弱気な俺様 〜short story〜

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〇)今日はどんな感じにする?
臣)んーー、お任せw
〇)もう、いっつもそれーw
臣)だって〇〇がやってくれたら
  カッコ良くなんじゃん?
〇)元がいいから?w
臣)そっ♪
〇)ぷっ、もう…あはははっw
臣)何笑ってんだよ〜〜〜

 

鏡越しに目が合うたびに、
少しのキュンと、あたたかい気持ち。

 

臣)なぁなぁ、今日これ終わったら
  飲みに行かね?
〇)え?
臣)行こっ!決まり〜〜♪
〇)はいはいw

 

なんて言いながら、
内心めちゃくちゃ嬉しいあたし。

だって…

好きな人からの、お誘いだし。

 

隆)また臣が〇〇さん
  独り占めしてるーー
  俺のもやってよーーー
〇)あ、ちょっと待ってね、
  隆二くん。
岩)はーあ、〇〇さんみたいな
  センスのいいヘアメイクさんが
  あと6人いたらなーーー
臣)ぶっ、何それww
岩)だって…

 

岩ちゃんが少し口を尖らせた。

 

岩)〇〇さんは臣さんに
  かかりっきりだから。
N)あははっw
  臣がすげぇ手のかかる子みたいw
臣)なんすかそれぇーー
  俺子供みたいじゃんw
〇)くすくす…w

 

三代目のヘアメイクに就いて
もう結構経つけど…

現場に入ると
いつも一番に指名してくれるのは
広臣。

だからいつの間にやらあたしは
広臣優先…?専属…?
のヘアメイクみたいになってて、

 

〇)はい、出来たよーー
臣)ん。

 

鏡を見ながら、左右のチェックも欠かさない。

 

臣)いいじゃん。
〇)元がいいからねw
臣)……

 

あたしがそう言うと、広臣は立ち上がって…

 

臣)腕がいいから、だろ?

 

そう言ってニヤッと笑って
あたしの頭を撫でていなくなった。

 

〇)////

 

ああいう不意打ち、ほんとずるい。

 

直)ほんと仲良いっすよねーー
  〇〇さんと臣。
岩)仲よすぎーー嫉妬ーーー
N)岩ちゃんが嫉妬してるw
岩)綺麗なお姉さん、独り占めしちゃって。
〇)えっ!!
岩)え…?
〇)綺麗な…お姉さん…?

 

…って、言った?今。

 

岩)うん。
〇)…っ
岩)どっからどう見てもそうじゃん。
  って、俺までタメ口になっちゃった。
  すいませんw
N)センスもいいし、腕もいいし、
  美人だし。
  〇〇さんに憧れてる人、多いもんねーー
〇)ええっ!!

 

そんな話、聞いたこともないんですけど!!

 

健)ニブニブやな、〇〇さんw
〇)////

 

健二郎くんにからかわれて、あたふた。

 

臣)〇〇ーーー!!

 

バーン、と扉が開いて
大声であたしを呼ぶ広臣。

 

臣)ね、来て。
〇)え?

 

ヘアセットはもう終わったのに…

 

臣)コーヒー買いに行くから、一緒に来て。
隆)はぁ???
  今から俺がセットしてもらうの!!
健)コーヒーくらい一人で買いに行け!!
臣)やだ。〇〇と行く。
〇)////

 

子供みたいなワガママなんだけど
キュンとしちゃうあたし。

 

臣)ほら、さっさと行くぞ。

 

なんて偉そうに、あたしの手を取って…

 

健)あーあ、さらわれてもーた。
岩)ほんと俺様。
隆)臣のばかーーー!!

 

みんなの声を無視して、
あたしを外へ連れ出した。

 

〇)////

 

繋がれてる手が、
緊張して、ヤバい。

 

臣)ん。
〇)……ありがとう。

 

あたしにもコーヒーをご馳走してくれて
飲みながら、ゆっくり楽屋に戻る。

 

臣)今日、どこ行きたい?♪

 

ご機嫌な背中が振り向かずにそう尋ねる。

 

〇)二人…?
臣)うん。

 

振り向いた広臣は、

 

臣)何、不満?
〇)……///

 

少しムスッとした顔が
俺様なのに、可愛い。

 

臣)あ、そういえば…
  スタイリストのミミちゃんも
  飲みに行きたいって言ってたっけ…
〇)え…?
臣)あとで誘っとくわ。
〇)…っ

 

二人じゃ、なかった。

ちょっと残念。

 

ーーー

 

結局その日の夜は
普通に飲み会みたいになって…

 

ミ)もう、臣さんってば〜〜w
臣)あはははw

 

広臣はミミちゃんと仲良く話してて…

 

直)あれ?
  臣が〇〇さんの隣にいないなんて珍しい…

 

そう言って直己さんが
あたしの隣に座った。

 

N)ミミちゃん若いな〜〜
  すげー飲むね〜〜〜
直)飲みすぎないか心配。
N)前潰れた時は誰が送ってったっけ。
健)俺っすよ!もう!
  ミミちゃん、あんまり飲むなよ〜!

 

健二郎くんが声をかけると、

 

ミ)臣さんに送ってもらうもーーん♡

 

なんて言って、広臣の腕にしがみついた。

 

ズキッッ。

 

あまり、見たくない。

 

広臣はその腕を別に外す様子もなく
普通にお酒を飲み続けてる。

 

やだな…

 

岩)〇〇さーーーん♡
〇)あ、岩ちゃん。
岩)やった!いつも臣さんに独り占めされてる
  〇〇さんの隣ゲットーーーw

 

とか言って
可愛い笑顔で隣に来た。

 

そして、

 

岩)……告白とか、しないの…?

 

可愛い顔で、
いきなり爆弾を投下してくる。

 

〇)?!!!

 

驚いて岩ちゃんを見ると…

 

岩)好き、なんでしょ…?
〇)////

 

なんで…?

あたしもしかして、周りにまでバレバレなの?

 

岩)あー、安心して。
  多分まだ俺しか気付いてないから。

 

その言葉に、心底ほっとする。

でも、本人は気付いてると思うんだよね。

あたしが…好きなこと。

 

岩)みんなは…
  普通に仲良い仕事仲間って
  思ってるんじゃないかな。
〇)……

 

「普通に仲良い仕事仲間」

そうだよね。

あたしと広臣は…

 

岩)告白すればいいのに。
〇)……///

 

そんなサラリと言われても…

 

岩)なんか今日は見せつけるように
  ミミちゃんと仲良くしてるし、
  ムカつくよね?
〇)えっ……

 

見せつけるようにって…
あたし、に…??

なんで広臣が…そんなこと…

 

岩)目には目を。歯には歯を。
〇)え…??
岩)んーー♡

 

チュッ♡

 

〇)?!!////

 

いきなりほっぺにキスされて、
あたしがパニックになってると…

 

パコンッ!!

 

岩)…って。

 

隣を見ると、おでこを押さえてる岩ちゃん。

 

パコンッ!!

 

岩)いてぇ!何なの臣さん!!

 

斜め向かいから、岩ちゃんに
タバコの箱を次々投げつける広臣。

 

男)あれ、俺のタバコどこいった??
男)あれ、俺のもねぇ!!

 

岩ちゃんを睨んでた広臣の目が
ギロリ、あたしに向いて…

クイッと手招きされて、外に出た。

 

〇)……
臣)……

 

怖い…んですけど…

 

何も言わない広臣を見上げると…

 

臣)……

 

ムスッとした表情で、
あたしのほっぺを擦ってきた。

 

臣)……ムカつく。

 

それって…

 

〇)……///

 

ああダメ、期待しちゃう。

 

臣)やっぱり…二人で来ればよかった…
〇)え…?

 

少し切ない声に、視線を重ねると…

 

臣)……
〇)……

 

見つめ合う時間が、色を持つ。

 

ピロリロリロ♪ピロリロリロ♪

 

二人を邪魔するように、電話が鳴って…

 

臣)わり、出てくるわ。仕事の電話だ。
〇)あ、うん…、//

 

ちょっとほっとしたような、
残念なような。

 

ドキドキドキ。

 

まだ胸がときめいてる。

 

そのまま先に部屋に戻ると…

 

ミ)〇〇さん、おかえりなさーーい♡

 

今度はミミちゃんがあたしの隣に来た。

 

〇)大丈夫?飲みすぎてなぁい?
ミ)やぁだ、〇〇さん、おばさんくさーいw
〇)…っ

 

心配しただけなのに、何それ!!

 

ミ)ミミはまだ若いからぁ、
  二日酔いとかにはなりません〜〜♡
〇)……

 

それって若さ関係あんの?

 

ミ)あーあ、臣さんどこいっちゃったんだろー
〇)ああ、なんか仕事の電話だって。
ミ)……

 

心なしか、睨まれた気がする。

 

ミ)今日は臣さんといっぱいお話できて
  すっごく楽しい〜〜♡
〇)……良かったね…

 

としか、言えない。

 

はぁ…やだな。

場所移動しようかな。

 

ミ)〇〇さんってぇ、
  臣さんより年上ですよね?
〇)ああ、うん。少しだけ。
ミ)そっかぁ〜〜きゃははっ♡
〇)え、何?
ミ)臣さんがさっきぃ、
  俺が好きなのは年下って言ってたからぁ♡
〇)…っ

 

ぐっさり胸に突き刺さる、その言葉。

 

ミ)年下の可愛い女の子がタイプだから
  年上は対象外って言ってましたぁ♡
〇)……

 

なんでそれをわざわざあたしに言うんだろう。

っていう気持ちよりも、

ただただ、その言葉がショックで。

 

「年上は対象外」

 

あたし…
告白する前に、フラれちゃってるじゃん。

 

ミ)あ、臣さんおかえりなさーいっ♡♡

 

広臣が電話から戻ってくると、
すぐ飛んでいって

あたしの横からいなくなったミミちゃん。

 

〇)はぁぁぁぁ………

 

いろんな感情が漏れ出して、深いため息。

 

直)ねーさん、どうしたんすかw
〇)直己さん……
直)ん…?
〇)……

 

なんか…
年下なのに、お父さんみたいな貫禄。

 

〇)直己さん、渋くなりましたね…
直)何それ!w
〇)侍みたい。
直)それは褒め言葉だけど。
〇)ふふっw

 

そういえば直己さんは
長く付き合ってる彼女がいるんだっけ。

 

〇)恋愛って…何なんすかねぇ……

 

なんだかもう悲しくなって
そんなことをぼやけば…

 

直)お互いプラスになる関係性…?

 

返ってきた答えを、自分に当てはめて考えてみる。

 

お互い…プラスに…

 

なるわけ、ない。

 

あたしはただのヘアメイクで
広臣はスーパースター。

 

〇)身分違いの恋は…どう思いますか…?
直)うーーん……

 

酔っ払いの戯言だと思って
聞き流してくれていいんだけど…

真面目な直己さんは、しっかり答えてくれる。

 

直)相手の気持ちや存在が、意図せず
  自分の何かの邪魔になってしまうなら…
  やっぱり難しいですよね。
〇)……

 

何かの…邪魔…?

 

ああ、なんか目が覚めた。

 

きっとあたしの気持ちは、広臣にとって
邪魔でしかない。

 

〇)……ふ…ぇ……っ

 

そう思ったら、涙がこぼれてきた。

 

直)……

 

直己さんは、みんなにわからないように
あたしにジャケットをかけてくれて…

 

直)ん、

 

頭を撫でてくれた。

 

なんでこの人こんなに優しいの。

 

はぁ…
もう諦めよう。

 

好きな人の迷惑になんて、なりたくない。

 

邪魔なんてしたくない。

 

広臣……

大好きだけど、さようなら。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

臣)〇〇ーーーーー
〇)……
臣)今日もカッコ良くしてね♡
〇)……

 

今日もご機嫌で、
あたしのところにやってくる広臣。

 

うん、今まではこれが当たり前だった。

でも…

 

〇)ごめんね、隆二くん先にやるから。
臣)はぁ??

 

あたしの言葉に、驚いて振り返る広臣。

 

〇)隆二くん、座って。
隆)……いいんすか…?

 

遠慮がちに座った隆二くんの髪に、手ぐしを通す。

 

臣)……なんで?

 

後ろから聞こえる、少し寂しそうな声。

 

他にもヘアメイクの人、いるでしょ?

 

〇)たまにはあたしじゃなくても…

 

無理に笑顔を作ろうとするけど、引きつる。

 

臣)〇〇じゃなきゃやだ!!!
〇)…っ

 

そう言われても…

あたしは広臣と距離を置きたいの。

 

〇)ごめんね…?
臣)…っ

 

 

 

それからも…

あたしは現場に入るたびに、
広臣から声をかけられるより先に
メンバーのヘアメイクを始めるようにした。

 

空き時間もなるべく近付かないようにして。

 

今まで本当に仲が良くて、
広臣とばかり会話してたから…

「喧嘩してるの?」
なんて聞かれることもあったり。

 

でも、これでいいの。

あたしも早く、他の人に目を向けなくちゃ。

 

 

 

 

それから一ヶ月がたったある日。

 

N)なんか臣がずっと元気ないんだけど…
直)ですよね。

 

広臣がいない楽屋で
繰り広げられていた会話。

 

健)親離れしたからちゃいますー?w
N)何それw
健)ほら、今まで独り占めしてた〇〇さんが
  メンバー平等に扱うようになったから。
N)あ、そういえば…

 

みんなの視線が、あたしに集まる。

「親離れ」
周りはそんな風に見てたのかな。

 

直)まぁ、〇〇さんは
  自分の仕事をしてるだけだしね。
隆)うんうん。
岩)臣さんがワガママだっただけだしーー
〇)……

 

その「ワガママ」が、
あたしはすごく…嬉しかったんだけどな……

 

バーン!!!

 

臣)やっべ!!寝坊した!!!

 

そう言って、豪快な音とともに
楽屋に入ってきた広臣。

 

〇)…っ

 

思わず目が合って。

 

ヘアメイクは今、あたししかいない。

他の6人はもう終わってるし…

 

健)お前、すっごい頭やなそれ!
隆)どうやって寝たらそうなんの!!w
臣)お前に言われたくねーし…
N)大爆発してんね!w
臣)……

 

広臣がチラッとあたしを見て…

 

臣)今日は…やってくれる?

 

小さな声で、寂しそうにそう言った。

 

〇)…っ

 

胸が、きゅぅっと締め付けられる。

 

〇)うん、…座って…?

 

あたしのその言葉に、
広臣は花が咲いたような笑顔を見せる。

 

N)嬉しそうな顔しちゃって…
隆)やっぱりあれが原因だったか…
健)わかりやす……

 

久々に、鏡越しに目が合って。

 

〇)どんな感じにする…?
臣)…お任せ…///
〇)////

 

なんでそんなもじもじしてるのかな。

あたしまで恥ずかしくなっちゃう。

 

久々に触る、広臣の髪。
なんか緊張しちゃうな…

 

臣)今日…何してんの…?
〇)え…?
臣)夜。
〇)……別に、何も……
臣)じゃあ、飲みに行こ。
〇)えっ…
臣)二人で。
〇)…っ

 

「二人で」って、言われた。

 

〇)えっと…

 

どうしていいか、戸惑ってると…

 

健)あ、そーや。〇〇さーん?

 

後ろから話しかけられて…

 

臣)今俺が話してんの!!

 

それを遮る広臣。

 

健)…おー、こわ。
  すんませんした〜〜〜w
N)お前は子供かっ!w
隆)話しかけるくらいいいじゃん!w
臣)うっさい!!
〇)……///

 

久々に感じる、広臣の独占欲に
やっぱり嬉しくなっちゃうあたし。

 

でも…

 

〇)ごめんね、今日は用事があるんだった。
臣)はぁ?!!
〇)……ごめんね。
臣)…っ

 

もう思わせぶりなことは、しないでほしい。

広臣は年下の可愛い女の子がタイプで
あたしなんて対象外で。

 

あたしの気持ちなんて、
広臣の邪魔になるだけなの。

 

だから…

 

臣)俺のこと、避けてる?

 

鏡を見ると、真剣な目が、あたしを見つめてた。

 

〇)…っ

 

なんて答えたらいいのか、わからない。

 

とりあえずヘアセットを完成させて、
広臣から逃げるように楽屋を出ようとすると

 

臣)待てよ!!

 

広臣が後ろから追いかけてきた。

 

〇)…っ

 

走って逃げたけど、すぐに追いつかれて…

階段の裏。行き止まり。

 

臣)なんで俺のこと、避けてんの?
〇)…っ

 

追い詰められて、誤魔化せない。

 

臣)俺…、なんかした…?
〇)…ううん……
臣)嫌いに…なった…?
〇)…っ

 

そんなわけ、ない。

こんなに、好きなのに。

 

〇)別に避けてないよっ!w

 

必死に笑顔を貼り付ける。

 

〇)あたしのことなんて気にしなくていいから!
  ほら、戻ろ?

 

そう言って背中をポンと叩けば…

 

臣)〇〇…っ

 

壁についた、広臣の両手に…

閉じ込められた。

 

臣)気にしなくていいって、何それ。
〇)…っ
臣)気になるに決まってんだろ。
〇)…っ

 

やめて。

期待させるようなこと、言わないで。

 

臣)こっち向けよ。
〇)…っ
臣)〇〇…、

 

広臣の唇が、耳元に近づいてきて…

そのまま…

 

首筋に触れたか触れないか、
生暖かい感触。

 

〇)////

 

一気に顔に熱が集まって…

 

〇)やっ、だめ…っ!///

 

ドンッッ!!!

 

あたしは広臣を押しのけて、楽屋に戻った。

 

〇)はぁっ、はぁっ…///

 

みんながびっくりして、あたしを見る。

 

隆)どうしたんですか…?
健)顔、真っ赤…っすよ?
〇)////

 

恥ずかしくなって、両手で顔を隠して
今度はトイレに逃げ込んだ。

 

バタン!!

 

〇)…は、ぁっ

 

さっきの、何だったんだろう…

 

首筋に、キス…されたの?

それとも、ぶつかっただけ?

 

〇)////

 

わかんないけど…

まだ耳元で広臣の声がするみたいに、

心臓がバクバクする。

 

〇)はぁ……、

 

諦めるって。

距離を置くって。

 

そう決めたのに、簡単に引き戻される。

バカだな、あたし。

 

〇)……

 

深呼吸をして、気持ちを落ち着かせて
楽屋に戻ると

 

メンバーはもうスタジオ入りしてて
先輩のBさんだけが残ってた。

 

B)あ、お帰り。
〇)戻りました……
B)お前今時間あるー?
〇)はい。
B)明日の撮影の説明、しちゃっていい?
〇)あ、はい、お願いします。

 

資料をもらって、コンセプトの確認。

不明点も確認し終えて、ほっと一息つくと。

 

B)なんか元気なくね?
〇)えっ…
B)悩み事かーー?
〇)……

 

さすが先輩。
わかっちゃうのかな。

 

B)今日飲みにでも行くかーー?
〇)行きたいですっ!!
B)おっけーーw
  じゃあ店探しとくわ。
〇)わ、ありがとうございますっ!♡

 

頼りになるBさん。

今日は気分転換にお酒を飲んで
現実を忘れたい。

 

 

……って思ってたのに…

なんで??

 

臣)えーー、じゃあ今度ほんとに
  行きましょうよ〜〜
B)登坂くんとじゃ勝てる気しないな〜
  あはははw
〇)……

 

目の前には、仲良く笑い合ってる
Bさんと広臣。

 

あたしの隣には、隆二くんと岩ちゃん。

 

隣のテーブルには、
ミミちゃんや他のスタッフ。

 

次々集まってきて
気付けばもう、10人を超えてる。

 

あたし…今日はBさんと二人で飲む予定だったのに…

 

隆)臣がさ、もう大慌てで…w
〇)え…?

 

あたしにしか聞こえないように、
隆二くんが左から耳打ちする。

 

岩)Bさん、〇〇さんに
  気があんじゃねーのーー
  とか隆二さんが言うから。
〇)えっ…

 

岩ちゃんは右から耳打ち。

 

岩)〇〇さん、Bさんに
  持ってかれるかもね〜〜
  なんて俺もそそのかしてw
〇)えっ…

 

ニヤニヤ笑う二人。

 

隆)そしたら、店に乗り込む!!
  って、臣が言うからさ?
岩)そうそう。

 

それでなんだかんだ、人が増えちゃったのね…

 

隆)なんか、見ててもどかしいんすもん。
  二人とも。
岩)だよね。
〇)…っ
隆)さすがに気付いてますよね?
  臣の気持ち。
〇)え…?
岩)試してみる…?
〇)…っ

 

また、岩ちゃんの顔がほっぺに近付いてきて…

 

臣)岩田ァァァ!!怒

 

広臣が向かいで恐ろしい顔。

 

臣)お前、殺されたいの?

 

凍りつくような声でそう言う広臣に、

 

岩)ほらね?w

 

なんて、笑ってる岩ちゃん。

 

臣)お前は〇〇の横に座るな!!
  前科あんだから!!
岩)前科って…w
〇)……///

 

なんかもう、よくわかんなくって…

 

Bさんがあたしの家の近くの店を
予約してくれたから

あたしの家はすぐそこなんだけど、

店を出た後、広臣が
「送る!」って言い張って…

 

あっという間に、家の前。

 

臣)……
〇)……

 

送ってくれてありがとう、って
そう言おうとしたら…

 

臣)今日…、俺ら…邪魔だった?

 

少し寂しそうな声。

 

臣)Bさんと…
  よく二人で飲みに行ったり…すんの…?
〇)……

 

そんな飲み友達ってほど
気軽な関係ではないけど…
だって先輩だし…

 

臣)好きなの?Bさんのこと…
〇)えっ!!!

 

どうしてそんな展開になるのかびっくり。

でも、暗くてもわかる。

広臣の表情は真剣で。

瞳が切なく、街灯を映してる。

 

〇)好きじゃ…ないよ…?
臣)…っ

 

あたしがそう答えると、
広臣は苦しそうに眉を寄せて…

 

臣)俺、もう我慢すんの、しんどい…
〇)え…?

 

少し震えた声で
そんなことを言われて…

 

〇)広臣…?

 

俯いてしまったその顔を、そっと覗くと…

 

臣)……っ

 

ぎゅっと、その腕に…抱きしめられた。

 

〇)?!!////

 

……ぎゅぅぅぅぅ…っ

 

〇)////

 

こんな風に男の人に抱きしめられたの…

初めて。

 

力強いんだけど、優しくて…

それはまるで、

俺様なのに、泣き出しそうな

今の広臣みたい。

 

臣)もう…やだ。
〇)え…?

臣)他の男と…喋んないで…
〇)…っ

臣)他の男と二人になんないで…
〇)……

 

絞り出すような声で、そう言われて…

 

臣)俺以外のヘアメイク、しないで。
〇)…それは…仕事だから…

臣)やなんだよ!!
〇)…っ

臣)俺以外に触んないで…
〇)……

臣)俺以外、見ないでよ…
〇)……

 

次々こぼれる言葉に、頭が追いつかない。

 

ねぇ広臣、それって…

 

臣)ヤキモチ妬かせようとかアホなこと考えて
  結局俺の方が100倍妬いてるし…っ
〇)……

臣)好きすぎて、おかしくなりそう…
〇)……

 

広臣が…

あたしを…好き…??

嘘でしょ…?

ほんとに…?

 

臣)〇〇から見たら…
  俺なんて年下で、ガキかもしんないけど…
〇)…っ
臣)〇〇を好きな気持ちは
  誰にも負けねぇもん…っ
〇)……///

 

「負けねぇもん」って、子供みたい。

 

可愛くて、愛しくて、

キュンキュンが爆発しそう。

 

臣)俺の気持ち…知ってるくせに…
  思わせぶりだし…
  期待させて、突き放すし…
〇)え…?

 

広臣の口からこぼれるそれは、
あたしが思ってた気持ちと、全く同じもので…

 

臣)俺なんて…対象外なのかもしんねぇけど…
  諦める気、ないから!!
〇)…っ///

 

ぎゅっと抱きしめられたまま
次々と紡がれる言葉。

 

嬉しくて、どうにかなりそうで、
ポワーーーッとしてると…

ゆっくり離れた身体。

 

そっと視線を上げれば、目が合った途端に。

 

臣)あ、ダメだ、恥ずかしい///

 

そう言ってまた、ぎゅっと閉じ込められた。

 

〇)////

 

ドキドキ…ドキドキ…

 

臣)顔見たら…照れるから…
  このまま言いたい事、全部言うっ///

 

そんな自分勝手な宣言をして、

広臣はあたしに嬉しい言葉ばかりをくれた。

 

臣)他の男のとこ、行かないで…
〇)……///

臣)ずっと、俺のそばにいろよ。
〇)……///

臣)もう…ずっとこうやって…
  閉じ込めておきたい…
〇)////

 

閉じ込められてたい。

この腕の中に。

 

 

臣)はぁぁぁ……///

 

最後に深いため息を吐いた広臣は…

 

臣)これだけは、顔見て言う…///

 

そう言って、あたしの肩を優しく掴んだ。

 

臣)〇〇。
〇)…っ///

 

広臣の瞳が、キラキラしてて…

その真っ直ぐな視線に…

心が吸い込まれる。

 

臣)すっっっっっげぇ好き!!!///
〇)////

臣)俺のもんになって!!!///
〇)////

 

あまりにストレートな気持ちに
視線をそらす事なんて出来なくて…

でもドキドキが最高潮に達して…

 

〇)……(こくん)///

 

あたしはただ、頷くのが精一杯。

 

臣)え…?

 

拍子抜けしたような、声。

 

臣)……いい…の…?

〇)え…?

臣)俺のもんに…なってくれんの…?

〇)え…、…う…うん、///

臣)え、…っ///

〇)……///

臣)え、待って…、俺の事…
  好き…なの…?///

〇)……///

 

好きだよ?

大好きだよ?

 

〇)……(こくん)///

 

頷いた瞬間、身体が宙に浮いた。

 

〇)きゃぁっ///
臣)え、ほんとのほんと?!///
〇)…っ
臣)ヤバい!どうしよう!///
〇)////

 

広臣はあたしを抱き上げたまま、
目をパチパチさせてる。

 

臣)ほんとに俺のこと好きなの?///
〇)////

 

すとんっ…

 

地面におろされた瞬間、

あたしは思わず広臣に抱きついた。

 

〇)好き、…だよ…っ///

 

ようやく言葉にして伝えられたその気持ち。

 

臣)////

 

広臣はぎゅっと抱きしめ返してくれて、
耳元で小さく呟いた。

 

臣)俺、もうダメ…、
  今日…帰れない///
〇)////

 

うん。帰らないで。

 

 

……

 

 

……

 

 

やっと通じ合った気持ちを
何度も確かめるように

肌で触れて、囁いて。

 

想いを繋いで、一つに溶け合う。

 

そんな甘くて幸せな夜を過ごして、

二人で迎えた朝も、とろけそうに甘い。

 

臣)〇〇〜〜
〇)////

 

甘えた声で、あたしの髪をさらう指先。

 

〇)すっぴんだから…見ないで…///

 

布団に潜って隠れると、

 

臣)今更何言ってんの?可愛すぎ…///

 

チュッ

 

優しいキスが、おでこに落ちてきた。

 

〇)////

 

恥ずかしくてぎゅっと目を瞑ると…

広臣はあたしの頭を優しく撫でながら、
甘い囁きをくれる。

 

臣)すっぴん可愛いから見せろって…w
〇)…や…だ…っ

臣)〇〇ならなんでもかわいーのっ!
〇)……///

臣)俺がどんだけ〇〇のこと好きか
  もうわかったろ…?
〇)////

 

そう言われて思い出すのは、昨夜の激しさ。

 

臣)好きで…好きで…
  おかしくなりそうだったんだから…
〇)////
臣)やっと俺のもんになって…
  嬉しくて…泣きそう…

 

ぎゅっ…

 

〇)////

 

あたしは、幸せすぎて泣きそう…
いや、死にそうです///

 

臣)ほんっと好き。
〇)……///

臣)愛してるよ、〇〇。
〇)……///

臣)聞いてる?
〇)……(こくこく)///

臣)ふはっ、かわいーー///
〇)////

 

甘くて甘くて、溶けちゃいそう。

 

〇)……ねぇ…
臣)んー?

 

そーっと顔を出すと、
想像以上にとろけそうな優しい笑顔。

 

〇)広臣…は…
  年下が…好きなんじゃ…なかったの…?
臣)はいー??

 

優しく弧を描いてた瞳が、
大きく見開いた。

 

臣)何それ、何情報???
〇)…っ

 

だって、ミミちゃんが…

 

臣)年下なんか興味ないし、
  俺が好きなのは〇〇だけですけど。

〇)…っ

臣)昨日あんなに愛し合ったのに
  すっぴん見せるのが恥ずかしいとか言って
  もじもじしてる可愛い〇〇ですけど。

〇)!!!

臣)あんなに愛し合ったのに
  もう俺の事うずうずさせるくらい
  俺の事メロメロにしちゃってる
  〇〇ですけど。

 

……え、うずうずって…

 

〇)////

 

またそーっと顔を出すと…

 

臣)つかまえた♡
〇)ひゃ…っ///

 

布団ごと、ぎゅっと包み込まれる。

 

ドキドキドキ…

 

好きな人に包まれるって、ものすごい安心感。

 

はぁ…///

 

ねぇ広臣…聞いてもいい…?

 

〇)あたしの気持ちが…
  邪魔になったり…しない?
臣)はぁ?!!

 

だって…
あまりにも立場が違うし…

 

臣)なるわけねーだろ!
〇)…っ

 

でも…

 

〇)「彼女がいる」って…
  マイナスじゃないの…?
臣)……

 

広臣はふぅっと息を吐いて
優しく笑った。

 

臣)こんな幸せな気持ちが、
  なんでマイナスなの?
〇)…っ///

 

年下なのに…
まるで子供に言い聞かせるみたいな、
優しい話し方。

 

臣)俺さ、〇〇が側にいてくれるなら
  なんだって出来るよ?
〇)……
臣)それくらい、〇〇は俺にとって
  パワーの源なの。
〇)……

 

ほんと…?

あたしのこと、そんな風に思ってくれてるの…?

 

臣)それにそもそも。
  〇〇がいないと俺、
  「登坂広臣」になれないし。
〇)…っ
臣)俺をカッコ良くしてくれるのは
  お前でしょ?
〇)……///

 

なんか、泣きそうだよ…

 

〇)じゃああたし…
  広臣の隣にいても…いいの…?
臣)////

 

涙をぐっとこらえて、見上げると…

 

臣)可愛すぎてどうしよう///
〇)え…?

臣)もっかい、抱いてもいい?
〇)////

 

もう朝デスヨ…?///

 

臣)こんな何回も…嫌いになる…?///

 

少し不安そうな声。

その顔は本当に「嫌われたらどうしよう」って
しょんぼりしてて…

 

〇)////

 

可愛すぎて、どうしよう。

 

〇)嫌いに…ならないよ。

 

そう伝えると…

 

臣)立てなくなったら…ごめんね?///

 

遠慮がちな言葉とは裏腹に、

初めてみたいに、熱く深く、愛された。

 

何度味わっても
とろけてしまいそうな、幸せ。

 

 

……

 

 

……

 

 

臣)おはようございまーす!♡♡
N)……
健)…なんやそれ……
隆)朝からすげぇ爽やか……
岩)眩しすぎる。
E)どしたの、臣……
直)絶好調じゃん。
臣)へへっ♡♡

 

みんなに突っ込まれて、

 

臣)〇〇のこと、
  死ぬほど充電したからかも♡♡

 

なんて、耳元で囁いてくる。

 

〇)////

 

さっきまで抱き合ってた熱が
一瞬で蘇って、

顔が熱くなる。

 

隆)なんで〇〇さんが赤くなるのーーー
臣)うっせ!話しかけんな!
隆)はぁ?!
N)あ、そーだ。〇〇さん。
  この間のさ、
臣)会話禁止っ!!!!
N)はぁ?!!

 

広臣があたしをむぎゅっと抱きしめた。

 

〇)ちょ、広…臣…///

 

あたしをぎゅってしたまま、
ドヤ顔でみんなを振り返って…

 

臣)〇〇と会話したい人は
  俺の許可取って!!
  半径1メートル以内に近付くのは禁止!
〇)////

 

高らかに宣言された、俺様な命令。

みんなは呆れたように笑ってるけど…

 

臣)〇〇は俺のもんだもん…

 

ぎゅってしながらそんなこと言うから
可愛くて仕方なくて…

 

〇)もう…大好き…///

 

そう言って、ほっぺにキスをした。

 

臣)////

 

目が点になってる広臣。

 

隆)あああああああああ!!
岩)チューした!!うっそ!!!!
N)え、なになに?!
  やっとくっついたわけ!?
健)長かったぁぁ〜〜〜!!w
直)マジか……
E)えーー臣やったじゃん!!
臣)////

 

広臣は口元を隠しながら、
じっとあたしを見つめて

 

臣)もうみんなの前でチューしても
  いいってこと?///

 

嬉しそうにそんなことを言って

 

〇)え、えっと…///

 

戸惑うあたしに、キスの嵐。

 

みんなから野次が飛んでも、止まらなくて…

 

〇)////

 

子供みたいな独占欲も…

俺様なワガママも…

本当の本当は男らしくって優しいところも…

 

全部全部、大好き。

 

 

ーendー

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  1. みぃ より:

    いつもストーリー楽しみにしてます♡この弱気なのに俺様な臣めっちゃ好きです♡♡♡

  2. 外山咲良 より:

    弱気な俺様
    大好きです!このサイトのお話は全て好きですが、short storyが凄く好きです。
    いつもshort storyをみて癒されています。
    いつもありがとうございます!

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