む)どうしてもっと早く言わなかったの!
ばかっっ!!
♧)…っ
むーこは泣きながら私を抱きしめた。
む)ばか…っ!
…ほんとに…ばか…っ……
♧)…っ
むーこのあったかいぬくもりに
思わず涙があふれた。
ごめんね…
心配かけてごめんね…
む)もう大丈夫だから。
大丈夫だからね!
♧)…っ
む)あたしがいるから…!
♧)…っ
む)隆二くんと健ちゃんもいるから!
♧)…っ
むーこは何度も私の背中をさすってくれて
何度もそう言ってくれた。
♧)隆二く…ん……
…大丈夫…かな…っ
健ちゃんとアパートに戻ったけど…
犯人に何かされてたら…どうしよう…
♧)隆二くんに…何かあったら…私…っ
む)大丈夫っ!!
♧)…っ
む)あんな鍛えてる男二人が向かって
負けるはずないでしょっ!
信じなさいっ!
♧)…っ
本当に…?
♧)ふ…ぇ…っ
お願いだから…
お願いだから、無事に帰ってきて……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
健)ただいまーーー!
健ちゃんが大きな声で家に入ると
すぐさまリビングのドアが開いた。
♧)…っ
♧は俺の顔を見るなり
すぐに走ってきて…
♧)隆二くん…っ!!!
俺に抱きつくと、
泣きながらその小さな肩を震わせた。
隆)…っ
ぎゅっと…抱きしめて。
もう大丈夫だよ、って…抱きしめて。
きっと…
心配してたんだよな。
隆)側にいてあげられなくてごめんね?
♧)……(ふるふるっ)
隆)もう大丈夫だから…。
♧)…っ
隆)俺がいるから。
♧)…っ
そう言っても俺にしがみついて離れない♧に
健ちゃんが笑いながら言った。
健)健ちゃんも頑張ったんやで〜〜w
ハグしてくれてもええんやで♡
♧)…っ
その声に、♧はゆっくり振り返って…
涙でぐしゃぐしゃになった顔で
健ちゃんを見て、困ってる。
隆)いや、迷うとこじゃないから!
ハグしなくていいから!w
♧)え…っ
健)あははははw
健ちゃんは大口を開けて笑いながら、
健)ほら、行くで。
そう言って俺たちを
リビングに連れていった。
む)おかえりー。
健)むーちゃーーん!
代わりにハグしてーー!
む)あはははw
はいはい、お疲れさまw
むーちゃんは健ちゃんの背中を
ぽんぽんと叩いて、
む)隆二くんもおかえり。
そう言って優しく笑ってくれた。
それから4人で一旦座って、
今回のことを共有して。
健ちゃんが犯人に書かせた誓約書を
ちゃんと読ませてもらうと、
今回したことを全部認めさせた上に
今後一切♧に近付かないこと、
俺たちのことを口外しないこと、
その他もろもろ全部ちゃんと文章になってて…
言葉を選びながら
♧にも優しく説明してくれた。
健)あいつも家族がおって、仕事もしてて…
社会的立場もあるやろうから
もう大丈夫やと思うで、ほんまに。
♧)……(こくん)
健)まぁ、単身赴任で寂しいところに
むっちゃ可愛え♧ちゃんに会って
一目惚れしてもうたんやな!w
む)ほんとそんなど変態、
あたしだったら頭突き食らわして
急所蹴り飛ばして、
再起不能にしてやったのに!!
健)ぶはははっ!たくましいな!w
隆)……
姉御……
ほんとにやりそう……
む)今度から何かあったら
すぐにあたし達に言うこと!!
♧)…っ
む)あんたに何かあってからじゃ遅いんだよ!
隆)…っ
その言葉に、ゾッとした。
今回は無事だったけど…
ほんとにもし♧が何かされてたら、
俺、正気じゃいられなかったかも。
健)そんなん隆二が相手殺してまうわw
うん。
む)だからちゃんと周りに頼ること!!
♧)…っ
む)一人じゃないんだからね?
♧)……(こくんっ)
♧は泣きながら頷いて…
俺はそんな♧を、腕の中に抱き寄せた。
健)隆二ほんまに怖かったんやで〜?w
む)そうなの?
健)あんなにブチギレてるとこ
初めて見たんちゃうか。
む)えーーー!
健)元ヤン降臨しとったでw
隆)いや、だから…
余計なこと言わないで…w
健)♧ちゃんも気ぃつけや〜?
隆二怒らしたらあかんで〜〜w
♧)……
健ちゃんの言葉に、
泣き顔のまま俺を見上げる♧。
♧)……
隆)……
俺が♧に怒るわけないじゃん。
頬の涙を拭いてやって、
♧の顔を両手で包んだ。
隆)へへ…っ
……ぎゅっ。
もう一度腕の中に閉じ込める。
む)こんなにゃんちゅうが
ほんとに怖いの…?
健)ぶはははw
む)ほんと…隆二くんがいたら安心だなっ
健)うん。
む)じゃああたし達は
そろそろ帰りますかーー
健)せやな。送ってくで、むーちゃん。
む)さんきゅーーー
そう言って立ち上がった二人。
健ちゃんは
こんなもんここにあったら
気持ち悪いやろ、って。
俺の家の押し入れにでもぶちこんどくわ
って言って、証拠を全部持って帰ってくれた。
むーちゃんは
♧のありがとうの言葉に
最後にもう一度♧をぎゅっと抱きしめて
帰っていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
健ちゃんとむーこを見送って…
私はどうしたらいいんだろうって
立ち尽くしてると、
ぎゅっと手を繋がれて
またリビングに連れていかれた。
隆)お腹空かない?
♧)え…っ
そっか…
もうこんな時間だ…。
でも…
♧)あんまり…空いてない…。
今日は久しぶりに
お昼にちゃんと食べたし…
隆)じゃあお風呂入って
今日はもう休もっか!
♧)えっと…
隆)ん…?
私…ここにいて…いいの…?
隆)今日は疲れたでしょ?
明日から休みだし、
今日はゆっくり寝な?
そう言って、私の頭を
優しくぽんぽんしてくれる。
隆)俺もさ、今週そんな忙しくないんだ。
明日も午後から一個、
仕事あるだけで。
♧)……
隆)だから、明日は朝から引っ越しだよ!
♧)え???
引っ越し??
隆)まだ残ってる荷物、
午前中に運んじゃお!
♧)…っ
運ぶって…どこに…
隆)友達がさ、軽トラ出してくれるから
そこにパパーッと積んで。
あの量なら1回で全部運べるし。
えっと…えっと…
ガチャッ。
隆)うーん。
ここの部屋、俺の荷物あるけど…
あとでよけるね!
♧)え…?
隆)ここ使って!
♧)…っ
使ってって…
隆)それから…
♧)ま、待って…っ
隆)ん???
♧)…あ…の……
私…、ここに…引っ越すの…?
♧)えっと…、
隆二くんのおうちに…
住む…って…こと…?
隆)……えっ!!
♧)…っ、あ、違うよね?!
ごめん、えっと…
隆)やなの?!!
♧)え…っ
えっと…
隆)ちゃんと綺麗にするよ?!
♧)…っ
そうじゃ…なくて…
隆)お風呂もトイレもあるよ!
♧)…っ
隆)こっち!!
そうじゃ…なくて…
隆)ここがトイレね!
♧)…っ
隆)ここがお風呂!
手を引かれて、家の中を案内された。
隆)嫌かもしんないけど、
落ち着くまではここにいて!!
♧)…っ
そう言って、
またぎゅっと抱きしめられた。
隆)心配だから。側にいて。
♧)…っ
嫌なわけ、ない。
側にいたい。
隆二くんの側にいたい。
隆)あんな家に絶対帰さないよ。
♧)…っ
私ももう、帰りたくない。
隆)ここにいて。お願い。
♧)…っ
その言葉に、また涙がこみ上げてきた。
迷惑じゃ…ないの…?
側にいてもいいの…?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
隆)とりあえず…お風呂…っ!
洗ってくるから!!
休んでて!!
俺は慌てて風呂場に走った。
急いで浴槽を洗って、お湯を溜めて。
少しでも♧の疲れが取れますように!
入浴剤…
あ、これ前にもらったやつ!
なんか女子っぽいの!
隆)えいっ!!
ポチャン…っ
ふんわり優しい香りが立ち込める
バスルームの扉を、パタンと閉めた。
隆)……
「隆二くんのおうちに…
住む…って…こと…?」
さっきそう言われて、ハッとした。
もう俺としては
一緒に暮らす気満々だったんだけど、
俺、一人で暴走してたのかなって…。
♧は嫌なのかなって…。
ほんとは…
好きだから一緒にいたいって
一緒に暮らそうって
そう言いたいけど…
こんな時にそんな告白してる感じでも
ない気がして…
でも…!!
今は譲れない…!!
絶対帰さないもん!!
俺が側にいるもん!!
♧が元気になるまで、俺が一緒にいる!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
隆二くんが入れてくれたお風呂は
優しい香りがして…
全身の疲れが一気に癒されるようだった。
♧)……は…ぁ……。
この一週間はずっと…
シャワーに入ってる間も怖かった。
今頃また手紙が入れられてるんだろうかって
ビクビクして…
「あたしだったら頭突き食らわして
急所蹴り飛ばして、
再起不能にしてやったのに!!」
♧)……
むーこだったら…
私みたいに泣いたりせずに
隆二くんや健ちゃんに迷惑かけたりせずに
一人で犯人をやっつけられたのかな…。
むーこみたいに…強かったら…。
♧)…っ
私は…何もできなくて…
怖くて、一人で泣いて、それだけで…
こんな弱い自分が、嫌になる。
どうして私…
こんなにへなちょこなんだろう…。
情けないよ…。
「俺だって同じように
♧のことが心配なんだよ…?
……わかってよ……。」
隆二くんに…あんな顔…させて…
胸が苦しくなった。
「落ち着くまではここにいて!!」
「心配だから。側にいて。
ここにいて。お願い。」
そう言ってくれたのは、隆二くんの優しさ。
でも、甘えてばかりじゃダメだ。
私…もっと強くならないと…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
♧が使えるように
物置になってた部屋を片付けて。
♧は荷物が少ないから
これで大丈夫だと思う。
隆)ふぅ…。
布団は持ってきてないから
今日はベッドで寝てもらおう。
てゆーか…
もうあの布団、捨てちゃえばいいのに。
ベッドあるんだから
もういらないじゃん?
♧)隆二くん!
隆)わっ!!
いきなり後ろから声をかけられて
びっくりした。
隆)お、おかえり。
♧)お風呂…ありがとう。
隆)うん!
♧)気持ち良かった…。
隆)良かったw
お風呂上がりで
赤みがかってる♧のほっぺに
少しほっとする。
ずっと青白い顔をしていたから。
隆)あ、あのさ!
荷物片付けたから!ここ使ってね!
♧)あ…っ
……ごめんね、迷惑かけて…
隆)なんで!気にしないで!!
迷惑なわけないじゃん!
何言ってんの!!
♧)あの……
隆)……
♧はためらいがちに、口を開いた。
♧)私…すぐには難しいかもしれないけど
ちゃんとお家探すから…っ
隆)えっ……
ガーーーン……
隆)…探さなくても…いいじゃん…
♧)隆二くんに迷惑かけたくないから…っ
隆)…っ
迷惑じゃないのに…
側にいてって…言ってるのに…
♧)だから、時間ができたら
探しに行くから、だから…っ
隆)じゃあ俺が探す!!
♧)えっ……
思わず口をついて、出た言葉。
隆)俺の知り合いに頼んで探してもらうよ!
その方が安くしてもらえるし
いい部屋も見つかるし!ねっ!!
♧)でも……
隆)いいじゃん!そうしよう!
明日言っとくから!!
♧)……わかった、ありがとう。
焦った俺は、意味わかんない嘘をついて。
一緒に暮らそう。
好きだから側にいて。
この時にそう言えてたら
ややこしいことにはならなかったのにって
後から後悔するなんて、気付かなかった。
♧)じゃあそれまで…
ここでお世話になってもいいですか…?
隆)うんっ!!!
やっとそう言ってくれた♧が嬉しくて
俺は元気良く返事をした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
隆二くんが片付けてくれた部屋に
小さく自分の荷物を置いた。
広いなぁ…。
ここだけで、私のアパートくらいある…。
♧)……
正直、あんなに家賃の安いおうちが
また見つかるのか不安だけど…
隆二くんが探してくれるって言うから
そこは甘えさせてもらうことにした。
私は不動産の知り合いなんていないし…。
早く見つかるといいな。
隆)そろそろ寝る…?
♧)あ…っ
お風呂上がりの隆二くんが戻ってきて…
隆)久々にお風呂入ったから
気持ち良かったーー♡
そう言って、
前髪をふわふわさせながら笑ってる。
♧)……
可愛いな…。
隆二くんが笑ってくれるだけで
なんか癒される…。
隆)やっぱりシャワーより
ちゃんとお風呂入った方がいいよね。
明日からそうしよっか♡
♧)……
まだ実感が湧かない、
隆二くんとの共同生活。
でも…
そんな風に楽しそうに笑ってくれたら
どこかほっとする。
隆)よし、じゃあ今日は
明日の引越しに備えて
ゆっくり寝るよーーー。
そう言って、手を繋がれた。
♧)え…っ
連れていかれたのは、寝室。
♧)…っ
大きなベッド。すごい…。
ふかふか気持ち良さそうなそのベッドに
私が見とれてると…
隆)一緒に寝ても…いい?
そう言われた。
♧)……
一緒…に……?
♧)え?!!
思わず驚いて、隣を見上げると、
隆)あ、ちがっ、変な意味じゃなくて!///
変なこともしないから!絶対!!
♧)…っ
そんな誤解は…してないけど…
隆)嫌なら俺…ソファーで寝るけど…
♧)私がソファーでいいよっ!
隆)いや、それはダメ!!!
ちゃんとゆっくり休まなきゃダメ!!!
♧)…っ
隆)だから、俺と寝るの嫌だったら
一人でここで寝て?
♧)…っ
そんなの…ずるい……
嫌じゃないもん…。
嫌なわけないもん…。
♧)……
「一人でここで寝て?」って言われて…
少し寂しかった。
隆)じゃあゆっくり休むんだよ?
優しい声で、そう言われて。
私の頭をぽんぽんして
いなくなろうとした隆二くん。
♧)…っ
私は思わず後ろから
隆二くんのTシャツを掴んだ。
隆)え?
♧)…っ
行かない…で…っ
隆)……ど…したの…?
♧)…っ
一人に…しないで……
♧)…そばに…いて……。
隆)…っ
こんな弱虫な自分、嫌だけど…
せめて今日だけは離れたくなくて…
小さくこぼれた本音。
隆二くんはすぐに私を
ぎゅっと抱きしめてくれた。
隆)一緒に寝ていいの…?
♧)……(こくん)
隆)……///
この腕の中に、ずっといたい。
隆)ベッド入ったら…
絶対なんもしないから…
今だけこうさせて……///
そう言って隆二くんは
隙間がないくらいにぎゅぅっと
私の身体を抱きしめてくれた。
とくん…
とくん…
…心も…身体も…ほぐれていくみたい…。
すごく…安心するの…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
一応ダブルベッドだから
二人で寝ても、身体が密着するわけじゃない。
まぁ少し動けばくっつくんだけど…
♧)こんなふかふかなベッド…初めて…
♧がこっちを向いて
可愛くそう言った。
隆)……
顔…近いなぁ……///
♧)いつもお布団だから…
なんか不思議……
そう言って喜んでくれてるのが
嬉しくて。
♧)…隆二くん……
隆)ん……?
またこっちを向いた♧の瞳が
じっと俺を見つめる。
♧)も一つだけ…
ワガママ…言っても…いい…?
隆)え…?
も一つだけって…
なんか俺、ワガママ言われたっけ?!
てゆーかそんなん、
聞かなくてもいいよ!
なんでも言ってよ!!
隆)どうした…?
そう言って笑いかけると、
♧)……手…、繋ぎたい……。
♧が言ったワガママは
ワガママでもなんでもなくて。
すごくささやかな、可愛いお願いだった。
隆)ん……、
タオルケットの中で、
♧の手を手繰り寄せて、きゅっと握った。
♧)……えへへ…ありがとう……♡
隆)……///
可愛い。
胸がキュゥゥッと鳴った気がした。
隆)えっと…暑くない…?
♧)うん…。
隆)寒くない?
♧)うん…。
隆)なんかあったら言ってね?!
緊張を誤魔化すように喋る俺に、
♧はふふっと笑った。
♧)大丈夫だよ…。
隆)……
♧)隆二くんがいるだけで…
すごく…安心する…。
隆)…っ
♧)手…繋いでくれて…ありがとう…。
隆)……
その言葉が、すごく嬉しくて…
俺はなんだか泣きそうになった。
♧)会えない…間…、ずっと…
隆)……
♧)隆二くんの歌、聞いてたの…。
隆)…っ
♧)……毎日…、寝る前に…
聞いてたんだよ…。
眠りに落ちかけてる♧が
最後に「ありがとう」って言って…
俺の目からは勝手に涙がこぼれた。
隆)…っ
一人で…不安で…怖くて…
でもそんな時に、
俺の歌を聞いてくれてたんだ…。
俺の歌は…少しでも…
♧の力になれた…?
隆)…っ
いくらでも歌うよ、♧のためなら。
これから先、いくらでも。
♧の耳元で、何度でも歌うから。
呆れるくらい、届けるから。
だから♧は…
俺の隣で、笑ってて。
俺がその笑顔を、守るから___
ーendー
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どうなることやら(❁´ω`❁)