[113]二人の夜

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K)やっべ…昨日飲み過ぎたかも。
♡)大丈夫…?
K)ああ、ありがと…。

 

渡したペットボトルを
Kちゃんは一気に飲み干した。

 

K)あんたこそ体調大丈夫??
♡)うん、もう全然大丈夫だよ。
K)良かった。

 

一番辛かったのはお昼だけで
その後は薬も効いたし
夜も普通にみんなでご飯を食べられたし。

 

それから二人で
ホテルの朝ごはんを食べに行って
また研修会場に向かった。

 

二日目の研修プログラムも滞りなく進んで…

お昼休みに私はまた
ハルくんの姿を無意識に探してたけど
ハルくんはどこにもいなかった。

 

講)皆さん、二日間お疲れさまでした。
  今回の内容は戻ったら
  直属の上司にフィードバックして
  一度面談をしてください。

♡)……

 

そーだ、明太子。忘れてた。

 

講)では最後に、
  同じグループだったメンバーに
  それぞれ簡単な手紙を書いて
  二日間の感想を1人1分で。
  それでチェックアウトしてください。

 

そう言われて、
研修を振り返りながら
グループメンバー5人に手紙を書いた。

最後の挨拶を終えて
みんなからもらった手紙を開くと…

 

『姫ちゃん、二日間ありがとう。
 姫ちゃんの笑顔に癒されました。
 会社に残るか辞めるか
 まだ決めてないって言ってたけど
 姫ちゃんならどの道を選んでも
 成功すると思います♡
 これからも応援してるね♡』

『姫ちゃん二日間お疲れさまでした。
 ほんと天然で何度も爆笑したけど笑
 姫ちゃんの活動、
 これからも応援してるから頑張って!』

『この研修でまさか姫ちゃんと同じグループに
 なれるなんて思ってなかったので
 最初は緊張しましたが、
 すぐに姫ちゃんの可愛い笑顔に
 心が和みました、ありがとう。
 姫ちゃんの笑顔とかその人柄は
 なんていうかある種、才能だと思います。
 これからもたくさんの人たちを
 笑顔にしてあげてください。』

『姫ちゃーーん!!
 二日間めっちゃ楽しかったね!!
 また社内のイベントとかで会えたら嬉しい!
 個人的には姫ちゃんのフェスの歌に
 シビれた人間なので(笑)
 姫ちゃんには歌をやってほしいです!
 CD絶対買うよ〜〜〜!!(笑)』

『姫ちゃん。
 昨日会うまで姫ちゃんのことは
 そんなに知らなくて、
 本社に芸能活動を始めた
 めちゃくそ可愛い子がいる、という噂を
 チラッと聞いたことがある程度でした。
 でも、会ってみてびっくり。
 可愛いだけじゃなくて、
 こんなに眩しいオーラを
 持ってる子なんだな、と。
 またいつかどこかで会えたら嬉しいです。
 お互いに夢に向かって頑張りましょう。』

 

♡)……

 

たった二日間一緒だっただけなのに
みんなからの手紙はすごくあったかくて…

 

女)よっし、今日はどこ飲みに行くー!
K)あたし今日は酒はいいや…
男)二日酔いか?w
女)ほら、♡も行くよっ!
♡)うんっ♡

 

私はその手紙を大事にバッグにしまって
同期たちとビルを出た。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

臣)みんな趣味があって羨ましいんですけど…
  俺、ほんとなくて。
日)うん。
臣)唯一旅行くらいかなって。
日)なるほど。
臣)俺はほんと最低限の必需品しか
  持っていかないんですけど…
日)というと?
臣)パスポート、財布、携帯。
日)それだけ?w
  着替えとかは?
臣)現地調達でw
  パンツすら持っていかないですね。
  買って履いたら捨てればいいかなって。
日)すごいねw
臣)なんかスーツケースをゴロゴロ引くのが
  面倒くさくて。
日)うん。
臣)でも、結局彼女が
  でっかい荷物持ってくから
  ゴロゴロするのは俺なんですけどw
日)あはははw
臣)あいつほんとすごいんですよ。
  出発前からお土産とかまだ入ってないのに
  もうスーツケースん中、パンパン!
日)それを登坂くんが持ってあげるんだw
臣)しょーがねぇなーっつってw
日)優しいなーーw
臣)この間一緒にLAに来た時は…
S)おーーみーーー
臣)あ。

 

やべ。また怒られる。

 

日)じゃあメンバーの話とか聞こうかな。
臣)あ、はい。

 

 

デビュー当時のことを思い返しながら
リーダー二人のことについて
いろいろ話した。

それから、
健ちゃん、岩ちゃん、ELLYのことも。

 

日)相方の今市くんは?
臣)…今市は…

 

どこからどう語ったらいいんだろう。

 

臣)今市は…俺とは…性格も真逆で
  歌い方も全然違って。
日)うん。
臣)でもだからこそお互いがお互いを
  引き立たせられるというか…
  相乗効果みたいなところもあって。
日)うんうん。
臣)俺にとっては運命の相手みたいな。
日)へぇ…
臣)歳も一緒だし、オーディションの時から
  もし合格するならこいつとしたい、
  今市と以外考えられないって、思ってて。
日)すごいねぇ…
S)それ、隆二も言ってたよね。
臣)へ?
S)なんかの雑誌で。
  相方は臣以外考えられなかったって。
臣)……ふーん、じゃあやっぱり
  今のとこカットで…
S)なんで!!w
臣)あいつが言ってたんなら
  俺まで言わなくていいじゃん…//
S)出た出た、あまのじゃくw
日)あはははw
臣)まぁとにかく…
  今市は俺にとっては…
  双子みたいな感じかな。
日)なるほどねぇ。
S)さっきから謎に今市呼びだし…ww
臣)もう!Sさんはさっきから
  うるさいよ!//
日)あはははw

 

移動の車の中でも
そんな話をしてるうちに

気付けば周りにはすごい景色が広がっていて…

 

臣)すーーっげぇ……!!

 

思わずそのパノラマに、息を飲んだ。

 

 

カ)これは最高のロケーションだなぁw
臣)マジですげぇ……
カ)じゃあ早速撮っちゃおうか!
臣)はい!!

 

こういう大自然を前にすると
やっぱり人間ってちっぽけだなぁって思う。

吸い込まれそうなくらい、壮大で。

 


 

臣)ほんと綺麗だなぁ……
カ)登坂くんの横顔も
  負けないくらい綺麗だよw
臣)ぶっw
カ)よーし、じゃあOK!

 

 

一通り撮り終えて、
俺は自分のスマホでも写真を撮った。

♡に送ろうっと♪

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

K)ふぅ、お腹いっぱーーい!
♡)美味しかったねーー♡
男)2軒目行くー?どうする?
女)どうしよっかーー
女)ホテル戻って部屋飲みでもいいけど。
男)お、それもいいな。
  酒買って帰るか!

 

コンビニでお酒とおつまみを買い込んで
みんなでホテルのロビーを抜けると

結婚式終わりみたいな人たちが
ぞろぞろと降りてきた。

 

女)あ、奥にもバーあったんだねー。
男)ほんとだ。
  でもホテルのバーだし高そう。
女)だね。
  あたしたちにはコンビニのビールが
  お似合いだわ。
男)あはははw

 

バーの手前で、
エレベーターを待っていると…

階段からゆっくり降りてきたのは…

 

♡)…っ

 

綺麗なドレスに身を包んだアキさんを
スマートにエスコートしてる
ブラックスーツ姿のハルくん。

 

女)うわーー……
  すっごい美男美女……//
男)ほんとだ。
♡)……

 

私がその場で動けずにいると
ハルくんの視線が、私を見つけた。

 

ハ)♡…っ!

♡)…っ

 

ハルくんはそのまま私のところまで
駆け寄ってきて…

 

女)え、知り合い?!
男)マジか!
♡)……
K)……先、上行ってるね?
♡)あ、うん…。

 

みんなはそのまま、エレベーターに乗った。

 

ハ)このホテルだったんだ。
♡)……(こくん)
ハ)体調はもう大丈夫?
♡)…うん、あの…昨日は……
ア)ハル。

 

アキさんがハルくんの隣にスッと寄り添って、
その腕に触れた。

 

ア)♡ちゃん、体調良くなったのね。
  良かった。
♡)昨日は本当にありがとうございました!
ア)いいえ。

 

そう言ってニッコリ笑うアキさんは
やっぱり大人っぽくて…素敵で…

 

ハ)アキ、先に部屋戻っててくれる?
ア)わかったわ。じゃあ行くわね。
ハ)うん。
♡)……

 

二人は…同じ部屋なのかな。

そうだよね…
恋人同士だもん…

 

ハ)♡…?
♡)…っ
ハ)良かったら少し話さない?

 

そう言ってハルくんが指差したのは
ホテルのバー。

 

♡)あ、えっと…でも……
ハ)予定ある?
♡)ないけど…

 

だって…

 

♡)私…こんな格好だし……

 

アキさんみたいに素敵なドレスじゃない。
ただのワンピース。

こんな正装してるハルくんの隣になんて…

 

ハ)何言ってるのw
  ♡はいつだって可愛いよ。
♡)……///

 

戸惑う私に、
ハルくんは優しく笑って
背中に手を添えてくれた。

私…こんなちんちくりんなのに…
一緒にいていいのかな…

 

ハ)何飲む?
♡)えっと…えっと…

 

二人で並んだバーカウンター。

カシスオレンジとか…ないのかな…
どうしよう。

 

ハ)ああ、ごめん。
  体調悪いならアルコールは控えた方が
  いいかな?
♡)あ…っ、ううん!
  体調はもう大丈夫なの!
ハ)ほんと?
♡)うん!
ハ)無理してない?
♡)してないよ!
ハ)良かった。
♡)……///

 

ハルくんの笑顔が…すごく優しくて…
あまりちゃんと、見れない。

 

ハ)普段何飲んでるの?
♡)えっと…

 

英語しか書いてないメニューに
私が困ってると、
ハルくんの手がそれをそっと取り上げた。

 

♡)カシス…オレンジ…
ハ)じゃあそれでいい?
♡)あ、うん。
ハ)すみません、カシスオレンジと
  マティーニください。
男)かしこまりました。

 

カシスオレンジあったんだ!

 

男)お待たせしました。
♡)…わぁ…っ

 

目の前に置かれたカクテル。
グラスもすごく綺麗。

 

ハ)じゃあ乾杯。
♡)乾…杯…。

 

口に付けたカクテルはすごく甘くて
緊張がほぐれていく。

 

♡)美味しい♡
  すっごく美味しい!
  こんなカシスオレンジ、初めて!♡
男)くすくす…w
  ありがとうございます♡
♡)はっ///

 

恥ずかしい。
子供っぽかったかな。あわわ…っ

 

ハ)ノワール・ド・ブルゴーニュですか?
男)はい、よくご存知で。
♡)なぁに…?それ……
ハ)カシスリキュールの中でも
  美味しいやつだよ。
  濃度が高くて…
♡)うん!高い気がする!
  なんかねっ、ぎゅぎゅってしてるの!
  すごく美味しいのっ!♡
男)くすくすw
♡)はっ…//
ハ)良かった。
♡)……///

 

私がまた俯くと、
ハルくんが隣から顔を覗いてきた。

 

ハ)どうしたの…?
♡)…なん…か…私…
  もっと大人になりたい…
ハ)え?
♡)こんなところ…来たことないし…
  緊張して…
ハ)……
♡)ハルくんと一緒にいるの…
  恥ずかしい…

 

ハルくんはすごくカッコイイのに
私だけ子供みたい…。

 

ハ)♡はそのままでいいんだよ。
♡)…っ

 

また、優しい瞳が…私を見つめる。

 

♡)えっと…ハルくん…
ハ)ん…?
♡)昨日…本当にありがとう。
ハ)うん。
♡)ほんとに…ほんとに…ありがとう。
ハ)うん。

 

ハルくんがニコッと笑ってくれた。

 

♡)……///

 

それだけで、すごく嬉しい。

 

ハ)まさかこんな場所で
  ♡に会えるなんて思ってなかったから…
  すごくびっくりしたよ。
  昨日も今日も。
♡)私も…っ!びっくりした…!!

 

だって…
ここは福岡なのに。

 

♡)ハルくんは…どうして?
ハ)俺は昨日までセミナーを受けてて
  今日は知り合いのパーティーだったんだ。
♡)そうなんだ…。

 

だからこんな格好してたんだ。

 

♡)アキさんは…

 

一緒に来てるんだよね?
いいのかな…

 

ハ)アキ?
♡)あ、…うん…っ…、えっと…
  すごく綺麗な人だね…!優しくて…

 

変なこと言ったら
ハルくんが早く帰っちゃうかなって思って
言えなかった。

 

ハ)あははw
  伝えておくよ、喜ぶよw
♡)……

 

ハルくんと…
すごくお似合いだった。

 

ハ)アキとはアメリカにいる時から
  ずっと一緒なんだ。
♡)…っ

 

その言葉に、
どうしてか胸がズキッと音を立てた。

 

♡)そう…なんだ。
ハ)うん。
♡)……
ハ)それで、一緒に日本に来て…
  今は一緒に働いてる。
♡)……

 

ハルくんの恋人で…
仕事も一緒にしてる人。

 

ハ)♡…?どうしたの?
  やっぱり体調悪い?
♡)あ、ううん!元気だよ!!
ハ)……
♡)えっと…、そうなんだ!
  私はね、二日間の研修だったの!
  キャリアアップ研修で…
  今までの経歴を整理したり、
  今後のビジョンをまとめたり…
ハ)うん。
♡)全国の支社からいろんな人が集まって…
  すごく楽しかったよ!

 

よくわからないけど
寂しい気持ちを誤魔化すみたいに、
必死に喋って…

私…変なの…。

 

ハ)♡は…仕事の他にも
  いろいろ頑張ってるもんね。
♡)え…?
ハ)雑誌、見てるよ。
♡)えっ……

 

見て…くれてるの?

 

ハ)毎月見てる。
♡)……///
ハ)♡が一番可愛い。
♡)え??
ハ)どのモデルさんより、♡が一番可愛いよ。
♡)////

 

そんなこと…サラッと言わないで。

 

ハ)先週の、❀❀フェスの映像も見たよ。
♡)あ…っ

 

うそ…っ
見て…くれたの…?

だって…あれは…
ハルくんのことを想って…

 

ハ)ありがとう。
♡)…っ

 

気付いて…くれたの?

 

ハ)ありがとう、♡。
♡)…っ

 

その言葉に、涙が浮かんできた。

 

♡)ハルくんに…届きますようにって…
ハ)……
♡)そう…思って…
ハ)うん。
♡)…っ
ハ)ちゃんと届いたよ。
♡)……ぐす…っ
ハ)何度も…何度も…聴いた。
♡)ハル…くん…っ

 

こらえきれずに、こぼれた涙。

 

ハ)ごめんね、♡。
♡)……(ふるふるっ)

 

ダメだ。
私が泣いたら、ハルくんは自分を責めちゃう。

そんなの嫌。

私、もう絶対泣かない。

 

♡)えへへ…聴いてくれてありがとう♡

 

笑って。
ハルくんの前では、笑顔でいたい。

もうこれ以上、責めないで。
自分のこと、責めないで。

 

ハ)♡は本当にすごいね。
  歌であんなにたくさんの人に
  感動を届けられて…
♡)……
ハ)歌だけじゃない。
  きっと、♡の笑顔や頑張ってる姿を見て
  勇気をもらってる人が
  たくさんいると思うよ。
♡)ハル…くん…
ハ)俺も応援してるから…頑張ってね。
♡)……うん♡

 

ハルくんの言葉に…笑顔に…
胸があったかくなる。

 

私、頑張るよ。
いっぱいいっぱい、頑張る。

そしたら離れてても…
ハルくんは見ててくれる…?

 

♡)ハルくんは…
  どんなお仕事してるの?
ハ)俺は……

 

ハルくんは日本に戻ってから
3年間現場で働いて
その後、お父さんの跡を継いで
社長になったって。

3年間で携わった現場の話とかを
いろいろ聞かせてくれて

私の知らないハルくんの時間を
少しでも教えてもらえて、
私はすごく嬉しかった。

 

ハ)日本はね、先進国に比べて
  電磁波対策とかもすごく遅れてるんだ。
♡)電磁波…?
ハ)そう。電子機器から出てる電磁波は
  人間の身体には本当に良くないんだけど
  日本では全然注目されてなくて。
♡)そうなんだ!
ハ)そう。特に妊婦さんとかは
  本当に気をつけた方がいいんだよ。
♡)知らなかった…
ハ)だからオール電化住宅にするにしても
  その辺の対策も必須だし…
♡)なるほど…
ハ)あとは、収納とか。
♡)収納?
ハ)うん。建築士はどうしても男性が多いから
  設計する時に実用性よりも
  デザイン性に走っちゃう人が多いんだ。
♡)実用性…
ハ)そう。でも大事なのは
  実際に住み始めた時の実用性。
♡)うん。
ハ)そういうのはやっぱり
  主婦目線でアドバイスをもらった方が
  本当に参考になるんだ。
♡)そっか!
ハ)うん。
  だからうちはそういう女性たちにも
  設計にアドバイスしてもらったり
  いろいろ工夫してて。
♡)そうなんだ…。
ハ)少しでも多くの人が
  住みやすい家を作りたいなぁって。
♡)……

 

ハルくんは…すごいなぁ…

本当に夢を叶えて…キラキラしてる。

 

♡)ハルくんが建てたおうち…
  見てみたいなぁ…
ハ)うーん…住宅だと…
  俺が最初から最後までやったのはないけど
  お店とかオフィスならあるよ。
♡)わぁ…っ
  お店ってどんなの?
ハ)六本木のイタリアンとか、
  恵比寿の和食屋さんとか…
♡)わぁ!すごい!行きた…

 

……行きたいって言いかけて、
止めちゃった。

言ってもいいのか、わからなくて…

 

ハ)♡、もう一杯飲む?
♡)あ…っ

 

なくなりかけた私のグラスを見て
バーテンダーさんがメニューをくれたけど…

 

♡)えっと…

 

やっぱり英語ばっかりで…

 

♡)これ、美味しかったから…
  同じの…っ
ハ)普段甘いカクテルが多いの?
♡)あ、えっと…
  カシスオレンジとか
  フルーツのサワーばっかり…
ハ)ファジーネーブルとかは?
♡)??
ハ)桃のお酒とオレンジジュースだよ。
♡)わ、美味しそう…
  じゃあそれがいいっ♡
ハ)じゃあファジーネーブルと
  ギムレットください。
男)かしこまりました。
♡)……

 

ハルくんが頼むお酒は
知らないのばっかり。

 

男)お待たせしました。

 

そのグラスをじーっと見つめてると…

 

ハ)これは♡には苦いと思うよw

 

ハルくんがクスッと笑った。

 

♡)さっきのは…?
ハ)さっきのは辛口。
♡)そう…なんだ。
ハ)飲みたかった?
♡)ううんっ

 

ただ…
お酒を飲んでるハルくんなんて
初めて見るから…

なんだか不思議で…。

 

これが、最後なのかな。
これ飲んだら…帰っちゃうのかな。

まだ、一緒にいたい。

 

なんだか寂しくて、
私は甘いファジーネーブルを
少しずつゆっくり飲んだ。

 

ピロピロ♪ピロピロ♪

 

♡)あっ。

 

LINEの音が鳴って、画面を開くと…

『おはよう😃飲みすぎてない?🍻
 くれぐれもテキーラは飲むなよ笑』

 

メッセージは、臣くんだった。

 

そっか、向こうはもう朝なんだ。
綺麗な朝焼けの写真。

 

♡)えっと、返事してもいーい?
ハ)もちろん。
♡)……

 

『同期のご飯会から帰ってきて、
 ホテルで偶然ハルくんに会って
 今少しお話してるよ!
 テキーラは飲まないから大丈夫だよ!✨』

 

返事を返し終えると、

 

ハ)彼氏?

 

そう聞かれた。

 

♡)うん!今ね、お仕事でLAに行ってて…
ハ)へぇ!
♡)テキーラは飲んじゃダメだよって。
ハ)え?ああ、俺といるって言ったの?
♡)うん!
ハ)テキーラ、ダメなの?
♡)うん!この前、間違えて飲んじゃって…
  フラフラになっちゃったの。
ハ)あはははw
♡)その時はね、
  彼氏が迎えに来てくれたんだ。
ハ)そうなんだ。優しいね。
♡)うん!臣くんはすっごく優しいの!
ハ)オミ…くん…?
♡)あ、えっと……

 

ハルくんになら、話してもいいよね?

 

♡)この人だよ。
ハ)……

 

私は待ち受けにしてる二人の写真を
ハルくんに見せた。

 

ハ)この人…
  ♡と一緒に雑誌に載ってた人?
♡)えっ…
ハ)三代目…の…
♡)そう!知ってる?
ハ)うん。

 

あの雑誌もハルくん見てくれたんだ…
あれはちょっと恥ずかしいな///

 

♡)この人が彼氏だよ♡
ハ)そっか……
♡)まだ付き合って一年ちょっとなんだけど…
ハ)……
♡)えへへ…///

 

ハルくんにこんな話するの、
やっぱりちょっと恥ずかしいな///

 

ハ)♡の彼氏の話、聞かせて?
♡)えっ…
ハ)どんな人なの?
♡)……///

 

ハルくんが
すごく優しい表情でそう言うから…

私は臣くんのことをいろいろ話した。

 

ハルくんは優しく笑って
私の話を聞いてくれて…

 

ハ)本当に大好きなんだね。
♡)うん♡

 

臣くんの話をしてたら
臣くんに会いたくなってきた。

 

♡)私ね…、ほんとは…
ハ)……
♡)大学生になって…初めて彼氏が出来て…
  でも…自分の中では
  すごく無理してたの。
ハ)……うん。
♡)それから誰と付き合っても…
  うまくいかなくて…
ハ)うん…。
♡)私…ずっとずっと…
  ハルくんのことが好きだった。
ハ)……っ
♡)きっと、誰と付き合っても
  心のどこかではハルくんが好きだったの。
ハ)……

 

今なら素直に話せる。

 

♡)でも、臣くんに会って…
  臣くんを好きになって…
  臣くんはね、初めてちゃんと
  私から好きになれた人なの。
ハ)……
♡)一緒にいると楽しくて、嬉しくて…
  心が幸せになれるの。
ハ)……
♡)あ、聞いてハルくん!
ハ)ん…?
♡)私ね、暗くても眠れるように
  なったんだよ!
ハ)ほんとに…?
♡)うんっ!♡
  それも…全部全部、臣くんのおかげなの♡
ハ)……

 

私がそう言うと、
ハルくんは少しだけ寂しそうに笑って…

でも…

 

ハ)本当に幸せそうで、良かった。

 

そう言って優しく私の頬を撫でてくれた。

 

♡)////

 

なんか、私ばっかり話して、恥ずかしいや。

 

♡)ハルくんの…
ハ)ん…?
♡)ハルくんの好きな人は…
  どんな人なの…?
ハ)……っ

 

アキさんだってわかってるけど…
どうしてか名前は出せなくて。

 

ハ)俺の…好きな人…?
♡)うん。
ハ)……
♡)何よりも誰よりも…
  大事な人なんでしょ…?
ハ)え…?!
♡)ごめんね、クラス会の時に…
  聞いちゃったの。
ハ)…っ

 

ハルくんがそんなに愛してる人。

私もハルくんの話が聞きたい。

 

ハ)俺の話は…、内緒。
♡)えっ!!…どうして?
ハ)……
♡)教えてよぉ……
ハ)……
♡)ダメなの…?
ハ)……気になる?
♡)…っ

 

ハルくんがクスッと笑って
私の顔を覗くから…

 

♡)……///

 

なんか恥ずかしくなって、下を向いた。

でも…

 

♡)気に…なる。

 

素直に、そう言ったのに
ハルくんはやっぱり話してくれなくて…

 

♡)ハルくんは…幸せなんだよね?

 

それだけは聞きたくて…
もう一度ハルくんの方を向くと…

 

ハ)……うん。

 

ハルくんが小さく笑った。

 

♡)好きな人と一緒にいて…幸せ?
ハ)……幸せだよ。
♡)……

 

良かった。

 

ハ)笑ってくれるだけで…すごく嬉しいし
  それだけでいい。
♡)…っ
ハ)笑顔でいてくれるだけで…
  俺も幸せな気持ちになれる。
♡)……
ハ)幸せでいてくれることが…俺の幸せ。
♡)……

 

そんなに大好きなんだ、アキさんのこと。

 

ハルくんの表情が本当に優しくて…
それだけで愛情が伝わってくるから

私までなんだかあったかい気持ちになった。

 

♡)ハルくんとアキさんがすごく幸せそうで…
  私も嬉しい♡
ハ)……っ
♡)えへへ♡♡
ハ)……
男)おかわりいかがですか?
♡)…あっ……

 

どうしよう…
ハルくんは…もう帰っちゃう…?

 

ハ)じゃあ…最後にもう一杯だけ飲もうか。
♡)……うんっ♡

 

嬉しい。
まだもう少し、一緒にいられる。

またメニューを開かれたけど
私はカシスオレンジを頼んで
ハルくんはジンフィズを頼んだ。

 

♡)はぁ……
  もっと英語勉強しなくっちゃ…
ハ)苦手なの?
♡)全然わかんないの…//
ハ)全然わかんないの??

 

ハルくんが少し驚いたように私を見た。

 

ハ)学校で習ってたでしょ?
♡)……ハイ。

 

なのにわかんなくて、ごめんなさい。
恥ずかしいよぅ…//

きっとハルくんはアメリカにいたから
英語もペラペラなんだよね…

 

♡)高校に入ったら…
  一気に難しくなっちゃったんだもん…
ハ)俺がいたら教えてあげられたんだけど…
♡)そうだよー!
  ハルくんがいなくなってから
  難しい勉強とか
  一人で大変だったんだから!
ハ)あはははw
♡)……

 

離れて過ごしてたこと、
この間は二人で泣いたのに

今は笑って話せてる。

こっちの方が、ずっといいな。

 

ハ)嫌いではないの?英語。
♡)嫌いじゃないよ!
  話せたらいいなって思ってるもん!
ハ)本当に勉強したいなら…
  俺で良かったらいつでも教えるよ。
♡)えっ…!教えて…くれるの?
ハ)うん。

 

うそ…ほんとに…?

だって…なんか…
次の約束みたいな話は…
していいのかダメなのかわからなくて…

 

ハ)いつでも時間作るよ。
♡)////

 

ハルくんがそう言ってくれたのが
すごく嬉しくて…

 

♡)有料ですか…?

 

そう聞いたら、

 

ハ)……ばかw

 

ハルくんがクスッと笑って
私の頭を優しく撫でてくれた。

 

♡)////

 

とくん…
とくん…

 

ハ)この間渡した名刺は仕事用だから。
  こっちがプライベート携帯。
♡)……っ

 

そう言って渡された、
携帯の番号とLINEのID。

 

♡)い、今…っ、かけてもいい?
ハ)いいよw
♡)…っ///

 

嬉しい。
どうしよう。

 

ハ)♡のも登録しておくね。
♡)うんっ!!

 

ねぇハルくん…

もうサヨナラじゃないの?
友達に…なれたの?

 

ハ)♡が行きたいって言ってくれた
  イタリアンも…
  今度一緒に行こうか。
  修二も誘って。
♡)行きたいっ!!
ハ)うん…w
♡)……///

 

途切れた私の声…
ちゃんと聞いてくれてたんだ。

 

ハルくん。
私すごく嬉しい。

 

ハルくんとまた会えて
こうして話せて

これからも会えることが
すごく嬉しいの。

 

♡)ハルくん大好き…♡♡
ハ)……

 

ハルくんは私の顔をジッと見つめて…

 

ハ)♡に渡したいものがあるんだ。

 

そう言った。

 

♡)渡したい…もの…?
ハ)うん。
  いつ会えるかわからなかったから
  いつもは鞄に入れてて…
  今は部屋にあるんだ。
♡)……
ハ)あとで渡しに行ってもいい?
♡)あ…、私ね、Kちゃんと同じ部屋なの。
  あっ、えっと、私の親友なんだけど
  一緒に研修来てて…
ハ)そうなんだ。
♡)私がハルくんの部屋まで
  一緒に行ってもいい?

 

そう聞いて、
そういえばアキさんと同じ部屋なんだって
ハッとしたけど…

 

ハ)うん、じゃあそうして。

 

ハルくんがニッコリ笑ってくれたから…

私はそのまま、
ハルくんと一緒にエレベーターに乗った。

 

♡)本当にご馳走になって良かったの…?
ハ)もちろん。
♡)だって…

 

すごく高そうなバーだったのに…

 

ハ)気にしないで。
♡)ありがとう。美味しかったです。
  ご馳走さまでした…//
ハ)うん。
♡)……//

 

ハルくんが笑ってくれるたびに
心がほっとする。

 

……ピッ。

 

ハルくんがカードキーをかざすと
ドアが開いて。

 

ハ)ちょっと座ってて。
♡)うん。

 

部屋にはアキさんの姿はどこにもなくて
それらしい荷物もなかった。

やっぱり別の部屋なのかな…?

 

窓際の椅子に座ると
鞄から小さな袋を取り出したハルくんが
目の前のベッドに座って
テーブルの上にそれを置いた。

 

ハ)これ。
♡)……

 

これって…
アクセサリー?

 

♡)開けても…いいの?
ハ)うん。

 

真っ白な小箱をゆっくり開けると
そこにはキラキラ輝くネックレス。

ハートの形の下に
お花がいくつか散りばめられていて
その中心に三色の宝石が埋め込まれてる。

 

♡)…かわ…いい……///
ハ)ほんと…?
♡)うん……
ハ)気に入ってもらえて良かった。
♡)……

 

でも…

 

♡)どう…して…?
ハ)バレンタインのお返し。
♡)え…?

 

バレンタインって…

 

ハ)もらったのに、
  お返し渡せなかったから。
♡)……

 

それって…
6年生の時の…?

 

♡)でも…私は…
  ただの手作りのチョコだよ…?
ハ)ただの、じゃないでしょ。
  手作りだよ?
♡)…っ
ハ)♡が気持ちを込めて
  作ってくれたんだから。
♡)……っ
ハ)そのお返しだから
  受け取ってくれると嬉しい。
♡)……でも…こんな高価なの…
ハ)それは、ほら。
  俺たちも大人になったってことでw
♡)……///

 

ハルくんが優しく笑うから、
また心がほっこりする。

 

♡)付けても…いーい?
ハ)ああ、じゃあ付けてあげる。
♡)ありがとう…///

 

ハルくんの隣に座って、
髪をサイドにまとめた。

ハルくんの腕が一瞬まわってきて、
うなじに感じる指先の気配がくすぐったい。

 

ハ)はい。
♡)…っ

 

ハルくんの方を振り向くと、
ニコッと笑ってくれて。

 

ハ)似合ってるよ。
♡)////

 

私はすぐに立ち上がって
鏡の前まで走った。

 

♡)……わぁ…♡♡

 

本当に可愛いネックレス。

光の加減でキラキラ光る3色が
とっても綺麗。

 

♡)ハルくん、すっごく嬉しい!
  ありがとうっ♡♡
ハ)うんw
♡)本当に本当にありがとう!♡
ハ)うん。
♡)宝物にするねっ♡
ハ)……うん。

 

ハルくんは優しく笑って
私の頭を撫でてくれた。

 

ハ)…もう遅いから、部屋まで送るよ。
♡)ありがとう♡

 

それからまたエレベーターに乗って
今度は私の部屋の前まで
ハルくんが来てくれた。

 

♡)ハルくん、今日は本当にありがとう♡
ハ)うん。
♡)ごちそうさまでした♡
  ネックレスも…本当にありがとう♡
ハ)うん。
♡)あのね、私……
  ハルくんとまたこうして会えて
  本当に本当に嬉しい♡
ハ)……
♡)ありがとう、ハルくん。
  大好きだよ♡
ハ)……

 

私の言葉に、ハルくんが一瞬
寂しそうに笑って見えたのは…

私の気のせいかな…。

 

ハ)♡……、

 

ハルくんは私を一瞬、抱き寄せて…

 

ハ)おやすみ、♡。
  愛してるよ。

 

耳元でそう言って、
髪越しにキスを置いていった。

 

♡)////

 

私はそのまま部屋に入って…
鏡でもう一度、ネックレスを確認した。

 

「愛してるよ。」

 

ハルくんの声が…
まだ耳元に残ってる。

 

♡)……///

 

ハルくんは…
アメリカ生活が長かったから
「愛してる」って…
日常使いするのかな…?

私は慣れてないから、なんだか恥ずかしい。

 

この間は…
ハルくんがいっぱい愛してるって言ってくれて
私も気持ちが溢れちゃったから
「愛してる」って…返したけど…

もちろんハルくんのことは
愛してるけど…

あんなにサラリとは、言えない。

 

♡)……///

 

ハルくんは…
アキさんにもあんな風にサラッと言うのかな。

 

臣くんは…
照れ屋さんだから
普段はそんなに言ってくれないけど…

たまに気持ちが高まった時に言ってくれる
「愛してる」が、
私はすごく嬉しくて、大好き。

 

早く臣くんに会いたいな。

 

ハルくんと話したことも
いっぱい聞いてほしい。

 

早く明日になぁれ♡

 

 

ーendー

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  1. Kまる より:

    コメントするの初めてです。
    1年前くらいに見始めたんですけどとてもお上手ですね!
    これからも応援してますがんばってください❤

    • マイコ より:

      おおお┣¨‡ (♡°ω°♡)┣¨‡
      初コメありがとうございます!
      こちらこそこれからもよろしくお願いします♡

  2. 夜空 より:

    ハルくんに彼氏が臣くんだって言っちゃったんだね!
    ホントに私マイコさんが作る妄想小説大好きです頑張って下さいね。お願いなんですけど岩ちゃんの新しいストーリー作って欲しいです♪

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