【233】おかえり

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そわそわ仕事を終わらせてただいま帰宅。

時間は21時半。


♡は22時すぎって言ってたから
もうすぐ帰ってくる!!

どうしよう!
どうしよう!


なんかもう
嬉しすぎていてもたってもいられない。


そわそわしながらリビングのドアを開けると
テーブルの上ににゃんことメモ。


臣)!!!!


そうか!先に帰ってきてから
LIVE行ったんだ!!


『臣くんお帰りなさい。
 お仕事お疲れさま。
 なるべく急いで帰るから待っててね。』


臣)…っ


本当に…帰ってきてくれるんだ。

嬉しい。

嬉しい。


そわそわしすぎてて気付かなかったけど
確かに少しだけ空気が違う。


♡がいたんだ。
今日、ここに。

そしてもうすぐ帰ってくる。


臣)はぁぁ……


大きく息を吐いた。


そうだ!!
風呂洗っといてやんなきゃ!!


風呂場へダッシュしながら

♡のために風呂の用意をする
こんな些細なことさえ嬉しく感じる。


入浴剤は何がいいかな…

LIVEで疲れてるかもしれないから
カモミールかラベンダーにしようかな。


そわそわ…

そわそわ…


は!そーだ!シーツ!!
シーツも替えとこうかな!

先週♡が替えてくれてたけど
♡だって新しい方が気持ちいいもんな!

一人でせっせとカバーを全部替えた。


臣)よしっ!!


あとは…
えっと…


臣)……


♡の部屋をチラッと開けると
キャリーケースが広がってた。

それが目に入って一瞬ドキッとする。

またいなくなっちゃうんじゃないかって…


違う。
♡は帰ってきたんだ。

そう言い聞かせてドアを閉めた。


どうしよう…
他に何かないかな…

あいつのためにしておいてやれること…


そわそわ…
そわそわ…


あ!!そうだ!!
この時間、いつも♡が次の日の朝飯のために
ごはんをタイマー予約してる!

俺、やる!!やっとく!!


キッチンへ走って米を研ぐ。


はっ!でも…
明日…ご飯…作ってくれるのかな?

いや、ご飯があって困ることはない!
うん!炊いとこう!


ピッ。


臣)……


無事タイマー予約も終えて
俺はまたリビングを行ったり来たり…


はっ!!もう22時だ!!
いつ帰ってきてもおかしくない!!


どうしよう!

どうしよう!!


臣)…っ


うわ…、なんだこれ…

なんか俺…っ

泣きそうだ………


バカ、泣くな。

一週間ぶりに会えるのに
やっと帰ってきてくれるのに

情けなすぎんだろ…

泣くなっっ


臣)はぁ…っ


必死に上を向いて涙をこらえた。


会いたい…

早く…会いたい…


臣)♡……


ーーガチャッ


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


早く会いたくて
駅から真っ直ぐ走って帰ってきた。

息を切らせながら
玄関のドアを開けると

朝開けた時とは明らかに空気が違って

「帰ってきたんだ」って思った。


バスルームから香る優しい匂い。

リビングのあたたかい明かり。


それだけで泣きそうになって…
急いで靴を脱ぐと

リビングのドアが開いた。


臣)…っ

♡)臣…くん…っ



ドサッ…



……



………



気付いたら…バッグが落ちてて…


気付いたら…
私は臣くんに抱きしめられてて…


何度も何度も
ぎゅって…ぎゅって…

強く抱きしめられて


涙が一気に…あふれ出した。


♡)…っ


ずっと…帰ってきたかった。

この腕の中に…帰ってきたかった。


♡)ふ…ぅっ…、…っ…


涙と一緒に
気持ちもあふれて…


ただ…ただ…
臣くんをぎゅっと…抱きしめ返す。


臣くん…

臣くん…


気付けば握りしめてるシャツの背中が
静かに震えてた。


臣)…っ


臣くんが…泣いてる……


♡)ふ…っ、ぇっ……


肩先で臣くんが声を殺して泣いてて…

私はまた余計に涙があふれた。


臣くん…


ごめんね…
ごめんね…
ごめんね…


もう…言葉にならなくて…


臣くんのシャツは
私の涙がにじんで色が変わってる。


どれくらい抱き合ってたかわからない。

わからないけど…


ようやく絞り出した声で
一言告げた。


♡)…ただ…いま……

臣)…っ

♡)…ふ…っ…ぅぇ…っ

臣)おか…えり…っ


勝手に出て行った私に
「おかえり」って言ってくれた
その一言がすごくあたたかくて…


♡)ふぇぇ…っ
臣)…っ

♡)ただいまぁ…っ
臣)おかえり……

♡)ただいまっ……
臣)おかえり……

♡)臣くん……っ
臣)……


ぎゅっ……


♡)ただいま…っ
臣)……

♡)…っ
臣)♡……


ぎゅっ……


臣)おかえり……
♡)……


何度繰り返したかわからない。


ひたすら抱き合って
お互いを確かめるように……


おかえりって言ってくれて…
名前を呼んでくれることが

こんなに愛しいなんて…



臣)♡……

♡)……

臣)顔…見せて…

♡)…っ


もう一つになったかと間違えるほどに
きつく抱きしめ合ってた身体は
ゆっくりと離れて

優しくてあたたかい手のひらが
私の頬を包んだ。


臣)……

♡)…っ

臣)♡……

♡)…っ


私の名前を呼んで目を潤ませて
言葉を詰まらせる臣くんに

気付けばまた涙がこぼれ出す。


♡)ふ…ぇ…っ、ふ…っ…

臣)…っ


ぎゅっっ……


臣)……おか…っ、…え…り…

♡)…っ


ぎゅぅぅっ


♡)ただいまぁ…っ、…ふぇぇっっ

臣)…っ


ぎゅっっ……


……


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


♡を解放するのに
どれくらい時間がかかったんだろう。

もう時も忘れるほど抱きしめ合って


嘘じゃない、本物なんだって…
今♡が俺の腕の中にいるんだって…

そう何度も確かめて…


ーー


♡の後に風呂から上がると
キッチンに愛しい姿を見つけた。


♡)あ…ごはん…もうタイマーしてある…


ぎゅっ…


♡)わっ!びっくりしたっ!
臣)……


ラベンダーの香りを後ろから抱きしめた。


♡)臣くんもイイ匂いだ…♡
臣)…ん……
♡)ね、ごはん…ありがとう。
臣)…うん。
♡)明日…美味しい朝ごはん作るね♡
臣)……っ


朝ごはん…なくていいから…
このまま腕の中にいて……


♡)臣くん…?
臣)…あ…、ごめん……


また閉じ込めてしまいそうで
そっと腕を緩めると

♡が振り返って
俺の腰に抱きついた。


ぎゅっ……


♡)そろそろ寝よっか…
臣)……


時計はもう1時を回ってる。


臣)ん。


頭を撫でると
♡はニコッと笑って寝室へ向かった。


♡を抱きしめられることが…

俺に笑いかけてくれることが…

当たり前なんかじゃなくて
こんなにも嬉しいことなんだって
改めて実感する。


そして…
二週間ぶりに感じるその幸せに
俺はもうどうにかなってしまいそうだ。


♡)あっ…ベッドも……
臣)うん……
♡)なんか…いっぱいいっぱいありがとう♡
臣)……


ありがとうなんて…

俺の方が言いたい。

帰ってきてくれて…本当にありがとう。


♡)んっ……


♡はベッドに上がって
少し改まって座った。


臣)……

♡)えっと…臣くん…

臣)……


俺は横からベッドに入った。

お前も入れと促すように布団をめくる。


♡)臣くん…あの…
臣)……おいで。
♡)……//

臣)ん……
♡)…でも…あの、臣くん、私ね…

臣)来て……
♡)……っ


諦めた♡が布団の中に入った。


ぎゅっ……


俺はすぐに♡を抱きしめた。


臣)はぁぁ………


ヤバい…

また…泣きそうだ……


臣)……っ


あったかい…♡の体温……

柔らかい匂い……


帰ってきてくれた。

帰ってきてくれた。


ーーずっと…寂しかった。


夜眠る時も
朝目を覚ます時も

一人で……


それが一番…俺に孤独を感じさせた。


臣)♡……

♡)……

臣)♡……

♡)…臣くん……

臣)……っ


今…間違いなく
俺の腕の中にいる。


離したくない。

離したくない。


二度と…失いたくないーーー


臣)♡……


絶対に…二度と…失くさない。


♡)臣くん……


そっと頬を撫でると
大きな瞳が俺を見上げた。


臣)ごめん…な…
♡)え…?


何か言いたいことがあるんだろう。
でも……


臣)今日は…
♡)……


ぎゅっ……


臣)このまま…眠らせて……
♡)……


何の言葉もいらないくらい

お前がここにいてくれることが
嬉しくてたまらないから。


胸がいっぱいで…
まともな話が出来る気がしないから。


今夜はこのまま

お前のぬくもりを
お前の存在を

確かめるように…抱きしめてたい。


ぎゅっ……


臣)……
♡)……


キュ…ッ


♡が俺の胸元を掴んだ。


俺が動けないくらいに包み込んでるから
♡は腕を回せない。


♡)…臣…くん……
臣)ん……?

♡)……
臣)……

♡)……あったかい…ね…
臣)……

♡)……
臣)うん……

♡)……
臣)すげぇ…あったかい……

♡)…うん……
臣)……


さっき廊下で抱きしめてる時も、思った。

こんな風に抱きしめ合ってたら
もう一つになりそうだ、って。


あったかくて…
愛しくて…

そんな♡を感じられる
自分の腕が…身体が…嬉しくて…


臣)……
♡)……
臣)……
♡)臣くん…明日は…?
臣)……
♡)……
臣)…明日…?
♡)……うん…。
臣)明日もリハだよ。昼から。
♡)お昼から?
臣)うん。
♡)……
臣)夜も…なるべく早く帰ってくる。
♡)……そっか…、待ってるね♡
臣)うん……
♡)……
臣)お前は…?
♡)私はお昼の撮影だけだから
  お家で待ってるよ♡
臣)そっか……
♡)うん。
臣)……


「待ってる」って…
そう言ってもらえることが

死ぬほど嬉しい。


明日…目が覚めても

♡がいて

明日…仕事から帰ってきても

♡がいる。


臣)……


顔をのぞくと
俺を見上げて微笑んだ。


抱きしめていたい。

でもその愛しい顔を見つめていたい。

でもやっぱり抱きしめたい。


臣)なんか全然…足りねぇや……


贅沢だな…


♡)うん……


♡がにっこり笑って俺の頬を撫でた。


♡)足りないね……
臣)え……?
♡)いくら…ぎゅってしても…
臣)……
♡)足りない……
臣)……


そう言って
愛しそうに俺の頬を撫でるから

涙がこぼれそうになるのを
誤魔化すように

俺はまた♡を抱きしめた。


臣)…足りるわけ…ねぇよ…っ
♡)…っ
臣)二週間分…だから…
♡)…そう…だよね……


ぎゅっ……


会えなかった時間…
抱きしめられなかった分。

何度も何度も…抱きしめ合う。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


臣くんのぬくもりに目を閉じてると
ふと頭を撫でられた。


臣)お前…珍しく寝ないな…w
♡)え……?
臣)いつもは…
  こんなくっついてたら…
  すぐのび太なのに。
♡)……


だって…


♡)ん……っ


すりすり…


♡)もったいないん…だもん…
臣)…え…?
♡)……


ずっと帰ってきたかった「ここ」。

せっかくこうして一緒にいるのに…


♡)寝ちゃうの…もったいないの…
臣)……


臣くんがまた
私のほっぺを撫でた。


臣くんはさっきから…

私を抱きしめては…
ほっぺを撫でて優しく見つめる。

その繰り返しで

何度も私を確かめてるみたい。


何もかも許されてしまいそうな
その優しい瞳につかまると

もう何も…考えられなくなってしまう。


臣)……


ほらまた…
そんな瞳で…


♡)…臣くんは…寝ないの…?

臣)ん…?

♡)……

臣)俺はずっと…こうしてたい…

♡)…っ


そう言って優しく微笑む瞳が
また私を包み込む……


ぎゅ…っ


思わずまた抱きつくと
ぽんぽん、と…優しく抱きしめてくれた。


ずっと…ここにいたい。
ずっと…帰ってきたかった。

臣くんのあったかい腕の中。


何もかも…やわらかくほどけていくみたい…


本当は
話したいことも
話さなきゃいけないことも
たくさんあるはずなのに

でも

こんな夜に言葉はいらない。


二人とも傷ついた。

二人とも寂しかった。


会えなかった寂しさも
会えた嬉しさも


お互いにこんなに感じる愛しさも


全部全部一つになるくらい
抱きしめ合っていたい。


この時間が…何よりも尊く感じるからーー


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


眠るのがもったいなくて…

お前を見つめて
お前を抱きしめて

ずっとこんな幸せの中にいたい…


そう思っていたら


「もったいないん…だもん…
 寝ちゃうの…もったいないの…」


そんな♡の言葉に…
また愛しさがあふれた。


こうして見つめ合えることが
抱きしめ合えることが

すごく尊く感じて…


お互いに愛しく思ってることを
お互いがわかってる。


臣)明日…撮影なんだろ…?
  寝ろよ……


そう言って頭を撫でると


♡)臣くんが…先に寝て…//


そう言ってすり寄ってきた。


臣)お前が先……
♡)臣くんが先…っ
臣)だーめ、無理しないで寝ろ。


柔らかい髪に手を差し込んで
額を合わせると


♡)無理なんか…してないもん…//
  臣くんが先に寝て…
臣)なんで…w
♡)私は…もったいないから…
  臣くんの寝顔…見てる…//
臣)……なんだよそれ…
♡)……
臣)俺だって…お前の寝顔見てる…
♡)……//
臣)もったいないもん…
♡)だーめ…先に寝て…//
臣)……


そんなやりとりをしながら
目を合わせて


臣)ふは…っw
♡)何これ…っ、もう…w
臣)何やってんだろな、俺たち……
♡)ほんとだよぉ…//


二人で笑い合って
抱きしめ合った。

ああ…

また愛しさがあふれる。


♡)臣くん……
臣)ん…?
♡)……
臣)……
♡)一つだけ…言ってもいい…?
臣)……うん…


腕を…緩めると…


♡)臣くんだいすき…♡♡
臣)…っ


太陽みたいな…笑顔…


♡)だいすき…♡♡


そう言って抱きついてきて…
小さく呟いた。


♡)おやすみなさい…♡
臣)……
♡)……
臣)……
♡)…はぁ……幸せ…だなぁ……
臣)…っ


しばらくして聞こえてきた
安らかな寝息のリズム。

やっぱり…
先に寝たのがお前で良かった…


だって……


臣)…っ


俺は♡を起こさないように
必死で声を殺した。




……


臣)は…ぁ…っ


俺の大好きな笑顔。


俺の腕の中で
幸せそうに笑う♡が
宝物みたいに愛しく思えて…



臣)♡……




……


……俺は


この宝物を一生大事にする。



ずっとずっと…
死ぬまで大事にして…

大好きなこの笑顔を…ずっと
守っていくから……




ーendー

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  1. 匿名 より:

    引き込まれたように読みました。
    こんな風に感じていたこと、好きで好きで苦しかったこと、それでもそばにいたいと思ったこと、リアルな感情が蘇って泣きっぱなしでした。
    もう、あの頃の気持ちには戻れない寂しさと、形を変えた今の愛情を大事にしたくなりました。

    • マイコ より:

      拙い文章ですが、そう言ってもらえてありがたいです。
      そして、自分の経験や想いと重ねて読んでいただけて嬉しいです。゚(゚´ω`゚)゚。じーーん♡♡
      どうもありがとうございます✨✨

  2. タマチャン より:

    感動ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーo(T□T)o

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