[343]特別な言葉

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蒼)あ、目が覚めました?
♡)…っ
蒼)まだ寝てて大丈夫ですよ。
  今日の仕事は全部やっといたんで。
  ゆっくり休んでください。
♡)……。
 
 
どうして蒼くんがいるの…?
 
……あ、そうだ。
 
二人でアポに出かけてて…
戻ってきたら、めまいがして…
 
 
蒼)寝てていいですって!
 
 
起き上がろうとしたら、
蒼くんに肩を押された。
 
 
♡)え…っ、もう夕方…?
蒼)はい。
♡)どうしよう…っ
蒼)だから仕事はやっときましたって。
  ♡さんは寝てて大丈夫です。
♡)…っ
蒼)たまには頼ってくださいよ。
  疲れてるんじゃないですか?
♡)……ううん、
  昨日…あまり寝てなくて…、
蒼)じゃあ尚更寝てくださいよw
♡)……。
 
 
蒼くんは優しく笑って
私に布団をかけてくれた。
 
 
♡)蒼くんが…運んでくれたの…?
蒼)はい。
♡)ごめんね…。
蒼)「ありがとう」の方が嬉しいです。
♡)……ありがとう。
蒼)どういたしましてw
♡)……。
蒼)どうしたんですか?じっと見て。
♡)今日は優しいなぁって思って…。
蒼)別に俺、意地悪じゃないですよw
♡)……だって…
  仕事の時は「僕」って言うけど…
  意地悪な時は「俺」って言うもん…。
蒼)え…?……ああ、無意識でしたw
 
 
蒼くんはクスッと笑って脚を組んだ。
 
 
蒼)安心してください。
  寝込み襲ったりしませんからw
♡)……当たり前でしょ…。
蒼)そうですか?
  悪い男なら何かすると思いますけど。
♡)……。
蒼)それだけ可愛いんだから
  もっと危機感持った方がいいですよ。
♡)……。
蒼)……なんてw
  警戒されたら逆効果だけどw
 
 
いっぱい寝たからかな…?
頭が少しクリアになってる。
 
 
蒼)……どうしたんですか?
♡)え…?
蒼)真剣な顔して。
  何か悩み事ですか?
♡)……。
蒼)俺で良ければ聞きますよ?
♡)……。
 
 
……ハルくんの顔が、頭に浮かぶ。
 
 
♡)愛してるって…
  誰かに言ったこと…ある…?
蒼)え…?
  ……うーん、ないです。
♡)……。
蒼)今までの彼女にも言ったことないなぁ。
♡)……。
蒼)「愛してる」って…
  簡単に言える人は言えるのかも
  しれないけど…
  俺は言っても「好き」くらいかなぁ。
♡)……。
 
 
「大事な人はたくさんいるけど…
 愛してるって言ったことはないよ。」
 
 
蒼)「愛してる」って「好き」よりも
  何倍も重い感じしません?w
  俺はそんな言葉を
  使いたくなるほどの相手とは
  付き合ったことないです、まだ。
♡)……。
 
 
「俺にとってもそれくらい…
 愛してるって…特別な言葉だよ?」
 
 
……ハルくんの言葉が蘇る。
 
 
蒼)♡さんともし付き合えたら
  そんな日も来るのかなー。
♡)……。
蒼)……って、聞いてます?w
♡)え、なぁに…?
蒼)ひどいなー、もうw
 
 
蒼くんは笑いながら
いきなり私の手を握ってきた。
 
 
♡)え、なに?やだ…っ
蒼)俺、♡さんが好きですよ。
♡)離して…っ
蒼)好きです。
♡)…っ
 
 
いつもみたいにからかってるような
意地悪な顔じゃない。
 
 
蒼)好きです。
♡)……私は彼氏が好き。
蒼)まぁそうでしょうねw
♡)大好き。
蒼)……。
♡)大好きなの。
蒼)……。
 
 
私は臣くんが大好き。
 
 
「♡が愛してるのは登坂さんだって
 ちゃんとわかってるよ。」
 
 
私は臣くんが一番大切。
 
 
「♡が一番大切なのも、登坂さん。
 ちゃんとわかってるから…。」
 
 
♡)…っ
 
 
ハルくんの泣きそうな顔を思い出すと
胸がすごく苦しくなる。
 
 
蒼)なんでそんな顔するんですか…?
♡)…っ
蒼)彼氏のことが好きだって言いながら…
  泣きそうな顔してる。
♡)……触らないで。
 
 
私の頬に触れかけた蒼くんの手を
押し返した。
 
 
蒼)じゃあ触りません。
♡)…きゃっ!
  やだ…っ、離して…!
蒼)触ってません。
♡)…っ
 
 
蒼くんは手を拳にして私を抱きしめてる。
 
 
蒼)今だけでも甘えてくださいよ…、俺に。
♡)やだ!
蒼)…っ
♡)離して!やだ!
蒼)……。
 
 
私は全力で蒼くんを振り払って
布団をかぶった。
 
 
私が抱きしめてほしいのは…
臣くんだけだもん。
 
臣くんだけなのに…
 
 
なのに、どうして…
 
どうしてあの時、
私はハルくんをあんなに
抱きしめたくなったのかな…。
 
……自分でもわからない。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
臣)はぁぁぁ…。
T)どうしたの登坂っち。
臣)あ、いえ…。
T)こんな顔してたよ。
 
 
TAKAHIROさんはそう言って
眉間にぎゅっと皺を寄せた。
 
 
臣)TAKAHIROさん…
  あんなに飲んで元気ですね。
T)え、急に何w
  いつものことじゃない。
臣)そうですよね。
  TAKAHIROさん…
  死ぬまで元気なんだろうな…。
T)なんの話!w
A)登坂は二日酔い?
  今日覇気ないじゃん。
臣)……逆に俺が覇気ある日とか
  そんなないですよw
T)そうだよ、万年クールだもんね。
A)そう?w
 
 
AKIRAさんはニコニコ笑って
俺の背中を叩いた。
 
今日はハイロー特番の収録を
予定通り撮り終えて
俺はこれからサッカー観戦。
 
 
A)いいなー俺もめっちゃ行きたい。
岩)AKIRAさんもサッカー男ですもんね。
T)サッカー男って何!w
岩)やってましたよね?
A)うん。
T)だからって狼男みたいに言わないでw
A)あはははw

S)臣ー、行くよー
臣)あーい。
  じゃあお先です。
A)行ってらっしゃい。
岩)あ、臣さん。
臣)ん?
 
 
部屋を出ようとした俺に
岩ちゃんがついてきた。
 
 
岩)♡ちゃん、大丈夫だった?
臣)……あんまり。
岩)マジか…。
  ◇がさ、帰りのタクシーでも
  ♡ちゃんぼーっとしてたって言ってたから
  気になって。
臣)……うん。
 
 
帰ったらどこを探してもいなくて
びっくりして…
 
ベランダで一人
寒空を見上げてる♡を見つけた時は
前にも同じことがあったのを思い出した。
 
 
臣)帰って話せそうだったら話してみる。
岩)そっか。お疲れ。
臣)うん。行ってきます。
 
 
俺はそのまま横浜競技場まで送ってもらって…
 
すげぇ楽しみにしてたサッカーの試合は
観ながらもどこか上の空だった。
 
♡のことが気になって、仕方なくて。
 
 
臣)……はぁ…。
 
 
ハルくんは♡のことが好き。
それは間違いなくて。
 
アキさんと付き合ってようが
付き合ってなかろうが、
好きなのは♡なんだ。
 
 
……もしかして…
♡を困らせないために
アキさんと付き合ってるフリを
してるんだろうか…。
 
それか本当にただの♡の勘違いか。
 
 
ハルくんはバラ男とかTとかとは
タイプが全然違って…
 
なんていうんだろう。
 
自分の気持ちよりも
♡のことを一番に考えてる気がする。
 
♡のことを優しく大きく、包み込むような…
そんな感じだった。
 
なんとなく、
俺の中のレイジさんと
イメージが重なるところもあって。
 
 
臣)……。
 
 
昨日は挨拶もなんも出来なかったけど…
きっといつか、対面する日は絶対やってくる。
 
 
男)登坂さん、こっちです。
臣)あ、はい。
 
 
試合が終わって、
ハリルホジッチ監督と写真を撮ってもらって…
 
俺はそのまま、家まで送ってもらった。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
K)ポカリ持ってきたよ。
  大丈夫か?
♡)ありがとう、Kちゃん。
 
 
結局退社時間までずっと
医務室で休ませてもらって、
帰りはKちゃんが送ってくれた。
 
一人で大丈夫って言ったんだけど…
私が熱を出しちゃったから。
 
 
K)風邪ではなさそうだね。
♡)うん…。
 
 
考え込みすぎて
脳が疲れちゃったのかもしれない。
 
 
K)冷えピタ替える?
♡)ううん、まだ大丈夫。
K)そっか。
  心配だから臣広帰ってくるまで
  一緒にいるよ。
♡)ありがとう…。
 
 
優しいなぁ…Kちゃん…。
一緒にいてくれると安心する。
 
 
♡)私…、倒れてばっかりだ…。
K)確かに!w
  今年何回目だ?
  最初は貧血でJさんが運んでくれてー
♡)はっ、そうだ。
 
 
あの時は臣くんが会社まで
迎えに来てくれたんだ。
 
 
K)その次は…
  あれか、撮影の時だ。
♡)あ…。
K)まぁあん時は臣広とゴタゴタしてたから
  しゃーないわな。
♡)……うん。
K)で、あとは運動会だ。
  どっちもTが運んでくれたんだ。
  今日は蒼だから…
  Tの優勝!
♡)なぁにそれ!
K)運んだ回数選手権ww
♡)もぉ〜〜〜w
 
 
ふざけて笑うKちゃんにつられて
私も笑った。
 
 
K)地味に身体弱いのかもしんないね。
♡)……やだなぁ…。
K)頑張りすぎなのもあると思うけど…
  倒れるくらいの時は
  ちゃんと休みなよ?
♡)うん…、ありがとう…。
 
 
私が白にゃんこを抱きしめると、
Kちゃんはピンクにゃんこを膝に乗せた。
 
 
K)昨日…話せた?ハルくんと。
♡)…っ
K)ちゃんと言えた…?
♡)…っ
 
 
そう言われて、目に涙が滲んでくる。
 
 
♡)あの…ね…、っ
K)うん。
 
 
私は言葉に詰まりながらも
昨日のことをKちゃんに話した。
 
 
朝はぼーっとして
記憶がめちゃめちゃだったけど
今ならちゃんと、思い出せる。
 
 
K)……そっか。
♡)うん…。
K)ハルくんはアキさんと付き合ってて
  好きなのはアキさんだけど、
  あんたのことも特別なんだね。
♡)え…?
K)あんたと同じじゃない?
  家族みたいに大切に
  想ってくれてるんでしょ?
  これから先もずっと愛してるって
  そういう意味じゃない?
♡)…っ
 
 
そう…なのかな?
 
 
K)♡パパとレイコママに憧れてて…
  それくらい♡のことも大切に想ってるから
  愛してるって言ってくれてたんでしょ?
♡)…っ
K)♡にしか言ったことないってのは
  そういう意味じゃない?
♡)……でも…
  どうしてアキさんには…
  言ったことないのかな…?
K)だってまだ、ただの恋人でしょ?
  いつか家族になるくらいの
  深い関係になったら
  その時はアキさんにも言うんじゃない?
♡)…っ、そっか…
  そういう意味なのかな!
K)うん。
 
 
私、難しく考えすぎてたのかな。
 
ハルくんに愛してるって言わないでなんて
言っちゃった罪悪感で、苦しくて。
 
 
……ハルくんが泣きそうな顔をしてたのは…
私にちゃんと伝わってないって
思ったからなのかな?
 
私はハルくんが好き。
家族と同じくらい大切。
 
ハルくんもそう思ってくれてるって
ことだよね?
 
 
♡)……ハルくんを…
  抱きしめたくなるのは…どうしてかな?
K)別に恋人以外の人間でも
  抱きしめたくなることはあるでしょ。
♡)ほんと…?
  私は臣くん以外にそんな風に思ったこと…
  ……あ、そういえば…
  Tくんにもあったかも。
K)え、T?!
♡)うん。その時は
  Kちゃんみたいな感じだったの。
  なんていうか…
  仲間、みたいな…、同志、みたいな…
  そんな感覚でぎゅってしたくなったの。
K)なるほど…。
♡)でも…ハルくんは違うの…。
K)どう違うの?
♡)なんていうか…
  切ない気持ちで…
  愛しい気持ちがいっぱいになって…
  それで抱きしめたいって思うの。
K)……。
♡)もう…自分がわかんなくて…、
K)それも家族愛なんじゃない?
♡)え…?
K)家族同士でもするでしょ、ハグ。
♡)う…ん…。
 
 
するけど…
なんだろう、何かが違う気がして…。
 
 
K)だってさ、前にも言ってたじゃん。
  ハルくんとキスしたいとか
  それ以上のことしたいとか
  そんなの思わないでしょ?
♡)えっ!思わないよ!
K)♡がそう思うのは臣広だけなんでしょ?
♡)もちろんそうだよ!
K)ほら。
  だからハルくんは家族愛だよ。
  ごちゃごちゃ難しく考えるんじゃない。
♡)そっか…、そうだよね。
K)ポールも言ってたじゃん。
♡)…っ
 
 
「きっとハルくんは…♡にとって…
 お父さんに近い存在なのかな?」
 
「愛にもいろんな愛があるからね。
 別に間違いじゃないし
 それでいいと思うよ。」
 
 
そうだ。
前に私が悩んでた時、
ポールがそう言ってくれたんだ。
 
 
♡)そうだよね…。
 
 
いくら考えたって…
私が好きなのは臣くんで
ハルくんにはアキさんがいるんだから。
 
 
K)りんご剥いてくるよ。待ってな。
♡)うん、ありがとう…。
 
 
Kちゃんは私の頭をポンポンと撫でて
部屋を出て行った。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
K)……帰ってきてたんかい。
臣)……はい。
K)聞こえて…た…?
臣)……うん。
K)そっか…。
臣)ごめん…。
K)いや、いいんだけど…
 
 
♡の部屋から出てきたKは
少し気まずそうにキッチンに向かった。
 
 
臣)♡、どうしたの?
K)熱ある。
臣)えっ!
K)でも風邪とかじゃないよ。
  多分脳みそがキャパオーバーなだけ。
臣)知恵熱的な…?
K)そうそう。
 
 
マジか…。
そんなにハルくんのこと考えてたのかな。
 
 
臣)あ、りんごなら俺やるよ。
K)いや、いいよ。
  仕事で疲れてるでしょ、座ってなよ。
臣)いや、今日は大して働いてないから…
K)働けよ!w
臣)働いてるよ毎日!w
K)ははははw
 
 
Kは笑いながらりんごの皮を剥き始めて…
俺はダイニングに腰をおろした。
 
 
K)あんな風にしか言えなくて…ごめん。
臣)え…?
K)♡が困んないように…傷つかないように…
  誤魔化すのに必死で。
  ちょっと苦しかったかも。
臣)……。
 
 
そっか、やっぱりKも
ほんとはわかってるんだ。
ハルくんが♡を好きなこと。
 
でも…
♡が苦しまないように
あんな風に言ってくれたんだ。
 
 
K)♡が臣広を好きなのは事実だからさ。
臣)うん。
 
 
それは俺もわかってる。
 
 
K)……よし、できた!
  持ってってあげて。
臣)え?
K)あたしは帰るよ。
臣)えっ…
K)臣広が帰ってくるまでって思ってたの。
臣)あ、そうだったんだ。
  ごめんな、ありがとう。
K)ううん。
 
 
それから俺はKにタクシーを呼んで見送って
Kが剥いてくれたりんごを
♡の部屋に持って行った。
 
 
臣)……あれ…、寝てる…。
 
 
冷えピタを貼ってる♡は
にゃんこを抱きしめながらスヤスヤ眠ってて…
 
 
♡)…ル……、く…ん…
臣)…っ
 
 
なんだ、今の既視感。
 
 
今のは…、、、
 
……そうだ、思い出した。
 
 
まだ付き合う前、♡の看病をしてた時、
今と同じように♡が寝言で呟いたんだ。
 
 
あの時はルイくんって誰だよって
一人で勝手にショック受けてたけど…
 
今ならわかる。
 
♡が呼んだのは、「ハルくん」。
 
今もあの時も…
ハルくんを呼んでたんだ…。
 
 
臣)…っ
 
 
寝言で呼ぶくらい、
♡の頭ん中はハルくんでいっぱいで…
 
昨日の今日ならまだわかるけど…
 
付き合う前のあんな時から。
あんな時から♡は…
 
 
臣)……。
 
 
なんか二人の絆の深さを
見せつけられた気がして…
 
 
臣)はぁぁ……。
 
 
俺は脱力しながら椅子に腰掛けて
りんごをサイドテーブルに置いた。
 
 
♡)ん……、
臣)あっ…
 
 
皿の音で起きちゃったかな?
 
 
♡)……お…み…くん…?
臣)……。
 
 
ゆっくり開いた瞳が
ぼんやりと俺を見つめてる。
 
 
臣)……ただいま…。
♡)おかえり…なさい。
臣)……りんご、食う?
♡)…Kちゃん…は?
臣)帰ったよ。りんご剥いてくれた。ほら。
♡)あ…、
臣)食えるか?
♡)うん、食べたい。
臣)ほら、捕まれ。
 
 
俺は♡を抱き起こして
ヘッドボードにもたれさせた。
 
 
臣)すりおろした方が良かったら
  やってくるけど…
♡)ううん、大丈夫だよ!
  病気じゃないから!
臣)そっか…。
♡)うん、ありがとう。
 
 
俺から見たら割と重症なんだけどな…。
 
 
♡)あ、その前に…、
臣)ん…?
♡)臣くんにちゃんと話したくて…
 
 
♡はそう言って
りんごの皿をサイドテーブルに戻した。
 
なんだろう。
 
昨日松浦さんが来る前に
言いかけてたことかな?
 
 
♡)あの…ね、
臣)うん…。
 
 
なんでかわかんないけど
心臓がバクバクする。
 
 
♡)ハルくんに…ちゃんと言ったから。
臣)……うん。
 
 
見てたよ。
なんでか7人揃って。
 
 
♡)あのね、私は臣くんが大好きで…
  臣くんが一番大事で…
臣)……
♡)臣くんに…今まで嫌な思い
  させてたのかなって思ったら…、っ
臣)え、ちょっ!泣くなよ!!
 
 
いきなり泣き出した♡に
俺は完全にパニックになって。
 
慌てて♡の涙を拭った。
 
 
♡)Kちゃんに言われて気付いたの…。
  もし…臣くんに幼馴染の女の子がいて…
  逆の立場だったらどう?って…
  …ぐす…っ
臣)……。
 
 
Kのやつ…
そんなことも言ってくれてたのか…。
 
 
♡)そしたら…私はきっと…
  ヤキモチ妬いて…
  モヤモヤしちゃうと思う…っ
臣)……。
 
 
やっと俺の気持ちわかってくれたのかな。
 
 
♡)今まで…ごめんね…っ
臣)泣かなくていいから…っ!
 
 
俺はお前の涙に弱いんだよ!
頼むから泣くなよ…っ
 
 
臣)別に嫌な思いとかしてないから!
♡)え…?
臣)ハルくんがお前にとって
  大事な家族みたいな存在だってのは
  わかってるって言ってるじゃん。
♡)…っ
臣)だから今は友達として
  英語教えてもらったり飯食ったり…
  そういうのは全然いいんだよ。
  ……ただ、愛してるとかキスとかは
  限度を超えてる気がするから
  それはやめてって話。
♡)……うん…っ
臣)なんか…俺が言いすぎたせいで…
  ごめんな?
 
 
あああああ〜〜〜
ほらぁ〜〜
 
俺は♡が泣いてたらなんでも許しちゃって…
カッコつけて強がっちゃうんだよ…。
ほんとアホだな俺。
 
 
臣)泣かせてごめん…。
♡)違うよ、ごめんじゃないよ!
 
 
いいんです、俺が悪いんです。
お前の泣き顔はほんとこたえるんだよ、俺…。
 
 
ピロリロリロ♪ピロリロリロ♪
 
 
臣)あ、電話…、お前じゃない?
♡)……あ、アキさんだ!
臣)えっ!!
 
 
アキさんって…
なんで?
連絡先交換したの!?
 
 
♡)もしもし!
  はい!はい!……あっ!
  ありがとうございます!すみません!
 
 
なに?
なんの話なわけ!?
 
 
♡)えっと…
  1月か2月です。はい。
 
 
何が?
ねぇ何が!?
 
 
♡)わぁ、ほんとですか?
  ありがとうございます!
 
 
♡はしばらく会話を続けた後、
少し黙って…
 
最後に、少しためらいがちに、口を開いた。
 
 
♡)あの……、
  アキさんは…、、
  ……アキさんはハルくんを
  愛してますか?
 
 
ぬおお!?
いきなりそんなことぶっこむ!??
 
俺は思わず♡を二度見した。
 
なんて答えるんだアキさん…!!
 
 
♡)……そっか…。
  ありがとうございます…。
  えへへ、変なこと聞いてごめんなさい。
  はい、ありがとうございます♡
 
 
え、なに?
なんて答えたのアキさん!!
 
 
♡)はい、じゃあまた!
  よろしくお願いします!
 
 
電話を切った♡は
俺を見てハッとして、説明してくれた。
 
 
♡)あのね、アキさんとハルくんの友達が
  ボリビアにいるんだって!
  で、ウユニ塩湖のホテルで働いてるから
  いろいろ案内してくれるって。
臣)へ…?ウユニ塩湖…?
 
 
………あああ!忘れてた!
 
なんかもうそれどころじゃなくて
すっかり頭から抜けてたよ、旅行のこと!
 
 
♡)アーサーさんっていって
  日本語もペラペラだから安心だよって♡
  良かったね!
臣)あー、ええとじゃあ…
  俺は何もしなくていい感じ?
♡)うん!全部手配してくれるって!
臣)マジか…!すげぇな…
  ありがとうございます…。
 
 
って、それよりも!!
 
 
臣)アキさん…なんて言ってたの?
♡)え?
臣)ハルくんのこと。
  愛してるって?
♡)うん!!
  愛してるって、誰よりも大切って
  言ってたよ!
 
 
♡は安心したようにニッコリ笑った。
 
 
臣)……。
 
 
うーん…
ハルくんに話合わせて
付き合ってるフリしてんのかな?
 
それともほんとに付き合ってて…
アキさんの方はハルくんを本当に
好きなパターン?
 
……つかめん。
 
 
♡)なんかスッキリした…。
臣)へ?
♡)えへへ♡
臣)…っ
 
 
キングオブ鈍子は
Kのフォローもあって
勘違いしたままだけど…
 
笑顔が戻ったならそれでいいやと
思ってしまう。
 
 
だって俺は…
やっぱり♡には笑っててほしいから。
 
泣いてると俺まで苦しいから。
 
 
臣)♡……、
♡)……わっ///
 
 
俺は♡を大切に大切に、抱きしめた。
 
 
臣)……大好きだよ。
♡)////
臣)ほんとに。
♡)……うん///
 
 
俺だって♡を愛してる。
この先ずっと。
 
それは心から誓えるから。
 
 
臣)……早く結婚したい。
♡)えっ…!
 
 
…って、何度思ってるだろ。
ほんとに結婚したいんだよ。
 
 
臣)♡、愛してるよ…。
♡)…っ
臣)今も、これから先も、ずっと。
  ずっと愛してる。
♡)////
 
 
こんなに大切な存在、他にはいないんだ。
 
 
臣)……なんで泣くの…w
♡)だ…って…っ
 
 
♡は口をへの字にして
俺にぎゅっとしがみついてきた。
 
 
♡)嬉しいんだもん…っ
臣)…っ
 
 
俺が♡をぎゅっと抱きしめると…
♡もまたぎゅーってしてきて…
 
 
♡)「愛してる」って…
  やっぱり特別だね…。
 
 
耳元で静かにそう言った。
 
 
♡)嬉しくて、あたたかくて…
  幸せな気持ちになる…。
臣)うん…。
♡)臣くん…。
  ……私も臣くんのこと、愛してる。
臣)…っ
♡)愛してるよ…。
 
 
少し声を震わせながら
♡がそう言ってくれて…
 
俺はもらい泣きしそうになった。
 
 
♡)ずっとずっと、一緒にいようね…。
臣)うん…、っ
 
 
そばにいて。
 
ずっとずっと、大事にするから。
 
 
……ああ、何度言っても足りないな。
 
だから何度だって言いたくなるんだろうか。
 
 
臣)♡、愛してる。
 
 
 
 
 
 
 
ーendー

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