お風呂に入って明日の準備をしてると
後ろからぎゅっと、甘い香り。
臣)へへーー♡
♡)なぁにー?w
臣)あの入浴剤、すげぇ匂いだよな。
♡)うん、バニラとチェリーって
書いてあったよー
臣)なるほど、甘いわけだ。
なんて言いながら、
私の肩に鼻先を埋めてる。
♡)どうしたのーー♡
甘えてるみたいで可愛くて、
振り返ってぎゅっと抱きしめた。
臣)明日はグランドキャニオンかーー
♡)そうだよっ!♪
臣)大丈夫?疲れてない?
♡)え?
臣)今日も走り回ったしさ。
♡)元気いっぱいだよー!全然大丈夫!
臣くんは?
臣)俺も全然平気ーーw
♡)へへへーー♡
二人でぎゅむぎゅむしながら
ベッドに上がった。
臣)明日も結構歩きそうだもんな。
臣くんがくれたクッションを背中にあてて
真っ白な布団とシーツの間に、
足を滑らせた。
♡)そうだね。
写真いっぱい撮るぞーー♡
臣)ははははw
二人で並んで座ると
臣くんが頭を少し傾けて、
コツンとぶつけてきた。
臣)食事も付き合ってくれてありがとな。
♡)うん♡
ジョーくん可愛かったね♡
臣)でかくなっててビビったわw
♡)あははは♡
臣くんがさっき撮った写真を開いて
私もそれを一緒に覗き込む。
臣)ジョーと何話してたのー?
♡)え?
臣)テラスで。
♡)……
ゆっくりスワイプしていく写真は
ディズニーで撮った写真に戻っていく。
♡)……秘密。
臣)え、何それw
♡)へへへ//
臣)何話してたんだよ〜〜〜
臣くんがまたコツンと頭をくっつけてきた。
♡)ねぇ……
臣)んー?
♡)……
臣)……
聞いてもいいかな。
♡)臣くんって…
私のどこが好きなの?
臣)ほえ?!!
その質問が予想外だったのか、
臣くんが変な声を出した。
臣)何それ、今更?w
♡)うん。
だって…
「ここが好き!」みたいに…
ハッキリ言われたことは
あまりない気がする。
臣)どうしたの、急に。
♡)……なんとなく…
臣)…言ってもいいけど、
朝になりそうだから…また今度な?
♡)えっ…
隣を見ると、臣くんの甘い笑顔。
朝になりそうなくらい…
たくさんある、って…こと?
♡)////
全部、聞きたい。
♡)教えて!
臣)ダーメ。
♡)朝になってもいいもん!
臣)ダーメ。
♡)どうしてー!
臣)今からHするのに忙しくなるから♡
♡)えっ!
臣くんはニヤッと笑って
私の肩を抱いた。
♡)え、え、ちょっと待って!//
臣)なんだよーー
♡)……だって…
臣)夜シようって言ったのお前じゃん〜!
♡)……//
確かに言ったけど。
♡)話の、途中だもん…//
臣)だーかーらー、それはまた今度。
朝になっちゃうから。
♡)朝になってもいいもん。
臣)それじゃHできないじゃん。
♡)いいもん。
臣)はぁ?!
あ、わかった。
じゃあHしながら言ってやるから。
♡)え?
臣)お前の好きなところ♡
♡)……//
なんかそれ、違う気がする!
♡)ダメーーー!//
臣くんの腕をぐるっと外すと…
臣)……
あ、口が尖ってる。
♡)……
臣)……
♡)ねぇ……
臣)んー?
聞いてもいいかな。
♡)……
臣)……
♡)レイカさんと…
どうして別れたの…?
臣)……
♡)……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
レイカとのこと、ろくに説明もしないまま
あの場に連れて行ったから
そりゃー♡にしてみたら
わかんないことだらけだよな。
明日行くグランドキャニオン。
その手配をしてくれたのがレイカで
その件で電話来たんだけど…
時間あるなら一緒に飯でもって話になって。
♡に会ってみたいっていうのは
二人とも前から言ってたし…
俺も紹介したかったから
突然だったけど連れていった。
♡は嫌な顔一つせず、
ずっと笑ってくれてたけど…
逆の立場だったら。
♡の元カレにいきなり会わせられたら
俺だったら無理かも。
って、今更そう思ったりして
♡に申し訳なくもなる。
ちょっと勝手だったかもしれない。
俺たちは今まで
お互いの過去の恋愛の話とか
あまりしたことなかったから…
「レイカさんと…どうして別れたの…?」
♡がそう思うのも当たり前で。
臣)……
♡)……
♡にはちゃんと話したい。
そう思った。
触れてる肩と肩。
柔らかな白い腕。
その先の華奢な手に、
すこし焼けた自分の手を絡めて。
臣)…レイカと付き合ってたのは…
♡)……
臣)19から4年間。
♡)…4年…間…。
臣)うん。
俺史上、一番長い。
臣)すげー好きだったし…
結婚したいって思ってた。
♡)…っ
♡の手を握りながら、
少しずつ、話す。
臣)でも…それくらいの歳って…
やっぱりガキじゃん?
♡)……
どんなに好きでも、結局は子供で。
経済力も包容力も、男としてまだまだで
自信もなくて。
臣)そん時、色々あってさ…
♡)…色々…?
臣)うん。
♡)……
臣)家の事情とか、色々ゴチャゴチャしてて…
♡)……
臣)レイカは俺とじゃない方が
幸せになれるんじゃないかな、とか…
♡)……
臣)でもやっぱり俺が幸せにしたいって、
好きだから当然思うし…
♡)……
臣)でもどう足掻いてもその力が
その時の俺にはなくて。
♡)……
何度も迷って、苦しんだ。
臣)……で、結局…
レイカを失うことになっても
俺は何もできなくて。
♡)…っ
本当に無力で、情けなかった。
臣)俺と別れた後に、今の旦那さんと
すぐ結婚したんだ。
♡)…そう…なんだ……
臣)うん。
お互いにずっと引きずってたけど
もうどうしようもなかった。
臣)別れてからは、一度も二人では
会ってない。
♡)……
臣)日本で最後に会った時も…三人で。
♡)……
臣)レイカをLAに連れて行くけど、
俺が絶対に幸せにするから、って…
そう言われた。
♡)……
臣)……
強がりでも牽制でもなく、
穏やかな笑顔で、そう言われたんだ。
全部わかった上で、
俺にあんな風に言える人。
この人には絶対敵わない、そう思った。
思い知らされた。
臣)レイカが幸せならいいって
そう思おうとしたけど、
気持ちはそんな簡単じゃなくて…
すげぇ荒れた。
♡)……
臣)後悔とか未練ばっかりで…
あの時もしこうだったらとか
何度も思ったりしたし…
♡)……
臣)お前ももう知ってると思うけど…
女遊びしまくったし…
他の子と付き合ったりもしてみたけど
それでも遊び続けて。
♡)……
誰と付き合っても、なんか違って。
好きな気持ちはちゃんとあっても
他の女とも平気で浮気してた。
結局ちゃんと好きじゃなかったのかな。
臣)今の仕事始めてからも
ずっとそんなんで。
♡)……
寄ってくる女は無限に増えて
アホみたいに遊んでた。
臣)でも…仕事で少しずつ結果が出て
ようやく自分に少し
自信も持てるようになって…
♡)うん。
臣)……
そしたら、会いたくなった。
臣)LAに来ることも増えたから
レイカに連絡したんだ。
♡)うん。
臣)そしたら…
もうジョーも生まれてて、
レイカはすごく幸せそうでさ。
♡)……うん。
その幸せそうな姿を見て
ああ、本当に俺じゃなかったんだ、って…
そう思った。
レイカを幸せにするのは、
この人だったんだ、って。
臣)俺の仕事も知ってるから
二人とも応援してくれてて…
♡)……
臣)LAに来る時はよく一緒に
食事するようになって。
♡)…そうだったんだね。
臣)うん。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて聞く、臣くんの過去。
私の知らない臣くんが
そこにはたくさんいて。
4年間も付き合ってて、
臣くんが大好きだった人。
若かったから、
叶えることが出来なかった想い。
今の臣くんだったら、
レイカさんを幸せにしてあげられたのかな。
「今の俺だったら」って…
臣くんはそう思ったりしたのかな。
臣)女遊びしてたこととかを
レイカと別れたせいに
するわけじゃないけど…
♡)……
臣)なんか、どうでもいいっていうか…
周りもみんなそんなんだし
これでいいんだ、って。そう思ってた。
♡)……
臣)でも…、
握られてる手に、
優しく力が入ったのを感じて。
臣)ある日出会った女がさーー
なんか…異次元すぎて。
♡)え?
異次元??
臣)すげー可愛くて…
なんかふわふわしてんだけど…
ちゃんと自分の芯を持ってて。
♡)……
臣)なんか眩しいくらい、
キラッキラしてんのw
♡)……
それって…
臣)汚れた俺からしたら、ほんと眩しくて。
♡)……
臣)その子が言ったんだ。
♡)……
臣)自分のことを好きになってくれる人に対して
胸を張れる自分でいたいから
その人に対して恥ずかしいことは
私はいつだってしたくない、って。
♡)…っ
臣)まだ出会ってもいない、
未来の好きな人に対して。
♡)……
思い出す、あの夏の日。
臣)その言葉が、なんか衝撃的で。
♡)……
臣)こんな子に、好きになってもらえるような
男になりたいって…
その時もう…どこかで無意識に
そう思ってた。
♡)……
臣)もっと知りたくなって、
知れば知るほどギャップも多くて…
目が離せなくて。
♡)……
繋いでる手と手。
臣くんの親指が…私の手の甲を
優しく滑っていく。
臣)レイカと比べたり、思い出したり…
元カノの時にはあったそーゆーのが
お前と出会ってからは
一度もなかった。
♡)え…?
首を向けて、臣くんの顔を覗くと
私を見る瞳が、すごく優しくて…
臣)お前にどんどん惹かれて、好きになって…
♡)……
臣)「運命」…って。
♡)……
臣)出逢う順番とかタイミングとかも
全部ひっくるめて「運命」だと思う、って
お前がそう言ったじゃん?
♡)……
私がそう言ったのは確か
初めて電気を消して眠ることが出来た夜。
「運命」って自分で口にしたけど…
運命だって本当に思ったし、
運命だったらいいのに…っていう
願いも込めて、そう言ったの。
臣)俺がお前に出逢えて、好きになったのも
こうして一緒にいられるのも…
♡)……
臣)全部運命なんだなって…
運命だったらいいなって…
そう思ったんだ。
♡)……
同じように思ってくれてた
臣くんの気持ちに…
涙がこぼれそうになった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺は本当に本当に♡が好きで。
♡が家を出て行って
もう帰ってこないかもしれない、って…
♡を失うかもしれないって
そう思った時に
それを再認識した。
俺は自分が未熟なのも
嫌ってほどわかってるけど
それでも何が何でも
どんなことをしてでも
♡を失いたくないって
そう思った。
レイカの時みたいに、
その方が相手が幸せかもとか
そんな綺麗事よりも
死んでも失いたくないって
その気持ちの方が強かったんだ。
その違いが何なのかはわからない。
想いの差だって言えば
レイカに失礼な気もするし
あの時の俺は、あの時の俺なりに
レイカを好きだったし。
俺がただ単に大人になって
あの時より経済力も身につけたからとか
そういうのとも少し違って。
なんだろう。
上手く言葉に出来ないけど、
とにかく嫌だったんだ。
♡がいなくなるのは。
過ごした月日はまだ浅くても
俺にとって♡は
それくらい絶対的な存在で。
いつかの夜、♡は俺に
自分は一番じゃなくていいって
そう言った。
大事な仕事とか、自分の立場とか
いろいろあるから…
俺もあの時は
一番だって言ってやれないって…
そう思った。
でも違った。
失いかけて初めてわかった。
♡は俺にとって唯一無二で
やっぱり「一番」なんだ。
一番大事で、代わりなんていない。
この仕事をしてて
そんなこと言ったらダメなのかもしれないけど
俺は♡が一番好きで、一番大事。
その事実はもう変えられない。
そのことに自分自身も、
もう気付いてしまったから。
♡)臣くん……
俺の名前を優しく呼ぶ声が
耳元で聞こえて。
隣に並んでた♡は
いつの間にか、ぺたんと
俺の上にいて。
臣)……
♡)……
ヘッドボードにもたれてる俺の身体は
♡の甘い香りにふわりと
抱きしめられていた。
♡)……臣くんが失ったものは
みんなみんな、埋めてあげたい……
ぎゅぅ……
♡)臣くんの心が、いつもあったかい愛で
いっぱいになりますように…
そう言って、優しく包んでくれて…
臣)……
柔らかくて、甘くて…
いつもこうやって俺を包んで、
優しく心を溶かしてくれるような
そんな存在。
臣)……っ
気付いたら俺の頬は
涙で濡れていて…
それに気付いた♡が
優しくそれを、拭ってくれた。
臣)ご…め…、…っ
なんで泣いてるのか
自分でもわからない。
♡)大丈夫だよ……
臣)…っ
俺の頬に…
優しく触れる、♡の手のひら。
臣)違う…。
♡)……
臣)まだレイカが好きだとか…
引きずってるとかじゃなくて…
そういう涙じゃない。
♡)うん、わかってるよ。
臣)……
♡は優しく笑って
また俺を、抱きしめてくれて…
♡)昔の臣くんは…
一生懸命、恋してて…
臣)……
♡)精一杯、レイカさんを
好きだったんだよね…
臣)……
行き場をなくした想いを
持て余しながら苦しんで
どうしようもなかったあの頃の俺を
今♡が抱きしめてくれてるみたいで…
♡)いっぱいいっぱい…頑張ったね…
臣)……っ
昔の苦しみなんて
♡に出逢ってとっくに消化できてたけど…
今改めて、
♡の優しさとあたたかさに触れて
涙があふれてくる。
臣)……っ
やっとわかった涙のワケは。
♡の愛に触れて、
♡を愛しいと想う
俺の心が、震えたから。
臣)……っ
ぎゅっと…
きつくきつく、抱きしめる。
俺を包んでくれる♡は
やっぱり太陽みたいにあたたかい。
臣)……前にも…、
♡)…え…?
臣)同じこと、言ってくれたの…覚えてる…?
♡)……
ぬくもりから
そっと顔を上げると
♡の瞳が、優しく俺を見つめる。
臣)俺が失ったものは…
みんな埋めてあげたい、って。
俺がそう言うと
優しい瞳は柔らかく微笑んで。
♡)覚えてるよ。
また、そのぬくもりに
抱きしめられた。
♡)臣くんが…らいおんハート…
歌ってくれた夜でしょ?
臣)……うん。
今でもハッキリ覚えてる。
こんな華奢な身体してるくせに
俺のこと…「守る」って言ってくれて…
感動して泣きそうだったんだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
臣くんのこと、守りたいって思った。
いつも臣くんがくれる愛を
私もいっぱいいっぱい返したい、って…
臣くんのこと、大事にしたいって…
そう思ったの。
だからちゃんと、覚えてるよ?
♡)臣くん……
濡れた瞳が、私を映してる。
♡)愛してるよ……
そう伝えて、もう一度抱きしめると
臣)ありがとう。
背中にしっかり感じる、臣くんの手のひら。
しばらく抱きしめ合って
またゆっくりと瞳が重なれば…
臣)愛してるよ。
お互いの心から自然とこぼれた愛の言葉に
二人で一緒に、笑顔になる。
優しい瞳に、吸い込まれるように
その奥を見つめれば…
臣)俺…、今もこの先も…
お前しか見てないし、お前しか要らない。
♡)……
臣)何回伝えても足りないくらい
お前が好きだし、
お前のことが、世界で一番大事。
♡)…っ
臣)何よりも大事だし、誰よりも好きだよ。
♡)…っ
臣くんの言葉が…
胸にあたたかく、染み渡る。
優しい笑顔が、涙でぼやけていって…
臣)愛してるよ……
♡)…私も…、っ……愛してる。
言葉と涙が、同時にこぼれて。
嬉しくて、愛しくて…
唇が優しく触れ合って、
肌が重なる。
♡)臣…くん……
あふれる気持ちを伝えたくて
肌に触れるのに
触れれば触れるほど
また気持ちがあふれる。
そんな繰り返し。
♡)…臣く…ん……
好きな人の名前を呼ぶのは、
それだけで
「好き」って、言ってるみたい。
♡)臣くん……
気付けば真っ白なシーツの上で
絡み合ってる二人の身体。
見下ろす臣くんは優しく微笑んで
甘い瞳で私を見つめる。
臣)♡……
私の頬に触れた指先も愛しくて
手のひらで包んで、口付けた。
臣)♡……
ほら…
名前を呼ばれてるだけなのに
「好き」って、言われてるみたい。
臣)♡……
何度も私を呼ぶ、甘い甘い声。
♡)臣くん……
大好き。
こんなにこんなに、大好き。
臣)…は…ぁ……、//
♡)ん…、ん…っ//
甘い愛しさが一つに溶け合って…
胸にふと、湧き上がる気持ち。
臣くんが…
こんなに優しい瞳で見つめるのも…
優しく名前を呼ぶのも…
優しく笑いかけるのも…
優しく触れるのも…
この先、全部全部…
私だけだったらいいのに、って。
臣くんが愛してくれるのは
この先、私だけでありますように…って。
臣くんの体温を感じながら
そんなことを願う私は…我儘ですか…?
臣)♡…っ、
♡)…はぁ…っ、///
お互いに別々の過去があって…
だからこそ。
出逢えて、愛し合えて
今一緒にいられることを尊く感じる。
過去は過去。
だから…せめて未来は。
二人で笑い合えて、
愛でいっぱいの未来にしたい。
私はずっと臣くんを大事にするから…
だから神様…、お願い。
臣くんの未来は、私にください。
絶対絶対、大切にするから。
宝物に…するから。
ーendー
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