[288]願い

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♡)……ふぅ。
 
 
ピアノを弾きながら一人で歌ってたら
気付けばもうこんな時間。
 
臣くんはまだレコーディング中かな?
 
 
今頃『誕生』を歌ってるんだよね。
 
 
♡)……
 
 
閉じかけた真っ白な鍵盤蓋を、
もう一度上げて。
 
深くゆっくり、息を吸い込んだ。
 
 
♡)〜♪Remember 生まれたこと♪〜
 
 
歌いながら、目を閉じて…。
 
 
♡)〜♪Remember 出逢ったこと♪〜
 
 
目を閉じてるのに、涙が浮かんできて…
 
 
♡)〜♪Remember 一緒に生きてたこと♪〜
 
 
最後は声が震えて…
 
 
♡)〜♪そして覚えていること♪〜
 
 
……やっぱりダメだ。
 
この歌は歌えないや。
 
 
♡)はぁ……。
 
 
そっと蓋を下ろして、窓まで歩いた。
 
夜景は綺麗だけど、星は見えない。
 
 
私はそのままソファーに戻って
携帯を手に取った。
 
ママの声が聞きたくなって
「今大丈夫?」ってLINEしたら
すぐにかかってきた電話。
 
 
♡『もしもし?』
レ『どーしたの。』
♡『ん…、ママの声が聞きたいなぁって。』
レ『出ーた、甘えんぼw』
♡『えへへ…///』
レ『登坂くんは?仕事?』
♡『うん。ママは?おうち?』
レ『そろそろ事務所出ようとしてたとこ。』
♡『あっ、まだ仕事だったの?ごめんね!』
レ『もう終わったから大丈夫。』
♡『お疲れさま…。』
レ『ん。』
 
 
ママは何歳まで仕事を続けるのかな…。
聞いたことないけどふと思った。
 
 
レ『昨日また歌ってきたんでしょ?
  パパの施設で。』
♡『あ、うん。』
レ『今市くんと登坂くんも来たって
  瞬がそれはそれは嬉しそうに
  話してたよw』
♡『あははは♡』
レ『写真も見せてもらった、って。』
♡『うん。あ、あのね?』
レ『ん?』
♡『パパの写真しかなかったんだけど…
  ママも行ったことあるんだよね?』
レ『……ないよ。』
♡『え…?』
 
 
それは思いがけない返事だった。
 
 
♡『どうして…ないの…?』
レ『うーん…、
  最初はね、パパがママの施設に
  一緒に来てくれたの。』
♡『うん。』
レ『そしたらその時、
  中学生だった男の子が怒っちゃって。』
♡『え!どうして?』
レ『幸せ自慢しに来たのか、帰れ!って。』
♡『ええっ…』
レ『後からその子は
  両親を亡くしたばかりだったって
  わかったんだけど…』
♡『……』
レ『パパがね、受け入れがたい子も
  いるかもしれないから
  これからは別々で行こうか、って。』
♡『受け入れがたいって…』
レ『幸せな夫婦とか家族とか、そういう姿。』
♡『…っ』
レ『複雑な環境だからね、
  当たり前の話なんだけど。』
♡『そっか…。』
レ『ま、そのクソガキは
  あたしが性根叩き直したけどね〜〜w』
♡『ええっ!
  それで…どうなったの…?』
レ『去年結婚したよw』
♡『わぁ!』
レ『結婚式行ったけど、
  幸せそ〜〜〜に笑ってた。』
♡『そっか…そうなんだ♡』
 
 
今はママとも仲良しなんだ。
良かった。
 
 
レ『パパの施設に行ったことないまま
  パパが死んじゃって…
  いきなり寄付が途絶えたら
  変に思うだろうから
  連絡しなきゃって思ったんだけど…
  出来なかったの。』
♡『……』
レ『前に話したことあるでしょ?
  施設だけじゃなくて…
  サチや将史にも連絡できなかった。』
♡『……』
 
 
ママが前に言ってた。
私が大人になってからだけど。
 
 
当時はパパが死んじゃったことが辛すぎて
それを口にしたら胸が張り裂けそうで
誰にも連絡できなかった、って。
 
だからパパのお葬式に来たのは
仕事関係の人たちだけだった。
 
 
パパが死んじゃった事実を
口にすればするだけ
パパが消えていっちゃうみたいで
耐えられなかった、って。
 
 
そんなママのことを想うと
私も胸が苦しくて、泣きたくなったんだ。
 
 
♡『そういえばこの間、
  何時まで飲んでたのー?』
レ『この間?』
♡『サチさんと将史さんと。』
レ『ああ!…朝までw』
♡『朝までー!?』
レ『だ〜〜ってw
  話が尽きない尽きないw』
♡『それで朝まで?すごーい!』
レ『次の日休みだったし、ついついねw』
♡『楽しかった?』
レ『うんw』
♡『そっか、良かった…♡』
レ『来週もまた飲みに行く予定w』
♡『えーー!飲みすぎないでねw』
レ『うんw』
 
 
ママの声が嬉しそうで、私も嬉しい。
 
 
♡『でもほんとにびっくりしたなぁ…。』
レ『んー?』
♡『ママたちが友達で。』
レ『ママたちもびっくりしたってw』
♡『あはは、そうだよねw』
レ『うん。』
♡『パパもびっくりしたかなぁ?』
レ『してるしてるw
  空の上で「マジでー?!」とか
  叫んでるよきっと。』
♡『あはははw』
 
 
きっと叫んだ後に、嬉しくて笑ってると思う。
 
ママが嬉しいことは
パパも絶対嬉しいもん。
 
 
♡『会いたいなぁ…。』
レ『……』
♡『パパに。』
レ『……うん。』
♡『パパに会っていっぱいぎゅってしたい。』
レ『そんなのママだってしたいもーん。』
♡『じゃあ私は二番目でいいや♡』
レ『そこは一番がいいって言ってあげないと
  パパ泣くよw』
♡『あはははw
  大丈夫だよ、
  パパが一番愛してるのはママだもん。』
レ『えー?w』
♡『パパはきっとママを一番にぎゅーってして
  その後に私と瞬を抱っこしてくれるんだ♡』
レ『もうデカくて二人も抱っこ出来んわw』
♡『あはは、そっかw
  じゃあ瞬には遠慮してもらおう。』
レ『あっはははw』
 
 
ママはひとしきり笑った後、
「素直になったね」って
優しい声でそう言った。
 
 
♡『え…?』
レ『いや、もともと素直だけどさ、あんたは。』
♡『うん…?』
レ『「パパに会いたい」とか
  そういう事はずっと我慢して
  言わなかったでしょ。』
♡『…っ』
レ『でもちゃんと言えるようになった。』
♡『……』
 
 
それは…
 
 
レ『登坂くんと付き合ってからだよね。』
♡『……うん…。』
 
 
そうだよ。
 
だって…
 
 
♡『臣くんが教えてくれたの。』
レ『え…?』
♡『泣いてもいいんだよって。』
レ『……』
♡『パパに会いたいって思っても
  寂しいって思っても
  それでパパは悲しんだりしないよって。』
レ『……そっか。』
 
 
私の本当の気持ち、
全部全部、臣くんが受け止めてくれたの。
 
 
レ『あんたが素直になれる場所も
  泣ける場所も
  全部登坂くんなんだね。』
♡『うん…。』
レ『大事にしなさい。』
♡『うん…っ。』
 
 
大事にするよ。
死ぬまでずっと。
 
 
レ『ママはねぇ、死んだら空の上で
  パパにいっぱい褒めてもらうんだー♡』
♡『ふふふふ♡』
 
 
これはママがいつも言ってること。
 
 
レ『よく頑張ったねーって
  いっぱいぎゅってしてもらう♡』
♡『うん♡』
レ『そのために生きてる間は
  いっぱい頑張るんだ。』
 
♡レ『そしたらパパがその分
   いっぱいぎゅってしてくれるから!』
 
レ『ぷっw』
♡『あはははっ♡』
レ『ま、なんだかんだ言って
  ぎゅってしてほしいのは
  パパの方かもねーw』
♡『ママに会いたくてうずうず待ってるよ。』
レ『めいっぱいぎゅってしてやるから
  待ってろよーーw』
♡『あははは♡』
 
 
パパ、ちゃんと待っててね♡
今は空の上からママのこと見守っててね♡
 
 
レ『よし、じゃあ戸締りして帰るかな。』
♡『うん、気をつけてね。
  ありがとう、ママ♡』
レ『ん♡
  じゃあまたね、おやすみ。』
♡『おやすみなさい♡』
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
レコーディングを終えて
昨日投げ出した事務作業を終わらせて
家に帰ったら、♡が飛んできてくれた。
 
 
♡)おかえりなさーい♡♡
 
 
ああ、なんか…
無性に抱きしめたい。
 
 
臣)……ただいま。
♡)むぐ…っ
臣)……
♡)ちょ…っと苦しい…
臣)ダメ。
♡)んむっ…
 
 
腕の中でもごもごしてる♡を
それでもぎゅっと閉じ込めて。
 
 
臣)ただいま。
♡)おかえりなさい♡
 
 
こんなやりとりだけで
一気に心が幸せになる。
 
俺って単純かな。
 
 
臣)腹減ったーーー
♡)うそっ!食べてないの?
臣)食べ損ねた。
♡)えー!帰って来る前に言ってよぉ!
  急いでなんか作るねっ!
臣)え、いいの?
♡)もちろんだよー!
  その間にお風呂入ってきて!
臣)ありがと〜〜♡♡
♡)わーん、重たいよぉ〜〜
臣)愛してるよ〜〜♡♡
♡)////
臣)なんでそこで照れんのw
♡)…だって…
 
 
後ろからのしかかってる背中越しに
ぷくっと膨らんだほっぺをつんつんしたら
♡がくるっとこっちを向いた。
 
 
♡)好きな人に愛してるって言われたら
  いつだって嬉しいでしょ!///
臣)…そ、そうですか…///
♡)そうですよ!///
臣)はい、すいません…///
 
 
…って、なんか謎に二人でもじもじして。
 
俺はそのまま♡が用意してくれてた
風呂に入った。
 
 
ゆっくりあったまって
リビングに戻ったら…
 
急いで作ったとは思えないような
美味しそうなご飯。
 
 
臣)……俺…ほんと幸せだなぁ…。
 
 
思わずぽつり、呟いちゃうよ。うん。
 
 
♡)ね、ね、聞いてー!
臣)んー?w
 
 
食べてる俺の向かいでは
ニコニコ嬉しそうに俺を見てる♡がいて。
 
 
♡)あのねっ、海璃ちゃん!
  Tくんに告白したんだって!!
臣)おおおっ!マジか!ついに!?
♡)そうっ!
臣)やったじゃん!で?で?
♡)今ね、頑張って振り向かせ中なんだって!
臣)へ?なにそれ。
♡)え?
臣)ちゃんと返事してないってこと?
♡)ええと…
臣)とっとと返事しろよな〜。
  好きか嫌いか、簡単じゃん。
♡)…そんな簡単じゃ…ないらしいよ。
臣)可能性あんのかないのか
  それくらいわかんじゃん。
♡)ねぇ臣くん。
臣)ん?
♡)Kちゃんと全く同じこと言ってる。
  ほんとそっくりだねw
臣)え。
♡)でもねっ、海璃ちゃんは
  可能性があるかないかとか
  どうでもいいんだって!
臣)ええ!
♡)それでも頑張りたい、って
  Tくんのことほんとに大好き!って
  みんなの前で言ったんだよ!
臣)みんなの前でぇぇ!?
♡)そう!
臣)すげぇな!男らしい!
  よく言った!!
♡)……ねぇ臣くん。
臣)ん?
♡)どこまでもKちゃんと同じ…。
臣)え。
 
 
♡はケラケラ笑ってる。
 
 
臣)でもさぁ〜
♡)ん?
臣)そんな簡単じゃないのかも
  しんないけどさ〜
♡)うん?
臣)あんな可愛くて良い子が
  いつまでも待っててくれると思うなよ
  って言ってやれよ、Tに。
♡)え。
臣)待たせてる間に心変わりだって
  ありえんだからな〜〜
♡)あのぅ…
臣)ん?
♡)それはもうKちゃんが言いました。
臣)ぶっww
 
 
どこまで俺と似てんだよあいつは!w
 
さすがに俺も笑った。
 
 
♡)でもね、海璃ちゃんは
  絶対ないです!
  ずっとTさんが好きです!
  って顔真っ赤にしながら宣言してね、
  もう私キュンキュンしちゃった///
臣)ほぉ……
♡)そしたらTくんってば、
  「……わかったから///」
  とか言って照れてるのーー!
臣)ほぉ……
 
 
Tの真似なのか
照れた仕草で口元を隠した後
テーブルをバンバン叩く♡。
 
 
♡)ね?キュンキュンでしょ?♡
臣)そうですねw
 
 
自分を好きだった男の恋愛事情に
素直にキュンキュンできるお前が
俺は可愛いよ…w
 
 
臣)ん?ちょっと待てよ?
♡)なぁに?
臣)もし上手くいってさ、
  その二人が結婚なんてことになったら…
♡)なったら?
臣)俺たち親戚になるじゃん!!
♡)え…?
  あ、そっか!!ほんとだ!!
  美花ちゃんの妹だもんね!!
臣)えーーーーー
  Tと親戚ーーー?!
♡)そうなるね。あはははっ
臣)笑いごと?
♡)困りごと?
臣)嬉しくはないよ…。
♡)えー!楽しいのに!
臣)……
 
 
まぁお前が嬉しそうに笑ってんなら
それでいっか。
 
…って、俺って単純だなオイ!
 
 
♡)はいどうぞ♡
臣)ありがと。
 
 
ご飯を食べ終えてソファーに寝転がったら
♡がグレープフルーツのはちみつ漬けを
持ってきてくれた。
 
今日レコーディングだったから
喉を労ってくれてるのかな?
 
 
臣)ん、美味い。
♡)えへへ、良かった♡
  ね、今日どうだったの、レコーディング。
臣)んー?
♡)みゆきさんに会ったんでしょ?
臣)うん。
♡)楽しい人だったでしょ!
臣)え。お前知ってたの?!
♡)何を?
臣)みゆきさんがあーゆー人だって。
♡)え?うん。すっごく陽気で
  お茶目で可愛い人なんだよ。
臣)言えよぉ〜〜!
  俺知らなかったからびっくりしたじゃん!
♡)えー!そうだったの?
  ラジオとか聞いたことなかった?
臣)ないよ〜〜〜
♡)あはははw
 
 
俺も隆二もびっくりしたんだから。
 
 
♡)会ってみてどうだった?
臣)ん〜〜〜、、
  なんだろ。
 
 
なんて言ったらいいんだろう、あの人。
 
 
臣)一言で言うなら…、、
♡)うん?
臣)天女みたいだった。
♡)天女!!!
臣)うん。
♡)すごい!天女!
臣)なんていうか…
  掴みどころなくて…ふわふわしてて…
  
 
優しい風のような
柔らかい波のような
掴めない雲のような
 
自分とはちょっと次元が違うような
そんな人だった。
 
 
♡)歌はどうだったのー?
臣)んー?普通に録り終わったよーー
 
 
なんて嘘っぱち。
 
でも男の情けない裏事情は、♡には秘密。
 
 
♡)そっかぁ…
  CD本当に楽しみだなぁ♡
臣)待っててくださいな。
 
 
隣に座ってた♡を膝の上に抱き上げた。
 
 
♡)抱っこだ♡
臣)うん。してほしかった?w
♡)抱っこはいつでもしてほしい〜♡
臣)ははは、甘えんぼーーw
♡)んーーー♡
 
 
嬉しそうにスリスリしてくる♡が可愛い。
 
 
♡)……あのね、
  さっきママと電話してたんだー。
臣)お、そうだったの?
♡)うんっ。
  パパにぎゅってしてほしいねーって
  話してて。
  3人でパパの取り合いになるなぁってw
臣)うんw
♡)だから一番はママに譲ったの。
臣)ははははw
♡)パパが一番ぎゅってしたいのは
  絶対にママだから。
臣)……うん。
♡)だから二番目は…
臣)俺ーーー。
♡)え?!
臣)俺が二番目ーーw
♡)臣くんが二番目?!
  臣くんもぎゅってしてもらうの!?w
臣)うん、そこはお前と瞬を差し置いて
  この俺がw
♡)なんでぇぇ!w
 
 
♡は笑いながら
俺の肩をポカポカ叩いてくる。
 
 
臣)いいじゃんw
  俺だってレイジさんに
  会ってみたかったんだから。
♡)……うん。
臣)会ってみたかったんだよ…、ほんとに…。
 
 
あれ…?
 
なんで……
 
 
♡)なんで泣いてるの…?
 
 
頬に触れた♡の手が
俺の涙を拭ってることで
自分が泣いてるんだってわかった。
 
 
臣)お前は…なんで泣いてんの…。
♡)だって…臣くんが…泣いてるから…。
臣)俺が泣いてるからって
  お前まで泣くな。
♡)だって…っ、ぐす…っ
 
 
♡を抱き寄せたら
♡も俺にぎゅっとしがみついて…
 
俺たちはきつくきつく、抱きしめ合った。
 
 
♡)しょうがないから
  泣き虫臣くんもぎゅってしてあげてねって
  パパに言っとくね。
臣)誰が泣き虫だコラw
♡)だって泣いてるもん。
臣)お前だって泣いてんじゃん!
 
 
俺たちは泣いてるんだけど、
なんだか笑えてきて。
 
目が合ってふふっと微笑んだ♡は
俺を優しく抱きしめた。
 
 
♡)私はね、臣くんが抱っこしてくれるから…
  臣くんがぎゅってしてくれるから
  いいんだよ。
臣)俺もお前がぎゅってしてくれるから
  それでいいよ。
♡)ふふふ♡
  瞬も美花ちゃんに抱っこしてもらえば
  いいんだ。
臣)いや、あんなデカいの抱っこ出来んだろ。
  逆だろw
♡)あははw
  でも二人でぎゅってすればいいんだよ。
臣)うん。
♡)だからね、
  パパはママがひとり占めしていいの。
臣)うん…。
 
 
♡は顔を上げて
目を潤ませたまま、笑った。
 
 
♡)パパとママは私たちのこと
  宝物って言ってくれるし…
  それは本当だと思うんだけど…
臣)うん…。
♡)子育てしたことない私が言っても
  何か違うかもしれないけど…
臣)うん…。
♡)「一番」は…
  パートナーでいいと思うの、私。
臣)……。
♡)パパが一番愛してるのはママで
  ママが一番愛してるのはパパで
  それでいいの。
  それがいいの。
臣)……。
♡)順番つける必要はないし
  親と子の間にも無償の愛はあるけど
  でも、それでも。
臣)……。
♡)全く別の場所で生まれて育って
  そんな二人が出会って愛し合うって
  本当に奇跡だと思うから…。
臣)……ん、そうだな。
 
 
もし子供が生まれたら
もちろんこれほどまでにないくらい
愛するとは思うんだけど…
 
そんな子供もいつかは
かけがえのないパートナーを見つけるわけで。
 
そしたらやっぱり最後に残るのは
自分が見つけたパートナーなんだよな。
 
子供がそれを理解するのは
実際に自分が大人になって
自分もそういう相手にめぐり逢ってからだと
思うけど…。
 
 
だからきっとこの先も…。
 
俺が一番愛してるのも
一番大切なのも
 
死ぬまでずっと、♡だと思うんだ。
 
 
臣)♡……、
♡)ん…?
 
 
……そっと触れた唇。
 
 
♡は俺のキスに応えるように
自分からも唇を合わせてくれて…
 
 
俺を包み込むように優しく抱きしめながら、
 
 
「臣くん、愛してるよ。」
 
 
そう囁いてくれた。
 
 
胸にあたたかく広がる、愛しい気持ち。
 
 
臣)♡……、
♡)…、っ
臣)…♡……、
♡)……ん…、っ……
 
 
想いを渡し合うように…
 
何度も唇を重ね合わせる。
 
 
いつかもし、「死」という形で
どちらかがどちらかを失う日が来ても
 
 
何度も交わしたぬくもりが
 
互いに伝えあった愛情が
 
一緒に生きていたかけがえのない時間が
 
 
どうか優しく、優しく、
その心を守ってくれますように…。
 
 
 
そんなことを、願わずにはいられない夜だった。
 
 
 
 
 
 
ーendー

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  1. *** より:

    めっちゃ良い話だよ~。°(°´^`°)°。
    臣くんTくんとまさかの親戚に!?
    それも面白そうですね!

  2. さゆがん より:

    ステキな内容の回でしたー。゚(゚´ω`゚)゚。
    らいおんハートの歌詞みたいですね♬
    そんな愛し愛される人に出会いたいなぁ

  3. 臣すき より:

    臣ちゃんの想うこと全てが泣けるねんけど…。

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