〈33〉荒ぶる感情

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R)ちょっと臣さん飲み過ぎだってば!
臣)うるっせーなー…
  お前もう帰れよ。
R)やだよ、帰んない!
  こんな臣さん残して帰れないでしょ!
臣)俺はいいから。帰れって。
  もう一人になりたい。
R)そんなこと…言わないでよ…。
 
 
飲み過ぎなのはわかってる。
頭がフラフラするから。
 
 
臣)……ってなんでお前はさっきから
  手握ってくんの。
 
 
向かいから心配そうに俺を見て、
なんの確認なのか俺の手を握ってくる。
 
俺がいくら振りほどいても。
 
 
臣)触んなって。生きてっから。
R)そうじゃ…ないもん…///
臣)あ?
R)なんでもないっ!!
 
 
テーブルに突っ伏したまま返事して。
 
なんかだんだん眠たくなってきた。
昨日ろくに寝てねぇしな…。
 
 
R)こんなとこで寝たら風邪ひくってば。
臣)……るせー…。
R)ちょっと、寝ないでよ、ねぇ!
臣)お前は帰れって…言ってんだろ…。
R)絶対…帰んないもんっ
臣)……。
 
 
Rの声がだんだん遠くなる。
 
身体がぽかぽかして…まぶたが重くて…
 
 
臣)……スー…。
R)……はぁ、寝ちゃった…。
 
 
♡に会いたい。
 
まだ怒ってる?俺のこと。
呆れてる?うんざりしてる?
 
 
♡)臣くんはShizukaちゃんと
  付き合えばいいよ。
臣)え、は!?
 
 
いきなり何言ってんの!?
 
 
♡)そういう関係なんでしょ?
臣)違うって!
  今はなんもないし!
  ただのセフレだっただけ!!
♡)……セフレって…何?
 
 
♡が冷たい目で、俺を蔑む。
 
 
♡)最低だね、臣くん…。
臣)……。
 
 
その冷たい声に、俺は何も言えなくなって…
 
 
♡)私やっぱりもう、臣くんみたいな人
  無理だよ。
臣)…っ
♡)女遊びしてた人とか、嫌なの。
 
 
♡の隣には、誰かが寄り添ってる。
 
 
♡)だってハルくんだったら
  私を泣かせたりしないもん。ね?
臣)え…?
 
 
誰なんだ、隣にいるのは。
 
影になっててよく見えない。
 
ハルくんなのか…?
 
 
♡)ハルくんなら私を大事にしてくれるの♡
臣)なんで…っ
 
 
やっと口が開いた。
 
 
臣)なんでだよ!
  俺だって…俺だってお前のこと
  大事にするよ…!!
♡)やだよ。ハルくんがいいの。
臣)…っ
♡)だって見て、私たち♡
  こんなにお似合いでしょ?
臣)…っ
 
 
やっとハッキリ見えた二人は
お揃いの制服で手を繋いでる。
 
 
♡)さようなら、臣くん。
臣)嫌だ…!嫌だ…!!!
R)ちょ、ちょっと…っ///
臣)行かない…で…っ
  行かないで♡…!!
R)…っ
臣)行くな…っ!!
 
 
俺は必死に手を伸ばして、
♡を抱きしめた。
 
 
R)人の膝枕で…
  あの子の夢でも見てるの…?
  ……ムカつく。
 
 
ぎゅっと強く、抱きしめたら…
♡は優しく俺の頭を撫でてくれた。
 
 
R)……柔らかい…髪の毛…。
  可愛い…///
 
 
♡のぬくもりが…心地良くて…
俺はそのまま、深い眠りに落ちていった…。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
ハ)喧嘩してる時ってさ、
  ついつい負の連鎖が起きやすいんだって。
♡)え?
 
 
帰りの車の中、ハルくんが明るい声で
私を見た。
 
 
ハ)相手の嫌なところを思い出したり、
  マイナス思考になっちゃったり、
  そのせいで事態が悪い方に進んだり。
♡)…っ
ハ)だから、そういう時こそ、
  相手の好きなところとか、
  楽しかったことや嬉しかったことを
  思い出してみたら?
♡)……。
 
 
ハルくんの声が明るくてあったかくて、
心に優しく染み込んでくる。
 
 
♡)臣くんの…好きなところ…?
ハ)うん。
♡)楽しかったこと…、、
  嬉しかったこと…、、
ハ)うん、なんでもいいよ。
  思いつくまま、言ってみたら?
 
 
ハルくんが優しく笑った。
 
 
♡)……。
 
 
そんなの、いっぱいありすぎるんだよ…?
 
 
♡)……誕生日に…ね、
  臣くんが…サプライズパーティーを
  開いてくれて…
ハ)うん。
♡)ママも瞬も…友達もみんな…
  集まってくれて…
ハ)ああ、写真載せてたもんね。
♡)うん。
  すごくすごく…嬉しかったの。
ハ)うん。
♡)臣くんは隆二くんと…
  歌を歌ってくれて…
  私は感動して泣いちゃって…
ハ)うん。
 
 
本当に嬉しかったんだ。
 
 
♡)プレゼントはオルゴールになってる
  ピアノのオブジェをもらってね…、
ハ)うん。
♡)すごくキラキラしてて…綺麗で…
  開けたらハッピーバースデーが
  流れたの…。
ハ)うん。
♡)中には…文字が書いてあって…
  I love you,
  stay by my side forever.
  そう書いてあったの…。
ハ)うん。
♡)臣くんはね、
  私が英語できないの知ってるから…
  「ちゃんと読めたじゃん」とか言って
  笑ってて…。
ハ)うん。
 
 
すごく幸せな、誕生日だった。
 
 
♡)ホワイトデーにはね、
  すごく可愛いクレープを作ってくれたの。
ハ)うん。
♡)フルーツがいっぱい乗ってて
  可愛くて、美味しくて、
  一口サイズでいろんな味があって…
ハ)うん。
♡)食べるのが勿体なくて…
  でも全部食べちゃったんだけど…
ハ)あはははw
♡)私のために作ってくれたんだなぁって…
  本当に嬉しかったの…。
ハ)うん。
 
 
ハルくんはずっと優しく相槌を打ちながら
私の話を聞いてくれるから…
 
私は臣くんとの思い出を
次から次へと、たくさん話した。
 
 
話してるうちに…
気付けば笑顔になってる自分がいて…、、
 
 
ハ)良かった…。
 
 
ハルくんは優しく笑って、そう言った。
 
 
ハ)笑顔になれる思い出が、いっぱいあるね。
♡)……うんっ
 
 
イベントとかじゃなくても…
嬉しいことや楽しいことはたくさんあって…
 
 
♡)臣くんはいつも…、、
 
 
私のことを大事にしてくれる。
 
守ってくれる。
 
包んでくれる。
 
支えてくれる。
 
愛してくれる。
 
 
♡)いつも…、私に幸せをくれるの…。
ハ)うん。
 
 
臣くんと一緒にいたら、
毎日が幸せだから。
 
毎日が嬉しくて、楽しいんだよ。
 
 
♡)臣くんが過去にしてたことを…
  受け入れられない私がいて、
  それはきっとこの先も無理なの。
ハ)うん…。
♡)……でも…、
 
 
それでもそばにいたい。
 
それが…
あの時、出した答え。
 
 
♡)二人で一緒に成長していきたいって…
  約束…したから…。
ハ)うん。
 
 
ハルくんは優しく頷いて、
私の頭を撫でてくれた。
 
 
赤信号で止まってる車の中からは
雨上がりの夜の明かりが
綺麗に浮かび上がってるのが見える。
 
 
♡)ハルくん…ありがとう…。
 
 
いつも優しく、私を導いてくれる人。
 
 
ハ)♡が笑顔なら、それだけで俺は嬉しい。
♡)…っ
 
 
私の中にいる、小さな頃の私が…
ハルくんが大好き、って…
ハルくんのそばにいたい、って…
たまに叫んでしまうけど…
 
 
今私が好きなのは、臣くんだから。
そばにいたいのは、臣くんだから。
 
 
ハ)……♡、眠たいの…?
♡)え…?
 
 
そう言われると確かに…
なんだか身体がポカポカしてる。
 
 
ハ)着いたら起こしてあげるから…
  寝てていいよ…?
 
 
安心する、ハルくんの声…。
 
 
♡)寝ちゃうの…勿体ない…もん…。
 
 
でもまぶたが重くなってきてるのがわかる。
 
 
ハ)じゃあ…こうしてようか。
♡)……あっ
 
 
ハルくんの大きな手が
私の右手を包んでくれた。
 
そのぬくもりに、心から安心する。
 
 
♡)ハルくんが…手を繋いでくれたら…
ハ)ん…?
♡)パパに…抱っこされてる…みたい…
ハ)ええ?w
 
 
うとうと…うとうと…
意識が遠くなっていく。
 
 
ハ)おやすみ、♡…。
 
 
繋いでる手から伝わる、優しいぬくもり。
 
 
お互いに、わかってる。
 
 
どんなに大好きで、
どんなに大事に想っていても…
 
それ以上に大切な人が、
今お互いにいることを。
 
 
でも、好きだから。
どうしたって、大事だから。
 
 
ハルくんが困ってる時は
私が助けるからね。
 
 
私は不器用だから…
ハルくんがそうしてくれるみたいに
上手じゃないかもしれないけど…
 
でも、絶対助けるよ。
 
 
……ハルくん、大好きだよ。
いつも…ありがとう…。
 
 
♡)……スー…。
ハ)…本当に、寝ちゃった…w
 
 
ぽかぽか…ぽかぽか…あたたかい…。
 
 
パパがいて…ママがいて…
瞬がいて。
 
ハルくんがいて、お父さんがいる。
 
 
ハ)♡……。
 
 
みんなが呼んでくれる、自分の名前が
大好き…。
 
 
ハ)♡……。
 
 
だってそれだけで…
みんなの愛が…伝わってくるから…。
 
 
ハ)……本当に…天使みたいだな…。
 
 
遠くで…声が聞こえる。
 
 
ハ)♡……。
 
 
私を呼んでるのは、臣くんかな…?
 
 
……だって…、
頭を撫でてくれる手が、すごく気持ちいい…。
 
 
その大きな手を掴んで、ほっぺに当てたら…
 
 
♡)あった…かい……
 
 
ほら、心がぽかぽかになるよ…。
 
 
♡)…大好…き……。
 
 
臣くん、大好きだよ。
 
ずっとずっと、大好きだよ…。
 
 
ハ)♡…、ごめんね……。
  …………愛してる………。
 
 
頬に感じた柔らかい感触は、愛のキス。
 
 
臣くんがいつも私にくれる、
優しい優しい、キスのぬくもり…。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
頬に感じた柔らかい感触は、♡の唇。
 
 
♡がいつも俺にくれる、
可愛くてあったかい、キスのぬくもり…。
 
 
R)……好…き…、///
 
 
……そう…。
少し照れたように…俺を見て…、
 
 
R)大好き……///
 
 
可愛くそう言うんだ。
 
 
臣)♡……、
 
 
俺も大好きだよ…。
 
 
臣)………ん、…っ
 
 
なんだろう…
頭がフラフラしてる。
 
 
……なんだろう、これ。
ああ、♡の身体だよな…。
 
……すげぇ気持ちいい…。
 
 
臣)♡……、
 
 
柔らかい太ももをそっと撫でたら、
俺の頭を撫でてくれてる手が、
ピタッと止まった。
 
 
臣)なんで…、もっと…してて…
R)////
 
 
♡の腰に腕を回して、ぎゅっと抱きついた。
 
 
臣)……好きだよ…。
R)////
 
 
……すげぇ落ち着く。
 
 
R)あ、っ……、やっ…///
 
 
もっと触りたい。柔らかい肌に。
 
 
R)やっ、ちょっ…///
 
 
太ももの間に手を入れて
なめらかな肌を…
 
……肌を……、、
 
 
…………あれ…?
 
 
R)あんっ、や、だっ///
 
 
♡の太ももってこんなんだったっけ?
 
 
R)やっ、恥ずかしい、やだ…っ///
 
 
♡の肌は…もっとすべすべで…なめらかで…
俺の手に吸い付くように気持ち良くて…
 
……あれ、だんだん五感がハッキリしてきた。
 
 
R)……いいよ、触っても///
 
 
ん?
 
 
臣)…っ
 
 
♡の声じゃ、ない?
 
 
臣)!!!
 
 
驚いて起き上がると、
そこには赤い顔をして
目をウルウルさせてるRがいた。
 
 
R)起きた…の?///
臣)なん…で…、
 
 
あれ?
 
何がどうなってる?
 
 
臣)なんでお前、俺に膝枕なんかしてんの!?
 
 
そうだ、思い出した。
俺テーブルでそのまま寝ちゃったはず。
 
 
R)だって…
  身体痛くなっちゃいそうだったから…
  こっちの方が休めるかな、って思って…
臣)はぁ?!
  余計なことすんなよ!
  ♡と間違っただろーが!
R)…っ
 
 
なんで勝手に膝枕してんだよ!!
 
 
臣)♡だと思って触った!騙された!
R)何よその言い方!!
臣)お前が悪いんだからな。あーー、もう。
R)エッチな触り方…したくせに…///
臣)はぁ!?
R)スカートに…手、入れたでしょ///
臣)太もも触っただけだろーが!
R)……エッチ///
臣)♡だと思ってたんだっつーの!
  俺が触ったのはお前じゃない!
R)はぁ!?あたしだし!!
  ぎゅって甘えてきたくせに!!
臣)…っ
 
 
そっか、さっき抱きついたのも…、
 
 
臣)♡だと思ったから抱きしめたんだもん。
  あーー、もういいや、めんどくせ。
  全部忘れろ。
R)はぁ!??
臣)お前にしたんじゃないから。
  悪かったな、寝ぼけてて。
R)ふざけないでよ!
  絶対忘れないし!
臣)はぁ!??
 
 
なんだよ、責任取れとか言い出す気か
この野郎!
 
 
R)もっと…寝ぼけてたら…良かったのに///
臣)は?
  …っ、うわっ、ちょ!何すんだよ!
 
 
ぼすんっ!!
 
 
R)まだフラフラするでしょ!
  休んでたら?///
臣)…っ
 
 
無理矢理また、膝枕された。
 
 
臣)いらねっつーの!
 
 
俺はすぐ起き上がって、Rを押しのけた。
 
つーか今何時だよ。
 
慌てて携帯を手に取ったら、
さっきは気付かなかったけど、
MちゃんからLINEが来てた。
 
 
『土砂降りだったので、
 ハルキさんの車で送ってもらいました😃
 先輩ももうおうち着いてると思います。』
 
 
やっべ、このLINE、もう2時間前じゃん!
早く帰んなきゃ!!
 
 
俺が上着を着ようとしたら、
それを邪魔するようにRが抱きついてきた。
 
 
臣)ちょ、何してんの!?
R)まだ…行かないで///
臣)は!??
R)気持ち…悪いの…、
臣)えっ…
R)あたしも少し…、休んで…いい?
臣)いや…、でも
R)……おね…がい///
臣)…っ
 
 
一刻も早く帰りたいんだけど…
 
自分も不本意とはいえ
介抱してもらってた身だから
無下には出来ない。
 
 
臣)大丈夫…?
R)う…ん…、///
臣)水頼むか?
R)……ううん、こうしてたら…
  良くなると思う…///
 
 
そう言ってRは甘えるように
俺の胸にもたれてきた。
 
 
臣)いや…、ちょっとこれは…
R)あったかい…///
臣)…っ
R)安心…する…///
臣)いや、あのさ、
R)気持ち悪いの…治ると思う…
臣)…っ
 
 
参ったな、どうしよう。
 
 
臣)R、ほんとごめん!
R)えっ…
臣)マネージャー呼ぶとかタクシー呼ぶとか
  自分でなんとかして!
R)…っ
 
 
俺はRを壁にもたれさせて、
そのまま立ち上がった。
 
 
臣)ごめん!今度埋め合わせするから!
  ほんとごめん!
 
 
酔ってる女置き去りにして
自分だけ帰るとかほんと最低だと思うけど
俺はこんなとこで
こんなことしてる場合じゃない。
 
 
帰って…
♡に謝りたいんだ、今すぐ。
 
 
「盲目になっちゃってるんじゃない?」
 
 
いいよ、それでも。
俺はどうしたって、♡が好きなんだ。
 
 
「臣さんに合う人、もっと他に…いるよ。」
 
 
要らない、他の女なんか。
俺が欲しいのは、♡だけだから。
 
 
運)いやーー雨もすっかり上がって
  良かったですよねぇ〜w
臣)そうですね、土砂降りでしたもんねw
 
 
のんびり口調のタクシーの運転手に
話を合わせながらも、
俺はそわそわ落ち着かなくて。
 
 
早く帰りたい、
早く♡に会いたい、
 
そんな気持ちでいっぱいだった。
 
 
臣)あ、そうだ…。
 
 
さっきのMちゃんからのLINE。
まだ途中だったんだ。
 
慌てて閉じちゃった画面をもう一度開いた。
 
 
『土砂降りだったので、
 ハルキさんの車で送ってもらいました😃
 先輩ももうおうち着いてると思います。
 
 それから、報告なんですが…
 ごめんなさい🙏
 今日、キスシーンありました。』
 
 
そこまで読んで、固まった。
 
 
臣)……は…?
 
 
キスシーンって…まさか、ハルくんと…?
 
 
俺は上手く動かない指先で
画面をスクロールした。
 
 
『最初はフリだけの予定だったんですが、
 途中で監督に頼まれて、仕方なく。
 ごめんなさい🙏
 
 あと、今回相手役がハルキさんだったのは
 私も先輩も、全く知らなくて。
 ハルキさんも今日現場に来て
 いきなり社員さんたちに頼まれて
 驚いてる様子でした。』
 
 
なんだよそれ…、、
意味がわかんねぇ。
 
 
『先輩、帰りに登坂さんのインスタ見て
 ちょっと拗ねてたんで、
 もしかしたら素直になれないかも
 しれないですが…
 ちゃんと仲直りしてくださいね🙏
 (余計なお世話でごめんなさい💦)
 それでは、おやすみなさい🌙』
 
 
臣)…っ
 
 
最後まで読み終わったけど、
なんかまだ頭ん中がフリーズしてる。
 
 
ええと…、、
俺のインスタって?
 
……ああ、Rとの写真のこと?
 
そんなんどうでもいいよ。
 
 
それより、
 
 
臣)……。
 
 
相手役がハルくんだったってことは
キスシーンの相手もハルくんだったわけで。
 
 
……ああ、なんか…ヤバイ。
頭も身体も、ぐちゃぐちゃだ。
 
酒のせいで、グラグラする。
 
 
運)着きましたよー。
  地下入りますか?
臣)……ああ、はい…。
 
 
駐車場で降ろしてもらって、
フラフラとエレベーターに乗って。
 
 
どんな顔して♡に会えばいいんだろうって
フラフラする頭でぼーっと考えながら
玄関のドアを開けたら…
 
 
臣)…っ
 
 
明かりがついてない真っ暗な部屋が、
俺を余計に、冷静じゃなくさせた。
 
 
臣)は…?
 
 
なんでまだ帰ってきてない?
 
 
臣)…っ
 
 
もしかしてもう寝た?
 
……そう思ったけど、♡はベッドにはいないし
部屋のどこを探してもいなかった。
 
やっぱりまだ帰ってきてないんだ。
 
 
臣)なんで…?
 
 
『先輩ももうおうち着いてると思います。』
 
 
MちゃんからLINEがあったのは
もう3時間近く前。
 
なんでいない?
 
ハルくんとどっか行った…?
 
 
臣)…っ
 
 
また家出なのか?
俺の顔が見たくなくて?
 
ハルくんと…二人で…
どこか行ったんじゃ…。
 
二人は…、どこかで今頃…、、
 
 
……ガチャッ。
 
 
パニックになってる俺は
玄関が開くその音に、
勢いよく振り返った。
 
 
臣)♡!?
 
 
リビングのドアを開けてその先を見たら、
玄関にいるのは間違いなく♡だった。
 
 
♡)臣くん…っ
 
 
帰ってきて、安心するはずが…
なぜかカッと頭に血が上ったのは…
 
♡がまた、ハルくんのマフラーを
首に巻いてたから。
 
 
♡)……ただ…いま。
 
 
こんな時間まで…何してた?
 
 
♡)臣…くん…?
 
 
どこで、何してたんだよ。
 
 
臣)何、それ。
 
 
……自分でも驚いた。
あまりにも自分の声が、冷たくて。
 
 
♡)え?……あっ、
 
 
俺の視線でマフラーのことだと気付いた♡は
慌てたようにそれを外した。
 
 
♡)また返し忘れちゃった…っ
 
 
……ああ、イライラする。
 
 
臣)どこ行ってたんだよ。
♡)え?
臣)こんな時間まで。
♡)…っ
 
 
俺の声が冷たいからか、
やましいことがあるからか、
♡の眉が少し下がった。
 
 
臣)どこ行ってたって聞いてんの。
♡)…っ、ドライブ…してた。
臣)は?
♡)ハルくんとドライブしてた…。
臣)…っ
 
 
なんだよそれ。
 
 
臣)あんな土砂降りだったのに?w
 
 
嘲笑うような俺の声に
♡は静かに目を伏せた。
 
 
♡)私が…帰りたくないって
  言ったから…。
臣)…っ
 
 
帰りたくないって…
俺の顔、見たくなかったってことだろ?
 
それで?
それでハルくんにドライブ連れてって
もらってたって?
 
なんだよそれ…。
 
 
♡)臣くんは…?
臣)は?
♡)今…帰ってきたの?
臣)そうだけど。
♡)誰と…飲んでたの…?
臣)は?
 
 
いつもはそんなこと聞かないくせに
なんなんだよ。
 
 
臣)Rとだけど。
♡)…っ、二人で…飲んでたの?
臣)最初はカメラマンの長谷川さんも
  一緒だったけど
  仕事ですぐいなくなったから
  その後は二人。
♡)…っ
 
 
なんだよその顔。
 
 
臣)ハルくんとドライブして帰ってきたお前に
  そんな顔されたくないんですけど。
♡)何それ…、っ
臣)何あの写真、仲良く手ぇ繋いでさ。
  俺への当てつけ?w
♡)…っ、違うもん!
  そんなんじゃないもん!
  ……臣くんだって!
  Rとベタベタしてたくせに!
臣)俺はキスなんかしてねぇよ!
♡)…っ
 
 
俺の言葉に、♡が固まった。
 
 
臣)俺が嫌がるってわかってて…
  それも俺への当てつけ…?w
♡)ちがっ…
臣)じゃあなんだよ!
 
 
よりによって、ハルくんとキスするとか。
ありえない。
 
 
♡)断れな…かったの…、
  ……仕事、だから。
 
 
なんだよその言い方。
 
 
臣)仕事だから仕方ない、って?
 
 
そう言いたいわけ?
 
 
臣)仕事でもないくせに
  女と散々そういうことしてたお前に
  言われたくないって?w
♡)…っ
 
 
ああ、ダメだ、止まらない。
 
 
臣)最初のキスは
  ハルくんが良かったんだもんな?w
♡)…な…に、それ…
臣)言ってたじゃん。
  初めての彼氏にキスされた時、
  そう思ったって。
♡)…っ
臣)夢が叶って良かったじゃん、
  おめでとうw
♡)…っ
 
 
♡の顔が、どんどん悲しそうに
歪んでいく。
 
 
俺は何を言ってるんだろう。
何をしてるんだろう。
 
そう思うのに、止まらない。
 
止められないくらい、
イライラしてて、気持ちがグチャグチャで。
 
 
臣)どうだった?
  ハルくんとキスできて、嬉しかった?
♡)臣くん、
臣)ドキドキしたの?
  好きだとか思ったの?w
♡)臣くん、酔ってるの…?
  こんな臣くんと、これ以上話したくない。
臣)は?酔ってねぇよ。
♡)だってすごくお酒くさいもん!
臣)酔ってねぇって言ってんだろ!
♡)嘘だ、酔ってるよ!
臣)これは酒のせいじゃねぇ!
  お前のせいだろ!!
♡)…っ
 
 
こんなにイライラするのも、
何かが爆発しそうなのも…
 
全部、全部…、お前のせいだ。
 
 
臣)答えろよ!
♡)…っ、
 
 
なんで…
なんでハルくんとキスなんか…
 
 
♡)……ドキドキ…したし…、
  大好きって…思ったよ…?
臣)は…?
 
 
♡の言葉に、今度は俺が固まった。
 
 
♡)だって…ハルくんのお嫁さん役だったから
  役に集中してたし、
 
 
お嫁さん役?何それ。
聞いてないんですけど。
 
 
♡)あの瞬間は…、
臣)いつもは…!
♡)え…?
臣)いつもは…っ
  相手を俺だと思って演技してるって
  お前いつも言ってるじゃん…。
♡)え…っ
臣)今回は違ったの。
♡)え、…あ、…ほんとだ……。
臣)…っ
 
 
今気付きましたみたいな顔、
してんじゃねぇよ…。
 
 
臣)ハルくんのことが大好きだって思って
  ドキドキしながらキスした、って?w
  そんなん浮気じゃんw
♡)…っ
臣)バカ正直すぎんだろお前…。
♡)…っ
臣)そんなん聞きたくねぇんだよ!
 
 
泣きたいのか、腹が立つのか、
自分でももう、何がなんなのかわかんねぇ。
 
ただ爆発しそうなくらい、
頭も身体も沸騰してる。
 
 
♡)臣くん…、
臣)いいよもう、聞きたくない。
♡)臣くん、私…っ
臣)聞きたくないって言ってんだろ!!
 
 
♡が泣いてる。
 
それが余計に、俺をイライラさせる。
 
 
臣)お前ハルくんのこと
  好きなんじゃないの?w
♡)…っ
 
 
言いたくもない言葉が
次から次へと口をついて出てくる。
 
 
臣)役に集中してたとか、
  そんなんじゃねぇだろ。
♡)…っ
臣)ハルくんと二人でドライブして?
  何してたわけ?w
♡)…っ
 
 
「どうせ!あの子は今頃、
 臣さんの気持ちを知りもしないで
 初恋のイケメンと
 イチャイチャしてんだから。」
 
 
ほんとにそうだった。
笑えるよ、もうw
 
 
「今彼氏と喧嘩してるのぉー♡
 とかベタベタ甘えて。
 そんな男やめて俺にしろよ
 とか言われて舞い上がってんのよ。」
 
 
臣)そうだよな…、
  ハルくんだったら俺みたいに
  お前に嫌な思いさせるような
  過去もないし?w
♡)……(ふるふる)
 
 
♡が泣きながら首を振ってる。
 
 
「俺の方が幸せに出来るよとか
 適当なこと言って
 彼女の心を揺さぶって。
 二人で臣さんの悪口でも言って
 盛り上がってるんじゃない?w」
 
 
そうだよ。
 
 
臣)二人でそんな話、してたんだろ?
♡)…っ
臣)俺が最低だ、って。
  二人で笑ってたんだろ?w
♡)……(ふるふるっ)
 
 
♡はぽろぽろ涙をこぼしながら
ただ首を横に振るだけで、何も言わない。
 
 
臣)もうお前の顔、見たくない。
♡)…っ
 
 
その言葉に、♡がすごく傷ついた顔をして…
 
その顔を見て胸が痛んでる自分がいるのに、
それでも俺は、言葉の刃を止められない。
 
 
臣)浮気して帰ってきたお前の顔なんか
  見たくねぇよ。
♡)…っ
 
 
♡の泣いてる顔を、これ以上見たくなくて
背を向けたら…
 
 
♡が後ろから、抱きついてきた。
 
 
♡)行か…ないで…っ
 
 
声が涙で掠れてて、すげぇ苦しそう。
 
 
臣)離せって。
♡)……いや…っ
 
 
震える手が、ぎゅっと俺にしがみついてる。
 
 
♡)臣くんが…好き…っ
臣)は…?
♡)私は…臣くんが…っ
 
 
♡の言葉を遮るように、
俺は振り返って、♡の唇を塞いだ。
 
噛み付くような、荒々しいキスで。
 
 
♡)臣…く…っ
臣)…っ
 
 
この唇で、
ハルくんとキスしたんだと思ったら…
 
こんな潤んだ目で、
ハルくんを見つめたんだと思ったら…
 
もう、我慢できなかった。
 
 
♡のコートを無理矢理脱がせて。
 
 
♡)や、やだっ!臣くん…っ!
 
 
嫌がる♡を乱暴にソファーに押し倒した。
 
 
♡)やめて、やだっ!
 
 
♡の両手を無理矢理掴んで、押さえつけて。
 
 
臣)俺のこと好きなんだろ?
♡)…っ
臣)だったら黙って抱かれろよ。
♡)…っ
 
 
感情のない冷たい声を吐き出して…
 
熱い怒りを、ぶつけるように…
 
言葉にならない感情を
全部ぶちまけるみたいに…
 
 
♡)やだ…っ!こんなの…やだよ…っ
臣)黙れって。
♡)…っ
 
 
♡が泣きながら訴えてるのに
そんなの、無視して、、
 
 
俺はめちゃくちゃに、♡を抱いた。
 
 
♡)臣くん…、やめて…っ、お願い…っ
  ……ひっ…く…
 
 
俺のことが好きだって言ったくせに
なんで泣くんだよ…?
 
やっぱり嘘なんだろ?
本当はハルくんが好きなんだろ?
 
 
だから…
 
だから泣くんだろ?俺に抱かれて。
 
 
臣)はぁっ、…はぁ…っ
 
 
全部吐き出して、
それでも、気が狂いそうで。
 
 
♡)…ぐすっ…、…ひっく…っ
 
 
乱れた服を震えながら抱きしめて、
♡が泣いてる。
 
 
臣)……もういい。
 
 
俺はそんな♡を一人残して、
自分勝手に家を飛び出した。
 
 
 
 
 
 
ーendー

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  1. 匿名 より:

    はじめまして!いきなりコメント失礼します。
    3年ほど前から大ファンです!
    ストーリー大好きでちゃんと毎日更新されてるのか見ています!
    なのでやめちゃうかも…との事で数日悩んでいましたが心が復活できないのか不安でコメントさせて頂きました。
    もぅ何度も繰り返して読むくらい大好きなのでお時間ある時、無理ない程度で大丈夫なので続けて書いて頂けると非常に嬉しいです☆
    これからも陰ながら応援させて頂きます!
    突然のコメント失礼致しました。

    • マイコ より:

      あたたかいメッセージどうもありがとうございます。゚(゚´ω`゚)゚。嬉しいです。
      まだしばらくは頑張る予定ですので、引き続きよろしくお願いしいたします。

    • のんちゃん より:

      マイコさんのstory、毎日更新されてるか楽しみでチェックしてます。辞めちゃおうかなぁみたいな事が書いてあったから悲しです。マイコさんのstoryに出会って、このstoryをリアルに感じて、凄い大好きなstoryになりました。これからも、ずっと読みたいstoryなので、続けてもらえたら嬉しいです。♡ちゃん、臣くんは未だすれ違いのままなのかなぁ?プチ暗黒期の方が私的には辛かったなぁ〜。

    • マイコ より:

      のんちゃんコメントありがとう(o^-^o)
      まだしばらくは辞めないよー!頑張る!ありがとう!!
      プチ暗黒期は…プチのつもりだったけど意外に重かったかな?( ;゚³゚);゚³゚);゚³゚)
      すぐ仲直りしてバカップルに戻るから大丈夫だよー♡笑

  2. ひさぼー より:

    初めまして。
    ストーリーいつも楽しみにしていて、毎日チェックしています。
    3年位前から拝見していましたが、コメントしたことは一度もなく、ストーリーやめるというのを見て、初めてコメントしました。
    無理のない程度でいいので続けてください!
    よろしくお願いします。

    • マイコ より:

      ひさぼーさん初めまして!
      毎日チェックしてくださっているなんて…ありがとうございます!嬉しいです!。゚(゚´ω`゚)゚。
      まだしばらくは頑張りますので、どうぞ引き続きよろしくお願いいたします!

  3. あいこ より:

    心臓がいたいー(இдஇ; )
    どうなるんだろ。。
    このストーリー大ファンすぎてもう中毒です‪w‪w
    ポチ頑張ります!!
    なのでぜひ続けてくださいね♡♡

    • マイコ より:

      あいこさん、ありがとうございます。゚(゚^ω^゚)゚。
      嬉しいです♡頑張ります♡

  4. 匿名 より:

    あけましておめでとうございます。

    毎日更新楽しみにしています。
    やめられたら、楽しみが減っちゃうので、是非続けて欲しいです!!

    今年も毎日楽しみしています。
    よろしくお願いします。

    • マイコ より:

      ありがとうございます(≧v≦)
      しばらくは続けますので、今年もどうぞよろしくです♡

  5. おみき より:

    初めまして。
    たまたま見つけて読んでみたら面白くてハマってしまい全部読ませて頂いてます。
    早く続きを読みたくて、ほぼ毎日更新を楽しみに覗きにきてます。
    ♡ちゃんにいつも優しい臣くんがついに感情を抑えきれずに出て行ってしまいましたね>_<
    2人の関係が心配です。

    また更新楽しみに待ってますね。

    • マイコ より:

      おみきさん初めまして(o^▽^o)
      たまたま見つけていただきありがとうございます!やったー!w
      こんな大量にあるのに全部読んでくださってありがとうございます笑
      もう少しで再開しますので、どうか待っていてください♡

  6. どさんこ母ちゃん。 より:

    初めてコメントします!
    今回のプチ暗黒期。。
    辛いーーー( ¯ ¨̯ ¯̥̥ )臣くーーーん( ¯ ¨̯ ¯̥̥ )
    私は3人坊主の母親で、家事育児仕事に追われて、寝る前にアイスを食べながらこのストーリーを見るのが日課で、毎日の唯一の至福の時です。
    だからストーリーやめないでーー!
    大好きなんですーー!!

    • マイコ より:

      私なんぞのStoryを毎日の至福の時にしていただいて…恐縮です!!
      ありがとうございます!母ちゃーーん!。゚(゚´ω`゚)゚。♡♡笑
      寒い北国で3人も育てるなんて…何かの修行かというくらい大変そうですが…同じ母として応援しとります!!
      Storyも頑張って続けますのでどうぞよろしくですー!(っ≧ω≦)っ

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