会社でばかり残業してると
Kちゃんに心配をかけそうで
会社が終わる時間に
私は他の用事をいっぱい入れた。
昨日は瞬の紹介で
クラブで歌を歌うお仕事をさせてもらった。
すごく高級なお店で
綺麗なドレスを着て…
リクエストされた歌を歌う。
なんだか非日常で
他のことを考えずに済んだ。
佐伯さんにも連絡したら
喜んで仕事をいっぱい入れてくれて
明日も来週も撮影がたくさん入った。
そして今日は…
デ)はい、OK!!
ほんと相変わらずいい声してるねぇ♪
♡)ありがとうございます!
久々に仮歌のお仕事。
デ)♡ちゃんの声を聞いて
相当気に入ったらしい知り合いがさ、
今度仕事頼みたいって言ってたよ。
♡)えっ!ほんとですか??
デ)うん。また連絡するよ。
♡)はい!わかりました!!
どんな仕事でも今は嬉しい。
一人でいたくない。
考えたくない。
何かをしていたいの。
♡)……
レコーディングを終えると
谷本さんと松浦さんが迎えに来た。
♡)わっ、お疲れさまです!
どうしたんですか??
谷)平日なのにお仕事受けてくださって
ありがとうございます。
♡)いえいえ!!
急だったのにお仕事もらえて
私の方こそありがとうございます!
浦)もう終わったんだろ?
飯でもどうだ。
♡)えっ…
浦)三人で♪
♡)えっと…今日は、ごめんなさい。
谷)用事でも?
♡)はい……
さっき瞬から
昨日のお店がまた呼んでくれてるって
LINEが来てた。
また歌いに行きたい。
♡)ちょっとお仕事があるんで
ごめんなさい。
浦)仕事ぉ??こんな時間からぁ??
♡)はい。
谷)何のお仕事ですか?
♡)えっと…弟の紹介で、クラブで歌を…
浦)よし!じゃあそこ行くか!谷ちゃん!
♡)えええっ!!
浦)二人で聴きに行くよ♪
変な店じゃねぇんだろ?
♡)なんか…高級なお店です。
浦)よし、決まり!
どこのクラブだよ?
♡)嫌ですーー!来ないでください!!
浦)はぁ??
♡)来ちゃダメですっ!!
それじゃあお先に失礼します!!
バタバタバタッッ
私はダッシュで逃げ出して
そのままクラブに向かった。
松浦さんと谷本さんがいたら
なんか…「非日常」じゃないし
なんかやだっ!
重厚な漆黒の扉を開けると
店長が笑顔で迎えてくれた。
店)いや〜〜♡ちゃん、
無理言ってごめんね!
♡)いえ!!
ご連絡ありがとうございました!
店)昨日来てた〇〇の社長が
今日もいらしてて…
どうしても♡ちゃんの歌が聴きたいって…
♡)光栄です♡
ありがとうございます♡
店)あと、▲▲のオーナーも
昨日の子はいないのかって…
♡)急いで着替えてきますね!
店)ありがとう!!
控え室に入ると
ホステスさんが二人、ヘアメイクをしてた。
♡)おはようございます!!
女)……
女)……
私もドレスに着替えて髪をまとめる。
女)あなた…うちで働くの?
これからずっと…?
♡)え…っ
挨拶は無視だったのに
突然声をかけられて驚いた。
♡)えっと…いえ、
そういうわけでは…
女)ああ、そう。
♡)はい。
女)あんまりあたし達より
目立たないでね?♡
♡)…っ
女)ただの歌い手さんは
立場をわきまえてってこと。
♡)はい……
よくわからないけど
威圧感がすごくて
私はすぐに部屋を出た。
店長に合図されて
ピアノまでの道を進む。
男)わ…初めて見たな…
あの綺麗な子は…?
男)…っ
男)ものすごい美人だな……
ピアノの前に静かに座ると
もう何も聞こえなくなる。
キラキラ光るシャンデリアが
少し眩しいだけ。
ピアノの音色に乗せて
歌を歌っている間は
何も考えなくて済むの…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
A)うっしゃー!お疲れ〜い!
パンッ
臣)お疲れっした!!
メ)お疲れさまでした!
隼)お疲れさまでした!
今日も無事、撮影が終わった。
A)登坂と撮ったやつ、
インスタに載せよーっと♪
臣)あ、じゃあ俺も載せます。
…AKIRAさんと並ぶと俺、小さいなw
A)いやいや、メンディーには敵いませんよw
臣)えっ、メンディーの方がでかいんすか?
メ)いやいや!!
AKIRAさんの方がでかいですよ!
俺182ですもん!
A)いやーなんか身長じゃなくて
なんだろな…
なんかでかいよね、メンディー。
臣)態度…?
メ)いやいや、それ悪口ですw
臣)でもわかるかも…
メンディーはなんかでかい。
ゴリラ並みの威圧感が…
メ)いやいや、それも悪口です♡
A)なんで!!ゴリラに失礼だろ!!w
メ)え〜〜〜っ!!
隼)あっははははww
それから事務所に戻ると
ちょうど隆二がいた。
隆)あーー臣、お疲れーー
臣)お疲れ。
隆)ふあ〜〜疲れた!
岩)あ、お疲れさまーー!
ヴォーカルチームも今終わり?
隆)あ、違うよ、今日は別々。
岩)あ!そーなんだ!
臣)俺は写真集の撮影だった。
岩)お疲れさまーー
臣)……
もう携帯をチェックするのが
癖になってる。
昨日…会いたくないって言われてから
電話もメールもしてないから
♡から来るはずなんてないのに
それでも気になって見てしまう。
臣)あ……
松浦さんから電話が来てた。
ピロリロリロ♪ピロリロリロ♪
岩)あ!松浦さんだー!
臣)えっ
岩)はい!もしもし!
お疲れさまです!!
今リハ終わったところです!
はい、…はい、…あ、今ですか?
臣さんと隆二さんいますよ?
…え、臣さん?
ああ、撮影してたからじゃないっすかね。
はい。
あ、わかりました!今から向かいます!
はい!はーい!
ピッ
岩)松浦さんが飯食おーーって。
隆)え、俺らも?
岩)もちろん。
なんで俺の電話に出ないんだー!
って言ってたよw
臣)ああ、フォローありがとw
岩)うん。
それから三人で店に向かうと
松浦さんはもう飲んでた。
浦)お、来た来たー!おせーよ〜〜
岩)すいませんw 失礼しまーす。
浦)これね、うちの谷ちゃん♪
二人で飲んでたの♪
隆)お邪魔していいんすか?w
谷)初めまして!谷本です!!
臣)あ…っ
谷本さんって…
浦)ほんとは♡誘ったんだけどさぁ、
断られて。
え、♡?!!
俺たちが席に着くと、
松浦さんが拗ねたように口を尖らせた。
岩)♡ちゃんですか??
浦)そうそう、今日うちに来てたから
三人で飯行こうって言ったのに
走って逃げられたよ。
隆)走って?!!
谷)松浦さんのお誘いを断るなんて
♡さんくらいじゃないですかw
浦)ほんとお前さー、言っとけよ〜〜
臣)すいません……
谷)え…?
浦)あ、これねー、♡の彼氏〜〜♪
谷)ええええっっ!!!!
臣)……
何故か自慢げに紹介する松浦さんと
目を見開いて俺を見る谷本さん。
浦)今更なんだよ。
会話に出てきてただろ。
谷)いや、だから少し不思議で…
お知り合いなのかなと…
その程度に認識してました。
臣)ええと…、♡がお世話になってます。
谷)いえっ!!
彼氏だと紹介されるのも
彼氏のようなセリフを吐くのも
何だかためらわれる今の状況を思い出して
また気持ちが少し…重くなる。
浦)てゆーかあいつさ、
いつからクラブで働いてんの?
俺、初耳だったんですけどーーー
臣)え?
浦)クラブで歌ってんだろー?
そこ行こうとしたのに
どこのクラブか聞き出す前に
走って逃げられたし。
臣)……
クラブで…歌ってる…?
そんなの俺だって初耳だ。
谷)平日でも構わないから
夜できる仕事があれば紹介して下さいって
僕も言われましたしね。
急にどうしたんだろな…
臣)……
会社が終わった後でも
気を紛らわせるように
何かしていたいんだろうか…
岩)♡ちゃんすっげぇ頑張ってるな〜〜
俺も見習わないと!w
岩ちゃんが上手く空気を変えてくれた。
浦)岩ちゃんは映画も決まったんだろ?
おめでとう。
岩)ありがとうございます!
浦)もう撮影してんの?
岩)いえ、来月からです!
浦)ドラマもあるし…ツアーも始まるし
君ほんと働くねぇ…ww
岩)バリバリやりますよーーーw
ほんとありがたい環境なんで。
隆)すごいなぁ…
浦)お前は他人事か!w
リハどうなんだよ。順調?
隆)あ、はい!今のところ!
適当に料理に手をつけて
酒を飲みながらも
みんなの会話は…頭に入ってこなくて…
昨日あいつに言われたことと
松浦さんから聞いた話が
気になって…
「すげぇ無理して仕事わざと詰め込んだり
笑ってても全然カラ元気で…」
「みんなの前では強がるくせに
一人になると泣いてるし…」
「クラブで歌ってんだろー?」
「平日でも構わないから
夜できる仕事があれば紹介して下さいって」
臣)……
少し知らない情報が入ってきただけで
なんだか♡がすごく遠く感じるのは
なんでだろう…
もしこんな状況じゃなかったら
♡は普通に俺に報告してくれたのかな。
クラブって…どんな店なんだろう。
大丈夫なのかよ…
変なおっさんとか…いないのかな…
シンガーを雇うくらいだから
それなりの箱の高級店だと思うけど…
ドレスアップした綺麗な♡が
あんな歌を披露するんだ。
何人の男が虜になるかわからない。
何時まで…働いてんだろ…
帰りは…?
どうやって帰んだよ…
出待ちとかしてる変なおっさんに…
力づくで…とか…
臣)…っ
考えれば考えるほど
心配になってきた。
でも…あいつボクシング習い始めたし…
いや、でもまだ一回しか行ってない。
それに…
男が本気出したら勝てるかどうか危うい。
どうしよう…
すげぇ心配になってきた!!!!
浦)おい、お前聞いてるかー?
臣)はっ…
ヤバい…全然聞いてなかった!!
岩)臣さん、もう酔ってるんじゃ
ないっすかー?w
浦)なんだよお前〜〜〜
弱くなったのかー?
臣)ははは…w
岩ちゃん…
さっきからフォローありがとう。
隆)いや〜〜〜こののどぐろ、
めちゃくちゃ美味いっすね!!
浦)ほんとお前は美味そうに食うなw
岩)隆二さんは悟空なんでw
浦)悟空?!w
岩)NAOTOさんがいつも言ってるんです。
お前は悟空のように
気持ち良く食べるな!ってww
浦)確かに…!!
さすがNAOTO、上手いなw
岩)あはははw
浦)おっ…、電話だ。
松浦さんが席を立つと
谷本さんが俺をじっと見てきた。
谷)……
臣)なにか…?
谷)あ、いえっ…//
臣)……??
谷)すみません…勝手に頭の中で想像して
お似合いだなぁ…なんて…//
臣)……
そう言って無邪気に笑う谷本さん。
谷)僕、本当に♡さんのファンなんです。
臣)……
谷)彼女の歌も、もちろんそうだし
一番は…彼女の人柄というか
あの笑顔が…
臣)……
谷)あの子が笑うと
周りまでつられて笑顔になるんですよw
臣)……
谷)それって…本当にすごい力だなぁって。
臣)……
谷)「愛される才能」っていうのかな…
こっちまで心があたたかくなって
「笑っていてほしい」
「笑顔が見たい」って…
そう思えるような…
臣)……
「臣くんっ、だぁいすきっ♡」
「臣くんと一緒にいるとすっごく楽しいよ♡」
「嬉しい♡幸せ♡臣くん、ありがとう♡」
臣)……
♡の笑顔が…
次々頭に浮かんでくる。
眩しいくらいに…
臣)谷本さんに…もらったワンピース…
すごく喜んでました。
谷)えっ…
「ね、ね、これ可愛いでしょっ♡」
「えへへーー♡すっごくお気に入りなの♡」
そう言って嬉しそうに笑ってた。
谷)いやぁ…嬉しいな…//
あれ…本当に似合ってたんで…
臣)はい。本当に…
すごく似合ってた。
臣)ありがとうございます。
谷)いえいえっ//
臣)…って、俺が言うのも変ですけど…
谷)いえいえっw
♡に会いたい…
♡の笑顔が見たい…
ああ…なんか俺、
また泣きそうだ……
浦)よーしっ!
じゃあ飯も食ったし、次の店行くか!!
戻ってきた松浦さんに肩を組まれて
俺たちはタクシーに乗った。
ー続ー
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