[154]ここにいて(隆二&♧Side)

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む)どうしてもっと早く言わなかったの!
  ばかっっ!!
♧)…っ
 
 
むーこは泣きながら私を抱きしめた。
 
 
む)ばか…っ!
  …ほんとに…ばか…っ……
♧)…っ
 
 
むーこのあったかいぬくもりに
思わず涙があふれた。
 
 
ごめんね…
 
心配かけてごめんね…
 
 
む)もう大丈夫だから。
  大丈夫だからね!
♧)…っ
む)あたしがいるから…!
♧)…っ
む)隆二くんと健ちゃんもいるから!
♧)…っ
 
 
むーこは何度も私の背中をさすってくれて
何度もそう言ってくれた。
 
 
♧)隆二く…ん……
  …大丈夫…かな…っ
 
 
健ちゃんとアパートに戻ったけど…
犯人に何かされてたら…どうしよう…
 
 
♧)隆二くんに…何かあったら…私…っ
む)大丈夫っ!!
♧)…っ
む)あんな鍛えてる男二人が向かって
  負けるはずないでしょっ!
  信じなさいっ!
♧)…っ
 
 
本当に…?
 
 
♧)ふ…ぇ…っ
 
 
お願いだから…
 
お願いだから、無事に帰ってきて……
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
健)ただいまーーー!
 
 
健ちゃんが大きな声で家に入ると
すぐさまリビングのドアが開いた。
 
 
♧)…っ
 
 
♧は俺の顔を見るなり
すぐに走ってきて…
 
 
♧)隆二くん…っ!!!
 
 
俺に抱きつくと、
泣きながらその小さな肩を震わせた。
 
 
隆)…っ
 
 
ぎゅっと…抱きしめて。
 
もう大丈夫だよ、って…抱きしめて。
 
 
きっと…
心配してたんだよな。
 
 
隆)側にいてあげられなくてごめんね?
♧)……(ふるふるっ)
隆)もう大丈夫だから…。
♧)…っ
隆)俺がいるから。
♧)…っ
 
 
そう言っても俺にしがみついて離れない♧に
健ちゃんが笑いながら言った。
 
 
健)健ちゃんも頑張ったんやで〜〜w
  ハグしてくれてもええんやで♡
♧)…っ
 
 
その声に、♧はゆっくり振り返って…
 
涙でぐしゃぐしゃになった顔で
健ちゃんを見て、困ってる。
 
 
隆)いや、迷うとこじゃないから!
  ハグしなくていいから!w
♧)え…っ
健)あははははw
 
 
健ちゃんは大口を開けて笑いながら、
 
 
健)ほら、行くで。
 
 
そう言って俺たちを
リビングに連れていった。
 
 
む)おかえりー。
健)むーちゃーーん!
  代わりにハグしてーー!
む)あはははw
  はいはい、お疲れさまw
 
 
むーちゃんは健ちゃんの背中を
ぽんぽんと叩いて、
 
 
む)隆二くんもおかえり。
 
 
そう言って優しく笑ってくれた。
 
 
それから4人で一旦座って、
今回のことを共有して。
 
 
健ちゃんが犯人に書かせた誓約書を
ちゃんと読ませてもらうと、
 
今回したことを全部認めさせた上に
今後一切♧に近付かないこと、
俺たちのことを口外しないこと、
その他もろもろ全部ちゃんと文章になってて…
 
言葉を選びながら
♧にも優しく説明してくれた。
 
 
健)あいつも家族がおって、仕事もしてて…
  社会的立場もあるやろうから
  もう大丈夫やと思うで、ほんまに。
♧)……(こくん)
健)まぁ、単身赴任で寂しいところに
  むっちゃ可愛え♧ちゃんに会って
  一目惚れしてもうたんやな!w
む)ほんとそんなど変態、
  あたしだったら頭突き食らわして
  急所蹴り飛ばして、
  再起不能にしてやったのに!!
健)ぶはははっ!たくましいな!w
隆)……
 
 
姉御……
ほんとにやりそう……
 
 
む)今度から何かあったら
  すぐにあたし達に言うこと!!
♧)…っ
む)あんたに何かあってからじゃ遅いんだよ!
隆)…っ
 
 
その言葉に、ゾッとした。
 
 
今回は無事だったけど…
 
ほんとにもし♧が何かされてたら、
俺、正気じゃいられなかったかも。
 
 
健)そんなん隆二が相手殺してまうわw
 
 
うん。
 
 
む)だからちゃんと周りに頼ること!!
♧)…っ
む)一人じゃないんだからね?
♧)……(こくんっ)
 
 
♧は泣きながら頷いて…
 
俺はそんな♧を、腕の中に抱き寄せた。
 
 
健)隆二ほんまに怖かったんやで〜?w
む)そうなの?
健)あんなにブチギレてるとこ
  初めて見たんちゃうか。
む)えーーー!
健)元ヤン降臨しとったでw
隆)いや、だから…
  余計なこと言わないで…w
健)♧ちゃんも気ぃつけや〜?
  隆二怒らしたらあかんで〜〜w
♧)……
 
 
健ちゃんの言葉に、
泣き顔のまま俺を見上げる♧。
 
 
♧)……
隆)……
 
 
俺が♧に怒るわけないじゃん。
 
 
頬の涙を拭いてやって、
♧の顔を両手で包んだ。
 
 
隆)へへ…っ
 
 
……ぎゅっ。
 
 
もう一度腕の中に閉じ込める。
 
 
む)こんなにゃんちゅうが
  ほんとに怖いの…?
健)ぶはははw
む)ほんと…隆二くんがいたら安心だなっ
健)うん。
む)じゃああたし達は
  そろそろ帰りますかーー
健)せやな。送ってくで、むーちゃん。
む)さんきゅーーー
 
 
そう言って立ち上がった二人。
 
 
健ちゃんは
こんなもんここにあったら
気持ち悪いやろ、って。
 
俺の家の押し入れにでもぶちこんどくわ
って言って、証拠を全部持って帰ってくれた。
 
 
むーちゃんは
♧のありがとうの言葉に
最後にもう一度♧をぎゅっと抱きしめて
帰っていった。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
健ちゃんとむーこを見送って…
 
私はどうしたらいいんだろうって
立ち尽くしてると、
 
ぎゅっと手を繋がれて
またリビングに連れていかれた。
 
 
隆)お腹空かない?
♧)え…っ
 
 
そっか…
もうこんな時間だ…。
 
でも…
 
 
♧)あんまり…空いてない…。
 
 
今日は久しぶりに
お昼にちゃんと食べたし…
 
 
隆)じゃあお風呂入って
  今日はもう休もっか!
♧)えっと…
隆)ん…?
 
 
私…ここにいて…いいの…?
 
 
隆)今日は疲れたでしょ?
  明日から休みだし、
  今日はゆっくり寝な?
 
 
そう言って、私の頭を
優しくぽんぽんしてくれる。
 
 
隆)俺もさ、今週そんな忙しくないんだ。
  明日も午後から一個、
  仕事あるだけで。
♧)……
隆)だから、明日は朝から引っ越しだよ!
♧)え???
 
 
引っ越し??
 
 
隆)まだ残ってる荷物、
  午前中に運んじゃお!
♧)…っ
 
 
運ぶって…どこに…
 
 
隆)友達がさ、軽トラ出してくれるから
  そこにパパーッと積んで。
  あの量なら1回で全部運べるし。
 
 
えっと…えっと…
 
 
ガチャッ。
 
 
隆)うーん。
  ここの部屋、俺の荷物あるけど…
  あとでよけるね!
♧)え…?
隆)ここ使って!
♧)…っ
 
 
使ってって…
 
 
隆)それから…
♧)ま、待って…っ
隆)ん???
♧)…あ…の……
 
 
私…、ここに…引っ越すの…?
 
 
♧)えっと…、
  隆二くんのおうちに…
  住む…って…こと…?
隆)……えっ!!
♧)…っ、あ、違うよね?!
  ごめん、えっと…
隆)やなの?!!
♧)え…っ
 
 
えっと…
 
 
隆)ちゃんと綺麗にするよ?!
♧)…っ
 
 
そうじゃ…なくて…
 
 
隆)お風呂もトイレもあるよ!
♧)…っ
隆)こっち!!
 
 
そうじゃ…なくて…
 
 
隆)ここがトイレね!
♧)…っ
隆)ここがお風呂!
 
 
手を引かれて、家の中を案内された。
 
 
隆)嫌かもしんないけど、
  落ち着くまではここにいて!!
♧)…っ
 
 
そう言って、
またぎゅっと抱きしめられた。
 
 
隆)心配だから。側にいて。
♧)…っ
 
 
嫌なわけ、ない。
 
側にいたい。
隆二くんの側にいたい。
 
 
隆)あんな家に絶対帰さないよ。
♧)…っ
 
 
私ももう、帰りたくない。
 
 
隆)ここにいて。お願い。
♧)…っ
 
 
その言葉に、また涙がこみ上げてきた。
 
 
迷惑じゃ…ないの…?
 
側にいてもいいの…?
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
隆)とりあえず…お風呂…っ!
  洗ってくるから!!
  休んでて!!
 
 
俺は慌てて風呂場に走った。
 
 
急いで浴槽を洗って、お湯を溜めて。
 
 
少しでも♧の疲れが取れますように!
 
入浴剤…
あ、これ前にもらったやつ!
なんか女子っぽいの!
 
 
隆)えいっ!!
 
 
ポチャン…っ
 
 
ふんわり優しい香りが立ち込める
バスルームの扉を、パタンと閉めた。
 
 
隆)……
 
 
「隆二くんのおうちに…
 住む…って…こと…?」
 
 
さっきそう言われて、ハッとした。
 
 
もう俺としては
一緒に暮らす気満々だったんだけど、
 
俺、一人で暴走してたのかなって…。
 
♧は嫌なのかなって…。
 
 
ほんとは…
好きだから一緒にいたいって
一緒に暮らそうって
 
そう言いたいけど…
 
 
こんな時にそんな告白してる感じでも
ない気がして…
 
 
でも…!!
 
今は譲れない…!!
 
 
絶対帰さないもん!!
俺が側にいるもん!!
 
 
♧が元気になるまで、俺が一緒にいる!!
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
隆二くんが入れてくれたお風呂は
優しい香りがして…
 
全身の疲れが一気に癒されるようだった。
 
 
♧)……は…ぁ……。
 
 
この一週間はずっと…
シャワーに入ってる間も怖かった。
 
 
今頃また手紙が入れられてるんだろうかって
ビクビクして…
 
 
「あたしだったら頭突き食らわして
 急所蹴り飛ばして、
 再起不能にしてやったのに!!」
 
 
♧)……
 
 
むーこだったら…
私みたいに泣いたりせずに
隆二くんや健ちゃんに迷惑かけたりせずに
一人で犯人をやっつけられたのかな…。
 
 
むーこみたいに…強かったら…。
 
 
♧)…っ
 
 
私は…何もできなくて…
怖くて、一人で泣いて、それだけで…
 
こんな弱い自分が、嫌になる。
 
 
どうして私…
こんなにへなちょこなんだろう…。
 
情けないよ…。
 
 
「俺だって同じように
 ♧のことが心配なんだよ…?
 ……わかってよ……。」
 
 
隆二くんに…あんな顔…させて…
胸が苦しくなった。
 
 
「落ち着くまではここにいて!!」
 
「心配だから。側にいて。
 ここにいて。お願い。」
 
 
そう言ってくれたのは、隆二くんの優しさ。
 
でも、甘えてばかりじゃダメだ。
 
 
私…もっと強くならないと…。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
♧が使えるように
物置になってた部屋を片付けて。
 
 
♧は荷物が少ないから
これで大丈夫だと思う。
 
 
隆)ふぅ…。
 
 
布団は持ってきてないから
今日はベッドで寝てもらおう。
 
 
てゆーか…
もうあの布団、捨てちゃえばいいのに。
 
ベッドあるんだから
もういらないじゃん?
 
 
♧)隆二くん!
隆)わっ!!
 
 
いきなり後ろから声をかけられて
びっくりした。
 
 
隆)お、おかえり。
♧)お風呂…ありがとう。
隆)うん!
♧)気持ち良かった…。
隆)良かったw
 
 
お風呂上がりで
赤みがかってる♧のほっぺに
少しほっとする。
 
ずっと青白い顔をしていたから。
 
 
隆)あ、あのさ!
  荷物片付けたから!ここ使ってね!
♧)あ…っ
  ……ごめんね、迷惑かけて…
隆)なんで!気にしないで!!
 
 
迷惑なわけないじゃん!
何言ってんの!!
 
 
♧)あの……
隆)……
 
 
♧はためらいがちに、口を開いた。
 
 
♧)私…すぐには難しいかもしれないけど
  ちゃんとお家探すから…っ
隆)えっ……
 
 
ガーーーン……
 
 
隆)…探さなくても…いいじゃん…
♧)隆二くんに迷惑かけたくないから…っ
隆)…っ
 
 
迷惑じゃないのに…
 
側にいてって…言ってるのに…
 
 
♧)だから、時間ができたら
  探しに行くから、だから…っ
隆)じゃあ俺が探す!!
♧)えっ……
 
 
思わず口をついて、出た言葉。
 
 
隆)俺の知り合いに頼んで探してもらうよ!
  その方が安くしてもらえるし
  いい部屋も見つかるし!ねっ!!
♧)でも……
隆)いいじゃん!そうしよう!
  明日言っとくから!!
♧)……わかった、ありがとう。
 
 
焦った俺は、意味わかんない嘘をついて。
 
 
一緒に暮らそう。
好きだから側にいて。
 
この時にそう言えてたら
ややこしいことにはならなかったのにって
後から後悔するなんて、気付かなかった。
 
 
♧)じゃあそれまで…
  ここでお世話になってもいいですか…?
隆)うんっ!!!
 
 
やっとそう言ってくれた♧が嬉しくて
俺は元気良く返事をした。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
隆二くんが片付けてくれた部屋に
小さく自分の荷物を置いた。
 
 
広いなぁ…。
 
ここだけで、私のアパートくらいある…。
 
 
♧)……
 
 
正直、あんなに家賃の安いおうちが
また見つかるのか不安だけど…
 
隆二くんが探してくれるって言うから
そこは甘えさせてもらうことにした。
 
私は不動産の知り合いなんていないし…。
 
 
早く見つかるといいな。
 
 
隆)そろそろ寝る…?
♧)あ…っ
 
 
お風呂上がりの隆二くんが戻ってきて…
 
 
隆)久々にお風呂入ったから
  気持ち良かったーー♡
 
 
そう言って、
前髪をふわふわさせながら笑ってる。
 
 
♧)……
 
 
可愛いな…。
 
隆二くんが笑ってくれるだけで
なんか癒される…。
 
 
隆)やっぱりシャワーより
  ちゃんとお風呂入った方がいいよね。
  明日からそうしよっか♡
♧)……
 
 
まだ実感が湧かない、
隆二くんとの共同生活。
 
 
でも…
そんな風に楽しそうに笑ってくれたら
どこかほっとする。
 
 
隆)よし、じゃあ今日は
  明日の引越しに備えて
  ゆっくり寝るよーーー。
 
 
そう言って、手を繋がれた。
 
 
♧)え…っ
 
 
連れていかれたのは、寝室。
 
 
♧)…っ
 
 
大きなベッド。すごい…。
 
 
ふかふか気持ち良さそうなそのベッドに
私が見とれてると…
 
 
隆)一緒に寝ても…いい?
 
 
そう言われた。
 
 
♧)……
 
 
一緒…に……?
 
 
♧)え?!!
 
 
思わず驚いて、隣を見上げると、
 
 
隆)あ、ちがっ、変な意味じゃなくて!///
  変なこともしないから!絶対!!
♧)…っ
 
 
そんな誤解は…してないけど…
 
 
隆)嫌なら俺…ソファーで寝るけど…
♧)私がソファーでいいよっ!
隆)いや、それはダメ!!!
  ちゃんとゆっくり休まなきゃダメ!!!
♧)…っ
隆)だから、俺と寝るの嫌だったら
  一人でここで寝て?
♧)…っ
 
 
そんなの…ずるい……
 
嫌じゃないもん…。
 
嫌なわけないもん…。
 
 
♧)……
 
 
「一人でここで寝て?」って言われて…
少し寂しかった。
 
 
隆)じゃあゆっくり休むんだよ?
 
 
優しい声で、そう言われて。
 
私の頭をぽんぽんして
いなくなろうとした隆二くん。
 
 
♧)…っ
 
 
私は思わず後ろから
隆二くんのTシャツを掴んだ。
 
 
隆)え?
♧)…っ
 
 
行かない…で…っ
 
 
隆)……ど…したの…?
♧)…っ
 
 
一人に…しないで……
 
 
♧)…そばに…いて……。
隆)…っ
 
 
こんな弱虫な自分、嫌だけど…
せめて今日だけは離れたくなくて…
 
小さくこぼれた本音。
 
 
隆二くんはすぐに私を
ぎゅっと抱きしめてくれた。
 
 
隆)一緒に寝ていいの…?
♧)……(こくん)
隆)……///
 
 
この腕の中に、ずっといたい。
 
 
隆)ベッド入ったら…
  絶対なんもしないから…
  今だけこうさせて……///
 
 
そう言って隆二くんは
隙間がないくらいにぎゅぅっと
私の身体を抱きしめてくれた。
 
 
とくん…
 
とくん…
 
 
…心も…身体も…ほぐれていくみたい…。
 
 
すごく…安心するの…。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
一応ダブルベッドだから
二人で寝ても、身体が密着するわけじゃない。
 
まぁ少し動けばくっつくんだけど…
 
 
♧)こんなふかふかなベッド…初めて…
 
 
♧がこっちを向いて
可愛くそう言った。
 
 
隆)……
 
 
顔…近いなぁ……///
 
 
♧)いつもお布団だから…
  なんか不思議……
 
 
そう言って喜んでくれてるのが
嬉しくて。
 
 
♧)…隆二くん……
隆)ん……?
 
 
またこっちを向いた♧の瞳が
じっと俺を見つめる。
 
 
♧)も一つだけ…
  ワガママ…言っても…いい…?
隆)え…?
 
 
も一つだけって…
なんか俺、ワガママ言われたっけ?!
 
てゆーかそんなん、
聞かなくてもいいよ!
なんでも言ってよ!!
 
 
隆)どうした…?
 
 
そう言って笑いかけると、
 
 
♧)……手…、繋ぎたい……。
 
 
♧が言ったワガママは
ワガママでもなんでもなくて。
 
 
すごくささやかな、可愛いお願いだった。
 
 
隆)ん……、
 
 
タオルケットの中で、
♧の手を手繰り寄せて、きゅっと握った。
 
 
♧)……えへへ…ありがとう……♡
隆)……///
 
 
可愛い。
 
胸がキュゥゥッと鳴った気がした。
 
 
隆)えっと…暑くない…?
♧)うん…。
隆)寒くない?
♧)うん…。
隆)なんかあったら言ってね?!
 
 
緊張を誤魔化すように喋る俺に、
♧はふふっと笑った。
 
 
♧)大丈夫だよ…。
隆)……
♧)隆二くんがいるだけで…
  すごく…安心する…。
隆)…っ
♧)手…繋いでくれて…ありがとう…。
隆)……
 
 
その言葉が、すごく嬉しくて…
俺はなんだか泣きそうになった。
 
 
♧)会えない…間…、ずっと…
隆)……
♧)隆二くんの歌、聞いてたの…。
隆)…っ
♧)……毎日…、寝る前に…
  聞いてたんだよ…。
 
 
眠りに落ちかけてる♧が
最後に「ありがとう」って言って…
 
 
俺の目からは勝手に涙がこぼれた。
 
 
隆)…っ
 
 
一人で…不安で…怖くて…
でもそんな時に、
 
俺の歌を聞いてくれてたんだ…。
 
 
俺の歌は…少しでも…
♧の力になれた…?
 
 
隆)…っ
 
 
いくらでも歌うよ、♧のためなら。
 
これから先、いくらでも。
 
 
♧の耳元で、何度でも歌うから。
 
呆れるくらい、届けるから。
 
 
だから♧は…
 
俺の隣で、笑ってて。
 
 
俺がその笑顔を、守るから___
 
 
 
 
 
 
ーendー

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  1. マイコ より:

    おおお(´⊙ω⊙`)ありがとうございます!

  2. マイコ より:

    どうなることやら(❁´ω`❁)

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