そのまま二人でタクシーに乗ると、
♡はなんだかウトウトしてて。
♡)お腹いっぱいになったら
なんだか眠くなってきちゃった…
臣)え…っ
なんだそれ…
子供か!w
♡)んーー……
♡がパタンと置いた手が、
俺の手にぶつかると…
♡)えっ、わ!ごめんね!!
♡はその手を慌ててよけた。
臣)……
そんな勢い良くよけなくても良くね?
……って、もう寝てるし!!!
寝んの早っ!!
♡)……スー……スーー……
臣)…っ
なんなんだよこの無邪気さは…
ほんと子供か…!
運)えーと…そこの信号ですよね?
臣)あ、はい。
そこ左に曲がって
大きな公園あると思うんで
そこで一回停めてください。
運)かしこまりました。
もう家着いちゃうな…
……ゴンッ!!!
臣)え??
♡)いたぁい!!
臣)あ…、
♡は車が左折する反動で
思いきり窓に頭をぶつけた。
臣)大丈夫?
♡)うん…痛い…ぐすん。
臣)ぷっw
♡)なんで笑うのー!
臣)だって…今日、
頭ぶつけてばっかりじゃんw
♡)あ…ほんとだ…
臣)頭悪くなんぞ…w
♡)ひどーい!!
臣)あはははw
運)着きましたよー
臣)あ、ありがとうございます。
♡)わ!もう着いた!!
臣)お前寝てたからなw
♡)えっと…お金……
臣)いいよ。
♡)えっ。
臣)いりません。
♡)えっと……ありがとう…//
臣)ん。
♡)それじゃあ…
タクシーを降りた♡が
腰をかがめてニコッと笑った。
♡)今日はありがとう。
ごちそうさまでした♡
臣)うん。
♡)じゃあね♡
臣)ん。
バタン。
運)次はどちらまで?
臣)……そこ、右に曲がってください。
運)かしこまりました。
臣)……っ、
すみません!やっぱり…
運)え?
まだ、帰りたくない。
臣)ここで降ります!!
運)え???
臣)あ、お釣りいいです、すみません。
ありがとうございました!
俺は5千円札を渡して
急いでタクシーを降りた。
俺を見送ろうとしてた♡が
俺が降りたからびっくりしてる。
♡)どうしたの??
臣)えっと…
タクシーがそのままいなくなると
♡が慌てたように言った。
♡)行っちゃったよ?
臣)うん。
♡)え??
臣)んーー……
どうしよう…
もういいや。
素直に言お。
臣)まだ一緒にいたい。
♡)え?
臣)……
♡)……
きょとんとした顔してる。
「好きだからまだ一緒にいたい」って
そう言わなきゃ伝わんねぇのかな…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
♡)えっと…
どこかお店行けば良かったね?
臣くんがいきなりタクシーを降りてきたから
びっくりしちゃった。
臣くんはまだ飲み足りなかったのかな?
♡)どうしよう…
臣)別になんでもいいよ。
♡)あ…っ
臣)ん?
♡)見てー!今日満月だよー♡♡
臣)……あ、ほんとだ!
見上げた空に
ぽっかりと浮かぶ、白い満月。
♡)キレイだね…♡
臣)うん。
♡)この間は一緒に見れなかったもんね。
臣)あ…そっか。
♡)うん。
でも今日は一緒に見れたねー♡
嬉しいな…
♡)あ!じゃあ…、屋上行かない?
臣)え??
♡)うちのマンションの…
臣)え、屋上入れんの??
♡)ふふふー♡
特別に入れるんだよー♡
臣)行きたい。
♡)あ…、屋上なんかで良かった?
臣くんはお酒飲みたかったんだよね?
臣)全然いいよ。
一緒にいれんなら何でも。
♡)え…っ
そう言うと臣くんは私より先に、
マンションに入っていった。
♡)…っ
一緒にいれるなら何でも…って…
どういう意味だろ…
なんか…
臣くんがドキドキすることばっかり
言ってくる…///
深い意味はないんだろうけど…
変に意識しちゃう…///
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
臣)普通屋上って閉まってない?
なんで入れんの?
オートロックを開けて
エレベーターを待ちながら
俺がそう聞くと、♡がニヤッと笑った。
♡)ふふふ…あのね、
寅さんにお願いしたの♡
臣)寅さん?!!
♡)あ、うちの管理人さん♡
臣)え?
♡)せっかく屋上あるのに
行けないのもったいないなー
入りたいな~〜、ってお願いしたら
他の人には内緒だよって言って
暗証番号教えてくれたのー♡
臣)え、すげぇw
何その特別扱いw
♡)あ、着いた♡
エレベーターを降りて
♡が暗証番号を押すと、
屋上のドアが開いた。
♡)わ、気持ちいい風♡
臣)おお…広いなーー
♡)月もちゃんと見えるねー♡
臣)ほんとだ。
あたりを見渡すと
ビーチチェアー?みたいな二人掛けの椅子に
ブランケットがかかってる。
臣)何これ?
♡)あ、寅さん忘れていってるー!
臣)??
♡)こないだここで
寅さんと一緒に天体観測したのー♡
臣)何それ!
めっちゃ仲良しじゃんww
♡)うん!寅さん良い人なんだもん♡
え、ちょっと待て…
臣)寅さんて何歳??
♡)60歳いってないくらいだと思うー
たぶん。
臣)そうなんだ。
ほっ、一瞬焦った…
おじさんで良かった…。
臣)にしても…
なんでこんな椅子まであんの?w
♡)私がね、ゆっくり座れる椅子とかあったら
素敵なのに~って言ったら
寅さんが余ってるビーチチェアー
持って来てくれたのw
臣)あははw
寅さん、何でも言うこと
聞いてくれんじゃんw
♡)すっごくいい人なんだよー♡
これなら雨降っても大丈夫でしょ?
臣)確かになw
♡)座るー?
臣)うん。
椅子に座って背もたれに身体を預けると
椅子同士の距離が近くて、
俺の腕が♡の腕に触れた。
臣)…っ
またよけられんのかな、と思ったら
♡はそのままで…
臣)……//
くっついてる部分に意識が集中して、
変に緊張する。
♡)なんか……
臣)え?
横を向くと
♡の顔がめちゃめちゃ近くて…
臣)…っ///
思わず俺は、空を仰いだ。
♡)…この角度…、眠くなっちゃう…
臣)え???
おい!!
まさか…っ
臣)!!!
起き上がって隣を見れば、
♡はスヤスヤ…。
どんだけ寝んだよ!!
臣)おい!
♡)んーー……
臣)寝んなって。
♡)……
あーあ…ダメだ。
つーか…
こんなすぐ隣に俺いんのに
こんな無防備に寝るとか…
俺のこと男として見てんのかよ。
意識してんのって、俺だけ?
臣)……
俺が椅子にもたれながら横を向くと
幸せそうな顔をして寝てる。
その距離は30cmもなくて。
は~~~~
寝顔可愛いし…///
なんなんだよもう…
チューすんぞ…ばかやろー///
臣)はぁ…。
しばらくその寝顔を見つめてると、
また生温い風が吹いて。
自分の髪が顔にかかると、
♡がうっすら目を覚ました。
♡)んん~…
臣)起ーきーろーー
♡)……え……?
臣)あ、起きた。
♡)…私…寝ちゃってた??
臣)うん。
♡)えっ、ごめん!!
臣)……
ようやく起きた、お姫様。
♡)わ!わ!!
変な顔してなかった?//
臣)してた。
♡)えーー!!
臣)あほな顔して、口開けて寝てた。
♡)うそーー!!
嘘だけど…。
♡)恥ずかしい…///
ごめんね?
臣)別にいいけど。
♡)ダメだこの椅子~、眠くなっちゃう!
臣)天体観測の時は寝なかったの?
♡)……少しだけ…
臣)寝たんかい!w
♡)だって~~
俺以外の奴の前で
そんな無防備に寝るなよ!!
あ~~~もう……
♡)でも寅さんも気付いたら
寝ちゃってたんだよw
臣)なんだそれw
♡)あはははw
臣)つーかこれ…
調節できねーの??
♡)え?
椅子の後ろを見てみると
調節レバーがついてる。
臣)あんじゃん。
キコキコキコ。
♡)あ!普通の角度になった!!
臣)これなら眠くなんない?w
♡)うん!w
臣)ははっw
俺たちはもう一回椅子に座った。
臣)このマンションさ…
会社のマンションなんだっけ?
♡)うん!そうだよー!家賃半額なの♡
臣)おお、すげーな!
♡)えへへ♡
本当はね?
もう一つマンションあって
そっちの方が会社には近いんだけど…
臣)うん。
♡)でも、こっちの方が
隣に公園あるし近くに川もあるし
なんか自然が多いから…
こっちにしたんだー♡
臣)そうなんだ。
自然の匂いが好きなんだっけ?
♡)あ、覚えてた?
臣)うん。
♡)そう♡自然が大好きー♡
こっちのマンションで良かった。
俺んちからも近いし。
臣)♡ん家は何階なの?
♡)私の部屋は711号室だよー♡
臣)え!誕生日じゃん!!
♡)…っ、覚えててくれたの??
臣)当たり前でしょw
♡)えー!嬉しい♡
そうなの、誕生日なのー♡
臣)すごいね、敢えて?
♡)ううん、偶然!……あ…っ
臣)……あ。
少し暗くなって空を見上げると…
雲で月が翳ってる。
♡)満月…、隠れちゃった…。
臣)うん。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
臣)あ、そーだ!
♡)ん?
臣)マフィン食っていい?
♡)あ、いいよー♡
臣くんは嬉しそうに、
マフィンの袋を開けた。
臣)いただきまーす。
♡)どうぞー♡
臣)……ん。
♡)ドキドキドキ…
臣)……美味い。
♡)ふわ~~良かったぁ~~
毎回緊張する、この瞬間。
臣)すげーー
よく作れんな、こーゆーの。
♡)えへへ♡
あ、でもそんなの食べたら
喉かわいちゃうね?
臣)あ…、確かに。
♡)ごめんね?
臣)いや、全然いいけどw
ほんと美味いわ、ありがと。
♡)良かったぁ♡
美味しいって言ってもらえると
すごく嬉しいな♡
♡)今日の分は何がいーい?
臣)え??
♡)これはこの間のお礼だから…
今日ご馳走になった分…
臣)あははw
何、また作ってくれんの?w
♡)うん!!
臣)どうしよっかなーー
♡)何食べたいー?
臣)うーん…
お菓子じゃないとダメ?
♡)え??
臣)手料理食いたい。
♡)えっ!!
て、て、手料理…!!
♡)手料理ってなぁに??
臣)なんでもいいけど。
料理も得意なんでしょ?
♡)えー!えー!
するけど…得意かどうかは…
臣)いいじゃんw 作ってよ♪
♡)……わ、わかった!!
頑張る!!!
臣)やった♡
♡)…っ
臣くんが、嬉しそうに笑った。
その笑顔に、一瞬ドキっとして…
♡)……///
でも…
なんで手料理なんだろ??
てゆーか…
作るって言ったけど、
どこで作るんだろ???
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
臣)月…、全然出てこねぇな~
♡)雲あつくなってきちゃったね。
臣)うん。
さっきまで折角綺麗に見えてたのになーー
♡)…もう…帰っちゃう?
臣)え?
♡)……
臣)……
「帰っちゃう」ってなに!!?
♡も…まだ一緒にいたいって意味かな…
え、違う?
俺…都合良く解釈しすぎ?
♡)……
臣)……
♡の表情から読み取ろうとすると、
可愛い目で俺をじっと見てくる。
臣)何それ。
♡)え?
臣)寂しい?
♡)え??
臣)帰っちゃう?って聞くから。
♡)えっ!あ…っ、ほんとだ…///
え??寂しいのかな??
臣)それを俺が聞いてんだっつーのw
♡)え…、わかんない…///
臣)なんだよそれw
俺がつっこむと、
恥ずかしそうに慌てながら、
でもやっぱり可愛く俺を見てきて…
うわ~~~
もうこれ何!!
天然?計算?
あ~~~~~///
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
♡)え…、痛い…
いきなりむにっとつねられたほっぺ。
臣)ぶっw
♡)なにするのー///
臣)あはははw
私が臣くんの手を掴んで抵抗すると、
臣くんは笑いながら
ごめんごめん、って。
♡)もう…///
臣)……
♡)……
あ…れ…?
ぽんっ。
♡)…っ
頭に優しく置かれた、大きな手。
私を見つめる臣くんが…
すごく優しい顔をしてる。
どう…して……
♡)どうして…そんな…
優しい顔して…笑うの?
臣)え??
私の質問に、臣くんは少し照れたように
視線を逸らして…
臣)知らね…///
そう言った。
♡)……
その横顔を、じっと見つめてると…
臣)…お前と…いるからじゃない?
♡)え…?
またこっちを向いた臣くんが、そう言った。
私といるからって…
???
私といて優しい顔するって…
あ、わかった!!!
やっぱり私のこと
子供扱いしてるんだ!!
さっきの頭ポンも
子供だと思ってしたんだ!!
♡)むぅぅぅ……
臣)え??
なんでふくれてんの?w
♡)別にふくれてないもんっ。
臣)じゃあ何このほっぺ。
♡)いたい~~///
またむにむにされて。
臣)あはははw
♡)もうっ!!//
臣くんはそのまま、
笑いながら立ち上がった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
臣)じゃあ…そろそろ帰ろっかな。
♡)…うん。
これ以上一緒にいたら、
ほんとに帰りたくなくなる。
臣)寂しい?w
からかうようにその顔を覗けば、
♡)寂しくないよっ!///
そう言って俺の背中を叩いてきた。
臣)あっそw
あ~あ、可愛いなーー
ほんと…もっと一緒にいたい…。
♡)次は海だねー
臣)え?
♡)え?
臣)すげぇ先だけど。
♡)え?
臣)来月でしょ?
♡)うん。
臣)それまで…
それまで会えないカンジ?
俺…明日にでも会いたいくらいなんだけど。
臣)時間あったら、また誘っていい?
♡)え?
臣)飯とか。
♡)……
臣)つーか誘うわ。
♡)うん…。
…あ!そーだ!
私ご飯作るんだった!
臣)あ、そーだ…
♡)あははw
時間合う時あるといいね♡
臣)うん…。
手料理は死ぬほど楽しみだけど…
お前に会えるなら何でもいい。
♡)じゃあ…ね?
臣)うん。…おやすみ。
♡)おやすみなさい♡
俺は♡に玄関まで送ってもらって
マンションを出た。
角を曲がる手前で振り返ると
♡が見送ってくれてて
また可愛く手を振ってて。
あ~~もう///
引き返して抱きしめたいんだけど…。
そんな気持ちを抑えて、
俺は手を振って角を曲がった。
臣)……はぁ。
次会えんのいつだろ…。
仕事早く終わる日あったら
絶対誘おう。
ーendー
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