岩)ただいまーーー
◇)おかえりーー!
剛典の声が聞こえて
玄関まで急いで迎えに行った。
◇)お疲れさま♡
岩)……。
◇)ん?どうしたの?
岩)なんかすげぇ可愛いなぁと思って。
◇)は?!
いきなり何?
岩)今の可愛くて癒された///
照れながら言ってるから
冗談ではなさそう。
◇)////
変な剛典。
おかえりなんていつも言ってるのに。
◇)今日もハイローの撮影だっけ?
岩)うん。
◇)疲れたー?
岩)今日は楽しかった。
バイクの撮影でさ、天気も良かったし
風がすっげぇ気持ち良くて。
◇)え〜〜!いいなぁ〜〜〜
あたしなんて毎日
オフィスに立てこもりだもん。
岩)立てこもりw
◇)たまには外の空気吸いたくなるんだよー
あ、お風呂あるからねー
岩)じゃあ入っちゃおうかな。
◇)行ってらっしゃい♡
剛典を見送って
あたしはまたパソコンの前に戻ってきた。
今週は三代目のBP京セラ公演。
水、木、土、日の4日間。
日曜日がファイナル。
♡ちゃんは撮影があるから行けないらしくて
あたしは多田さんと土日に観に行くんだけど
金曜日は有休を取って前乗りして
地元の友達と集まる予定。
だからその分の仕事を持ち帰ってきて
今せっせと打ち込んでいるところです!
岩)ん?仕事してんの?
◇)うん!
剛典がお風呂上がりのイイ匂いを漂わせて
後ろから覗いてきた。
◇)もう少しで終わるーー
岩)おう。頑張れ。
◇)んん〜〜
首を右に左にぐるりと回して
またパソコンとにらめっこ。
パソコン作業は肩凝るんだよねー
なんて思ってたら、
あったかい手のひらが、肩に乗った。
◇)え、え、なに?
岩)マッサージしてやるよ。
肩凝ってんだろ?
◇)いいよいいよ!剛典も疲れてんのに!
岩)いいって。たまには甘えなさい。
◇)……ありがと///
なんだよぅ。優しいじゃん。
◇)あ、気持ちぃ〜〜〜〜
やだ剛典、上手!
岩)はははw
◇)男の人って下手なのに。
なんでそんな上手なの?
岩)……元彼と比べてる?
◇)……元彼…たち?
岩)全員下手だったの?w
◇)うん。全っ然気持ち良くなかった。
でも剛典はすっごく上手。
すっごく気持ちイイ♡
岩)……。
◇)あ、ほら…♡
気持ちイイところすっごくわかってる♡
んーー、上手♡
岩)……。
◇)あ、そこ…、んんん…
岩)……。
◇)はぁ、気持ちぃ…♡
剛典の指、すっごく気持ちぃ♡
岩)……あのさぁ///
◇)あ、もっとして…♡
そこ気持ちイイの。もっとして…、あっ
岩)コラ…///
◇)え?
岩)さっきから聞く人が聞いたら
勘違いしそうな発言を連発するの、
ヤメナサイ///
◇)……。
何言ってんだ???
そう言われて、今の会話を振り返ってみたら…
◇)……///
一気に恥ずかしくなった。
◇)バカじゃないの!変態!///
岩)はぁ?!
◇)なんでもエロ変換すんな!///
岩)するわ!!
◇)バカ!エッチ!変態!
岩)バカですーエッチですー変態ですーー
◇)全部認めた…。
剛典はあたしの肩をバシッと叩いて
後ろからハグしてきた。
岩)ねぇ。
◇)ん…?
岩)今の全部、Hの時にもっかい言って///
◇)はぁ?!///
岩)……あ、やべ。
想像しただけで…、///
耳元で剛典の声が興奮してるのがわかって
くるっと振り返ったら…
◇)////
もう!このど変態!///
岩)早くベッド行こ///
◇)行かない!///
プイッと向き直って
またキーボードを叩いた。
岩)じゃあここで待ってよっと。
◇)変態が見てたら集中できないから
あっち行って。
岩)ひでぇなオイ!w
◇)ふん。
岩)てか珍しくない?家で仕事してんの。
◇)ああ、うん。
今週少し忙しいんだ。
金曜は有休だし、明日から三日間も
夜は予定入ってるし。
岩)え、なんの?
◇)明日はお母さんで
明後日は大学の友達の結婚祝いで
明々後日は会社の部署飲みーー
岩)それは忙しいなw
◇)だからちょっと持ち帰ってきちゃった。
岩)明日のお母さんって何?
東京出てきてんの?
◇)うん、たぶん。
火曜日空けといてー
としか言われてないから
遊びに来るのかなーなんて思ってたけど。
◇)そういえば詳細聞いてないや。
どっかお店予約してるのかな?
よし、これで終わりっと!
Enterキーをバシッと叩いて、データ保存。
◇)ふぁ〜〜、疲れた。
ちょっとお母さんに電話してみるねー。
岩)うん。
終わったらベッド行こうね。
◇)……頭の中、それしかないの///
岩)今はね。
だってまだこんなだし。
◇)……一旦鎮めてください///
岩)えーー。
変態剛典にくるっと背を向けて
お母さんの番号をタップした。
プルルルル…、プルル…
母『もしもし?』
◇『あ、お母さん?今大丈夫?』
母『大丈夫やでーー
お母さんも今電話しよう思っててん!』
◇『あ、ほんま?
明日どうするんー?
どっかお店予約してるん?』
母『してるしてる!
〇〇ホテルの23Fのフランス料理のお店!
時間は19時な。』
◇『え、ホテル?』
なんて話してたら
剛典が後ろからあたしの腰に腕を回してきた。
母『さっき連絡来てな、もしかしたら仕事で
10分くらい遅れるかもしれへんて。』
◇『ん?お母さんが?』
母『ちゃうちゃう。相手が。』
◇『相手?なんの話?』
母『せやから、明日の相手。』
◇『は?』
母『あんな、黙っとったけど
明日お母さんは行かんのよ。』
◇『は?』
母『あんた達、二人だけ。』
◇『は?』
あんた達って何?
二人って?
意味がわからんくてあたしさっきから
「は?」しか言うてへんけど。
母『今時、お見合いにそれぞれの両親も…
なんてお堅くて嫌やろー?
せやから二人で気軽にって
向こうも言うてくれはって。』
◇『はぁぁぁ!!???』
あたしのあまりの大声に
剛典の腕が離れていって…
慌てて振り返ったら
剛典もあたしと同じ顔して驚いてる。
お母さんの声大きいから聞こえてるよね。
◇『お見合いって何よ!!』
母『前にも言うたやん。
あんたのこと気に入ってくれてる人
何人かおんでー♡ って。』
◇『あたしお見合いなんてせぇへん
言うたやろ!!』
母『一回会うてみるだけ会うてみぃって
言うたやろ?』
◇『なんでそうなるん?
勝手に決めんといてよ!』
母『あんた結婚したい言うてたやん!』
◇『は?』
母『お母さんとお父さんが結婚した歳に
あたしも結婚したいー♡
って言うてたやろ!』
◇『…っ』
母『もうとっくに過ぎてんで!』
◇『いや…、それ子供の頃の話やん…。』
母『ええから一度会うてみ。
むっちゃええ人やから。
〇〇鋼鉄の息子さんやで。』
◇『ええ?!』
あんな大企業の…
嘘でしょ?!
母『明日やねんから今更断れへんで。
ドタキャンなんか失礼やからな。』
そんなんギリギリまで隠しとった
お母さんのせいやん!!
どうしてくれるん!!
母『もし気に入らんかったら
他にもまだおるからな♡』
◇『いや、せやから…』
母『とりあえず明日はちゃんと
オシャレして行くんやでー♡』
◇『いや、ちょっ…』
母『ほなな!』
◇『…っ』
もう何も言わせてもらえんまま
電話は切れてしもた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◇のお母さんは相変わらず元気な大声で
電話の会話は全部丸聞こえだった。
ああ、この勢い…
そうだ、桜に似てるんだ。
結婚式の時に一瞬挨拶した時は
◇に顔がそっくりで驚いたのに
中身は桜なのかな…。
◇)はぁぁぁぁぁ……。
電話をテーブルに置いた◇は
盛大にため息をついた。
◇)どないしよ……。
ほんまやで。
どないすんねん。
◇)もう…勘弁してよ……。
それは俺のセリフやで。
〇〇鋼鉄の息子って…
金持ちのボンボンじゃん!
…って、俺が言うのもアレだけど…。
向こうは◇を気に入ってるから
会いたがってんだろ?
花嫁候補に考えてるってことだろ?
勘弁してくれよ。
今の話の流れじゃ
ほんとドタキャンも出来なそうだし…
◇)んんんー。
あ、ぐったりした◇が
甘えるように俺に抱きついてきた。
岩)よしよし。
◇)明日…、ちゃんと断ってくるから。
岩)……。
心配だなぁ…。
二人で飯食うんだろ?
てかさ。
お母さんのあの感じじゃ
明日断ったとしても
また次のボンボン出してきそうじゃん?
岩)お母さんとお父さんって
何歳で結婚したの?
◇)……23歳。
岩)……。
早ぇな。
そりゃ確かに過ぎてるな。
東大で知り合ったって言ってたから
卒業してすぐ結婚したのかな?
◇)違うの。
同じ歳で結婚したいって言ってたのは
子供の頃の話で…
今は思ってないよ、そんなん。
岩)……うん。
でも結婚願望はあるし
子供は欲しいって前に言ってたもんな。
岩)……。
ツアーが終わってひと段落したら
一度話そうと思ってたけど…
……うん、今にしよう。
岩)ベッド行こ。
◇)へ??
岩)ベッド。
◇)え、ちょ、もうするの?!///
岩)へ?
ああ、ちげーよ!w
タカノリだってもう鎮まったわ!
岩)大事な話。
◇)えっ…
岩)来いよ。
◇)……うん。
◇の手を取って寝室のドアを閉めた。
ベッドの上に二人で並んで座って
俺はもう一度、◇の手を握った。
岩)……俺さ、一番になりたいの。
◇)え??
岩)LDHで、一番になりたいんだよ。
◇に話すのは初めてかも。
俺の夢というか目標というか、野望。
◇にっていうか、
実はまだ誰にも話したことはない。
◇)一番…って?
岩)稼ぎも知名度も、全部。
◇)…っ
そんなの無謀だと笑う人もきっといるだろう。
でも俺は本気。
男なら一番目指してなんぼでしょ。
岩)後ろで踊ってるダンサーが
ヴォーカルの前に出るなんて
ヴォーカルの前に出てTVに映るなんて
前代未聞だったのを
HIROさんは実現したんだよ。
◇)うん…。
岩)周りに驚かれたり
否定されたりしながらも
そのスタイルを確立した。
それがEXILE。
◇)うん。
岩)ダンサーはこうあるべき、とか
ダンサーだからこれは無理、とか
そんなのってないと思うんだよ俺。
◇)うん。
岩)だからさ、いちパフォーマーが
グループの看板であるヴォーカルや
長く活動してる先輩たちより
有名になるとか稼ぐとか
無謀だと思う人は思うと思うけど、
俺はそんなの嫌で。
◇)うん。
岩)やったもん勝ちって言うか
やらなきゃ始まらないって言うか…
まずは思い描かなきゃ、
夢なんて生まれないし叶いもしない。
◇)うん。
岩)だから最初から諦めたり
現状満足するんじゃなくて
俺はもっと上を目指したいんだ。
◇)うん。
俺が真面目に話してるから
◇も真剣に聞いてくれて、
相槌を打ってくれる。
◇)そっか、一番、か。
岩)そう。
表向きには「スーパースターになりたい」って
漠然とした発言しかしてないし
もっと個人での力を高めて
グループに還元したいとか
HIROさんの戦力になりたいとか
そう思ってるのは全部本当だけど、
最終的には
「一番になりたい」っていうのが
俺の野望。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
真剣な眼でゆっくりと話してくれる剛典。
剛典が日々がむしゃらに頑張ってるのは
知ってたけど…
行けるとこまで行きたい、とか
そんな風に漠然としか聞いたことなかったから
「稼ぎも知名度もLDHで一番になりたい」って
初めて具体的にハッキリ言われて
なんだかストンと胸に落ちてきた。
わかりやすい。
そうか、剛典は一番になりたいのか。
それを聞いたあたしは
なんだかわくわくメラメラしてきちゃった!
◇)カッコイイ!!
岩)へ?!
◇)剛典カッコイイ!!
いいじゃん!一番取ったろ!!
あたし応援するよ!!
岩)えっ…
◇)天下取ったろやないかーー!!
気合いを入れて拳を掲げたら
隣では剛典が肩を揺らして笑ってる。
◇)え?
岩)いや、お前ほんと最高だなって思って…w
何がおもろいねん。
◇)だってやるからにはやっぱ
一番目指してなんぼでしょ!
岩)…っ
◇)それに剛典はさ、
ただ口で言ってるだけじゃなくて
その高い目標に見合った
努力とかプラン設計、絶対してるでしょ?
岩)…っ
ほら、やっぱり。
ただの夢見る夢男くんでも
無謀なハッタリ男でもないんだよ。
剛典は夢実現に向けて
着実に一歩一歩を積み重ねてる。
◇)あたしも燃えてきた。
岩)ええ?!w
◇)応援するからねっ!!
剛典の手をガシッと握ると、
また笑ってる剛典。
◇)まずはさ、知名度で言うと…
やっぱりATSUSHIさんだよね。
誰でも知ってるでしょ?
岩)だねぇ…。
◇)よし!抜いたろ!
岩)ぶっw
◇)稼ぎで言うと…誰?臣さん?
岩)うちさぁ、年功序列なんだよ。
◇)はぁ?!給料が!?
岩)うん。
◇)古くさっ!今時古くさっ!
岩)…だよねぇ…w
剛典は困ったように苦笑いした。
◇)じゃあ若手がいくら稼いでも
上に持ってかれんのね?!
岩)うーん…、まぁ…
言い方ちょっとあれだけど
そんな感じ。
◇)くぅぅぅ……。
まぁでも仕方ないのか。
下が活動できるのは上が築いてきた
基盤があるからだもんね。
岩)よくわかってくれてますね、
うちのシステムw
◇)でもなぁ…
年功序列もほどほどにしてほしいけど…。
じゃあ一番稼いでるのは誰なのよ?
HIROさんね!?
岩)まぁそうだねw
いや、HIROさんを抜こうとは
俺も思ってないけど…社長だしw
◇)なんでや!抜いたろ!
岩)ぶっw
興奮してるあたしの止まらぬ勢いに
剛典はまた吹き出した。
◇)まぁHIROさんはラスボスとしてもさ、
とりあえず臣さん抜こうぜ!
岩)おっ
◇)三代目で一番稼いでるでしょ?
岩)よくご存知ですねw
◇)CMも一番出てるし稼ぎ頭、って。
多田さんが言ってたもんね!
岩)あの人さぁ、そっち系の欲がないんだよ。
俺が羨ましいくらい
映画やドラマのオファーも来てんのに
断りまくってるし…
◇)あら。
岩)CMは一番出てるから一番稼いでるけど…
◇)確かにあの人、仕事より休みが欲しそう。
そして♡ちゃんと
イチャイチャしたいんだよ。
岩)ははははw
◇)じゃあとりあえずは
三代目で一番稼ぐことだね!
そしてそこからEXILEの大御所たちを
抜きにかかろう!
岩)ぶははっww
剛典は「ほんとお前好きだわ〜」
とか言って笑ってる。
◇)CM増やすにはどうしたらいいのかなぁ…
あたし業界のことは詳しくないけど
まぁ普通に考えて
知名度・人気度・親しみやすさ、
こういうのが大事なんだろうな。
岩)やっぱ話が来るのは
TAKAHIROさんとか臣さんとか
ヴォーカルが多いからね。
◇)隆二さんには来ないの?
岩)だってほら、ヒゲあるし。
◇)ヒゲ関係あるの?!
岩)あるでしょ。
はっ!
だからATSUSHIさんより
TAKAHIROさんの方がCM出てるの?
……まぁ確かにヒゲあると
イメージ固まっちゃうしね。
汎用性は低くなるのかな。
岩)でも隆二さんもそっち系の欲は
あんまりないから。
◇)ヒゲ剃ってまでCM欲しいなんて
思わなそうだよね。
岩)うん。歌命だからね。
◇)そっかぁ。
それで言うと剛典のビジュアルなんて
バッチリOKじゃん?
岩)そもそもさ、俺らなんて、
前まではスポンサーとの会食にも
呼ばれることなんてあんまりなくて。
◇)うん。
岩)だから先輩たちのそーゆーのに
連れてってください!とか
必死に食らいついて顔売ってたのよ。
◇)みんな?
岩)……いや、俺だけかな…w
◇)いいね剛典!ガッツあるよ!
岩)ぶはっw
なるほど。
要は営業と一緒だよね。
機会が少ないなら
その機会をどう活かすかが重要ってことよね。
◇)よし。
営業の極意なら
明日、Jさんに聞いてみちゃおう!!
◇)あ、あとさ、
前から思ってたんだけど
剛典はどうしてインスタとかTwitter
やらないの?
岩)ああ、それね。
やった方が絶対いいのに!
岩)実はね、近日始める予定でして。
◇)おお!
岩)今のツアーが終わったら始めようって
前から決めてたんだ。
◇)そうなの?
岩)うん。
結構悩んだんだけどさ、
ほら、俺らってモバイルあるじゃん?
◇)うん。
岩)有料コンテンツで情報出してんのに
普通のSNSで同じように
情報発信しちゃったら
モバイルの価値が下がる気がして
見てくれてる人に申し訳ないなー、とか…
差別化できるイメージがわかなくてさ。
◇)なるほど…。
そこまで考えてたのね。
確かにそうだよね。
さすが剛典!
岩)でもそうは言ってられないっていうか
SNSを上手く使って
ビジネス拡大してく時代じゃん?今って。
◇)うん。
岩)だから区切りいいとこで
始めようかなって。
◇)そっか。
要は明確な差別化が出来ればいいわけよね。
ちょっとあたしも研究しようっと!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◇)よっし!一番取ったるでーー!!
◇が気合いを入れるようにまた拳を掲げて
俺は思わずまた吹き出した。
岩)そんなやる気になってくれてありがとw
気持ちは嬉しいけど、
わかってるかな?
これからもっともっと忙しくなったら
二人のこんな時間もどんどん減っちゃうこと。
岩)寂しくは…ないの?
◇)え?
岩)俺が仕事仕事ーーってなっちゃうの。
今までの彼女はみんなそうだった。
それで別れてばかりだった。
◇)寂しいってどういう?
岩)いや、だから…
時間あまり作れなかったり…
◇)剛典は十分作ってくれてると思うけど…
岩)…っ
◇)一緒に暮らす前もそうだし、今も。
ありがとうって思ってるよ?
岩)……。
◇)それにね、あたしも今仕事で
ちょっと色々やってみようかなぁって
思ってるところがあって…。
岩)そうなの?
◇)うん。
だからあたしはあたしで頑張るし
剛典に会えない時は
仕事に没頭したり友達と遊んだりさ、
寂しいとかはないから大丈夫だよ?
岩)……。
◇のこういうところが俺は好き。
恋愛はちゃんと大事にしてるんだけど
恋愛に依存しすぎてないところ。
友達もたくさんいて、
仕事も頑張ってて、
自分をちゃんと持ってる。
あまりに恋愛のプライオリティが高いと
それに応えてあげられないことが
ストレスになったり
彼女の存在を負担に感じちゃったりするけど…
こんなの、俺初めてかも。
◇がいてくれることが
いろんな意味でプラスになるって
ハッキリ自分でわかる。
◇)お互い頑張ろうぜ!!
岩)おうw
◇)剛典のこと、全力で応援するからねっ!!
岩)ありがとw
なんだろ。
なんか戦友みたいだなw
岩)……でさ、
◇)ん?
岩)本題に戻るんだけど…
◇)え?今の本題じゃないの?
岩)うーん、前置き…?
◇)え??
◇が大きな瞳をパチクリさせて俺を見た。
岩)最近売れてきたって言っても
やっぱり全然まだまだでさ、
もし俺が今結婚するとか言ったら
大ヒンシュクだと思うわけ。
まぁ俺自身、今じゃないだろとも思うし。
◇)うん。
岩)だけど、これから着実に成長していって
俺が本当に一番になれたらさ、
誰にも文句言わせないくらいの
ポジションまで辿り着けたら…
◇)うん…。
岩)……その時に、結婚したい。
◇)…っ
ちゃんと考えてんだよ、お前との未来。
岩)別に周りがどうこうって話じゃなくて
俺自身としてもそこが
人生の一旦の区切りというか。
◇)うん…。
岩)だから…それまで待たせちゃうけど…
その時が来たら…
俺と結婚してくれる?
◇)…っ、……うん。
◇はゆっくり頷いた後、
「プロポーズ?」って
少し戸惑ったように俺を見上げてきた。
岩)…っ
ほんとだ。
これ、プロポーズじゃん。
岩)いや、違う…、えっと…
プロポーズはちゃんといつかするもん。
そうじゃなくて…
今の気持ちを伝えておきたかったんだけど…
結果、プロポーズになっちゃった。
岩)プロポーズ予約!
◇)へ?予約?
岩)そ!
だってお前がお見合いするとか言うから…
◇)だってそれは…っ
岩)わかってるよ!
わかってるけど…
やっぱり不安になんじゃん。
相手はその気なわけだし…
お前だって
今すぐ結婚したいとは思ってなくたって
周りがどんどん結婚していって
子供とか生まれたりしたら
やっぱり私も…、ってなるかもしんないし。
岩)俺はちゃんとお前との未来を考えてるから
それまで余所見しないで
待ってろってこと!!
とか、勢いで偉そうに言ってみちゃったり。
◇)……ちゃんと…待ってる///
あれ…?
なにこの素直な感じ…。
◇)剛典も…余所見しちゃ
ダメだからね…?///
岩)////
そんな可愛い上目遣いで言うなし。
するわけないじゃん。
お前みたいな女、そうそういないもん。
◇)予約…してくれて、ありがと///
…嬉しかった。
岩)……///
なんか…
なんか…
すっげぇ可愛いんですけど…///
俺の手をキュッと握る、小さな手。
さっきまではなんかすげぇしっかりしてて
頼もしくて男らしくて
戦友みたいとか思ってたのに…
この小さな手を握ったら
やっぱり俺が守ってやんなきゃって思うし
甘えさせてやりたいなーとか思うし…
◇)お互い…忙しくなっても…
岩)ん…?
◇)その分、二人でいれる時は
いっぱいイチャイチャしようね?
岩)えっ…
◇)////
岩)////
ほら、いきなりこんな風に
女の子らしく可愛い顔を見せてきたりするから
俺は毎回、お手上げで。
岩)なんだかなぁ〜〜〜〜
いろんな顔で俺の心を掴んで離さない
困った女。
◇)なぁに?
好きで好きで仕方ないって言ってんだよ。
◇)……あっ…、
その唇をキスで塞いで、
握り合わせた手に力を込めたら
そのまま斜めに倒れていく、二人の身体。
◇)ん…、っ///
ゆっくり…ゆっくり…、
次第に、深く、甘く、絡み合う。
そんなキスを繰り返してるうちに
◇の瞳はとろんと溶け出していて。
◇)剛典…、///
同じようにとろんとした甘い声で、俺を呼ぶ。
岩)気持ちいい…?
◇)……(こくん)///
素直じゃん…
すげぇ可愛い。
岩)……俺も。
そう言って、また唇を重ね合わせた。
キスに溺れていく。
気持ち良くて、気持ち良くて。
そのまま◇の身体を味わうように
ゆるやかに動き出す俺の手と指。
岩)なぁ…。
◇)……はぁ///
キスのさなか、
俺の呼びかけに
色っぽい瞳がうるうると俺を見た。
岩)さっきの、言ってよ…。
◇)…ん、っ…、…あ///
岩)ほら…。
◇)…っ、んん///
この甘い声に、欲情が高まって仕方ない。
◇)さっきの…って…?///
岩)忘れたの?
◇)あっ…、や…ぁっ///
ああ、可愛い。たまんない。
岩)元彼はみんな下手で
全然気持ち良くなかったんでしょ?w
◇)…っ
やっとさっきの話を思い出したような顔。
岩)でも俺は…?
◇)////
あ、ちょっと悔しそうに唇を噛んでる。
かわい…w
岩)ねぇ、俺は…?
◇)あ、あっ…
岩)言ってよ。
◇)……んん、っ///
岩)「剛典はすっごく上手。
すっごく気持ちイイ♡」
……でしょ?
◇)////
あ、怒ってる怒ってる。
かわいーー……w
「気持ちイイところすっごくわかってる♡
んーー、上手♡」
言ってくんないかなぁ…あれ。
岩)ほら…、ここ…、
◇)んんん…っ///
ああああ〜〜
……めっちゃ気持ち良さそう。
この顔見てるだけで、俺ヤバイ///
岩)ね、言ってよ。
◇)……はぁ、…はぁ…///
「はぁ、気持ちぃ…♡
剛典の指、すっごく気持ちぃ♡」
あんな可愛く言ってくれたじゃん。
岩)俺の指が…?
◇)…っ///
岩)ねぇ、どうなの?
◇)////
……あ。
顔真っ赤にしてプイってしちゃった。
岩)言わないならしてやんないよ?
◇)…っ
ピタッと動きを止めると
◇が少し涙目で俺を見た。
ああああああ〜〜〜
可愛すぎる///
もっといじめたいのに、俺もほんとヤバイ。
「あ、もっとして…♡
そこ気持ちイイの。もっとして…、あっ」
マッサージしてやった時みたいに
素直に言ってくれたらいいのに。
◇)……やめ…ないで…///
岩)ん?どこ?…ここ?
◇)……(ふるふる)///
岩)教えてくんなきゃわかんないなぁ…w
◇)////
わざと意地悪すると
もどかしそうに身をよじる◇。
岩)ほら、言えって…。
◇)……いじわる…///
岩)そうだよ?
お前がこんな可愛いからじゃん。
……ほら、ここだろ…?
◇)…っ、あっ!……っ///
もう知り尽くしてんだよ、お前の身体。
◇)んんっ、や…ぁっ!剛典…っ///
◇が手を伸ばしてきたから
ぎゅっと抱きしめてやると…
◇)……気持ち…いい…///
そんな甘い声が、耳元で溶けた。
岩)////
今言うとか、ずるくね?
◇)……もっと…、して…?///
岩)////
耳をくすぐる甘い囁きに
ゾクゾクと興奮が湧き上がる。
◇)あたし、…もう…ダメ……
剛…典…、…おね…がい…///
そう、欲しがって。
もっと、もっと、俺のこと。
◇)あっ…、あっ…、あ…ぁっ!///
可愛いこの身体、全身で、欲しがってよ。
◇)剛典…っ!///
俺も、俺の身体全部で…
俺じゃなきゃダメなくらいまで、
とことんお前のこと、愛してやるから。
ーendー
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