「まだ…実家にいるの?」
「……うん。」
◇ちゃんにはそう答えたけど…本当は…
レ)あんたいつまでうちにいんの?
♡)え…っ
レ)いい加減帰んな!!
♡)ひどい!!
レ)ひどくない!!
いつまでも逃げてんな!!
♡)…っ
昨夜ママにそう言われて…
何も言い返せなかった。
だって…その通りなんだもん。
仕方ないから今日は荷物を持って
実家を出てきた。
でも…家にはやっぱり帰りたくない。
私は…臣くんから逃げてる。
臣くんからっていうより…
考えることから逃げてる。
必死で心に蓋をして
考えないように…考えないように…って
そんなことしても
解決しないのはわかってるのに。
♡)……
『待たないで。
会いたくない。』
一昨日…臣くんが下まで来てくれたのに
そう返事をしてから
臣くんからは何も連絡が来なくなった。
忙しい中、会いに来てくれたんだって
わかってる。
でも…
まだ…
顔を見れない。
どうしよう……
◇ちゃんとのお昼から戻ってきて
携帯を見ると…
♡)…っ
『まだ実家にいる?
俺は明日から樹海ドームでリハです。
向こう行く前に一度会いたい。
会って話したい。
今日、帰ってきてほしい。頼む。』
二日ぶりの臣くんからのメール。
♡)……
今月末にはツアーが始まる。
今…リハとかで大変なのに…
それでも会いに来てくれたんだよね…
♡)臣くん……
こんな大事な時に…
負担を増やしてごめんなさい。
……
『まだ実家にいます。ごめんね。
気をつけて行ってきてね。
怪我に気をつけてリハ頑張ってね。
私のことなんて
もう考えないで下さい。』
私のことなんか考えないで
リハに集中してほしい。
返事を返すと
すぐにまた返事が来た。
『考えないとか無理に決まってんだろ。
頼むから帰ってきて。』
『会いたい。』
♡)……
続けて送られてきた
最後の「会いたい」が…
胸に刺さった。
これ以上考えたら涙が出そうで
私は携帯をバッグにしまった。
考えない。
考えない。
また心に蓋をして
定時まで仕事に没頭した。
K)♡、じゃあ明日ね!
♡)あ、うん!お疲れさま!
M)明日何があるんですかぁ??
K)明日は4人で撮影なの。
M)えっっ!!
K)江ノ島行くんだーー
M)ええっ!ずるい!!!
私も行くーーーっ!!
K)今回はスタジオじゃないから
諦めろw
M)えーーーっ!!!
♡)……
明日は…
KちゃんとTくんとJさんで撮影。
そして今日は…
佐伯さんが急遽入れてくれた撮影。
重たいキャリーケースを持って
スタジオに行くと…
ト)♡ちゃん!!!
♡)えっ!トリちゃん!!!
トリちゃんが抱きついてきた。
♡)わぁっ!びっくりした!!
ト)私もっ!!
♡)トリちゃん、撮影?
ト)うん!♡ちゃんもなんだね!
♡)うん!!
なんだか嬉しくなって二人でハグ。
ト)佐伯さんが言ってた相方って
♡ちゃんだったんだぁ〜♡
♡)え?
ト)今日ね、私と他のモデルさんと
4人で撮影予定だったんだけど
急遽変更になったの。
♡)えっ…
ト)企画自体変更して
ペアで撮影するからって
急に言われて…
誰とですか?って聞いても
来てからのお楽しみって言われてw
♡)えーーーっ
佐)あ!いたいた!♡ちゃーーん!
♡)佐伯さん!
佐)急に仕事受けてくれてありがとう!
♡)いえ!私こそ急に…すみません!
佐)♡ちゃんが平日も動けるなら
頼みたい仕事なんて
い〜〜っぱいあるのよ〜〜♡
ト)あはははw
佐)あら、二人はもう仲良くなったの?
ト)佐伯さん♡
私たちもともと仲良しですー♡
佐)えええっっ!!!
ト)ねっ♡
♡)うんっ♡
佐)そうだったの?!
びっくり!!ええ〜〜〜!!
♡)えへへへ♡
佐)え…じゃあ…
♡)??
佐)わ…閃いてきたわ…!!!
♡)え…?
佐)とりあえず今日の撮影よろしくね!!
また連絡するわ!!
♡)はい……
佐伯さんは何か閃いた様子で
そのまま走っていなくなった。
♡)どうしたんだろう…
ト)佐伯さんっていつもバタバタしてるよねw
♡)うん!w
そっかぁ…
今日はトリちゃんと一緒に撮影かぁ…
楽しみだなぁ♡
控え室で私がメイクしてもらってる間、
トリちゃんはずっとふくらはぎを
マッサージしてた。
ト)今日は朝からだったから
むくんでるーーやだーーー
♡)ずっと撮影だったの?
ト)うん。
メ)ふふ…っw
バトルもあったし疲れちゃった?
ト)少し…w
♡)バトル?!!
メ)トリちゃん、カッコ良かったのよ〜♡
そう言ってメイクさんが
誇らしげに教えてくれた。
トリちゃんは今日の撮影で
新人モデルの女の子に意地悪してた
ベテランモデルの二人を
こてんぱんにしたらしい。
ト)ほんとあいつら新人潰しなんだもん!
♡)はわわ…
トリちゃん…カッコイイ///
ト)♡ちゃんもあいつらには気をつけてね!!
ほんと陰険だから!!
♡)あいつら…?
ト)えっとね…
トリちゃんが雑誌をパラパラめくって
開いて見せてくれた。
ト)このへんの連中!!
♡)あっっ!!!
この人たち…
ト)え、まさかもう嫌がらせされてる?
♡)……
ト)♡ちゃんにまで…許せない!!
メ)トリちゃん、落ち着いてw
ト)ぷんっっ!!!
♡)……
そっか…この人たち…
いつも嫌な人なんだ…
なんでそんな意地悪なんだろう…
ト)あ、ねぇ、ところで…
♡)え…?
ト)さっきから気になってたんだけど…
この大きな荷物なぁに?
♡)…っ
私が言い淀んでると
ちょうどスタジオの準備が
終わったみたいで
トリちゃんとの撮影が始まった。
今日のカメラマンはZZさん。
Z)いや〜〜〜
二人とも可愛いね!!
信じられないくらいCuteだ!♡♡
パシャパシャッ、パシャパシャッ
Z)まるで天使のようだよ!最高だ!!
パシャパシャッ、パシャパシャッ
ト(気持ち悪い……)
♡(トリちゃん…っww)
そう言いながらも
満面の笑顔を忘れないトリちゃんは
やっぱりプロだなぁ。
撮影はすごく順調に進んで…
30分くらい早めに終了。
Z)いや〜〜ほんと最高だったよ!
二人のおかげだ、ありがとう!
♡)ありがとうございます!
ト)お疲れさまでしたーー!
Z)あ、待って待って!
俺の天使二人!!
♡)え…っ
Z)良かったらこの後
3人で飲みに行かない?
ト)ごめんなさい、今日は予定が♡
Z)え〜〜〜っ
じゃあ♡ちゃん!
ぐいっ
ト)♡ちゃんと予定があるんです。
ごめんなさいね♡
トリちゃんに腕を組まれた。
Z)なんだ〜〜〜残念だなぁ……
ト)それじゃ、お疲れさまでした♡
♡)お疲れさまでした!!
残念そうに見つめるZZさんを残して
トリちゃんと控え室に戻った。
♡)トリちゃんとの撮影、楽しかった♡
ト)私もーーー!!
また♡ちゃんとやりたいー♡
♡)ふふーーっ♡
ト)でもカメラマンは違う人がいいけど。
♡)あはははっw
二人で着替えてると
トリちゃんがまた、
私のキャリーケースに視線をおとした。
ト)♡ちゃん……
♡)…っ
ト)今日…
♡)……
ト)良かったら…
うちに泊まりにこない?
♡)…っ
今日の宿に困ってた私には
思いがけずありがたい一言。
もしかして…
何か察してくれたのかな…?
♡)いいの…?
ト)うんっ♡
お泊まり会しよっ♪
遠慮してる私に
気を遣わせないように
トリちゃんが明るくそう言ってくれた。
それから二人でスタジオを出て…
トリちゃんのおうちに帰って
お風呂に入って
トリちゃんのパジャマを借りて
トリートメントを塗ったり
ボディクリームを塗ったり…
寝る準備をしながら
それとなく事情を話すと…
「実はね、私にも先週…
臣くんから連絡来てたの。」
そう言われて…
臣くんがどれだけ心配して
私を探して
色んな人に連絡したんだろうって思ったら
すごく胸が痛くなった。
トリちゃんは
無理に聞き出そうとしたりなんかしないけど
「今は考えたくないの。」
そう伝えただけで
臣くんの話は一切しなかった。
こんなにみんなに心配をかけて
考えることから逃げてる自分が嫌になる。
臣くんは明日からいない。
一度家に帰って気持ちを整理しよう。
そう決めて、眠りについた。
ーendー
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