[134]埋まらない隙間(岩&◇Side)

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土曜日。
♡ちゃんの誕生会の帰りに
うちのマンションで修羅場になって。
 
 
日曜日。
いくら電話してもLINEしても
◇からは返事がなくて。
 
 
浮気だって勘違いされてたらどうしようって
とりあえず話を聞いて欲しくて
◇のマンションまで会いに行った。
 
でも、◇はいなくて。
 
 
しばらくマンションの前で待ってたら
タクシーから降りてきた◇の姿。
 
車の中には見知らぬ男。
 
◇はタクシーが見えなくなるまで
見送ってて…
 
 
その男誰だよ。
ずっと一緒にいたわけ?
何してたの?
俺のことシカトして他の男といたのかよ
って。
 
気付いたら嫉妬でもう冷静じゃなくなってた。
 
 
「誰、さっきの男。」
 
 
俺の問いに俯いたまま答えない◇に
イライラして…
 
 
「どこ行ってたんだよ!!」
 
 
俺が声を荒げると、
ようやく顔を上げた◇は…
 
ひどい顔をしてた。
 
 
さっきまで泣いてたような…
泣き腫らしたような目をしてて…。
 
 
なんで…
 
俺の知らないとこで泣いて
俺の知らない男に
慰められてたのかよって…
 
 
泣かせた原因が自分だってことにも
一瞬気付けないほど
嫉妬が先に来て。
 
 
「剛典に関係ないでしょ。」
 
「んなわけねーだろ。」
 
 
そんな言い方をすれば
言い争いになるのは当たり前で。
 
 
◇がナンパについてったってわかって、
もう冷静じゃいられなかった。
 
 
なんで?
 
お前そんな女じゃないじゃん。
なんでついてくわけ?
 
俺と喧嘩してるから?
だから他の男と遊んだわけ?
 
なんかされたらどうすんの?
 
てゆーか…
もう何かされてたらどうしよう。
 
 
醜い嫉妬で、一気に心が支配された。
 
 
「……頼むから…
 他の男とフラフラ遊ぶの、やめて。」
 
「は…?」
 
「ヤケになって
 わけわかんない男と遊ばないで。」
 
 
俺のその言葉に、◇はブチギレて。
 
 
「わけわかんない男はあんたでしょ!!!
 平気で女とワンナイするような男に
 カラオケやご飯行っただけで
 文句言われたくないっ!!!
 どの立ち位置で偉そうに言ってんの?!」
 
 
何も…言い返せなくて…
 
 
「大っっっ嫌い!!!!!!!」
  
「二度と来ないで!!
 電話もLINEもしてこないで!!!」
 
 
そう言われた。
 
 
泣き腫らしたような目で言われた
大っ嫌い、って言葉が…
 
胸に思いきり突き刺さった。
グッサリと。
 
 
そこまで言われて
やっと少し冷静になって…
 
◇の言う通りだよって
自己嫌悪に陥って。
 
 
◇の目があんなに腫れてたのは
俺のせい。
 
 
てゆーか…
なんで泣くんだよ?
 
浮気じゃない。
俺は浮気なんかしてない。
 
あんな女、もう関係ないのに。
 
誤解してんの?
 
 
 
俺は…
 
◇を誰かに取られるのは
死んでも嫌だ。
 
 
他の男と一緒にいるところを
見ただけで
 
こんなに嫉妬で狂いそうなのに。
 
 
……もう…
 
どうしたらいいのかわからない。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
月曜日。
 
気分は最悪。
 
 
だけどいつも通りちゃんとメイクして
会社に向かう。
 
 
◇)はぁ……
 
 
彼氏と何かあった時に
見た目もボロボロになっちゃう子って
たまにいるけど
 
あたしは絶対そうなりたくない。
 
 
あんな奴のために
そんな風になってたまるか!!
 
 
昨日の剛典を思い出すだけで
心が真っ黒になって…
 
イライラするのに、
腹立つのに、
 
ずっと待ってたのかな、とか…
忙しいのにわざわざ来たのかな、とか…
 
少し泣きそうになってた
剛典の顔とかが頭によぎって…
 
 
それがイライラと混ざって
もう心がぐちゃぐちゃになって
 
 
◇)ああああッッッ!!怒
 
 
ほんとに考えたくない!!
もう嫌ッッッ!!!!!!!
 
 
多)◇ちゃんおはよ〜〜♡
◇)あ、多田さん、おはようございます!
 
 
よし、いつも通り。
いつも通りだ。
 
あんな奴のことなんか頭から消して
いつも通り仕事して
あたしの日常を取り戻すんだ。
 
 
多)むふふふ♡
  もう楽しみで楽しみで
  仕事が手につかないわぁ〜〜♡
◇)はい??
 
 
何が?
 
 
多)だって、あと二日…♡
  もう顔がニヤけちゃう〜〜♡
◇)……
 
 
そう言われて、ハッとした。
 
 
二日後の水曜日。
三代目のLIVE。
さいたまスーパーアリーナ。
 
多田さんと行く約束してたんだった。
 
 
どうしよう。
 
マジで頭からスッポリ抜けてた。
 
 
多)何着て行こうかな〜〜♡
◇)……
 
 
絶対行きたくない。
死んでも行きたくない。
 
剛典にチケットもらうなんて
まっぴらごめん。
 
てゆーか連絡も取りたくない!!
 
 
でも…
 
どうしよう。
 
 
多田さんにそんなこと今更言えないし
こうなったらいくらかかってもいいから
あたしがオークションでゲットする?!
 
もう、それしかない!?
 
 
◇)…あの……
多)なぁに〜?♡
◇)もし…あたしが行けなかったら…
  多田さん他に誰か…いますか?
多)ええっ!!
  ◇ちゃん行けないの?!
◇)…っ
 
 
だって…
今、あいつの顔が
地球上の生命体の中で一番見たくないんです。
 
 
多)もし無理なら…娘を誘ってみるけど…
◇)娘さん、行けますか!?
多)うん、行きたがってたし。
◇)じゃあ…お願いします!!
  本当にごめんなさい!!
 
 
本当に申し訳ないけど…
 
よし、あとはチケットだ。
 
 
多)はぁ…でも…
  もうすぐ生岩ちゃんに会えるかと思うと
  本当に幸せ〜〜♡
◇)……
 
 
その名前は控えていただきたい…。
 
 
多)岩ちゃ〜〜〜ん♡
◇)……
 
 
こんなに目をハートにさせてる人の向かいで
同じ人間をこんなにも憎んでて、
…なんか…ごめんなさい。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
『Unfair World』のMV撮影が終わって…
 
 
相変わらず◇は
電話もLINEも無視だったけど、
それでも俺は
◇のマンションまで会いに行った。
 
 
『もう一回話したい。
 下で待ってるから。
 少しでいいから時間ください。』
 
 
そうLINEしても既読にならなくて
電話をかけても出てくれなくて。
 
 
岩)はぁぁ………
 
 
どうしたらいいんだろう、ほんとに。
 
 
それから2時間待ったけどダメで。
 
 
もしかして家にいない?
 
また他の男といたらどうしよう。
 
 
そんな不安がどんどん膨らんで…
 
 
『今日は帰ります。
 でももし話する気になってくれたら
 すぐ戻ってくるから連絡ください。』
 
 
そうLINEをして、家に帰った。
 
 
 
……
 
 
 

 
 
 
翌日、火曜日。
 
今日からまた植物図鑑の撮影で。
 
 
女)よーし!オムレツの特訓ですね!
岩)はい、よろしくお願いします。
 
 
スタッフさんが
俺にいろいろ教えてくれる。
 
 
女)うーん、やっぱりまだ
  ぎこちないかなw
岩)すみません…。
女)いいのいいの!
  初めてにしちゃ上出来ですよ!w
岩)……
 
 
だって…
初めてじゃないもん…
 
◇といっぱい…
練習したもん…
 
 
充)あーー
  イツキ頑張ってるーーー
岩)あ、さやか。
充)美味しいオムレツ食べさせてね♡
岩)あはは、頑張りますw
 
 
充希ちゃんとは
撮影中は役名で呼び合うことにしてて。
 
敬語もナシでって決めたから
普通に友達みたいに話してる。
 
 
岩)はぁ…、疲れたーーっ
充)あははは、お疲れさまw
 
 
一通り練習を終えて、お昼ご飯。
 
ずっと気になってた携帯を見ても、
◇からは何もなし。
 
 
岩)……はぁ…。
充)どうしたの、暗いよw
岩)ああ、ごめん。
充)なんかあった?
岩)……
 
 
なんかもう…
どうしていいかわからない。
 
 
話し合えたら前に進めるけど
連絡も取れない今の状況じゃ…
 
 
岩)女の子の怒りって…
  どれくらいで冷めるもの…?
充)はい?!ww
 
 
俺の質問に笑い出す充希ちゃん。
 
 
充)ああ、はいはい、なるほどw
  彼女と喧嘩中なのね?
岩)……
充)うーん…
  まぁ人それぞれじゃないかなぁ。
  ずーーーーーーっと怒ってる人もいれば
  一晩たてば忘れちゃう人もいるだろうし。
岩)……
 
 
ずっとシカトされてるってことは
ずっと怒ってるタイプなのかな。
 
 
充)あとは怒らせた内容にも
  よるだろうしねっ!
岩)……
 
 
怒らせた…内容…
 
 
岩)彼氏にブチギレたこと、ある?
充)ええ?!w
  うーん、なくは…ないかな。
  誰でも喧嘩くらいするでしょ?
岩)うん。
  その時はどうやって仲直りしたの?
充)えーーーもう忘れちゃったなぁ。
  自然に?
岩)……
 
 
自然って、なに!!
 
そんなの出来たら苦労しないし!!
 
 
充)でもなんか意外〜〜w
  岩ちゃんでも彼女を怒らせちゃったり
  するんだね。
岩)え?
充)なんかそういうのも
  そつなくこなしそうだもん。
岩)……
 
 
そう言われてみると、
こんなの初めてかも。
 
 
彼女と喧嘩とかは
もちろんしたことあるけど…
 
相手が怒ってても
ほっときゃ機嫌直るだろくらいで
いっつも放置するタイプだったのに
 
なんで俺今こんな必死になってんだろ。
 
 
充)自分のペースではいかないような
  相手なのかなーー♪
岩)え…?
充)それだけ相手がうわてか、
  それだけ自分が好きになっちゃってるか。
岩)……
 
 
どっちも…です。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
多)いよいよ明日よぉ〜〜〜♡
  もうどうしよう〜〜〜♡
◇)……
 
 
ヤバい。ヤバい。
どうしよう。
 
オークション見てるけど
マジでチケットクソ高くて…
 
ポチる勇気がなくて、
ずっと画面とにらめっこ中。
 
 
いや、買うよ?
もちろん、責任取るよ!?
 
でも…
もう少し待ったら
もう少し安くなってくれたりしないかな、
なんて…
 
苦しい悪あがき。
 
 
なんであんな奴のLIVEが
こんな値段なんだよ!
ばっきゃろーーー!!!
 
 
……って、他の6人に罪はないか。
 
 
◇)あ……、
 
 
またLINEが来た。
 
剛典から。
 
 
◇)……
 
 
ずっと開きもしないで無視してんのに、
今度は何。
 
 
『明日、関係者入り口で
 お前の名前言ってくれたら…』
 
 
◇)ん??
 
 
ロック画面には
途中までしか表示されないから
 
仕方なくLINEの画面を開いた。
 
 
『明日、関係者入り口で
 お前の名前言ってくれたら
 入れるようにしてあるから。
 明後日も。
 多田さんと来るんだよね?
 LIVE終わった後、少し話せる?』
 
 
◇)はぁ?怒
 
 
なんであたしが行くことになってんだよ!
行くわけないだろ!!!
 
 
◇)…っ
 
 
でも…
 
チケットは元々約束してたし。
多田さんのためだし。
オークションアホみたいに高いし。
 
仕方ない。
返事するか。
 
 
『約束通りチケットご用意していただき
 どうもありがとうございます。』
 
 
一言だけ返して、すぐに画面を閉じた。
 
 
◇)多田さん。
多)なぁに〜〜?♡
◇)……
 
 
ああ、多田さんの周りに
お花が飛んでる。
 
 
◇)明日、関係者受付で
  あたしの名前言ってください。
  そしたら入れるそうです。
多)きゃっ!!
  関係者受付なんて…ドキドキしちゃう!
  どうしようっ///
◇)娘さんと行かれるんですよね?
多)うんっ!
◇)楽しんできてくださいね♡
多)本当にありがとう!
  ◇ちゃんっ!♡♡
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
岩)何この業務的な返事…。
 
 
やっと既読になって
やっと返事が来たと思ったら、コレ。
 
 
終わった後に話せるか聞いたのに
そこはスルー。
 
 
岩)はぁ……
 
 
でも…
LIVEは観に来てくれるってことだよな?
 
良かった…。
 
 
俺、明日めっちゃ頑張る!!!!!
 
またカッコイイって…
少しでも思ってもらえるように…
死ぬ気で頑張るから…
 
 
『ありがとう。
 お前が来てくれるの待ってる。
 終わったらすぐ連絡するから。』
 
 
だから…
 
 
頼むから、話、させて。
 
 
 
……
 
 
 

 
 
 
なんて、
 
そんな俺の願いも虚しく。
 
 
 
たまアリ1日目。
 
 
俺が招待した席にいたのは
恐らく多田さんであろう女性と
全然知らない若い女の子だった。
 
 
◇は相変わらず
電話もLINEも返事がなくて…
 
 
『明日は観に来て、お願い。
 待ってるから。』
 
 
そう送ったLINEすら既読にならなくて
たまアリ2日目。
 
 
招待席にいたのは
昨日と同じ二人だった。
 
 
岩)はぁぁ…………
 
 
……来てくれなかった。
 
 
もう…
 
どうしたら…
 
 
♡)あ、岩ちゃん、お疲れさま!
岩)…っ
 
 
今日も来てたんだ、♡ちゃん。
そりゃそうだよな。
 
臣さん念願の関東公演だもん。
 
 
♡)ね、岩ちゃん…
岩)……
♡)◇ちゃんって…来てないの?
岩)……
♡)昨日あの後LINEしたんだけど
  返事なくて…
  今日も会社でも会わなかったし…
岩)……
 
 
♡ちゃんには何も言ってないんだな。
 
 
♡)何かあったの?
岩)……
 
 
その問いに、俺は答えられなくて…
 
 
臣)たーだいまっ♡
♡)わわっ!
臣)今日も良い子にしてたか〜〜♡
♡)わーん!
  わしゃわしゃしないで〜!w
臣)あはははっw
 
 
シャワーから戻ってきた臣さんと♡ちゃんを
引き離すように、
入り口から聞こえた声。
 
 
H)登坂と岩ちゃん、ちょっといい?
臣)え?
H)来て。
岩)…っ
 
 
HIROさんに呼ばれて…
 
 
臣)ちょっと待ってて。
♡)うん。
 
 
俺と臣さんはそのまま控え室を出て、
別室に向かった。
 
 
H)LIVE終わりにごめんね。
臣)いえ。
H)お疲れさまでした。
岩)はい。
 
 
HIROさんの表情は
いつもと変わらないけど…
 
なんとなく空気でわかる。
あまりいい話じゃない。
 
 
H)これなんだけど。
 
 
そう言って俺たちの前に出されたのは…
週刊誌の…記事…?
 
 
H)一応読んで確認して。
岩)…っ
 
 
そこには、
 
『レコ大三代目JSBの夜の顔!』
 
そんな見出しが書かれてて…
 
 
『2014年にレコード大賞を受賞し
 今やノリに乗っている三代目JSB。
 
 次から次へと新しい仕事が舞い込み、
 今現在は自身初となるドームツアーの
 真っ最中で、多忙な日々を送っている。
 
 だがその裏ではしっかりと
 女遊びをする時間もあるようだ。
 
 まずはヴォーカルの登坂広臣。
 彼はグラビアアイドルが大好物なようで
 現在は大手HプロのCと熱愛中。
 
 7月×日。
 都内で行われた某パーティー会場でも
 終始仲良く腕を組み、
 ベッタリと寄り添う姿をキャッチした。
 
 会場から早々に姿を消すと、
 今度は一緒にタクシーに乗り込み
 そのままホテルへと姿を消した。
 
 別日にもCが登坂のマンションに通う姿を
 小誌は複数回捕えている。
 
 C本人に直撃してみたところ、
 登坂との交際を認めた。
 
 だがしかし、登坂はC以外にも
 女の影が多々窺える。
 
 駐車場で日替わりのように
 グラビアアイドルたちとキスをしている姿を
 小誌は目撃している。
 
 どうやらCとの交際だけでは満足できずに
 グラビアアイドルを次から次へと
 自宅に連れ込んでいるようだ。
 
 
 続いて、今や巷で ”王子様”と呼ばれ
 人気急上昇の岩田剛典。
 
 彼はパフォーマーという立場でありながら
 その甘いマスクでヴォーカル並の人気を
 集めている。
 
 だがしかし、そんな王子様も
 裏では冷酷な顔を見せていた。
 
 7月〇日。
 岩田のマンション前で
 男女の言い争う声を聞きつけ
 カメラを向けると、
 それはなんと岩田本人だった。
 
 お相手は高級クラブのホステス。
 言い争った後、泣きながら走ってくる彼女に
 小誌が突撃インタビューしたところ、
 彼女は全てを我々に話してくれた。
 
 岩田のマンションには何度も通っており
 身体の関係もあったと話す彼女は
 どうやら岩田に捨てられたようだ。
 
 この日、岩田は別の女と一緒に
 自身のマンションに帰宅。
 
 ホステスの彼女には甘い言葉を囁きながら
 当たり前のように他にも女がいたのである。
 
 泣きすがる彼女を怒鳴りつけ
 真夜中に追い返す男。
 
 あの甘い笑顔の裏には
 とんでもなく冷酷な本性が隠されていた。
 
 
 このように女関係が絶えない三代目JSB。
 
 今の彼らの勢いを考えると
 これから先も被害に遭う女性は
 さらに増えそうだ。』
 
 
臣)はぁ!???怒
 
 
読み終えた臣さんが
隣で記事をテーブルに叩きつけた。
 
 
臣)ざっけんなよ…ッ
H)……
岩)……
H)じゃあ、登坂から聞いていい?
臣)……
H)どこまで本当?
臣)全部ガセです。
H)……
 
 
臣さんはキレながらも冷静に
事情を説明した。
 
 
パーティーでCと一緒になって
ベタベタまとわりつかれてうざったいから
タクシーにぶちこんで帰らせた、って。
 
 
H)この子が登坂のマンションに
  入っていってるこの写真は?
臣)マジで知らないです。
  なんだよコレ。怖すぎんだけど。
岩)……
 
 
写真のマンションは、
間違いなく臣さんのマンション。
 
 
H)ハメられたかな。
臣)え…?
H)この子に。
臣)……
H)どこで登坂のマンション知ったのか
  わかんないけど…
  わざと撮らせたんじゃない?
臣)……ストーカーかよ……
岩)……
 
 
写真は、違う服装のCが
何度も臣さんちに入っていくところで。
 
わざと撮らせたんだとしたら
悪質すぎる。
 
 
H)この駐車場の写真は?
臣)…っ
岩)……
 
 
駐車場の方の写真は…
 
車の中とか扉の手前とかで
臣さんがキスしまくってる写真が
大量にあって。
 
 
臣)全部、♡です。
H)……
岩)……
 
 
だよね。
 
臣さんが他の女とキスするわけないし。
 
 
臣)ええと…///
H)……
臣)……すみません…///
H)別に謝ることないよ。
  駐車場ってマンションの敷地内だし。
  こんなとこまで入ってくる方が違法だよ。
岩)……
 
 
ほんと…
なんでこんなアングルで撮られてんの。
怖いんだけど。
 
 
H)全部同じ女の子だってのも
  撮ってる人間はわかってるだろうに
  あえて顔がわからない写真だけ使って
  複数の女ってことにしてる。
臣)……
H)タチ悪いな。
岩)……
 
 
そう言ったHIROさんの目が
今度は俺に向いた。
 
 
H)岩ちゃんの方は?
岩)……
 
 
一気に気分が重くなる。
 
 
岩)本当にすみません。
  注意が足りませんでした。
H)……この子は友達?
岩)……いえ。
H)……
岩)一回だけ…。
H)……
岩)何度もうち来てるとかは嘘です。
H)……
岩)で、この日は…
  マンションのエントランスで
  彼女と鉢合わせて…
臣)え…っ
H)◇ちゃんと?
岩)はい。
 
 
そう答えて、勝手にため息がこぼれた。
 
 
岩)それで…ちょっと俺、
  冷静じゃなくて…
H)……
岩)帰れって追い返したのは本当です。
H)……そっか。
岩)……
 
 
最近パパラッチがいることもわかってたのに…
俺はほんとバカだ。
 
 
岩)本当にすみません…。
H)うん、わかったよ。
岩)……
H)多分、二本立てにしたくて無理矢理
  二人の記事を合わせてきたんだよ。
臣)なんで……
H)売れれば叩かれるから。
  今が一番狙われるのは仕方ないよ。
岩)……
 
 
レコ大取った直後で注目されてるから、か。
 
 
H)岩ちゃんは今後、気をつけて。
岩)…っ
H)◇ちゃんのフォローもちゃんとね。
岩)はい…。
H)で、登坂だけど…
  マンションの駐車場って
  住人以外も入れるの?
臣)はい。
H)そうか。
  じゃあまた撮られるかもな。
臣)いや、もうこんなとこで…
  その…、撮られるようなことしません//
H)あはははw
  でもこの子がまた何か仕掛けてくるかも
  しれないし。
臣)はぁぁ……
  なんだよこの交際認めたって。
  ふざけんなよ。
H)なんか恨まれるようなことした?w
岩)……
 
 
この子とヤッたのって
確か健二郎さんとNAOTOさんだよな。
 
臣さんのこと狙ってるのは
みんなわかってたけど…
 
 
臣)………あ。
H)……
岩)……
 
 
心当たりありそうな臣さんが
すいませんってHIROさんに謝った。
 
 
H)とりあえずこの記事は
  こっちで処理するから。
臣)はい。ありがとうございます。
岩)本当にすみませんでした。
H)はい。じゃあお疲れさま。
 
 
……バタン。
 
 
臣)……はぁ。
 
 
部屋を出ると
臣さんがイライラしながら
ため息をついて…
 
 
重い足取りで、二人で控室に向かって歩いた。
 
 
臣)もう引っ越してぇ。
  気持ちわりぃ。
岩)……
 
 
あんだけ写真撮られたら…そうなるよな。
 
 
岩)♡ちゃんに言うの?
臣)……いや、言わない。
岩)そっか。
 
 
無駄に心配させたくないんだろな。
 
 
臣)つーか岩ちゃん大丈夫なの?
岩)……
臣)鉢合わせたって…
岩)……
 
 
全然大丈夫じゃないんだよね。
ガン無視されてるし。
 
 
♡)あ、おかえりなさぁい♡
 
 
控え室のドアを開けると、
♡ちゃんの天使みたいな笑顔が待ってて…
 
 
臣)……
 
 
ぎゅむっっ
 
 
♡)わっ、どうしたの?//
 
 
いきなり抱きしめた臣さん。
 
うん、気持ちはわかる。
 
 
臣)♡ーーーーー
♡)なぁに?//
臣)……好き。
♡)???///
 
 
状況がわからず
臣さんの腕の中でパニパニしてる♡ちゃん。
 
 
岩)……
 
 
いいなぁ…
 
俺も◇を抱きしめたい。
 
……会いたいよ。
 
 
臣)はぁ、充電完了。よし、飯食お。
 
 
そう言った臣さんに、背中をポンと叩かれて
俺たちは飯を取りに行った。
 
 
臣)……で?
  ◇ちゃんはキレてんの?
岩)……
 
 
戻ってきてトレイを並べて座るなり
臣さんが聞いてきた。
 
 
岩)……うん。
♡)え!どうして?!
岩)……
 
 
あの夜のことを俺が簡単に説明すると
♡ちゃんはショックを受けた顔をして…
 
 
臣)会社で会ってないの?
♡)うん。LINEも返事来ないし…
臣)そっか。
♡)……
 
 
♡ちゃんはしょんぼり俯いた。
 
 
臣)浮気したわけじゃないんだから
  ちゃんと話せばわかってくれんじゃない?
岩)……うん。
 
 
だからちゃんと話したいんだけど…
 
 
岩)全然連絡取れないから…。
 
 
話が出来なきゃどうにも出来ない。
 
 
岩)……やっぱり…
  浮気だと思ってんのかな。
臣)……
岩)それ以外、怒るとこないよね。
臣)いや、なくはないんじゃん?
岩)えっ!!
 
 
なんで?!
他に俺、なんかした!?
 
 
臣)そーゆー女をまだちゃんと
  清算してなかったのかよっていう
  だらしなさへの怒りとか…
岩)…っ
臣)そーゆー女を泊めた家に
  自分を泊めようとしたのかよっていう
  無神経さへの怒りとか…
岩)…っ
 
 
ヤバい。
 
俺、弁解することにばっかり必死で…
そんなとこまで考えてなかった。
 
 
岩)清算してないっていうか…
  俺から連絡なんてしてないし
  連絡先も知らないんだけど…
臣)でもそーゆー女が家まで来るってだけで
  いい気はしないじゃん?
 
 
そう言った臣さんの横で
激しく頷く♡ちゃん。
 
 
岩)確かに…他の女の子が
  来たこともあるけど…
  でも俺、めっちゃ掃除したんだよ?!
臣)……
 
 
◇が来るからって
部屋全部綺麗にしたのに…
 
 
臣)そういう問題じゃないんじゃない?
 
 
あ。
また♡ちゃんが激しく頷いてる。
 
 
♡)……うちにも…
  誰か…来たことあるの…?
臣)え…っ
 
 
あ、ヤベ。
臣さんに飛び火した。
 
 
♡)最初は臣くん…
  あそこで一人暮らしだったでしょ…?
臣)いや、ない!!
♡)え…?
臣)お前と会った直前に
  あの家に引っ越したばっかりだから
  ない!!
♡)……
岩)……
 
 
必死にそう言う臣さんを
♡ちゃんがじーーっと見てる。
 
 
まぁあってもないって言うよね。
言うしかないよね。
 
真相は知らないけど。
 
 
臣)ほんとにないから!
  誰も泊めてません!!
♡)……
臣)ほんとだって!!
 
 
ぎゅーーーっ
 
 
♡)……誤魔化しぎゅー?
臣)違う!!
♡)……
臣)大好きのぎゅー……。
♡)……
臣)……
♡)……えへへ♡
 
 
あ、丸く収まった。
 
 
てゆーか大好きのぎゅーってなんだよ!!
俺の前でイチャつくな!!
 
 
臣)あ、ごめん。◇ちゃんの話だった。
岩)そうだよ!!!
 
 
ったくもう。
 
 
♡)えっと…
岩)ん?
♡)あの、ね。
  さっき臣くんが言ったようなことで
  怒ってる可能性もあるけど…
岩)……
♡)一番は、もっと違うことなんじゃ
  ないかな…。
岩)え…?
 
 
違うことって…なに?
 
 
♡)怒ってるっていうより…
  悲しいと…思う…。
岩)え…?
♡)岩ちゃんが他の女の子と遊んでたのが
  ◇ちゃんと付き合う前だとしても
  もう◇ちゃんには出会ってたんでしょ…?
岩)……
♡)えっと…
  付き合うまでの二人のこととか…
  全部知ってるわけじゃないけど…
岩)……
♡)◇ちゃんに好きって言ったり…
  キスしたりとか…
  付き合ってなくても
  もしそういうことをしてたなら…
岩)……
♡)それが一番悲しいと思う。
 
 
そう言って♡ちゃんはまた俯いた。
 
 
♡)好きって言ってくれてたのに…
  知らないところでは
  そんなことしてたのかな、って。
  あれは嘘だったのかな…って。
岩)……
♡)そう思ったら…
  悲しい気持ちで…
  いっぱいになっちゃうから……
岩)…っ
 
 
そう言った♡ちゃんの瞳に
涙がいっぱい浮かんで…
 
 
臣)…なんで…お前が泣くの…、
 
 
それに気付いた臣さんが
慌てたようにまた
♡ちゃんを抱きしめた。
 
 
♡)だ…って……
  好きな人のこと…
  信じれなくなっちゃうのが…
  一番悲しいもん…っ
臣)…っ
岩)……
 
 
その言葉に、すごく胸が痛んだ。
 
きっと、臣さんも。
 
 
♡ちゃんが5月に家出したのも
そのせいなのに…
 
なんで俺は気付かなかったんだろ。
 
 
浮気だって勘違いして怒ってるとか
そんな単純な風にしか考えられなくて…
 
 
岩)……っ
 
 
◇は…
怒ってるんじゃなくて…
悲しいのかな…。
 
俺のこと…
信じられなくなった…?
 
 
……ガタンッ
 
 
岩)俺…っ、やっぱり今から行ってくる!
臣)えっ!!
  いや、とりあえず飯は食ってけば?
岩)もう食ったからいい!
  じゃあね、お疲れ!!
臣)お、おうっ…
 
 
急いで荷物をまとめて
車に飛び乗って。
 
 
目指すは◇のマンション。
 
会ってくれなくても、会いに行く。
 
 
ちゃんと話したいから。
 
 
俺が好きなのは◇だけだし…
 
他の女の連絡先なんか
もう全部消したっていい。
 
 
俺のこと信じられなくなったなら
もう一回信じてもらえるまで
俺、なんでもするから…
 
だから…
 
 
頼むから、話を聞いてくれ。
 
 
 
 
 
ー続ー

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  1. W.M より:

    はぁ?Cうざっ。なんやねんあの記事。
    まっ、臣くんは絶対にCなんかとヤらへんから。臣くんは♡ちゃんを愛してるから。

  2. マイコ より:

    ポメちゃん…。゚(゚^ω^゚)゚。ww
    何歌ってもいいけどマイケルだけは勘弁願いたい…。゚(゚´ω`゚)゚。

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