俺が店に着くと
なぜかNAOTOさんとMちゃんが
並んで座ってて…
臣)NAOTOさん?!
N)ういーーー
臣)なんでいるんすか?
N)いちゃダメかよw
臣)なんでいるんすか?
N)松浦さんに呼ばれて…
臣)なんでいるんすか?
N)俺、別に暇なわけじゃねーぞ。
…って、何回言わせんだよ!
M)あはははw
臣)……
一体、どういう感じなんだ??
臣(NAOTOさん、
すげぇ騒がれませんでした?)
N(へ?)
臣(隣の子。)
N(Mちゃんだっけ?…まったく。)
臣)……
TAKAHIROさんの時は
終始キャーキャー言ってたのに…
N(俺のこと知らないんじゃない?w)
臣(まさかw)
さてはMちゃん、面食いか?
臣)谷本さん、お久し振りです。
谷)どうもお久し振りです!
♡)あ!臣くんだ!
臣)おう。
♡が部屋に戻ってきて
その後ろから松浦さんも戻ってきた。
浦)お、全員揃ったか!お疲れーー
N)お疲れさまです!
臣)遅くなりました!
浦)おうおう、飲むぞーーw
松浦さんは一番奥に座って、
♡を連れていった。
俺の隣には…
女)お久し振りですぅ♡
臣)……あっ!!!
こ、こいつ…!!
この間タクシーにつっこんで
無理矢理、帰した女!!
ここのホステスだったのかよ!
女)その顔、覚えてくださってるんですね♡
臣)……
仕事中だからか
この間みたいなアホな喋り方はしないけど
さりげなく俺の腕やら脚に、触ってくる。
女)はい、どーぞ♡
臣)どうも。
酒を受け取って少し距離を開けると
またグイグイ近寄ってきた。
向かいではそんな様子を見て
♡が頬を膨らませてる。
ヤバイ。
臣)ちょ、あんま近寄んないで。
女)え〜〜!ひどーーいw
松浦さん、聞いてくださいよぉ〜
浦)あー?
女)臣くんってば、この間…、んぐっ
俺は女の口を塞いだ。
浦)この間…?
ああ、あの時?
松浦さんが♡をチラッと見て
♡もそれに気付いたのか
何かを察してさらに頬を膨らませてる。
手にべっとりついた口紅を
おしぼりで拭き取ると
女は不満そうに俺に腕を絡めてきた。
女)あの日、せっかくお小遣いいただいたのに
臣くんってば…っ、んんっ
今度はおしぼりをそのまま
女の口に当てて、言葉を塞いだ。
マジでうるせぇ、この女!!
「臣くん」とか呼ぶなし!!!
♡)……
臣)……
こ、怖いんですけど…
俺、ヤバくない?ピンチじゃない?
浮気なんてしてないのに
完全に疑われてない?
浦)あーー、…。
松浦さんが手を上げて
ボーイに合図を送った。
女)え!なんでですか!!
浦)また今度飲みに連れてってやるから。
な?
女)えーー!!絶対ですよ?!
臣くん、またね!
臣)……
俺は振り向きもせず、ガン無視。
代わりに違うホステスが
俺の隣に座ると
松浦さんがグラスを上げた。
浦)じゃあ気を取り直して、カンパーイw
N)乾杯!!w
みんなでグラスを合わせたけど
♡はずっと真顔で…
臣)……
ヤバイって…
早く誤解、解かないと…
浦)お前はなんて顔してんだよw
♡)…っ
松浦さんが♡のほっぺをつついた。
浦)ほら、まぁ…
登坂モテるからさ?なっ?
臣)!!!
何が「なっ?」だよー!!
余計なこと言うなーー!!
♡)モテるからなんですか。
浦)いや、だからその…
モテる男には女が寄ってくるだろ?
♡)だから?
浦)浮気の一つや二つ…
臣)ちょ!!俺してないっすから!!
浦)え??
俺は慌てて間に入った。
臣)浮気、してません!!
浦)……っ
♡)……
♡が俺の顔をじっと見てる。
浦)はははw
ほら、こう言ってくれてんだからw
♡)…っ
臣)…っ
ちょ、なんだよそれ!
とりあえずこの場はそういうことで
丸くおさめよう的な!!
マジでちげーし!!
臣)ほんっっとにしてません!!
浦)…っ
松浦さんは少し不思議そうに
そう言い切る俺を眺めた。
浦)じゃああの娘、どうしたの?
臣)…帰ってもらいました。
浦)俺がやった金は?
臣)そのまま渡して。…すいません。
浦)……
少し気まずい。
俺がそのまま黙ると
沈黙を破ったのは、♡だった。
♡)松浦さん♡
浦)ん?
♡)お金ってなんですか?♡
浦)……えーと…
♡は笑ってるけど
目が笑ってなくて…
絶対、怒ってる。
めちゃめちゃ怖い。
浦)ほら、ホテル代?w
もう酔っ払ってんのか
笑ってペラペラ喋る松浦さん。
♡)ホテル代?
浦)そうそう。
そんな怒るなってーーw
未遂だったみたいだし。
♡)松浦さん♡
ほんとにやめてください。
浦)いやだってそんなんいつものことだし…
臣)…っ
ちょ、マジで余計なこと言うな!!
今までのあれこれを喋られたら
また炎上する!!
♡)今までがどうだったか知りませんけど
今後一切やめてください♡
浦)なんだよ〜〜
モテる男と付き合ってんだから
それくらい目ぇ瞑れってw
な?♡
♡)……
臣)……
ヤバイ…怖い…
俺は♡に怯えてるけど
NAOTOさんは♡が松浦さんに何を言うか
隣でハラハラしてる。
♡)モテる人と付き合うなら
浮気も当たり前だって
そう言ってるんですか?
浦)うーん、まぁ…
♡)じゃあ社長もモテるから
奥さんも子供もいるのに
浮気するんですか?
浦)え〜〜俺ぇ〜〜?w
♡)ダメですよ!!!
浦)えっ…
♡)浮気がダメとかじゃなくて
人を傷つけるのがダメです!!
浦)…っ
そんな正論が通用する相手じゃないのに
真っ直ぐに突っ込んでいく♡にハラハラ…
浦)くくくっw
♡)何笑ってるんですか!!
浦)いや…、すげぇ当たり前のこと
久々に言われたな、って。
♡)……当たり前のことは
大事なことなんですよ?
浦)…っ
♡)社長は人の上に立つ人で
社長を慕って尊敬してる人が
たくさんいる。
浦)……
♡)大事なことをちゃんとわかってないと
ダメです。
浦)……お前、すげぇクソ真面目だな?
♡)悪いですか?
浦)いや、面白い…w
♡)もう、また笑ってる!
浦)怒んなって〜〜w
♡)ぷんぷんですよ!!
松浦さんはふっと笑って…
浦)…お前って…すれてないんだな。
♡)え…?
そう言って、♡の頭を撫でた。
♡)なんで撫で撫でなんですか?
浦)可愛いなと思って。
♡)そんなこと言ってもぷんぷんですよ!
二度と臣くんに変なお金
渡さないでくださいねっ!
浦)あはははっw
怖い彼女だな〜〜w
登坂が浮気したらどうすんの?
♡)別れます!!
臣)…っ
浦)だってw
お前、絶対バレたらダメだなw
臣)いや、バレたらとかじゃなくて…
ほんとにしませんから!
浦)……
臣)……
今までの俺を知ってる松浦さんに
そんなこと言っても
信じてもらえないのはわかってるけど…
浦)♡が怖いから?
臣)怖いからとかじゃなくて…
俺…捨てられたくないですもん。
浦)ぶはっw
あははははっっww
松浦さんが大笑いしてる。
浦)♡、お前イイ女だな。
♡)え?
また♡の頭をくしゃくしゃ撫でてる。
浦)男の言いなりになる女より
上手く騙される女より…
男を変えれる女が
俺は一番「イイ女」だって思ってるから。
♡)……
浦)お前が変えたんだろ?コイツ。
臣)…っ
松浦さんが親指で俺をさした。
浦)イイ子イイ子〜〜〜w
♡)もうっ!離してください!!
松浦さんにほっぺを引っ張られて
相変わらず♡はプンプンしてる。
N(ちょ、ヒヤヒヤするわ〜〜w)
臣(……はい。)
俺たちの中に
こんな風に松浦さんに物申す人間なんて
もちろんいないから
見てるとヒヤヒヤするけど
松浦さんはなんだか嬉しそうに
♡を可愛がってる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
浦)姫のご機嫌が悪くなっちゃうから
お前、谷ちゃんについてあげてよ。
女)はい♡
そう言われて、
臣くんの隣に座ってたホステスさんが
谷本さんの横に移動した。
臣くんは…
NAOTOさんとMちゃんと
何か喋ってる。
ふぅ…
浦)ぶはっw
谷ちゃん、不器用すぎでしょw
谷)えっ、あれっ…汗
ピスタチオを上手く剥けない谷本さん。
♡)あははっw
はい、どうぞ♡
谷)すいません、♡さん…///
浦)お前は…w
そーゆーのはホステスさんに
任せてればいーの。
♡)あっ、そっか……
浦)ほら、じゃあ俺にも!あーん♡
♡)自分でどうぞ。
ピスタチオのお皿を
松浦社長の前にずらすと
社長はまた笑い出した。
浦)俺にも剥いてよ!w
♡)やです。自分で食べてくださいっ。
浦)冷たくない?!w
♡)ぷんっ
浦)♡ちゃーーーんw
♡)知りませんっ
浦)お前、ほんと面白いなw
♡)はい、谷本さん、どうぞ♡
谷)ああ、ありがとうございます//
浦)なんで谷ちゃんには優しいんだよ!
俺は!!
♡)ぷんっ
浦)ひでぇ!w
谷)あはははw
臣くんを悪の道に誘おうとする人なんて
知らないもんっ!
谷)ここのグランドピアノ…
真っ赤でカッコイイですよねぇ。
谷本さんがピスタチオを頬張りながら
下のフロアを眺めてる。
浦)ピアノ弾きたかったら
弾いてきていいぞ。
♡)えっ!
浦)お前の歌声、聴かせてやれよ。
下の客たちに。
♡)……
谷)あのピアノ、
♡さんにすごく似合いそうです♪
谷本さんがそう言って笑ってくれた。
♡)実は昨日、友達の結婚式で
ピアノ弾いたんです♡
谷)へぇ!それはまた!
♡)すごく楽しかったです♡
谷)お友達も嬉しいでしょうね♡
♡)喜んでくれてましたー♡
谷)ふふっ
♡)ふふー♡
浦)なんでここはラブラブなんだよ。
♡)それで今度、
その友達のおばあちゃんがいる施設に
歌いに行くことになったんです。
谷)へぇ!!
♡)歌いに来て欲しいって
言ってもらえて…、えへへ///
浦)なんだそれ。タダでやんのか?
♡)え??
タダ…?
そんなの全然考えてなかったけど…
♡)もちろんそのつもりです。
浦)バッカだなお前〜〜金取れよ〜〜!
♡)え…っ
浦)お前の歌はタダで聞かせるほど
安くねーだろ。
金取れるっつーの。
谷)……
♡)……
だって…
そんなんじゃないもん…
おばあちゃんが嬉しそうに笑ってたから
私も嬉しくて…
浦)才能は金になんの。
無駄ばら撒きすんな。
♡)…っ
無駄って…
無駄なんかじゃないもんっっ
むぅぅぅ……!!
谷)まぁまぁ、一度やってみるくらい
いいんじゃないですか?
浦)えーーー
♡)……
谷)人前で歌う機会が増えれば
♡さんの気持ちも変化するかもですし。
浦)……まぁ…、そうか。
谷)その時、もし良かったら
僕もご一緒したいです。
♡)えっ!施設に行く時ですか?
谷)はい♡
♡)わぁ♡じゃあ一緒に行きましょー♡
谷)ぜひ♡
♡)えへへ♡
谷)へへへ♡
浦)いや、だからさ、なんで谷ちゃんとは
そんなに仲良しなんだよw
松浦さんが私のほっぺをツンツンしてきた。
♡)だって谷本さん大好きだもん。
谷)えっ…///
♡)谷本さんいい人だもん。
浦)俺は?
俺のことも好きーー?
♡)よくわかんないです…
浦)何それ!!w
♡)だって松浦社長のこと
そんなに知らないですもん。
浦)え?
♡)どんな人か、まだそんなに知らないです。
浦)……まぁ、確かに。
でも…そこは普通、社交辞令で
「大好き」って言わない?
♡)言わないですよぅ。
もっとちゃんと松浦社長のこと知って
いいところいっぱい見つけて
本当に大好きって思えたら
大好きって言いたいです。
浦)……
松浦さんはふっと笑って
ウイスキーを一口飲んだ。
浦)お前の親の顔が見てみたいな。
いい意味で。
♡)え…?
あ、優しい笑顔……
♡)……パパが…言ってたんです。
浦)え…?
♡)人はいろんな見られ方をするし
好き勝手言われたり
噂が立つこともあるって。
浦)……
♡)でも、それが真実だとは限らないから
変な先入観を持たずに
ちゃんとその人のことを見るんだよって。
浦)……
♡)だから…
臣くんや…LDHの人たちが
社長のことをすごく尊敬してるのは
よくわかるんですけど
私は自分の目で見て自分でちゃんと
社長のことを好きになりたいです♡
浦)……///
私がそう言うと…
浦)……いいお父さんだな。
松浦さんが笑顔でそう言ってくれて…
♡)はいっ♡
大好きなんですっ♡♡
浦)……///
♡)ありがとうございます♡♡
浦)////
パパのことをそう言ってもらえるのは
すっごく嬉しい♡♡
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
N)ちょ、これ見た?
臣)え…?
NAOTOさんが小声で俺に見せてきたのは
松浦さんのTwitter。
臣)え!!
N)やっぱ気付いてなかった?
臣)…っ
♡のホームページのリンクを貼って
芸名募集の宣伝をしてくれてる!
臣)うそ…っ
N)これ、すごくない?
♡ちゃん、何者なの。
M)私がお願いしたんです♡
臣N)えっっ
隣でにっこり笑うMちゃん。
M)こうしちゃうと
エイベックスの息がかかってるみたいで
ちょっと嫌だったんですけど、
でも話題になることは間違いないし。
臣)でも…エイベックスから
デビューするって決まったわけじゃ
ないのに…
よく動いてくれたな、松浦さん。
M)だから余計にです♡
N)え…?
M)もし今後、
先輩がエイベックスをお断りしても
一度こんな風に味方だっていうスタンスを
公に見せてしまったら
松浦さんからの恨みも
買いにくいなって思って♡
臣)…っ
N)……そこまで考えて?
M)はい♡
臣)……
すげぇ…
Mちゃん、何者?
ただの♡の信者みたいな子で
ミーハーなぶりっ子系女子だと思ってたけど…
N)ねぇ、俺並みに腹黒くない?
臣)俺も思いました。
俺たちが耳打ちしてると…
M)あ、そうだ、NAOTOさん♡
N)はいっ!!
M)先輩に手を出したら
私、許さないですからね♡
N)は、はい?!!
NAOTOさんが目を丸くした。
N)や、やだな…何言ってんの?w
出すわけないじゃん。
臣の彼女だよ?
M)わかってますよ♡
それでも関係ないですもんね?
N)…っ
NAOTOさんが黙ると
Mちゃんはにっこり笑って続けた。
M)絶対、ダメですからね♡
よろしくお願いします♡
N)……ハイ。
臣)……
MちゃんがNAOTOさんに
キャーーってならなかったのは…
いろいろ知ってるから…?
そういえば…俺の予想だと、
俺の過去の悪行を調べあげたのも
おそらくMちゃんで…
Mちゃんは一体何をどこまで知ってんだ?
こわっっ!!
M)来週から先輩のホームページも
パワーアップさせるので
よかったら見てくださいねー♡
臣)え、何すんの?
M)先輩の毎日を更新するんです♡
N)…と、いうと…?
M)芸能人ってみんな自分で
SNSやってるじゃないですか?
N)うん。
M)更新頻度が高ければ
そのクオリティが高ければ
フォロワー数も増えるし人気も上がる。
臣)…うん。
M)みんなが見たいのは
先輩の写真だと思うんですけど
先輩が自分で自撮り写真上げるとか
イメージなくないですか?
臣)……確かに。
N)なんかキャラじゃないかも。
M)あんなのみんな自分が可愛いと思って
キメキメポーズで撮ってるから…
先輩の写真はそういうのじゃないのに
したいんです♡
N)…と、いうと…?
M)私が撮ったやつを
ホームページにだけ上げるんです。
N)SNSは使わないの?
M)使いません。
他のに混ざってタイムラインに
流れていくような情報に
したくないんです。
臣)……
M)ホームページにアクセスしないと
見れない。
その特別感が習慣になると
人間の不思議な心理で
もっともっと好きになるんです。
N)……
M)見ててください♡
臣)……
なんか…
いろいろびっくり。
Mちゃんはただ♡が好きで、
ミーハー心半分で、マネージャーをやるとか
言ってるんだと思ってたけど…
ほんとに向いてるかも。
………
浦)よし!お前ほんとに弾き語りしてこいよ。
♡)えっ!!
浦)店長、いいだろ?
店)いやーーうちとしてはありがたいですよ!
ずっと戻ってきてほしいって
連絡してるくらいですから!
♡)ごめんなさい…//
店)いやいや、無理にとは
言わないんだけど…w
どうやらこの店は
♡が家出期間中に
歌いに来てたクラブだったみたいで
確かに店のど真ん中には
ド派手な赤いグランドピアノが置いてある。
浦)ほら、行って来い。
♡)でも……
店)着替えるかい?
♡)えっ…
店)♡ちゃんなら何着てても綺麗だから
そのままでもいいけど…
ドレス着てもいいし。
浦)おう!借りてこいよ、ドレス!
よっっ!!w
松浦さんが悪戯に拍手すると
♡は口を突き出して
店長と出て行った。
N)♡ちゃん、ここで歌ってたの?
臣)ああ、先月少しだけやってたみたいです。
N)へぇ〜〜〜
浦)お前、♡の歌聴いたことあるか?
N)ああ、はい!
一緒にカラオケに行った時に…
浦)なんだよそれ〜!
俺も呼べよ〜〜〜!!
N)ああ、じゃあ今度ぜひ!w
浦)あいつの歌さ、俺、動画でしか
見たことないんだ。
臣)……
浦)生で聴きたくて
今日ここに連れてきたわけ。
臣)……
……しばらくすると
ドレスアップした♡が出てきて…
M)わぁっ!可愛い♡♡
谷)ああ、髪もやってもらったんですね。
綺麗だな…
N)なんか…さっきと別人みたいだな。
臣)…っ
ゆっくりピアノへと歩いていく姿は
何か特別なオーラを纏っているかのように
本当に艶やかで輝いてて…
他のお客さんも、その姿に見とれているのが
上から見ててもわかる。
浦)歌聴きたいからドア開けて。
女)はい。
VIPのドアが開くと
下の音が聞こえて来る。
♡はピアノの前に座ると
ゆっくりと目を閉じた。
凛とした姿勢。
スゥッ……
♡が息を吸った瞬間、
誰もがそれに、釘付けになった。
〜〜♪♫ ♫ 〜 ♬♪〜〜
こぼれ出す音色が
あたりを優しく包んでいく。
……ああ。
俺やっぱり、♡の声がすごく好きだ。
その歌声に酔いしれていると
隣でホステスが小さな声で言った。
女)あの子が歌うと
みんな見とれちゃうから
お客さんと会話にならないんですよね。
臣)……
松浦さんはすごく満足そうに笑って
浦)絶対デビューさせてやる。
自信ありげに、そう言った。
ーendー
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