[127]大嫌い(◇Side)

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信じらんない。
 
信じらんない。
 
信じらんない。
 
 
最低。
 
最低。
 
最低。
 
 
◇)……
 
 
ボスッッ!!!!!
 
 
一人、家に帰ってきて
バッグをソファーにぶん投げた。
 
こんなんじゃおさまらない。
 
 
ふとキッチンに目をやると、
視界に入ったマグカップ。
 
剛典がくれたやつ。
 
 
本当ならあれを今すぐ床に叩きつけて
粉砕したいぐらい。
 
 
◇)……は…ぁっ
 
 
あたしはそのまま寝室に入って
ベッドにダイブした。
 
 
………剛典が、浮気してた。
 
 
帰りのタクシーは怒りでワナワナしすぎて
記憶がない。
 
 
ちょっと落ち着いて冷静になろうかな。
 
 
こういう時、頭に血がのぼってると
良くないよね、うん。
 
 
 
◇)はぁ……。
 
 
深呼吸して、記憶を整理する。
 
 
 
「岩ちゃん…っ!!!
 やっと会えた…っ」
 
 
エレベーターの前で待ってたら
いきなり聞こえてきた女の声。
 
 
誰だろうと思って見に行ったら…
必死に剛典に抱きついてる
派手な女がいて。
 
 
「どうして連絡くれないの!?」
 
「ちょっ!声デカイって!
 シーーッ!!汗」
 
 
剛典は慌てたように
女を黙らせようとしてた。
 
あれはきっと、あたしにバレたくないから。
 
 
だって、やましいことがないなら
別に聞かれたって困らないじゃん?
 
 
「あたし…ずっと待ってたのに…っ!
 もう2ヶ月も連絡くれないんだもんっ!
 あんなに優しくしてくれたのに…
 遊びだったの!?
 あたしは岩ちゃんが好きだから
 Hしたのに!!」
 
 
興奮した女が、そう言ってたっけ。
 
 
◇)……
 
 
ふーん。
Hしたのね、2ヶ月前。
 
 
◇)……
 
 
スマホを開いて
スケジュールを見てみる。
 
2ヶ月前って…
5月…丁度GWくらいか。
 
 
この時は…
剛典が忙しいのに無理して
あたしに会いに来てくれたんだっけ。
 
 
てゆーか。
 
 
あいつがうちに初めて泊まって…
初めてチューしてきたのも4月。
 
 
◇)……
 
 
初めて…あたしに…
好きだって…言ってきたのも
その日だった。
 
 
◇)……
 
 
あいつ…
 
うちに泊まったり
あたしに好きだとか言ったり
チューしたりしてた裏で実は
他の女と平気でヤッてたってことだよね…?
 
最低じゃない?
 
 
これ、ブチギレていいやつだよね?
 
 
◇)はぁ……怒怒怒
 
 
マジで今目の前にいたら殴り飛ばしたい。
 
 
ああ、ダメだ。
落ち着け、あたし。
 
冷静になるんだってば。
 
 
……ええと、
 
 
あの女に2ヶ月連絡してなかったっていうのは
あたしと付き合い始めたから?
 
 
つーか…
 
 
「ねぇ岩ちゃん…っ!その女…誰なの…?
 あんた岩ちゃんの何なのよ!!」
 
 
◇)お前こそ誰なんだよッッ!!
 
 
ボスッッ!!!!!
 
 
◇)はぁ…ッ…怒怒怒
 
 
思い出しただけでイラつく。
 
 
「そちらこそ、どちら様ですか?」
 
「あたしは…っ、岩ちゃんの…っ」
 
 
そう言いかけて、言い淀んでやめた。
どうせセフレかなんかだろ!!
だから言えないんだろ!!
 
 
ボスッ!!ボスッッ!!!
 
 
あんなアホみたいな女と遊んでたんだ、剛典。
 
 
「あんなに優しくしてくれたのに…
 遊びだったの!?」
 
 
あんなに優しくしてくれたのにって、何?
 
 
………怒怒怒
 
 
ただのセフレにも優しくするわけ?
 
優しくって、何するわけ?
 
 
想像しただけで、気が狂いそう。
 
 
あいつ…
やっぱりチャラ男なの…?
 
きっとあんな女、他にもいるんでしょ?
腐るほどいるんでしょ?
 
 
どんだけ遊んでたわけ?
今も遊んでんの?浮気してんの?
 
 
もしそうなら、死ねばいいのに。
 
 
もう考えたくない。
 
 
あんなクソ野郎のことなんか
考えたくない。
 
 
◇)はぁ。
 
 
あたしはベッドから降りて
お風呂に向かった。
 
 
一生懸命、思考を封鎖して。
 
シャワーを浴びて、お風呂に浸かって。
 
 
◇)……
 
 
なのに気付けば無意識にまた
考えちゃってる自分がいて。
 
それがさらにイライラさせる。
 
 
……ああ、そういえば。
 
臣さんも元クソ野郎なんだっけ。
 
それで♡ちゃん家出したんだもんね。
 
 
臣さんが散々遊んでて
クソ野郎だったんなら…
 
絶対剛典だってそうに決まってる。
 
 
あんな仕事してて
それなりに顔も良かったら
 
ウジ虫みたいなアホ女が
いくらでも寄ってくるんでしょ。
 
バッカみたい。
 
そんなに女遊びしたけりゃ勝手にやってろよ。
 
 
つーか
なんであいつ、あたしに手出したの?
なんなの?
 
ただ物珍しかっただけ?
落とせたら面白いとか思ってたわけ?
 
ふざけんなよ。
 
 
てゆーか
あたしはなんであいつのこと
好きになったんだっけ。
 
どこを好きになったんだっけ。
 
 
◇)……
 
 
もういいや、考えたくない。
 
 
って、さっきからもう考えたくないって
何回も思ってんのに
 
なんで頭から消えないの?
消えろよ!!!!!
 
 
◇)はぁ……。
 
 
お風呂から上がって携帯を手に取ると
剛典からアホみたいな着信の数。
 
 
◇)なんなの…。
 
 
あの女泊めたんじゃないの?
かけてくんなよ。
 
 
つーか…
 
あいつ、他の女を泊めた家に
あたしを呼ぼうとしてたわけ?
 
他の女とヤッたベッドで
あたしとしようとしてたわけ?
 
無神経すぎない?
 
 
どこまでもクソ野郎だな。
 
 
◇)もうかけてくんなッッ!!!怒怒怒
 
 
携帯をソファーにぶん投げて、
あたしはベッドにダイブした。
 
 
タオルケットを顔までかぶって。
 
 
◇)……っ
 
 
てゆーか。
 
このベッドも剛典と寝てたベッドだし。
 
なんかすごく嫌。
もう捨てたい。
 
てゆーかもう引っ越したい。
 
 
ほんとイライラが止まらないんだけど
どうしたらいいの。
 
 
今目の前にいたら全力で蹴り飛ばしてる。
 
 
剛典なんか、
 
 
大ッッッッッッッッ嫌い!!!!!!!!!
 
 
 
 
ーーー
 
 
 
ーー
 
 
 

 
 
 
ピチチチ…
 
ピチチチ…
 
 
 
◇)……
 
 
 
爽やかな小鳥のさえずり。
 
 
窓から差し込む、眩しい朝陽。
 
 
ああ、なんだか…
 
 
一晩経つと、怒りも落ち着くのね。
 
 
 
昨夜は剛典死ねって思ってたけど
今は割と冷静だわ。
 
どうでもいい、あんな男。
 
 
ただ単にあたしが
男見る目なかっただけ。
 
バカだな、あたし。
 
 
◇)ふぅ。
 
 
今日は日曜日。
 
友達とランチの約束してるから
出かける準備を始めた。
 
 
◇)……
 
 
昨日ぶん投げた携帯を取りに行くと…
 
 
不在着信、23件。
LINEは6件。
 
 
なんか…
どっかで見たなコレ。
 
ああそうだ。
♡ちゃんの携帯だ。
 
 
♡ちゃんが家出してうちに来た時、
臣さんから怒涛の着信があって。
 
あの時は臣さんだとは
知らなかったけど。
 
 
◇)はぁ…。
 
 
LINEの画面を開くと…
 
 
『もう帰ったの?今どこ?』
 
『電話出て。お願い。』
 
『家にいる?どこにいんの?』
 
『今から家行っていい?
 ちゃんと話したい。』
 
『ちゃんと家にいるのかだけ教えて。
 心配だから。』
 
『電話出て。お願いします。
 ちゃんと話させてください。』
 
 
やっぱり全部、剛典だった。
 
 
◇)……
 
 
ちゃんと話したいって、何?
 
何を話すわけ?
 
 
浮気相手がうっかりいきなり来ちゃって
修羅場になってすみませんでした〜〜、って?
 
バレないように浮気するつもりが
バレちゃいました〜〜てへっ、って?
 
 
ふざけんなよ…怒怒怒
 
 
……ああ、またイライラしてきた。くそ。
 
こんなの見るんじゃなかった。
 
 
ピロリロリロ♪ピロリロリロ♪
 
 
◇)うわっ!
 
 
びっくりした。
 
 
電話…、剛典からだ。
 
 
なに、いきなり。
 
LINE既読にしたから?
 
なんですぐ気付くの?なんなの?
 
 
出るわけないしっっ!!怒
 
 
◇)……
 
 
着信は3回もかかってきて
しつこく鳴り続けて。
 
あたしが出ないから、
その後にまたLINEが来た。
 
 
『話させてください。
 電話出て。ほんとお願い。』
 
 
◇)……
 
 
ふんっっ!!!!
 
絶対やだっっ!!!!!怒怒怒
 
 
 
……
 
 
 

 
 
 
女)それでね、職場の先輩に告白されて…
女)うっそ!///
◇)何それーーー!!///
女)付き合うことにしたの?
女)……(こくん)///
◇)きゃーー!!♡
  おめでとうっ!!♡
 
 
久々の女子会。
 
盛り上がるのはやっぱり恋愛ネタ。
 
 
ずっと先輩に片思いしてた友達が
ようやく両思いになったみたいで…
聞いてるあたしまで幸せ気分♡
 
 
女)でも…なんか…
  一緒にいるだけで
  すごく緊張しちゃって…///
◇)やだ、可愛い♡
女)デートで手を繋ぐのとかも…
  心臓がバクバクで…
女)わかるーー!!
  最初ってそうだよね!!
◇)……
 
 
デートかぁ。
  
剛典と会う時はいつも家だし…
 
 
…って、なんで!!
なんでまたあいつのこと考えてんの!
 
消えろっ!!
 
 
女)そういえば〇〇ちゃんって
  もう子供生まれたって!
女)そうなんだ!
女)全然遊びに出れないって
  ぼやいてたよーー
女)子育て大変なのかなーー
◇)……
女)あたし達も今のうちに
  いっぱい遊んでおこうね♡
女)うんうん!旅行もまた行きたい!
女)そうだねーー♡
◇)……
 
 
そうだ。
無駄な時間を過ごしてる暇なんかない。
 
 
◇)旅行行きたいっ!
女)また計画しよう♪
◇)うんっ!!
 
 
いっぱい遊んで、人生満喫して、
あいつのことなんか忘れてやる。
 
 
女)じゃあまたねーー♡
◇)うん、また!
女)バイバーイ♡
 
 
ランチ会が終わって、まだ15時。
 
 
このまま家に帰るなんて絶対やだ。
また悶々と考えちゃいそうだもん。
 
 
どうしようかな…
 
 
男)あれぇ〜、もしかして一人?
 
 
は?
 
 
男)もし時間あったら遊ばない?
  カラオケとか行こうよ。
 
 
てゆーかお前誰やねん。
 
 
男)ちっちゃくて可愛いね♡
 
 
ポン♡
 
 
◇)触んないで!!!怒
男)…っ
 
 
ただのナンパ野郎が気安く触りやがって。
ふざけんな!!
 
 
男)そんな怒んなくてもいいじゃんw
◇)あっち行って。
男)冷たいな〜〜〜w
◇)……
 
 
あたしに触っていいのは
剛典だけなんだから!!
 
 
男)ねぇねぇ、彼氏いるの?
◇)!!!
 
 
はっ!!
何言ってんだあたしは!!
 
あんな奴にこそ触られてたまるか!!
 
 
◇)あんたのせいで
  嫌なこと思い出したじゃん!!
男)…っ
◇)ふざけんなバカッ!!!
 
 
あたしはそのまま早足で
駅前を通り抜けた。
 
 
ああ、イライラする。
 
ストレス発散したい。
 
 
……カラオケ。
うん。カラオケいいな。
 
 
あんなナンパ野郎とは行かないけど
一人で行ってやる!!!
 
 
あたし、超絶音痴だから
人とカラオケなんて絶対行かないけど
 
一人ならどんだけ下手でもいいもんね!!
 
 
女)いらっしゃいませ。
  お一人様ですか?
◇)そうですけど!
女)ご利用時間はいかがなさいますか?
◇)6時間!!!
女)…っ、かしこまりました。
 
 
ふんっ!!
 
声が枯れるくらい歌い倒してやる!!
 
 
………って、思ってたのに。
 
 
◇)……飽きちゃった。
 
 
歌い始めて3時間。
 
もう歌う歌もないわい。
 
 
なんであたしってこんなに歌下手なんだろ。
 
♡ちゃんみたいに上手かったら
一人カラオケも楽しいんだろうな。
 
 
◇)はぁ……。
 
 
マイクを置いてパタリと突っ伏した。
 
 
なんかもう…疲れた。
 
 
もう…全部…やだ。
 
 
 
………コンコン。
 
 
 
◇)ん……?
 
 
店員さんかと思って顔を上げると、
全然知らない男がドアの向こうで笑ってる。
 
 
◇)……
 
 
じっと見てると、
遠慮がちにドアを開けてきて…
 
 
男)いきなりすいません。
  少し入ってもいい?
◇)は?
男)あ、俺隣で一人カラオケしてたんだけど…
◇)……
 
 
一人カラオケ仲間か。
 
 
男)すっげぇ豪快に歌う子だなって…
  さっきから面白くて…w
◇)は?!///
 
 
あたしのとんでもない歌、聞こえてたわけ?!
 
恥ずかしすぎる。死にたい。
 
 
男)どんな子なのかなーって思ったら
  全然イメージと違った。
  めっちゃ可愛いw
◇)……どんなん想像してたの。
男)……ジャイ子…?
◇)ぷはっww
 
 
その返答に
あたしは思わず吹き出した。
 
 
◇)ジャイ子って、ひどくない?!
  失礼すぎだし!!ww
男)いや、でも可愛い。
  ごめんなさいでしたw
◇)あはははっw
男)入って…いい?
◇)……いいよ。
 
 
あたしがそう言うと、
男の子は嬉しそうに飲み物を持って
部屋に入ってきた。
 
 
男)いっつも一人で来てるの?
◇)んーん、全然。そっちは常連?
男)うん。歌うのすげぇ好きで。
◇)へぇ、じゃあ上手いの?
男)どうだろw
◇)歌ってみてよ。
男)えーーー恥ずかしいw
◇)人の部屋に押しかける度胸あるくせに
  恥ずかしいんかい!w
男)…それもそうか…
◇)あはははっw
 
 
それから謎に二人でカラオケ大会が始まって。
 
男の子は普通に歌が上手いし
あたしが歌うと大爆笑だしで
 
気付けばあっという間に1時間。
 
 
男)はぁ、笑いすぎて苦しいww
◇)下手で悪かったなw
男)いや、ある意味最高ww
◇)笑いすぎだし!!
  はぁ、なんかお腹空いた。
男)俺もーーー!
 
 
そう叫んだ彼と、目が合って。
 
 
男)ご飯食べに行かない?
◇)…っ
男)カラオケは十分満喫したしw
◇)……
 
 
どうしよう。
 
でも…
悪い子じゃないし。
 
ご飯くらい…いっか。
 
 
◇)うん、行く。
男)やった!!w
◇)……
 
 
笑った顔が可愛くて、
少しあいつに似てる。
 
 
男)ねぇ、名前聞いていい?
◇)……◇。
男)俺は優助。
  優しく助けるって書いて優助ね!
◇)ふーん。
  そんな顔してるもんね。
優)どんな顔だよ!w
◇)……
 
 
優しそうっていうか、お人好しそうな顔。
 
 
適当に入ったイタリアンでも
丁寧にいろいろ取り分けてくれて。
 
 
◇)美味しい。
優)ねっ!
◇)……
 
 
ああ、笑った顔…
なんかやだな。
 
 
優)……どうしたの?
◇)あんた、笑うと犬みたい。
優)ひっでぇ!!ww
  俺さ、これでもたまに…
  芸能人に似てるって言われんだよー?
◇)ふーん。
優)知ってる?三代目の岩ちゃん。
◇)……
 
 
なんなの、もう。
 
やめてよ、ほんと。
 
 
◇)じゃあ女遊びしまくりだね。
優)は??
◇)しょっちゅーナンパして
  女取っ替え引っ替えしてんでしょ。
優)なんで!してないよ!w
  そんな風に見える?
◇)……
 
 
そんな風に見えなくたって
する奴はするだろ。
 
 
◇)誰かさんに似てるから信用できない。
優)…っ
◇)女好きのクソ野郎。
優)そこまで言う!?ww
 
 
優助はゲラゲラ笑ってる。
 
 
優)てゆーか◇ちゃん、口悪いねw
◇)そうだよ。文句ある?
優)いや、見た目とのギャップが…w
◇)ぶりっ子してほしかった?
優)そうじゃないってw
  でも…
◇)なに。
優)そういう子って案外、
  彼氏の前では可愛かったりするよね。
◇)……は?
優)あ、彼氏いるの?
◇)……
優)…いるのか、残念。
◇)……
 
 
あんな奴…彼氏じゃないもん…
 
 
優)なんでそんな怒った顔してんのw
◇)……
優)…あ、わかった!!
◇)……
優)もしかして、彼氏と喧嘩中とか?
  で、ストレス発散で
  普段行かないようなカラオケに
  一人で行って歌ってた!当たり?
◇)……
優)で、そこで変な男に絡まれて
  今謎に一緒に飯食ってる。
◇)…っ
優)で、こいつうぜーなーって思ってる。
◇)……そこまで思ってない。
優)あはっ、よかったーーーw
◇)……
 
 
思ってないけど、
あんたの笑った顔が、いや。
 
 
優)じゃあ彼氏の話は禁句ね?
  もう言わないから、そんな顔しないで。
◇)…っ、そんな顔って…何。
 
 
別にこれが普通の顔だしっ!
 
 
優)さっきみたいに、笑ってよ。
◇)……
優)…なんか…泣きそうな顔してる。
◇)…っ
 
 
そんな顔…してないもん…っ
 
 
◇)なんで…あたしが…泣くの…っ
優)…っ
◇)泣かないもん…ふざけんな…っ
優)……
 
 
視界が滲んで、目に溜まった涙を
指先で振り払った。
 
 
泣いてない。
あたしは…っ
 
 
優)……ん。
 
 
ポンポン…。
 
 
◇)…っ
 
 
やめてよ。
優しくしないで。
 
 
優)泣いて…いいよ…。
◇)…っ
 
 
そんな…剛典みたいな優しい顔して…
頭撫でないでよ……
 
 
◇)……ふ…っぇ…っ
 
 
なんで……
 
 
なんでなの。
 
 
 
あんなに…優しかったのに…
 
 
思わせぶりなこと…
いっぱいしてきたくせに……
 
 
 
どんな気持ちで…
あたしに触ってたの。
 
 
どんな気持ちで…
あたしの前で、笑ってたの。
 
 
 
◇)ふぇぇ……っっ
 
 
 
信じられない。
 
 
苦しい…。
 
 
 
優)ああ…もう……っ
 
 
涙が止まらないあたしを
気付いたら隣に移動してきてた優助が
優しく抱きしめてくれた。
 
 
優)よしよし……
◇)…っ
 
 
そのまま優助は…
あたしが泣き止むまで、ずっと…
 
ずっと抱きしめて、
頭を撫でてくれてた。
 
 
 
◇)……弱ってるところにつけ込んで
  そのままお持ち帰りしようとか
  思ってたんなら、
  そんな女じゃなくて残念だったね。
優)ぶっww
 
 
ご飯までご馳走してくれて
泣いてるあたしを見捨てないで側にいてくれて
 
優助の優しさはもうわかってる。
 
 
わかってるのに、
送ってくれてる帰りのタクシーの中でも
可愛くないことしか言えないあたし。
 
 
優)そんなこと思ってないよ。
◇)……
優)俺のことクソ野郎認定で話すの
  やめてくれないw
◇)だって。
優)ん…?
◇)顔が悪い。
優)はーー??
 
 
剛典に似てるとか、最悪。
 
 
◇)送ってくれても
  家になんか入れないからね。
優)わかってるっつーの!w
◇)お持ち帰りできないんだから
  あたしのことなんて
  ほっとけばいいでしょ。
優)……
 
 
そんなことばかり言うあたしの顔を
優助は困ったように覗いてきて…
 
 
優)こんなに目ぇ腫らしてる女、
  ほっとけないだろ。
 
 
そう言って、
また頭を優しく撫でてきた。
 
 
◇)撫で撫ですんな!!
優)なんで。
◇)…っ
 
 
また…泣きそうに…なるから。
 
 
優)……ほんと…素直じゃないな…。
◇)うるさいっ!!
優)……ん。
 
 
優助はあたしの頭を抱き寄せて
自分の肩に乗せた。
 
 
◇)…っ
 
 
あたしがまた泣いてるって…
わかって、気付かないフリ…してくれてる。
 
 
なんで、こんなに涙が出てくるの。
 
 
あたしは悲しいんじゃない。
怒ってたのに。
 
剛典なんて死んじゃえって
あんなに腹立ってたのに…なんで。
 
 
 
……
 
 
 

 
 
 
運)こちらでよろしいですか?
◇)……はい。
 
 
マンションの前にタクシーが着いて
あたしが財布を出そうとすると
優助の手に遮られた。
 
 
◇)なんで…
優)いいから。
◇)だって…ご飯もご馳走になったし…
優)いーのっ!
◇)…っ
 
 
なんだよ。
ほんとにただのいい奴じゃん、バカ…。
 
 
◇)ありがとう。
優)……ん。
◇)……
優)また泣きたくなったら、呼んで。
◇)え…?
 
 
そう言って渡されたメモには
汚い字で番号とLINEのIDが書かれてた。
 
 
◇)呼ばないからいらない。
 
 
それを返そうとすると、
ぎゅっと手に握らされて…
 
 
優)だーかーらーー
  下心はないってば!
  友達!
◇)え…?
優)友達になろ!
 
 
友達…?
 
 
◇)……
 
 
確かに…
一緒にいて…楽しかったし…
 
ご飯までご馳走になって
家まで送ってもらっといて
 
それも断ったりしたら、
あたしさすがに鬼だよね。
 
 
◇)……わかった。
優)ん!!
 
 
あたしの返事に嬉しそうに笑った優助は
やっぱり子犬みたいな笑顔で…
 
 
◇)ばかっ!!
優)はぁ?!
 
 
あたしの暴言に言い返しながらも
やっぱり笑顔を見せる。
 
 
◇)じゃあね。
優)ん、おやすみ。
◇)……ありがと。
優)声ちっさ!!w
◇)……///
 
 
だってなんか、照れくさい。
 
 
そのまま優助のタクシーが角を曲がるまで
見送って。
 
 
メモをポッケにしまって
マンションのエントランスに向かうと…
 
 
◇)…っ
 
 
 
……なんで…いるの…?
 
 
 
岩)……おかえり。
◇)…っ
 
 
壁にもたれてしゃがんでた剛典が
立ち上がって…
 
でもあたしは、その顔を見れない。
 
 
岩)こんな時間まで
  どこで何してたの。
◇)……
 
 
そんな言い方されるような時間じゃないし。
剛典に関係ないじゃん!!
 
 
岩)誰、さっきの男。
◇)…っ
 
 
……見てたんだ。
 
 
岩)俺の連絡ガン無視して
  あいつと何してたの?
◇)……
岩)どこ行ってたんだよ!!
◇)…っ
 
 
そう言われて、顔を上げると…
 
予想と違う顔をしてる剛典。
 
 
怒ってると思ったのに
なんでそんな…泣きそうな顔、してるの?
 
 
◇)剛典に関係ないでしょ。
岩)んなわけねーだろ。
◇)……
 
 
なんなのその偉そうな言い方。
 
 
◇)関係ないでしょ!!
  カラオケしてご飯食べただけだもん!
岩)誰なんだよっ!!
◇)知らないよ!!
岩)は…?!
◇)今日初めて会った子だもん。
岩)…何…それ…。
◇)……
岩)ナンパされてついてったわけ?
◇)ナンパじゃないもん。
岩)じゃあなんだよ!
◇)カラオケしてたら
  話しかけられただけだもん。
岩)だからナンパだろーが!
◇)だったらなんなの!
  別に出会い方なんてなんでもいいじゃん!
  いきなり見ず知らずの男に道端で
  吐き掛けられるよりずっとマシだし!!
岩)…っ
 
 
あんな最低な出会い方したのに…
 
なんで好きになったの。
 
 
◇)帰ってよ。
岩)…っ
 
 
顔も見たくない。
 
 
岩)話…させて。
◇)嫌。
岩)…っ
 
 
何を話すの。
 
何も聞きたくない。
 
 
岩)昨日の子は、なんでもない。
◇)…っ
岩)浮気とかじゃないから。
◇)……
 
 
聞きたくないのに
勝手に話し始めないでよ…
 
 
岩)俺、ほんとに浮気はしてない!
◇)……
岩)お前と付き合ってからは
  ほんとにしてないから!!
◇)……
 
 
あたしと「付き合ってからは」、か。
 
 
◇)じゃああの子なんなの?
岩)…っ
◇)セフレなんでしょ?
岩)違う…っ!
◇)……
 
 
じゃあ何なの!!!
 
 
岩)あの子はそういうのじゃなくて…
◇)Hしたって言ってたじゃん!!
岩)……付き合う前…に…
◇)……
岩)……一回だけ。
◇)……
 
 
何それ。
 
 
◇)帰って。
岩)…っ
◇)ほんとに顔見たくない。
 
 
そう言い捨てて
エントランスをくぐろうとすると
後ろから肩を掴まれた。
 
 
◇)触んないで!!
岩)…っ
 
 
他の女に触った手で
あたしに触るな!!!!!
 
 
◇)帰ってってば!
岩)……頼むから…
  他の男とフラフラ遊ぶの、やめて。
◇)は…?
岩)ヤケになって
  わけわかんない男と遊ばないで。
◇)…っ
 
 
何言ってんの?
 
めっちゃムカつく!!!!!
 
 
◇)わけわかんない男って何!!
  優助は普通に良い子だったもん!!
岩)名前なんか知らねーよ……
◇)わけわかんない男はあんたでしょ!!!
岩)…っ
 
 
ふざけんな!!!
 
 
◇)平気で女とワンナイするような男に
  カラオケやご飯行っただけで
  文句言われたくないっ!!!
岩)…っ
◇)どの立ち位置で偉そうに言ってんの?!
岩)…っ
◇)大っっっ嫌い!!!!!!!
 
 
あたしは思いきり剛典の手を振り払った。
 
 
◇)二度と来ないで!!
  電話もLINEもしてこないで!!!
 
 
そう言い捨てて、
マンションの中に入った。
 
 
◇)……は…ぁっ
 
 
もう…嫌だ。
 
 
嫌だ。
 
嫌だ。
 
 
 
「Hしたって言ってたじゃん!!」
 
「……一回だけ。」
 
 
◇)…っ
 
 
何が一回だけだよ。
 
一回ならいいとでも思ってんのか。
 
ふざけんなっ!!
 
 
話したくないって言ってんのに
ベラベラ勝手に喋りだして…
 
 
◇)…っ
 
 
あたしは優助にもらったメモも
ゴミ箱にぶん投げて
 
バッグもスマホも全部ソファーにぶん投げた。
 
 
もう…心がぐちゃぐちゃで…
 
剛典の顔なんて見たくない。
声も聞きたくない。
 
 
もう、あたしの世界に入ってこないで!!
 
 
 
 
 
 
ーendー

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  1. さゆがん より:

    あーボロボロタカノリ(笑)これ鉢合わせからパパラッチにとられてたら芸能人生オワリなやつだw実際自分の彼氏がこんなだったら付き合う前とはいえ無理だなー

    • マイコ より:

      私も無理ーー!!\(°∀° )/ 笑
      パパラッチ…どう出てくるかな…ハラハラ…

  2. 三代目妄想love より:

    あー~ーーーーー(゚〇゚)
    気持ちもわからないでもないけど優助出て来てぐちゃぐちゃになった!
    でも優助居なくてはならない人のような気がする!!!
    なまら次早く読みたい!!!

  3. ココ より:

    ハア…ついに来た。お二人の暗黒期…
    辛いです。◇ちゃんの、お気持ちは十分察しまするが…
    許して下さい!岩ちゃんを!お願いします!
    前回のを拝見し、ぶっ倒れました!
    岩ちゃんは自業自得なのかも…しれませんが、
    許してやって~(涙)

    • マイコ より:

      ハイ。遂に来ちまいました、暗黒期…‪( ≖_≖​)‬ちーん。
      ここからさらにぶっとび〜〜な地獄に入っていきますが…
      どうかついてきてくださいw

  4. Omilove Morning より:

    1回だけって…何やねん!1回だけって!!
    ◇ちゃん可哀そう!岩ちゃん最低ー!1回でも10回でもヤったのは同じ事なのに!
    ◇ちゃんの気持ちめっちゃ分かる。でも岩ちゃんの気持ちも分かる。
    自分が今までしてきた女遊びを死ぬほど後悔してるんだろうなー。
    おみくん助けてあげてー。♡ちゃんも助けてあげてー。楽しみw

    • マイコ より:

      ほんとに!! :(っ`ω´c):
      剛典のばかっ!!!
      後悔するなら最初っからするなーー!!
      臣くん&♡ちゃんがどれだけフォローしてくれるか…ハラハラ…

  5. ユキ より:

    わー二人どうなるのかな?前の臣君みたいに振りほどかれた手にはなって欲しくないよ(;o;)昨日歌番組でJSBメドレーカッコ良かった(*^^*)

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