(36)男の欲望

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お店を出て
また車に乗って…
 
家まで送ってもらう途中…
私は何を話していいのかわからなくて
ずっと黙ってた。
 
 
J)何考えてるの?
♡)えっ…、えっと…
J)……
♡)Jさんのことです。
J)ははっ、何それ…嬉しいなw
♡)だって…!
  あんなこと…言われたら…
 
 
考えちゃうもん…
頭から…離れていかない…
 
 
だって…
結婚って……
 
 
J)少しでも…
  俺のこと考えてくれるとか
  それだけで嬉しいよ。
♡)え…っ
 
 
あ…、また…
すごく優しい顔をして笑った…。
 
 
♡)……///
J)ほんと好きだなぁw
♡)…あ、あのっ//
J)なに?
♡)そんな…っ
  好き好きって言わないでください///
J)なんで?
♡)……///
J)だって好きだよ?
♡)やだぁっ///
 
 
なんだか恥ずかしくなって顔を隠すと、
Jさんが隣から覗き込んできた。
 
 
J)可愛いw
  いじめたくなるw
♡)えっ…
J)なんて…w
♡)…っ
 
 
Jさんはクスッと笑って
また前を向いて車を走らせる。
 
 
♡)……
 
 
いつもは…
誰かに好きって言われても…
私のどこが好きなんだろうって
そう思う告白ばっかりだったけど…
 
Jさんは…
いっぱい話してくれた。
 
 
私のこと…見ててくれたんだ。
 
 
♡)心が…キレイになるって…
J)んー?
♡)どういう意味…ですか?
J)どういうって…
♡)……
J)♡ちゃんの心がキレイすぎるから
  一緒にいたら…
  俺の真っ黒い心まで
  浄化されるってことw
♡)え、え、真っ黒…??
  …なんですか?
J)うん。
  俺なんて真っ黒だよー?w
  自分でも嫌になるくらい。
♡)…っ
 
 
そんなの…
私は…思ったことないもん…。
 
 
♡)Jさんは…
  人の不幸を願ったり
  誰かを傷つけようとしたり
  するんですか?
J)え??
  ……しないけど…
♡)じゃあ…真っ黒なんかじゃないです!
J)え…?
♡)Jさんは…仕事も一生懸命だし
J)いや、出来ちゃうだけだよ?
♡)いつも困ってる人助けてあげるし
J)いや、♡ちゃんだけだよ?
♡)いつもニコニコ笑ってくれるし
J)世渡り上手いからね?
♡)だから、Jさんは
  真っ黒なんかじゃないもんっ!
J)……
♡)絶対!
 
 
私がそう断言すると、
 
 
J)ぷっ…w
 
 
Jさんはくすくす笑って…
 
 
J)何それw
♡)え?
J)なんでそんな力入るの?w
♡)だっ…て…
 
 
Jさんが笑ってる…。
 
なんか…
恥ずかしくなってきちゃった…//
 
 
J)そういうとこなんだよなぁ…
♡)え?
J)俺が好きなの。
♡)……っ
J)ほんとさ…、
 
 
また真っ直ぐ見つめられて…
 
 
J)着いたよ。
♡)あ…っ
 
 
気付いたら車はもう
私のマンションの前だった。
 
 
ピロロロロ♩ピロロロロ♩
 
 
J)あ…。
 
 
Jさんは携帯が鳴って…
 
Jさんは着信画面を見て、
そのままポケットにしまった。
 
 
♡)さっきの…子ですか?
J)うん。
♡)……
J)気になる?
♡)えっ…
 
 
えっと…
 
 
♡)気になるっていうか…
  すごいなって思って。
J)え?
♡)あんな風になれるほど
  私…誰かのこと
  好きになったことないなって…
J)……
 
 
すごく必死だった、あの女の子。
 
 
♡)あの人は…本当に
  Jさんのこと好きなんだなって…
  びっくりして…
J)冷静な分析をどーもw
♡)えっ?
J)あの子がどうしてあんなに
  俺にハマってるか、知りたい?
♡)え?
J)教えてあげようか?
♡)え??
J)なんなら…試してみる?
♡)え???
J)♡ちゃんもハマってくれるかも
  しれないし…
♡)え?え?え?
 
 
意味が…わからない…
 
 
…ガタン。
 
 
♡)きゃあっ!
 
 
気付くとシートが倒されていて…
 
目の前にはすぐ、
Jさんの顔があった。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
磨りガラスの向こうから
シャワーの音が聞こえてくる。
 
 
最近…ぶっちゃけ俺も
全然女とヤってねぇよな。
ヤリてぇ~~~
 
 
思い出すのは、海で触った♡の肌。
 
 
すげぇ柔らかかったよな…
もっと…触りたかった…
 
 
ああ~~抱きたい…
 
あいつ…どんな風に乱れんだろ…
 
 
酔った頭でそんなことばかりを
ぼんやり考えて。
 
 
臣)……
 
 
つーか…
ここホテル…だよな?
 
 
最後にヤったのいつだっけ…
♡に会う少し前、か…。
 
 
あいつと会ってから
なんだかんだで誰ともヤってねぇから
正直たまってんだよな…。
 
 
俺がここで適当な女とヤったって
あいつにバレるわけじゃねーし…
 
つーか…
こんなSEX、別に何の意味もねーし…
 
ヤったらとっとと帰ろ。
 
 
 
…ガチャッ。
 
 
女)あ…登坂くん寝てる~
臣)起きてるし。
女)ほんと?良かったw
臣)つーかヤんだろ?脱げよ、それ。
女)え?
 
 
俺は女の手を掴んで、ベッドに押し倒した。
 
 
女)ちょっと…//
臣)早く脱げよ。
女)今日は脱がせてくれないの…?
臣)は?
女)前は脱がせてくれたのに…
臣)は??
  お前とヤったことあったっけ?
女)ひどーい!
  覚えてないのぉ?
臣)いちいち顔覚えてないし。
女)最低…w
  でも…いいよ?
  登坂くん…上手なんだもん…
 
 
派手なネイルの手が、俺に伸びてくる。
 
 
あ…
 
あいつの匂いが…消えてる…
 
 
女)登坂くん?…あっ…//
 
 
俺が触ると女がエロい声をあげた。
 
 
女)や…んっ//
 
 
ヤバ…
久々だから興奮する…
 
 
女)あっ…//
臣)……
女)やぁ…、ん…っ///
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
♡)や、や、や…っ
 
 
な、な、何これっ!!
何が起きてるの??!
 
Jさんの顔が近付いてきて…
 
 
♡)やっ!!
 
 
私は必死に腕でガードして
ギュッと目を瞑った。
 
 
♡)……っ
J)……
♡)……
J)……
♡)…え……
 
 
そっと目を開けると…
 
Jさんは運転席に体勢を戻してて…
 
 
♡)…びっ…くり…した…
 
 
私は慌ててシートを元に戻した。
 
 
J)何されると思ったの?w
♡)え…っ
J)…
♡)キ、キス……
 
 
じゃ…ないの…?
 
 
J)それだけ?
♡)え??
J)……
♡)え??
 
 
それだけ…って…
どういう意味??
 
 
J)そんな警戒しないでよw
  好きな子に無理矢理
  そんなことしないよ。
♡)…っ
J)♡ちゃんが…やたら冷静だから…
  少しも妬いたりしてくれないから
  ちょっと意地悪したくなっただけ。
♡)え…っ
J)少しは男として意識してくれた?
♡)え…、え…っと…
  び、びっくりしました…
J)はははw
♡)冗談ですよね?
J)まぁキスはいつでもしたいけど。
♡)えっ!!!
J)キスだけでも…試してみる?
♡)は、はい????
 
 
Jさんの手が、私に伸びてきて…
 
 
♡)やっ、やっ、
  キスは好きな人とするものですっ!///
J)うん、だからしようとしてる。
♡)え?え?…あっ…
 
 
両手を掴まれた。
 
 
♡)やっ、離してくださいっ///
J)ちゃんと気持ちいいキス、
  したこと…ある?
♡)え?え?ちょ…っ、やっ///
J)大人しくして…
♡)やっ!!!!
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
俺の動きに反応して、女が声をあげる。
 
 
女)やん、あぁん…///
 
 
つーか…
聞きたいのはこの声じゃない。
 
 
臣)声出さないで。
女)え??
臣)……
女)何それ…
  その方が興奮するの?くすくすw
  別にいいけどw
臣)……
 
 
女の身体に触りながら…
頭に浮かぶのは、♡の顔。
 
 
ああ…あいつを抱きたい…
 
 
女)んぁ…ぁっ///
 
 
♡の顔と一緒に…
 
♡の言葉が次々と頭をよぎる。
 
 
「遊んでる?」

「チャラいですか?」
 
 
俺…
 
なんて答えたっけ…
 
 
 
「チャラい人やだもん!」
 
「好きじゃない人に
 何かしようとしたりとか…」
 
 
好きなのは♡だけ…
 
こんなのは…気持ちとは関係ない。
 
別に浮気とかでもねーし…
 
 
 
「付き合ってない時なら
 何してもいいみたいな考え方、私嫌い。」
 
「胸を張れる自分でいたいから
 その人に対して恥ずかしいことは
 私はいつだってしたくない。」
 
 
男と女はちげーんだよ…
 
別にこんな女…
なんとも思ってない…
 
 
ただ…性欲を吐き出したい、
それだけ…。
 
 
女)ん…、ねぇ…
臣)……
女)ねぇ…っ//
臣)声出すなっつったろ。
女)だって…
臣)何。
女)もっと…優しくして…?//
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
J)って、ここでキスしたら
  俺のこと大っ嫌いになるでしょ?w
♡)え…っ
 
 
Jさんが笑いながら手を離してくれた。
 
 
J)ちょっとはドキドキした?
♡)~~~~////
  もう!Jさんなんか嫌いっ!!!
 
 
ほんとに…びっくりしたのに…
 
 
J)怒んないでよw
♡)……
J)怒ってるのも可愛いけどw
♡)……
J)ほんとに嫌いになった?w
♡)……
J)どうせ嫌われるんなら
  キスしちゃうけど。
♡)えっ!!!!!
 
 
その言葉にびっくりして
Jさんの方を見ると
 
いつものイタズラな顔で笑ってる。
 
 
J)くくくくww
♡)もう!!
  ほんとにいい加減にして下さいっ!///
J)わかったわかった、ごめんw
♡)もう~~~~!!
J)ま、今日は…さ、今日くらいは…
  俺のことで頭いっぱいにしてよw
♡)え…っ
J)ね?
 
 
そう言ってJさんは
また優しく私の頭を撫でた。
 
 
♡)触るのっ、禁止です!!
J)え…いつから?
♡)今から!!
J)えーーーー
♡)もうっ、帰ります!!
 
 
私は急いで車を降りた。
 
 
♡)送ってくれて…
  ありがとうございました!!
  ご飯も…ごちそうさまでした…。
J)うん、またデートしてねw
♡)デートじゃないですっ!!
  しませんっ!!
J)はいはいw
♡)ほんとに…
J)おやすみ♡
♡)…っ
 
 
そう言ってまた優しく笑うと
Jさんはそのまま帰っていった…。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
♡を頭に浮かべながら…
必死にあいつへの言い訳を
無意識に探してる自分に気付く…。
 
 
女)あ…っ、あん///
 
 
女が俺の首にしがみついてきて…
 
俺がその手を離そうとすると、
そのまま唇を近付けてきた。
 
 
その瞬間…
 
 
「臣くんのそういうところ…
 大好きだよ♡♡」
 
 
♡の笑顔が頭をよぎって…
 
 
臣)ああ…っ、くそっ
 
 
俺は気付いたら
女を押しのけてた。
 
 
女)ちょ、ひどーい!何よ急に!
臣)…っ
女)キスしてよぉ!
臣)…わり、無理だわ。
女)はぁ??
 
 
俺は女から離れて、横に寝転がった。
 
 
女)え、急にどうしたの?
臣)やめた。
女)え??なんで??
臣)……
女)抱いてくれないの?
臣)……
女)ここまでしといて…?
臣)……
女)じゃあ…いいよ♡
  その気にさせてあげる♡
臣)は?
 
 
女はいきなりカチャカチャと
俺のベルトに手をかけてきた。
 
 
臣)ちょ、やめろって!
女)なんでぇ?
臣)離せ。
女)やだっ…だって…
  登坂くんとシたいもん///
臣)わり、帰るわ。
女)え??ちょっと!!
臣)金置いとくから。じゃーな。
女)え…っ
 
 
バタン。
 
 
臣)はぁ…っ
 
 
俺はホテルを出て
すぐにタクシーをつかまえて、家に帰った。
 
 
なんだ俺…
どうしたんだ…。
 
 
今まで…
好きな時に適当な女抱いてきたし…
 
女なんていくらでも寄ってくるから
 
彼女がいる時だって…
バレなきゃいーだろって
浮気したことだってある。
 
 
別に…
ただヤりたいだけで
こんなの何の意味もないし…
 
他の女とヤッたところで
♡とは関係ない。
 
 
♡のこと好きな気持ちにも
変わりないのに…
 
なんで…
 
無意識に…
 
 
あいつにうしろめたいことしたくない、
 
次あいつに会う時に
やましい気持ちを抱えていたくないって、
 
瞬間的にそう思った。
 
 
俺…
 
どんだけ好きなんだよ……
 
 
臣)……っ
 
 
あ~~~~~
もう!!!
 
なんだこれ!!
 
 
くそ~~~
ほんとはヤリてぇのに!!
 
信じらんねぇっ!
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
なんか…
頭がいっぱいいっぱいで…
 
家に帰って来ると、
丁度さくちゃんから電話が来た。
 
 
♡『はい…』
さ『どうした!!
  何そのテンション!!w』
♡『え…っと…
  なんか今…頭がカオスで…』
さ『どうしたの!!
  臣くんとなんかあった??』
♡『あ…違うの…えっと…』
さ『???』
 
 
臣くんじゃ…なくて…
 
 
♡『さくちゃんは、何かあったの??』
さ『あ…、あたしは大した用事じゃないの!
  それよりあんた!!』
♡『え…』
さ『話してよ。何あったの??』
♡『あ…えっと…』
 
 
私はいっぱいいっぱいになりながら
今日のことをさくちゃんに話した。
 
 
さ『何その人~~!!!』
♡『え…?』
さ『超カッコイイんだけど!!』
♡『は、はい???
  えっと、私の話、聞いてた??』
さ『聞いてた聞いてた!!
  要はプロポーズされたわけでしょ?』
♡『えっ!!あ…そっか…
  そういうことになるのかな…』
さ『結婚しようっつってんだから
  それ以外何があるよ!!w』
♡『わわわ…』
 
 
そっか…、
プロポーズだったんだ…。
 
 
さ『しかもさ~~そのキスの攻防戦、
  こなれてるっつーか、一枚うわてっつーか
  出たね、臣くん越え!!』
♡『え???』
さ『いや…臣くんの話聞いた時も
  キュンキュンだったけど
  その人の方がヤバーい♡』
♡『え…え…っ』
さ『だって♡もドキドキしたんでしょ?』
♡『ドキドキっていうか…
  よくわかんないよ!//
  Jさんのこと好きだから
  ドキドキしたわけじゃないもん!//』
さ『いや~~いいねいいね!
  面白くなってきたねw』
♡『もうさくちゃんっ!!』
 
 
他人事だと思って面白がってる…っ
 
 
さ『ごめんごめんw
  つーかこんなこと言ってたら
  怒られるな、あたしw』
♡『え??誰に??』
さ『いや…、何でもないw』
♡『…はぁ…だからね…、
  なんか今日はドッと疲れちゃった…。』
さ『お疲れさんw』
♡『聞いてくれてありがとう…』
さ『いや、ごめんw
  ろくなこと言ってないけど。』
♡『ううん…聞いてくれただけで
  ちょっと整理できたかも…』
さ『そっか。』
♡『うん。』
 
 
一人で頭の中…
ごちゃごちゃになってたから…
 
 
さ『あ、あたしの用事はさ。』
♡『うん!』
さ『そろそろ寒くなってきたから
  鍋しようぜってお誘い。』
♡『鍋ーー?したいっ!!』
さ『じゃあまたLINEするよ。』
♡『うん!…えと…ほんとにそれだけ?』
さ『うん、ごめんw』
♡『ううん!全然!ありがとう。』
さ『うん。じゃあおやすみ~♩』
♡『おやすみー♡』
 
 
ピッ。
 
 
 
鍋かぁ…
 
 
鍋…
 
 
鍋…
 
 
…プロ…ポーズ……
   
 
♡)……
 
 
「俺と結婚しない?」
 
「♡ちゃんのこと…ずっと見てたよ、俺。」
 
 
♡)…っ
 
 
「俺、YES以外聞く気ないから。
 本気だから。」
 
「ほんとに…好きだから…。」
 
 
♡)……///
 
 
はっ!!
また考えちゃってた…!!
 
 
わ、わ、やっぱり…
Jさんの言葉が頭から離れないっ…
 
やだぁっ!!
 
 
「今日くらいは俺のことで頭いっぱいにしてよ」
 
 
♡)…っ
 
 
ほんとに…
考えちゃうよぉ…
 
 
 
 
 
ーendー

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