朝目が覚めたら、
臣くんが私を包み込むように
優しく抱きしめてくれてて…
♡)……
とくん…
とくん…
静かに感じる、あったかい鼓動。
あんなに苦しかった気持ちは
嘘みたいに晴れてて…
昨日臣くんが全部…
受け止めてくれたからかな…。
臣くんは…
涙が止まらない私を
ずっと優しく抱きしめてくれてた。
ハルくんへの気持ちが溢れて
心が痛かったけど
涙と一緒に全部吐き出して、
すごくラクになった気がする。
♡)……あり…がとう……。
臣くんの腕の中。
久しぶりにちゃんと息を吸えてる感覚がする。
どうして臣くんは
こんなに私を癒してくれるのかな…
私も臣くんのこと、癒してあげたい。
こうやってぎゅってしてくれるだけで
悲しい気持ちとか辛い気持ちとか
全部溶けていくみたいに…
臣くんにとって、私もそんな存在になりたい。
……ぎゅぅ…………
臣くんの背中に腕を回した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
♡)おはようっ♡
臣)……
目が覚めると♡はベッドにいなくて…
キッチンまで行くと、
元気に俺に笑ってくれた。
♡)もうすぐご飯できるよー♡
臣)……
昨日…あんな泣いてたのに…
……元気…なのか?
無理してる…?
カラ元気…とか。
臣)……
ぎゅ。
キッチンに立ってる♡に
後ろから腕を回した。
♡)わぁ♡ぎゅーされたーー♡
臣)……
♡)ふふっ♡どうしたのー?
臣)……
好き。
そのまま♡の肩に鼻を埋めると
♡が俺の頭を撫でてきた。
ぎゅ。
♡)わっ、動けないよ…w
抱きしめる力を強めると
♡が困ったようにこっちを向いて…
正面から俺を抱きしめてくれた。
♡)おはよう、臣くん♡
臣)……
俺は昨日と同じように
♡の身体をただただ、抱きしめる。
もう泣いてない…?
悲しく…ない?
♡)ふふっ、臣くんだいすき♡
臣)……
その言葉に、なんか泣きそうになる。
♡がいて、笑ってくれて、
大好きって言ってくれて…
いつもと同じ朝だけど
それがかけがえのないものなんだって
改めて思う。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
K)どああ〜〜〜〜
めんどくさいっっ
♡)うーむ……
K)こんな何年も前のこと
もう覚えてないっつーの!
♡)あの時の資料どこいったかなーー
K)もう適当に埋めちゃえ。
♡)ええっ!w
もう来週に迫った福岡研修の
事前課題に手をつけたんだけど…
入社してから今に至るまでのキャリアを
自分でまとめなきゃいけなくて…
「入社1年目で掲げていたビジョンと現在の比較」
「1年ごとのスキルの変化」
「自己の強みと市場価値」
♡)ううう……
なかなかスラスラ書けない。
M)そっかぁ…
先輩来週福岡ですもんね。
♡)うん。
M)じゃあその間の先輩の隠し撮りは
Kさんにお願いしようっと♪
♡)えっ!
M)可愛い先輩撮ってくださいね♡
K)おう!任せろ!
♡)……
毎日更新するって…大変だなぁ…
K)あ、そーだ。
♡)ん?
K)今日さ、仕事終わった後、暇?
♡)うん、特に予定は…
K)ポールがご飯食べに来るんだけど
あんたも来ない?
♡)Kちゃんのお家に?
K)うん。
♡)行きたいっ!!♡
K)おう。じゃあポールにも言っとく♪
♡)わーいっ!♡
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
臣)はぁ……
隆)…どうした?
臣)……
隆)……
今日もレコーディング。
隆二と二人で、少し早めに部屋に入った。
臣)自分の腕の中で…
他の男が好きだって泣かれんのって…
結構キツイよね…
隆)は?!
そんな歌だったっけ!??
隆二は慌てたように
歌詞の紙を見直してる。
臣)いや、歌の話じゃなく…
隆)へ?
臣)……
隆)……
今朝、♡が笑ってくれたのは
すごく安心したけど…
でもやっぱり…
昨日あんなに泣いてたのが
俺の中では大きくて…
無理してんじゃないのかな、とか…
本当はハルくんのこと考えてるんじゃ
ないのかな、とか…
俺がいなかったら…
ハルくんのところに行きたいんじゃ
ないんだろうかとか…
そんなことばっかり考えちゃって…
臣)はぁ……
俺の中のモヤモヤは、消えない。
隆)うーん…よくわかんないけど…
俺もこの間それ、あったかも…
臣)……へ?
隆)好きな子にさ、好きな奴いるって
言ったじゃん?
臣)うん。
隆)で、泣いてたから。
臣)え、抱きしめたの?
隆)……うん。
臣)どええ?!!初耳だけど!
隆)言ってなかったっけ。
臣)ええええ!!
抱きしめたって…
付き合ってないのに?!
何それ!!!
隆)だって…
ポロポロ泣くんだもん…
臣)……
隆)目の前で…ポロポロ…
臣)うん…。
隆)そんなの…、さ。
臣)うん…。
抱きしめちゃうよな。
好きな女の涙の威力って計り知れない。
隆)でも…今泣いてる分も
絶対俺が幸せにしてやろうって思った。
臣)……
隆)だから今は…
泣きたいだけ泣いていいよーって…
そう思いながら抱きしめてた。
臣)……
隆)……
臣)……
隆)なんでこんな話してんの、俺たち///
臣)いきなり我に返って照れんなよ。
隆)だって!///
臣)……
俺だって…思ったよ。
泣きたいだけ泣いていい、って…
俺が側にいてやるから、って。
でも…
♡が本当に側にいてほしいのは…
俺なのかなって
どこかでそんな風に思ったりもして…
だって…
♡はあんなに泣くほど…
ハルくんのことが好きで…
隆)なんか今日の歌、臣みたいw
臣)え?
隆)ここ。
臣)……
『電話してくれたら
走って行くから すぐに行くから
なにもかも放り出して
息を切らし 指を冷やし
すぐ会いに行くから』
隆)20万かけてでも
飛んでっちゃうんだもんなぁ…
臣)…そのネタもうヤメロ…//
隆)いや、からかってんじゃなくてさw
臣)……
隆)……
臣)じゃあここ、俺歌う。
隆)あ、ほんと?別にいいけど…
臣)お前大サビ歌えば。
隆)え、いいの?!
臣)どうぞ。
隆)へへ、やったw
臣)……
『報われなくても 結ばれなくても
あなたは ただ一人の 運命の人』
臣)……
ハルくんにとって…
♡はそういう相手なのかな。
報われなくても…
結ばれなくても…
自分を責めて、泣きながら謝ってたって
言ってたけど…
今は♡のこと、どう思ってるんだろう。
「…ハルくんにはね、今…
大事な人がいるんだって。」
それが、真実で…
♡じゃない誰かならいいのに…
なんでだろう。
俺の勘が、絶対それは♡だって言ってる。
ハルくんはどんな男なんだろ……。
薔薇男やTみたいに
奪う気満々で挑戦的な奴なのか…
ボクシングの士道さんみたいに
少しでも一緒にいれれば…みたいな
あわよくばタイプなのか…
もし…本気で動いてきたら
俺は戦うことになるわけで…
隆)〜♪報われなくても 結ばれなくても
あなたは ただ一人の 運命の人♪〜
臣)……
♡も…?
♡にとっても…ハルくんは…
運命の……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
♡)わーい♡わーい♡
Kちゃんのご飯美味しいから大好きー♡
ポ)僕もーー♡
K)はいはいw
ポールちゃんと噛んで食べなよ!
ポ)はーいw
昨日も実家でご飯食べたし
今日もごちそうになっちゃって…
誰かが作ってくれたご飯って
すごく美味しいなぁ♡
♡)へへ…幸せーー♡
K)……良かった。
♡)ん…?
Kちゃんが私を見て優しく笑った。
K)少しは元気になったの?
♡)え……
ポ)K、心配してたんだよ。
♡が元気ないーって。
♡)……
ポ)だから今日は♡も誘ってみようって!
♡)そうだったんだ…
ごめんね…折角二人のデートだったのに…
K)別にデートとかじゃないし!w
ポ)Kとはいつでもラブラブできるから
いいのいいの♡
K)おい…//
♡)あははは♡
そっか…
そうだったんだ。
♡)いつも心配ばかりかけて…ごめんね。
K)そんなの気にしなくていーの。
♡)……
K)色々あって疲れたんじゃないの?
♡)……うん…。
K)たまには息抜きしなよ。
♡)…ありがとう。
私の周りは…
優しい人ばっかり。
♡)…あの…ね…?
K)うん。
♡)土曜日に……
K)……
♡)…ハルくんに会って…
K)うん。
♡)……
K)……
まだ誰にも話してなかったけど
Kちゃんとポールに話した。
ハルくんに会って
気持ちが溢れて泣いちゃったこと。
でも、それも全部…
臣くんが聞いてくれて、
受け止めてくれたこと。
K)今日は昨日よりスッキリした顔してる。
♡)うん…。
臣くんのおかげで…
今はもう…悲しくないよ。
臣くんが…
ずっとぎゅって…してくれたから。
ポ)きっとハルくんは…♡にとって…
お父さんに近い存在なのかな?
♡)え…?
ポ)お父さんとか…家族とか…
♡)……
パパ…?
K)ハルくんを好きな気持ちは
恋愛感情ではないんでしょ?
♡)……
恋愛…感情…
♡)よく…わかんない…
K)……
♡)ハルくんが泣いてたら…
抱きしめたくなる…。
K)……
♡)胸がぎゅってして…
離れたくないって…思ったの…。
K)じゃあハルくんと付き合いたいとか
キスしたいとか…思う?
♡)えっ……
ハルくん…と…?
♡)私がそういう気持ちになるのは…
臣くんだけだよ…?
K)そっか…w
ハルくんを好きな気持ちと
臣くんを好きな気持ちは
全然違って…
比べたくないって、あの時思った。
♡)ハルくんは…
愛してるっていっぱい言ってくれて
私も愛してるって思ったし伝えたけど…
K)うん。
♡)臣くんの「愛してる」とは…違う。
K)うん。
♡)……
ポ)愛にもいろんな愛があるからね。
別に間違いじゃないし
それでいいと思うよ。
優しいポールの笑顔に
なんだか心がほっとする。
♡)さっき…ポールが言ってくれたのが…
近いかも…
ポ)ん…?
♡)ハルくんを愛してるって思う気持ちは…
ママや瞬を愛してるって思う気持ちに
一番近い気がする。
♡)ハルくんは私にとって
かけがえのない人なの…。
ポ)うん。
だから……
♡)またどこかで…
私の人生と…ハルくんの人生が…
繋がることがあったら嬉しいなって…
そう思ってる。
ポ)そうだね…。
K)きっとハルくんも
そう思ってるんじゃない?
♡)そうだと…いいな…。
いつか…
また…どこかで…
ポ)もし会えなくても…
二人の気持ちが消えるわけじゃないしね。
♡)二人の…気持ち…?
ポ)うん。
♡)……
ハルくんが
愛してるって言ってくれた気持ちも…
私がこんなに
ハルくんを大事って思う気持ちも…
会えないからって消えたりしない。
♡)うん、ありがとうポール。
ポ)うん。
♡)Kちゃんも…聞いてくれてありがとう。
K)うん。
♡)二人とも大好き♡
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
中)うーん…めちゃめちゃ完成されてて
すごくいいんだけど…
隆)ありがとうございます。
中)折角二人で歌うならさ、
臣)はい。
中)どこかユニゾンにしたら?
美)……
中)二人のユニゾンすごく綺麗だし。
入れるとしたら…このへん…?
美)マサくんセンスない!
中)はー?
美)なんでそこなの?
てゆーかユニゾンより
ここハモリにした方が絶対キレイ!
中)ハモリねぇ…
美)ここは今市くん一人で歌って
ここは登坂くん。
で、それぞれの声の良さが出るでしょ?
中)うんうん。
美)で、最後のここでハモリ!
中)うーーん…
隆)……
臣)……
中村さんと美和さんが来てくれてから
何回か歌ってみたんだけど…
隆)最後のハモリ、いいかも…
臣)やってみる…?
隆)〜♪この出会いに
臣隆)〜♪やさしいキスを これが運命なら♪
試しに歌ってみたらしっくり来た。
臣)いいかも…
美)いいっ!!!
臣)…っ
中)うん、めっちゃキレイ。
じゃあさ、ちょっとユニゾンも…
美)まだ言ってる…
中)いいじゃん聞いてみるくらい!w
隆)ユニゾンするならこことかどうですかね。
隆二が選んだのは
隆二が一人で歌う予定だった大サビの頭。
試しに一緒に歌ってみると、
メリハリがついてイイ感じになった。
中)ほら!いいじゃん!
美)……うん。
隆)その後の「ただ一人の運命の人」が
強調されていいかも!
臣)うんうん。
歌い方が固まって
お互いに交代でブースに入って。
全部録り終えると
中村さんも美和さんも
満足そうに笑ってくれた。
中)二人の色になったなぁ〜〜♪
美)うんうん、嬉しいね♡
隆)ふぅぅ……難しかったw
臣)間違いないw
中)あはははw
でも歌えて良かった。
この歌好きだな。
美)二人ともイイ恋してるのかなぁ♡
中)昔より声に艶があるよね。
隆)えっ!いや、俺はまだそんな…その…
片思いで…っ///
臣)ぶっww
なぜかテンパって暴露する隆二。
中)えーーーーー
今市くんが片思いしてんの??
今市くんに想いを寄せられたりしたら
女の子なんてみんなOKでしょ!
美)うんうん。
隆)いや、その…、///
あ、臣は両思いですけどね!
臣)は?!
いきなり何をブッ込む!!
隆)だって20万のタクシーで
大阪から東京まで…
臣)言うなし!!///
こいつは〜〜〜!!!
臣)身内以外に恥ずかしいから言うな!///
隆)あ、ごめん、つい。
美)両想いの子に会うために
大阪からタクシー乗ったの…?
臣)////
隆)あ、両想いっていうか
普通に彼女なんですけどね。
中)アツい男だなぁ〜〜w
臣)////
穴があったら入りたい。
美)登坂くんは一見クールなのに
実はそんなアツいってところが
きっと女の子はグッと来ちゃうね。
中)来ちゃうねぇ〜〜〜w
だから歌もあんなに情熱的だったわけだ。
美)うんうん。
今市くんもすごく切なかったしね。
中)うんうん。
臣隆)……///
でも確かに…
なんとなくこの歌は今歌えて良かったかもって
思う。
中)この曲最近カバーしてくれる人
多いよなぁ…
隆)あ、そうなんですか?
中)うん。
美)三代目が歌ってくれたのも嬉しい。
どうもありがとう。
臣)いえいえ、そんな…こちらこそ…
美)ドリのこと知らなくても好きじゃなくても
二人が歌ってくれたうちらの歌が
誰かの心に届いたら、それだけで幸せ♡
臣)……
そう言って美和さんは
本当に嬉しそうに微笑んだ。
美)ドリってほんっと幸せなバンドだねぇ♡
中)そうだねw
隆)あの…今日は本当に
ありがとうございました!
臣)ありがとうございました!
中)こちらこそ。楽しかったよーー
美)うん!ありがとうございました♡
中)今市くんは恋愛の方も頑張ってねw
隆)が、頑張ります///
美)あははは♡
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
♡)〜♪薄紅の秋桜が秋の日の
何気ない陽溜りに揺れている♪〜
これは朝なのかなぁ…
それともお昼…?夕方…?
♡)〜♪此頃 涙脆くなった母が
庭先でひとつ咳をする♪〜
最初はもう少しピアノ少ない方がいいかも。
臣)山口百恵だーー
♡)わっ!!
びっくりした!!
♡)おかえりなさいっ!
臣)ただいまw
臣くんは笑いながら
後ろの椅子に腰掛けた。
臣)続きどうぞ?
♡)え…//
臣)聞きたいw
♡)あ、あのね、今度行った時のリクエスト…
いっぱいもらって…
臣)そういえばどうだったの。
さくちゃんのおばあちゃんのとこ。
♡)あっ…
色々バタバタだったから
全然話せてなかった。
♡)いろいろ歌ったんだけどね、
いっぱいリクエストしてくれて
すごく楽しかったよ!
臣)そっか。
演歌も歌ってたしなw
♡)あ、見た?
臣)うんw
すげぇカッコ良かった。
♡)えへへ…//
演歌もいっぱいリクエストもらったから
練習しなくっちゃ…
♡)臣くんは今日はドリカムの
レコーディングだったんでしょ?
臣)お、スケジュール見たの?w
♡)うん!♡
どうだったの?何の曲やったのー?
臣)『やさしいキスをして』。
♡)わぁ!それ大好き!♡
臣)ほんと?ちょっと歌ってよ。
♡)え、ドリカム?
臣)うん。
♡)え、臣くん今日歌ったんでしょ?
臣)うん。お前の声で聴きたい。
♡)え…なんか恥ずかしい…//
臣)いいじゃんw 歌ってよ。
♡)えっと…じゃあ…//
歌詞を検索して譜面台に立てた。
臣くんと隆二くんは…
どんな風に歌ったのかな。
♡)〜♪あなたの一日が
終わる時に そばにいるね
何も言わないで やさしいキスをして♪〜
この曲…すごく切なくて大好き。
♡)〜♪そっと髪を撫でて 肩を抱いて
そばにいるね あなたが眠るまで
やさしいキスをして♪〜
そういえば私…
昨日いつ寝たんだろう…
気付いたら朝で…
臣くんの腕の中で…
♡)〜♪この出会いに やさしいキスを
これが運命なら♪〜
私が最後まで歌うと
臣くんは拍手した後、後ろからぎゅって
抱きしめてくれた。
臣)お前の声、ほんと好き。
♡)……///
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺とも隆二とも全然違って
♡が歌うと♡の歌になる。
俺は♡の声がほんと好きだし
普通にファンだと思う。
いくらでも聴いていたくなるような
そんな声。
臣)なぁ…。
♡)なぁに…?
後ろから♡を抱きしめたまま
キーボードに指を重ねた。
ポロン…♪
……早く…ピアノ買ってやりたいな。
誕生日に間に合わせるのは
結局無理って言われたけど…
早く届いてほしい。
そしたら…
喜んでくれる…?
♡)ふふ、くすぐったぁい♡
臣)……
後ろからハグしながら
指先で音を遊ぶ俺に
♡がくすくす笑う。
臣)なぁ…。
♡)なぁに?
臣)……
♡)……
この間のLIVEで歌った歌は
ハルくんへの想いだったんだろ…?
臣)なんか…歌って。
♡)え…?
今度は…ハルくんじゃなくて…
臣)俺に。
♡)……
♡は俺の手をきゅっと握って
振り返った。
♡)臣くんに…?
臣)うん。
♡)……
臣)俺になんか歌って。
♡)……
今、俺のこと…どう思ってる…?
いくら♡が笑ってくれても
好きだって言ってくれても
どうしても♡の心にはハルくんがいる気がして
だから…
お前の歌声で、こんなモヤモヤ…溶かしてよ。
♡)じゃあ…歌うから、座って?
臣)……うん。
俺はもう一度後ろの椅子に腰掛けた。
♡)臣くんの歌はいっぱいあるけど…
いっぱいあんの??
♡)これにしようっと♡
臣)……
なんか…緊張してきた。
♡)じゃあ弾くね♡
臣)うん…。
♡の指先が綺麗なメロディを奏で始める。
♡)〜♪目が覚めればいつも
変わらない景色の中にいて
大切なことさえ
見えなくなってしまうよ♪〜
これは…JUJU…?
♡)〜♪生きてる意味も その喜びも
あなたが教えてくれたことで
「大丈夫かも」って言える気がするよ
今すぐ逢いたい その笑顔に♪〜
ああ、この歌…すげぇいいよなぁ…
♡の声がすごく優しくて…
耳の奥まで柔らかく届いてくる。
♡)〜♪あなたを包むすべてが
やさしさで溢れるように
わたしは強く迷わず
あなたを愛し続けるよ♪〜
なんでだろう。
♡の顔は見えないはずなのに
笑ってる気がする。
笑顔が歌声に溶けていく。
♡)〜♪どんなときも そばにいるよ
離れていても そばにいるよ♪〜
最後のメロディが♡の指から離れると…
♡)えへへ♡
♡はニッコリ笑ってこっちを振り向いた。
俺はなんか泣きそうで…
立ち上がった勢いのままに、
♡を抱きしめた。
♡)わっ…///
好き。
…ほんとにお前が好き。
俺のことだけ見ててほしい。
俺のこと以外、考えないで。
自分勝手にそう思ったって
そんなの無理なのはわかってる。
わかってるけど、
好きだから…
好きすぎて…
そう思ってしまう。
♡)臣くん、だぁいすきっ♡
臣)…っ
♡も立ち上がって
俺にぎゅっとしがみついた。
♡)ちゃんと伝わった?
臣)え…?
♡)臣くんのこと大好きって♡
臣)……
伝わったけど…
伝わったのに
なんでこんな気持ちになるんだろう。
臣)♡、好きだよ。
♡)私も大好きだよ♡
臣)……
♡を抱いたら…
こんな気持ちも消える…?
わかんないけど…
すげぇ抱きたいけど…
でも…
♡の中にいるハルくんが
絶対に消えてないことはわかるから
俺はその日、♡を抱けなかった。
ーendー
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泣いちゃいました
何か切ない感情が文面でも伝わってきてついつい涙しちゃいました;でも本当に毎回リアルに情景が浮かぶし感情移入しやすくて読んでて楽しいです!
このすれ違いで…
次が楽しみです!
なんか色々微妙なかんじですね