(73)家宝

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♡)本当に今日天気いいねー♡
臣)だなー。
  ちょっと暑いくらい。
♡)もう14時過ぎかぁ。
臣)あっと言う間だったなw
♡)ねっw
 
 
それから俺たちは
♡が言ってたベネチアっぽい建物に向かった。
 
 
♡)この辺かなぁ?
臣)この辺なの?
♡)うーん…
臣)つーか今気付いたけど
  方向音痴のお前を信じてついてきて
  大丈夫だった?俺w
♡)ちょっと!ひどい!w
臣)だってさw
♡)大丈夫だもんっ!
臣)あ、ベネチアっつーか…
  すっげぇ古き良き和の古民家みたいのなら
  あったけど…w
♡)え?…あ!ほんとだ!
  わぁ!ここもなんかすごいねぇ!
臣)うん。ベネチアとはかけ離れてるけどw
♡)わーん!ベネチアどこー!w
臣)あはははw
♡)よし!
 
 
そう言うと♡は
すれ違った女性に声をかけた。
 
 
♡)すみません!!
  この辺にベネチアっぽい建物ありますか?
女)ああ!ありますよ!
  そこの坂少し上って左手に。
♡)わぁ!ありがとうございます♡
女)いいえー♡
♡)可愛いですか?
女)そうですね♪
  結構見に来る方も多いですよー
♡)わーい!
  どうもありがとうございました♡
女)はーいw
 
♡)やっぱりこっちで合ってた~♪
臣)はいはいw
 
 
なんかドヤ顔してるしw
 
 
つーか、♡って方向音痴だけど
周りの人に助けられて
いつもなんとかなってるんじゃ…w
 
 
♡)あったー!!♡
臣)おお!ここか!
♡)うん、確かに可愛い!♡
臣)っぽいね~~
♡)うん!っぽい!!w
  わーい♪写真撮るー♪
 
 
♡はるんるんしながら橋を渡って
いっぱい写真を撮ってる。
 
 
臣)こーゆーの好きなの?
♡)うんっ!
臣)ふーんw
♡)こーゆーのっていうか
  海外の可愛い建物とかが大好きなのー♡
臣)そうなんだ。
 
 
確かに…女子が好きそうだよな。
 
 
こんな喜ぶんなら…
いつか連れてってやりたいなー。
 
 
♡)ね、一緒に写真撮ってもらおー♡
臣)え?
♡)あ、すいませーん!
  写真撮ってもらってもいいですか?
男)え?私ですか?
♡)はいっ♡
男)いいですよ、くすくすw
 
 
♡が話しかけたのは
ヒゲを生やした、貫禄のあるおじさん。
 
 
この人…
ただの通行人じゃないような…
 
 
男)ここ押せばいいのかな?
♡)あ、シャッターこっちです♡
男)はいはいw
 
 
♡がおじさんにカメラを渡すと
後ろから若い男が慌てて飛び出てきた。
 
 
男)先生!!僕が撮ります!!
男)いやいや、いいんですよw
男)だって…
男)大丈夫大丈夫w
  はい、じゃあいきますよー♪
♡)はーい♪
 
 
カシャッ。
 
 
♡)わーい♪
  ありがとうございましたー♡
男)元気なお嬢さんですねw
臣)……
 
 
うーん…
さっきの青年の焦り具合からして
この人…なんか偉い人なんじゃ…
 
♡はそんなの気にしないで
ニコニコ話しかけてるけど…
 
 
♡)あ!おじさんから絵の具の匂いがするー!
男)おや。
♡)当たりですか?♡
男)当たりですねーw
♡)わぁ!画家さんですか?
男)画家さん…w
  ですねー
♡)わぁ!すごーい!
男)せ、先生…w
男)いいんですよw
 
 
♡があまりにフレンドリーに話しかけるから
青年がさっきからヒヤヒヤしてる。
 
さっき青年が飛び出してきた建物に目をやると
そこは画廊だった。
 
 
♡)おじさんが描いた絵、見れるんですか?
 
 
♡は目を輝かせてそう聞いた。
 
 
男)そうですねぇ…見ますか?
♡)見たいですっ♡
男)じゃあこちらへどうぞw
男)ちょっと先生!
男)まぁまぁ、いいじゃないですかw
男)でも…
 
 
大丈夫なのか…?
 
つーかこいつほんとグイグイいくな…
どんだけ人見知りしねぇんだよ!w
 
 
おじさんに案内してもらって
画廊に入ると…
 
そこは絵の具の匂いが充満していて
たくさんの油絵が飾られていた。
 
 
なんかすごい先生っぽいし…
無理矢理入れてくれたっぽいから…
俺はサングラスを外した。
 
 
♡)わぁぁぁ!!すごーいっ!!♡
臣)うわ…、ほんとにすげぇ…
 
 
絵の知識なんて全くないけど…
 
そんな素人の俺が見ても
なんかすげぇ伝わるもんがある。
 
 
♡)おじさんはすごい人なんですか?
男)すごい人って…!!
  この人は…っ
男)いいんですよw
 
 
青年の言葉をおじさんが遮った。
 
この人は、の続きが気になる…
 
 
男)油絵は好きですか?
♡)えへへ…よくわかんないです♡
 
 
おい!正直か!!ww
 
 
♡)でも…詳しくはないけど
  観るのは好きです♡
男)へぇ…どうして?
♡)絵だけじゃなくて…
  芸術作品って…観るの好きです♡
男)ほぉ…。
♡)どんな想いで作ったのかなとか
  どんな風に作ったのかなとか
  いっぱい想像しちゃうし…
  その人の想いがたっくさん
  詰まってる気がするから…
男)……
♡)えへへ♡
 
 
♡は無邪気にニッコリ笑った。
 
 
男)…君も…芸術家じゃないですか?
臣)えっ!!
 
 
おじさんの視線が今度は俺に向いた。
 
 
臣)えっと…
 
 
芸術家?ではない…よな??
 
 
♡)歌い手さんです♡
男)ああ、やっぱり…
臣)え?
男)何かを創る…というか
  生み出す人だなと思いました。
臣)え…っ
 
 
どうして…
 
 
男)こういう仕事をしてるとね、
  そういうのは何となく伝わるんですよ。
 
 
そう言ってニッコリ笑うおじさん。
 
そうか…
そういうもんなのか…
 
 
男)君は眼がとてもキレイだ。
  きっと素敵な歌を唄うんでしょうね。
 
 
おじさんが真っ直ぐに俺の眼を見た。
 
 
♡)そんなのもわかっちゃうんですか?
男)ええw
♡)おじさんすごーい!♡
男)あはははw
♡)ほんとにすっごく素敵な歌なんですよ♡
  私、彼の歌が大好きなんです。
男)ほぉ…
臣)……///
男)そう言ってくれる人が一人でもいるのは
  とても素敵なことですね。
臣)はい…。
♡)おじさんの絵も私大好きー♡
男)え?
♡)なんかあったかいカンジがするー♡
男)そうですか?
♡)はいっ♡
 
 
確かに…
絵の内容は全部違うのに…
全てに共通してるのは「あたたかさ」で。
 
なんか優しい感じがすごく伝わる。
 
 
男)では…ここでお二人に出逢えたのも
  何かの巡り合わせだと思うので…
 
 
そう言っておじさんは、
小さな色紙にスラスラと絵を描いてくれた。
 
 
♡)わ、わ、え、え、
臣)え、え、すげぇ…っ
 
 
俺たちはその指先に釘付けになって…
 
 
スラスラと描かれていく風景。
淡い色合いで次々に彩られていく世界。
 
 
あっという間に絵が完成すると
小さくサインを入れてくれた。
 
 
男)はい、どうぞ。
男)ちょ、ちょっと先生!いいんですか??
男)いいじゃないですかw
  こういう出逢いも
  私は大切にしたいんですよ。
男)でも…っ!!
男)二人とも…眼がすごく澄んでいるんです。
  ちゃんと「心」がある人たちだ。
  良かったら…貰って下さい。
♡)いいんですかっ?
 
 
♡が受け取った絵を、二人で一緒に見てみた。
 
 
♡)わぁ……///
臣)すげぇ綺麗…
♡)うん…っ
臣)水彩画も描かれるんですか?
男)いえ、滅多にw
  普段は油絵のみです。
臣)そうなんですね…
♡)でも…
  水彩のタッチもすごく好きだなぁ…
 
 
綺麗な青空に、白い雲。
 
広がる草原と淡く咲く花たち。
 
 
どこか懐かしさを感じるような
優しい故郷を思わせるような…
そんな絵だった。
 
 
男)あなた達を見ていると
  そんな景色が浮かんだんですよw
♡)えっ…
臣)……
 
 
俺たちを見てると…?
 
 
男)先生、そろそろ…
男)あ、時間ですか?
♡)あ、すみません!お邪魔してしまって…
男)いえいえ、いいんですよw
  楽しかったです。
臣)どうもありがとうございました。
  こんな素敵な絵を見せていただいて…
♡)こんなに素敵な絵もいただいて…
男)いえいえw
  ええと…、君。
臣)はい!
男)これからも素敵な歌を届けて下さいね。
臣)はい!!ありがとうございます!!
男)では、これで。
臣)ありがとうございました。
♡)お邪魔しました!!
 
 
画廊を出て少し歩いて、
俺たちは顔を見合わせた。
 
 
♡)すごかったね! 臣)すごかったな!
 
 
ハモったしw
 
 
♡臣)あはははw
 
♡)本当にこの絵キレイだよね♡
臣)なっ!
  目の前で描いてくれたから
  鳥肌立ったわw
♡)私もーー!w
臣)つーか、あの人最初っから
  只者じゃない貫禄出してんのに
  お前グイグイいくんだもん!w
♡)えーー!
臣)お前はほんと人懐っこいなーw
♡)あのおじさん、
  有名なおじさんなのかな?
臣)じゃねぇの?
  あんだけ作品あんだし。
♡)あ!サインしてくれてるし
  ちょっと調べてみよ!
 
 
♡がスマホを取り出して
さっきのおじさんの名前を検索すると…
 
 
♡臣)えっっ!!!!
 
 
おじさんの名前は一番上に出てきて、
ずっと海外で活躍してる
有名な日本画家らしい。
 
 
♡)ハ、ハリウッドスターにも
  その人気は高い、だって…
臣)人気の作品だと時価数千万?!
♡)えええっ!!!
臣)今年3月に1ヶ月だけ帰国し
  個展を開催予定…
 
 
3月…、って、今だよな。
 
 
♡)……
臣)……
 
 
俺らはまた顔を見合わせた。
 
 
♡)お、臣くん大変だよ!!
臣)ど、どうする!!
♡)そんなすごいおじさんだったなんて!
臣)つーかおじさんて呼んじゃダメだろこれ!
♡)そっか!そうだよね!あわわわ!!
臣)すげぇな、マジで…
♡)臣くん、はいっ!!!
 
 
♡が慌てたように、俺に絵を渡してきた。
 
 
臣)え、え、え
♡)臣くん、ちゃんと大切にしてね!
臣)え、え、俺?!
♡)うん!!
臣)お前にくれたんじゃねぇの?
♡)違うよぉ!
  だって…私たちを見てって言ってたから
  きっと二人にくれたんだよ。
臣)そっか…
♡)臣くん誕生日だから、これは臣くんに!!
臣)どうすんだよ、こんなすげぇの…
  これこそ家宝にしなきゃじゃん…
 
 
俺は絵を大事にバッグにしまった。
 
 
臣)ほんとなんか…すげぇ出逢いだったな。
♡)ねっ!!
臣)なんかお前といると世界広がるわーー
♡)何それー!w
臣)いや、誰にでも話しかけっからw
♡)あははは♡
 
 
それから♡は
100均に寄りたいって言い出して、
そこでレジャーシートを買った。
 
 
臣)どうすんの?それ。
♡)ごろーんってするのー!♡
臣)どこでw
♡)だってこれから自然に還るんでしょ?
臣)ああ!そうだった!w
  どうしよっか。
♡)えっと…もう15時か…
  夜は新宿集合だもんね。
  じゃあ新宿御苑行くー??
臣)俺、行ったことない。
♡)え!ないの?
臣)うん。
♡)あんな近くに
  あんな大自然があるのに?!
臣)そんな大自然なの?
♡)うん!!
  アポで出てる時とか
  癒されたくなったら
  たまにちょっとあそこでサボるんだーー♡
 
 
それから俺たちはタクシーに乗って
新宿に向かった。
 
途中で中目黒を通って
事務所の前を通り過ぎて。
 
 
臣)なんか変なカンジーw
♡)え??
臣)休みの日に事務所の前通んの。
♡)あはは、そっか!w
臣)誰かいねーかな。
♡)ほんとにそんなにいるものなの?
臣)いる!
  一日歩いてたら絶対誰かとは
  遭遇すると思うw
♡)うそーー!
臣)あ!!ほら、いた!!
♡)え、どこ?!誰!?
  あっ!メンディーー!!
臣)何やってんだろw
♡)頭ですぐわかったーww
臣)あははは、目立つな~~w
♡)ほんとに普通に歩いてるんだね!
臣)な?
♡)うん!びっくりした!!
臣)あはははw
 
 
それから新宿に着いて
俺らはタクシーを降りた。
 

入場料を払って中に入ると
そこは本当に自然がいっぱいで。
 
 
♡)わーい!気持ちいい~~♡
臣)すげぇな~~
♡)平日だから
  おじいちゃんおばあちゃん
  ばっかりなんだよー。
臣)あ、そうなんだ。
 
 
じゃあバレねぇかな。
サングラス取っちゃえ。
 
 
臣)あ~~~マイナスイオン!!
 
 
思いきり伸びをすると
めちゃめちゃ気持ちイイ。
 
 
臣)イイ匂いすんなーー!
♡)ねっ!♪
臣)あ、あそこめっちゃ人だかり。
♡)ほんとだー!あれ、桜だっ!
臣)あ!ほんとだ!一本だけ咲いてんだ!!
♡)すごーいっ!
  咲いてるのあの子だけだね!
臣)だよなー。
 
 
周りを見ても他には咲いてない。
 
 
♡)だからみんな殺到してるんだ。
臣)すげぇ撮影大会になってるしw
♡)あははは♡
 
 
それから二人で少し歩いてると
肩に何かが落ちてきた。
 
 
ぽとっ
 
 
ん??
 
 
臣)おわぁぁぁっっ!!!!
♡)???
臣)ちょ、ちょ、無理!!!
♡)どうしたの??
臣)む、む、虫っ!!!!
 
 
一瞬肩を見たら、毛虫っぽいやつがいて
怖すぎてもう見れない!!!
 
 
♡)あ、毛虫さんー♡
臣)えっ…
 
 
ぎゅっと瞑っていた目を恐る恐る開けて、
視線を戻すと…
 
 
臣)うわぁぁぁっ!!!
♡)ん?♡
 
 
♡がニコニコしながら、毛虫を手に取ってる。
 
 
臣)ちょ、ちょ、無理ッ!!!
♡)え??
 
 
思わず♡から距離を取って、後ずさった。
 
 
つーか…
また落ちてくるんじゃっ!!
 
 
臣)…っ
 
 
上を見上げると、木の枝が生い茂ってて
俺は慌てて木の下から逃げた。
 
 
♡)臣くん…虫ダメなの??
臣)うわ、ちょ、それ持ってくんな!!
♡)えーー
  毛虫さんごめんね?
  木に帰ってねー♡
 
 
とか言って
毛虫を木の枝に戻してるし!!
 
ひぃぃぃ!!
 
 
俺がそれを遠くから見てると
♡がこっちを振り向いて、けらけら笑い出した。
 
 
♡)あはははっw
  臣くん虫ダメなんだーw
臣)……
♡)意外だな~~w
臣)つーか…
  お前なんで女子のくせに平気なの。
♡)え…なんでって…
  何が怖いのかよくわかんない。
臣)はぁ??
  気持ちわりぃだろっ!!
♡)えーー虫が?
臣)そう!!
♡)私別に平気だよーー
 
 
信じらんねぇ!!
めっちゃ怖がりそうな見た目してるくせに
ケロッとしてるし!!
 
 
臣)どんな虫でもいけんの?
♡)うん。別に普通に触れるよ。
臣)えええ!!!
♡)だって…動物と変わらないでしょ?
臣)変わるわっ!!!
♡)えーー!!
臣)まず見た目が無理!!!
♡)さっきの毛虫さんなんて可愛いのにーー
臣)可愛くねぇっ!!!
♡)ぶーーー
 
 
ぶーじゃねぇし!!
 
 
臣)お前…ほんとになんでもいけんの?
♡)うーん…たぶん。
臣)ゴキでも平気なんだな?
♡)やだーー!!!
  それはいやーー!!!
 
 
ほっ…
マトモな反応でちょっと安心した。
 
 
臣)だろー?
  気持ちわりぃし怖ぇだろ?
♡)うーん…気持ち悪いけど怖くはない。
臣)え!!
♡)私よく退治してたし。
臣)え!!ゴキ!??
♡)うん。
  友達から泣いて電話かかってきたりしたら
  よく退治しに行ってたよー!
臣)え、何その心から尊敬するボランティア!
♡)だって…友達泣いてて可哀想だったし…
臣)泣きたい気持ち死ぬほどわかるわ!
 
 
あんなんほんと無理!!
 
 
♡)うーん…まぁゴキさんは嫌だよねーー
臣)つーかあんな素早いもん退治できんの?
♡)私も素早いもーん♪
臣)嘘つけ!!w
  お前どんくせぇじゃん!!
♡)ひどーい!!
臣)俺はどんな虫も全部イヤ!無理!!
♡)ぷぷぷぷw
臣)オイ、…笑うな//
♡)だってなんか意外すぎて可愛いんだもんw
臣)はぁ…、お前一家に一台欲しいな。
♡)虫退治用??w
臣)そう。
♡)あははははw
 
 
とか話してると
目の前にめちゃくちゃ気持ち悪い虫が
地面を這ってた。
 
 
臣)うんわぁぁぁぁ!!!!
♡)あ、また虫さんだー。
臣)ちょ、ちょ、ちょ!!!
♡)よけて通ろうねー
臣)……
 
 
気持ち悪すぎて
俺が言葉を失ってると
♡にまた笑われて。
 
あ~~~カッコわりぃなーー
くそーーー
 
 
♡)自然に虫は絶対いるから
  仕方ないのですよーw
臣)だから俺、山とか好きじゃねぇもん。
♡)えっ!
臣)自然だけなら好きだけど。
♡)虫がいるから?
臣)そう。
♡)ぷぷぷぷw
臣)おい!笑うな!//
♡)だって…ww
  …あ、ほら!
  あそこなら虫も少ないよー!!
 
 
♡は木の少ない草っ原まで走って行って
さっき買ったレジャーシートを広げた。
 
 
♡)ばふーーっ♡
  あはははw
  気持ちいい~~♡♡
 
 
楽しそうに寝転がってるし…
ここなら…うん、虫はいなそうだな。
 
 
少し警戒しながらレジャーシートに座ると
♡が横からつんつんしてきた。
 
 
♡)これ買って良かったね♡
臣)え?
♡)ほんとは芝生の上にそのまま転がっても
  気持ちいいんだけど…
  臣くん虫ダメなら無理でしょ?
臣)…うーん…
♡)あはははw
  ね、ここの芝生ふっかふかだね!
  ほらっ!♪
 
 
ばふばふっ
 
 
♡がレジャーシートの上から
その感触を楽しんでる。
 
 
臣)うん。確かに。
 
 
俺も寝転がってみた。
 
 
臣)おお~~!!青空がキレイ!!
♡)うんっ!!
 
 
目の前の色が緑から青に変わった。
どこまでも広がる青い空。
 
 
臣)は~~~~
  なんか癒されんな~~~
♡)虫がいなければ?w
臣)もうその話すんなしw
♡)あはははw
臣)つーかじゃあ
  お前がダメなものって何?
  虫は平気なんだろ?
♡)私がダメなもの…?
  なんだろう…うーーん…
  あっ、痛いもの!!
臣)痛いもの??
♡)うん!!痛いことほんと苦手!!
  多分私人より痛みを感じる神経が
  100倍くらいあるんだと思う!
臣)んなわけあるか!!w
♡)それくらい痛いのダメなのー!!
臣)例えばー?
♡)えっと…
  会社でやる予防接種とかも本当にダメで…
臣)ああ、インフルエンザの?
♡)うん…
臣)あんなん一瞬じゃん。
♡)一瞬だけど痛いでしょ!!
臣)まぁ少しはな。
♡)それがダメで…
  いつも覚悟決めるのに
  10分以上かかっちゃって…
臣)何それ!!w
♡)いつも列から外される…。
臣)迷惑な奴!w
 
 
子供かよ!w
 
 
♡)もう怖すぎて怖すぎて
  この間なんて針が刺さる前に
  「痛い!!」って思わず言っちゃって
  「まだ刺してません。」って
  すごく冷たく言われた…
臣)あはははw
♡)だって針が身体に刺さるなんて
  信じられないもん!!
臣)どんだけビビリだよw
♡)あとね…
  昔、宿題を忘れて来ると
  げんこつする先生がいて…
臣)へぇ!
♡)忘れた人全員立たされて
  順番にげんこつされるんだけど
  それも怖すぎて泣いた。
臣)え!!泣いたの!!
♡)うん。先生ひいてた。
臣)あははははw
  で、げんこつされたの?
♡)ううん。私が大泣きしたから
  宿題3倍量で許してもらえた。
臣)わははははw
  小学生の時?
♡)うん。
臣)めっちゃウケるw
♡)それくらい痛いのダメなのー!
臣)そっか。
  でもその割にはお前、
  自分の危険顧みずに動くよなー?
♡)え?
臣)タバコに突っ込んでったりさ、
  ひったくりに体当たりしたり…
♡)そーゆー緊急事態は別なの!
  身体が先に動いちゃうんだもん。
臣)うん。だからすげぇなって。
♡)え?
臣)そんだけビビリなのに
  火事場の馬鹿力的なのが
  すごいってことでしょ?w
♡)そっか…そうなのかな…
臣)こっちは心配で仕方ないけど。
♡)…気をつけます。
臣)ん。
 
 
空を見上げながらそんな話をして。
 
 
ふと、♡が思い出したように起き上がった。
 
 
♡)そういえば貰ったんだったー♡
 
 
♡が嬉しそうに
さっき里山さんにもらったパンを出した。
 
 
臣)お、いいね!食お食お!
♡)働いたからまたお腹空いたー♡
臣)あはははw
♡)あ、でも何か飲み物
  買って来れば良かったね。
  喉渇いちゃう…
臣)あ、じゃあ俺買ってくっから
  お前待ってろ。
♡)え!
臣)すぐ戻ってくるわ。
♡)あ、ありがとう!!
臣)うん。
 
 
 
 
 
ー続ー

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