[311]彼女のフリ(MちゃんSide)

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男)もう帰っちゃう…?
M)どうしようかなぁ…。
男)もう一回、ダメ…?///
M)まだしたいの…?///
男)うん///
M)……いいよ?♡
男)////
 
 
相性も良かったし、
一回も二回も変わらない。
 
照れたフリをして頷けば、
興奮したように私にキスをしてくる。
 
 
M)ね、すっごく上手…///
男)え?!///
M)気持ちいい…///
男)////
 
 
うっとり呟けば、
嬉しくなっちゃったのか
すごく頑張ってくれて。
 
彼は私を朝まで離さなかった。
 
 
男)また会える…?
M)うん、会えたら嬉しいな♡
男)……まじで可愛い///
M)えへへ♡
 
 
男なんて簡単。
 
こうしてぶりっ子して甘えれば
大体は喜ぶんだもん。
 
 
ホテルでシャワーを浴びて
家に帰って着替えて。
 
ちょっと腰が痛いなぁなんて思いつつ
バッグを肩からかけて、駅に向かった。
 
 
ああ、朝日が眩しいなぁ。
 
 
……どうしてだろう。
 
イケメンと一夜を過ごして
相性だってすごく良くて
 
前の私ならテンション上がってたはずなのに
最近はあんまりなの。
 
 
「私は…どんな臣くんも、大好き///」
 
 
ふと思い出したのは、昨夜の先輩。
 
 
「いいなぁ…」って
思わず本音が漏れるほど、先輩は可愛い。
 
 
登坂さんに恋をして、
たくさん愛して愛されて、幸せそうなのが
いつも伝わってくる。
 
 
そんな先輩のそばに、いつもいるから…かな?
 
恋愛に期待なんてしてなかった私が
羨ましいって思っちゃうのは。
 
 
 
……
 
 

 
 
 
私の父親は私が小学校に上がる前に
女を作って逃げた。
 
私たちにたくさんの借金を残して。
 
 
お母さんは借金返済と
子供3人を育てるために、夜の仕事を始めた。
 
それは一言で言えば簡単だけど、
相当大変な生活だったと思う。
 
 
でも、お母さんの才能なのか、なんなのか、
結果的にはそれが上手くいって
今は自分のお店を持ってる。
 
お姉ちゃんも妹もホステスをしてて、
お母さんの血なのか、二人とも売れっ子。
 
 
お母さんの口癖はいつも
「男は絶対に浮気する。信用するな。」
で…、
 
お姉ちゃんの口癖はいつも
「男なんてただの金ヅル。」
だった。
 
 
そっか、そうなんだ。
まともな恋愛なんてこの世に存在しない。
恋愛なんてくだらない。
 
そう割り切ったのは中学生の頃だったかな。
 
 
だったら別にどうでもいいやって
興味本位で初体験を済ませて。
 
Hってこんなもんかー、って…
その後もいろんな人と身体を重ねた。
 
男友達でも、誰でも。
 
 
気持ち良ければそれでいいし、
好きになっても浮気されるなら
最初から期待なんてしない。
 
間違っても父親みたいな男には
引っかかりたくない。
 
 
将来は相性が良くて
お金持ちな人と結婚できたら理想だな。
 
そう思って、合コンにも行きまくってた。
 
 
私はそこまで可愛くないし、
頑張って中の上レベル。
 
それでもぶりっ子して男ウケを狙ってれば
いくらでも男が寄ってきた。
 
 
だからもうこのキャラが定着してるんだけど…
そのせいで同性からやっかまれることも
しばしば。
 
 
「あの子男の前で態度変わるじゃんw
 うざいよねー。」
 
「典型的なぶりっ子!w
 騙される男もバカだよね〜〜」
 
 
入社したての頃も
同期に陰口叩かれてて…
 
 
「言いたいことあるなら
 陰で言わないで直接言いなさいよ!
 人の悪口言ってる暇あったら仕事して!!
 それにね!!
 Mちゃんはぶりっ子なんじゃなくて
 ちょっと変なだけなんだから!!
 でもすっごくいい子なんだから!!」
 
 
先輩が私を庇ってくれた時は、驚いた。
 
 
可愛い人や綺麗な人って
その分ちやほやされて生きてきてるから
 
周りを見下してたり
自分の容姿を鼻にかけてたり
性格悪い女が多いと思ってたのに、
先輩は違ったんだもん。
 
 
すごく前のことだから
先輩はもう覚えてないかもしれないけど…
 
どうして私のこと「いい子」なんて
言ってくれたんですか?
ってその後聞いたら…
 
 
「Mちゃんは仕事は一生懸命で丁寧だし、
 とってもマメでしょ?
 そういうところしっかりしてて
 偉いなぁって思ってるんだよ。」
 
 
って言ってくれたんだ。
 
入ったばっかりなのに
私のことすごく見てくれてるんだ、って…
嬉しくて泣きそうになった。
 
 
「私、ぶりっ子ですよ?」って言ったら
 
「ぶりっ子っていうか…
 ちょっと変だなとは思うけど、
 別にそれで仕事に支障があるわけじゃ
 ないから。」
 
ってビシッと言われて。
 
 
ちなみに先輩は、
男の人がいると私がクネクネするのが
「ちょっと変」って思ってたんだって。
 
おかしーーw
 
 
それから私は、先輩のファンになって。
 
私が「先輩」って呼んで
慕えば慕うほど
先輩は「変なの」って不思議がってたっけw
 
懐かしいなぁ。
 
 
今ではそんな先輩の
マネージャーをしてるなんて
自分でもびっくり。
 
でも、私ほど適任はいないと思うんだ。
 
 
先輩のことが大好きで
先輩の魅力を十二分に理解してて
それをあらゆる手法で売り込んでいく。
 
私しかいないでしょ、そんなの。
そこは自信を持って言えるもんね。
 
 
J)あ、Mちゃん。お疲れさま。
M)あ、お疲れさまです♡
 
 
午前の仕事を終えて、
海璃ちゃんと一緒にJさんとTさんを
ランチに誘いに行こうとしたら
後ろから声をかけられた。
 
 
M)今日は二人で出てたんですかぁ?
J)うん。
T)今戻ってきたとこ。
M)ランチ行きましょうよー♡
J)いいよーw
 
 
海璃ちゃんが少しでもTさんと話せるように
私は最近、スッとJさんの隣に並ぶ
癖がついた。
 
 
J)あれ?腰痛いの?
M)えっ…
J)そんな歩き方に見えたから。
M)いえ、そんなことは。
 
 
さすがJさん。鋭い。
 
 
J)夜遊びしてるなー?
M)してませーん♡
J)嘘つきw
M)Jさんほどはしてません♡
J)アイタタw
 
 
なんて、ふざけて笑って。
 
あーあ、カッコイイなぁJさん。
こんな人をお父さんとか言って
あっさり振っちゃう先輩ってほんと贅沢。
 
でも先輩だから許されるんだよなぁ。
 
 
M)そういえばJさん、
  お見合いの話はどうなったんですか?
J)ああ、今日母親が出てきてるから
  断るつもり。
M)東京来てるんですか?
J)うん。
M)ふーん…
 
 
どんな人なんだろう、Jさんのお母さん。
お金持ちのマダムだもんねぇ…。
 
 
M)私が彼女のフリしましょうかー?♡
J)え?
M)なーんて。
  私じゃ意味ないか。
  先輩くらいの人じゃないと。
J)……。
 
 
お見合い相手もきっと
どこかのお金持ちのお嬢様なんだろうなぁ。
 
 
T)じゃあジャンケンして決める?w
海)いいですよぉ?///
 
 
ちらっと後ろを見れば
Tさんと海璃ちゃんは仲良さそうに話してて。
 
 
M)いいなぁ…。
 
 
あ、またぼそっと本音が漏れちゃった。
 
 
M)時間の問題ですよね、後ろ。
J)え?……ああ、w
  そうだねぇ。
  海璃ちゃん頑張ってるしねぇ。
 
 
頑張ってTさんほどの男を堕とせるなら
私も頑張るんだけどなぁ。
 
 
J)ん?どうしたの?
M)私は頑張って中の上レベルだからなぁ…
  って。
J)何それ、w
 
 
Jさんはクスクス笑って私を見た。
 
 
M)冷静に総合分析した結果ですよ。
J)へぇ?
M)例えば、ほら。
  先輩とかKさんは何もしなくても
  上の上。特上です。
J)うんうんw
M)私は普段はほんと並。中の中。
  頑張って女子力高めてやっと中の上。
J)随分と自己評価低いんだね?
M)え?
 
 
Jさんは優しく笑って
私の背中に手を添えた。
 
 
……Jさんってほんと
女の扱いをわかってるよなぁ。
 
褒め上手だし、慰め上手だし、
とにかく空気が読めるし、
大人の色気と余裕がいつも漂ってる。
 
 
J)ん?
 
 
じっと見つめてたら
優しく微笑んでくれちゃうし。
 
 
M)Jさんと夜遊びしたいなぁって
  思ってたんです♡
J)あはは、それは光栄です♡
 
 
ほらね、こんなサラリとかわしちゃうし。
 
いいのいいの。
JさんやTさんクラスの男が
私なんて相手にするわけないって
わかってるから。
 
 
J)どうなの、姫のマネージャーは順調?
 
 
お店に入ってランチを注文し終えると
Jさんがニッコリ笑って聞いてきた。
 
 
M)はい、順調です♡
T)頑張ってるよなぁ。大変じゃない?
M)楽しいです♡
海)Mさんは本当にすごいです!
  分析力とか戦略の立て方とか…
  本当に尊敬します!!
M)あははは、ありがとう♡
J)そういえばこの間、
  社内の姫のファンクラブメンバーに
  なんか声がけしてなかった?
M)ああ、あれは…ふっふっふ♡
  今日の夜が勝負ですw
T)え、え、なんの話?
M)ここだけの話なんですけど…実は、
 
 
この間の会社の運動会。
 
私が撮った先輩のリレーの動画。
 
爽やかに綺麗なフォームで走り抜ける
美しさと清潔感。
 
青いタオルで汗を拭いながら
可愛く笑う、無垢な透明感。
 
 
それを見て、閃いちゃったんだもん。
 
ポカリのCMみたい、って。
 
 
だから私は…
社内の先輩のファンたちに呼びかけて、
大塚製薬にアクションを起こしたの。
 
ホームページへのコメントや
手紙やSNS。
 
あらゆる角度から先輩をお勧めして…
 
こんな可愛い子がいますよーー
ポカリのイメージにぴったりすぎるーー
次のポカリガールはこの子だーー
 
ってね。
 
 
まぁなんでもダメ元。
やってみなくちゃわからない。
 
当たればラッキー。
外れたらやり方を変えるだけ。
 
でも今回は「ラッキー」の方だった。
 
向こうから会いたいって
言ってきてくれたんだもん。
 
 
海)す、すごい……
T)やるな!Mちゃん!
J)策士だねぇw
M)ありがとうございます♡
 
 
私はニッコリと笑顔で返した。
 
 
T)あ、お前…
  いちごソース付いてる。
海)えっ!
T)子供かよ、ったくw
海)す、すみません///
T)そっちじゃねぇっつーの、こっち!w
 
 
あら。
Tさんが海璃ちゃんの口の端を…
 
 
海)////
 
 
うん、それは赤くなっちゃうよねぇ。
 
 
T)ばーかw
 
 
Tさんってばクスッと笑って
それを舐めちゃうし。
 
 
海)あの…恥ずかしいので…
  やめてください///
T)は?
 
 
そう言って海璃ちゃんは
顔を真っ赤にして黙り込んじゃって…
 
 
T)え、あ…、ごめん///
海)いえ…、///
T)もうしない、ごめん。
海)あっ…、やっぱり、やです///
T)は?
海)やめないでください///
T)は?///
海)Tさんが構ってくれるの…嬉しいから///
T)////
 
 
私たちは一体
何を見せられてるんでしょうねぇ?
Jさん。
 
そんな私たちの視線に気付いたのか
Tさんが慌てたように口を開いた。
 
 
T)お前なぁ、家じゃないんだから///
 
 
え。
 
 
M)それは…つまり…
  家ではそんなイチャイチャ、
  してるんですね?
T)えっ!!
 
 
ついつい突っ込んじゃった。
 
 
T)イチャイチャって…
  べ、別にそーゆーわけじゃ…っ///
 
 
あーあ、Tさんまで真っ赤になっちゃって。
 
 
J)ラブラブだねぇw
T)だからそーゆーんじゃ…
海)ラブラブになりたいです///
T)!!!
J)素直だねぇ、可愛いよ海璃ちゃんw
T)お前は外でそーゆーことを言うな///
M)家でも言ってるんですね…
T)!!!
 
 
Tさんって先輩と似てるんだよなぁ…
こーゆー墓穴掘ってくとこ。
可愛いな。
 
 
海)Tさん大好き///
T)ぼそっと言うな、ぼそっと!///
J)あははは、ほんと可愛いなー二人ともw
 
 
うん。
可愛くて羨ましいです。
 
 
 
 
蒼)そうだ、海璃ー
海)え?
蒼)昨日、バスの座席決めたんだけどさ、
  お前とTさん隣にしてやるからな♡
 
 
ランチを終えてオフィスに戻ると
蒼くんがこっそり海璃ちゃんにそう言った。
 
 
海)え、営業部と一緒なの?///
蒼)そうだよ。くじで決まった。
海)席は…蒼くんが決めれるの?
蒼)そうだよー、実行委員の特権でねw
海)……ありがとう、嬉しい///
蒼)ははは、海璃は素直で可愛いね。
 
 
蒼くんはそう言いながら
なぜか先輩を見てて…
 
……あれ?
先輩、なんか怒ってる?
 
 
M)どうかしました?
♡)してない!ぷん!
 
 
してないって言いながら
「ぷん」って言っちゃう
先輩の可愛さったら…。
 
 
それから私たちは
定時まで滞りなく業務をこなして、
会社を出た。
 
 
M)夜は冷えますねーー
♡)もう11月だもんね。
 
 
今日は午後からずっと天気も悪かったし
気温も低い。
 
街路樹ももう
緑から赤やオレンジに色を変えてる。
 
 
M)先輩、明日はMVが二つ公開ですね♡
♡)あ、そうだっけ!
M)そうですよぉ〜
 
 
これから年末に向けて
先輩が出演するMVが次々に公開されていく。
 
 
♡)どんな仕上がりか楽しみだなー♡
M)ですね♡
 
 
実は、MVも少し工夫してて。
 
ビジュアルに細かい指定がないオファーは
こちらから先輩のヘアメイクを
提案させてもらってる。
 
せっかくいろんなMVに出るのに
全部同じ髪型や同じイメージじゃ
面白くないでしょ?
 
だからいつもはふわふわヘアの先輩を
黒髪ストレートにしてみたり、
ウィッグをかぶせて
ショートやボブにしてみたり。
 
 
どんなスタイルも似合うのが、
さすが先輩。
 
先輩のファンの人たちが見たら、
どれもこれも可愛くて、
絶対びっくりすると思うんだ♡
 
それにいろんなビジュアルを出しておけば
この先の仕事の幅も広がるだろうし。
 
 
♡)……あれ?こっちで合ってるよね?
M)え?
 
 
そう言われてみると、
随分歩いたのに、まだたどり着かない。
 
 
M)あれ…?
  地図だと確か…、、ああ!
  逆です!間違えた!
♡)えっ!
M)駅から真逆に進んでました!
  どうしよう、ごめんなさい!
♡)じゃあ引き返そう!
M)どうしよう!
 
 
こんな凡ミスするなんて…
私のバカ!!
 
 
M)遅れちゃう…っ
♡)大丈夫だよ、走ろう!!
M)ええ!!
♡)ほら!!
 
 
そう言って走り出した先輩の背中を
慌てて追いかける。
 
 
どうしよう。
今日は大事なアポの日なのに
どうしてよりによってこんな日に…!
 
 
♡)Mちゃん、大丈夫?
M)…っ
 
 
私、運動は苦手なんです、
なんて言えない。
 
道間違えたの私だし。
 
 
♡)頑張って!
M)あっ…
 
 
先輩は私のバッグも持ってくれて…
 
長い髪をなびかせて走る
綺麗な後ろ姿。
 
 
♡)はぁ、はぁ、はぁっ…
M)…はぁ、はぁ、
 
 
二人で息を切らしながら
たどり着いた、大塚製薬の本社ビル。
 
走ってる途中、時間を見る余裕もなくて
必死だったけど…
 
 
M)7分前だぁ…よかったぁ〜〜〜!!
 
 
間に合ってほっと胸を撫で下ろした。
 
 
♡)ちょっと待って…、喉乾いて死にそう。
  飲み物買って来てもいい?
M)はい!!
 
 
ビルの前で待ってると、
自販機でポカリを2本買って来た先輩が
その1本を私にくれた。
 
 
M)いいんですか?ありがとうございます。
♡)ぷはぁっ!美味しい!♡
 
 
先輩は一気に半分くらい飲み干した。
 
 
男)くすくすw
♡)わっ!びっくりした!!
 
 
男の人の笑い声が聞こえて
私たちは慌てて一歩下がった。
 
 
♡)あ、えっと…すみません、
  邪魔でしたね///
 
 
確かにこんなビルの真ん前で
二人でポカリ飲んでたら邪魔だよね。
 
 
男)美味しそうに飲みますねぇw
♡)あ、今走って来て…
男)そうですかw
♡)はい、すみません///
男)いえいえ。
 
 
男の人はしばらく先輩をじーっと見て…
 
 
M)先輩、そろそろ行かないと…
♡)あ、うん。
 
 
その場を離れようとした私たちに
まだ声をかけてきた。
 
 
男)今夜は星が綺麗ですね。
♡)え…?
 
 
そう言って男の人はニッコリ笑って
空を見上げたけど…
 
何を言ってるんだろう。
今日はずっと天気が悪くて曇ってたから
星なんて見えるわけない。
 
……ほら、真っ黒…。
 
 
M)……。
 
 
変な人なのかな?
ヤバイ人だったら私が先輩を守らなきゃ!
 
そう思って先輩の腕を引くと…
 
 
♡)そうですね。
 
 
一緒に空を見上げてた先輩は
ニッコリ笑って、そう言った。
 
 
M)え…?
 
 
思わずもう一度空を仰ぐけど、
やっぱり星なんて一つも見えない。
 
 
先輩の言葉に、男の人は少し目を見開いて、
なぜか納得したように微笑んだ。
 
 
M)……はっ!先輩、時間!
♡)あ!そうだ!
  すみません、それじゃ!
男)はい。
 
 
私たちは急いでビルに入って、
受付まで走った。
 
 
♡)えへへ、せっかく間に合ったのに
  遅刻しちゃうところだったねw
M)ギリギリセーフでしたねw
 
 
エレベーターに乗って、応接室に通されると
そこにはスーツの男性が二人、
先に座ってた。
 
 
名刺を渡されたから
つい癖で私たちも仕事の名刺を渡すと、
「普段は本当に会社員してるんですね」
って興味深そうに言われて。
 
あ、この人たちは
企画広報部の社員さんみたい。
特に肩書きは書いてないや。
 
 
男)もうすぐ部長も来ると思うんで
  もう少しお待ちいただいても
  よろしいですか?
M)はい、全然構いません♡
 
 
先輩のこっちの仕事用の名刺、
作ろうかなーー。
 
私のマネージャーの名刺も一緒に。
 
 
なんて考えながら
部長さんが来るのを待ってたら、
 
ドアをノックして入って来たのは…
 
 
♡M)えっ!!
 
 
さっきの男の人だった。
 
 
男)遅くなってすみません、
  先ほどはどうもw
男)え、部長!面識あるんですか?
男)さっき、って…
男)ちょっと下でねw
 
 
クスッと笑ったその人が
差し出してくれた名刺には
 
「企画広報部部長」って確かに書かれてる。
 
 
部)どうぞおかけください。
♡)はい、失礼します。
M)……。
 
 
変な人だと思ってたら
まさか部長だったなんて。
 
もっと愛想良くしておけばよかった、失敗。
 
 
部)♡さん、うちの商品を何かご存知ですか?
♡)えっ…
 
 
部長からのいきなりの質問に
少し困った様子の先輩は、
 
 
♡)あ!カロリーメイト!
 
 
元気にそう答えた。
 
 
部)くすくすw
  召し上がられたことは?
♡)もちろんあります♡
 
 
先輩がニッコリ笑うと、
二人の社員さんはその笑顔に見とれてて…
でも部長は、表情を変えない。
 
 
部)他には?
♡)…っ、ええと…
 
 
……しまった。
先輩にポカリの話、しておけば良かった。
 
でもどう考えてもポカリが一番有名よね?
わかるよね?先輩!
さっき飲んでたもんね!?
 
 
♡)あ!オロナミンC!!
 
 
どうしてそっちーー!!
 
私がずっこけそうになってると、
部長がようやく少し微笑んだ。
 
 
部)さっき飲んでましたよね?
♡)え?……ポカリ…?
部)はい。
♡)え?あ、もしかして…
部)うちの商品です。
♡)!!!
  失礼しました///
 
 
先輩が恥ずかしそうに謝ると
先方3人は大きな声で笑い出した。
 
 
部)いやぁ〜〜
  知らなかったんですかw
♡)すみません///
男)あはははw
部)ビルの真ん前でごくごく飲んでるから
  アピールなのかと思ってしまいましたよw
♡)アピール??
部)今回♡さんに来ていただいたのは
  ポカリスエットのCMの件でして。
♡)え?!
 
 
本当に驚いた様子の先輩に
部長は不思議そうに笑った。
 
 
部)予想ついてるかなーと
  思ってたんですけど。
 
 
そう言って部長は
プロジェクターのスイッチを入れた。
 
 
部)この動画。
♡)あっ!……え、どうして…。
 
 
そこには運動会で颯爽と走る
先輩の姿が映し出されていた。
 
 
部)ポカリスエットの
  CMみたいじゃないですか?w
♡)ええっ!
部)そういう声が我が社にたくさん
  寄せられていまして、ね。
 
 
ふふふふ…
 
 
部)ぜひ一度お会いしたいなと思いまして
  お呼び立てさせていただいたんですよ。
♡)そうだったんですか…。
部)お願いできますか?
男)え、部長!
男)いいんですか?!
男)オーディションは!?
部)ははははw
男)僕らがいくらこの子にしましょうって
  言っても…
  オーディションは中止しないって
  言ってたのに…
部)直接会ってみたかったんだよ。
男)…っ
 
 
部長はにこやかに笑って
スクリーンから先輩に視線を移した。
 
 
部)容姿が可愛い子ならゴマンといる。
  でも実際に会ってみて
  そういう雰囲気やオーラを持っている人は
  限られているものです。
  だから、直接話してみたかった。
男)♡さんにお願いできるなら
  僕たちは嬉しいですけど…
男)うんうん!
部)♡さん。
♡)はいっ!!
 
 
名前を呼ばれた先輩は
背筋をピシーッと正した。
 
 
部)先ほど私が、
  「今夜は星が綺麗ですね。」
  と言った時、
  どうしてあのような返事を?
♡)え…?
部)あなたは「そうですね」と
  笑ってくれた。
  なぜ?
 
 
そう聞かれた先輩は
少し考えてる顔で
さっきのことを思い出してるみたい。
 
 
♡)今日は曇り空だから
  星は一つも見えなかったけど…
  私には見えてないだけで、
  この人には見えてるのかなって
  そう思ったんです。
部)……。
♡)本当の意味の星じゃなくても…
  この人の目には
  綺麗に見えてる何かがあるのかな、って。
部)……。
♡)そしたらそれは素敵なことだなって思って
  でも私も「綺麗ですね」って言ったら
  見えてないのに嘘になるから…
  「そうですね」としか言えなくて…
  すみませんでした。
部)違うんですよ。
♡)……え?
 
 
困ったような先輩に、
部長は優しく微笑みかけた。
 
 
部)あなたは
  「今日は星なんて出てませんよ」と
  否定することもなく…
  「綺麗ですね」と
  偽りの同調をすることもなく…
  ただ、「そうですね」と
  私の言葉に寄り添ってくれた。
  なかなか出来ることじゃありません。
♡)……。
部)普通であれば
  見ず知らずの男に
  いきなりそんなことを言われれば
  頭がおかしいのかと訝しんだり
  変な人間なのかと疑ったりするでしょう。
  
 
それはまさに私だ。
絶対変な人だと思ったもん。
 
 
部)あなたはきっと
  優しくて綺麗な心の持ち主なんだと
  思いますよ。
♡)…っ
部)それが人間性となって現れている。
  だからうちの社員たちも
  この動画を見ただけで
  あなたに依頼したいと口を揃えて
  言っていたんでしょう。
 
 
そう言われた社員さん二人は
照れ臭そうな笑みを浮かべた。
 
 
部)次のCMはぜひ、あなたにお願いしたい。
  どうでしょうか?
♡)…っ、はい!!
  喜んでお受けしたいです!!
部)ありがとうございます。
 
 
先輩の元気な返事に
部長も社員さんも嬉しそうに笑った。
 
 
M)……。
 
 
やっぱり先輩はすごい。
 
 
部長が今、言った通り…
心が綺麗で優しいんだ。
 
……私とは、全然違う。
 
 
 
 
それから話はスムーズにまとまって、
予定していたオーディションも
中止されるらしく
先輩のCM出演が正式に決まった。
 
 
ビルを出て駅に向かうと、
ちょうど登坂さんが車で迎えに来てくれて
私も一緒に乗せてもらって。
 
 
登坂さんは
「マジでポカリ決まったんだ!すげぇ!」
って、大喜びしていて…
 
「お前、大塚製薬がポカリって
 知らなかったのかよ…」
って、呆れたように笑った。
 
 
♡)だってMちゃん何も言ってなかったから…
臣)そこは言わなくてもわかんだろ!
  俺はポカリだろうなって思ってたよ!
♡)ええ!!じゃあ言ってよぉ〜!!
臣)ほんとお前は…
♡)あ!ニブ子って言うの禁止だよ!
  ドン子も禁止だよ!
臣)……ただのバカ。
♡)ひどーーい!!
臣)あはははw
M)……。
 
 
ほんと仲良しだなぁなんて
後部座席から二人を見守ってると、
バッグの中の携帯が揺れた。
 
 
M)……えっ、
 
 
Jさんからだ。
 
 
M)ちょっと電話出てもいいですか?
臣)どうぞ?
 
 
Jさんからかかってくるなんて
一体何事だろう。
 
 
M『もしもし?』
J『ああ、Mちゃん?
  大仕事終わった?』
M『はい!無事に!』
J『そっか、良かったw
  ……で、今どこにいる?
  もう帰っちゃった?』
M『いえ、まだ…
  送ってもらってるところです。』
J『……今から…出てこれない?』
M『えっ…』
J『本当に頼みたいんだけど…』
M『えっ…』
J『彼女のフリ。』
M『!!!』
 
 
少し困ったように笑う、Jさんの声。
 
それを聞いて私は
先輩と登坂さんに事情も説明しないまま、
すぐに車を降ろしてもらって、
タクシーに乗り換えた。
 
 
こんな簡単に飛んでくなんて
馬鹿かもしれないけど…
 
Jさんが私を選んでくれたのが、嬉しくて。
 
 
だって…
フリとはいえ、私なんかでいいの?
信じられない。
 
 
M)……はぁ。
 
 
教えてもらった店の前。
私は息を整えて、そのドアを開けた。
 
 
M)あの、待ち合わせで…
店)こちらへどうぞ。
 
 
通されたのは、奥の個室。
ドキドキしながらそのドアを開けた。
 
 
M)失礼します。
J)ごめんね、急に呼んだりして。
M)ううん。
 
 
Jさんの向かいには、想像通りのマダム。
 
Jさんはお母さんにわからないように
私に「ごめん」って視線で謝ってる。
 
 
M)私もお母様にご挨拶したかったから
  呼んでくれて、嬉しい♡
J)…っ
 
 
私はニッコリJさんに笑いかけた。
 
 
M)初めまして、Mと申します。
 
 
私を値踏みするような視線に
丁寧に頭を下げて、挨拶をして。
 
 
M)ご一緒させて頂けるなんて嬉しいです。
  どうもありがとうございます♡
母)急にごめんなさいね?
  どうぞ座って?
M)はい、失礼いたします♡
 
 
私は促されるまま、
Jさんの隣に静かに腰掛けた。
 
 
J)もうずっと付き合ってるんだよ。
  結婚は彼女とするつもりだから
  見合い話は断って。
  何度も言ってるでしょ?
母)だって…
  断るための言い訳かと思って…
J)だから今、紹介してるんだよ。
母)だったらもっと早く
  会わせてくれたら良かったのに…。
J)母さん、うるさそうだから。
母)まぁ!失礼しちゃう!
J)母親が過保護だと
  マザコンだって勘違いされるから
  やめてくれる?w
母)んまぁ!
J)こんな歳で恥ずかしいよ。
  大好きな彼女に振られたら
  責任取ってくれるの?
  ねぇ?w
 
 
Jさんがニッコリ笑って
私の顔を覗き込むように見つめてきた。
 
 
M)ふふふ、嫌だわJさん♡
  そんなことあるわけないのに♡
J)君が魅力的だから
  俺はいつも不安なんだよ。
M)お母様の前よ、よして♡
 
 
私の髪を愛おしそうに撫でるJさんを
たしなめた。
 
 
母)ど、ど、どういうことなの?!///
  あなたの方が彼女にぞっこんなの!?
J)「ぞっこん」って…w
  そうだよ、俺が惚れ込んでる。
  彼女以外の女性は考えられないから。
母)まぁ!
J)俺が愛してるのはMだけだよ。
母)まぁぁぁ!!
 
 
顔を真っ赤にしたお母さんは
また私の値踏みを始めた。
 
 
母)Mさん、ご、ご趣味は?
M)私の趣味はバレエ鑑賞と生け花です。
母)生け花!?
  華道の経験がおありで?
M)ええ、昔から好きなんです♡
母)流派はどちら?
M)月輪未生流です♡
母)……あら、そう。へぇ。
M)あとはお茶も好きです。
母)お茶?!
  茶道の経験もおありなの?
M)ええ。
母)流派は!?
M)少し新しい流派なんですが、
  紫野千家です。
母)…っ、そう。
 
 
お母さんは悔しそうに唇を噛んで
Jさんを見た。
 
 
母)あなた、ご飯とかはどうしてるの?
  ちゃんと食べてるの?
J)Mが作る料理が美味しくてね、
  いつも食べ過ぎないように
  気をつけてるんだw
母)へ、へぇ〜〜、そうなの。
M)Jさん、いつも綺麗に
  平らげてくださるんで
  私、本当に嬉しくって♡
母)あら、そう…。
 
 
私がJさんにニッコリ微笑みかけると
Jさんもとても愛おしそうに
私の髪に手をかけた。
 
 
J)二人きりになりたいな。
母)んまっ!
J)もういい?
母)せっかく東京まで来たっていうのに!
J)年末帰るからさ。
  その時父さんにも会社の話、するよ。
母)私たちは後継ぎにはあなたしか
  考えてませんからねっ!
J)だからその話も改めてするから。
母)…っ
J)もう帰ってよ。
M)Jさん。
J)いいんだよ、
  早く二人になりたいんだから。
M)ダメよ。
J)いいから。
 
 
Jさんは私にキスしそうなほど
距離を詰めて、見つめてきた。
 
 
母)もういいわ!帰ります!
J)そうしてくれると助かるなぁw
M)お母様、私、お送りします!
 
 
慌てて席を立ったけど…
 
 
母)結構です!!
 
 
そう言ってお母さんは
勢いよく部屋を飛び出していった。
 
 
J)………ふぅぅ、疲れた〜〜〜
M)…っ
 
 
私も緊張が一気に解けて
どっと疲れちゃった。
 
 
J)やっと二人きりになれたね、M♡
M)もう、やめてくださいよぉ〜〜!w
J)あははははw
M)演技するの必死だったんだから!///
J)そう?上手かったじゃんw
  完璧な彼女だったけど。
M)……///
 
 
そう言ってもらえて良かった。
 
私はいろんな意味で
ドキドキしっぱなしだったから。
 
 
「そうだよ、俺が惚れ込んでる。
 彼女以外の女性は考えられないから。
 俺が愛してるのはMだけだよ。」
 
 
あんなこと言われたら、
演技だってわかってても
ドキドキしちゃうもん。
 
 
J)よくあんな上手に嘘つけたね?
M)え?
J)華道とか茶道とか。
M)あれ、嘘じゃないですよ?
J)えっ!
M)趣味ではないですけど、
  一通りできます。
J)うそ!どうして?
M)……。
 
 
玉の輿に乗るためです。
とは、なんとなく言いにくいこのお店。
 
 
M)Jさん、ご褒美に
  美味しいお酒ご馳走してください♡
J)ああ、いいよーw
  場所変えようか。
M)はい♡
 
 
それから店を出て、Jさんの腕に
ちゃっかり自分の腕を絡めたら、
 
 
J)甘え上手な彼女が出来ちゃったなーw
 
 
Jさんはそれを拒むこともしないで
ニッコリ笑ってくれた。
 
 
M)////
 
 
今日だったら
どんなお願いも聞いてくれちゃいそう。
 
 
それから少し歩いて
雰囲気の良いバーに入って。
 
カウンターに二人で並んで座った。
 
 
J)はい、じゃあ…
  Mちゃんのポカリ作戦成功と、
  俺の母親撃退成功に、乾杯w
M)あははは、乾杯♡
 
 
二人でクスッと笑って、
小さくグラスを合わせた。
 
 
M)Jさんのお母さん…、
  信じてくれましたかね。
J)信じたと思うよー。
  Mちゃん、いいとこのお嬢様にしか
  見えなかったもんw
M)ふふふw
J)で、華道と茶道の話は?
M)あ…、それは…
  高校の時に一通り勉強したんです。
  料理とかも。
J)なんで?
M)……。
 
 
うん、ここならいいや、言っちゃおう。
 
 
M)玉の輿に乗るためです。
J)ぶっw
M)出来ないより出来た方が
  可能性は広がるでしょう?
J)まぁ確かにねw
M)やって損はないなと思って。
J)……すごいね。
  そのガッツ、尊敬する。
M)私、恋愛結婚なんて
  出来ないと思ってるんで。
J)え?
M)結婚になんの夢も見てないんです。
  だから別に、浮気もOK。
  お金さえあればいいし、
  もし夫婦関係もあるなら
  相性がいいに越したことはないなーって
  それくらい。
J)随分リアリストだねぇw
M)だってそれが現実だと思うから。
J)……。
M)だから少しでも良いお金持ちを
  つかまえるために
  女子力は上げれるだけ上げておくんです。
  私は頑張って中の上ですから。
J)……。
 
 
私はなんでJさんにこんな話をしてるのかな。
 
今日は色々疲れちゃったからかな。
このお酒が濃いからかな。
 
 
J)昼にも言ったけど…
  随分自己評価低いんだね?
M)だって…妥当な評価ですよ。
  特上の先輩を好きだったJさんなら
  わかるでしょ?
J)うーん…、
M)いいんです、
  私はまともな恋愛なんてする気もないし、
  そんなものこの世にないと思ってるんで。
J)……。
 
 
お金があれば生きていける。
SEXが気持ち良ければちょっとしたプラス。
 
ただそれだけ。
 
 
J)俺と似てるなぁ…w
M)……え?
 
 
Jさんは困ったように笑って
グラスを置いた。
 
 
J)そう割り切ってても…
  たまにふと、虚しくならない?
M)…っ
J)虚しいっていうか、
  寂しいっていうか…。
M)……寂しく…なんか…、、
 
 
ないって言ったら、嘘になる。
 
 
だって…
羨ましいっていう気持ちが
心の中に、本当はあるから。
 
 
登坂さんと愛し合ってる先輩も…
Tさんを一途に思う海璃ちゃんも…
 
本当は羨ましいって、そう思ってる。
 
 
M)寂しくなんかないですよぉ?w
  あ、お酒おかわりしてもいいですか?
J)今日は俺の奢りだから
  好きなだけどうぞ?w
M)ありがとうございまーす♡
 
 
Jさんの肩にピタッともたれて
甘えてみた。
 
 
J)……嘘つきだなぁ…w
M)え…?
J)寂しくない、なんて顔、してない。
M)…っ
 
 
Jさんの優しい指が、
私の眉間をそっと撫でた。
 
 
M)いいんですよぉー♡
  私は荒んだ人間なんでw
J)え?
M)今日言われたんですよぉ?
  先輩は綺麗で優しい心の持ち主だけど…
  私は人を疑うことしかできない
  そんな残念な人間だってw
J)大塚製薬に?w
M)そうです!
J)ふーん…。
M)いいんです、別に…
  私なんかが先輩みたいになれるなんて
  そんなバカなこと、思ってないから。
J)……。
M)私は荒んだ家庭で育った、
  荒んだ人間なんですーw
 
 
私はさっきから
何をペラペラ喋ってるのかな。
 
いつものぶりっ子が、上手くいかない。
 
 
M)……なんか変なの…w
J)え…?
M)こんな話、誰にもしたことないのに。
 
 
どうして私はJさんに話してるの…?
 
 
J)誰にもしたことないなら、
  もう存分に話しちゃえば?
M)え…?
J)今日はとことん付き合うよー?w
M)ご褒美…ですか?
J)ご褒美っていうか…お礼にねw
M)……///
 
 
そんな優しく言われたら…
気持ちが揺らぐ。
 
 
J)なんでも聞くし、好きなだけ甘えて。
 
 
ほら、Jさんはずるいの。
女心を、わかりすぎてる。
 
だから、頼りたくなる、甘えたくなる。
 
 
M)……今の、もっかいしてください///
J)ん?これ?w
 
 
優しく頭を撫でてくれる手のひら。
 
 
M)好きなだけ甘えてって…言うから…
J)うん、いいよー?
M)////
 
 
頭を撫でられるのって…
こんなに嬉しいことだったっけ…。
 
 
J)Mちゃんは最近頑張りすぎだからねー
M)…っ
J)少しは休みなさい。
 
 
優しくそう言ってくれるJさんの声に
心がなんだかほぐれていく。
 
 
J)姫のこと大好きなのはわかるけど
  無理はしないで。
M)私、無理なんてしてません!
  楽しんでやってるんです!
J)それならいいけど…
  疲れた時はこうやって休んだり
  甘えたりするんだよー?
 
 
Jさんの肩にもたれてる私の頭は
優しく抱き寄せられた。
 
 
M)Jさんに甘えて…いいってことですか…?
J)今日はねw
M)……///
 
 
とくん、とくん、胸が鳴る。
 
 
M)今日…だけ…?
J)……甘える男、たくさんいるでしょ?w
M)……。
 
 
いる…けど……、
 
 
M)じゃあ今日は遠慮なしで
  いっぱい甘えちゃおーっと♡
J)どうぞ?w
 
 
今日だけでもいい。
 
Jさんとこんな風に二人で飲むなんて
初めてだし…
 
こんなにべったりくっついて甘えても
許されるなんて…
 
そんなご褒美、めいっぱい楽しんじゃうもん!
 
 
M)てゆーか私、今日…、
  凡ミスしちゃったんです。
J)え?
M)先輩を無駄に走らせちゃった…。
J)迷子にでもなったの?w
M)……はい。
J)まぁまぁ、たまにはあるでしょ、
  そんなこともw
 
 
私はその後も美味しいお酒を飲みながら
気付けばJさんに
あれこれ身の上話までしちゃって。
 
こんなの、初めて。
 
 
だってJさんが聞き上手だから…。
 
 
さすが女にモテる男は違うなーー
さすがTOPの営業マンは違うなーー
 
なんて、そのヒアリング力と共感力の高さに
敬服して。
 
 
J)そろそろいい時間だね、
  どうする?出る?
 
 
そう言われても、全然帰りたくなかった。
 
 
M)まだ…帰りたくないです///
J)……。
M)一緒にいたい…です///
 
 
上目遣いで甘えたら、
おでこをツンとつつかれて。
 
 
J)いつもそうやって男堕としてんの?
  悪い子だね〜〜w
 
 
余裕の顔でクスッと笑われた。
 
 
M)////
 
 
やっぱりJさんには通用しなかった。
 
でも…、嘘じゃないもん…。
本当にまだ、一緒にいたいんだもん…。
 
 
J)じゃあ三択ね。
M)え…?
 
 
Jさんが私の指を一本一本、
順に触れていく。
 
 
J)一、俺ん家。
  二、ホテル。
  三、どこか三軒目に行く。
  どれがいい?
M)え…っ
 
 
え、え、え…?
 
 
M)////
 
 
動揺して固まってると、
Jさんはまたクスッと笑った。
 
 
J)自分から誘っておいて、なーにw
M)////
 
 
だ、だ、だ、だって…
 
 
J)言ったでしょ?
  今日はとことん付き合うよー?って。
 
 
それって…
それって…
 
 
M)……Jさんのお家がいいです///
J)ん、了解。
 
 
え、え、ほんとに…?
連れてって…くれるの?///
 
 
 
 
 
ー続ー

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