[323]岩田家(岩&◇Side)

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緊張する!
緊張する!!
緊張する!!!
 
 
◇)ふぅぅぅ……
岩)リラックスリラックス!w
◇)ふぅぅぅ……
岩)緊張しすぎだから!w
◇)だって!!
 
 
今日はいよいよ岩田家にお邪魔する日。
 
もう朝から緊張しっぱなしで
正直LIVEも全然まともに見れなかった。
すまん剛典。
 
 
岩)ほら、着いたぞ。
 
 
ひぃぃぃ!着いてもーたー!!
 
 
岩)荷物貸せ。
◇)あ、ありがと。
岩)一泊なのになんでキャリーなのw
◇)だって…重たいの持つのやなんだもん。
  だからあたし出張とかも
  いつもキャリーだよ。
岩)引けるから?w
◇)うん。
 
 
…って、そんな話はどーでもよくてーー!!
 
 
やってきました、ドアの前。
 
 
ガチャッ。
 
 
◇)え!ピンポンしないの!?
 
 
もう入るんですか!?
 
 
岩)自分ちなのにするかよw
  鍵持ってるもんw
◇)えええ!!
 
 
こ、心の準備が…!!
 
 
岩)つーかさ、大丈夫だってw
  ここに初めて来る人で
  ここに辿り着くまでに驚かなかったの
  お前だけだからw
◇)へ?…ど、どゆこと?
岩)だから、そのへんとか、このへん?
◇)は?そのへん?このへん?
 
 
この林とか…門とか??
何に驚くの?
本当は何か仕掛けがあったとか?!
 
 
岩)お前んちもこんな感じ?w
◇)へ?
 
 
うち…は、この林が竹なくらいで
さほど違いは…
 
 
岩)ま、いいや、入ろw
◇)ちょ、ちょっと待って!心の…
 
母)あらあら、おかえり。
 
 
ひぃっ!!
 
 
岩)ただいまー。
 
 
待って!
置いてかないで!!
 
 
◇)あ、あの…、
母)◇ちゃん、いらっしゃい♡
  遠いのに来てくれてありがとうね♡
◇)////
 
 
なんて素敵なお母様…。
 
 
◇)改めまして、◇と申します。
  先日はちゃんとしたご挨拶が出来ずに
  すみませんでした。
  本日は…
岩)かたいかたい〜〜w
  ほら、入れってw
 
 
ちょっと!!
人の挨拶を邪魔しないでーー!!
 
 
母)くすくすw
  さ、上がって?
◇)お邪魔いたします///
 
 
ぺこりと頭を下げて玄関に入った。
 
 
岩)めっちゃ腹減ったぁ〜〜!
  腹減って死にそう!!
母)あらあらw
岩)風呂も入んないで
  急いで帰ってきたんだよ。
母)あら、じゃあお風呂が先の方がいい?
岩)いや、腹減ってんだってw
  飯が先!食べないと死ぬ!
母)はいはいw
 
 
ちょ、ちょ、ちょ!
あんたは実家だから
めちゃめちゃ寛ぎモードだけど
あたしはど緊張してんだからね!?
 
そこんとこわかってる?!
ちゃんとフォローしてよ!?汗
 
 
岩)◇、荷物ここ置いとくぞー。
◇)あ、ありがと…っ
 
 
はっ!!
 
 
◇)あ、あの、改めまして
  ◇と申します!///
  本日は…
 
 
リビングに入ると
一番奥にお父様の姿が見えて
慌てて挨拶しようとすると…
 
 
岩)だからかたいってーーw
  初めましてでもないんだからw
 
 
また邪魔してきたーー!!
あとでどつくぞお前ーー!!
 
 
◇)前回は一瞬だったから
  初めましてみたいなものでしょ!///
岩)えー?
父)◇ちゃん、いらっしゃい。
◇)はっ!こんばんは!
  夜分遅くに恐れ入ります!
  本日は…
父)どうぞゆっくりしていってください。
  はははは。
◇)……///
 
 
あたしの言葉を遮ってそう言ったお父様は
緊張しないでって言ってるみたいな
優しい笑顔。
 
 
岩)適当に座んなよ。
◇)!!!
 
 
適当とは!?
 
この広いテーブルの一体どこに座れと?
 
 
◇)!!!
 
 
てゆーか!!!
 
 
◇)な、何このテーブル…素敵…///
 
 
はっ!
 
 
◇)あれも…っ、素敵…っ
  はっ…!あれ…も…っ!///
 
 
緊張で周りが見えてなかったけど
よく見てみると
家の中はヨーロピアンな家具ばかりで…
 
 
◇)ほわぁぁぁ///
 
 
めっちゃあたし好み!!
 
 
岩)ん?好き?こういう感じ。
◇)大好き!大好きすぎるっ!///
  もう住みたいくらいっ!♡♡
岩)ぷっ、あはははっw
◇)はっ…
 
 
あたしってば…
「住みたいくらい」は言い過ぎじゃない!?
 
なんかそれって…
今すぐ嫁に来たいですみたいな
とんでもないアピールに聞こえてたり…
 
ひぃぃぃ!
なんてことを言ってしまったんだー!!
 
 
◇)あ、あのっ…、
  こんな素敵な空間だったら
  とっても癒されるなぁって…///
 
 
慌てて誤魔化したけど
お父様もお母様も
大して気にしてなかったみたいで…
 
 
母)ふふふ、ありがとう♡
 
 
なんてニッコリ笑われちゃった。
恥ずかしや…///
 
 
母)私たちの趣味でね、
  家の家具はヨーロッパのものが多いのよ。
◇)そうなんですね!
 
 
……はっ!しまった!
家具に見惚れて、手土産を渡すのを忘れてた!
 
 
◇)あの、お母様、すみません。
  これ、つまらないものなんですが…
母)あらあら!わざわざありがとう。
  気を遣わせちゃってごめんなさいね。
◇)いえ!
母)あら、これ!
  最近話題になってて中々手に入らない…
  ちょっと、お父さん!
  ◇ちゃんに戴いたわよ、ほら。
父)おお…!わざわざありがとう。
◇)いえ!!
 
 
あたしがペコペコ頭を下げてると
剛典が呑気に後ろから
「中々手に入らないやつだったの?」
なんて言ってる。
 
Jさんのおかげで買えたんだからー!
…とは言わないけど。
 
 
岩)マジで腹減った…。
母)はいはいw
  ほら、食べましょ。
岩)うおおお〜!美味そぉ〜〜!
 
 
テーブルに並べられた美味しそうなお料理に
剛典は大喜び。
 
やっぱりお母さんの手料理って嬉しいのかな?
可愛いな。
 
お父様とお母様の向かいに
剛典と並んで座って、
みんなで手を合わせて、食事を始めた。
 
 
母)ちゃんと噛んで食べなさいよ?
岩)うん、噛んでる。
父)すごい勢いだな…w
岩)ほんとに腹減ってたんだもんw
  三公演終わってマジでへとへとだよ…。
母)お疲れさま。
父)身体大丈夫か?
岩)うん、なんとかw
◇)……。
 
 
そっか、剛典は三公演明けだもんね。
そりゃ疲れてるよね。
 
 
母)明日も仕事なんでしょ?
岩)うん、昼過ぎから。
父)本当に休みないんだな。
岩)ゆっくりできなくてごめんね。
父)いや、いいんだよ、頑張りなさい。
岩)ありがとう。
母)◇ちゃんも…
  こんな弾丸スケジュールで来てくれて
  本当にありがとうね?
◇)いえ!!
  お招きいただきありがとうございます!
  嬉しいです!!
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
俺が帰ってくるとお袋が必ず作ってくれる
牛肉のアスパラ巻きときんぴら。
 
めっちゃ美味しい。俺の大好物。
 
 
岩)はぁ、ほんと美味ぇ。
 
 
バックバク食べてる俺の横で、
借りてきた猫みたいになってる◇。
 
 
母)◇ちゃんはどう?お口に合うかしら?
◇)はい!大変美味しゅうございます!
岩)ぶっww
  
 
お嬢様モードの◇に思わず吹き出すと
テーブルの下でこっそり足を蹴られた。
 
お袋ー!親父ー!
こっちが本性ですー!
 
 
◇)お料理もとっても美味しいですし、
  食器も…どれも素敵ですね///
母)ありがとう♡
  これも私たちの趣味なの♡
◇)お父様とお母様は
  ヨーロッパがお好きなんですか?
岩)ぶっww
 
 
ダメだ、やっぱり我慢できない、
面白すぎるw
 
 
岩)お父様お母様って何!w
◇)…っ
岩)いつも通りでいいから!w
◇)いきなりお父さんお母さんと
  お呼びするのも失礼でしょう?
 
 
◇はニッコリ笑いながら
また俺の足を蹴ってきた。
 
余計なこと言うなって顔に書いてある。
 
 
母)そうなの、私たちヨーロッパが
  本当に大好きで。ねぇ、お父さん♡
父)ははははw
岩)二人で旅行行きまくってるもんね。
◇)わぁ…素敵ですね♡
母)実はね、年明けにも行く予定なの♡
岩)はぁ?また行くの!?w
父)ああw
岩)ほんと好きだねw
 
 
長距離フライトも
そろそろ身体に辛いだろうに。
 
 
岩)親父とお袋の一番のオススメはさ、
  コモ湖なんだって。
◇)イタリアの?
母)あら、◇ちゃん知ってる?
◇)はい♡
  スイスとの国境近くの…
  アルプスの麓にある湖ですよね?
母)そうそう!♡
◇)確かミラノから一時間くらい…?
父)よく知ってるね。
  行ったことあるのかい?
◇)いえ。でも以前から
  行ってみたいと思っている場所の
  一つなんです。
母)あらー!本当に?♡
岩)……。
 
 
さすが◇。
 
俺、昔の彼女にコモ湖の話したら
「は?それどこ?日本?」って聞かれたし…。
 
 
母)本当に素敵な場所だから
  いつか見に行きなさいって
  剛典にも言ってるのよ。
父)うん。
岩)なんでお前は行ってみたいの?
◇)え?
  だって…素敵な避暑地だし…
  ヴィラ・バルビアーネッロを
  見てみたいんだもん…。
岩)え、それ知ってる?
◇)え?剛典も知ってるの?
岩)うん。スターウォーズで…
◇)アナキンとパドメが結婚式したところ!!
岩)そうそう。
◇)だから行ってみたいのー!♡♡
岩)え、お前もスターウォーズ好きなの?
◇)好きに決まってるじゃん!
  特にエピソードⅡが好きなんだから!!
岩)おおお!
  俺もスターウォーズ好きなんだって!
◇)え、ほんと!?
 
 
…って盛り上がりかけたところで、
◇はハッとして、咳払いをした。
 
 
◇)お食事中に失礼しました。
岩)いやいや、だからそのお嬢様モード
  もういいから!w
◇)は?モードって何!
  変なこと言わないでよ!
岩)猫かぶんないでいつも通りでいいからw
◇)猫なんてかぶってないし!
  …はっ
母)くすくす、仲良しねぇw
父)あはははw
◇)////
 
 
親父とお袋は笑ってるのに
◇は顔を赤くしてまた俺を蹴ってきた。
 
 
母)剛典と◇ちゃんは
  いつもこんな感じなのね♡
◇)いえ、剛典さんは…
岩)剛典さん?!
 
 
俺は思わずお茶を吹きそうになって、
慌てて飲み込んだ。
 
 
岩)剛典さんて何!ww
 
 
ゲラゲラ笑う俺の隣で
◇はまたニッコリ笑って俺を蹴ってきた。
 
 
◇)お父様とお母様の前よ?
  いつもみたいに呼ぶなんて
  失礼でしょう?
岩)…っ
 
 
笑ってるけど怖いです…。
 
 
母)普段はなんて呼ばれてるの?
岩)え、普通に「剛典」。
母)あら、じゃあいつも通りでいいわよ
  ◇ちゃんw
父)うんうん、気にしないで。
岩)そうだよ。
 
 
てか俺なんて
樹さんと花恵さんの前で
普通に「◇」って呼んじゃってたじゃん。
 
良くなかったかな…?汗
 
 
母)で、なんて言いかけたの…?
◇)あ、ええと…///
  剛典…は…私にとって…
  お互い理解し合えて
  支え合いながらお互いを高め合える
  素晴らしい相手なんです…
  って言おうとしたんですけど…、、
  いつもこんな感じです///
岩)開き直った!w
◇)だって!///
父)ははははw
◇)いつもこんな言い合いしてます///
母)まぁ!w
岩)でもさっきのも嘘じゃないじゃん。
◇)え?
岩)お互い理解し合えて…、ってやつ?
  いっつもアホな言い合いしてるけど…
  俺もそう思ってるし。
◇)……///
父)仲が良い証拠だなw
母)そうね♡
 
 
親父とお袋に嬉しそうにそう言われて
俺はなんだか照れくさいのを誤魔化すように
ご飯をおかわりした。
 
 
母)◇ちゃんもいっぱい食べてね♡
◇)はい、ありがとうございます//
母)剛典は普段はどうしてるの?
  ちゃんと食べてる?
岩)食べてるよw
母)忙しそうだから心配で。
岩)ちゃんと食ってるし…
  時間が合う時は◇が作ってくれる。
母)あら!
岩)てか朝飯は毎日作ってくれてるし。
母)まぁ!
岩)弁当も作ってくれるし。
母)あら!!
父)◇ちゃんは料理が得意なのかい?
◇)ええと、好きです。
岩)得意だよ、めっちゃ美味いもん。
母)あらーー!素敵!!
岩)それに最近さ、
  栄養とかも調べて作ってくれてんの。
◇)え、ちょっ、なんで知ってんの!?///
岩)あ、
 
 
やべ。
俺が知ってること、◇は知らないんだった。
 
俺がパソコン見ちゃって気付いただけだから。
 
 
◇)剛典には言ってないじゃん!///
岩)……でも知ってた。
◇)////
 
 
恥ずかしそうに口を尖らせる◇に
お袋は優しく笑いかけた。
 
 
母)剛典のために…ありがとう、◇ちゃん。
父)本当にありがとう。
◇)いえ、///  
 
 
よし、◇の株をもっと上げておこう!
 
 
岩)◇さ、ほんとなんでも出来るし
  すごいんだよ。さすがミス東大。
母)まぁ!◇ちゃん、ミスだったの?
父)すごいなぁ!
◇)…っ
 
 
あれ?
◇の顔が笑ってるけど、また怖い。
俺、余計なこと言った?汗
 
 
母)本当に才色兼備、秀外恵中なのねぇ。
父)うん。その通りだ。
◇)いえ、恐縮です。
母)でも、ミスといえば…
  あなたもミスターコン出てたじゃない。
◇)え?剛典が?
岩)ああ、うんw
◇)えー!初耳!!
岩)友達に推薦されてね。
◇)そうなんだ!!
岩)でも俺、超浮いてたよ?w
◇)え、なんで?
岩)だって俺、今みたいな
  こんなんじゃなかったからさ。
  色は黒いし髭は生えてたしw
◇)そっか…!
岩)ま、あれはJADEの知名度を
  上げたかっただけだから
  いいんだけどさw
◇)あ、ダンスサークルだっけ?
岩)そうそう。
 
 
なんて昔話に花を咲かせながら
腹一杯まで飯を食って、
俺はそのまま風呂に直行した。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
ど、どうしよう。
 
剛典ってばあっさりお風呂に行っちゃって…
あたしはお父様とお母様と
リビングに残されて…ドキドキドキ。
 
 
母)じゃあ◇ちゃん、お部屋案内するわね。
◇)あ、はい!ありがとうございます!
 
 
荷物を持って階段を上がって。
 
 
母)ここのお部屋、自由に使ってね♡
◇)わぁぁぁ♡
 
 
ベッドが可愛い…っ!!
わ、わ、家具も…全部!!
 
 
◇)ここもヨーロッパテイストなんですね!!
母)ふふ、そうなの♡
  気に入った?
◇)はい!とっても♡
母)あらー、良かったー♡
 
 
きゃほーーー!♡
って心の中で叫びながら
とりあえず荷物を置いて、部屋を出た。
 
 
母)洗面所もお風呂も2階にあるもの
  なんでも好きに使ってちょうだいね。
◇)はい、ありがとうございます。
 
 
それからまたリビングに戻ると、
ワンちゃんの写真が目に入って
あたしは思わず立ち止まった。
 
 
◇)可愛いミニチュアダックス…。
母)その子はね、クリスティン。
  クリちゃん♡
◇)クリちゃん…。
母)そう。3年前に死んじゃったんだけど…。
◇)えっ…。
母)剛典が小学校の頃から飼っててね、
  毎日お兄ちゃんと散歩して
  餌やりもしてたのよ?
◇)そうなんですね…。
 
 
あ、こっちには子供の頃の写真もある。
 
 
父)イギリスのことわざ、知ってるかい?
◇)え?
父)「子供が生まれたら犬を飼いなさい」
  っていう。
◇)あ、はい。聞いたことあります。
 
 
お父様は優しく笑って、教えてくれた。
 
 
父)子供が生まれたら犬を飼いなさい。
  そうすれば、子供が赤ん坊の時、
  子供の良き守り手となるでしょう。
  子供が幼少期の時、
  子供の良き遊び相手となるでしょう。
  子供が少年期の時、
  子供の良き理解者となるでしょう。
  そして子供が青年になった時、
  自らの死をもって
  子供に命の尊さを教えるでしょう。
◇)…っ
父)みんなクリスティンを家族のように
  可愛がっていて…
母)あらやだ、◇ちゃん…っ
◇)ごめんなさい…っ
 
 
あたしはこぼれてきた涙を
慌てて拭った。
 
あたし…ダメなんだよ。
動物とか家族の話って、絶対泣いちゃう。
 
 
母)もう、お父さん…
父)ああ、ごめんごめんw
◇)あ、違うんです!ごめんなさい!
 
 
慌てて謝るあたしに
お父様は優しく笑いかけてくれて…
そのまま写真を見つめた。
 
 
父)一緒に過ごした時間は
  かけがえのない宝物だから。
  それは人間でも動物でも一緒だ。
  私たちの心にも、剛典の心にも
  優しく残ってるんだよ。
◇)…っ
 
 
あたたかい笑顔。
 
きっとこの子はこのお家で育てられて
本当に幸せだったんだろうなぁ…。
 
 
母)ほら、お父さん!
  ◇ちゃんにアレ見せてあげましょ!
父)おお、そうだなw
 
 
泣いてるあたしを励ますように
お母様が背中を叩いてくれた。
 
 
母)ほら、こっち来て、◇ちゃん♡
◇)はい。
 
 
お二人に連れられて
廊下を真っ直ぐ進むと、
途中の部屋でピアノを見つけた。
 
 
◇)ピアノは…お母様が?
母)あ、これはね、剛典も弾いてたのよーw
◇)ええ?!
 
 
剛典がピアノ!?
初耳なんですけど!!
 
 
母)ほんの少しだけどねw
◇)ピアノ弾けるんだ…すごい…。
母)確かカノンまでは弾けてたんだけど、
  エリーゼのためにが難しくて
  苦戦してたのよねぇ…w
  ねぇ、お父さん?
父)ああ、そうだったなw
 
 
そういえば剛典って歌上手いって
♡ちゃんが言ってたよね!
あたしは聞いたことないけど。
 
ピアノ習ってた人は全員歌が上手い説が
あたしの中にあるんだよな。
 
いいなぁ…
あたしもピアノやってたら
もっと歌も上手かったのかなぁ。
 
 
とか考えてたあたしの目に
飛び込んできたのは…
 
 
◇)!!!
 
 
なんじゃこりゃーー!!!
 
 
母)ね?すごいでしょう?w
父)ははははw
 
 
な、な、何これ。
 
 
◇)あたしより…大きい…っ
父)ははははw
  2メートルくらいあるからなぁw
母)剛典が中学の時に作ったのよ♡
◇)ちゅ、中学生で…これを!?
母)そう。労作展っていうのがあって…
  確かこれは3ヶ月くらいかけて
  夢中で作ってたわw
◇)す、すごい…。
父)剛典は美術が得意だったからなぁ。
◇)えっ!
 
 
美術が得意!?
そんなの初耳なんですけど!!
あんなにガサツなのに?!
 
 
◇)すごい…
  こんなところまで細かく出来てる…。
 
 
目の前の宮本武蔵をマジマジと眺めながら
初めて知る剛典のいろんな話に
驚きの連続だよ。
 
 
母)この木刀もね、手作りなのw
  木を削って作ってたわー。
◇)これも!??
 
 
あやつ!すごすぎる!
一体何者!!
こんな才能を隠し持っていたなんて…!!
 
 
◇)これは学校でも
  びっくりされたでしょうね…
母)そう言ってたわw
 
 
こんなすごいの作る奴、絶対いないよ。
 
 
母)でも剛典はね、昔は身体が弱くて…
◇)え!?
 
 
こんなどでかい宮本武蔵を作る男が!?
 
 
父)よく熱を出しては
  お前が病院に連れていってたもんなぁ。
母)ええ。
 
 
病弱な剛典…!?
想像できん…!!
 
 
母)でも外を駆け回るようになってからは
  どんどん身体も強くなってね。
◇)そうだったんですね…。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
風呂を上がってリビングに戻ると、
誰もいなくて。
 
 
岩)あれ?
 
 
みんなどこ行った?
 
 
岩)◇ー?
 
 
……あ、笑い声が聞こえる。
 
 
岩)……何楽しそうに話してんの、4人で。
 
 
こんなところにいたか。
 
 
◇)4人!?
岩)武蔵と。
◇)この人、人数に入ってんの!?w
父)ははははw
母)剛典の力作だから
  見せておかなくちゃと思ってw
岩)どう。すごいっしょ。
◇)すごい!びっくりした!w
 
 
お袋はわかるけど
親父まで一緒に楽しそうに話してるのが
俺はなんか嬉しくて。
 
 
◇)ひゃっ、なに?//
岩)んーんw
 
 
すっかり仲良くなってんじゃんw
 
◇の頭をわしゃわしゃ撫でたら
大きな瞳がパチパチと俺を見上げた。
 
 
◇)どうして宮本武蔵にしたの?
岩)んー?
  俺、戦国武将好きなんだよねー。
◇)そうなの??
岩)うん。
父)大河ドラマもいつも一緒に
  観てたもんなw
岩)てかそれしか観せて
  くれなかったじゃん!w
母)あら、アニメも観てたじゃない。
 
 
受験が始まる前まではね…。
 
 
◇)大河ドラマの影響で好きになったの?
岩)うん、それはあるかもw
◇)そっかw
  カッコいいね、これ。
  でも自分の家にいたら怖いかも。
岩)なんでだよ!w
  守ってくれそうじゃん!w
◇)夜中とかには怖くて見れないよ!w
父)ははははw
 
 
それから◇も風呂に入りに行って
俺は親父とお袋とリビングでまったり。
 
 
岩)さすがにもう緊張取れたかなぁ?w
父)そんなに緊張してたのかい?
  ◇ちゃんはw
母)剛典だって◇ちゃんのご両親に
  挨拶した時は緊張したでしょう?
岩)……うん、確かに。
母)それと一緒よw
岩)そっか…w
 
 
そうだよな。
俺は自分の実家だからこんな寛いでるけど
あいつはあの日の俺みたいなもんか。
 
 
父)しっかりしたお嬢さんだな、彼女は。
母)ほんとにねぇ。
岩)うん…。
  ほんとしっかりしてるし…
  面倒見もいいし…
母)あ、そうよね、長女だものね、
  ◇ちゃん。
岩)うん。
  弟妹の面倒もそうだし、
  友達とかも。
  困ってる人はほっとけないんだよ、
  あいつw
 
 
それで俺も初めて会った時に
助けてもらったわけだけど…。
 
 
母)やっぱり上の子は自然と
  そうなるのよね。
岩)ほんと頭もいいし
  なんでも出来ちゃうし。
母)ミス東大だものねw
岩)そうだよ、ほんとすげーよw
父)ははははw
 
 
まぁ…
そんなしっかり者なのに
俺にだけは甘えてくるところが
すっげぇ可愛かったり…
 
なんてのは死んでも言わないけど。
 
 
父)才色兼備なのはもちろん、
  とても優しい子だと思うよ、彼女は。
岩)…っ
母)お母さんもそう思うわ。
岩)……うん、優しいよ。
 
 
いつも思ってる、感じてる。
 
 
母)◇ちゃんは剛典のこと知ってたの?
  出会った時。
岩)あー、うーん、名前くらいは?
  ほとんど知らないようなもんだったから
  DVDとかどっさり渡して
  覚えてもらったw
母)あらw
父)ははははw
岩)今ではすげぇ詳しいよw
  俺の仕事にも理解があって
  すげぇ応援してくれてるし…
 
 
アプリまで作ってくれちゃうし。
ほんと頼もしいもんなぁ…。
 
 
岩)◇はさ、ちゃんと俺を俺として
  見てくれるんだ。
  だから俺は◇の前だと
  素でいれるっていうか
  すげぇ自然体でいられる。
父)うん。そういう相手は大事だな。
母)見てたらわかるわよ、
  あなたがすごく自然に笑ってるから。
岩)そう?//
 
 
そう言われるとなんか照れるけど。
 
 
岩)なんか、べたべたした恋愛じゃなくて
  ほんとにいい関係性なんだ。
父)彼女もそう言ってたな。
母)ええ。
父)彼女は自立した女性なんだろう。
母)そうね。
父)あんないいお嬢さんと
  お付き合いさせてもらって…
  大事にしなさい。
岩)……うん。
母)剛典がこんな風にちゃんと
  お付き合いしてる相手を
  私たちに紹介してくれるのも
  初めてだしねw
岩)それは…
  連れてこいってうるさいから//
母)ふふふふw
 
 
確かにこんな風にちゃんとした形で
連れてきたのは初めてだし
あんな嬉しそうに話してる親父とお袋も
初めて見た。
 
……なんか俺まで嬉しいな。
 
 
◇)お風呂ありがとうございました。
岩)あ、おかえり。
母)お湯加減、大丈夫だった?
◇)はい、ありがとうございます///
父)二人とも疲れてるだろう。
  そろそろ休みなさい。
岩)んー、じゃあそうしよっか。
◇)お父様お母様ありがとうございます。
  おやすみなさい。
母)おやすみ、ゆっくり休んでね♡
 
 
それから二人で二階へ上がると…
 
 
岩)へ?!
 
 
すっと客間のドアを開ける◇。
 
 
岩)え、俺の部屋じゃないの?
 
 
あれ、◇の荷物もここにある。
 
 
◇)ここ使っていいって言われたよ♡
岩)え、いや…でも…、、
  ……一緒に寝ようよ。
  せっかく来たのに。
◇)剛典疲れてるでしょ?
  ゆっくり休みなよ。
岩)いや、だから…
 
 
一緒に寝たいんですけど。
 
 
岩)別に俺、なんもしないよ?
◇)は?なんの話?//
岩)さすがに実家だし、寝るだけだって。
  来いよ。
◇)やだ!
  あたしこの可愛いベッドで寝たいもん!
岩)はぁ?!
◇)見てこのベッド!このお部屋!
  まるでヨーロッパに泊まりに来たみたい!
  あたしは今日はここで寝たいのっ!♡
岩)…っ
 
 
なんてこった。
 
 
◇)じゃね、おやすみっ!♡
 
 
バタン。
 
 
岩)……。
 
 
部屋を閉め出されて…
仕方なくしぶしぶ自分の部屋に向かうと…
 
 
母)くすくすw
 
 
後ろからお袋の声が聞こえて…
 
 
母)おやすみ、剛典ww
岩)…っ///
 
 
あ、タオル替えてくれてたのか。
 
今の会話、聞かれたよな?
 
 
ふん、いいですよ!
一人で寝ますよーだ!!///
 
 
 
 
 
 
ーendー

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