(15)JさんStory ②

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そんな彼女は
可愛いだけじゃなくて

次から次へと魅力が見つかる
不思議な女の子だった。

 

うちの会社には
鬼猿コンビと呼ばれてる
いわゆるお局的ポジションの女性が二人いる。

二人とも丁度、俺の後ろの席だ。

 

俺は世渡りが上手い方だから
どっちとも仲良くやってるけど
みんなは極力避けている。

 

一人は経理の鬼山さん。

めちゃめちゃ仕事が出来る人なんだけど
とにかく怖い。
ほとんど笑わないし
仕事に厳しくてミスを許さない人だ。

 

♡ちゃんは新人の頃からいつも
自分の部署の書類を
鬼山さんのところへ持ってくる係みたいに
なってる。

人の書類の分まで♡ちゃんが怒られたりして
必死に謝っているのを
俺はいつも後ろで聞いていて。

 

ある朝、俺は聞いてみた。

 

J)いつも♡ちゃんが
  みんなの分、持ってくるよね~
  どうして?w
♡)えっと…

 

「みんながこっちに来るのを嫌がるから」
とは言えなさそうに、気まずそうな彼女。

 

J)怖いでしょ?
  経理の鬼山さんw
♡)はい、怖いです。
J)あははw
♡)でも…尊敬してるんです。
J)…そうなの?
♡)はい。
J)へぇ…

 

そうなんだ。

 

♡)苦手な人だからって
  避けるのは簡単だけど…
  それじゃあ自分が成長しないと思うから。
J)随分前向きだねーw
♡)それに…
  いつも怖い人がたまに笑ってくれると
  嬉しさ倍増じゃないですか?♡

 

そう言って彼女はまた、可愛い笑顔を見せた。

 

J)……

 

この子は何でもプラスに捉えるんだな。

 

そして半年くらい経つと、
二人はいつの間にか仲良くなっていて…

 

♡)加奈子さん♡
  これお土産ですー♡
鬼)え?また買ってきてくれたのー?
♡)はい♪
  またみんなで旅行行ってきたんです♡
鬼)あははw
  ありがとう♡

 

え!!!
加奈子さんて?!!
鬼山さんの下の名前??

知らなかった…。

 

てゆーか鬼山さんがあんな笑ってるところ
初めて見たんですけど…

 

♡)あ!写真変わってる♡
鬼)そうなの。
  この間運動会があったから、
  その時の写真。
♡)ゆうたくんでしたっけ?
  甥っ子さん♡
鬼)そうそう。
♡)わぁ!かけっこ1位だったんですね♪
  笑顔が可愛い♡
鬼)久々に応援に熱入っちゃったわw
♡)あははは♡

 

えーと…
いつの間にそんな仲良くなったんだ??

鬼山さん…甥っ子なんていたんだ…。

 

俺が驚いてると
♡ちゃんはそのまま自分の部署に戻っていって

うちの営業の女の子が
鬼山さんのところへ行った。

 

女)あのーー
鬼)何ですか?
女)これ…なんとか処理してもらえませんか?
鬼)これ…先月の領収書でしょ?
女)はい。
鬼)無理です。
  聞かなくてもわかるでしょう。
女)でも…出し忘れててぇ…
  すごく金額高いし…
鬼)金額も理由も関係ありません。
  期日を過ぎてるものは一切不可です。
女)ひどぉい…ぐすん。
鬼)泣いても無理なものは無理です。

女)あんな言い方なくなーい?
女)ほんと…ひどいよね~~
女)あの人ほんと融通きかないっていうかぁ~
女)頭かたいよね~
女)ほんとほんと!

 

あ~あ…
まーたうちの子達は文句言ってるよ…
聞こえてるって。

 

女)あんなんだから
  いつまでたっても独身なんじゃない?
女)いえてる~ww

 

バンッッ!!!

 

T)おい!!!

 

Tくんがいきなり机を叩いて
立ち上がった。

 

T)さっきからガタガタうるせぇんだよ!!
女)な、なによぉ!!
T)お前らほんっとに性格悪ぃな!!
女)はぁ?!
女)なんなのよ…ひどーい!
T)お前らみたいな女とは
  絶対結婚したくねぇ!!!
女)ちょっとぉ!!
女)そこまで言うことないでしょー!!
T)とっとと仕事しろっつーの!!
女)わかったわよ…
女)もう行こ…
女)うん…。

 

あはははw
ほんとにTくんはストレートだなww

裏表ないっていうか…

思ったこと真っ直ぐ言うんだよな~
清々しいよね。

 

夕方、俺がコーヒーを買いに行くと
鬼山さんの姿が見えて…

給湯室の手前で立ち止まってる。

どうしたんだろ…

 

女)ほんとあの女、鬼だよ鬼!
女)大っきらいなんだけど~~
女)早く会社からいなくなればいいのに。
女)寿退社で?w
女)あははw それは無理か~~w
女)でもほんと怖すぎだよね~
女)あの人が睨んだら動物とか死にそう。
女)あはははw

 

あーー
女子たちがまーた悪口言ってる。

 

女)あっ…
女)…っ

 

女子たちは
外にいた鬼山さんに気が付くと、
バツが悪そうに走って戻って行った。

 

J)お疲れさまです。
鬼)ああJくん、お疲れさま。
J)うちの子達、
  本当に性格悪くてすみません。
鬼)ふふっw
  いいのよ。自分が周りから
  どう見られてるかなんて
  わかってるから。
J)……
鬼)この目付きだから…
  怖がられるのなんて、昔からだしね。

 

そんな話をしてると、
外からまた声がした。

 

T)俺もお茶飲みたい!!
♡)いいよー
T)カップ貸してくれんの?
♡)うん、2個あるし。
T)あ、お疲れさまです。
♡)お疲れさまでーす♡

 

俺たちに気付いて、笑顔で挨拶する二人。

 

♡)加奈子さん♡
  来週またランチ行きましょー♡
鬼)あら、いいわよw
T)何それ!俺も行きたい!!
♡)あはは、一緒に行く?w
T)加奈子さん、いいっすか??
鬼)私はいいわよw
T)やったー!
J)え…、Tくんも加奈子さんって
  呼んでたっけ?w
T)あ…なんか最近。
  ♡のがうつりましたw
J)え?
T)いっつも加奈子さん加奈子さんって
  言ってるからw
♡)えへへ♡
  じゃあ来週楽しみにしてますねー!
T)俺も!!
  お疲れさまです!!

 

二人はお湯を入れると
ニコニコ笑って風のように去っていった。

 

J)元気だなーw
鬼)ふふふっw

 

あ、また笑った。

 

鬼)あの子達、不思議よね?
J)え?
鬼)最初はあの子達も怖がってたのよ、
  私のこと。
J)……
鬼)なのにそれでも話しかけてきてくれて…
  なんていうか…
  無邪気なのよねw
J)無邪気…ですねw
鬼)あんな子…いるのね。
J)レアですけどねw
鬼)ふふふw
J)鬼山さんの笑顔と同じくらいw
鬼)え?
J)いいえw
鬼)Tくんは…きっと
  彼女のこと好きなのね。
J)…
鬼)なんかお似合いだわ、あの二人。
  可愛いw
J)……

 

そう言って笑った鬼山さんは
とても優しい顔をしていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

鬼猿コンビと呼ばれてるもう一人は、
情報課の猿田さんだ。

 

猿田さんは鬼山さんと違って
本当に性格が悪い…w

仕事は出来るんだけど…

 

人の欠点を見つけては指摘するのを
生き甲斐にしてるような人だ。

 

特に若くて可愛い女の子が大嫌いで
♡ちゃんなんて恰好の餌食だった。

 

♡ちゃんが仕事でこっちに来ると
決まっていつも嫌みを言う。

 

猿)ちょっとあなた!!
  そんな派手な格好して
  パーティーにでも行くつもり?
♡)え??派手ですか??
猿)鏡見たらわかるでしょ?
  あなたバカなの?

 

男)うわー始まった。
  猿田の女いびり…
男)ほんと性格悪ぃよなー
男)♡ちゃんイジメんなっつーの!
男)そーだそーだ!!
  俺らの♡ちゃんなのにー!!

 

すぐ後ろで会話してるから
営業部には丸聞こえで
♡ちゃんのファンが特に多い営業部は
いつもイライラしていた。

 

♡)ごめんなさい。
猿)わかればいいのよ、わかれば。
♡)はい。
猿)それから…
  化粧も濃いんじゃない?
♡)え??
猿)何そのまつ毛、不自然よ!!
  それにアイメイクも濃いわね。
  目を大きく見せればいいってもんじゃ
  ないのよ!
  なのに今の若い子は全く…
♡)私…アイメイク何もしてません。
猿)は?何言ってるのよ!
  そんなわけ…
♡)……
猿)……っ、な、なんなのよ!!
  とにかく顔が派手だって言ってんの!!
♡)はい…すみません。

 

男)ぶくくくww
男)猿田のやつバッカだw
男)♡ちゃんはナチュラルメイクで
  あんだけ可愛いんだっつーの!
男)だよなー

 

♡)猿田さん…
猿)何よ!
♡)…私のこと…嫌いですか?
猿)は???

 

ぶっ!ww
何そのストレートな質問!!

振り返って♡ちゃんの顔を見てみたら、
なんかしょんぼりした顔で
猿田さんのことを見てる。

 

何それ!
新しい技??w

 

猿)べ、別に…嫌ってなんかないけど!!
♡)ほんとですか…?
猿)…ええ。
♡)良かったぁ♡♡
猿)え?
♡)私…仲良くしてほしいです♡
猿)は?
♡)えへへ♡

 

そう言うと♡ちゃんは無邪気に笑って…
猿田さんは拍子抜けしたような顔をしてる。

そりゃそうだw

 

でも性格の悪い猿田さんが
そんな簡単に態度を変えるわけもなく…

次の日も♡ちゃんは
猿田さんにつかまってた。

 

猿)ほんといいわよね~若い子は。
♡)え?
猿)若いってだけで
  偉いとでも思ってるんでしょ?
♡)え!!思ってません!!
猿)こーんな可愛くて
  悩みなんてないでしょ?
♡)え…

 

猿田さん…
もう言いがかりになってますよw
♡ちゃん、頑張れ…w

 

猿)お肌もつるっつるだし。
  まつ毛も長いし。
♡)ありがとうございます♡
猿)え?
♡)お肌のお手入れは
  気をつけてるんです♡
猿)そ、そうなの?
♡)はい♡
  最近使ってる石鹸がすごく良くって♡
猿)へぇ……
♡)まつ毛は…
  ハワイの美容液使うようになってから
  少し伸びたんですー♡
猿)そうなの?
♡)はいっ♡
猿)なんていうやつ?
♡)○○っていう美容液です♡
猿)へぇ……。石鹸は?
♡)あ!石鹸はおまけで1つ付いてきたから
  良かったら明日持ってきますよー♡
猿)え?いいの?
♡)はい♡良かったら使ってください♡

 

あれーーーー
なんか…また仲良くなってる??

 

その日の夕方、
エレベーターで♡ちゃんに会った俺は
また聞いてみた。

 

J)猿田さん、嫌いじゃないの?w
♡)えーと…えへへw
J)……
♡)やだなーって思う時はありますけど…
J)でも果敢に話しかけるよね?w
♡)はい…
  なんか…色んな人と
  ちゃんと話せるようになりたくて。
J)え?
♡)苦手だなって思う人も
  怖いなって思う人も、
  嫌だなって思う人も。
J)なんで?
♡)だってこれから先、まだまだ色んな人と
  出会うじゃないですか。
J)うん。
♡)本当に色んな人がいると思うんです。
J)うん。
♡)だから…どんな人とでも
  ちゃんとコミュニケーションを
  取れるような人間になりたいなって。
J)……
♡)だから避けたり逃げたりしないで
  色んな人とお話したいんです。
  そういう努力は絶対マイナスに
  ならないと思うから。
J)そっか…。

 

そんな考え方するんだ…。

 

今の若い子なんて
面倒臭い上司や先輩のことは
極力避けて…

触らぬ神に祟りなしみたいな感じだと
思ってたけど。

偉いなぁ…。

 

__それから数日後。

 

猿田さんは結構肌が荒れてたのに
♡ちゃんにもらった石鹸を使い始めて
びっくりするくらい肌がキレイになった。

 

♡)猿田さん、この申請13日までに
  通りますか?
猿)通しておくわよ。任せなさい。
♡)わぁ♡ありがとうございます!!
猿)私こそ…、石鹸ありがとね。
♡)はい♡
  すごく使い心地良くないですか?
猿)そうね。
♡)えへへ♡
猿)美容液も買ってみたけど。
♡)わ!ほんとですかぁ?
猿)また…オススメのあったら
  教えてちょうだい。
♡)はい♡わかりました♡

 

♡ちゃんが笑顔で戻っていって
俺が笑ってると
猿田さんに声をかけられた。

 

猿)何よJくん。
J)いえ…、良い子でしょ?彼女w
猿)そうね…。
  前から不思議だったけど…
J)え?
猿)あの子って…
  なんか嫌みが通じないんだもの。
J)あはははw
猿)あの笑顔見てると
  バカバカしくなってきちゃう。
J)わかります…w
  

てゆーか猿田さん。

自分が言ってることが
「嫌み」だっていう自覚はあったんですね?w

 

……

 

 

その日の夜は
昔の元カノから連絡があった。

東京に来てるから会いたいと言われ
俺はホテルまで会いに行った。

 

J)久しぶりだねー
女)うん。元気だった?
J)元気だよ?そっちは?
女)うん…。

 

彼女はすぐに俺に抱きついてきた。

 

J)どうしたの?
女)Jくんのこと…
  忘れられないんだもん…
J)忘れられないのは
  俺じゃなくて俺の身体でしょ?w
女)……っ///
J)旦那さんにバレても知らないよー?
女)バレないもん…
  だから…お願い…///
J)いつからそんな悪い女になったの?w
女)いいでしょっ/// 抱いてよ…っ///
J)はいはい、おいで?w

 

情事の後、乱れたベッドの上で
俺が横になってると

彼女は俺の頬にキスをしてきた。

 

J)何の真似?w
女)彼女いないの?
J)こんなことしといて、そんなこと聞く?w
女)だって……
J)いないよ?
女)そうなんだ…。
  …まだ…誰も愛せないの?
J)うーーん…
  …でも…、気になる子はいるかな。
女)えっ!!
J)そんなに驚く?w
女)Jくんが???
  どんな子なの???
J)どんなって…うーん…
  なんか天使みたいな子w
女)何それ……
J)あんな心がキレイな子、見たことない…
女)……
J)……
女)それ…、「気になる」なの?
J)え?
女)好きなんじゃないの?
J)……
女)だって…
  Jくんのそんな顔…、見たことないけど…
J)え?

 

俺…どんな顔してたんだろ…

 

女)なんか妬けちゃう…
J)人妻が何言ってんのw
女)だって…
  私と付き合ってる時は
  一度もそんな顔したことなかったのに…
J)…

 

俺…
本気なのかな…

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

次の日も♡ちゃんは
会社で顔を合わせると笑顔だった。

 

この笑顔が反則なんだよなーーー

と思って見てると
彼女が思いきりつまずいて。

 

慌てて俺が抱きとめると、
俺の手が丁度彼女の胸に触れた。

 

J)ごめん!!///
♡)わ、わ、私こそすみません!///
J)ほんとにごめん!!///
♡)いえ…//
  えっと…ごめんなさい!
  失礼します…//

 

そう言うと彼女は走って逃げて行った。

 

ヤバい…//
なんだよこれ…///

 

今更…女の胸に触ったくらいで
こんな恥ずかしくなるなんて
自分にびっくりだ。

女の身体なんて…
飽きるほど触ってるのに…

なんか…

 

触っちゃいけないものを
触ったような気がして…。

 

真っ赤になってたな…//

 

J)……///

 

あ~~~ヤバい…
こんなん、俺らしくない……。

 

でも…彼女の感覚が消えなくて…

 

もし彼女を抱いたら…

彼女はどんな声で啼くんだろうとか
そんなことまで考えてしまう。

 

男)いや~~
  今日も♡ちゃん、可愛かったな~~
男)今日の髪型ヤバいよな!///
男)いつでも可愛いんだけどさ~♡
男)あ~~
  一回でいいからお願いしてぇな~♡
男)おいw

 

うちの男共がまた騒いでる。

こんな奴らと同じこと考えてた俺って…

 

男)♡ちゃんてどんなカンジなんだろ…
男)想像したらヤベぇ…///
男)絶対可愛いよな~~♡
男)「好きにしていいよ?」とか言われてぇ♡
男)わかる!!

T)おい!!!

男)な、なんだよ…
T)ふざけんな!!!
  あほなこと考えてる暇あったら
  仕事しろ!!!
男)なんだよ…想像するくらい自由だろー
男)ほんとだよ。
  夢くらい見させろよな~
T)見んな!!!
男)はーいはい…
男)わかりましたよーー

J)……

 

Tくんは…本当に彼女が好きなんだな。

彼女が男達の妄想の餌食になるだけで
許せないんだw

 

Tくんが彼女に惹かれるのは
すごくよくわかる。

二人は似てるし…

こんな真っ直ぐな子だから
あんな真っ直ぐで純粋な彼女を
好きになるんだろう。

 

でも…うちの会社には
本当に彼女のファンが多い。

もう何人が彼女に告白したかも
わからない。

 

この間も♡ちゃんを遠くから
盗撮しようとしている奴がいて、

俺が携帯を取り上げようとする前に
Tくんが蹴りを食らわした。

 

Tくんはいつも一生懸命彼女を守ってるけど
俺も本当に彼女が危なっかしくて
ほっとけない。

 

広報課の課長は
セクハラで有名なんだけど…
そんな課長にまで♡ちゃんは
笑顔で接してるし…。

 

男)課長~~
  たまには他部署と一緒に
  飲み会しましょうよ~
男)交流も兼ねて♪
男)♡ちゃんのところとか
  誘いましょうよ~~
課)おいおい…
  うちの会社のマドンナを
  そんな気軽に誘えるかよ~~w

 

とか言って口元がニヤけてますよ、
おじさん。

 

男)飲み会にあんな可愛い子いたら
  テンション上がるんだけどな~~
男)だよな~~
課)わかったわかったw
  俺が今度上手いこと言っとくから♪
男)やりぃ!!
男)さすが課長!頼りになるー♪

 

おいおいおい…。

 

その日の帰り、エレベーターを降りると
早速♡ちゃんに声をかけてる
課長を見つけた。

 

課)今日二人で食事行かない?
♡)え??

 

おいおい…
二人になってるし…
話が違うだろ、おっさん!

 

課)用事ある?
♡)はい、すみません。
課)じゃあいつ暇?
♡)しばらく忙しいです。
  ごめんなさい。
J)お疲れさまです。
課)おっと…
♡)お疲れさまです。

 

そのまま会社を出て駅に向かったけど…

 

J)…っ

 

やっぱり気になった俺は、すぐに引き返した。

 

ちゃんと断ってたけど…
なんか心配だ。

 

あ!!

 

俺の目に飛び込んできたのは、
課長に無理矢理肩を抱かれて
困ってる彼女の姿。

あのおっさん…ふざけんなよ…!!

 

課)ほんとは用事なんてないんでしょー?
♡)離してください!

J)ちょっと!!

♡)あっ!Jさん…!
課)おや、Jくん。
  …営業部のエースが何の用だい?
J)困ります、課長。
課)え?
J)僕の彼女に
  手出さないでもらえます?w
課)え!!彼女?!
J)社内恋愛なんで
  内緒にしてますけど…
課)え…え…っ
J)課長も口外しないでくださいね?

 

俺が笑って圧をかけると
課長は一歩下がった。

 

課)そうだったのか…
  知らなかったから…
J)そういうことで、もういいですか?

 

俺が睨むと課長はうつむいた。

 

課)あ、ああ…、すまんかったね…
J)行こ。
♡)あ…はい。
  お疲れさまでした!!
課)うむ。

 

俺はしばらく
彼女の肩を抱いて歩いた。

 

♡)あの…っ
J)まだ見てそうだから、その角曲がるまで。
♡)はい…。

 

彼女の肩は、少し震えてる。

 

J)もう大丈夫かな…
♡)あの…ありがとうございました。
J)……
♡)もう大丈夫です。

 

全然大丈夫じゃなさそうなんだけど…

 

J)無理しなくていいよ。
♡)え?
J)怖かったでしょ?
♡)…っ

 

無理して笑う彼女を…
気付いたら俺は、抱きしめていた。

 

J)最初から駅まで送れば良かった。
  ごめん。
♡)…っ

 

いつも笑顔で頑張ってる彼女の身体は…
思ってたよりもずっと華奢で。

あ~~俺…何してんだろ…

 

J)……大丈夫?

 

身体を離して顔を覗くと、
大きな瞳が俺を見上げてきた。

 

J)……
♡)……
J)ほんとに付き合う?
♡)え?
J)俺と。
♡)…え???
J)課長に言っちゃったしw
♡)…っ
J)なんか…♡ちゃんって危なっかしくて
  ほっとけないんだよねw
♡)そんな理由で付き合いません。
J)え?
♡)助けてくれて…
  ありがとうございました。
J)……
♡)でも…私ちゃんと…
  自分で対処できるように
  なりますから!

 

なんでそんな強がるんだろ。
震えてたくせに…

甘えてくれたらいいのに。

 

♡)ありがとうございました。
  お疲れさまでした!!

 

そう言うと彼女は
駅に向かって走っていった。

 

あ~あ…

俺の女にならないかな…あの子…。

 

J)……

 

結婚願望なんてなかったけど…
あの子なら結婚してもいいって
最近そんなことまで思うようになってた。

 

毎日家に帰って
あの笑顔があったら…
本当に癒されそうで…

俺の隣で笑っててほしい…
側にいたい…

俺…いつから
こんな好きになってたんだろう…。

 

そんなことを考えながら
駅に向かって歩いてると
会社の前に女の子がいた。

この子…確か…、この間切った子だ。

 

女)あ…Jさん…
J)どうしたの?こんな所で。
女)Jさんに会いたくて…っ
J)……
女)あたし…やっぱり…Jさんが好き…!!
J)こんなところじゃアレだから
  場所変えようか…。

 

俺は彼女とそのままタクシーに乗って、
ホテルに入った。

 

J)会社まで来ちゃダメでしょーw
女)だって…
  メールも返事くれないから…
J)もう終わりにしようって言ったよね?
女)なんで??
J)抱いて欲しいだけなら
  いくらでも相手するけど…
  そうじゃないでしょ?
女)…っ
J)だから…
女)じゃあ抱いてよ…っ
  今すぐ…///

 

彼女は俺を押し倒して
強引にキスをしてきた。

 

俺がキスに応えると
切なそうな目で俺を見てくる。

でもそんな表情を見ても、
俺はなんとも思わない。

 

こんなキスに、何の意味もない。

 

女)あっ…、は…ぁっ…///
J)…っ
女)もっと……っ、ふぁ…っ///
  あぁっ…んっ///

 

俺の腕の中で喘ぐ彼女にも
何の感情も湧かない。

 

一瞬の快楽。

ただそれだけ。

 

女)ねぇ…
J)なにー?
女)好き。
J)うん。
女)うんって…、それだけ?
J)不満?
女)ねぇ…好きになってよ…
J)言ったでしょー?
  「抱いて欲しいだけなら」って。
  それ以上求めるなら無理だよ。
女)どうしてっ?!
J)どうしてって…

 

「面倒臭い関係はごめんだから。」
いつもそう思ってたけど…

今回は彼女の顔が頭に浮かんだ。

 

J)好きな子がいるから。
女)何それ…嘘でしょ?
J)ほんとだよw
女)じゃあ…どうして
  あたしのこと抱いたの?
J)男は心と体なんて別だよー?
女)…っ
J)ごめんね?
女)じゃあ…体だけでいいから…
J)え?
女)これからも会ってよ…。
J)割り切れるならいいけど。
女)割り切るから…っ
J)……

 

もし彼女が
振り向いてくれる日が来るなら

女なんて全員切ってもいい。

 

そんなことを考えながら、

俺は今日もまた別の女を抱く。

 

彼女を思い浮かべながら…。

 

 

ーendー

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