〈47〉限られた時間の中で

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♡)おはようございますっ♡
J)ふはっw
 
 
ん?
 
あ、Jさんがすぐ後ろにいた。
 
 
J)姫は相変わらず朝から元気だねー
  おはよw
♡)おはようございます!
J)エレベーター待ってる人たちに
  そんな笑顔で挨拶するの、
  姫くらいだよw
♡)えっ…
 
 
確かに…
みんななんだか眠たそう。
 
お疲れなのかな?
 
 
J)あ、そうだ。
  これ、ありがとうね。
♡)あ、はいっ♡
 
 
昨日みんなに渡したボリビアのお土産。
 
Jさんの分はMちゃんに渡しておいたんだけど
早速使ってくれてる、アルパカのストール。
 
 
J)普通のマフラーよりあったかいよコレw
♡)えへへ、良かった♡
J)姫がいない間、寂しい寂しいって
  Mちゃんがずっとぼやいてたよーw
♡)えっ!
J)早く会いたいなーって。
♡)あはははw
 
 
今日は早めに出社したから
まだ時間がある。
 
 
♡)加奈子さーん♡
 
 
昨日はちょっとバタバタだったから
まだお土産を渡し切れてなくて
私は経理課に顔を出した。
 
 
鬼)あら、♡ちゃん。
♡)これ、旅行のお土産です♡
鬼)やだわざわざ!いつもありがとうねー。
♡)あ、猿田さん!おはようございます!
猿)おはよう。
♡)これ、お土産ですー♡
猿)あら、いいの?ありがとう。
♡)こちらこそ、いつもお二人には
  お世話になってます♡
  ありがとうございます♡
 
 
私が会社を辞めた後も、
二人には経理や情報管理を
手伝ってもらうことになってるんだ。
 
 
男)あ、姫だ。おはよう。
♡)おはようございます。
 
 
この人は確か、人事課の人だ!
 
 
男)姫がうちの会社のPRムービーに
  出てくれてから、
  エントリーがさらに急増してるんだよw
♡)ほんとですか?
男)うん、ほんとありがとねw
♡)いえいえ!
 
 
それから自分の島に戻ると、
私を見つけた海璃ちゃんが
パタパタと駆け寄ってきた。
 
 
海)♡さん、これ本当にあったかいです///
  ありがとうございます♡♡
♡)うんっ♡
海)Tさんもすごく喜んでました♡
♡)そっか、良かったー♡
K)マジで気持ちいいよ、コレ。
M)なめらかなんですよねー♡
課)ん?なんだなんだ?おはよう。
  みんなでお揃いのマフラーつけてるのか?
  色違い?
 
 
コートを抱えて入ってきた課長が
みんなのストールをまじまじ見てる。
 
 
M)先輩のお土産ですよぉー♡
課)ああ、昨日もらった塩のバスソルトな、
  かみさんが喜んで使ってたよ。
  ありがとうなw
♡)わ、良かったですー♡
 
 
私も使ってみたけど
お肌がツルツルになったもんね♡
 
 
P)♡さん、明日の会議資料なんですけど
  これもあった方が解りやすいかと思って。
♡)ん?
P)どうですか?
♡)これPくんが用意してくれたの?
P)はい。
♡)すごーい!ありがとう!
  うん、絶対あった方がいいと思うよー♡
P)良かったです///
♡)気付いてくれてありがとうね♡
P)は、はい///
原)♡さん、昨日のやつ出来上がったんで
  お手隙の際に確認お願いします。
♡)あ、どこにあるのかな?
原)共有ドライブDに入れました!
♡)Dね、了解です!
 
 
よし、今日も忙しくなりそうだなー。
頑張るぞー!
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
健)臣ちゃんのジャケットすごい色やなw
E)どピンクだねw
臣)うんw
N)ELLYなんて真っ金金じゃん!w
直)うん、一人だけ光ってる。
E)あはははw
 
 
今日は7人で六本木ヒルズに集まってて…
 
来週公開のドキュメンタリー映画、
『Born in the EXILE』の完成披露試写会で
レッドカーペットを歩く。
 
 
N)もう1500人も集まってるってよ。
岩)すっげーー。
隆)これにサイン書くらしいよー。
臣)あーい。
 
 
俺たちは衣装に着替えて、もう準備万端。
 
 
橘)登坂さん、今日もすごく素敵です♡
 
 
俺がソファーに座ってサインを書いてたら
いつの間にか目の前に橘が立ってた。
 
無視してそのままペンを走らせてたら…
 
 
橘)すごく似合ってます♡
 
 
しつけぇ!
早くどっか行けよ!
 
 
S)橘ーーー、
  裏の準備しちゃってー。
橘)あ、はい。
 
 
ふぅ、Sさんのフォローで
いなくなってくれた。
 
マジでうぜーな、あいつ。
 
 
岩ちゃん付きになったものの
こうして7人集まる現場だと
やっぱり顔合わせるしな。
 
その度にまとわりつかれてる俺。げんなり。
 
 
橘)あ、おじさまーー♡
部)お疲れさまw
S)はっ、部長!お疲れさまです!
 
 
え?
 
 
臣)…っ
 
 
俺はゆっくりと手を止めて、顔を上げた。
 
 
橘)おじさま今日はどうしたのー?♡
部)このビルで打ち合わせがあってね。
  三代目来てるって聞いて
  様子見に来たんだよw
N)お疲れさまです!
部)レッドカーペット歩くんだって?
  すごいなw
N)あははは、緊張しますw
 
 
部長が俺たちの方をぐるりと見渡して、
俺を見て視線を止めた。
 
橘は嬉しそうに部長の腕にくっついてる。
 
 
橘)ね、おじさまー♡
  今日の登坂さんすごく素敵なの♡
部)はははは、お前はほんと登坂が好きだなw
橘)やだ、おじさま、やめてー///
部)どうだ?三代目の現場は楽しいか?
橘)うんっ♡
  毎日充実してる、おじさまのおかげー♡
部)はははは、それは良かったw
 
 
そんな二人のやりとりを
俺たちは呆然と見てた。
 
 
部長は橘を溺愛してるのか、終始デレデレだし
橘はここぞとばかりに甘えてるし。
 
 
部)登坂!
臣)はい!
 
 
俺が立ち上がると、
部長は満足げに俺の肩を叩いた。
 
 
部)うちの大事な姪っ子だからなー
  よろしく頼むよ♡
臣)……は…い。
 
 
思わず笑顔が引きつるわ。
 
 
橘)ね、ね、おじさまー♡
  私ね、欲しいバッグがあるんだけど…
部)んー?いいぞー。
  今度一緒に買いに行くか?
橘)うんっ♡
 
 
そのまま橘はSさんから頼まれた仕事も
ほっぽりだして
部長を見送りに行った。
 
 
岩)なんだあれ…。
臣)うん…。
健)あんな可愛がってるんやなぁ、橘のこと。
N)こりゃますます飛ばせないね。
S)そうなんだよ…。
 
 
Sさんは困ったように項垂れた。
 
 
マ)Sさん、仕事ください!
  さっきの終わりました!
マ)自分もです!
臣)おお…。
 
 
昨日入った若い男衆は
なんか頑張ってるみたい。
 
 
臣)秋島くんさぁ、
マ)あ、自分は浅田です!
臣)あれ。
マ)秋島は自分です!
臣)ん?
 
 
ダメだ、増えすぎてこんがらがってる。
 
 
直)ほら、だから。
  読者の皆さんも混乱するから
  今後は全員「マネージャー」ってことで。
E)また言ってる、直己さん!w
臣)ま、とりあえずさ、頑張って。
  期待してるから!
マ)はい!
マ)ありがとうございます!
  
 
この子らが一人前になってくれたら
橘も追い出しやすいし。
 
なんとしても三代目から外すぞ、絶対。
俺は諦めねぇ!
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
M)さ、先輩、行きますよーー。
♡)はーい!
  お先に失礼しまーす!
K)お疲れー。
海)お疲れ様です!
 
 
Mちゃんと二人で
ホワイトボードに帰社のマグネットを貼って、
オフィスを出た。
 
 
M)タクシー乗っちゃいましょう!
♡)はい!
 
 
今日は前にオファーをもらってた
映画の出演依頼をお断りするための会食で…
 
 
M)ここですね。
 
 
辿り着いたのは、銀座の割烹料理のお店。
 
 
先方はまだ来てなくて、
私たちはコートを脱いで下座に腰掛けた。
 
 
♡)あ。
 
 
ポケットから携帯を出すと
ちょうど臣くんからLINEが来てた。
 
 
『これからもうひと仕事。行ってきます✌️』
 
 

 
 
♡)わ、みんなすごい衣装だなぁ…
M)ん?
  登坂さんすごいですね!どピンク!w
 
 
画面を覗いてきたMちゃんが笑ってる。
 
 
♡)ELLYも派手だよー!すごいw
M)でも似合ってますねw
♡)うん!w
 
 
ガラガラ。
 
 
小)お待たせしました。
 
♡)はっ!
 
 
後ろの扉が開いて、
私は携帯をしまって、立ち上がった。
 
 
♡)初めまして、♡と申します!
小)どうもどうもw
渡)初めまして、よろしく。
 
 
小笠原さんと渡井さん。
交換した名刺をテーブルに並べて
もう一度、腰掛けた。
 
 
小)今日はごめんね、無理言って
  時間作ってもらっちゃって。
M)いえ♡
 
 
Mちゃんがニッコリ笑って返事をした。
 
 
小)姫ちゃんって呼んでいいのかな?
  ♡ちゃんの方がいいのかな?
♡)あ、どちらでも大丈夫です!
小)じゃあ姫ちゃんでいっかw
  お肌綺麗だねぇ…びっくりしたよ。
渡)やはり透明感がすごいですね。
小)うんうん。
♡)えっと…ありがとうございます///
渡)イメージにぴったりですね。
小)やっぱりそうだよねぇ、うん。
♡)…っ
 
 
お店の人が持ってきてくれたメニューを見て
飲み物を頼み終えると、
小笠原さんがニッコリ笑って
テーブルの上で手を組み合わせた。
 
 
小)単刀直入に言うけど…
  やっぱり映画出てほしいんだな〜〜w
  ダメ?w
♡)…っ
渡)スケジュールなら可能な限り
  調整しますので…
  考え直してもらえませんか?
♡)えっと…
 
 
どうしよう。
直接頼まれると、なんだか断りにくい…。
 
 
小)フィンランド綺麗だよー?
  オーロラ、見たくない?w
渡)フィンランドロケがNGなんでしたっけ?
M)いえ、ええと…
  長期で日本を離れるのが、です。
小)何か事情でもあるの?
♡)…っ
 
 
「彼氏と離れたくないからです」
なんて、言葉にしたら
あまりに子供っぽいかもしれないけど…
 
それが本当の理由だから
ちゃんと誠意を持って伝えなきゃ…
ダメだよね。
 
 
小)姫ちゃんってMVにはたくさん出てるけど
  映画とかドラマはやったことないでしょ?
♡)はい。
小)MV見てる限り、演技も上手だし…
  何より人目を引く華やかさがあるし、
  やってみたら絶対成功すると
  思うんだけどなぁ?
渡)自分もそう思います。
♡)あの…、お話はありがたいですし、
  やってみたい気持ちはあるんですけど…
小)だったらやろうよ!
♡)あの…、
小)姫ちゃんほどイメージに合う子が
  いないんだよ!
渡)ぴったりすぎるんです、本当に。
♡)…っ
渡)無垢な透明感といい、
  可愛らしい笑顔も、綺麗な瞳も。
  可憐さの中に感じる、芯の強さも。
  すべてが主人公のイメージ通りで。
♡)…っ
小)どうしても姫ちゃんがいい!
  お願いします!!
♡)…っ
 
 
お二人に頭を下げられて、
言葉が出てこなくなっちゃった。
 
 
そこまで言ってもらえて
本当に嬉しいし、光栄だけど…
 
Mちゃんとも話してたんだ。
 
例外を受けたら、
今後の仕事も断りにくくなるから…、って。
 
 
♡)あの…ごめんなさい…。
 
 
私が頭を下げると、
二人はひどくガッカリした顔で私を見た。
 
 
♡)……私、大切な人がいるんです。
 
 
ちゃんと、伝えなくちゃ。
 
 
♡)本当に本当に大好きで、
  何より大切な人なんです。
  その人と一緒にいられる時間が
  本当に幸せで、尊くて…。
小)…っ
♡)でも、そんな幸せな時間も、
  いつ終わりが来るかわからない。
  生きてる限り、いつ何が起こるかなんて
  誰にもわからないから。
 
 
二人は静かに私の話を聞いてくれてる。
 
 
♡)私は幼い頃に父を亡くしているんですが、
  その別れはとても急だったんです。
小)…っ
♡)大好きだった人が…
  なんの前触れもなく、
  突然、目の前から消えて…
  二度と会えなくなって…。
渡)……。
♡)ありがとうも、大好きも、
  毎日たくさん伝えていたけど、
  それでも足りなかった…。
  もっと伝えたかった…。
  そばにいたかった…。
  もっと…同じ時間を
  一緒に過ごしたかった…。
 
 
今でも胸が、ぎゅっとなる。
悲しくて…、寂しくて…。
 
 
♡)人の命には必ず限りがあって、
  その終わりがいつ訪れるかは
  誰にもわからなくて…。
  明日かもしれないし、
  50年後かもしれない。
  人の命はすごく儚くて…、だから尊くて。
  
 
私の命だって、臣くんの命だって、
どちらが先に消えるか、いつ消えるか、
わからないの。
 
 
♡)後悔…したくないんです。
  あの時もっと、大切な人のそばに
  いてあげたら良かった。
  一緒の時間を、過ごせば良かった、って…
  死ぬ時に、後悔したくない。
 
 
時間は戻せないから。
やり直せないから。
 
 
♡)仕事ももちろん大切だし
  頑張りたいと思ってます。
  でも私が一番大事にしたいのは、
  好きな人との時間なんです。
小)…っ
♡)私の好きな人は、
  とても忙しい仕事をしていて…。
  だから私は出来るだけ、
  彼の時間に合わせられるように
  長期の仕事はお受けしてないんです。
渡)……。
♡)我儘かもしれませんが…
  彼と一緒に過ごせる毎日に感謝して、
  大事にしたいんです。
  ……ごめんなさい…っ。
 
 
私は自分に出来る精一杯で気持ちを伝えて、
深く頭を下げた。
 
 
するとしばらくして、
「はは、参ったなぁ…」って
小笠原さんが笑ったのがわかって、
ゆっくりと頭を上げた。
 
 
小)そんな理由だったのかぁ…。
♡)…っ
 
 
わかって…もらえなかったのかな…。
 
 
小)それは…、うん。
  これ以上頼めないなぁ、もう。
  そこまで言われたら…w
渡)そうですねぇ…。
♡)…っ
 
 
二人は残念そうに、顔を見合わせた。
 
 
小)そんなに大好きなんだ?
  彼氏のこと。
♡)はい。
小)幸せだねぇ、君の彼氏は。
  そこまで想ってもらえて。
渡)幸せ者どころか、贅沢者ですよ。
小)ははははw
 
 
小笠原さんは笑いながら
何度もうんうんって頷いて、私を見た。
 
 
小)実はね、僕がこんなにこの作品に
  必死になってるのも…
  僕の人生がもう残り僅かだからなんだ。
♡)えっ…
 
 
その言葉に思わず息が止まった。
 
 
小)人生振り返れば、
  本当に充実していたし
  素晴らしい人生だったと思えるんだけど
  やっぱりまだまだやりたいこともあって
  悔しい気持ちもある。
♡)…っ
小)だからこそ、最後まで
  やりたいことをやって、
  夢を追いかけ続けようって思ってるんだ。
♡)…っ
 
 
それなのに私は…
この話をお断りして…、どうしよう。
申し訳ない…。
 
 
小)いいんだよ、そんな顔しないでw
♡)…っ
小)君はまだ若いのにそんな風に
  自分の人生をちゃんと見つめていて
  命の大切さをわかってる。
  自分の中にブレない芯があって
  プライオリティがハッキリしてる。
  素晴らしいと思うよ。
♡)…っ
小)亡くなられたお父さんが
  君にそれを教えてくれたんだね…。
♡)はい…っ。
 
 
もう二度と会えない、大好きなパパ…。
 
 
小)僕も残された時間を
  後悔のないように過ごします。
  姫ちゃんも、ね。お互いに。
  限られた時間を楽しみましょうw
 
 
小笠原さんは清々しい笑顔でそう言ってくれて
私は涙を払って、その手を取った。
 
 
♡)はい、ありがとうございます。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
臣)はぁ、疲れたーーーw
シ)お疲れ様ですw
 
 
脱いだジャケットを
シンくんが受け取ってくれて
マキさんが顔の汗を拭いてくれた。
 
 
マ)あ、ねぇねぇそういえば。
臣)ん?
マ)今度、シンくんと一緒に
  ♡ちゃんのCM撮影の
  ヘアメイクするのよー♡
臣)あ、マジっすか!?
マ)生♡ちゃんに会えるの久々だわー
  楽しみ♡
臣)可愛くしてやってくださいw
マ)お任せあれ!w
シ)あはははw
 
 
パイプ椅子に腰をおろして脚を組んだら
目の前をリンちゃんが忍者のように
横切っていった。
 
 
リ)今市さん、ゴミついてます。
隆)えっ、うっそ!どこどこ?
リ)もっと左です。
隆)このへん?
リ)もっと右です。
隆)えーー??
 
 
隆二は必死に背中に手を伸ばしてる。
 
 
リ)というか、ジャケット脱いだ方が
  早いのでは。
隆)はっ、ほんとだ!早く言ってよ!
リ)というか、私が取った方が早いのでは。
隆)ほんとだよ!取ってよ!w
臣)ぶはっw
 
 
何このコントみたいな二人w
 
 
E)あ、ヨッシーのこれ限定アイテムじゃん!
ヨ)はい///
E)えいっw
ヨ)や、やめてください!///
E)あはははw
 
 
ELLYにちょっかいかけられて
赤くなってるヨッシーは
相変わらず健気で、可愛いし。
 
 
臣)はぁ…。
 
 
みんないいスタッフばかりなのになぁ。
あいつを除いては。
 
 
橘)お疲れさまでした♡
 
 
げ!早速現れた!!
 
 
臣)さ、そろそろ出ようかな。
 
 
橘を無視して立ち上がったら
それすら無視して、
橘が俺の背中にくっついてきた。
 
 
橘)おじさまに、そんなに登坂さんが好きなら
  登坂さんと付き合えばいいのにって
  言われちゃいました///
臣)……は!?
 
 
思わず低い声が出た。
 
 
臣)くっつくな、離せ。
 
 
何言ってんのこいつ。
 
 
臣)頭おかしいんじゃねぇの?
橘)おじさまがですか?
臣)お前だよ!
  なんで俺が…
岩)橘!
臣)…っ
 
 
岩ちゃんの低い声が響いた。
 
 
岩)行くぞ、用意しろ。何やってんだ。
橘)あっ、はい、すいません。
臣)…っ
 
 
岩ちゃんは橘を鋭い視線で睨んで
そのまま先に歩いていった。
 
……カッコイイ。
 
 
これはドMな岩ちゃんファンが見たら
キュンキュンしちゃうやつだ。
 
 
……って、んなこと言ってる場合じゃなくて。
 
 
隆)橘…ほんとヤバイね。
臣)うん。
 
 
日本語が通じないあの感じ、ゾッとするわ。
 
 
それから俺は、
AMBUSHの展示会に顔を出してから
家に帰った。
 
 
♡)あ、臣くんお帰りなさい♡
 
 
♡はソファーに座って、何か裁縫をしてる。
 
 
臣)何か作ってんの?
♡)うん、お守りだよー♡
 
 
お守り?俺の??
 
 
♡)今日ね、会食だったの。
臣)うん…?
 
 
俺はジャケットを椅子にかけて、
♡の斜め向かいに腰掛けた。
 
 
♡)映画のお話、断ったんだけど…
臣)あ…。
 
 
前に言ってたやつか。
 
 
臣)なんの映画だったの?
♡)んっとね、海外でのロケを
  予定してるらしくて…
臣)海外!!
♡)純愛ストーリーなんだって。
臣)純愛!!
 
 
恋愛ものなんてダメだダメダメ!
 
 
♡)断ったんだけど、
  その人はどうしてもその作品を
  実現したいらしくて…
臣)うん。
♡)でも、病気で…
  それを見届けられるかどうかも
  わからないんだって…。
臣)えっ…、それは…
  余命宣告されてるってこと?
♡)うん、そうだと思う。
臣)…っ
 
 
♡は残念そうに俯いた。
 
 
♡)なのに私は…なんの力にもなれないから…
  せめて、その人が少しでも長く
  元気に過ごせますように、って。
  夢を追いかけられますように、って。
臣)…っ
♡)お守り渡せたらいいなって思って…
  作ってたんだ。
臣)…そっか…。
 
 
♡が作ってるのは
明るい向日葵色のお守り。
 
♡の気持ちが…少しでもその人に
届くといいな…。
 
 
♡)よし、出来た!
臣)うん。
 
 
♡はそれをテーブルの上に置いて、
ゆっくり立ち上がった。
 
 
♡)お帰りなさい、ぎゅーしよう?♡
臣)えっ、あ…、うん。
 
 
♡が可愛く俺に抱きついてきた。
 
 
♡)今日もお仕事お疲れさまでした♡
臣)ふふ、ありがと…♡
 
 
♡の匂い、あったかいぬくもり。
 
すごく癒される。
 
 
臣)……♡、ありがとう…。
♡)え…?
 
 
本当は映画の仕事、
受けたかったんじゃないのかな。
 
でもきっと、俺のために断ったんだ。
 
 
臣)俺…さ、お前が毎日こうして
  側にいてくれて、俺のこと支えてくれて、
  本当に感謝してる…。
♡)…っ
 
 
俺のために我慢してることも
きっといっぱいあるんだろうな…。
 
 
臣)ありがとう、♡…。
 
 
だからこそ俺は、
♡と一緒にいられる時間を大事にして
幸せな毎日に感謝しなきゃいけない。
 
 
臣)大好きだよ、ありがとう。
♡)////
 
 
ぎゅ…、ぎゅ…、ぎゅぅぅぅ…っ
 
 
臣)く、苦しい…っ!w
♡)大好きっ!///
 
 
これは…イノシシになる手前だな?
 
 
♡)臣くんが大好きなんだよっ///
臣)うん、w
 
 
ちゃんと伝わってるよ、ありがとう。
 
 
♡)大好きなの、いっぱい、いっぱい!
臣)うんw
♡)いっぱい…大好き…っ///
 
 
俺も同じだよ…。
 
 
♡)ううううう!///
 
 
ぐりぐりぐり!!
 
 
……はい、出ました、イノシシw
 
 
♡は俺の首に潜り込んで、ジタバタしてる。
大好きが爆発してる証拠w
 
 
臣)あーあ、早くHしたいなぁ〜〜
 
 
俺の言葉に、♡はピクリと反応して…
そーっと俺を見上げてきた。
 
 
臣)なっ?
♡)……(こくん)///
臣)ふはっ…w
 
 
可愛いなぁ、もうw
 
 
ああ、その日が待ち遠しい…。
 
 
 
 
 
 
 
ーendー

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  1. ひな より:

    はぁー充電できました♡

  2. ひさぼー より:

    忙しい中、ストーリー更新ありがとうございます♡
    なかなかコロナが落ち着く気配がなく、本当にいろいろな面で大変ですよね。
    無理のない程度で、ストーリー続けてくださいね。

    • マイコ より:

      ありがとうございます。゚(゚´ω`゚)゚。
      実はまだくっっっそ忙しくて、必死にStory更新しとります。゚(゚^ω^゚)゚。
      お気遣いありがとうございます!!

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