【123】胸をくすぐる笑顔(岩ちゃんSide)

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◇ちゃんは本当に小さくて…
 
何cmだろ?
155くらいかな?
 
 
俺の服をワンピース代わりに着てるんだけど
そこからのぞく生脚が
 
なんかムチムチ柔らかそうで、触りたくなる。
 
 
触らないけど。
殺されそうだし。
 
 
大きい俺の服に隠れてるけど…
胸が大きいのもなんとなくわかる。
 
Eはありそう、うん。
 
 
当然触りたいけど触りません。
絶対殺されるし。
 
 
てゆーか
こんなこと考えてる時点で殺されそう。
 
 
亜麻色の長い髪からは
俺と同じシャンプーの匂い。
 
 
◇ちゃんが嫌々ながらも
うちでシャワーを浴びた理由は…
 
俺が汚したのはジャケットだけじゃ
なかったみたいで。
 
 
◇ちゃんは要らないって言ったけど
俺は強引に
 
ジャケットとワンピースと、バッグと靴…
全部一式、新しくプレゼントした。
 
 
◇)こんなに…ありがとう。
岩)ううん、ほんとにごめん。
◇)……。
岩)ついでに…
  こんなおじさんくさい店でごめん。
◇)……。
岩)二日酔いだから
  胃に優しいもの食べたくてw
 
 
連れてきたのは、
女の子と来たことなんてない
お気に入りの常連の店。
 
もう散々醜態さらしてるし…
今更オシャレな店じゃなくても…
っていう気持ちと
 
本当に二日酔いで身体が弱ってるのと。
 
 
男)おじさんくさい店ってなんだよー!
岩)あ、おじさん…すみませんww
男)ほらよ、雑炊。
岩)ありがとうございまーす♡
男)女の子と来るなんて初めてじゃん。
岩)うん。
男)彼女か?w
岩)違うよw
男)なーんだよ、つまんねーなーw
 
 
そう言っておじさんは戻っていった。
 
 
岩)食べないの?
◇)食べる。いただきます。
岩)うん。味は絶対美味いからw
◇)……!!!
 
 
一口食べた彼女の目が、大きく見開いた。
 
 
◇)美味しい!!!
岩)でしょw
◇)んん〜〜♡
 
 
はふはふしながら
美味しそうに食べてる。
 
 
一緒に買い物してるうちに
俺への敵対心?警戒心?は…
少しずつ薄れていったように思えたけど
 
でもこんな笑顔は、今日イチだ。
 
 
岩)かわい…w
◇)は?!
 
 
俺が思わず本音をもらすと
すぐさま鋭い視線を俺に向ける。
 
 
岩)ちょ、なんで睨むのw
  可愛いって言っただけじゃん!
◇)チャラ…
岩)なんでも俺をチャラ男にして
  片付けんのやめてよ!
◇)……。
岩)やっと笑ってくれたと思ったのに…。
◇)え?
岩)◇ちゃんが。
◇)馴れ馴れしく呼ばないで。
岩)だって名前教えてくんないじゃん。
◇)……。
岩)……。
◇)あたし…そんなに今日、ひどい顔してた?
岩)え?
◇)「やっと笑った」って…、
岩)……。
 
 
ひどい顔っていうか…
まぁ俺のせいなんだけど…
 
 
岩)笑ってる顔…見たかったから。
◇)……。
岩)……。
◇)…ごめん。
岩)え??
◇)……。
 
 
ごめんって…
別に◇ちゃんは何も悪くなくて
 
そんな顔にさせた俺が悪いわけで…。
 
 
◇)ご飯、美味しい。
 
 
◇ちゃんはポツリとそう言うと
顔を上げて俺を見た。
 
 
◇)ありがとっ
岩)…っ
 
 
今度は俺の目を見て笑ってくれて…
 
 
岩)……///
 
 
なんか…ずるいなこれ…///
 
 
岩)◇ちゃんは…
  なんでそんなチャラ男を毛嫌いすんの?
◇)はぁ??
 
 
彼女にとっては
わけのわからない質問だったのか、
 
さっき奇跡的に笑ってくれた可愛い顔が
一瞬で歪んだ。
 
 
◇)チャラ男が好きな女なんて
  いるわけないじゃん!
岩)……。
 
 
そうかなぁ…
だって…いつもの女の子たちはむしろ…、
 
 
◇)チャラ男がっていうか
  人に対して誠実じゃない人間が
  あたしは嫌いなの。
岩)……。
 
 
「誠実」かぁ…。
 
 
岩)俺もそれに入ってるの?
◇)え?
岩)「誠実じゃない人間」
◇)……岩ちゃんのことなんて
  何も知らないもん。
岩)……。
◇)チャラ男ってことしか。
岩)だから俺、チャラくないって!w
◇)…ほんとに?
岩)…っ
 
 
そう聞かれると…
チャラいのか?
 
……昨日だって、、
 
 
でも…あんなのは、
俺たちの間じゃ普通だし…
 
 
◇)嘘つきじゃないのはわかった。
 
 
答えられずにいる俺を見て
彼女がそう言った。
 
 
岩)◇ちゃんは…さ、
◇)……。
岩)チャラ男が嫌いなんでしょ?
  でも…さ、もし自分の周りに
  チャラ男しかいかなかったらどうすんの?
◇)……は?
岩)…っ
 
 
俺、何聞いてんだろ……。
 
 
◇)あたしの周りに
  もしチャラ男しかいないとしたら
  それはあたしのせいだもん。
岩)え?
◇)自分がその程度の人間ってこと。
岩)……。
◇)自分が誠実でいれば
  ちゃんとそういう人が
  周りにもいるはずだって
  あたしはそう思ってるから。
岩)……。
 
 
じゃあ…
 
俺の今の状況は自業自得ってこと?
 
 
俺が…適当に遊んでるから
周りにもそんな女しかいないって…
 
 
岩)……。
◇)こぼしてる。
岩)あっ…、
 
 
俺は慌てておしぼりで拭いた。
 
 
◇)もう…子供みたい。
  …岩ちゃんのどこが王子様なの?
岩)え?
◇)そう思える要素が
  全く見当たらないんだけど。
岩)……だよねw
◇)変なのw
岩)……。
 
 
そう言ってくすくす笑ってる。
 
子供みたいとか呆れられてるのに
笑ってくれるとなんかすごく嬉しくて…
 
ちらっとのぞく八重歯が可愛い。
 
 
なんか…この子は…
素の俺を見てくれてる気がする…。
 
こんな普通の出会いが…
最近なかったから…
 
 
岩)◇ちゃん…
◇)んー?
岩)また二人で…ご飯とか行こうよ。
◇)行かない。
岩)即答かよ!w
◇)うん。
岩)なんで?彼氏いんの?
◇)いない。
岩)…っ
 
 
今…俺、すげぇほっとした。
 
 
岩)じゃあいいじゃん。行こうよ。
◇)行かない。
岩)俺がチャラ男だから?
◇)ぷっww
岩)え…っ
◇)自分で認めたしw
岩)今のは…そーゆーんじゃ…
◇)はいはいw
岩)友達になろーよ。
◇)え?
岩)友達なら…
  普通にご飯食べに行ったって
  別に普通じゃん。
◇)うん。
岩)だから…友達になって。
◇)……。
 
 
◇ちゃんが俺をじーーっと見る。
 
 
「友達」になる価値があるのかどうか
見極められてるみたいで…ドキドキする。
 
 
◇)あたしと友達になりたいの?
岩)うん。
◇)友達なんていっぱいいるでしょ?
  なんであたし?
岩)なんでも!!
◇)……。
 
 
わかんないけど…
今日で終わりにしたくないし。
 
 
岩)大丈夫!下心とか全然ないから!
◇)……。
岩)変なこともしません!
◇)……。
岩)…ってなんで俺こんな
  女の子ホテルに連れ込むみたいな
  言い訳してんだ…
◇)ふーーーん…
岩)え?
◇)そう言って女の子
  ホテルに連れ込むんだ?
岩)いや、そうじゃなくて…
◇)やっぱり…
岩)チャラ男じゃない!!
◇)…っ
 
 
こんな堂々と言っときながら…
 
多分…
普段の俺は彼女の
「チャラ男」の枠に入れられるって…
それくらいわかってる。
 
 
でも…
 
 
岩)友達!!
 
 
やっぱりどうしても、引き下がれなくて。
 
 
◇)……友達って…何すんの?
岩)だから…ご飯食べたり…、
◇)……。
岩)相談に…乗ったり…?
◇)あたしの相談に乗ってくれるの?
岩)え!!なんか悩みあるの?!
◇)何それ。失礼。
岩)いや、そういう意味じゃなくて…
◇)あるとしたら
  岩ちゃんが聞いてくれるの?
岩)聞く!!俺でよければ聞くよ!!
◇)……。
 
 
予想外に飛び出した、◇ちゃんからの言葉。
 
 
岩)何か…あるの?
◇)別に、ないよ。
岩)…っ
◇)で、あたしも岩ちゃんの相談に乗るのね?
岩)え?
◇)友達になったら。
岩)…うん?
◇)何かあるの?
岩)……。
 
 
そう言われると…
俺って…悩みあるのかな??
 
 
岩)……本当の自分を…、
◇)……。
岩)わかってもらえない時って…
  ◇ちゃんならどうする?
◇)……。
岩)……。
 
 
なんでこんなこと聞いたんだろ。
 
 
◇)それはわかってほしい相手なの?
岩)…え?
◇)「本当の自分」を。
岩)……。
 
 
いきなり出た言葉だし
これが俺の悩みかもわかんないから
 
そう聞かれると…、、
 
 
◇)わかってほしいなら
  わかってもらう努力を
  するしかないんじゃない?
岩)え…?
◇)人間なんて…恋人でも…たとえ家族でも
  結局は相手のことなんて
  100%わからないでしょ?
岩)…うん。
◇)心の中なんて見えないんだし
  言葉だって本心かわからないんだし。
岩)……。
◇)だから…わかってほしいなら…
  わかってほしい相手なら…
  自分からちゃんと伝える努力を
  しないといけないんだと思う。
岩)……。
 
 
伝える…努力…、
 
 
◇)なんて…
岩)え…?
◇)今のは自分に言った言葉かも。
岩)…っ
◇)ごちそうさま。
岩)……。
 
 
……◇ちゃんがどんな子で
 
なんであんな時間に
あんな場所にいたのかとか
 
知らないことは山ほどあるけど…
でも
 
 
俺みたいな酔っ払いを
見捨てずに家まで送り届けてくれた
その優しさが嬉しいし…

それに…
 
 
「わかってほしい相手」
 
 
この子がそうなのかわからないけど
 
もっと俺を知ってほしいって
なんとなく思ってる自分がいる。
 
 
だから…
 
 
岩)次…、いつ会える?
 
 
店を出てそうたずねると
振り返って俺を見上げる大きな瞳。
 
 
◇)これ、洗ったら。
 
 
貸してあげた俺の服。
 
俺が持って帰るよって言ったのに
借りたからちゃんと洗うって言われて…
 
そしたらまた会えるって思って
俺もそれ以上言わなかった。
 
 
岩)じゃあ明日?
◇)なんで。
岩)今日洗ったら明日乾くじゃん。
◇)あ、急いでるの?
岩)いや、そうじゃなくてw
◇)??
岩)それくらい早く、会いたいってこと。
◇)……。
 
 
あ、やべ…
今の…「チャラい」になんの??
 
本心だったんだけど
めっちゃじっと見られてる。
 
 
◇)じゃあ…急いで洗うね。
岩)え…っ
 
 
それは…
俺の「早く会いたい」を…
受け入れてくれたって…こと??
 
 
◇)ありがとう。
岩)え?
◇)いろいろ…
岩)いや、だってこれは…
◇)ううん、これだけじゃなくて…
岩)え…?
◇)……。
岩)……。
◇)ありがとう。
岩)……。
 
 
他に…なんのありがとう??
 
 
◇)ありがとね、岩ちゃん。
岩)……。
 
 
彼女はまたニコッと笑ってくれた。
 
 
笑うと小さくのぞく八重歯。
クリクリと俺を見上げる大きな瞳。
 
 
睨まれすぎたせいか
笑ってほしいと思ってるせいか
 
彼女が笑うたび
「今日イチ」が更新されてく勢いで
嬉しくなる…。
 
 
最後にその笑顔は反則だよ…///
 
 
岩)じゃあ…、
 
 
ふわっと風になびいた亜麻色の長い髪…
 
 
岩)洗ったら…連絡してね♡
 
 
ぽんぽん。
 
 
◇)ちょっと!!!
岩)えっ…
 
 
また◇ちゃんの顔が怖くなった。
 
 
岩)な、なに??
◇)頭ポンポンとかすんな!!
岩)えっ…
 
 
あ、今したか!
無意識だった…
 
 
◇)軽々しくこーゆーのしちゃダメ!
岩)はい…ごめんなさい。
 
 
そんな…
怒られることなんだろうか…
 
 
◇)こーゆーことすんなら
  「友達」やめるからねっ!
岩)しませんしません!
  もうしません!!
 
 
そう慌てて言ったけど、
 
ぷくっと膨らませた頬が可愛くて
実は笑いを堪えるのに必死だったりする。
 
 
◇)なに。
岩)いや…?
◇)じゃあね。
岩)うん。
◇)仕事頑張ってね。
岩)うん、行ってきます。
  今日は…付き合ってくれてありがとう。
◇)なぁに、それw
岩)え?
◇)ありがとうはあたしでしょ?
岩)え…
◇)ありがとね!
 
 
彼女は荷物を少し持ち上げて
ニコッと笑った。
 
 
俺が無理矢理いろいろ買ったせいで
持って帰るの絶対大変そう。
 
 
岩)待って。
◇)…え?
 
 
俺はタクシーをとめて、1万円を渡した。
 
 
あれ…?
なんか既視感…
 
 
岩)荷物多いから、タクシーで帰って。
◇)え、いいよ!こんなお金!
岩)いいから。
◇)いいって!
岩)お詫びの気持ちだから。
◇)……。
岩)迷惑かけてほんとにごめんね?
◇)それはもういいってば…
岩)……。
◇)……。
岩)送ってあげられないから
  タクシーで帰って?
◇)……。
岩)……。
◇)うん、ありがとう。
 
 
半ば無理矢理お金を握らせると
 
クリクリした大きな瞳が
また俺を見上げた。
 
 
◇)仕事…頑張ってね。
岩)さっき聞いたよw
◇)あ、そっか。
岩)うん、ありがと。
◇)…うん。
岩)気をつけて帰ってね。
◇)ありがとう。
 
 
バタン。
 
 
ドアを閉めて
車が走り出すのを見送ると
 
最後に窓から小さく手を振って
ニコッと笑ったのが見えた。
 
 
岩)……///
 
 
また更新された「今日イチ」が
俺の胸をくすぐる。
 
 
そういえば最後はもう…
 
彼女の声のトーンは
「戦闘モード」から「可愛い女の子」に
戻ってた気がする…
 
 
岩)「友達」か……、
 
 
「友達」に見せてくれる笑顔が
あんな可愛いなら
 
「彼氏」に見せてくれる笑顔は
どんなに可愛いんだろう…
 
 
なんて
 
そんな下心はしばらく隠しておこう。
 
 
 
 
 
 
 
 
ーendー

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