明日から福岡だから
今日は早めに帰ってきたけど
玄関のドアを開けると
家の中は暗くて
一瞬ドキッとした。
♡がいなかった日々を思い出して。
でも…
今日遅くなるとか言ってなかったし
そーだ!
今日はクッキー焼くとか言ってたじゃん!
やっぱりいないのはおかしい!!
俺は荷物を置いて
すぐに♡に電話した。
プルルルル…、プルルルル…
臣)出ない……
え、どうしよう…
すげぇ心配なんだけど…
ガチャッ
臣)!!!!
俺が玄関へ走ると
♡)あ!臣くんが先だったぁ♡
臣)…っ
ぎゅっっ
♡)えっ??
臣)…っ
♡)どう…したの…?
良かった。帰ってきた。
良かった。
♡)臣くん…?
臣)おかえり…
♡)うん、ただいま♡
臣)……
そうだ。
♡はもういなくなったりしない。
なのに…
臣)あ…甘い匂いする。
♡)うんっ♡
友達の家でクッキー作ってきたの♡
ああ…そうだったのか…
良かった。
♡)臣くんの分もいっぱい焼いてきたよー♡
臣)やったぁw
♡)臣くんも今帰ってきたの?
臣)ああ、うん。
♡)じゃあお風呂洗っちゃうねっ
臣)ああ、いいよ!俺やる!
♡)えっ
臣)お前は荷物置いてきな。
♡)あり…がとう…
臣)ん!
ぽんぽん♡
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
臣くんがお風呂を洗って戻ってきて…
♡)あのね、これが健二郎くんのー♡
臣)おおっ
♡)明日渡してね♡
臣)はーーいw
♡)それで、これは臣くんの♡
臣)ありがとうございます♡
臣くんが一つ摘んで食べた。
臣)今回はマーブルなんだ?w
♡)うんっ♡
臣)ん、相変わらず美味いw
♡)わーい♡良かったーー♡
臣くんがにっこり笑って
頭をなでなでしてくれた♡
臣)でもなんで友達の家??
♡)あ、あのね、
友達の…、あっ、友達って
昨日話した子ね、会社の。
臣)ああ!
♡)その子の好きな人がね、
明日から出張なんだって!
臣)ほ〜〜〜
♡)で、差し入れ的な感じで
一緒に作ろーってなったの♡
臣)へ〜〜〜女子ですなぁw
♡)その人の家に届けに行ってたよ。
臣)おおっ可愛いじゃんw
♡)嬉しいかなぁ?♡
臣)自分のためにクッキー焼いてくれて
サプライズで届けてくれんでしょ?
絶対嬉しいんじゃん?w
♡)だよねーー♡
◇ちゃん一生懸命作ってたしなぁ♡
臣)お前もいろいろ作ってくれたもんなぁ…
♡)え??
臣)付き合う前。
♡)あっ…
そういえば…
臣くんがいつもごちそうしてくれるから
そのお礼に…
臣)すげぇ嬉しかったもん。
♡)…ほんと?
臣)うん。
♡)……//
きゅっ…
臣)お、懐いてきたw
♡)……//
臣くんがクッキーを置いて
私を抱きしめてくれた。
臣)付き合ってから作ってくれたのも
全部覚えてるよ?
♡)ほんと…?//
臣)ん♡
♡)……//
はぁ…
大好き…//
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺が風呂から上がると
♡は部屋でキーボードを弾いて歌ってた。
俺がドアを開けてもまた気付いてない。
♡)〜♪億千万通りの愛を
この詩に込めて贈るよ♪〜
聞いたことない歌だな…
♡)〜♪何度でも君に恋してる
君も同じだといいな♪〜
あ、気付かれた。
♡)臣くん!おかえり♡
臣)ただいま。
いいよ?歌ってて。
♡)ううん、もういい〜〜
ぎゅっっ
♡が立ち上がって抱きついてきた。
臣)もういいの?
♡)うんっ♡
臣)……
続きちょっと聴きたかったんだけどな…
♡)お風呂あがりのほこほこ臣くん♡
臣)ん♡
ぎゅ……
♡)はぁ♡
臣)……
ああ…癒されるなぁ…
こうしてくっついてるだけで…
♡を抱きしめられるだけで…
ほんとに俺…幸せ。
臣)好き…
♡)……//
しばらく抱きしめて
そっと腕をゆるめると
♡が背伸びをして
俺の頬にキスしてきた。
チュッ…
♡)大好きだよ///
臣)……//
ぎゅっっっ
♡)わわっっ//
そんな可愛くキスされたら
そんな可愛いこと言われたら
また…離せなくなる。
♡)臣くん…//
臣)……
ああもう…
なんでこんな愛しいんだろ…
ダメだ。
やっぱり俺…一昨日から壊れてる。
♡が…好きすぎる。
チュ…ッ
首筋に小さくキスをして身体を離すと…
♡)////
臣)…っ
なんで…
そんなリアクションされたら…
俺が照れる…///
♡)あ、えっと…えっと…//
土曜日の…動画…来たよっ//
臣)ああ、うん…見せて//
♡)うんっ//
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
どうしよう…
なんか…
臣くんのことが好きすぎるよぉ…//
ぎゅってしたくなって
チュッてしたくなって
もうずっと…くっついてたくなっちゃう///
♡)えっと…これだよ。
臣)おお!ほんとにピアノだ!
♡)うんっ
動画を再生すると
臣くんはじーーっと見てる。
臣)なんか…
♡)ん?
臣)お前って…
♡)??
臣)ほんと…すごいな。
♡)え??
臣)……
♡)??
ピッ
♡)あっ
臣)もーらいっw
♡)もらわれた…//
臣くんが私の動画を携帯に保存した。
臣)さくちゃんの結婚式も
もう再来週だな。
♡)うんっ
臣)もう完璧?
♡)うん!もうバッチリ弾けるよ〜♡
臣)おおっ、楽しみじゃん。
♡)うん♡
それからパソコンを閉じると
臣くんが思い出したように立ち上がった。
臣)そーだ!さっきもらったんだ!
♡)え??
臣)明日発売のさ、あれ。
♡)あれ??
臣)俺らの雑誌。
♡)あーーーーっ!!
臣くんがバッグから雑誌を取り出した。
臣)これこれ!
♡)わぁ!臣くん表紙だ〜〜!!
臣)一緒に見ようと思って
まだ中は見てませんw
♡)わぁっ!一緒に見よ〜〜っ♡
臣)うんw
二人でソファーに並んで
雑誌をめくった。
『あなたの知らない登坂広臣がここにいる。
ーもしも彼女がいたらー
初めて見せる素顔。
優しい横顔。
あどけない笑顔。
愛しさが詰まった
完全OFF、プライベートな1日ーー』
♡)わわわっ//
臣)いきなりこれか…//
最初のページは二人で笑い合ってる写真。
光のバランスが…すごく綺麗。
2ページ目からは
撮った順番に写真が並んでた。
♡)あれっ
臣くんが
ベッドで寝てる私の前髪を触ってる写真。
♡)こんなのあったの??
臣)お前、寝てたからねーw
♡)……//
臣くんが…すごく優しい顔してる//
♡)こうやって見ると
臣くんの寝癖かわいい♡
臣)そうかー??w
♡)お水飲んでるのもすっごく綺麗だね!
臣)光加減がね〜〜
♡)臣くんの横顔が素晴らしいです♡
臣)ありがとうございますw
それから一緒に歯を磨いたり
朝ごはんを作ったり
洗い物をしたり
♡)なんか懐かしいねw
臣)うんw
この日の撮影…
すっごく楽しかったな♡
♡)臣くんがメガネかけてるの
やっぱりカッコイイ♡
臣)お前も似合ってるじゃんw
♡)えへへ…//
臣くんにメガネをかけられて
頭なでなでされてるところが使われてて
ちょっと恥ずかしい…//
♡)わわわっ♡
このへんいいねっ♡
臣)んー?
臣くんが靴を履いて
車に乗るところ。
キュンキュン♡
臣)サッカーしてる写真も
綺麗に撮れてるなーーすげーーー
♡)ね!残像拳になってないね!
臣)うんww
二人で洗濯物を取り込んで
部屋のお掃除をして
♡)あ!臣くんが歌ってるー!!
臣)うわ…写真だけだと
ギター弾いてるっぽい!w
♡)うん!
臣)詐欺だな…w
♡)あははは♡
ページをめくると
お風呂に入ってる臣くんが飛び出した。
♡)きゃーー//
臣)きゃーって何やねんw
♡)なんかエッチ…//
臣)いつも見てんじゃん!
♡)それとはまた別なのー!//
臣)ふーーんw
お風呂上がりに髪を拭いてもらったり
ドライヤーで髪を乾かし合ってるところも
なんかすごく楽しそうに撮れてる。
臣)俺、笑いすぎじゃない?w
♡)えーーだめ?
臣)いや、オフ感ありすぎないかと…w
♡)ふふーー♡
これがいいんだよーー♡
最後のページは…
♡)わ…っ///
臣)……//
ベッドの写真。
こうして見ると…なんか恥ずかしい//
♡)おでこ…くっついてる…//
臣)うん…
私を見つめる臣くんの表情が
すごく優しくて…
♡)この写真…好き…//
臣)え…?
♡)なんか…キュンてする…//
臣)……//
この雑誌…
私の宝物にしよう♡
こんな風に
写真撮ってもらえることなんてないし…
キュンキュンな臣くんがいっぱいだから…
♡)あ、そうだっ
臣)ん?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
♡が立ち上がって持ってきたのは
♡が作ってくれたアルバムだった。
♡がいない間…
一人で泣きながら…めくったアルバム。
♡)これね、もう一回一緒に見たいの…
臣)……
今度は一人じゃない。
また俺の隣に座った♡を抱き寄せて
一緒にページをめくる。
♡)ふふ♡懐かしいね♡
臣)うんw
二人の笑顔と思い出が
いっぱい詰まったアルバム。
「ずっと…好きだったって…
言ってくれたの…嘘だったの…?」
「嘘じゃない!!!」
臣)……
「好きなのはお前だったし
お前に言った気持ちは何一つ嘘じゃない。」
「そんなの信じられないよっ!!」
あの日…そう言われた。
あんなに泣かせた。
信じられなくさせたのは、俺だ。
パラッ…
臣)この時さ、せっかく隣に座ってんのに
子供にお前取られて
賢司とさくちゃんに笑われたw
♡)え…?
臣)それから…
お前が何の迷いもなく子供を庇って
手に火傷して…
ほんと危なっかしくて
ほっとけねぇ奴だなって思った。
♡)…っ
臣)なのにそのあと元気に
子供たちとサッカー始めるし…
ほんと無邪気だなぁって思って…
♡)……
臣)その後、居酒屋でさ、
恋愛話になって…お前が…
今度は自分から好きになりたいとか
言い出して…
どうやったら俺のこと
好きになってくれるかなぁって…
必死でデートに誘った。
♡)あ…っ
臣)帰りの公園で。
♡)……
ずっと…好きだった。
臣)あ、これ、初デートw
♡)…っ
臣)お前がテラハの話で泣いてさ、
料理長にすげぇ睨まれて
めっちゃ怖かったw
♡)え、そうだったの?!
臣)うんw
♡)知らなかった…
臣)念願の初デートだったからさ、
二軒目とか行きたかったんだけど
あっさり帰るとかお前に言われて…
♡)えっ…
臣)でもやっぱり帰りたくなくて…
屋上行ったじゃん?
♡)…うん。
臣)でもお前はスヤスヤ寝ちゃうし…
俺全然男として見られてねぇじゃんってw
♡)はっ…
でも…一緒にいれるだけで嬉しくて…
臣)ああ、これ、海w
♡)……
臣)すげぇ楽しかった。
♡)……
臣)なんかさ、お前…
いっつもニコニコ笑ってて元気なのに
あの時…泣いてたのが
頭から離れなくて…
無意識に思ったんだ。
♡が泣いてるのは嫌だって。
いつも…笑っててほしいって…
臣)……
旅行先でこのアルバムをもらった時は
二人で単に思い出を振り返ったけど…
今はアルバムをめくりながら
二人の思い出をなぞるように
俺がその時、♡をどれだけ好きだったか
一つ一つ話す。
二人で見た打ち上げ花火…
公園でした…線香花火…
豪雨の日に
暗闇に怯える♡も…
屋上で…涙を流した♡も…
守りたいって…何度も思った。
臣)Xmasプレゼントも…すげぇ迷って…
隙間見つけて買いに行って…
喜んでくれるかドキドキしてた。
♡)……
臣)全然時間なくて…
それでもなんとか会いに行きたくて
お前に電話したら
俺に会えるのがすごく嬉しいとか
言ってくれて…
♡)……
臣)俺も死ぬほど嬉しかった。
♡)……//
やっと会えて…ほんと嬉しくて…
臣)プレゼントもすげぇ喜んでくれたし
お守りまでくれるし
なんかもう…ほんと嬉しくて…
♡)……
臣)もしかしたら俺のこと
好きなんじゃないかなとか
そんな期待したりして…
想像して嬉しくて死にそうになってたw
♡)……//
懐かしいな…
ほんとに俺…お前のことで
頭がいっぱいだった。
バレンタインもすげぇ凹んで…
♡に看病してもらって…
俺の風邪がうつった♡を
今度は俺が看病して…
俺の誕生日ーー
そこでやっと…
気持ちを全部伝えた。
臣)この日、お前に言った気持ちは
何一つ嘘じゃないし
今でも何も変わってない。
♡)……
臣)変わってないし…
ここから一緒にいた分も
もっと好きになってる。
♡)…っ
臣)口でいくら言っても…
信じられないかもしれないけど
俺は…
♡)……
臣)本当にお前が好きで…
本当にお前が大事。
♡)…っ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そう言い終えた臣くんの目が
真っ直ぐに私を見つめた。
あんなにいっぱいお手紙書いてくれて
臣くんの気持ちはいっぱい伝わってたのに
それでもこうしてちゃんと言葉にして
伝えてくれる。
そんな臣くんの優しさに涙がこぼれた。
♡)あり…がとう…っ
ぐいっ
ぎゅ……っ
臣くんに抱き上げられて
ぎゅって抱っこされた。
臣)いっぱい泣かせて…ほんとにごめんな。
♡)(ふるふるっ)
臣)ごめん…
♡)ごめんじゃ…ないよっ
ぎゅっ…
臣くんに抱きついた。
♡)好きっ…
臣)…っ
♡)臣くんが大好き…っ
臣)……
ぎゅ…っ
♡)信じられないなんて言って…
ごめんね?
臣)…謝ん…ないで…っ
♡)…っ
臣)お前はなんも悪くない。
悪いのは俺。
♡)…っ
今ならちゃんとわかる。
臣くんはいつだって優しくて
いつだって私を想ってくれてて
大事にしてくれてた。
何一つ嘘じゃないし
私が見てきた臣くんが…
一緒にいた臣くんが…
私の「真実」なの。
なのに…あの時はいっぱいいっぱいで…
「そんなの信じられないよっ!!」
泣きながらあんな言葉をぶつけて
臣くんにあんな悲しい顔をさせた。
一人で家に帰ってきて
このアルバムを一人で開いた時も
苦しくてページをめくれなくなった。
でも今は違う。
臣くんが隣にいてくれて
臣くんの言葉が…気持ちが…
優しく心に溶け込んでくる。
♡)あり…がとう…
臣)…っ
♡)いっぱい…ありがとう。
臣)……
♡)大好き……
臣)…っ
♡)臣くんのこと…すごく大事。
ぎゅ……っ
♡)臣くんの気持ち…
ちゃんと全部…伝わったよ…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そう言って
俺を優しく抱きしめる細い腕。
柔らかい身体。
♡)ありがとう…
泣きながら…何度もそう言うから…
俺まで……
臣)…っ
涙を隠すように
♡を抱きしめ返す。
伝わって…良かった。
こんなに好きで仕方なくて
愛しい気持ち…
ちゃんと全部…伝わったって言ってくれて…
♡)臣くん……
臣)…っ
♡が身体を起こしたから
俺は思わず顔を逸らした。
♡)…っ
♡はそのまま俺の涙を指でぬぐって
そこにキスをした。
チュッ…
♡)大好き、臣くん……
臣)…っ
右だけじゃなくて…左も…
チュッ
♡)だいすき♡♡
臣)……
俺も♡の頬にそっと触れて
♡の涙を拭った。
そして同じように…
チュ…ッ
♡)……//
チュッ…
♡)////
♡がはにかみながら俺を見つめた。
臣)何その顔…
♡)恥ずかしい…//
臣)お前が先にやったんじゃん…
♡)そう…だけど…//
臣)……
♡)……
見つめ合ったまま…顔が近付いて…
臣)……
♡)……
…kiss……
また…見つめ合って……
臣)……
♡)……
kiss……、…kiss……
どちらからともなく重なる唇。
お互いの「好き」に…
自然に引き寄せられるように……
…kiss…、……kiss……
柔らかく…優しく…
想いを重ねるように…
何度も何度も…
「好きだ」って…伝え合うように…
♡)は…ぁ……//
臣)……
♡)キス…気持ち…いい…//
臣)……//
♡が目を少し潤ませて俺を見つめた。
♡)……だいすき…
臣)…っ
♡)臣くん…だいすき…//
臣)///
ぽすっ……
キスに溶けてしまったように
♡は俺の胸に顔を埋めて…
そのまま…
♡)スー……、…スー………
幸せそうに眠ってしまった。
臣)ふは…っw
俺はそんな寝顔を見つめて
幸せを噛みしめる。
臣)……
♡)……
臣)ありがとう……
愛しい頬をしばらく撫でながら
寝顔を見つめて
そのままゆっくり、ベッドへ運んだ。
眠り姫を抱きしめながら
俺も静かに目を閉じる。
甘い甘い幸せを…
大事に大事に…包む込むように。
ーendー
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