(40)いい加減気付けよ

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雨の音が聞こえる…。
 
 
こんな日はいつも夢を見る。
 
 
部屋は真っ暗で…
何も見えなくて…
 
 
ママ!どこ?
パパ!どこ?
 
 
いくら呼んでも声が届かない。
 
 
必死に前に進もうとしても…
何かに足を取られて…
 
 
いや!!
 
いや!!!
 
行かないで…っ
 
 
私は気付いたら泣き叫んでいる。
 
 
行かないでっ!!!
 
パパぁぁぁぁ!!!!!
 
 
 
……
 
 
 

 
 
 
 
パ)どうした?
♡)え??パパ??
 
 
あたりがいきなり明るくなった。
 
 
パ)そんなに泣いて
  怖い夢でも見たか?
 
 
パパが…私の背中を
優しくトントン叩いてくれてる。
 
 
♡)わぁ…パパだ……
  パパぁ!!パパぁ!!
パ)こ~らこら、急にどうしたw
  本当にお前は甘えん坊だなー?w
♡)だって…パパ♡パパ♡
  抱っこしてぇ!ぎゅってしてぇ!!
パ)ほーら、おいで?
♡)わーいっ♡♡
 
 
安心する温度。
 
 
守られてるって…愛されてるって…
そう感じられるパパの膝の上が
私は大好きだった。
 
 
マ)ま~た♡はパパに甘えてw
♡)えへへー♡
パ)もう泣き止んだか?
♡)うんっ!!
パ)♡は笑ってるのが一番だよ。
  パパはね、♡の笑顔が大好きなんだ。
♡)ほんとぉ?
パ)うん。パパまで嬉しい気持ちに
  なれるんだよ。
♡)じゃあ♡、いっつも笑ってる~♡
パ)あはははw
 
 
パパが笑ってくれると、私も嬉しいの。
 
 
パ)いいかい?♡。
  覚えておきなさい。
♡)なぁに…?
パ)これからの人生で…
  ♡はたくさんの人と出会っていく。
  その中で…愛を知らない人や
  心が荒んでいる人に出会う事だってある。
♡)すさ…んで?
パ)うーん…そうだな…
  心が痛いって悲しんでる人のことかな。
♡)心が泣いてるの?
パ)そう。
♡)かわいそう!
パ)うん、そうだな…。
♡)そしたら♡がトントンってしてあげるよ!
  パパがしてくれるみたいに!
パ)あはははw
  ほんとにお前は優しい子だな。
 
 
パパがニッコリ微笑んだ。
 
 
パ)でもな?
  そんな優しさや想いが
  伝わらない相手も、きっといるんだ。
♡)……
パ)悲しい思いや辛い思いを
  させられることが絶対にある。
♡)うん…。
パ)そんな時でも…
  笑っていられるくらい…
  強くなりなさい。
♡)笑って…?
パ)憎しみや怒りや恨みや…
  そういう負の感情は、何も生み出さない。
♡)にく…しみ?
パ)うん。誰かのことを嫌だなと思ったり
  人が嫌がることをしようとしたり。
♡)♡、そんなことしないよぉ?
パ)うん、そうだな。
  だから…いつでも笑って…
マ)ちょっと~~!!
  あんまり腑抜けた子になったら
  困るんだからね!!
パ)え?
マ)学校でもしイジメられたりした時に
  ヘラヘラ笑ってちゃ困るっつってんの!
パ)えっ…
マ)いいか♡!!
  やられたら倍にして返せ!!
  泣き寝入りとかすんなよ!!
パ)おいおいw
  レイコはほんとに血の気が多いなw
マ)だって!!
  この子、ほんと優しい子だから心配で…
パ)大丈夫。
  優しい人間は強い。
  そして…強い人間は優しい。
  この子は…きっとそんな子に育つよ。
マ)…そうね。
♡)パパ……
 
 
パパの顔をじっと見上げた。
 
 
パ)笑顔はね、周りの人を
  幸せにする力を持ってるんだ。
  自分を幸せにしてくれる力も。
♡)……
パ)愛を知らない人に
  愛を伝えてあげることだって出来る。
♡)……
パ)心が荒んでいる人を
  笑顔にだって出来るかもしれない。
♡)……
パ)だから…いつでも笑っていられるような
  そんな女の子になりなさい。
♡)うん♡
パ)泣きたい時はもちろん泣いていい。
  でも…最後には笑っていられるように…
♡)パパは…
  ♡が笑ってると嬉しいんでしょ?
パ)そうだよ。
マ)ママも嬉しいよ。
♡)わぁ!ほんとぉ?♡
マ)ほんと♡
  ♡が笑ってると…
  ♡のことを大好きな人たちは
  みんな嬉しいよ♡
♡)わぁぁ♡
  じゃあ♡、いつも笑ってたい♡
マ)うん。
 
 
いつもいつも、笑顔でいるよ…?
 
 
♡)♡ね、パパもママもだぁいすき♡
パ)……///
マ)あなたはなーに照れてんのよ!w
パ)いや、ほんとに可愛いなって///
マ)パパとママも、♡がだぁいすき♡
♡)えへへぇ♡
 
 
大好きって…あったかい。
 
 
パ)♡と瞬は…
  パパとママの宝物だよ。
♡)パパぁ!
パ)んー?
♡)抱っこぉ!♡♡
パ)はいはいw
 
 
パパもママも…大好き。
 
 
私は…離れたくなくて…
パパにぎゅって抱きついた。
 
 
パパは…そんな私を
優しく抱きしめてくれて…
 
 
♡)ねぇパパ。
  ずっとずっと側にいてね?
パ)うん。
♡)絶対いなくなったりしないでね?
パ)うん。
♡)絶対だよ?
パ)うん。
 
 
パパはいつも「うん」としか
答えてくれない。
 
 
それでも私は必死にお願いする。
 
 
♡)隣にいてね?
パ)うん。
♡)消えたりしないでね?
パ)うん。
♡)パパ…
パ)うん。
 
 
これは…夢が覚める合図。
 
 
覚めたくないのに…
 
まだ…
パパの笑顔を見ていたいのに…
 
 
 
………
 
 
 
……
 
 
 

 
 
 
目を開けると…
目の前には、臣くんの顔があった。
 
 
♡)……
 
 
………え?
 
 
♡)……
 
 
え…??
 
 
私…まだ夢を見てるのかな…?
 
 
ぼんやりした頭で
もう一度、目を閉じてみる。
 
 
そしてもう一度目を開けると、
やっぱり臣くんが目の前にいる。
 
 
♡)…っ
 
 
え???
 
 
意味がわからなくて
そのままじっと見つめてると…
 
 
臣)おは…よ…
 
 
臣くんの目がゆっくり開いて…
 
 
♡)きゃあっっ///
 
 
私は慌てて飛び起きた。
 
 
♡)え??
  え??????
 
 
寝起きのぼんやりした頭で
必死に考える。
 
 
周りを見渡して、必死に思い出す。
 
 
♡)!!!
 
 
あ!!そうだ!!
 
私、臣くんの家にお泊まりしたんだ!!
 
 
臣)何…あたふたしてんの…
♡)え…っ、だ、だって…
  私…こっちで寝てたのになんで…
臣)さっきまでここで
  スヤスヤ寝てたくせに
  今更慌ててんな。
♡)え…、ここって…
  ここ(臣くんの腕の中)?
臣)そ。
♡)えーーー!!///
 
 
し、信じられない!!!
なんで?!!////
 
ほんとに!??
 
 
♡)////
 
 
私が一人でパニックになってると、
 
臣くんが眠たそうに目を擦りながら
起き上がった。
 
 
♡)な……なんで…っ
 
 
なんで私は臣くんの腕の中にいたの…?
 
 
臣)寝相が良い誰かさんが
  コロコロ転がってきたから。
♡)え…っ!!
 
 
コロコロ…?!!
 
 
♡)どうしよう…っ
臣)何が。
♡)だって…
  どうしよう…どうしよう…
  あわわ…っ
 
 
臣くんの安眠を妨害しちゃった…!
 
 
臣)別に何もしてねぇっつーの。
♡)え…?
臣)手は出してませんって言ったの!
♡)…っ
 
 
なんか…ちょっと怒ってる…??
 
 
♡)えっと…違うよ?
  そんな心配してるんじゃなくて…
臣)はぁぁ?!!
♡)えっ…
臣)ふざけんな。
  ちょっとは心配しろっつーの!!
♡)え???
 
 
どういうこと…?
 
 
臣)お前…俺のことナメてんの?
♡)だって…臣くん…
  何もしないって言ったし…
臣)あのなぁ!
♡)はいっ!
臣)「何もしない」っつーのは
  「何もしたくない」んじゃなくて
  したいけど我慢するっつー意味なんだよ!
  わかってる?
♡)えっ…
 
 
えっと…
 
 
♡)え??////
 
 
ど、どういう意味?!!
 
 
♡)したい…って…
 
 
何を…
 
え?え?////
 
 
♡)なん…で…
臣)はぁ??
♡)…っ
臣)なんでって…
  いい加減気付けよっ!
♡)きゃっ///
 
 
臣くんは私を思いきり抱き寄せて
そのままベッドに寝転んだ。
 
 
♡)…っ///
 
 
わ…わ…っ
臣くんに…ぎゅってされてる////
 
 
バクバクバク…ッ
 
 
ど、ど、どうしよう…!!
 
心臓止まっちゃう!!/////
 
 

え…
 
でも…
 
私この状態で昨日寝てたってこと???
 
ほんとに!!?
 
 
♡)////
 
 
信じられない///
 
恥ずかしいよぉ!!
もう私のばかぁーっ!!////
 
 
♡)…臣…くん…
臣)うるせぇ…。黙ってろ…。
♡)……///
 
 
なんだろう…これ…。
 
 
言葉は乱暴なのに…
私に触れる手はすごく優しくて…
 
 
ドクン…
 
ドクン…
 
 
臣くんにぎゅってされてて
心臓は壊れそうなくらいうるさくて、
わけがわかんない…///
 
 
臣)お前……
♡)…え?
臣)俺とおんなじ匂いする…
 
 
臣くんは掠れた声でそう言うと
おでこをコツンとぶつけてきた。
 
 
♡)え…え…え…っ///
 
 
か、顔が近い///
 
 
臣)髪…、
 
 
臣くんの声が…すごく近くで響く…///
 
 
♡)シャンプー…///
  …借りたからかな?
臣)うん…。
♡)////
 
 
しばらく私が硬直してると…
臣くんが少しだけ動いて。
 
右手を私の背中に…
左手を私の頭の後ろに添えて
またぎゅっと抱きしめた。
 
 
すごく大事なものを抱きしめるみたいに…
優しく…ぎゅって…。
 
 
 
♡)……
 
 
 
……いい加減気付けって
言われた…。
 
 
 
言葉なんかなくてもわかる。
 
 
優しく抱きしめられてるこの腕から
伝わって…くる…。
 
 
 
……臣くん、私のことが好きなんだ。
 
 
 
とくん…
 
 
とくん…
 
 
 
♡)……
 
 
 
今まで…
 
もしかしてそうなのかなって思っても
違うかもしれないって…そんな風に思って
その繰り返しだったけど…
 
今度はちゃんとわかる。
 
 
 
好きだって伝わる
この腕の中のぬくもりに…
 
どこか懐かしい感覚を覚えた。
 
 
居心地が良くて…
甘えたくなっちゃう…
こんなあたたかさ…。
 
 
 
♡)……
 
 
 
私が目を閉じると
しばらくして
私を抱きしめる臣くんの力が
少し緩んで…
 
 
そっと離れて臣くんの顔を見上げると…
臣くんは静かに眠ってた。
 
 
♡)……
 
 
やっぱり…
私が寝相悪かったから
臣くん昨日眠れなかったのかな…?
 
 
離れてたのに…
こんな転がってきちゃうなんて…
 
私のばかっ!///
 
 
……臣くん、ごめんね…?
 
 
♡)…っ
 
 
あ、そうだ!
朝ご飯…何か作ろうかな!
 
起きたら…臣くん食べてくれるかな?
 
 
♡)……
 
 
臣くんを起こさないように…
そっと起き上がろうとすると
 
 
臣)ん……、
 
 
臣くんが動いた。
 
 
起こしちゃったかな!?
ごめんなさいっっ!!
 
 
臣)…どこ…行くの…
♡)あ…ごめんね??
  起きようかな…って…
臣)ここにいろ…
♡)え?
 
 
ぐいっ
 
 
♡)わっ!///
 
 
臣くんに腕を掴まれて…
 
 
…ぽすん。
 
 
♡)////
 
 
臣くんの腕の中に
また戻って来ちゃった。
 
わわわ…///
 
 
……ドキン…ドキン…
 
 
♡)……
 
 
ここにいろ…って…////
 
 
ドキドキしすぎて
死んじゃいそう……///
 
 
頭ごと抱きかかえられて…
臣くんの首元に顔がうずまる。
 
 
触れてる肌から
体温が伝わってきて…
 
 
♡)////
 
 
もうほんとに死んじゃう!!
助けて!!
 
 
ドキドキして心臓止まっちゃうよ!///
 
 
♡)…っ
 
 
臣くん…寝ぼけてるのかな?
 
 
なんか…イイ匂いがする…///
臣くんの…匂い…。
 
 
また動いたら起こしちゃいそうだから…
しばらく大人しくしてよう。
 
 
♡)……
 
 
 
トクン…
 
トクン…
 
 
 
臣くんは…
 
いつから私のことが好きなんだろう…
いつから…想ってくれてるんだろう…
 
 
臣くんの胸の音を聞きながら
そんなことを考える。
 
 
私の…どこを好きになってくれたんだろう…
全然わかんないや…。
 
 
私なんて…
不器用だし…おっちょこちょいだし…
臣くんにもいつも心配かけてばっかりで…
 
 
臣くんの周りにはきっと…
もっと大人な女性とか
キレイな人とかいっぱいいるはずなのに…
 
 
 
ピピピピピッ、ピピピピピッ
 
 
♡)きゃっ!
 
 
急に鳴った、アラームの音。
 
 
ピピピピピッ、ピピピピピッ
 
 
♡)わっ、わっ、止めなきゃ…!汗
 
 
臣くんの携帯かな??
どこにあるの!?
 

 

 
ー続ー

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