剛典の背中を見送って、
もらった3本のバラの花を抱えて
あたしは部屋に戻った。
しばらく、涙が止まらなくて…。
あたしの頬を優しく撫でてくれた剛典の手は
少し震えてて…
見つめた瞳も揺れていて、
剛典も泣きそうな顔をしてた。
最後にそっと目尻に触れた唇は
あたたかくて、すごく優しかった。
◇)…う…う、っ…
優しい感触の一つ一つが…
身体中に、残ってる。
本当は…
バーで会ったあの夜に、気付いてたくせに…
気付かないフリをした。
あの時、名前を呼ばれて、触れられた瞬間に
激しく揺れたあたしの心臓が
何よりの答え。
大きな音を立てて
あの瞬間、叫んでた。
剛典のことが、好きって。
◇)…っ
理屈じゃない。
あたしの身体が…
あたしの本能が…
そう叫んでたの。
でも…苦しくて…
見ないフリをした。
別れるって決めたんだから、って…
無理やりそのまま進もうとして…
剛典にひどいことを言った。傷つけた。
◇)……っ
でも…
さっき剛典に抱きしめられて、
同じようにまた叫んだ、あたしの本能。
抱きしめてくれる剛典の腕の強さから
痛いくらいに気持ちが伝わってきて…
涙があふれて、止まらなかった。
あの涙は、
剛典のことを「好き」っていう気持ち。
「好き」が溢れて、心が震えたの。
◇)…うう…、っ…、ひ…っく……
「本当の気持ちが…見えなくなるから…
急がないで。」
「自分の気持ちに嘘は
ついてほしくないから。」
優助の言葉が、また蘇る。
◇)…っ
どうしてこんなに好きなくせに…
気付かないフリしようとしたんだろう。
苦しいから考えないようにして…
無理に忘れようとして…
……あたしは馬鹿だ。
そんなことしたって、無駄だったのに。
こんなに剛典のことが、好きなのに。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◇の泣き顔が、頭から離れなくて。
抱きしめた感触が、消えなくて。
「お花…ありがとう…。」
潤んだ瞳で真っ直ぐに俺を見つめて
そう言ってくれた◇の言葉が、
耳の奥に、優しく残ってる。
◇の姿も…
◇の匂いも…
◇の声も…
◇のぬくもりも…
五感で感じたその全てが
俺の身体に残ってて、
こんなに愛しい気持ちにさせる。
京セラでの2daysの隙間時間に
俺が立ち寄ったのは、
前に◇にお土産を買ったお店。
可愛い子犬が鬼の着ぐるみを着た
キーホルダー。
お前みたいでしょって渡したら
どーゆーことだって怒られたけど…
でも可愛いって喜んでくれて、
◇はずっと鍵につけてくれてた。
岩)……
前と同じその棚を眺めると、
可愛い子犬シリーズのキーホルダーが
他にもあって。
俺は今度は
可愛い子犬が天使の着ぐるみを着た
キーホルダーを買った。
そこから少し歩くと、髪飾りのお店。
俺が髪につけてやると大喜びで…
それからも気に入って、
ヘビロテしてくれてた。
今はもう…使ってないよな、きっと。
「剛典にもらったものは
全部すっごく嬉しかったもん!
大好きな人からもらったものは
全部全部宝物だもん!
絶対忘れないもんっ!!」
そう言ってたけど…
サンストーンのブレスレットだって
あれから一度も見てない。
……そりゃそうだよな…。
岩)……
もう全部…捨てられたんだろうか。
「未練なんてこれっぽっちもないし
気持ちなんてカケラも残ってないから
物は物として使ってるわけ。」
前にそんなことも言ってたけど…
使ってないってことは…
俺に気持ちが残ってるってことかな…。
そんなポジティブに考えたい俺は、
やっぱり馬鹿かな。
岩)……
◇の気持ちはわからないけど、
どっちでもいい。
俺が◇を好きだから。
岩)すみません、これください。
俺はまた
◇に似合いそうな髪飾りを包んでもらって
バッグにしまった。
それから二日目の公演を終えて
その足で新幹線に乗って東京に戻って。
疲労もピークで
俺はその日は泥のように眠った。
そしてMステ生出演を控えた次の日。
新生EXILEで平場パフォーマンスするのは
初めてだから
みんな気合いいっぱいで。
昨日まで京セラでLIVEしてた
NAOTOさんも直己さんも
絶対疲れてるはずなのに、
そんな様子は一切見せずにリハに臨んでた。
もちろん俺も集中して
全力でリハを終えて。
その後の空き時間に花屋に走って
◇に届ける花を選んだ。
今日目についたのは、可愛いチューリップ。
岩)これって、花言葉なんですか?
女)紫は「不滅の愛」。
赤は西洋の花言葉で
「真実の愛」「私を信じて」ですよ。
岩)なるほど…。
じゃあ今日は赤にして、
明日は紫にしようかな。
そう決めて、また一輪包んでもらった。
今日届けられるとしたら、
生放送が終わった後。
日付が変わるか変わらないかくらい。
◇は今日…
Mステ見てくれるかな。
岩)……
前まではTVに出る時は
見てほしいって手紙に書いてたけど…
先週は手紙を書くのをやめてたし、
今日は手紙に書いても間に合わない。
……LINE、しようかな。
岩)…っ
どうしよう。
なんか緊張する。
だって…
もうずっとしてない。
◇とのトーク画面は
『おはよう。
昨夜は時間くれてありがとう。』
だいぶ前に俺が送ったメッセージで、
止まってる。
岩)……
どうしよう。
送ろうかな。
送っても…いいかな。
『大阪から帰ってきたよ。
今日はMステに生出演します。
良かったら見てほしい。』
そう打ち込んだけど、
「送信」をタップできなくて…
どうしようか迷ってると…
直)岩ちゃん!!
岩)わっ!!
後ろから直己さんに肩を叩かれた拍子に、
押しちゃった。
岩)…っ!!
どうしよう!!!
直)あのさ、ポッキーの振り付けだけど、
岩)それならちゃんと覚えてます!
もうそれどころじゃなくて
一人でスマホを握りしめたまま
オロオロしてると、
送ったメッセージに「既読」が付いて。
岩)…っ
しばらく画面を見つめてると、
◇から返事が来た。
『TVで見るね。
生放送頑張ってね。』
絵文字もスタンプも何もないけど、
そんな返事が来た。
岩)…っ
それが、嬉しくて…嬉しくて…
なんかもう、泣きそうで。
岩)はぁぁ…っ
俺はそのまま、テーブルに突っ伏した。
返事が来た。
◇から返事が来た。
TV見てくれるって。
頑張ってねって。
岩)…っ
どうしよう。
ほんとに泣きそう。
直)岩ちゃん…
岩)……
直)やっぱりこの振り付け、気に入らない?
岩)……はい???
いっぱいいっぱいで
すっかり存在を忘れてた直己さん。
慌てて顔を上げると
直己さんの凛々しい眉毛が少し下がってて。
岩)ええと…すみません。
何の話でしたっけ?
直)だから…ポッキーの…
岩)ああ!はい!!
ちゃんと覚えてますよ!
いいですよね、この振り!!
直)ほんと…?
岩)はいっ!!
俺が踊って見せると、
直己さんは安心したように笑ってくれた。
それから無事、生放送を終えて。
キレッキレでパフォーマンスした俺らは
十分な手応えと満足感で、ハイテンション。
「やっぱりEXILEって最高だよなー!」
とか、みんな口々に叫んでて。
みんなと同じワゴンだと時間がかかるから
俺はタクシーに飛び乗った。
少しでも早く、◇の家に行きたくて。
手には赤いチューリップ。
バッグの中には大阪のお土産。
胸をバクバクさせながら辿り着いた
モスグリーンのマンション。
タクシーを降りて、エントランスをくぐって。
いつもはポストに入れて帰るだけだけど、
ふと思った。
◇に会いたい。
顔が見たい。
岩)…っ
時間は0時ちょっと前。
こんな時間に非常識なのはわかってるけど
まだ起きてると思う。
今日は…
花だけじゃなくて、お土産もあるし…
直接渡したい。
っていうのを口実に、
やっぱり顔が見たい。
そんな気持ちがあふれて、
オートロックの前でしばらく悩んだ。
すぐ…帰るから。
渡したら、一瞬で帰るから。
自分の中でそんな言い訳をして、
勇気を出して、◇の部屋番号を押した。
『………はい。』
繋がった!!!
岩)…えっと…、……俺…だけど…。
『………。』
ヤバイ、めっちゃ緊張する。
岩)あの…さ、
渡したいもの…あるから…
一瞬だけ…入れてくれない…?
祈る気持ちでそう伝えると、
『………うん。』
小さな返事が聞こえて、
オートロックが解錠された。
岩)…っ
開けてくれた…!!
どうしよう…
めっっっっちゃ嬉しい。
……俺、なんかまた泣きそうだ。
相変わらずバクバクとうるさい心臓を
押さえながら
エレベーターに飛び乗って。
◇の部屋の前まで来ると、
ピンポンを鳴らす前に
◇がゆっくりとドアを開けてくれた。
岩)…っ
俺が緊張して固まってると、
◇)…入って…?
小さな声で、そう言われた。
……バタン。
岩)……
◇)……
パジャマ姿の◇を見て、
今の時間を思い出して…
岩)こんな時間に、ごめん…っ
俺は慌てて謝った。
◇)ううん…。
生放送…お疲れさま。
岩)…っ
…見て…くれたのかな…?
岩)…終わって…まっすぐ…飛んできた。
俺がそう言うと、
◇)TVで見てたよ。
◇はそう言ってくれて、
「カッコ良かったよ。」って
小さく笑ってくれた。
岩)…っ
……どうしよう。
なんかやっぱり俺、泣きそうだ。
岩)…見てくれて…ありがと…。
◇)……うん。
岩)……
◇)……
目の前にいる◇に、胸がぎゅっとなる。
岩)……えっと…、これ。
◇)……
俺が赤いチューリップを差し出すと、
◇の小さな手が
それをゆっくり、受け取ってくれた。
◇)……可愛い。
岩)……
花言葉は、あえて言わない。
言わなくてもきっと、
俺の気持ちなんてもう伝わってるはずで…。
◇)ありがとう。
そう言って小さく笑ってくれた◇に、
また愛しい気持ちがこみ上げる。
岩)……
◇)……
……そうだ。
お土産も渡さなきゃ。
岩)……あと、これ…。
◇)……
岩)大阪の…お土産。
◇)…買ってきて…くれたの…?
岩)うん。
キーホルダーの紙袋と、髪飾りの紙袋を
一緒に渡した。
◇)なぁに…?
岩)……
◇)……
岩)…恥ずかしいから…あとで開けて。
◇)え…?
渡してから、急に照れ臭くなった。
一人でいろいろ思い出しながら
勝手にまた買ってきて、
◇が喜んでくれるかなんて
わかんないのに。
岩)こんな時間に…ほんとごめん…。
◇)…っ
岩)これ渡したかっただけだから。
そう言って帰ろうと思ったけど…
真っ直ぐに俺を見上げる◇の目から
視線を外せなくて…。
岩)……ごめん。
ほんとは…顔、見たかった。
◇)…っ
岩)一瞬でいいから…会いたかった。
そんな本音が、口からこぼれた。
岩)……
◇)……
本音を口にしたら、
なんかまた泣きそうになって。
◇の目も潤んでいくから、
抱きしめたくなって、仕方ない。
俺は…
◇に伸ばしかけた手を、ぎゅっと握って…
◇の頬にそっと触れた。
岩)……
◇)……
………好きだよ。
抱きしめられない代わりに
そんな気持ちをまっすぐに込めて、
◇を見つめた。
岩)……ありがとう。
おやすみ。
離れたくなくなるから
そう告げて背中を向けると、
◇の声が俺を呼び止めた。
◇)剛典…っ
岩)…っ
名前を呼ばれただけで、
ドクンと跳ねる心臓。
◇)……ありがとう。
おやすみなさい……。
岩)…っ
その言葉にまた胸がぎゅっとなって、
俺はそのまま◇の顔を見ずにドアを閉めた。
岩)…っ
やっぱり好きだ。
どうしようもないくらい、好きだ。
◇の頬に触れた手のひらが
そう叫ぶように、熱を持ってる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
剛典が届けてくれた、赤いチューリップ。
花言葉は、
「真実の愛」「私を信じて」。
◇)……
まだ綺麗に咲いてるバラの花と一緒に
花瓶に挿した。
それからソファーに腰を下ろして
お土産の袋を開けてみた。
出てきたのは、
子犬が天使の着ぐるみを着たキーホルダーと、
キラキラ光るガラスビーズが綺麗な髪飾り。
◇)…っ
忙しいのに…
また買いに行ってくれたのかな。
今日だって…
生放送の後で疲れてるはずなのに…
わざわざ来てくれた。
少し顔色が良くなかった気がするけど…
大丈夫なのかな。
◇)……
あたしは白いダンボールの蓋を
そっと開いた。
前に奈良のお土産と交換した、
大阪のお土産。
ずっと大事に使ってた、あたしの宝物。
◇)……
気持ちを閉じ込めるみたいに
この箱に閉まってたけど…
もう、出してもいいかな…?
どうしたって、剛典のことが好きって
もう気付いたから。
……出してもいい…?
◇)…っ
キーホルダーと髪飾りを手に取ると、
涙が溢れてきて…。
閉じ込めてた気持ちまで、
あふれ出したみたい。
二つ並んだキーホルダーと
二つ並んだ髪飾り。
◇)…ひっく…っ
剛典が…あたしのために、選んでくれた。
◇)ふぇ…っ、…っ
ほんとは…好きなの…。
忘れたくなんか…ないの…。
◇)ぐすっ…、う…っう……
ひとつひとつ、ダンボールから取り出して…
その度に、
剛典の言葉とか笑顔が、蘇る。
一緒にいたのは…
まだ全然短い時間なのに…
全部全部、残ってる。
記憶に、心に、身体に。
剛典のこと好きって思った気持ちも…
剛典があたしにくれた愛情も…
全部全部、残ってるの。
◇)……う…う…、っ……
もう、一人じゃ抱えきれない。
……♡ちゃんなら…聞いてくれるかな。
◇)…っ
明日、話してみよう。
今の気持ち、全部…。
素直な自分の気持ち、全部。
そう決めて、
あたしは剛典にもらったナイトウェアを
抱きしめたまま、眠りについた。
ーendー
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マイコさんお誕生日だったんですか?
おめでとうございます♡♡
一気に希望の光みえてきましたね///
♡ちゃん役に立つか心配だけど
うまくアシストしてくれますよーに!笑
そうなんです(❁´ω`❁)ありがとうございます♡
♡ちゃんはきっとやってくれるはず!!✧ \( °∀° )/ ✧
マイコさん、こんばんわ❗
お誕生日おめでとうございます❗
がんちゃんと近いんですね
がんちゃんと◇ちゃん、
早くラブラブな二人になってほしいような、
楽しみを取っておきたいような
複雑なキモチです。。
多田さんの言葉のように、リアルな臣くんがんちゃんも
マイコさんのstoryのような良い恋愛をしててほしいなぁと思う今日この頃です
あの、臣くんの長髪、映画のためだっんですかね⁉️
短髪臣くんも近いかな⁉️
どうもありがとうございます!ヾ(≧∇≦)ノ”♡♡
二人のラブラブはまだまだ遠いですからご安心を…(❁´ω`❁)笑
私もほんと多田さんと同じ気持ちですよ…( ´•ω•)フゥ
今のロン毛での映画にはあまりテンション上がらず…。゚(゚´ω`゚)゚。
短髪がいいけどロン毛ならイニミニヘアにしてくれ…
岩ちゃんと◇ちゃん、また元に戻りそう!マイコさん、このまま岩ちゃんと◇ちゃんを元に戻してー一!!(๑•̀ㅁ•́๑)✧早く戻ってほしいです。
え〜〜〜(❁´ω`❁)そんな早く戻ったらつまらんじゃん〜? ←
いつもすっっっごく楽しみに読ませてもらっていて、待ちに待った岩ちゃん編が来たうえに、◇ちゃんが本当の気持ちに気付いたお話だったので、コメントせずにはいられず初コメしちゃいました❢❢❢
岩ちゃんの優しい気持ちにすっごくホッコリしました♡
続きすっっっごく楽しみにしてます❢❢
ヒロマロンさん(っ≧ω≦)っ
初コメありがとうございます♡♡
そうなんです!やっと剛典暗黒期に光が見えてきました!w
どうぞ最後まで見守ってやってくださいまし♡