[11]干からびそう

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♡)ていっ!!
男)いいですね!
♡)てやぁっ!!
男)左も!!
♡)ええいっ!!!
男)おおっ!いいですよ♡さん!
♡)はぁっ、はぁっ…


今日は仕事終わりに、ボクシングの日。


K)♡、すげぇじゃん!
  なんか強そう!!
♡)へへへーーw
M)私もやるーー!!♪


今日はKちゃんとMちゃんが
体験でついてきた。


私の番が終わって、Mちゃんと交代して
椅子に座る。


♡)ふぅっ…ポカリ美味しい♡
K)お疲れw
♡)Mちゃん、腰がひけてる…w
K)ほんとだww

男)もっと斜めに構えてください。
M)はいっ!

バシッ!バシッ!


K)でも先生ってあんな若いんだね。
♡)あ、ね!私も最初思ったー
K)いかついおじさん想像してた。
♡)あはははw


10分経って、
今度はKちゃんとMちゃんが交代。


M)久しぶりに汗かいたぁ〜w
♡)気持ちイイよねw
M)あの先生、割とイケメンですよね♡
♡)えっ!!


そんな目で見てなかった…!


M)名前なんていうんですか?
♡)あ、わかんない…
  いつも先生って呼んでた…
M)え〜!もぉ〜〜!!


口を尖らせたMちゃんは
Kちゃんが休憩に入ると
すぐに先生に話しかけた。


M)せんせっ♡
  名前なんていうんですかぁ?
男)えっ!自分っすか?!
M)はい♡
男)士道といいます。
♡)シドウ…??
士)武士道の士道です。
♡)え〜〜変わった名前ですね!
士)え、♡さん…
  自分の名前、知らなかったんすか…
♡)あっ…ごめんなさい…//
士)軽くショックっす…
♡)わぁ〜〜!ごめんなさい!!


私ってば失礼だよね?!
あわわっ…


M)カッコイイ苗字ですね♡
  士道さんかぁ〜♡
  彼女いるんですかぁ〜?
士)えっ!い、いないっす!!//
M)へ〜〜〜♡
  今度合コンしましょうよ〜♡
士)えええ!合コンっすか?!//
K)ほんと行動が早いな…
♡)さすがMちゃん…
士)自分は…えっと…
M)なんで先輩チラチラ見てるんですか?
士)えっ!!///
M)先輩はラブラブな彼氏がいるから
  ダメですよ?
士)えっっ!!!!!


先生の目がまんまるになった。


士)そう…だったんですか…
M)そうでーす!

K)なにあんた…狙われてたの?
♡)え!違うよ!全然そんなんじゃないよ!
K)……


先生はただの先生だもんっ!


M)だから〜
  合コンしましょっ?♡
士)……
M)あさっての日曜日とかどうですかぁ?
士)……

K)ほんと行動が早いな…
♡)うん。すごい。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今日は福岡から帰ってきて
事務所で打ち合わせして

細かい仕事を片付けて…


俺はもう早く帰りたくて
早く♡に会いたくて
そわっそわ…そわっそわ…


ス)じゃあこういう流れで
  よろしくお願いします。
臣)はい。ありがとうございました。


最後の仕事が終わって
時計を見ると


臣)もう22時か。
S)送るよーん。
臣)お願い!!!!
S)うおっ、びっくりしたー
  何、急ぎ??
臣)うん!めっちゃ急ぎ!!
S)え、約束あんの??
臣)違うけど急ぎ!!
S)了解。


二人で駐車場に向かう。

♡もう帰ってきてるよな。


『今仕事終わった!今から帰る!』


メールを送ると
すぐ既読になって、返事が来た。


『お疲れさまぁ😊💕
 気をつけて帰ってきてね🚗💨
 待ってるよー💕✨』


臣)はぁ…


早く会いたい〜〜

ううう〜〜〜


S)何そわそわしてんのー?
臣)いや…
S)早く♡ちゃんに会いたいだけ…とか
  そんなオチじゃ…
臣)!!!!


バレてる!!


S)ぶはっww
臣)……何だよ…//
S)いや…www


めっちゃ笑ってるし!!


S)仲直りしたばっかで
  すぐ福岡だったもんねー
臣)そうだよ…
S)♡ちゃん不足ですか…
臣)不足すぎて干からびそう。
S)そりゃ困る。うちの稼ぎ頭が。
臣)潤い、ください。
S)今日いっぱい補充してくださいw
臣)はははw


それからすぐ家に着いて
玄関のドアを開けると…


♡)臣くんっっ!!♡♡


♡が元気良く飛んできた。


♡)おかえりなさいっ!!♡♡
臣)…っ


ぎゅぅぅっっ


♡)わわわっ///


両手を広げて♡を抱きしめた。


臣)……
♡)……臣くん…?
臣)……
♡)臣くん…?
臣)今、堪能してんの!
♡)…っ
臣)……
♡)そっか…//


ぎゅぅぅっっ


はぁ…
4日ぶりの♡。

会いたかった。
抱きしめたかった。

本当に……


♡)臣…くん…//
臣)まだダメ……


ぎゅぅぅっっ


♡)////


ああダメだ俺…
全然離したくない。

ほんとに枯渇してた。


♡)…臣くんの…匂い…♡


くんくん♡


♡)えへへー♡


♡が俺の首筋に鼻をくっつけて
すりすりしてる。


臣)……犬みてぇ…w
♡)おかえりなさいっ♡わんっ♡
臣)あ、そういえば犬だった…w
♡)ご主人様のお帰りを
  お待ちしておりました♡わんっ♡
臣)はははっ♡


あ〜〜もう!可愛いっ!

ぐいっ


♡)きゃぁっ///


♡を縦に抱き上げると
俺を見下ろしながら
ぱちくりしてる大きな瞳。


すとん…っ


♡)びっくりした//
臣)んーーーーっ


ぎゅぅぅっっっ


♡)またぎゅぅされてる…//
臣)全然足んねぇ。
♡)////


しばらくずっと抱きしめて

♡を死ぬほど堪能して

やっと少し、生き返った俺。


♡)お風呂あるよ…//
臣)ん、一緒に入る?
♡)入んないよっ!//
臣)……


少しでも一緒にいたいのに…


臣)入ろ…?
♡)やだっ!//
臣)!!!!


ガーン!!!!

やだってハッキリ言われた!!!


♡)待ってるから入ってきて//
臣)……はい…


♡がそう言うから
おとなしく風呂に入ったのに…


臣)あーあ……


俺が風呂から上がると
ソファーで寝ちゃってる♡さん。


臣)嘘つきーーー
♡)スー…スー…


待ってるって言ったのに。


臣)…ったく…風邪ひくぞ…


隣に座って
♡にタオルケットをかけてやった。


臣)ん…?


膝の上に、雑誌が置いてあって…

これ読んでたのかな?


臣)あ、♡のか。


新しいやつだよな…?


手に取ってパラパラめくってみると…


臣)……


♡のページがまた増えてる。

すげぇな…

あ、帽子特集。

すげぇ…どれも可愛い。

あ、これ好きかも…

いや、でも、うん。
ほんとに全部可愛い。


パラ…パラ…


臣)あ……


そのままページをめくってると
4人で写ってるコーナーが出てきた。

今回は薔薇男じゃなくて
Tとカップル役だったんだ。


臣)……


すげぇ楽しそうに
仲良く写ってるけど…


「今まで我慢してたのも
 あると思うんだけど…
 泣いて泣いて大変だったの。」

「撮影も相当無理して頑張ってた。」


Kの言葉を思い出す。


そんなに泣いたのに…
仕事はこうやってちゃんとこなして

無理して必死に頑張ったんだろうなって
痛いくらいにわかる。


臣)…っ


ああ、胸が痛む。


いっぱい泣かせて…
ほんとにごめんな…?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


前髪に…優しく触れた指先に
そっと目を覚ますと…


臣)……おはよ。
♡)ん…ぅ…
臣)起きた…?
♡)…あ…れ…、寝ちゃってた…
臣)ん。
♡)むにゃ……


ゆっくり起き上がって
隣に座ってる臣くんの腕にくっついた。


♡)ほこほこ臣くん…おかえりなさぁい…
臣)ただいま…w
♡)イイ匂いする…♡
臣)お前も同じ匂いだけどな?w
♡)へへー♡


すりすり♡


♡)あ、雑誌。
臣)……
♡)見てたのー?
臣)うん。


臣くんの膝の上に
さっきまで見てた、来月号の雑誌。


♡)湘南で撮ったんだよー
  江ノ島も行ったよー
臣)うん。


KちゃんとJさんが
腕を組んで歩いてる。


臣)意外にお似合い、この二人。
♡)あはははw
  Kちゃんね、Jさんがエスコート上手って
  言ってた!
臣)ふーーん……
♡)ここのアイス、美味しかったよ♡
臣)……


次のページをめくると
今度は私とTくんの写真が出てきた。


♡)天気は晴れてたけど
  少しだけ肌寒かったんだぁ…
臣)……


私がそう言うと
臣くんは雑誌をテーブルに置いて
私の方を向いた。


♡)???


そのままふわりと、抱きしめられて…


♡)…っ
臣)……
♡)臣くん…?
臣)……寒かったんでしょ…?
♡)え…?


とくん…

とくん…


臣)だからあっためてる…
♡)…っ



撮影の日。

少し肌寒かったのはあるけど…

それよりも…
泣かないように必死で

気持ちを誤魔化すのに必死で…


それが一番、辛かった。


♡)……


時間を巻き戻して…
あの日の私を

臣くんが今こうして
抱きしめてくれてるみたいで…


なんだか泣きそうになる。


♡)……
臣)……
♡)…臣…くん……
臣)……


臣くんは何も言わずに
ずっと優しく抱きしめて

髪を撫でてくれて…


そのぬくもりが、すごくあたたかくて…


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「そいつらが
 臣広が昔、遊んだ女だったの。」

「結構、下世話な話をしてて。
 ♡はそれをモロに聞いたわけ。」


臣)……


♡は…どう思ったんだろう…

最低だって思ったかな。

俺のこと、嫌だって思ったかな。


今はこうして、帰ってきてくれて
俺の腕の中にいるけど…


「やだっ!!!」


そう言って…
振り払われた手の感触が…

今でもリアルに残ってて…


「ふぇぇっ、うわぁぁんっ」


♡の泣き顔だって…
きっと一生、記憶から消えない。


俺が、泣かせた。


臣)…っ


ぎゅぅぅ…っ


♡)臣くん…?苦しいよ…//
臣)…っ


そう言われて我に返って

そっと腕を離すと…

♡が目を潤ませて、俺を見上げた。


臣)…っ


ダメだ…、ごめん。


臣)やっぱり足りない…っ


ぎゅぅぅぅ……


♡)////


もう一度、腕の中に抱きしめた。



好きだ。


好きだ。


♡が好きだ。



こうして♡を抱きしめる度に

大事で仕方ないって…
愛しい気持ちが増えていくみたいで…

たまらなくなる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


私を見つめる臣くんの瞳が
すごく切なくて


どうしてそんな瞳で見るの…?


私は臣くんをぎゅっと抱きしめ返した。


♡)……


私が家出から帰ってきてから、
臣くんは

笑ってるのに泣きそうな顔をしてることが
何度かある。


そんな顔…しないで…


いっぱいいっぱいぎゅって抱きしめて
大好きだよって

気持ちを伝えるように
何度もぎゅって…


♡)臣くん……
臣)……


どれくらい抱き合ったのか
わからないけど…

4日分、めいっぱいぎゅってした。


そっと離れると、
臣くんが頭を撫で撫でしてくれて…


♡)えへへ…♡
臣)……
♡)いっぱい充電したね♡
臣)…っ
♡)あのねっ!
  今回、帽子特集があるんだよー♡


私は臣くんが持ってる雑誌を開いた。


♡)ここー!
臣)……うん。
♡)この帽子、私、一番好きなんだー♡
臣)…うん、可愛い。
♡)えへへ///
  日曜日の撮影も楽しみだなっ♪
臣)……


あ、臣くんがやっと笑ってくれた。


♡)臣くん…♡
臣)……
♡)ぎゅーーーっ♡
臣)…っ
♡)またぎゅってしたくなっちゃった♡
臣)……


臣くんの腕にくっついた。

でも…
こんなんじゃ足りないや。


♡)ね、もう寝よっ?♡
臣)…っ
♡)ベッドでいっぱいぎゅってしよー♡
臣)……


会えなかった分も
いっぱいぎゅってして

今日は二人でぐっすり眠りたいな…


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「いっぱい充電したね♡」


さっき♡はそう言って
嬉しそうに笑ったけど…


全然足りない。

それが俺の本音だった。


いくら抱きしめても…足りなくて…

もっと触れたくて…


♡)んん〜〜っ♡
  毛布あったかぁい♡
臣)……


ベッドでいっぱいぎゅってしようなんて

♡が言ってるのは
そんな意味じゃないんだろうけど…

ああ、俺…
♡を抱きたいんだ。


肌と肌で、触れ合いたい。


♡が帰ってきてから
俺、自分でも自覚するくらい
♡が好きすぎて、おかしくなってて。


それから3日間は…なんていうか
それどころじゃなかったっていうか…

♡が帰ってきた嬉しさで
もう泣きたいくらいで

ただただ♡を抱きしめて眠るだけで
すごく満たされてた。


♡がいることを確かめるように

腕の中に♡の存在を感じるだけで
幸せで。


でもその後すぐに福岡で
4日間も会えなくて…

干からびそうなくらい、♡不足で。


本当に俺、会いたかった。

♡の夢ばっかり見るくらい…
会いたくて…


♡)やっと臣くんと一緒に寝れるー♡
臣)……//


♡が嬉しそうにすり寄ってきた。


本当は…
こうして一緒にいられるだけで

♡を抱きしめられるだけで

十分幸せだし、
こんなの贅沢なんだろうけど…


やっぱりどうしても
もっと欲しくて…足りなくて…

身体で抱き合ったら…
そんな気持ちも、満たされる気がして


♡が、欲しい。


臣)♡……
♡)んー?
臣)ん……
♡)……


俺が腕を伸ばすと
俺の首元に、無邪気に潜り込んできた。


♡)わぁぁい♡
臣)……//


くすぐったくて…
可愛くて…


ぎゅっっ


そのまま腕の中に閉じ込めた。


♡)臣くんいない間、ずっと
  にゃんこと寝てたよぉ…
臣)……


にゃんこ…いいな……


♡)寂しかった……
臣)…っ


珍しく素直に、そう言ってくれた。


♡)4日分…いっぱい
  くっついてもいーい?//


そう言って腕の中から俺を見上げる♡が
すげぇ可愛くて…


臣)……//
♡)んんん〜〜♡♡
臣)ふはっww
  わかったわかった♡
♡)臣くん大好きぃぃ〜〜♡♡
臣)わかったから♡


何度も潜り込んでくる♡の頭を撫でながら
その髪にチュッと、キスを落とした。


臣)♡…?
♡)……
臣)……
♡)気持ちぃ……
臣)……うん。
♡)……
臣)……すげぇ癒される…
♡)うん……
臣)……
♡)……


ああ…ダメだ…
もっと触りたい。

♡に触れたい。


臣)♡……


もう我慢出来ない。


臣)♡……


柔らかい頬に
そっと手のひらを当てると…


臣)…っ


♡はもう瞼を閉じて
眠りの中。


臣)……
♡)スー……スー……


幸せそうに寝てるのに
起こす気にはなれなくて…

でも…


すげぇ抱きたかった。

こんな風に思ってるの、俺だけだよな。


♡はぎゅってしただけで
すごく満足そうだったし

幸せそうに笑ってたし…

俺ばっかり…こんなに好きで…

足りなくて…

♡が欲しくて、仕方ない。


臣)…っ


ぎゅぅぅ……っ


……せめてキスくらい、すれば良かった。




ーendー

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