♧)はぁ……
女)どうしたの?
♧ちゃんが溜息なんて、珍しい。
男)あー、わかった!
早く瞬くんに会いたいんだろ〜〜w
女)今日が水曜だから…
あと4日じゃない♡
♧)……
瞬くんに会えるのは
もちろん楽しみなんだけど
自分でもよくわからない。
この数日、頭の中にいるのは
いつも隆二くんで…
♧)……はぁ…。
瞬くんに会いたいな。
前はいつも瞬くんのことを考えていたのに
最近、その時間は明らかに減っていて…
女)♧ちゃん、明日はこっちだっけ?
♧)あ、いえ、保育園です。
女)そうかー
じゃあこれ、今日中にお願い。
♧)はい、わかりました。
私が育った施設と
私が働いてる保育園は
同じ経営で、建物もすぐ隣。
だから私は週の半分は保育園で働いて
残りはこっちの施設で
事務作業を手伝ったり、色々してる。
男)ちょ、ちょ!!♧ちゃん!!!
♧)え…?
職員のおじさんが
すごい勢いで走ってきた。
男)瞬くん、来てるよ!!!
♧)…っ
うそっ…///
女)あれ?だって…次は日曜のはずじゃ…
男)なんか果物持ってきてくれてる!
女)まぁ!やったじゃない♧ちゃん!
ほら、行っといで!!
♧)////
職員の人たちは、皆こうして
私の叶うことない片思いを
優しく応援してくれるけど…
♧)心の準備が…///
女)何言ってんの!早く行っといで!
男)ほら!
♧)はい…///
事務室から出て、玄関をのぞくと…
瞬)あ!♧さん!!
♧)…っ
いつもと変わらない、その眩しい笑顔に
鼓動が一気に速くなる。
♧)瞬くん…こんにちは///
瞬)こんにちは!!
♧)////
ああ…私、
挨拶だけでこんないっぱいいっぱいなのに
本当に告白なんて…できるのかな…
瞬)スイカいっぱいもらって
一人じゃ食べきれないから、
ここ来ちゃった!♡
♧)////
瞬)♧さんはスイカ好き?
♧)うんっ
瞬)へへっ、良かった〜〜♡
♧)////
こうやって敬語じゃなく
たまにフランクに話してくれる時、
私は余計にドキドキする。
♧)子供達も…みんな喜ぶと思う。
ありがとう///
瞬)うん!みんなで食べてください!
♧)うん。
瞬)ふぅっ、重かった〜〜w
♧)ふふっ…
可愛いなぁ…///
とくん、とくん、
心臓が、恋してる音。
♧)次、日曜日だよね?来るの…
本当は知ってるくせに
少しでも話したくて…
瞬)はい!
♧)……待ってるね///
瞬)日曜は…何弾こうかなぁ…
♧)……
瞬)♧さん、何か好きな歌ないの?
今ならリクエスト、受付中♪
♧)えっ///
うそ…っ
うそ…っ
どうしよう!!
♧)えっと…えっと…///
歌ってほしい曲は、たくさんある。
♧)ほんとに…リクエストしてもいいの?///
瞬)うん♡
♧)////
嬉しくて、泣きそう。
瞬)当日言われたら、歌えないやつもあるけど
事前に聞いといたら覚えてこれるし。
♧)…っ
私のために…
覚えてきてくれるの?
じーーーん…
胸が熱くなる。
瞬)あれ?…熱ある?
♧)…っ///
ふわり、おでこに触れた手のひら。
バクバクバク…
心臓が、暴れ出す。
瞬)やっぱり、少し熱いかも…
♧)////
そ、それは…
瞬くんが…目の前にいるから…
瞬)目も…なんか潤んでるし…
大丈夫?
好きが溢れて、止まらないんだもん…
♧)////
瞬くんはそのまま私の頭を撫でて、
瞬)無理しちゃダメですよ?
体調悪かったらちゃんと休んでね?
そう言ってくれた。
♧)あ、待って…あの、歌…っ
瞬)ああ、思いつかなかったらいいよw
♧)そうじゃなくて…っ///
いっぱいありすぎて…
瞬)ああ、じゃあ…
思いついたら教えて?
♧)…っ
瞬)連絡待ってます、それじゃ♪
♧)……瞬くんっ!!
その腕を必死に掴んで、引き止めた。
♧)私…っ、連絡先、知らない…
瞬)……
♧)……
瞬)あ!そっか!!!
瞬くんはあははと笑って
携帯を取り出した。
瞬)知ってる気でいたーーw
じゃあ交換しよー
♧)////
うそ…っ
ほんとに?!
どうしよう、夢みたい。
瞬)これでよし、っと♪
♧)////
瞬)じゃあ思いついたら
LINEくださいね!
♧)……(こくん)///
もう…喋ることもできなくて…
瞬)それじゃあ日曜日に♪
そう言って笑顔を見せた彼の
次の一言で、私は動けなくなった。
瞬)あ!そーだ!
♧)…っ
瞬)次、もしかしたら二人で来るかも!
♧)……
……ふた…り…?
瞬)まだわかんないけど
その時はよろしくです♡
♧)…っ
瞬)それじゃ!
♧)……
笑顔で去っていく彼を見送って、
私はその場にへなへなと座り込んだ。
♧)……
二人…?
二人で来るって…
それって…
彼女を…連れてくるの…?
♧)…っ
あ、私…
なんかもうゴチャゴチャで
手が震えてる。
手の中の携帯には
ずっと欲しかった、瞬くんの連絡先。
でも…
これをもらったところで
私の恋がどうなるわけでもなくて…
彼には彼女がいる。
結婚を考えてるほど、大事にしてる彼女。
片思いだってわかってても
止められなかった、恋する気持ち。
もういい加減やめなさい、って…
神様が言ってるのかな。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
♧)はぁ……
いつもの川辺。
いつものお裁縫セット。
♧)……
でも、ダメ。
今日は全然はかどらない。
頭の中は、まだ見ぬ瞬くんの彼女のことで
いっぱいで…
日曜日が来るのが怖い。
私…どんな顔して会えばいいんだろう。
瞬くんに…
大切に愛されてる女の子。
二人が仲良く並ぶ姿を見て
平気でいられるか、自信がない。
泣いちゃったら…どうしよう。
隆)……いた。
♧)……
隆)なんで返事くれないの?
♧)……
顔を上げると、
いつものコンビニ袋を提げた隆二くん。
返事って…
あ、もしかして…
LINEくれてたのかな…?
♧)ごめんね…?
今日は…それどころじゃなくて…
裁縫セットを片付け始めた私を見て
隆二くんが慌てたように
声をかけた。
隆)もう帰るの?!
♧)……
隆)待ってよ、ごめん!!
♧)え…?
隆)一昨日のこと、怒ってるなら
謝るから…
帰んないで!!!
♧)……
一昨日のこと?
♧)……あ。
「キス、したこと…ないんだよね?」
「…して…、みたい?」
♧)////
思い出した。
そういえば私…
今朝までそのことで頭がいっぱいだったのに…
隆)ねぇ、ごめんね?
♧)ううん。
それはもういいの。
隆)え…?
♧)……はぁ…
私は今、それどころじゃなくて…
隆)……どうした?
♧)……
隆)ほら。
♧)……
いつものように並べられるデザート。
♧)……こっち…
隆)…元気、なさすぎ…
♧)……
隆)……
選んだぶどうゼリーを
少しずつ、口に運びながら
私は今日の出来事を隆二くんに話した。
隆二くんはそれを
ただ黙って、静かに聞いてくれた。
♧)……はぁ……
開く携帯。
瞬くんの連絡先。
♧)もう潮時って…神様が言ってる。
隆)うん。
ようやく隆二くんが、返事した。
隆)何、リクエストすんの?
♧)……どうしよう。
隆)……
♧)特別すぎて、選べない。
隆)……
瞬くんが私のために…とは言ってないけど
私のリクエスト曲を歌ってくれるなんて
そんなの…
そんなの…
隆)今の♧の気持ち、みたいなやつ
歌ってもらえば?
…思い出に、さ。
♧)……
今の私の気持ち…?
♧)ほら、私…
トレンディーなの…あまり知らないから…
隆)トレンディーじゃなくたっていいじゃんw
♧)……
隆)何がいいかな…
♧)……昔はね、よく聞いてたの。
隆)ん…?
♧)施設にいた頃は
みんな音楽聞いたり歌ったりしてて…
隆)……
♧)でも、今の家には
プレーヤーがないから。
パソコンも持ってないし…
CDを借りてきても落とせないし…
昔の曲を何度も聞いてるくらいで…
隆)〜♪叶わない恋だと知ってても
いつもいちばん近くで
君を見てた♪〜
いきなり歌い出した隆二くんに
すごくびっくりした。
びっくりしたのは
いきなり歌ったことじゃなくて、
その歌声で…
♧)……その歌…、知ってる…
隆)ああ、知ってた?
♧)…っ
ふわっと優しく笑う、綿あめみたいな笑顔。
隆)♧みたいだなって。
♧)……
隆)〜♪ほかの誰かに恋ができるまで
うまく笑えるようになるまで
少し時間かかってしまうけど
君は今まで通り 笑っていて♪〜
♧)…っ
私は、気付いたら涙がこぼれてて…
♧)りうじぐんっっっ
隆)……なんで泣いてんの……
隆二くんは困ったように
私の頭を撫でてくれた。
♧)どうじて…そんだに…
歌…上手なの…っ
隆)あ〜〜〜もう、涙を拭きなさい//
♧)ううう…っ
隆二くんが袖口で涙を拭いてくれた。
♧)びっくりした…
上手すぎるよ……
隆)……
♧)よく言われない…?
隆)…うん、まぁ……
♧)ほらー!
隆)……//
♧)私もカラオケ行きたい!!
隆)え…?
♧)むーこが言ってたでしょ?
私も隆二くんとカラオケ行きたくなった!
隆)あー、…はいはい、今度ね…?//
♧)うんっ♡
気付いたら涙は止まってて、
私は笑えていた。
♧)ねぇ、もっと聴きたいな…
隆)……
♧)いーい?
隆)…特別だよー?
♧)ふふっ…、うん♡
目を閉じると、
隆二くんが息を吸い込む音。
いつもの話し声も
すごく柔らかいけど
それとはまた全然違う、
柔らかくて優しい、包み込むような歌声。
隆)〜♪なぜ あなたの事ばかりを
考えてしまうんだろう
あなたの事を思うと こぼれる涙
あなたの事ばかりを
考えてしまうんだろう
始まってもいないのに 恋と呼んでた♪〜
あったかくて…
すぅーーっと胸に、染みこんでくる。
隆)〜♪ずっと…ずっと… いつまでも
ずっと…ずっと…
愛した記憶は きっとこのまま♪〜
♧)ふぇ…っ、この歌…知らな…い…っ
また泣いちゃった私の頭を
優しく撫でてくれる隆二くんの手のひら。
隆)これも女の子の歌だよ。
なんか♧っぽいなって思った。
♧)……うん…っ
歌詞がすごく…切なくて…
隆)ああ、でも…
今の季節だったら…こっちかも…
♧)え…?
隆)〜♪私 恋に落ちてる 苦しいくらい
もう隠せない 熱いときめき♪〜
♧)…っ
これは知ってる。
隆)〜♪ずっとめぐり逢うこと
夢に観てたの
わかって欲しい 夏の憧れ
And I toucher the rain
So I need your love♪〜
隆二くんの裏声が…
すっごく切なくて綺麗で…
隆)まーた泣いてる…w
♧)だって…///
どうしてそんな歌声、持ってるの…?
♧)……今の歌、すごく…好き…
隆)うん、俺も。
♧)……
隆)メロディーがすごく綺麗だよね…
♧)……
メロディーもそうだけど…
綺麗なのは隆二くんの歌声。
♧)すごく好き……
隆)うん……
♧)……
きっと伝わってない。
「すごく好き」って言ったのは…
隆二くんの歌声だよ…?
♧)はぁ……、
深く深呼吸をして
私は携帯を手に取った。
♧)LINE、する…っ
隆)彼に…?
♧)うんっ
隆)……歌って欲しい曲、決まったの?
♧)うん!!
送ったLINEは…
『瞬くん、今日はありがとう。
日曜日、歌って欲しい歌、決めました。
瞬くんが、今の彼女を想って歌う歌が
私は聞きたいです。
そんな恋の歌を、お願いします。』
ドキドキしながら、「送信」をタップした。
♧)はぁ…、///
隆)……
♧)……
隆)なんで…?
♧)……
隣で一緒に見てた隆二くんが
そう聞いてきた。
♧)私の気持ちは…
今、隆二くんがいっぱい歌ってくれたから
それでいいの…
隆)……
♧)たくさんありがとう♡
隆)……
隆二くんの素敵な歌声に
本当に、心が洗われた。
♧)瞬くんが彼女のために歌う歌なんて
そんなの聴いたら、
さすがに諦めつくかなって、思って…
隆)……
♧)……
隆)目の前で彼女にラブソング歌われて
耐えられるの?
♧)……
……うん。
今ならきっと、大丈夫な気がする。
どうしてだろう。
不思議なんだけど…
そんな気がするの。
私がゆっくり頷くと
隆二くんがまた、なでなでしてくれた。
隆)…♧、強くなってる……
♧)…っ
隆)えらいえらい…♡
♧)……///
ほんと…?
私、強くなれてるの…?
それが本当ならきっと、それは…
♧)隆二くんの…おかげだよ…///
隆)……
私がそう言うと
こっちを向いてた隆二くんは向きを変えて
テーブルに突っ伏した。
♧)……
しばらくすると
そのままそこから、私を見上げて…
隆)♧……?
♧)…っ
私の名前が…、優しく響く。
隆二くんの声がこんなに甘いなんて…
今日はじめて気が付いた。
隆)……
隆二くんはそのまま目を閉じて、
息を吸った。
隆)〜♪抱きしめたい
♧)…っ
また、歌…?
隆)〜♪溢れるほどの
想いが こぼれてしまう前に
……ミスチルだ。
♧)……
私も目を閉じて
隆二くんの歌声に…、耳を寄せる。
隆)〜♪二人だけの 夢を胸に
歩いて行こう
綺麗なファルセット。
隆)〜♪終わった恋の心の傷跡は
僕にあずけて♪〜
♧)……
ゆっくりと目を開けると…
隆二くんの目も、ゆっくり開いて…
片方の手が
まっすぐに私の頬に、伸びてきた。
……あったかい…、隆二くんの手。
♧)……
今の…歌は…
♧)私の…歌…?
隆)…ううん、俺の歌。
♧)…っ
そう言って隆二くんは起き上がって
こっちを向くと
今度は両手で、私の頬を包んだ。
隆)俺から、♧への歌。
♧)…っ
真っ直ぐな瞳でそう言われて、
たった今聞いた歌の歌詞が
頭の中で、リフレインされる。
「終わった恋の心の傷跡は 僕にあずけて」
♧)……
それって…
♧)…まだ…、終わってないよ…?
隆)うん。
♧)……
隆)わかってるよ。
♧)……
優しい優しい、隆二くんの声。
隆)だから…「終わったら」
俺にあずけて。
♧)…っ
隆)……
♧)……
それって…
隆)抱きしめたい。
♧)…っ
また、ふわっと包まれた
隆二くんの腕の中。
いつもの優しい匂いに
胸があたたかくなる。
隆)…って、思ってたら
この曲が浮かんだ。
♧)……
そっか…
さっきの曲のタイトルは…
隆)俺、ちゃんと待ってるから…
♧は一生懸命、頑張ってこい。
♧)…っ
隆)……日曜日、♧が泣いてたら
飛んでってやりたいけど…
♧)……
隆)俺、札幌でいないんだ。
♧)…さ…っぽろ…?
隆)うん。
♧)……
さっぽろって…札幌?
隆)仕事で。
♧)……
仕事で…札幌?
隆)でも…電話はできるし…
帰ってきたらすぐに
飛んでくるから。
♧)…っ
隆)だから、頑張れ。
♧)……///
ぎゅっと背中に力をこめられて
隆二くんの「頑張れ」が
いっぱい伝わって来る。
♧)……ありがとう…。
隆)うん。
ずっとずっと大好きだった。
長かった瞬くんへの片思い。
ちゃんと自分の気持ちにケジメをつけて
新しい一歩を踏み出せますように。
ーendー
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隆二くんのにゃんちゅうスマイルが頭の中にあります。隆二Storyで一番好きです!
♧ちゃんの好きな人、やっぱり瞬君だったんだ。りゅうじ君の恋はどうなっちゃうのかなぁ〜(≧∇≦)♧ちゃんに想いが伝わると良いなぁ〜臣くんも、りゅうじ君の好きな子が想い寄せてる子が♡ちゃんの弟って分かったらびっくりだよね〜(>__<)待ち通しい臣君と、♡ちゃんストーリー(^_^)
初めましてm(._.)m
ですが、ずっと読んでます♡
どうなるんだろう、ドキドキします、、、!
隆二くんも、♧ちゃんも、頑張って(T T)
マイコさんの文章、大好きです。
初めましてヾ(≧∇≦)ノ”どうもありがとうございます!嬉しいです!♡
この二人の恋はまだまだ長引きますが、どうぞ見守ってあげてください♡
歌が場面に合いすぎてる。
隆二くん気が早いなww