〈20〉誰も邪魔しないで

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原)昨日は本当にすみませんでした!!
♡)…っ
 
 
会社に行く途中。
 
電車を降りたら
原くんが改札のところで待ってたみたいで
深く頭を下げられた。
 
 
原)僕の顔も見たくないくらいだと
  思うんですけど…
  やっぱりどうしても直接謝りたくて…
♡)…っ
原)本当にすみませんでした!!
 
 
思い出したらやっぱり嫌な気持ちになるけど
昨夜は臣くんでいっぱいにしてもらったから
なんかもう満たされてて。
 
もういいよって言ってあげたいけど…
 
 
「お前は〜〜!そんなお人好しなこと言って!
 次会ったら急所蹴り飛ばしてやるくらいの
 心意気でもいいんだぞ。
 お前は優しすぎんのー。」
 
 
って、臣くんに言われたんだった…!
 
 
♡)二度と…、っ
原)え…?
♡)二度とあんなこと…しないでねっ!!
原)…っ
♡)ほんとに怖かったし…
  ほんとにやだったんだから!!!
 
 
思いきって本当の気持ちを言ったら
原くんはますます申し訳なさそうに
表情を歪めた。
 
 
原)本当に反省してます。
  すみませんでした…。
♡)……うん…。
原)……昨日見たことも…、
  誰にも言わないので…。
♡)あ…っ
 
 
そっか、臣くんと岩ちゃんを
見られちゃったんだった。
 
 
原)絶対言いません。
♡)うん、ありがとう…。
原)じゃあ僕、先に行きますね。
♡)うん…。
 
 
原くんは最後にもう一度深々と頭を下げて
走って行った。
 
 
♡)……はぁ…。
蒼)原さんと何かあったんですか?w
♡)わぁぁっ!!
 
 
今度は蒼くんが現れたぁぁ!!
 
 
蒼)告白でもされました?
♡)ち、違うもん!!
蒼)ほんとに?
♡)…っ
蒼)当たらずとも遠からずってとこかな。
♡)……。
蒼)あ、ちょっと!♡さん!
♡)…っ
 
 
ニヤニヤ近付いてくる蒼くんを無視して
私は猛ダッシュで会社に向かった。
 
 
のに…、
 
 
蒼)で、原さんと何があったんです?w
♡)……。
 
 
昨日の倉庫作業の続きをしなきゃいけなくて
結局また蒼くんと一緒になっちゃう私。
 
もぉやだ…。
 
 
蒼)シカトですかー?
♡)蒼くんに関係ないもんっ!
蒼)僕、♡さんのこと好きだって
  言ったじゃないですか。
  関係ありますよ。
♡)…っ
 
 
ちゃんと断ったのに…!!
 
 
♡)私は彼氏のことが大好きなの!
蒼)知ってますよ…?w
♡)…っ
 
 
なんでそんな余裕の顔で笑うのーー!!
 
 
蒼)Pさんも♡さんのこと
  好きだったんですよねぇ?
♡)えっ…
 
 
どうして知ってるのかな。
 
 
蒼)うちの部署の男は
  漏れなく♡さんを好きになるのかな〜〜w
  あ、でもTさんとかもそうですもんね。
  いろんな人に好かれて
  本当に大変ですね、♡さんw
♡)…っ
 
 
私はしつこい蒼くんをプイッと無視して
倉庫の奥に一人で進んだ。
 
 
♡)こほっ、
 
 
こっちは少し埃っぽいな。
先にお掃除しようかな。
 
 
♡)きゃっ!!
 
 
戻ろうとしたら、また蒼くんの腕に
閉じ込められた!!
 
 
♡)もうやだ!しつこい!
蒼)どうしたら…
♡)え…?
蒼)どうしたら少しでもこっちを
  見てくれるんですか…?
♡)…っ
 
 
真剣な蒼くんの顔が近付いてきて…
 
 
蒼)教えてくださいよ、♡さん…。
 
 
おでことおでこがぶつかりそうになって、
私は思わずその場にしゃがみ込んだ。
 
 
蒼)それで逃げたつもりですか?w
  可愛いなぁ…
♡)…っ
 
 
今度は蒼くんもしゃがんできて…
 
 
♡)!!!
 
 
肩をぐっと掴まれて、
首にキスされそうになって…
 
 
……ゴツッッ!!
 
 
蒼)!!!
♡)いた…っ
 
 
頭突きで反撃したら目がチカチカして
そのままぺたんと座り込んじゃった。
 
痛いよぉぉ……っ
 
 
蒼)これが紅も食らった頭突きかぁ〜〜
  あはははw
♡)…っ
 
 
まだ笑ってる蒼くんが
また私の肩を掴もうとしてきたから…
 
 
♡)臣くんじゃなきゃやだってば!!!!
 
 
私は思わずそう口走ってしまった。
 
 
蒼)オミくん…?
♡)…っ
 
 
どうしよう、名前出しちゃった。
 
 
蒼)彼氏の名前ですか?
♡)…っ
蒼)オミくん…ねぇ…、
  三代目の登坂みたいですね。
 
 
呼び捨てにするなーーー!!!
 
 
蒼)あーあ、怒っちゃった。
  怒った顔も可愛いって
  言いませんでしたっけ?w
♡)嫌いっ!
蒼)あはははw
♡)仕事中にこんなことしないで!
  迷惑だよ!!
蒼)すいませんでしたーーw
 
 
もうほんとにやだ!!
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
臣)あ、小笠原さん!
小)どーもどーもw
H)別件で来て頂いてたんだよ。
臣)そうなんですね、お疲れさまです。
 
 
事務所に行くと
HIROさんと小笠原さんが
ちょうど一緒にいた。
 
 
小)どうかな、例の件は
  前向きに考えてくれてるかなw
臣)ええと…w
 
 
『雪の華』の映画は断ったけど
NOの返事は受け取ってもらえなくて
保留にされてるんだよなぁ…w
 
 
小)実はさ、ヒロイン役も
  めちゃくちゃ良い子を見つけたんだよ!
臣)え?
小)登坂くんにビビッと来たくらい、
  何かが走ったね!
  しかもね、俺だけじゃないよ。
  スタッフもみんな、絶賛してた!!
臣)へぇ…
小)もうめちゃくちゃ可愛くてね、
  存在感がすごいんだよ!
  透明感もあって、イメージにぴったり!
臣)へぇ…
 
 
新人とかなのかな?
 
 
小)今声かけてみてるから楽しみにしてて!
臣)いや、ええと…w
 
 
俺はやるつもりないんだけど…
 
 
小)あの子なら…
  登坂くんもほんとに好きに
  なっちゃうんじゃないかなぁ〜〜〜
  はははははw
臣)はははは…
 
 
それは絶対ないです。
俺ほんと♡しか目に入らないんで。
 
この間のキャリー事件でも
それを改めて痛感したし…w
 
 
小)じゃあその件はまた改めて!
  それじゃ!
臣)お疲れさまです!
 
 
HIROさんと一緒に
小笠原さんを見送ると、
HIROさんが急に表情を変えて俺を見た。
 
 
H)ちょうど良かった。
  来てもらおうと思ってたんだけど…
臣)え、俺ですか?
H)うん。
臣)なんですか?
H)ジャニーズ、やっぱりNGだって。
臣)え、らいおんハートですか?
H)うん。部長が掛け合ってくれたんだけど
  OK出なかったみたい。
臣)…っ
H)まだ時間はあるから間に合うし…
  不本意だとは思うけど、録り直せる?
  登坂のソロ。
臣)……。
 
 
マジか…。
 
なんとかOK出ないかなって思ってたけど…
やっぱりダメだったんだ。
 
 
H)ちょっと話し合ってみて。
臣)……はい、わかりました。
 
 
…って言っても…
どうすんだよ…。
 
また曲選びからか…。
 
 
臣)はぁぁ……。
 
 
なんかついてねぇなぁ、ほんと。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
M)先輩やっぱり可愛いぃぃ〜〜♡
  現役JKでいけるくらい
  セーラー服似合ってますよぉ♡
♡)私そんな若くないもんっ!大人だもんっ!
K)若く見られてなぜ怒るw
♡)大人だもん!大人だもん!
K)わかったからw
 
 
新年会の会場にたどり着いて、
私たちは出し物の準備で
控え室で着替え終わったところです。
 
 
海)この格好で踊るんですよね…
  なんか恥ずかしい…///
先)大丈夫!Tくんメロメロなはずだから!w
先)脱がさないでーって言っても
  脱がされちゃうから♡
K)ぶははは!w
海)////
 
 
スカートの裾を握って
もじもじしてる海璃ちゃんこそ
本当に女子高生みたいで可愛い。
 
これはTくんもきっと喜ぶはず…!♡
 
 
M)じゃあみんなで一旦
  写真撮りましょうよーー♡
先)いいね撮ろ撮ろーー!
 
 
6人で撮ったセーラー服の写真を
すぐに臣くんに送ってみたら、返事が来た。
 
 
『今度は補導されないように😎笑』
 
 
♡)あ、ひどーいw
 
 
前にAKBをやった時は
衣装のまま帰ろうとしたら
おまわりさんに捕まったんだよね。
 
今日はちゃんと着替えて帰るもーん!
 
 
それから会場に戻って、
お酒を飲んだりお料理を食べたりして。
 
男性陣の「昭和のアイドルメドレー男版」
が終わったら、いよいよ私たちの番。
 
緊張してガッチガチの海璃ちゃんを
みんなでハグしてステージに向かった。
 
 
『それでは次はお待ちかね!
 昭和のアイドルメドレー女版です!!』
 
 
司会のアナウンスが流れて、
他の部署の女の子たちが
キャンディーズや百恵ちゃんを
次々に披露して…
 
おニャン子のイントロが流れると
私達は入れ替わるようにステージに上がった。
 
 
男)うぉぉぉぉ!!///
男)可愛い!可愛い!やべぇぇ!!///
 
 
歓声がすごいから
海璃ちゃん大丈夫かな?って
ちらっと横目で見たけど、頑張って歌ってる!
 
 
1番を歌い終えて、4人が捌けたら
私とKちゃんはセーラー服のマジックテープを
ビリッと外して、
ピンク・レディーの衣装に早替えした。
 
 
男)うおおおおおおお!!///
男)すげぇ!!すげぇ!!///
 
 
♡K)〜♪ペッパー警部 邪魔をしないで
  ペッパー警部 私たちこれからいいところ♪〜
 
 
男の人たちの声が大きくて
音が聞こえなくて少し歌いにくかったけど、
なんとか無事にステージを終えて。
 
メドレーが最後まで終わると、
私たちは一気に囲まれて写真撮影を頼まれた。
 
 
男)写真撮って!お願い!♡♡
男)セーラー服もっかい着て!♡♡
男)俺はピンク・レディーのままがいい!
  すっげぇエロい♡♡
男)マジで可愛いよ二人とも〜〜///
 
 
T)撮影禁止!!!!
 
 
♡)え…?
 
 
Tくんの声が聞こえて振り向くと…
 
 
T)海璃はダメ!!
  絶対ダメ!!
 
 
撮影を頼まれてる海璃ちゃんを
むぎゅーっと抱きしめてるTくんがいた。
 
 
男)なんでだよ!写真くらいいいじゃん!
男)そうだよ!出し物の後の
  恒例行事みたいなもんだろ!
男)ツーショット撮らせろよ!
T)ダメ!!!
  ♡たちと撮ればいいだろ!
  海璃はダメ!!!
男)ケチ!!
男)ちっせー男だな!!
T)なんとでも言え。
  海璃は俺の!!!
 
 
必死に海璃ちゃんを守ってるTくんを見て
私とKちゃんは思わず笑っちゃった。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
臣)はぁぁぁ……。
 
 
打ち合わせが終わって、
みんな出て行って。
 
俺はそのままスタジオで一人、
ソファーに横になった。
 
あーあ、なんか疲れたなぁ…。
 
 
こんな時は♡の顔が見たい。
♡の声が聞きたい。
 
 
目を閉じてそんなことを考えてると、
ふと、頬に感じた手の感触に
俺は驚いて飛び起きた。
 
 
臣)たち…ばな…っ
 
 
またお前かよ!!
 
いつの間に入ってきたんだ。
気付かなかった。
 
つーか勝手に触るなっつーの!!
なんなんだよ!!
 
 
橘)お疲れさまです…///
臣)……。
橘)お仕事終わったんですよね?
  お送りします///
臣)……。
 
 
こいつと二人になんのすっげぇやだ…。
 
 
橘)あの、マッサージとか…
  しましょうか?
臣)は?
橘)すごくお疲れの様子なので…
臣)いらない。
橘)でも…、
臣)いいって。
 
 
しつけーな。
 
 
俺はそのままソファーの背もたれに
頭を乗せた。
 
 
橘)何か…私に出来ること、
  ないですか…?
臣)…っ
 
 
こいつは何をちゃっかり
隣に座ってきてんだよ。
どこまでも図々しい奴だな…!!
 
 
橘)なんでもしてあげたいんです…
  登坂さんのためなら…///
 
 
そんな目をウルウルさせて言われても…
全然可愛くもないし
うざいだけなんですけど…。
 
 
臣)普通に仕事してくれるだけでいい。
  それ以上何も望んでないから。
 
 
俺は橘と距離を開けて
ソファーの端に移動した。
 
 
橘)でも…なんでも…したいんです///
臣)!!!
 
 
折角離れたのに距離を詰めてきて
俺の太もも触ってるんですけどー!!
 
 
臣)触んな!
橘)…っ
臣)お前さ、俺にベタベタしすぎ!
橘)…っ
臣)こーゆーことされんの不愉快だから。
  今後一切やめて、ほんとに。
橘)不愉快…?
臣)そう!
橘)どうして…ですか…?
臣)はぁ!?
 
 
どうしてもクソもあるか!!
 
 
臣)♡以外の女には触られたくないし
  触りたいとも思わねぇんだよ。
橘)そんなに…
  ♡さんが好きですか…?
臣)好き。死ぬほど好き。
橘)…っ
臣)何回言ったらわかんの?
  俺あいつ以外の女、
  女として視界に入ってないから。
橘)…っ
 
 
もううんざりして、
俺はそのまま橘を残して
スタジオを後にした。
 
 
S)お、臣ー。お疲れー。終わったの?
臣)あ!Sさん!いたんじゃん!!
S)ん?
 
 
Sさんの顔を見たら一気にほっとした。
 
 
臣)なんで俺送るの橘なの?
  絶対やだ!タクシーで帰る!
S)何を子供みたいなことをw
臣)ほんとに!本気でやだ!!
S)わーかったわーかったw
  今帰るなら俺が乗せてくから。
臣)良かったぁぁぁぁ……
 
 
もうお願いだから早く橘を
飛ばしてください。
 
 
S)まっすぐ家でいいのー?
臣)うん。……あ、ちょっと待って!
 
 
車に乗り込んで、携帯を見て。
ふと♡のことが心配になった。
 
たぶんそろそろ終わる頃だろうし…
 
 
臣)♡迎えに行ってもいい?
  そんな遠くないから。〇〇ホテル。
S)うん、いいよー。了解。
 
 
『迎えに行くから待ってろ。
 補導されたら困るから😜』
 
 
LINEを送ったらすぐに返事が来た。
 
 
『補導されないもん!大人だもん!😤
 でも迎えに来てくれるの嬉しい😊
 ありがとう💗待ってるね💗』
 
 
S)ホテルってことは
  またなんか会社のイベントー?
臣)そうそう。今日は新年会だってさ。
S)あ、昨日言ってたやつか!
  おニャン子とピンク・レディーだっけ?
臣)そうそう、それそれw
S)ほんと飲み会とかそーゆーの
  多い会社だよねー、♡ちゃんとこw
臣)ねw
 
 
安西先生がお祭り好きだからだろうなーw
そういえば♡ちゃん元気にしてるかなー。
 
まだ俺のこと応援してくれてんのかな。
子供だし移り気多くて
もう忘れられてるかもなーw
 
 
S)着いたよー。
  あ、走ってきたの♡ちゃんじゃない?
臣)あ、ほんとだ。
  走んなくていいのに。転ぶんだから。
S)なんだ…セーラー服じゃないのか…。
臣)そーゆー危ないおじさんがいるから
  迎えに来たんだよ。
S)誰が危ないおじさんだよ!w
  いいもん。俺はあとで動画で見るもんね。
臣)ははははw
 
 
また今回もMちゃんが手際よく編集して
YouTubeに載せるんだろうなー。
 
 
♡)臣くん、お待たせっ♡
臣)走んなくていいのに。
 
 
息を切らせて乗り込んできた♡は
ほっぺが少し冷たくて。
 
なでなでしてると、
誰かがコンコン、と
車の窓ガラスを叩いた音がした。
 
 
♡)えっ…、蒼くんだ…。
臣)え?
 
 
ソウくん?誰??
 
 
♡)あ、私の手袋持ってる!
臣)ああ、忘れもん?
♡)気付かなかったー!
 
 
♡はもう一度ドアを開けて外に降りて…
俺は見られないように顔を隠した。
ほんの少し、窓を開けて。
 
 
蒼)忘れ物ですよ、♡さん。
♡)ごめんね、ありがとう!
  どこにあったの?
  バッグに入れてたはずなのになぁ。
蒼)ソファーの上にありましたよ。
♡)そっか、わざわざごめんね、ありがとう。
蒼)……。
♡)……。
 
 
二人が会話してるのをこっそり見てたら…
向こうからはこっちが見えないはずなのに
男が俺を見た気がした。
 
 
蒼)……。
♡)……???
 
 
その瞬間、
 
 
♡)やっ!何!?
 
 
男がいきなり♡を抱きしめて…
 
 
♡)やだ!離して!離してってば!!!
 
 
俺はすぐに車を飛び降りた。
 
 
臣)離せ!!!
蒼)…っ
 
 
男を引き剥がして突き飛ばして
♡を抱き寄せたら…
 
男は笑いながら、俺を見た。
 
 
臣)何してんだてめぇ…っ
蒼)ふふ、やっぱり…w
臣)は?
蒼)やっぱり、登坂広臣だったw
♡)!!!
 
 
その言葉に♡はビクッと反応して
泣きそうな顔で俺を見た。
 
 
蒼)まさかとは思ったけど…
  ほんとに付き合ってたんですねぇ、
  三代目とw
♡)…っ
 
 
こいつ…
もしかして俺を確認するために
わざと♡を抱きしめた…?
 
 
……って、あれ…?
 
 
臣)お前…、、
 
 
この顔には見覚えがある。
 
 
臣)お前、前にも…っ
♡)あ、違うの!それは紅くんで…っ
  これは双子の蒼くん!
臣)…っ
 
 
双子…?
兄弟揃ってちょっかいかけてんのかよ。
ふざけんな。
 
 
蒼)どうも初めまして♡
臣)……。
蒼)怖いなぁ〜〜w
  そんな顔で睨まないでくださいよー。
  僕、三代目好きなんですよ?
臣)は…?
蒼)カラオケでもよく歌うし。
  紅が今市さん歌うんで
  僕はいつも登坂さんのとこ歌ってますw
臣)んなこと聞いてねぇんだよ。
蒼)三代目歌うと女の子たち喜ぶんでw
臣)お前ナメてんの?
蒼)…っ
 
 
俺が胸ぐらを掴むと、
生意気な口がやっと閉じた。
 
 
臣)♡に触んな。二度と。
  なんかしたらぶっ殺す。
  わかったか。
蒼)それは困ります、僕♡さんが好きなんで。
臣)は…?
蒼)それは♡さんにももう伝えてあります。
臣)だから何。
蒼)え…?
臣)それはお前の勝手な気持ちだろーが。
  ♡は俺の女だ。
  ナメた真似してんじゃねぇぞ。
蒼)…っ
臣)♡に二度と、触るな。
  約束出来ねぇんなら今ぶっ殺す。
蒼)……ふーん…、
  登坂さんの方もガチなんですね。
  ここまでとは思わなかったなぁ。
臣)は…?
蒼)わかりましたよ、
  殺されたくないですから僕も。
 
 
降参というように両手を上げたから
俺はやっと掴んでた胸元を離してやった。
 
 
蒼)ほんとに殺されそうだし…怖すぎ…w
  そんなに好きなんですか?♡さんが。
臣)……。
蒼)わかりましたって!
  その顔で睨むのやめてくださいよ!
臣)……。
蒼)それじゃ、失礼します。
  ♡さん、また。
♡)…っ
 
 
男は♡に頭を下げて
そのままホテルの中へ戻っていった。
 
 
♡)臣くん、ごめんなさい…っ
 
 
車に戻ると♡はまだ泣きそうな顔をしてて。
 
 
臣)何が。もう大丈夫だから。
 
 
頭を撫でてやっても、
ぶんぶんと首を振ってる。
 
 
♡)私のせいだもん…っ!
  私が朝、臣くんの名前出しちゃったから…
臣)え?
♡)臣くんじゃなきゃやだって
  思わず言っちゃったの。
  それで…彼氏の名前が臣くんってバレて…
臣)ちょっと待った。
  何そのやりとり。
♡)え…?
臣)臣くんじゃなきゃやだって
  お前がそんなこと言うシチュエーションに
  なったってこと?何されたの?
♡)!!!
 
 
なんだよその「しまった」みたいな顔は。
 
 
臣)何されたの。
♡)えっと…
臣)何。
♡)特に…何も…、…閉じ込められただけ。
臣)は?どこに!!
♡)えっと…、こうやって…腕で…
臣)はぁ!??
 
 
あんの野郎ォォォ…!怒怒怒
 
 
♡)最後はちゃんと頭突きしたから
  私の勝ちだよ!!
臣)よし、よくやった!!
 
 
そうだった。
♡は逞しいんだった。
 
じゃああいつら双子揃って
♡に頭突きされたのかよ。
 
 
臣)でも怖かったな、大丈夫だったか?
♡)怖くない!私、怒ってる!!
臣)ええっ!!
 
 
だって昨日は怖がってたのに…
 
 
♡)みんなして…しつこいんだもん!!
  私は臣くんが好きって言ってるのに!!
  もう誰も私のこと好きにならないで!!
  やなのっ!しつこいのっ!!
臣)おおお…っ
 
 
限度を超えて、もう全部が怒りになったんか。
 
 
臣)落ち着け落ち着け。
♡)がるるる…っ
S)♡ちゃんほど可愛いと
  凡人じゃ想像できないような
  悩みを抱えるわけだねぇ…大変だねぇ…。
臣)こいつモテすぎだから…。
S)だよねぇ…。
  そして毎度臣は怖いし。
臣)え?
S)殺す殺すって…
  今日もハラハラしながら
  俺は見守ってたよ。
臣)……聞いてたんかい。
S)当たり前じゃん!
  臣が何しでかすかわかんないんだから!
 
 
……まぁ確かに。
 
 
S)♡ちゃんのこととなると
  お前はどっか吹っ飛ぶからねぇ、いつも。
臣)うん。
S)素直に認めた!w
 
 
だってほんとに吹っ飛ぶもん。
 
 
S)じゃあ帰るよー。
臣)うん、お願い。
 
 
帰り道、俺はずっと♡の手を握ってたけど
♡の顔は険しくて、
怒ってるような、どこか少し不安そうな。
 
 
臣)もしあいつが今後何か言ってきたり
  脅してきたりしても
  すぐ俺に言えばいいから。大丈夫だから。
♡)うん…。
 
 
元気ないじゃん。
 
 
臣)大丈夫だって。
♡)うん…。
 
 
あーあ、もう…
 
♡をこんな顔にしやがって…
あいつやっぱり一発ぶん殴れば良かった。
 
 
……コショコショコショ。
 
 
♡)わっ、何??
 
 
コショコショコショ。
 
 
♡)やだ、くすぐったいよ!あはははっw
臣)……やっと笑ったw
♡)え…?
臣)原始的なことしてごめんw
♡)…っ
 
 
だってお前にはやっぱり
笑ってて欲しいんだもん。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
臣くんの顔を見て、ハッとした。
 
すごく心配かけちゃった、って。
 
 
♡)ごめんね…?
臣)ん?何が?
♡)いっぱい…色々、ごめんね…?
臣)何がだよw
  なんもごめんねじゃないから。
♡)…っ
 
 
臣くんはいつもこうして
優しくあたためてくれる。包んでくれる。
 
 
臣)あ、ごめん、コンビニ寄って。
  飲みもん買いたい。
S)りょーかい。
臣)寒いから待ってて。
♡)あ、うん。
 
 
臣くんがサッと降りていくと、
Sさんが少し困ったようにこっちを見た。
 
 
S)臣さー、今日凹んでたから…
  帰ったら癒してあげてー。
  ♡ちゃんの癒しパワーで。
♡)え?何かあったんですか?
S)うーん、まぁ…色々。
♡)なんですか!?
S)……らいおんハート、
  結局OK出なくてさ。
♡)えっ…
 
 
やっぱりダメだったの…?
 
 
S)代わりの曲選びで今日はずっと
  スタジオに缶詰めだったんだよ、あいつ。
♡)…っ
 
 
そうだったんだ…。
 
それなのにわざわざ私のこと
迎えに来てくれて…
 
私ってば無駄な心配かけちゃって…
本当、嫌になる。
 
 
S)まぁ、しゃーないよ。
  臣なら他にも
  いい曲いっぱいあるだろうし。
♡)……。
 
 
でも、せっかく選んで決めて、
レコーディングしたのに。
 
臣くんにとって大切な曲なのに。
 
 
S)♡ちゃんがぎゅーでもちゅーでも
  してあげれば…
  きっとすぐ元気になるからw
 
臣)お待たせー。
 
S)わっ
臣)なんだよ。
S)臣の悪口言ってたら
  戻ってくんの早いから。
臣)はぁ?何言いやがったこの野郎!w
S)あはははw
 
 
Sさんは私に合図するようにウインクをして
また前を向いた。
 
 
♡)……。
 
 
なんとか…ならないのかな。
すごく悔しい。
 
一番悔しいのは臣くんだろうけど…
 
 
ピロリロリロ♪ピロリロリロ♪
 
 
♡)あ、ごめん、電話だ!
臣)おう、出ていいよ。
♡)Mちゃんだ。ちょっと出るね。
臣)うん。
 
 
ピッ
 
♡『もしもし?』
M『あ、先輩ですかぁー?
  ちょっと急ぎで確認したいことが
  3点ありまして。』
♡『3点??
  うんいいよ、どうしたの?』
M『実は…嵐のMVの件なんですけど…』
 
 
嵐…!!
むむむむ…!!
 
 
M『報酬を倍出すから
  引き受けて欲しいとのことです。』
♡『倍!?』
M『はい。
  よっぽど先輩がいいみたいですよー。』
♡『…っ』
 
 
お金で解決しようとして〜〜!!
断った理由はそんなんじゃないもん!!
 
 
♡『絶対やらない!断る!』
M『ええっ!2倍でも?!』
♡『やらないっ!』
M『……わかりました。断っておきます。
  では2点目と3点目ですが…
  キスマイブサイクの番組出演依頼と
  NEWSの手越くんとの雑誌対談依頼が
  来てまして…』
♡『やらないっ!!』
M『どっちもジャニーズなんで
  まとめて確認しておこうと思ったんですが
  やっぱり、全部断るんですか?』
♡『そうだよ!ジャニーズは嫌い!
  全部断る!!』
M『勿体無いですよーーー。
  考え直しません?』
♡『…っ』
M『キスマイブサイクはTVの仕事だから
  いつも通り断ってもいいですけど…
  雑誌の対談は知名度上がるし…
  やっぱり嵐は、勿体無すぎます!』
♡『やだ…!!やらない!!』
M『……』
♡『……』
M『わかりました。』
 
 
Mちゃん…
怒っちゃったかな…?
 
 
M『あ、新年会の動画、
  明日までには上げるんで
  待っててくださいねー♡
  って登坂さんに言っといてくださいw』
♡『あっ、…ありがとう。』
M『登坂さんがどっちの衣装に興奮したか
  あとで教えてください♡』
♡『なんの話!///』
M『あははは♡
  それじゃ、おやすみなさーい♡』
♡『うん。お疲れさまです。』
 
ピッ。
 
 
電話を切ったら、
臣くんがじっと私の顔を見てた。
 
 
臣)ジャニーズからのオファー…
  他にも来たの?
♡)あ、うん…。
臣)何?
♡)えっと…、
  キスマイブサイクの番組出演と…
  手越くん?との雑誌対談だって。
臣)……。
♡)よくわかんないけど。
 
 
番組も見たことないし
雑誌の対談だってどうして私なの。
 
 
S)雑誌の対談とか…
  ピンポイントすぎるねーーw
♡)え?
S)絶対狙われてるでしょ、♡ちゃんw
♡)えっ!!
S)何かで共演するわけでもないのに
  指名してくるとか…
  強気だなぁ、向こうはw
臣)俺も思った。
♡)…っ
S)多分一回断ったくらいじゃ
  グイグイ来ると思うよーw
臣)あーあ、もう!
♡)え?
 
 
臣くんが私をぎゅーっと抱きしめてきた。
 
 
臣)俺以外の男から
  見えなくなればいいのに。
  お前の姿。
♡)…っ
 
 
そんなこと言って
ぎゅーって閉じ込めてくる臣くんが
なんだか可愛くて…
 
嬉しくて、きゅんとする。
 
 
♡)見えなくなりたい。
臣)ははっw
♡)うう…っ
臣)…っ
♡)ううう…っ
臣)////
 
 
臣くんにグイグイしてスリスリしたら
臣くんはずっと優しく抱きしめてくれてた。
 
 
S)車内でイチャつくのやめてくださいーw
臣)だってさー、俺じゃないよ?
  ♡から抱きついてくるんだもぉーんw
S)何そのデレデレニヤニヤの
  嬉しそうな感じ!
臣)仕方ないじゃーん?w
S)はいはい!w
 
 
ぎゅぅぅぅ……。
 
 
 
臣くん、大好き。
 
 
お願いだから…誰も邪魔しないで。
 
 
 
 
 
 
 
ーendー

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