【210】臣 vs T

スポンサーリンク
スポンサーリンク

ハ)♡、どうして泣いてるの?
♡)泣いて…ないよ…
ハ)泣いてる…
♡)…っ


優しくぎゅっと抱きしめてくれたのは
ハルくん。


ハ)♡が泣いてると俺も悲しいよ。
♡)……どう…して?
ハ)自分の大切な人が悲しいと
  自分のことよりも悲しいんだ。
♡)……


自分の…大切な人…

臣くん…
すごく悲しそうな顔してた…


♡)ふ…っ、ふぇぇっ……
ハ)泣かないで…
♡)傷…つけた…
ハ)……
♡)臣くん…ごめん…なさっ…
T)泣かされるんだったら別れろよ。


え…?
Tくん…?


T)お前が泣いてるところなんか
  見たくない。
♡)…っ


どうして…Tくんが
そんな辛そうな顔…するの?


T)……
♡)別れ…ないもん…


そう答えたけど…
臣くんの悲しそうな顔が

また頭に浮かんで…


♡)ふぇっ、ふっ、えぇんっ


また涙が溢れる。


臣くん…ごめんなさい…
そんな顔させて…ごめんなさい…


♡)ふぇぇぇんっっ


でも…
悲しかったの。
苦しかったの。

やだよ…

やだよ……


♡)うわぁぁんっっっ


ガバッ


♡)はっ、はぁっ……


……夢?


♡)は…ぁ……


わ、すごい汗……


♡)……


大きく息を吐いて、ベッドから降りた。


シャワーで汗を流して
今日も早めに会社に向かう。


蒼)おはようございます。
海)おはようございます!
♡)おはよう……


考えない。
考えたくない。

心に蓋をして
仕事に神経を集中させる。




K)♡……
♡)……
K)♡っ!!
♡)わっ!!!!
K)聞こえてる?もうお昼だよ!
♡)…っ


気付かなかった…
時間経つの…早いな……


K)ランチ、行こ。
M)行きましょーー♪
♡)…ううん、私はいいや。
M)先輩ってば最近ずっとそれ!
海)行きましょうよぉ…
♡)ごめんね?仕事してたいの。
K)……


少しでも思考を制限したくて
私はまたパソコンに向かった。

みんなそれぞれお昼に出かけて
静かなオフィス。


♡)はぁ……


ご飯はいらないから…
少し眠ろうかな……


T)おい。
♡)……
T)おい!♡っ!
♡)ん……
T)起きろ。
♡)……


顔を上げるとなんだかイイ匂い。


T)飯食うぞ。
♡)……


また…買ってきてくれてる。


♡)Tくんも…
  みんなとランチ行きなよ…
T)……


Tくんはそんな私の言葉を無視して
買ってきたものを広げた。


♡)おにぎり…?
T)いや、今日はおにぎらず。
♡)おにぎらず?なぁに?それ。
T)お前知らないの?w
  握ってないおにぎり。
♡)なにそれー!
T)ほら。
♡)サンドイッチみたい!
T)面白いしょ?
  美味いから食おうよw
♡)うん!


は…っ
すっかりTくんのペースだ。


T)お前…仕事に熱中すんのはいいけどさ、
  食うもんはちゃんと食えよ。
♡)…食べてるもん。
T)朝飯は?
♡)食べたよ。
T)昼もちゃんと食え。
♡)食べてるもん…今…
T)俺が来なかったら
  寝てごましてたくせに。
♡)……
T)外に出たくない気分なら
  それでもいいけど
  ちゃんと何か食え。
♡)…ごめんなさい…
T)ん。わかればよし。
♡)……
T)……
♡)Tくん…お母さんみたい…
T)はぁ?!
♡)……
T)誰がお母さんじゃ!!
♡)あはははっw


Tくんはまた他愛もない話をしてくれて

お昼休みが終わると
そのまま自分の席へ戻っていった。


M)先輩がTさんとランチしてた。
♡)えっ
M)私とは行ってくれないのに…
  Tさんのばかーーっ!!
♡)……
K)あいつが勝手に
  買ってきてるんでしょ。
M)ぶーーー!!
海)……
♡)……


Kちゃんは…
同期旅行の時も
それからもずっと
臣くんのことは聞いてこない。

今は話したくない。
そんな気持ちをわかってくれてるんだと思う。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「臣くん起きて〜〜♡」


ん……


「朝ごはんできたよっ♡」


♡の声…?


「ほら、早く起きて〜〜♡」


……



臣)……



目を開けても♡の姿はない。

いつも大体♡が起こしてくれて
目を開けたら
当たり前のように♡の笑顔があって…


そんな日常が…
すごく遠く感じる。



臣)起きるか……



無理矢理身体を起こして

顔を洗って

コンビニで買った飯を
適当に食って


隆)おはよーーー
N)ういーーーっす。
直)おはようございまーーす。


今日もまた、一日が始まる。


ス)ここ、1番終わったら間奏入れますか?
臣)……
ス)登坂さん?
臣)あ、はい!すいません。
ス)歌いながら階段降りるより
  間奏で降りて、
  この真ん中で2番に入る方がいいかと。
  どうですか?
臣)あ…ええと…はい。


ダメだ、集中しろ、俺。


臣)そうしてください。
ス)登坂さんは休みなしで
  そのままソロですからね〜〜
  ここで少しでも休んでください。
臣)はい、ありがとうございますw


E)臣〜〜〜
  PLAY THATの後半さ、
  ここで、三人でこんな感じでどう?
臣)ああ、いんじゃない?
E)クラブ感出るよね!
臣)うん。
E)っしゃ〜〜〜♪
臣)……


週末は秋田でリハ。
その前に♡に会いたい。

こんな状態のまま秋田に行くのは嫌だ。



『♡、何度もごめん。
 まだ俺と話したくない?』

『俺はちゃんと話したい。
 家に帰ってきてくれない?』


朝から何度か送ってるLINEは
全部既読にはなるけど、返事は来ない。



『会いに行っていい?』


昼に送ったLINEも返事が来ないまま

俺は今、
♡の会社の前にいる。


S)♡ちゃん、出てくるかなぁ…
臣)…付き合わせてごめんね、Sさん。


午後の写真集の撮影が終わって
そのまま家に帰らず
♡の会社に寄ってもらった。


S)いや、全然いいんだけどさ。
  もう暗いから
  見失わないようにしないとねー。


Sさんはそう言って
♡の会社のビルの入り口を
一生懸命見つめてる。


臣)……ありがとう。


時間は20時。

さっきKに聞いたら
♡はまだ帰ってはいない。

もう一度LINEを送る。


『会社の前で待ってるから
 仕事終わったら少しでいいから
 会いたい。』


本当は…そのまま連れて帰りたい。
ちゃんとゆっくり…家で話したい。

♡は…降りてきてくれるだろうか。


臣)あ……


既読になったけど…
まぁ返事は来ないだろうな。


S)あ!あれじゃない?
臣)えっ?
S)♡ちゃん!!
臣)…っ


慌てて窓の外に目をやる。


S)あ、全然違った。ごめん。
  ♡ちゃん、あんなデブじゃないもんね。
  ごめん。
臣)……
S)怒ってる…?殴る…?
臣)殴んないよ!!w
S)あんなデブと間違えたから…
臣)まぁどう見ても♡じゃないけど!
S)だよねー
  髪型が似てたからさ。
臣)似てるかな…


それからまた入り口を見てると
Mちゃんと…
名前…なんだっけ…
新人って言ってた女の子が
二人で出てきた。


臣)……


♡は…まだ仕事してんのかな…


臣)ちょっと電話してみる。
S)うん。


プルルルル…プルルルル…


頼む、出ろ。


プルルルル…プルルルル…


臣)……


ダメか……



コンコン。


臣)えっ…


ドアをノックされて
外に目をやると

ドアを叩いたのは…


T)ちょっと話したいんだけど。
臣)…っ


Tだった。


臣)……


話したいって…何を……


T)車見てすぐわかった。
臣)……


俺が車を降りようとすると
Sさんがそれを止めた。


S)人多いし目立つとアレだから
  君が車に乗ってくれる?
T)…はい。


Sさんに促されて
Tがワゴンに乗ってきた。


T)……
臣)……
T)何しに来たんだよ。
臣)……


そんなの…


臣)お前に関係ねぇだろ。
T)関係あんだよ。
臣)ねぇよ!
T)あんだよ!!
臣)…っ


Tが俺を睨んだ。


T)もう…そっとしといてやれよ。
臣)…なん…だよ、それ…
T)連絡してきたり
  こうやって会いに来んなって
  言ってんだよ。
臣)なんでお前にんなこと
  言われなきゃなんねぇんだよ!


俺のものみたいな口をきくTに
腹が立って

つい声が大きくなる。


T)どんだけあいつのこと
  泣かせたら気が済むんだよ!!
臣)…っ
T)折角笑ってても…
  お前のことになると…
  笑顔が消えんだよ……
臣)……
T)あいつの笑顔が消えんだよ!
臣)…っ
T)あんな顔させたくない!!
  あいつが泣いてるところなんか
  もう見たくねんだよ!!


そんなの…
俺だって…


臣)……
T)……
臣)好きで…泣かせてるわけじゃねぇよ…
T)……
臣)……
T)でも泣かせてんのはお前だ。
臣)……
T)……
臣)……


何も…言い返せなかった。

泣かせてるのは俺。

それは…事実で…


T)今は…お前のこと、忘れられなくても…
  時間が経てばちゃんと笑える。
臣)……は?
T)笑えるまで…俺が側にいる。
臣)ちょ、待てよ…
  お前…何言ってんの?
T)俺があいつの側にいるって
  言ってんだよ。
臣)……


なんだよそれ…
ふざけんな。


T)今はあいつ…
  すげぇ無理して仕事わざと詰め込んだり
  笑ってても全然カラ元気で…
臣)……


♡の近況を…
なんで俺…こいつの口から聞いてんだろ…


T)みんなの前では強がるくせに
  一人になると泣いてるし…
臣)……


本当なら…
俺が一番近くにいて…あいつのこと…


T)見ててなんか痛々しい。
臣)…っ
T)でも…
臣)……
T)無理してでも笑ってくれる。
臣)……
T)その笑顔が…
  ちゃんと本物に戻るまで…
  あいつがちゃんと笑えるまで
  俺が側にいる。
臣)ふざけんな……
T)……
臣)あいつの側にいんのは…
T)お前じゃない。
臣)…っ
T)俺はあいつを泣かせたりなんかしない。
  死んでもしない。
臣)…っ


そう言って真っ直ぐに俺を見据えると
Tはワゴンを降りた。


T)言いたいことはそれだけ。
臣)……
T)ほんともう…会いに来ないで。
臣)……
T)じゃ。
臣)……


俺は…
何も言い返せなかった。


そのまま窓を閉めて…

背もたれに頭を預けた。


臣)……


「お前のことになると…
 笑顔が消えんだよ……」


俺の…せいで…

♡は笑えなくて

俺のせいで…

♡は泣いてるんだ。


一人で…泣いてる…


抱きしめてやりたいのに
側にいてやりたいのに

♡はそれを望んでなくて

泣かせてるのは俺で…


もう…
どうしたらいいのかわかんねぇ…


S)♡ちゃん…出てこないね…
臣)……


まだ…見ててくれたんだ。


臣)もう…いいよ…
S)え…っ
臣)車…、出して……
S)待たないの?
臣)……
S)さっきの男に取られるよ。
臣)……
S)ちゃんと…話しなよ…
臣)……


携帯に目をやると
やっと♡から返事が来てて…


『待たないで。
 会いたくない。』


臣)……


一緒にいたくない。
会いたくない。

繰り返される、拒絶の言葉。


臣)Sさん、車出して……
S)……わかった。



ーendー

コメントを残す

スポンサーリンク
スポンサーリンク