定時で上がろうと思ってたら
追加の仕事が1つ降ってきて
多田さんと猛スピードで終わらせて
19時過ぎに会社を出た。
居酒屋えぐざいるは
並ぶのが当たり前みたいで…
平日なのにすごい人。
臣『中入った?』
◇『今まだ並んでます💨』
そんなやりとりをこっそりしながら…
多)実はね…、、
並んでる間に待ちきれなくなった多田さんが
今日のため息のワケを話してくれた。
娘さんが今付き合ってるっていう交際相手が
自分と同い年でバツイチ子持ちだって。
それを昨日いきなり打ち明けられて
結婚に反対したら大泣きされたらしい。
多)バツイチ子持ちのおじさんのくせに
20代の若い娘に手を出すなんて
信じられないわ!
◇)……
多田さんはご立腹。
多)別に岩ちゃんみたいなイケメン
連れてこいとは言わないけど…
わざわざ苦労する相手
選ぶことないじゃないって…
母親としては思っちゃうのよね…
◇)……
苦労する…相手…、か。
◇)相手の男性には会ったんですか?
多)会ってないわよ!
私に挨拶したいって言ってるらしいけど…
冗談じゃないわっ。
◇)……もしもすごく良い人だったら…?
多)でも私と同い年よ?!
そんな歳の離れた相手に
大事な娘を嫁に出すなんて…っ
◇)……
でも反対されて大泣きするってことは
よっぽど好きなんだろうなぁ…
多)もういいのっ!
今日は一旦忘れて呑んだくれるわっ!
◇)はははw
30分待って中に案内されると
あたし達のテーブルはまさかの
ステージど真ん前で。
多)すごい!すごいわっ!!
でも…こういう良席の日に限って
別に誰も来ないのよねぇ……
いいえ、臣さんが来ます、とは言えずに
あたしはメニューを開いた。
ぼったくりメニューをいくつかオーダーして。
平日だっていうのに大賑わいな
周りを見渡した。
女)あ、岩ちゃんモバ更新してる!
今日から長野だって!
女)うっそ!じゃあ絶対来ないじゃん!
女)え〜〜〜っ
剛典ファンなのかな?
女)臣くん今年まだ来てないよねー
今日来ないかなーー
女)もういいよ臣くんなんか。
女)え、なんで!
女)どうせあのおっぱい女と
デートしてんだよ。
女)はぁ…ほんとに付き合ってんのかなー
女)だってマンションに通ってるんだよ!
女)やだーー信じたくないーーー
こっちは臣さんファンか…。
そしてあの炎上ネタをあっさり信じてる。
臣さんの彼女はあんなおっぱい女じゃなくて
可愛い可愛い♡ちゃんだよって
教えてあげたいけど…
それはそれで♡ちゃんが叩かれるんだろうな。
女)もういいの!
あたしは隆二に乗り換えた!
臣くんなんかどうでもいい。
女)あんな写真出ちゃうとねーー
引くよねーー
女)隆二来ないかな〜〜♡
女)誰でもいいから来て欲しい〜〜
やっぱりここに来るファンは
メンバーに会えることを期待してるのか。
多)じゃあカンパーイ♡
◇)乾杯!♪
剛典のエビフライを食べながら
グビグビと勢いよく飲み干す多田さん。
ピロピロ♪ピロピロ♪
◇)あ。
『最前列ゲット!!✌✨』
って臣さんに送ったら
『最高👍笑笑』
って返事が来た。
それからしばらくすると
会場のパラソルが次々に畳まれて…
多)誰か来るわ!!!///
多田さん含め、周りのファンもみんな
ざわつき始めた。
なんかあたしまでドキドキドキ…
流れてたMVが消えると…
『こんばんはー』
臣さんの声が聞こえて
みんながキョロキョロしてたら
茶色いハットを被った臣さんが
ステージに現れた。
客)キャアアアアアアアア!!!
一気に大歓声に包まれる会場。
多)お、お、臣様っっ!!///
多田さんは口が開きっぱなし。
臣『お食事中にすみませんw
皆さん楽しんでますか〜?』
客)きゃあああ!!♡♡
臣さんは最前列に座ってるあたし達に気付いて
一瞬ニヤっと笑った。
多)ちょ、ちょ、◇ちゃん!///
今、臣様こっち見て笑ったわよ!
◇ちゃんに気付いたんじゃない!?///
◇)ええと…w
臣『さっき撮影終わって
友達と近くでご飯食べてたんで
ふらっと来てみましたw
皆さんグラスありますか?
良かったら乾杯したいなーとw』
そんな臣さんの言葉に
みんなグラスを持ちながら
目はギンギンに臣さんをガン見してる。
多)臣様と乾杯しちゃった…///
臣様がレモンサワー飲んでる…///
多田さんはすっかり夢見心地で…
臣『来週の西武ドーム来てくれる人って
いますかー?』
っていう臣さんの質問に
めちゃめちゃ前のめりで挙手した。
臣『大阪のa-nation来てくれる人はー?』
多)くぅぅぅ!
それはチケット取れなかったのよぅっ!!
今度は悔しそうにテーブルを叩く多田さん。
見てるだけで面白い。
臣『一人だと喋ることないので
そろそろ帰りますw』
客)えええええええ!!!
まだ5分くらいしか経ってないけど…
お客さんの悲鳴を無視して
レモンサワーを飲み干した臣さんは
こっちを見てニコッと笑って
ほんとにそのまま帰って行った。
女)ヤバイ!!!まじヤバイ!!///
女)どうしよう!鼻血吹きそう!!
本物だったよね?!///
女)本物だよ!!ヤバイよ!!///
臣さんが帰ってからも
みんな大騒ぎで…
女)やっぱり臣くんが一番好き!
どうしよう!///
女)あんた隆二にするって言ったじゃん!
女)だって近くで見たら
あんなにカッコイイんだもん!///
女)ほんとヤバイ!何あのオーラ!
女)もうあの写真とかどうでもいい!
完全にカマされた///
女)臣ぃぃぃぃぃ!!///
◇)……
すっかりファンの心も取り戻したみたい。
さすが臣さん。
女)はぁ…あの声ほんと好き…♡
女)あの笑顔と声だけでもう妊娠したわ。
女)あはははっw
女)はぁ…お持ち帰りされたい…♡
女)わかるーーー
ほんと一回だけでいいから。
女)臣くん〜〜〜〜///
こっちの女の子たちもメロメロだ。
「一回だけでいいから」かぁ…。
こういう子がたくさんいるんだろうなぁ…
でも臣さんってば
あんな爽やかな笑顔しといて
実は彼女の下着を破くんだよ、なんて言ったら
みんなびっくりするだろな。
いや、喜んじゃうのかな。
臣さんのファンってなんか
ドMが多そうだもんね…。
多)はぁぁぁ……///
あたしが周りのファンの声に
こっそり耳を寄せてると
多田さんが深〜〜い息を吐いた。
多)岩ちゃん…ごめんなさい…
今日ばかりは臣様にハートを
持っていかれたわ…///
ポーッとしながら一人言みたいに呟いてる。
多)まさか…こんな最前で…
こんな目の前で…
臣様を拝めるなんて…///
◇)……
多)ほんっっっとに…綺麗な顔…///
◇)……
多田さん、たぶん今
あたしの存在、忘れてるよね…?w
多)はぁ……///
魂吸い取られたわ…///
◇)えっ!!
ゴツン。
テーブルに突っ伏して
多田さんが動かなくなった。
元気になるんじゃなかったの?!
魂吸い取られちゃダメでしょ!
臣さん!返して!!
多)…◇ちゃんは…
あの顔を近くで見て…
会話もしたんだもんね…
◇)ええと…ハイ…。
多)そうよね…
姫ちゃんの…彼氏…なんだもの…
◇)そう…ですね…
多)なんっってお似合いなのかしら…
◇)ですよね…
多)はぁぁぁ…///
多田さんはゆっくりむくっと起き上がると
今度はあたしの顔をじーっと見て…
多)◇ちゃんが会ったことあるのは
臣様だけなの?
少し真剣に、そう聞いてきた。
◇)…っ
それはつまり…
きっと遠回しに…
「岩ちゃん」には会ったことないの?
って聞いてるんだよ…ね?
◇)…え…っと……
嘘はつきたくないけど…
今言うのも…どうなんだろ…
えっと…
えっと…
多)はぁっ、もうっ、来週が楽しみ!!!
どうしようっっ!///
あたしが答える前に、
またテンションが上がった多田さん。
多)西武ドーム…
三日間全部行けるなんて
◇ちゃんのおかげだものね。
◇)…っ
多)チケット用意してくれた
◇ちゃんの彼氏にも
ぜひご挨拶させてねっ!
◇)……はいっ!!
そうだ。
紹介させてくださいって言ったのは
あたしだもん。
ううう…緊張する。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
リハを終えて
ホテルのベッドにダイブして…
岩)はぁぁぁ……
このまま寝ちゃいそう。
って思ったけど、
◇の声が聞きたくて携帯を探した。
岩)あれ、どこやったっけ。
……あ、あったあった。
画面を開くと、
『リハ頑張ってる?😊
今日ね、多田さんと二人で
居酒屋えぐざいる行ってきたよー
剛典のサインあったよ笑
臣さん来てくれたよ🎵』
◇からLINEが届いてて、
俺はすぐに電話をかけた。
◇『もしもし!』
岩『お疲れ。』
◇『リハ終わったの?』
岩『うん、今帰ってきた。』
◇『お疲れ様ーー♡』
岩『ありがとw』
元気そうな声。
結構飲んだのかな?
岩『居酒屋行ってきたんだ?』
◇『うん!!』
岩『臣さん来たって?』
◇『そう!なんか今日暇だったらしくて。
来てくれたの。』
岩『多田さん喜んでた?』
◇『うん!剛典に謝ってたよ!』
岩『へ?なんで?』
◇『臣様にときめいちゃってごめんって。』
岩『ぶはっww』
面白いな、多田さん。
◇『多田さんもだけど、ファンの人たちみんな
目がハートになってた!
臣さんスーパースターって感じで
すごかったよ!』
岩『ふーーんw』
まぁあそこファンだらけだしね。
◇『来週の西武ドーム
楽しみって話してたの。』
岩『今度はちゃんと来てくれる?』
◇『うん…ごめんね…?
今度は行きたい。』
岩『ありがとw』
埼玉の時はあんな状態だったし…
今度はちゃんといいとこ見せたい。
◇には結局まだ一回しか
観てもらえてないし。
岩『多田さんのことも
ちゃんとバクステに連れてきてねw』
◇『う、うん…っ』
◇がお世話になってますーって
ちゃんとご挨拶しなきゃ。
◇『♡ちゃんも三日間全部行くのかなぁ?』
岩『ああ、どうだろ。
何も聞いてないけどそうじゃない?』
◇『そっか。
あ、今日ね、やっと♡ちゃんと
ランチ行けたんだー♪』
岩『お、何話したの?』
◇『んー、色々。』
岩『楽しかった?』
◇『うんっ♡
新しいお家、いつでも遊びに来てって
言ってたよーー』
岩『ああ、そうだ、忘れてた。
落ち着いたら行こうな。』
◇『うんっ♡
引っ越し祝い何がいいかなぁ?』
岩『うーーん……』
なんだろ。
岩『エッチな下着でいいんじゃないw』
◇『また?!ww』
岩『だって昨日破いたらしいしw』
◇『あっ、…え、剛典も聞いたの?///』
岩『お前も聞いたの?w』
◇『うん…///』
ふーん、女子もそういう話するんだw
◇『びっくりしちゃった///』
岩『NAOTOさん怒ってたよw
高かったのにー!って。』
◇『どんな下着だったんだろ…』
岩『なんか繊細なレースがどーのとか
言ってたけどw』
◇『そっか、だから破けやすかったのかな///』
岩『さぁw』
◇『歯で千切れるくらいだもんね///』
岩『は?!!』
◇『え?』
岩『え?』
◇『歯で引き千切ったんでしょ?臣さん///』
岩『…っ』
そんなの聞いてねぇ〜〜〜!!!
歯で…って…
どんだけワイルドなんだよ!!
「でもなんか…、破けました。」
あんな…
わざとじゃないみたいに
しれ〜っと言ってたけど
めちゃめちゃわざとじゃん!!
岩『♡ちゃん、なんて言ってたの?』
◇『えっ…』
岩『臣くんドン引き〜〜って?w』
◇『ううん。
臣くんならなんでも好きって
照れながら言ってた///』
岩『ぶっww』
もう付き合ってられんわ!!w
岩『もういいよ、あの二人の話はw』
◇『そうだね///』
岩『あ〜〜〜〜っ
俺も早くHしたい!!』
◇『……また言ってる///』
岩『だってほんとにしたいんだもん。』
◇『あ、てゆーかね、
今日やっと生理きたの。
だから帰ってきてもすぐは出来ないよー』
岩『ん?やっとって?遅れてたの?』
◇『あ、うん、そう。
でも今日来たーー』
岩『お前って結構ズレるタイプ?』
◇『ううん。
いつもは決まった日に来るんだけど…』
岩『……』
もしかして…
俺とゴタゴタしてたから
そのストレスで遅れてたとか…?
岩『ごめん…。』
◇『え、何が?』
岩『いや…、』
……なんか…反省。
岩『じゃあ…終わったら…しましょう。』
◇『そうしましょう…。』
岩『……』
◇『って、何この会話!なんか変!///』
岩『別に変じゃないじゃん!w』
◇『何の約束だよ…///』
岩『Hの約束!大事な約束!』
◇『……バカ///』
あ、絶対今、顔赤くして口尖らせてる。
わかるもんね。
岩『俺のこと、Hしたいだけの
ただのバカだとか思ってない…?』
◇『…それは…思ってない…けど…///』
なら良かった。
岩『なんか…
俺ばっかりしたがってるから…』
◇『……』
岩『しつこいかなって。』
◇『……』
でもしつこくなるくらい
したくて仕方ねんだもん。
◇『そんな風に…思ってないよ…?』
岩『…ほんと?』
◇『うん…。』
あれ、◇の声が優しくなった。
◇『あの…ね、ほんとは…ね///』
岩『ん…?』
◇『…あたし…も…したい…もん///』
岩『……は??』
◇『剛典と…H…、したい///』
岩『…っ////』
いきなり何言い出すんだよ!??
◇『昨日もほんとはね…?
すごくしたかったの…///』
岩『////』
ちょ、ちょ、ちょっと待った!!!
いきなりそんな可愛い声で
可愛いカミングアウトされても
困るから!///
岩『お前…俺をどうしたいの…?///』
いきなりデレになって
そんなこと言ってきて…
俺に鼻血でも吹かせたいのかよ!
◇『だって…
ほんとの…ことだもん…///』
岩『////』
ぬあああああっっっ!!
可愛いっ!!
なんなんだよッ!!!
もうっ!!!///
岩『その言葉、忘れんなよ!///』
◇『……うん///』
……だから…
素直に返事すんのやめて…///
岩『あーー、もう……
おかしくなりそう…///』
◇『……///』
今目の前にいたら、
間違いなく俺、爆発してる。
会えない時に…
抱きしめられない時に…
こんな破壊力抜群の爆弾落としてくる
俺の彼女。
ほんと誰か…どうにかして///
ーendー
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