[178]ごめんね(岩&◇Side)

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J)少しは落ち着いた…?
 
 
気分直しに一杯飲もうって
連れてきてもらったバーのカウンターで
 
Jさんはあたしの背中を
優しくトントンとさすってくれた。
 
 
◇)ほんとに…すみませんでした…。
 
 
目の前には、甘くて優しいカクテル。
心がほっと安らいだ。
 
 
J)彼、あんなタイプだとは
  思わなかったな〜〜
◇)……
J)男らしくて爽やかなタイプだと
  思ってたんだけど…
◇)……
 
 
あたしもそう思ってた。
付き合うまでは。
 
 
部署は違うけど
結構積極的にアプローチしてきてくれて
いつも明るくて、男らしくて。
 
 
でも…
付き合ってみたら…
男らしいっていうより、
プライドが高い自信家で。
 
なんか違うかもって思い始めて
気付いたら段々、冷めてきてた。
 
 
J)動画ってのはハッタリ。ごめんね。
  でもさすがにもう…
  何もしてこないでしょ。
◇)…本当にありがとうございました。
 
 
Jさんが助けてくれなかったら…
逆上したあいつに殴られてたかもしれない。
 
無理やりホテルに
連れ込まれてたかもしれない。
 
そう考えたら、また鳥肌が立った。
 
 
ほんとどこまで見る目ないの、あたし。
 
 
◇)あんな奴と付き合ってたなんて…
  人生の汚点です。
J)あはははw
◇)ほんとに…気持ち悪かった…。
 
 
前はキスもHもしてたなんて
信じられない。
 
 
◇)あたし…自分でも不思議なんですけど…
J)うん?
◇)どんなに好きで付き合ってても
  別れると、ほんと嫌になるんです。
J)へぇ?
 
 
今までの彼氏、みんなそう。
 
 
◇)気持ちが冷めるのと一緒に
  思い出も冷めちゃって…
J)……
◇)なんでこんな人と付き合ってたんだっけ…
  この人とほんとにキスとか
  そういうこと…してたんだっけって。
  思い出すだけで気持ち悪くて。
J)ぶっww
  それは潔癖だねぇ?
 
 
潔癖…なのかな…?
 
 
J)それは全部、
  ◇ちゃんから振ったんじゃないの?
◇)……
 
 
確かにほとんどそうかも。
 
あたしがフラれる時は
あたしももう冷めてる時だし…。
 
 
J)可哀想な元カレたち…w
 
 
そう言ってJさんは笑いながら
「さっきの彼は全然可哀想じゃないけどね」
って、付け足した。
 
 
J)とりあえず、あんな裏道を
  夜に一人で歩いちゃダメだよ。
◇)はい…。
 
 
もう二度と、あんな思い…したくない。
 
 
◇)あたしが空手有段者とかだったら…
  ぶちのめしてたのに…
J)あはははw
 
 
力で負けるなんて、悔しすぎる。
 
 
J)それで姫も
  ボクシング習ってるみたいだしねー。
◇)あ…、
J)◇ちゃんも何か習ったら?
◇)……
J)可愛い子は危険も多いから
  武道を身につけた方がいいですよ?w
◇)……
 
 
あたしは♡ちゃんほどの危険なんて
絶対ないと思うけど…
 
でも、考えてみようかな。
 
 
あたしが習ってたのなんて
バレエに茶道、華道。
役に立たないのばっかり。
 
 
店)はい、どうぞ。
◇)…わぁ……
 
 
目の前に置かれたのは
可愛く細工されたストロベリー。
 
 
Jさんはそれをパクッと一口頬張ると、
 
 
J)例の彼とは、仲直りできたの?
 
 
そんなことをサラリと聞いてきた。
 
 
◇)…え…っと……
 
 
そうだった。
今日、剛典に連絡しようと思ってたのに。
 
 
◇)彼…とは…
  別れることに…しました…。
 
 
そう言って、
自分の言葉なのに違う誰かが言ってるみたいな
変な感覚がした。
 
 
J)あーーー、………そっか。
 
 
Jさんはカランと氷を転がして
ロックグラスを持ち上げて…
 
 
J)…やっぱり…許せなかった?
 
 
少し苦笑いして、あたしの顔を覗いた。
 
 
◇)……
 
 
許せる許せないとかじゃなくて…
 
もう考えるのが苦しいから…
 
こんな自分、嫌だから…
 
 
◇)…好きな人が…出来たんです。
 
 
またどこか他人事みたいに聞こえる
自分の言葉。
 
 
J)へぇ…なるほど…。
◇)……
J)…俺だったりしてーw
◇)へ?!///
 
 
ほっぺをつんと突かれて
思わず変な声が出た。
 
 
J)冗談だよw
◇)……///
 
 
Jさんにマジ恋するなんて…恐れ多いです…。
 
 
J)そっかぁ…
  その「好きな人」が
  タカノリくんなのかな?
◇)……はい???
J)ごめんね、通りがかったのが
  タカノリくんじゃなくて
  ただのおじさんでw
◇)…っ
 
 
何を…言ってるの…?
 
 
ぽかんとするあたしに、Jさんは笑いながら
 
 
J)だってさっき言ったでしょ。
  タカノリって。
 
 
そう言った。
 
 
J)あんな場面で
  本当に好きな人が助けてくれたら
  少女漫画みたいだけど…w
◇)………あた…し…
  剛典って…言いましたか…?
J)うん。
◇)……
 
 
パニックだったから…覚えてない。
 
 
J)どんな人なの?
  その新しく好きになった人は。
◇)…っ
 
 
Jさんはにっこり笑って
そう聞いてくれるけど…
 
 
◇)剛典…は……
  別れようと思ってる…彼氏…です…。
 
 
あたしがそう言うと、
 
 
J)あれ?w
 
 
そう言って、また笑った。
 
 
J)そっかそっか、ごめんごめんw
  じゃあタカノリは
  思い出すだけで気持ち悪くなる元カレ達の
  仲間入りする人ね?w
◇)…っ
J)じゃあそっちじゃなくて。
  新しく好きになった彼の話、してよ。
◇)…っ
 
 
そう言われて、
何も言葉が出てこなくなった。
 
 
代わりに出てきたのは、
自分でもよくわからない涙で。
 
 
どうしてあたし…
 
 
◇)…っ
 
 
もう、わからないことばかりだよ…。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
臣)友達の店でいい?
岩)うん。
 
 
そう言って臣さんが連れてきてくれたのは
クラブっぽいバー。
 
 
臣)いつもTAKAHIROさんと来るんだ。
岩)へぇ。
男)おお、臣!久しぶり!
臣)どうもw
  この間はごめんね、迷惑かけて。
男)ははははw
臣)腹減ったからなんか適当に作って。
男)はいはいw
 
 
そんな会話をして
二人でカウンターに座ると、
 
「前来た時は潰れちゃってw」
 
そう言って臣さんが笑った。
 
 
岩)臣さんが潰れるとか珍しいね。
 
 
少し意外で、俺がそう言うと…
 
 
臣)んー、……♡が家出してた時。
 
 
そう言われて、納得した。
 
 
臣)何飲むー?
岩)うーん…
 
 
アルコールメニューと
棚のリキュールを見比べる。
 
 
臣)あれ、あの酒見た事ない。
岩)ん?
 
 
臣さんが指差したのは
一番端にある赤いボトル。
 
でも俺の目に映ったのは
そのボトルじゃなくて…
 
 
ボトル越しに見えた、◇の姿だった。
 
 
岩)…っ
 
 
一瞬、時が止まって…
意味がわからなくて。
 
 
俺…疲れすぎて幻見てんのかなって…
 
 
でも…
 
固まる俺の横で、臣さんが…
 
 
臣)あれ…?◇ちゃん…?
 
 
そう言ったから、本物だって確信した。
 
 
岩)なん…で…こんなとこに……
 
 
俺が思わず腰を上げると、
隣に見えたのは男の姿。
 
 
岩)…っ
 
 
あいつ…確か…
 
 
「前に言ったでしょ?あたしの憧れの人♡」
 
 
◇がそう話してた、Jっていう男だ。
 
 
写真も見たから覚えてる。
 
 
岩)…っ
 
 
てゆーか…
◇、泣いてる…?
 
 
__ガタンッ
 
 
岩)◇……!!
 
 
涙を拭うその姿に
俺は思わず席を立って、名前を呼んだ。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
「◇……!!」
 
 
突然名前を呼ばれて
その声に、時が止まった。
 
 
幻聴かなって…一瞬そう思って…
 
ゆっくり顔を上げると…
そこにいたのは、
 
 
岩)◇…っ
 
 
もう一度あたしの名前を呼んだ、
剛典だった。
 
 
◇)…っ
 
 
剛典の顔を見た瞬間…
剛典の声を聞いた瞬間…
 
 
心臓がドクンッて…激しく揺れて。
 
 
あたしの身体が…
あたしの本能が…
 
何か知らせるように
何か叫ぶように
 
ドクドクと、音を立てる。
 
 
◇)ごめん…なさい…っ
 
 
頭が…追いつかなくて…
 
気持ちが…追いつかなくて…
 
 
◇)あたし、帰ります…っ
 
 
必死に財布から取り出したお札を
カウンターに乗せた。
 
 
J)え、ちょ…っ、◇ちゃん?!
◇)失礼しますっ…
 
 
震える手でバッグを掴んで、立ち上がって。
 
 
岩)◇…!!待って…!!
◇)…っ
 
 
逃げるように入口まで走って
勢いよく開けた扉。
 
夏の生温い空気が
一気に肌にまとわりついて
息が苦しくなる。
 
 
岩)待って!!!
◇)…っ
 
 
階段を駆け降りようとしたら
後ろから掴まれた腕。
 
 
岩)頼むから…待って…!
 
 
走って追いかけてきた剛典の顔を、
あたしは見れない。
 
 
◇)…っ
 
 
どうしてあたし、逃げたんだろう。
 
 
だって…
 
連絡しようと…思ってたんだよね…?
 
 
だったら…
 
今ここで、言えばいいのに…
 
 
別れたい、って。
 
 
◇)…っ
 
 
あたしがいつまでも先延ばしにしないように
きっと神様が今、会わせてくれたんだ。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
俺が思わず声をかけたら、
◇は逃げるようにいなくなって。
 
 
慌ててその背中を追いかけて、捕まえた。
 
 
でも…
なんで俺、追いかけたんだろう。
 
この腕を掴んで、どうしたいんだよ。
 
 
岩)…っ
 
 
引き止めたくせに、
言葉が…出てこなくて…。
 
 
なんで…泣いてた…?
なんで…あいつといた…?
 
 
聞きたい事は、聞けるわけない。
 
 
◇)……離して…。
 
 
小さくそう言われて、
俺は掴んでた◇の腕から、力を抜いた。
 
 
岩)……
◇)……
 
 
ずっと会いたかった。
 
 
◇は顔を上げてくれないけど…
今、目の前にいる。
 
 
それだけで…
 
 
俺の身体が…
俺の本能が…
 
 
好きだって叫ぶみたいに…
 
ドクドクと、音を立ててる。
 
 
岩)元気…だった…?
 
 
やっと喉の奥から出てきた俺の言葉に
◇は下を向いたまま、小さく頷いた。
 
 
岩)…そっ…か、良かった…。
 
 
俺はそれしか言えなくて、
 
また流れる、沈黙の時間。
 
 
岩)……
◇)……
 
 
好きだ……。
 
やっぱり、こんなにも。
 
 
目の前にいる◇を、抱きしめたくて仕方ない。
 
 
岩)…◇……、俺……
◇)…っ、もう…っ
 
 
言いかけた俺の言葉は遮られて…
 
 
◇)お花…持って…こないで…
 
 
その言葉に、胸を抉られた。
 
 
岩)…っ
 
 
息が…上手く…吸えなくて…
 
 
岩)…迷惑…だった…?w
 
 
必死で返した返事は、震えてて。
 
 
きっと無理して笑ってる今の俺は
誰が見ても、引きつってる。
 
 
◇)そうじゃ…っ
 
 
俺の言葉に顔を上げた◇は
今にも泣きそうな顔をしてて…
 
やっと合った目と目は、またすぐに離れた。
 
 
「そうじゃない」って言いかけた◇は
俯いたまま、ゆっくり口を開く。
 
 
◇)剛典…忙しいんだから…
岩)…っ
 
 
そんな風に、思われたくない。
 
忙しいのに無理してるとか…
そういうのじゃなくて…
 
 
あれは俺の…
 
 
◇)だから、もう…来ないで…
岩)…っ
 
 
◇の声も、震えてる。
 
 
◇)…あた…し…、ちゃんと…別れたい…。
岩)……え…?
◇)距離置くとか…中途半端なことして…
  間違ってた…。
岩)…っ
◇)ちゃんと…別れたい…。
  …ごめん…ね…?
岩)…っ
 
 
俺と目も合わさずに下を向いたまま
声を震わせてそう告げる◇に
 
俺は何も言えなくて…
 
 
頭が真っ白になった。
 
 
別れるって…
 
俺と…?
 
 
岩)なん…で……
◇)…っ
 
 
ああ…ダメだ…
頭が追いつかない…。
 
 
岩)……別れたく…ない…。
 
 
呆然としながら…
出てきたのは、本心で。
 
 
頭が追いついてないくせに
涙だけは勝手に流れてこようとするから、
必死に堪える。
 
 
岩)…なん…で……
◇)……
岩)好きな…男でも…出来た…?
◇)…っ
 
 
締め付けられる喉を必死にこじあけて、
俺がそう聞けば…
 
 
◇は震えてる手をぎゅっと握って
小さく頷いた。
 
 
岩)…っ
 
 
心臓が押し潰されたみたいに、苦しくなって…
 
 
周りの音が…
 
一瞬で、消えた気がした__
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
「好きな…男でも…出来た…?」
 
 
そう聞かれて、頷いた。
 
 
頷いたのに、その瞬間に
心臓がギュッて…苦しくなって…
 
 
気付いたら、堪えきれない涙が
頬を伝ってた…。
 
 
◇)…っ
 
 
剛典の顔は…見れない…。
 
 
だって…
 
さっき一瞬顔を上げた時に見えたのは
今にも泣きそうな剛典の顔だったから。
 
 
あたしは必死に下を向いて
唇を噛みしめて…
 
泣いてることを気付かれないように
握り拳にさらに力を込めた。
 
 
岩)…◇……、
◇)…っ
 
 
あたしの名前を呼ぶ、剛典の声に…
 
また身体が…本能で…反応する…。
 
 
岩)ほん…と…?
◇)…っ
 
 
……剛典の声が…、震えてる…。
 
 
岩)ほんと…なら…
  俺の目…見て…、言って…。
◇)…っ
 
 
ドクンッ……
 
 
また心臓が、痛いくらいに音を立てた。
 
 
岩)好きな男…出来たって…
  俺の目…見て…言ってよ…。
◇)……ッ
 
 
もう…涙は…
隠しきれないくらいに
 
次々と下にこぼれ落ちてて…
 
 
◇)…っ
 
 
…息が吸えない。
 
 
苦しくて…
 
苦しくて…
 
 
胸が…張り裂けそう…。
 
 
◇)…っ
 
 
剛典の目を見てなんて…
言えるわけ…ない…。
 
 
岩)……なんで…泣くの……
◇)……っ
 
 
顔を上げられないあたしの視界に映ったのは…
 
剛典の足元にも零れた滴。
 
 
◇)…っ
 
 
剛典も泣いてるのがわかって
 
あたしの心臓はもう
押し潰されたように、苦しくなった。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
ほんとに…別れんの…?
 
ほんとに…好きな奴出来たの…?
 
 
考えたくない事実が
頭の中をぐるぐると駆け巡って…
 
 
◇はただただ、涙を流すだけ。
 
 
我慢してた俺の涙も
気付けば頬から流れ落ちていた。
 
 
岩)……さっきの…男…?
◇)……
岩)J…だっけ…。
 
 
俺がそう言うと、◇は首を横に振って…
 
 
岩)じゃあ…優助…?
 
 
聞きたくもないその答えに
奥歯を噛みしめるけど…
 
 
◇が小さく頷いたのを見て、
身体中が、絶望に染まった気がした。
 
 
もう…何も考えたくなくて…
考えられなくて…
 
 
岩)ほんとに…好きなの…?
 
 
そう言って無理やり笑ってる俺は…
また引きつってて…
 
まるで自分が自分じゃないみたいだ。
 
 
岩)嘘だろ…?
 
 
信じたくない。
 
信じられない。
 
 
…だって…◇は俺の目を見ない。
 
 
嘘だって言ってくれよ…。
 
 
なんでそんなに泣いてんの…
 
 
心変わりした罪悪感…?
 
 
岩)なぁ、◇……、
◇)……
岩)こっち見ろよ…っ
◇)…っ
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
剛典に肩を掴まれたけど…
あたしは顔を上げられなくて…
 
 
……もう、無理。
 
 
◇)嘘じゃない…っ!!
 
 
あたしは意を決して、口火を切った。
 
 
◇)優助が…好きなの…っ
岩)…っ
 
 
ああ…どうして…
 
自分の言葉なのに…自分じゃないみたい。
 
 
◇)だから剛典とは別れたいの…っ!
岩)…っ
 
 
身体中が叫んでるのがわかる。
でも、もう…戻れない。
 
 
◇)あたし…っ
岩)嘘だ……!!
◇)…っ
岩)そんなん…嘘だ…っ
◇)…っ
 
 
やめて…
 
もう、やめて……
 
 
◇)嘘じゃないよ…っ!
岩)…っ
◇)あたし、優助とデートもしたし…
  優助の家にも泊まったの!!
岩)…っ
 
 
目を合わせられないまま
そう言ったあたしの言葉に、
剛典は一瞬固まって…
 
剛典の手は…
あたしの肩から、力なく落ちていった。
 
 
◇)もう、剛典とは戻れない。
 
 
これでいい。
 
これでいいんだ…。
 
 
◇)……別れて…ください。
 
 
あたしのことなんて
もう忘れてよ…。
 
 
剛典のこと…こんな風に傷つけて…
泣かせて…
 
もう…嫌なの…。
 
 
◇)…ひっく……っ
 
 
涙が…止まらない…。
 
 
岩)俺のこと…もう好きじゃないなら…
◇)…っ
岩)ほんとに…別れたいなら…
◇)…っ
岩)俺の目…見て、言ってよ。
 
 
剛典は震える声で
そっとあたしの手を取った。
 
 
◇)…っ
 
 
あたしの手を握る大きな手も、少し震えてる。
 
 
……最後に…ちゃんと言わなきゃ……
 
 
そう思って、顔を上げたけど…
 
 
◇)…っ
 
 
剛典の顔を見た瞬間に、
また涙が溢れ出して…
 
 
岩)…ごめ…ん…、……好き……
◇)…っ
 
 
剛典の言葉と涙が、一緒にこぼれ落ちた。
 
 
あたしは…
 
…胸が…張り裂けそうで…
 
 
◇)ごめんね…剛典…、…っ
 
 
剛典の手をほどいて、
そのまま階段を駆け降りた。
 
 
バクバクと悲鳴を上げてる心臓と…
止めどなく溢れる涙で…
 
足元がもつれて、もうわけがわからない。
 
 
◇)はぁ…っ、はぁっ……
 
 
こんなあたしに…
好きとか言わないで…っ
 
 
◇)はぁっ、…はぁ…っ…
 
 
苦しい…。
 
苦しいよ…。
 
 
◇)……ふぇ…ぇ……っっ
 
 
どうしてこんなに苦しいの。
 
 
どれくらい走ったかわからない。
 
途中でもう、足が動かなくなって…
あたしはその場に座り込んだ。
 
 
◇)ふぇぇ……っ
 
 
こんな苦しいの…初めてで…
もう…わかんないよ…。
 
 
どうして…
 
どうして…
 
 
◇)……ッ
 
 
剛典をあんなに傷つけて…泣かせて…
 
 
あたしはもう…消えてしまいたい…。
 
 
 
 
 
ーendー

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  1. のんちゃん より:

    岩ちゃん切ない・・・別れて欲しくないよ。
    臣くんの暗黒期も辛かったけど岩ちゃんの方が辛い。泣き過ぎて目がヤバイ事に・・・
    辛過ぎから早く臣くん♡ちゃんのラブラブストーリーと、隆二君ストーリー待ってます。まだ絶対岩ちゃんの事、好きな筈。絶対、優助じゃないよ〜(涙)いつも言ってますが本当に実写化して欲しい。書籍化でも良い。絶対買うのに(^ω^)

    • マイコ より:

      そんなに泣かないで〜〜〜( ´・・)ノ(._.`)よしよし
      臣くんの暗黒期なんて可愛いもんだったよね… ←笑
      書籍化貯金してるからいつか……!笑

  2. すかい より:

    マイコさん、お久しぶりです!
    すかいと言うのですが、覚えてますでしょうか!
    高校生になってLDHから少し離れた生活をしていましたが、ふとこちらのアカウントを覗くと、変わらないマイコさんがいて、一週間ほどかけて、最初から全話読み直してしまいました!(笑)
    サイドストーリーが始まっていてびっくりしました!(^^)
    相変わらずキュンキュンさせてもらいました(^∀^) 
    しばらく読み続けます!
    そして、遅れましたが、ご結婚おめでとうございます!!仏さんとお幸せに!

    • マイコ より:

      もちろん覚えてるよ!!(´⊙ω⊙`)♡
      LDH離れしていたのね…。゚(゚´ω`゚)゚。寂しす……
      なのに全話読み返してくれたなんて……
      ありがとうっっっ!!!。゜(゜´Д`゜)゜。嬉しい!!!

  3. さゆがん より:

    まさかの鉢合わせ。。。
    どこまでも苦しいですね
    ◇ちゃん本当は心きまってるのに、、、
    タカノリのごめん、好きで心臓ぎゅーーんなりました♡笑
    バーに残された臣とJさんはどうしてるんだろw

    • マイコ より:

      ここまで言われてもごめん、好きとしか言えない素直すぎる剛典……。゚(゚´ω`゚)゚。うおおおおんっっ
      残された二人はバチバチしてるかな?w

  4. さゆれ より:

    どんどん岩ちゃんが可哀想になってくる。。。。♢ちゃんの本心ではないかもしれないけれど、今のこの二人じゃ明るい未来はないなぁ、、、、。

    • マイコ より:

      今の二人じゃ…そうですよね…もうズタボロ…。゚(゚´ω`゚)゚。

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