[342]愛してるって言わないで

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♡とハルくんを引き離したくて
飲み会来いよなんて電話したけど…
 
今日は二人きりじゃなかったみたい。
……ほっ。
 
 
健)♡ちゃん来るって?
臣)うん。
隆)おお…
  今日はハルくんより臣を選んだか。
臣)彼氏は俺!彼氏は俺!
岩)あははは、2回言った!w
N)あ、臣ーー、松浦さん呼んでたよ。
臣)あ、はい!ありがとうございます。
 
 
店に着いた俺らは適当に飲み始めて
徐々にメンバーも増えてきた。
 
 
臣)松浦さん、お疲れさまです。
浦)おお!お疲れ。♡はどうした?
臣)あ、後で来ます。
浦)なんだ、そっか。
臣)……。
 
 
俺じゃなくて♡に会いたかった感じね?
 
 
浦)まぁいいや、写真撮るぞ写真w
臣)はいw
 
 
松浦さんはご機嫌でいろんなメンバーと
ツーショットを撮ってる。
 
 
臣)あ、TAKAHIROさん、
  おめでとうございます。
T)いやいや、言うてくれたやん!当日!w
臣)あはははw
M)当日?
T)はい。当日ハイローの撮影で…
  誕生日になる瞬間、一緒にいたんですよw
M)ラブラブだなーー
T)相思相愛です。
臣)あはははw
M)あ、咲ちゃん来たよ。
T)あ。
 
 
大きなメガネをして
こっちを覗いてる咲ちゃんを
MATSUさんが入り口まで迎えに行った。
 
 
臣)♡もあとで来ます。
T)えーー、こんな時間から…ごめんね。
  ありがとう。
臣)いえいえ!
T)あ、そういえばさ、
  前に話してた海鮮祭り、
  年明けにやろうって。
臣)あ、TAKUROさんですか?
T)そうそう。
臣)ぜひ!
直)あ、臣ー。松浦さん呼んでたよ。
臣)え。あ、すいません、行ってきます。
T)はーい。
 
 
なんだろ?
 
 
臣)松浦さん。
浦)おう!♡来たか!
臣)いや、まだですけど…
浦)なんだよ遅いなアイツ。
臣)……。
 
 
松浦さん…
俺を♡のマネージャーだとか思ってない?w
 
 
臣)来たら連れてきますんで。
浦)おう!
 
 
でも確かに遅いかも。
車ならそろそろ着いてもいいよな。
 
 
岩)♡ちゃんもう来る?
臣)んー、たぶん。
岩)臣さん、ご対面すれば?
  ハルくんと。
臣)えっ!?
健)おお、それええやん。
隆)会ったことないの?
臣)……ない。
 
 
写真見たことしかない。
 
 
岩)それは会っとくべきっしょ。
隆)うん。
N)なになに?どうしたの?
健)♡ちゃんがハルくんに送ってもらって
  ここ向かってるらしいんで…
  臣ちゃんバトルしたらええやんっていう
  けしかけを…w
N)こらこらこら!w
直)そっか、送ってもらってるんだ。
  挨拶くらいしてもいいんじゃない?
臣)…っ
E)行っちゃえ行っちゃえ!
 
 
……マジで?
 
 
N)バトルはすんなよ?w
健)バトルんなった時はなった時やw
岩)俺の女にチューしてんじゃねぇぞー!
  って言ってやれば?
臣)いや…、それは…
  でも…、そっか、挨拶ね…。
  ちょっと出来そうな雰囲気なら
  してこようかな。
健)よっしゃー!ほんなら待ち伏せやー!
隆)俺も行くー!
岩)俺もー!
臣)って、こんなぞろぞろついてくんなよw
健)ええやん!!
臣)リーダー二人は来ないでくださいw
N直)なんで!リーダー差別だ!
E)じゃあ俺もこっちで待ってるねw
  頑張って、臣。
臣)いや、バトルするかはわかんないけどw
E)もしなったらファイト!
臣)……はーい…w
 
 
ハルくんはTともタイプが違いそうだし
バトルにはならんと思うけど…
 
てかそもそもアキさんと付き合ってんだし。
 
 
臣)ちょ、押すなって!
隆)見えないんだもん。
岩)あんまり行ったら見えちゃうって。
健)お前探偵に向いてへんな!
隆)え…ショック…。
健)なる気あったんかい!w
岩)ちょっと、声でかいっすよ!w
臣)もうみんなうるさい!俺一人でいいよ!w
 
 
車が停まりそうな裏口で
建物の陰に隠れてる俺たち4人。
 
 
健)ハルくんさぁ、
  別れ際とかに挨拶がわりに
  「愛してる」言うて言うてたやん?
臣)うん。
健)ほんならその現場、
  おさえれるかもしれんやん。
岩)確かに。ここまで送って
  別れ際に言いそう!
隆)でも車の中の会話なんて
  聞こえなくない?
臣)ハルくん絶対助手席までまわって
  ドア開けるんだもん。
健)うわっ、何それ!紳士!
隆)それなら聞こえるか!
岩)その瞬間、臣さん飛び出せば?w
臣)なんてだよw
岩)「愛してる」禁止ーーー!!ってw
健)子供か!w
臣)でも今日は…
  ♡がちゃんと言うって言ってたから…
隆)ちゃんと言うって何を?
岩)私に愛してるって言わないで、って?
健)そんなん言えるかいな!w
臣)……でも…、約束したし…。
 
 
そんなことを話してたら、
一台の車がハザードをつけて
斜め前に停車した。
 
 
健)あれちゃう!?
隆)うわ、めっちゃ高級車じゃん…!
岩)品のいい車乗ってるなぁ…
臣)…っ
 
 
運転席から降りてきたのは、
本当にハルくんだった。
 
ハルくんが助手席のドアを開けると
♡が降りてきて…
 
 
♡)ハルくん、ありがとう!
ハ)ううん。
 
 
会話もクリアに聞こえる。
 
俺たちはそっと息を潜めた。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
ハ)寒くない?大丈夫?
♡)うん!…っ、くしゅん!
ハ)ははははw
  やっぱり夜は寒いよね。
♡)あ…っ
 
 
ハルくんは後部座席からマフラーを取り出して
私の首に巻いてくれた。
 
 
♡)これ…ハルくんの?
ハ)うん。
♡)借りていいの?
ハ)いいよ。風邪引いたら大変だから。
♡)ハルくん困らない?
ハ)他にも持ってるから大丈夫w
  次会う時に返してくれればいいよ。
♡)そっか、えへへ、ありがとう♡
 
 
ふわふわであったかくて、気持ちいいな。
 
 
ハ)次のレッスンは年明けだね。
♡)うん!いつも本当にありがとう!
ハ)♡は頑張ってるから
  そのうち日常会話なら
  すぐに出来るようになるよ。
♡)ほんとぉ?!
ハ)うんw
♡)えへへ、頑張るねっ♡
 
 
ハルくんにそう言ってもらえると
すっごく嬉しい。
 
 
♡)ハルくんの教え方が
  すっごくわかりやすいんだ♡
ハ)ほんと?
♡)うん!瞬も言ってたもん!
ハ)そっかw
 
 
ハルくんは優しく笑って
私に巻いてくれたマフラーに
そっと手を触れた。
 
 
ハ)……じゃあ、そろそろ行くね。
♡)うん。送ってくれて本当にありがとう。
ハ)見送らなくていいよ。
  寒いから先に中入りな。
♡)でも…、
ハ)いいから。
♡)……うん、わかった。ありがとう。
ハ)じゃあ…、おやすみ。
♡)おやすみなさい、ハルくん。
 
 
ハルくんはいつものように優しく微笑んで
私の頬を撫でてくれた。
 
 
ハ)♡…、愛してるよ。
♡)…っ
 
 
ハルくんの唇が髪にそっと触れかけて、
私は慌ててハルくんの身体を押し返した。
 
 
ハ)♡…?
♡)…っ
 
 
どうしよう。
胸がズキズキして苦しい。
 
……でも、言わなきゃ…。
 
 
♡)ハ…ルくん…っ!
 
 
……どうしよう。
ハルくんの目が…見れないよ。
 
 
ハ)どうしたの…?
♡)……あの…ね…?
ハ)うん…?
♡)…っ
 
 
こんな優しいハルくんに…
言わなきゃ…ダメなのかな…。
 
 
「今度ハルくんがキスしてこようとしたら
 顔面パンチしろ。」
 
「愛してるとか言ってきたら
 私が愛してるのは臣くんだ!!
 って言ってやれ。」
 
「臣広の言う通り。
 逆の立場で考えてみ?」
 
 
♡)…っ
 
 
そうだ…。
ちゃんと言わなくちゃ…っ
 
 
♡)あの…ね?
ハ)うん…。
♡)……キス、もうしないで…?
ハ)え…?
♡)…ハルくんにとっては
  挨拶みたいなものなんだって
  わかってるんだけど…
ハ)…っ
♡)私は…慣れてないし…
  もし臣くんが同じことされてたら…
  すごくモヤモヤすると思うから…。
ハ)…っ、そっか、そうだよね、ごめん…。
♡)ううん!ハルくんは悪くないの!
  ごめんね?
 
 
ハルくんにとっては深い意味なんてないのに
こんなこと言いたくない。
 
 
♡)あと…ね、
ハ)うん…。
♡)「愛してる」って…言わないで…?
ハ)え…?
 
 
自分で口にした瞬間、
ズキッと胸が音を立てた。
 
 
ずっと見れずにいたハルくんの顔を
ゆっくりと見上げたら…
 
少し悲しそうな瞳に、夜の灯りが揺らめいてて
なんだか私が泣きそうになる。
 
 
♡)えっとね、違うの…っ
  ハルくんが愛してるって言ってくれるのも
  そう想ってくれる気持ちも
  私は嬉しいし…
  私もハルくんのことが大好きだし
  愛してるけど…、っ…、あ、ちがっ…
 
 
また愛してるって言っちゃった…!
どうしよう!
 
 
♡)あのねっ、ママや瞬と同じくらい
  ハルくんのこと大好きで、
  家族を愛してるって思うのと
  同じくらい、ハルくんのこと大事なの…っ
 
 
どうしよう、上手く言えない。
言えないけど…でもちゃんと伝えなきゃ…っ
 
 
♡)でもハルくんがパートナーとして
  愛してるのはアキさんで…
  えっと…、
  ハルくんにも大事な人がたくさんいて…
  ハルくんはきっとみんなに
  「愛してるよ」って
  言えると思うんだけど…
  私にとって「愛してる」って言葉は
  特別で…、
 
 
どう言ったらいいのかわからなくて
泣きそうになってきた…。
 
 
♡)あ、でも…っ
  ハルくんが言ってくれる「愛してる」を
  軽く捉えてるとかじゃなくて…
  えっと、だから…
  ハルくんに深い意味はなくても…
  「愛してる」って言葉は特別だから…
 
 
私、どうしてこんなこと言ってるんだろう…。  
 
 
♡)愛してるって思ってても…
  言葉にしちゃ…ダメなの…っ
 
 
もう何が言いたいのかわからなくなってきて
気付けば涙がこぼれてた。
 
 
♡)ごめん…ね…っ、
ハ)…っ
 
 
……胸が痛い。
 
 
♡)私…、説明がへたくそだから…
  伝わらないかも…しれないけど…
  ぐす…っ
 
 
胸が痛くて、涙が止まらない…。
 
 
♡)もし…臣くんが…
  私以外の女の子に「愛してる」って
  言ってたら…
  それも私はモヤモヤしちゃうと思うの…。
ハ)うん…。
♡)だから…臣くんを…
  同じような気持ちにさせたくない…。
ハ)うん…。
♡)愛してる人は…たくさんいるけど…
  それを言葉にして伝えるのは
  臣くんだけにしようと思うの…。
ハ)……うん。
♡)それくらい…「愛してる」って…
  特別な言葉だから…
  ……ごめんね?
  アメリカでは普通に挨拶なのに
  こんなこと言って…、
ハ)……。
♡)ハルくんもアキさんも、
  きっと普通に使う言葉なのに…
ハ)……ううん。
♡)ハルくんのこと…
  大好きな気持ちは…変わらないから…っ
 
 
そう言って顔を上げたら、また涙がこぼれて。
 
 
ハルくんは泣きそうな顔で
私の頬に、優しく触れた。
 
 
ハ)泣かないで、♡…。
♡)…ぐす…っ
 
 
ごめんね…、
 
ごめんね、ハルくん…。
 
 
ハ)俺の配慮が足りなかった、ごめん…。
♡)え…?
ハ)俺のせいで泣かせて…ごめんね?
♡)ちがっ…、ハルくんは悪くないよ!
ハ)……。
♡)違うよ!!
 
 
私が悪いのに、そんな風に言わないで。
 
 
ハ)♡が愛してるのは登坂さんだって
  ちゃんとわかってるよ。
♡)…っ
ハ)♡が一番大切なのも、登坂さん。
  ちゃんとわかってるから…。
♡)…っ、
 
 
ハルくんがちゃんとわかってくれてることは
私もわかってるのに…
 
 
ハ)泣かないで…。
♡)……(こくん)。
 
 
ハルくんの手が優しく涙を拭ってくれた。
 
 
ハ)俺…さ、
  大事な人はたくさんいるけど…
  「愛してる」って言ったことはないよ。
♡)……え…?
ハ)アメリカ生活は確かに長かったけど…
  挨拶で「愛してる」とは言わない。
♡)…っ
ハ)小さい頃…、玲司パパとレイコママが
  よく、「愛してる」って言ってたの…
  覚えてる…?
♡)うん、覚えてるよ…?
 
 
ハルくんは優しく微笑んで
私の頬を撫でた。
 
 
ハ)羨ましかったんだ、俺…。
♡)……。
ハ)本当に愛し合ってるのが伝わってきて…
  憧れだった。
♡)……。
ハ)だから…俺もいつか、
  それくらい大切に想える相手が出来たら
  「愛してる」って伝えたいって…
  ずっとそう思ってた。
♡)……。
ハ)俺にとってもそれくらい…
  「愛してる」って…特別な言葉だよ?
♡)…え…?
 
 
ハルくんの瞳が、真っ直ぐに私を見つめてる。
 
 
ハ)俺が今まで生きてきて…
  「愛してる」って伝えたのは、♡だけ。
♡)え…?
 
 
私…だけ…?
 
 
ハ)♡を泣かせたくないから…
  もう二度と言葉にはしないけど…
  ♡は俺にとって、本当に本当に大切で…
  かけがえのない存在だから。
♡)…っ
ハ)これから先も、ずっと愛してるよ。
♡)…っ
ハ)これが最後だから…、ごめんね。
 
 
……どういう…こと?
 
頭がいっぱいいっぱいで…
ハルくんが言ってることが…
よくわかんないよ…。
 
 
♡)ハルくんが愛してるのは…
  アキさん…なんだよね…?
 
 
私の問いに、ハルくんは悲しそうに笑って…
 
 
ハ)アキは大切な人だよ。
 
 
そう答えて、私の頭を撫でた。
 
 
ハ)♡がいつも笑っていられますように。
  いつも幸せでありますように。
  今もこれからも、ずっと願ってるから。
♡)…っ
ハ)ありがとう、♡。
♡)待っ…て!
 
 
やだ。
そんな最後みたいな言い方…っ
 
 
♡)また会えるよね?
ハ)うん、もちろん。
♡)いなくなったり…しないよね?
ハ)しないよw
♡)…っ
 
 
だって…
今、一気に不安になったんだもん。
 
 
♡)ハル…くん…っ
 
 
どうしよう。
私今、ハルくんをぎゅって抱きしめたい。
どうしてかわからないけど、本能でそう思う。
 
前に公園で話した、あの時みたい。
 
 
♡)ハルくん…、大好き。
ハ)俺も大好きだよ。
♡)ハルくんのこと、すっごくすっごく大切。
ハ)うん、ありがとう。
 
 
ハルくんは優しく笑って…
マフラーをきゅっとしてくれた。
 
まるで、抱きしめるかわりみたいに。
 
 
♡)……。
ハ)……。
 
 
大好き。
大好きなの。
 
 
ハ)ほら、中入って、風邪引くよ。
♡)…っ
ハ)登坂さんも待ってるよ。
♡)うん…。
 
 
ハルくん…
ハルくん…
 
 
♡)じゃあ…行くね…。
ハ)うん。
 
 
私がドアを開けるまで
ハルくんはその場で見送ってくれてて…
 
私はドアを閉めたら、
また涙がこぼれ落ちた。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
隆)泣いてたね…、♡ちゃん…。
岩)うん…。
N)臣に「愛してるって言われるな!」
  って言われたって言えばそれで済むのに…
  臣を悪者にしないように
  一生懸命説明してたじゃん。
健)いや、実際別に臣は悪者じゃないでしょw
N)まぁそうだけど…
直)でも…「愛してるって言うな」なら
  自分でどうにかできるけど…
  「愛してるって言われるな」は
  難しい話だよね…。
  言わないでって言うの、辛かったろうな…
岩)必死に説明してましたもんね…。
臣)……。
 
 
結局待ってられなかった3人も後から来て
7人で隠れて見てた俺たち。
 
全員揃って何やってんだって感じだけど…
俺は結局、出るに出れなかった。
 
出れる雰囲気でもなかったし…。
 
 
臣)はぁぁぁ……。
 
 
俺はため息を吐いてその場にしゃがみこんだ。
 
 
E)どうしたの臣。
臣)……いや、、
 
 
なんかもう、頭ん中、ごっちゃなんだけど。
 
 
♡が泣いたのは俺のせいだし…
少し自己嫌悪もあって…
 
でもやっぱり恋人みたいな
やりとりをする二人に
複雑な感情もあって…
 
……てか、
 
 
健)ハルくん、絶対♡ちゃん好きやん…。
臣)それ!!!
 
 
それなんだよ!!
 
 
N)うん、あれは間違いないね。
  どう見ても好きでしょ。
岩)ほんとにアキさんって人と
  付き合ってんのかな。
  ♡ちゃんの勘違いなんじゃ…
隆)ありそう!勘違いしそう、♡ちゃん!
  天然だし!
 
 
てかそういえばアキさんいたのか?
今日は3人だったって言ってたけど…
車の中にいたのかな?
 
 
岩)それか…
  本当に好きなのは♡ちゃんだけど
  アキさんと付き合ってるっていう話か。
N)それクソ野郎じゃん。
直)うーん、勘違いの方が濃厚だなー。
臣)……。
 
 
だよな。俺もそう思う。
 
 
E)だってさ、愛してるって
  ♡ちゃんにしか言ったことない
  みたいなこと言ってなかった?
岩)言ってた!
N)いや、もうさ、会話うんぬんの前に…
  見りゃわかるよ、好きだって。
隆)それ。ほんとそれ。
N)目が言ってたもん、好きだって。
直)それは俺も思った…。
臣)……。
 
 
目も言ってたし…
全身で言ってたよ、♡のことが好きだって。
 
 
♡が泣いた時…
ハルくんの腕は、♡を抱きしめたくて
仕方ないように見えた。
 
でもグッと堪えてた。
堪えて、ほっぺや頭を撫でてたんだ。
 
 
あんな泣きそうな切なそうな表情を浮かべて
愛しそうに♡を見つめて…
 
 
臣)……絶対好きだよ。
 
 
もう確信に変わった。
 
 
健)♡ちゃんどうすんねやろ…。
隆)え?
健)あんな告白されて。
E)え、あれって告白なの?!
健)せやろ!
岩)うーん、まぁ…そうと言えばそうだし…
  違うと言えば言えるような…
臣)……。
 
 
♡もさすがに気付いたんじゃないかな、
ハルくんの気持ち。
 
いくら鈍くて天然でも…
あんなこと言われたら…
 
 
直)うーん、♡ちゃんは
  家族愛として受け取ってるかもなぁ…
N)ええ!
直)お父さんとお母さんの話も出てたし…
  そう思っちゃってもおかしくないかも…
岩)あーー、確かに……。
健)それ鈍すぎるやろ!
隆)鈍いんだよ♡ちゃんは!
健)……せやったな。
隆)そうだよ。
臣)……。
 
 
キングオブ鈍子ではあるけど…
 
 
N)てかハルくん…
  想像以上にイイ男だったな…
岩)俺も思った…
隆)さすが♡ちゃんの初恋の相手…
直)物腰柔らかっていうか…
  めっちゃ優しそうな雰囲気だったよね。
健)普通にイケメンやったわ。
E)でも臣のがカッコイイよ!
臣)そんな慰めいいよ…w
 
 
ハルくんがイイ男ってことは
とっくにわかってるし…。
 
 
臣)てかあいつ何してんだろ。
岩)入ってこないね。
 
 
まさか…
ハルくんに攫われた!?
 
ハルくんの後を追いかけたとか…
 
 
臣)ちょっと見てくる!
健)おう!
 
 
モヤモヤぐるぐるしながら外に出たら…
 
 
♡)……あ、臣くん…。
 
 
♡は入り口のドアにもたれて、
ぽつんと一人で座ってた。
 
ハルくんにもらったマフラーを
ぎゅっと握りながら。
 
 
臣)……何、してんの。
♡)……。
 
 
ほんとは見てたから知ってるけど…、ごめん。
 
 
臣)今着いたの?
♡)あ、…うん…。
  ごめんね、遅くなって…。
臣)なんで入んないの?
♡)……あれ、ほんとだ…、
  私…何してるんだろう…。ごめん…。
臣)…っ
 
 
重症じゃね!?
絶対頭ん中ハルくんでいっぱいだろ!!
 
 
臣)……行こ。
♡)うん…。
 
 
俺は♡の手を取った。
 
 
臣)手、冷たい…。
♡)え…、あ…っ、ごめん。
臣)いや、謝んなくていいけど…
♡)……。
臣)……。
 
 
俺は♡の手を両手で包んで、あたためた。
 
 
♡)……臣くん、あのね…、
 
浦)あー!いたいた!こんなとこに!
  ♡来たら連れて来いって言ったろー!
 
臣)…っ
 
 
このタイミングでまさかの松浦さん。
 
 
♡)あ、すみません、今来たんです。
浦)おう、お疲れーー
  ちょっとトイレ行ってくるから。
  俺な、あそこの席。行っとけ。
♡)え?
浦)あそこのテーブル。
♡)どうして松浦さんのテーブルに
  行くんですか?
 
 
ぶっ…!
お前ほんと松浦さんに容赦ねーな!!
 
 
浦)話したいこといっぱいあんだよ!
  いいから座ってろ。
♡)……はい。
 
 
めっちゃ不満そう!
お前はもっと顔に出さない努力をしなさい!
 
 
臣)じゃあ俺も一緒に行くわ…。
♡)あ…、うん。
 
 
中に入ると、
♡を見つけたTAKAHIROさんが
手を振ってきた。
 
 
T)ごめんね、わざわざ来てくれて
  ありがとう!
♡)TAKAHIROさん、おめでとうございます。
T)誕生日にもLINEくれてたもんね、
  ありがとうね。
♡)いえ。
T)……♡ちゃん、泣いた?
♡)えっ…
臣)…っ
 
 
なんてめざといんだTAKAHIROさん…
さすがすぎる。
 
 
♡)泣いてないです。
  ちょっと目擦っちゃっただけで…
T)ああ、なんだーびっくりしたーw
  登坂っちに泣かされたのかと思ったよーw
臣)……。
 
 
ある意味泣かせました…。
 
 
てか俺、相当余計なこと言ったんじゃね…?
 
♡にあんなこと言わせなければ
ハルくんがあんな爆弾発言をすることも
なかったのに…
 
さっきから♡マジで心ここにあらずだもん。
絶対ハルくんのこと考えてる。
 
 
こんなことなら
愛してるって言われることくらい
放置しとけば良かった…。
 
キスはさすがに放置出来ないけど…
 
 
浦)お、♡ー!こっち来いって!
 
 
トイレから戻ってきた松浦さんに呼ばれて
俺たちはテーブルを移動した。
 
 
浦)お前はなんだ、MV女王でも
  目指してんのか?w
♡)え…?
浦)出まくってるだろ、最近。
♡)……はい。
浦)人のに出るくらいなら
  自分で歌出してMV作ればいいのに。
♡)……。
臣)…っ
 
 
あああ、松浦さんごめんなさい。
この子今、何も耳に入ってないです。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
ハルくんが言ってたことは…
どういうことなのかな…
 
さっきから頭の中は
ハルくんのことばかりで
周りの音があまり入ってこない…。
 
 
えっと…、えっと…、、
ハルくんは…なんて言ってたっけ…、
 
 
臣)松浦さん、すみません。
  ♡今日体調良くないんで先に帰します。
浦)ああ、そうなのか。
  ゆっくり休めよー。
 
 
え…?
 
 
臣)来い。
♡)あ、…っ
 
 
臣くんに手を引かれて
私は立ち上がってテーブルを離れた。
 
……あれ。
私、松浦さんと何話してたんだっけ…。
 
 
臣)◇ちゃんごめん、♡も連れてって。
◇)あ、♡ちゃん!
  うん、一緒に帰ろ!
♡)え…?
◇)あたしも♧さんもそろそろ帰ろうかって
  話してたのー。
  たぶん皆さん朝までコースだろうしw
♡)……あ、うん…。
◇)タクシーで相乗りして帰ろ?
♡)うん…。
 
 
……あれ。
私ここに来てから
どれくらい経ったんだっけ…。
 
 
臣)……ちゃんと…寝ろよ?
♡)……。
臣)ごめんな、無理に呼んで。
♡)ううん…。
 
 
臣くんは少し心配そうな顔で
私を見送ってくれた。
 
私、体調悪くなんかないのに…
心配かけちゃったのかな…。
 
 
◇)♡ちゃん…、大丈夫?
 
 
♧さんが先に降りて二人になると
◇ちゃんが心配そうに私に声をかけてきた。
 
 
♡)大丈夫…って…?
◇)いや、……うーん、
♡)……。
 
 
……どういうことなのかな。
ハルくんはどうして……
 
 
♡)……。
 
 
真っ暗だった空は
少しずつ明るくなってきて…
 
 
……あれ?
私…どうしてベランダにいるんだっけ。
 
どうやって帰ってきたんだっけ…。
 
 
……そうだ。
◇ちゃんとタクシーで…
 
あれ?
その後いつ部屋に入ったのか覚えてないや…。
 
ダメだ、頭にモヤがかかってるみたい…。
 
 
ハルくんに言われたことも
もうハッキリと思い出せない。
 
すごく眠たいんだけど眠たくない…
身体が変な感じ…。
 
 
「♡……!」
 
 
……え?
 
 
臣)♡!!
♡)…っ
 
 
振り向くと、
すごい顔をした臣くんが後ろに立ってた。
 
 
臣)なんでこんなとこにいんだよ!
  寒いだろ!!
♡)…っ
 
 
そういえば…寒いのかな…?
 
 
臣)風邪ひくぞ!中入れ!
♡)…っ
 
 
私は臣くんに手を引かれて
ソファーに座らされた。
 
 
臣)帰ってきて…そのまんまじゃん…。
♡)……。
 
 
ほんとだ…。
コートもマフラーも…そのままで…。
 
 
臣)身体、冷たい…っ
♡)…っ
 
 
臣くんにぎゅっと抱きしめられて…
そのぬくもりで、自分の身体が冷えてたことに
気が付いた。
 
 
臣)こんなんなるまでなんで外にいたの。
♡)……。
 
 
わからない。
気付いたらベランダにいて…
 
 
臣)風呂入ってあったまれ。
  用意してくる。
 
 
臣くんはそう言って私から離れていった。
 
 
 
……
 
 
 

 
 
 
臣)♡、仕事だろ。起きろ。
♡)……。
臣)遅刻すんぞ。起きろ。
♡)……。
 
 
頭がぼーっとする…。
 
 
臣)ほら。
♡)…っ
 
 
臣くんに抱き起こされて
ぎゅーってしてもらってる。
 
あったかい…。
 
 
♡)もう…朝…?
臣)うん。
  あんまり寝れなかったと思うけど。
♡)……。
臣)会社行く用意しろ。
  大丈夫か?
 
 
そう聞かれて、頷いたのに…
 
私が次に目を覚ましたのは、
会社の医務室だった。
 
 
 
 
 
ー続ー

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