)早く選ばないとこのへん勝手に買うぞ。
♡)え!やだっ!
 
 
私は慌てて店内を見渡した。
 
 
えっと…えっと…
どれにしよう…
 
 
♡)あっ!これ可愛いっ♡
臣)お、いいじゃん♪
♡)色も好きー♡
 
 
値札どこだろ…えっと…
 
 
♡)!!!
 
 
39800円?!
ワンピース1着でそんなにするの!?
無理ーーっ!!泣
 
 
♡)えっと…
  やっぱり違うのにしよっと。
 
 
安いのどこー!!
全部こんな値段だったらどうしよう…
 
あ!あのへん安そう!!
 
 
♡)…っ
 
 
手に取ってみると、8400円。
 
うーん…、、
 
全然好きじゃないけどこれにする!!
 
 
臣)おい。何じゃいそれは。
♡)これにしようかなって…
臣)どっからどう見ても似合わねぇだろ!!
♡)えっ!
臣)なんだよそのババくさいの!
♡)え!ひどいっ!
  てゆーか店員さんに聞こえるでしょ!汗
 
 
私は慌てて臣くんの身体を押した。
 
 
♡)もうっ!
臣)だって!!
  …ちょ、それ貸せ。
 
 
持ってたワンピースを取り上げられて…
値札を見ると、臣くんはため息をついて。
 
 
臣)すみません。
  こっち試着いいですか?
  サイズ合えばそのまま着ていくんで。
店)かしこまりました。
♡)えっ…
 
 
臣くんが店員さんに渡したのは、
さっきの高いワンピース。
 
 
♡)ダメだよっ!
臣)いいからとっとと着てこい。
 
 
そう言ってポンと背中を押された。
 
 
♡)…っ
 
 
戸惑いながらフィッティングルームに入って
ワンピースを着替えると…
 
 
♡)わぁ…っ♡
 
 
やっぱりこれ可愛いっ!♡
わぁ♡わぁ♡
 
 
……でも…、39800円…。
恐ろしすぎる…。
 
 
店)お客様いかがですかぁ?
♡)あ…、えっと…
 
 
ゆっくりカーテンを開けると…
 
 
店)わぁっ!!
  とってもお似合いです~♡♡
臣)うん。じゃあこれください。
店)かしこまりました~♡
♡)…っ
 
 
店員さんがタグを切ってくれて、
臣くんが会計をしてくれた。
 
 
店)どうもありがとうございました~♡
  またお待ちしておりまーす♡
♡)…っ
臣)よし、行くか。
♡)…ほんとに…いいの?
臣)いーのっ!
♡)ありがとう…
臣)なんだよその浮かない顔はw
♡)だって…高かったんだもん…
臣)ばーかw
  あんな変なワンピース着られる方が嫌だw
♡)変なワンピースって!
臣)だって変だったじゃん。
♡)…ぷっw
 
 
思わず笑っちゃった。
 
 
臣)お前も変だと思ってたくせに~w
♡)だってあれ…
  どーゆー服か謎だったもんw
臣)それを買わせようとしたのは誰だよ!w
♡)だって…
臣)こっちのが断然可愛いじゃん。
♡)えっ?
臣)…似合ってるっつってんの!
 
 
バシッ
 
 
♡)いたっ!
臣)ほら、いくぞっ///
♡)うん…///
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
俺がスタスタと歩くと、
その後ろを小走りで追いかけてきた♡が
俺の服を掴んだ。
 
 
♡)臣くん…っ
臣)んー?
♡)ほんとにありがとう///
臣)ん。
♡)これ…すっごく可愛いから嬉しい///
臣)ん。
 
 
すげぇ似合ってるもん。
 
 
♡)ありがと♡♡
臣)ん!///
 
 
俺の服を掴んで嬉しそうに笑うその顔が
可愛くて。
 
くそーーー///
 
 
♡)あ!…でも…
臣)ん?
♡)臣くんの誕生日なのに
  私がプレゼントしてもらっちゃった!
臣)あははは、別にいいじゃんw
♡)えーー!
臣)ほら、いくぞ。
♡)うん…///
 
 
俺にとっては
お前とこうして一緒にいれんのが
何よりのプレゼントだし。
 
 
 
 
 
ー続ー

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