[108]キスと涙(隆二Side)

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札幌から帰ってきてすぐ。

 

早速会いに行こうと思った俺に♧は

『今日は何も買ってこなくていいからね😃』

ってLINEを送ってきて。

 

隆)……

 

もう定番になってるプチ差し入れ。

 

買ってこなくていいって…
それはつまり…

もうお礼のチューはしてくれないってこと?

 

あんなもんで毎回チューさせやがって
ふざけんなよってこと?

 

……しょぼん。

 

仕方なくそのままいつもの場所へ向かった俺に
優しく届いてきたメロディは、
聞き慣れた『君となら』。

 

隆)!!!

 

♧がまた三代目歌ってる!!

 

びっくりした俺は思わず走った。

 

隆)ちょ、それ…っ
♧)あ、隆二くん来たーー♡
隆)……///

 

そんな嬉しそうに笑うの、ずるい。

 

♧)おかえりなさい♡
隆)え…?
♧)札幌から、おかえりなさい♡
隆)ああ!…うん、ただいま…//
♧)ふふっ♡
隆)……///

 

あれ…?

なんか俺いつもよりドキドキしてるかも。

なんか♧がすごく可愛い。

いや、いつも可愛いんだけど…

 

♧)〜♪Baby with U 何気ない
  Baby with U 今日の日が♪〜
隆)ね、ねぇ!!それっ!!
♧)ん?
隆)なんで…っ

 

なんで歌ってんの?!

 

♧)これね、彼が歌ってくれた歌♡
隆)えっ!
♧)ほら、私がリクエストしたでしょー?
隆)……

 

そういえば…

 

「どんな奴なの、弟」

「三代目のめっちゃファン。」

 

臣が言ってたっけ。

 

♧がリクエストした「彼女を想う歌」に
俺たちの曲を選んでくれたわけね。

 

♧)あのね、あのね、聞いてーー♡
隆)……///

 

可愛い…。

 

俺は誘われるまま、♧の隣に座って
昨日の出来事を聞いた。

♧はすごく嬉しそうに話してくれて…

 

♧)♡ちゃんっていう女の子が
  すっごくすっごく可愛くてね?
隆)シュンくんの彼女じゃなくて
  お姉ちゃんだったんでしょ?

 

俺がそう言うと、♧は目を丸くした。

 

♧)どうして…わかるの?!
隆)……
♧)隆二くん、すごいっ!!!
隆)……

 

まるでエスパーを見るような目で
びっくりしながら
俺の両腕を掴んでくるから…

 

隆)……っ

 

俺は思わずそのまま、
♧の身体を抱きしめた。

 

♧)わっ…
隆)……//

 

ふわりと香る、甘い匂い。

頬に触れる、柔らかい髪。

 

なんだろう…
ほんとに癒される。

 

♧)りゅ…っじ…くん…//

 

どもってる。可愛い。

 

♧)なんでいきなりぎゅってするの…?
隆)……
♧)……
隆)してって言われたから。
♧)誰に?!
隆)♧に。
♧)…言ってないよ?
隆)俺の腕、掴んできたじゃん。
♧)…それは…そういう意味じゃ…
隆)じゃあヤなの?
♧)……
隆)……
♧)ヤじゃ…、ない…
隆)……///

 

じゃあいいじゃん…

もう少しだけ、抱きしめさせて。

 

♧)ねぇ……
隆)ん…?
♧)どうして…
  瞬くんの名前…知ってるの…?
隆)……
♧)どうして♡ちゃんが
  お姉ちゃんって知ってるの…?
隆)……
♧)……
隆)エスパーだから。
♧)え!!やっぱりそうなの?!
隆)…っ

 

まさか…信じないよな?

 

♧)じゃあ、じゃあっ
  私が今考えてることもわかるの?!
隆)わかるよ。

 

なんちゃって。

 

♧)うそっ!なに?!
隆)なにって…
♧)……
隆)……

 

なに考えてんだろう…

 

隆)隆二くんにぎゅってされるの
  気持ちいい。
♧)?!!///

 

なんちゃって。

 

隆)……
♧)////

 

あれ、無言…?

 

隆)ね、当たってるでしょ?
♧)……///
隆)……

 

……シカト?汗

 

抱きしめたままだから
顔は見えなくて…

もういいや。
このまま調子に乗っちゃえ。

 

隆)俺がいない時に
  考えてたこともわかるよ。
♧)えっ!??
隆)隆二くん早く帰ってこないかな。
  早く会いたいな。
♧)////

 

なんちゃって。

これはさすがに調子に乗りす…

 

♧)どうして…わかるの…?///
隆)え…っ

 

……今、なんて言った?

 

隆)…っ

 

抱きしめてた腕をゆるめて
確かめるように、その顔を覗くと…

 

♧)……///
隆)……///

 

え…、え…、え…、

 

「どうして…わかるの…?」

 

それは、どっち?

 

俺のぎゅーが気持ちいいってこと?
それとも俺に会いたかったってこと?

ちょっと待って、俺パニック。

 

隆)////

 

心臓はバクバクしてるのに…

♧が潤んだ瞳で
まっすぐに俺を見つめるから…

俺は吸い寄せられるように
その頬を手のひらで包んだ。

 

……少し、熱い。

 

……こんな…見つめ合ってて…

キスして…いいの?

 

ドクン…

ドクン…

 

♧)…あ、っ…、あの…ね、っ…///
隆)…っ
♧)今日…っ、は…、作ってきたの///
隆)……え?

 

慌てたように俺から離れて、
紙袋から何かを取り出した♧。

木のテーブルに並べられたのは…

 

隆)プリン…?
♧)うん!
  いつも隆二くんが買ってきてくれるから…
  今日は作ってみたんだよー♡
隆)え…っ

 

めっちゃ嬉しい。

手作り…?

 

隆)食べて…いいの?
♧)もちろん♡
隆)初めての手作りだ…//
♧)え…?
隆)めっちゃ嬉しい♡
♧)…そういえば今度
  お弁当も作ってあげるって
  言ってたよね。
隆)うん。
  ほんとに作ってくれんの?
♧)いいよー♡
隆)……///

 

え、なんだろこれ。

俺めっちゃ調子に乗りそう。

なんかすげぇいいカンジじゃない?!
脈ありなんじゃないの!?

ヤバイ、ほんとニヤける。

 

隆)プリンめっちゃ美味しい!!
♧)良かったーー♡
隆)すごい!天才!!
♧)言い過ぎだよ…w
隆)ほんとに!!
♧)ふふっw
  ほんとはゼリーかプリンか
  迷ったんだーー
隆)ゼリーも食べたい!
♧)じゃあそれは今度ね♡
隆)……///

 

それも作ってくれんの?

え、もう俺…
踊り出したい。

幸せ。どうしよう。

 

♧)ねぇねぇ、教えてよぅ……
隆)え?

 

なにその可愛い言い方。

 

♧)どうして瞬くんと♡ちゃんのこと
  知ってるの??
  まさか知り合いだった?
隆)……ひみつーーー
♧)ええ!!どうして?
  教えてよーー!!
隆)ないしょ。
♧)……

 

あ、口尖らせてる。

そんな顔も、めっちゃ可愛い。

 

♧)会ったこと…あるの…?
隆)ないよ。

 

弟にはね。

 

♧)名前だけ知ってるの…?
隆)うん。
♧)私が写メ見せた時も、知ってた?
隆)ううん。
♧)……

 

俺の返答に謎が深まるばかりみたいで
♧は険しい顔をしてる。

 

隆)シュンくんって…どんな漢字?
♧)え?
  えっと…「瞬」って書くの。
隆)ふーーん。
♧)人生の中にある一瞬一瞬の
  大事なことを
  ちゃんと見つけられるようにって
  お父さんがつけてくれたんだって。
隆)……
♧)前に教えてもらったの♡
隆)……

 

嬉しそうな顔をして話す♧。

 

それはつまり、♡ちゃんのお父さん。

 

♧)隆二くんの名前の由来はなぁに?
隆)……俺は…
  生まれた時、西郷隆盛に似てたから…
♧)え!そうなの?!
隆)うん。
♧)すごい!生まれた時から
  そんな凛々しかったんだ!!
隆)ぶはっw
  あとは、次男だから。
  だから「隆二」。
♧)そうなんだーー♡

 

嬉しそうに聞いてくれる♧に、
うっかり「♧は?」って聞きそうになった。

 

隆)……

 

♧に名前をつけてくれた人は…
誰なんだろう。

 

♧)名前って…親からもらう
  一番最初の愛情でしょ?
隆)……うん。
♧)私は自分の名前の由来はわからないし…
  誰がつけてくれたのかもわからないけど…
隆)……
♧)いつか子供ができたら
  子供には話してあげたいの。
隆)……
♧)こういう理由で、
  こういう名前にしたんだよ、って。
隆)……
♧)いっぱいいっぱい…
  愛してあげたいなぁ…
隆)……

 

その言葉を聞いて、
なんだか泣きそうになった。

 

絶対♧は…良いお母さんになるよ。
  

隆)子供はいっぱい欲しいな。
♧)私も3人は欲しいなーー♡
隆)絶対楽しいよね。
♧)うんっ♡
隆)……

 

この笑顔の、そばにいたい。

♧の思い描く未来図の中に、
俺も入れて欲しい。

 

俺に…守らせてよ……

 

♧)ごちそうさまでした♡

 

♧はにっこり笑って
先に食べ終わってた俺の容器と一緒に
全部片付けた。

 

もう…帰っちゃう…?

 

隆)あ、そーだ。
  札幌のお土産!!

 

俺はそれを引き留めるように
慌ててお菓子を出した。

 

♧)白い恋人だーーー
隆)定番すぎてごめんw
♧)定番なものは美味しいから定番なんだよー
隆)あははw
♧)ありがとう♡

 

本当は他にもいろいろ迷って…
迷いすぎて決められなくて

搭乗時間ギリギリになっちゃって
それにしたっていう…

 

隆)……

 

そろそろ、聞いてもいいかな。

 

隆)……それで、さ…
♧)ん…?

 

気になってた本題。

 

隆)告白は出来たの?
♧)……

 

LINEで聞いても
会った時話すって言われたから…

 

隆)瞬くんに、伝えた?
♧)……ううん。
隆)えっ…

 

言えなかったの?

 

♧)それはね、もういいの。
隆)…っ

 

もういい??

 

♧)瞬くんといろいろ話して…
  彼女のこと、
  本当に大事にしてるんだなぁって
  すごく伝わったの。
隆)うん…。
♧)そしたらね、なんか…
  心から…幸せになって欲しいなぁって
  そう思えたの。
隆)……
♧)スッキリしたっていうか、
  なんていうか…
隆)……
♧)瞬くんのことは今でも大好きだけど…
  それはもう恋愛感情とは
  少し違って…
隆)……
♧)上手く言えないけど…
  今はもう「好きだった人」っていう
  感覚なの。私の中では。
隆)……

 

「過去」になった、ってこと?

 

♧)……伝わった…?

 

♧が窺うように俺の顔を覗いてきて…

 

隆)うん。

 

俺が頷くと、
安心したように笑った。

 

♧)ふふふ、良かった♡
隆)……
♧)だから…無理に告白しなくても
  私の中ではもう区切りをつけられたから
  それでいいかなって。
隆)……
♧)隆二くんは応援してくれてたのに…
  ごめんね?
隆)いや、それは全然いいけど…

 

じゃあもう…
次の恋愛に進む気になった?

俺、自惚れてもいいの…?

 

隆)新しい恋、できるといいね。

 

好きになってよ、俺のこと。

 

♧)ふふっ、したいなーー♡
  でも出会いがないからなーー
隆)出会いならあったでしょ。
♧)え?
隆)川辺で話しかけてきた
  髭おじさんとかーー
♧)あははっ、それ隆二くん?
  あはははw
隆)髭おじさんも出会いにカウントしてよ。

 

ずっと待ってたんだから。
こっち向いてくれるの。

 

♧)隆二くんはそういうのじゃないもん。
隆)?!!

 

は!!??

なんつった???

 

隆)そういうのじゃ…ないって…
♧)隆二くんは…なんだろう。
  なんか、もっと特別!!
隆)は???

 

特別って、何!!

 

♧)なんだろうな。
  大好きだけど恋愛とかそういうのじゃ
  ないもん。
隆)……

 

……絶句。

 

秒でフラれました、俺。

 

なんで……?

 

♧)そういうのじゃなくてね、
  なんか特別なの♡
隆)……

 

そんな満面の笑みで、
地獄に突き落とさないでくれる…?

 

隆)特別って…何?
♧)え……
隆)俺に会いたかったんでしょ?
♧)…っ

 

今更引き下がれるかよ。

 

隆)俺のこと大好きなんでしょ?
♧)…っ、えっと…
  大好き…だけど…
隆)俺がぎゅってしても嫌じゃなくて
  俺にキスすんのも、嫌じゃないんでしょ?
♧)…っ

 

俺がそう言うと、♧は黙り込んで…

 

その頬にそっと触れると、
また熱を持ってる。

 

隆)…こっち向いてよ。
♧)////

 

もう止まんない俺は、
またそのまま、♧を抱きしめた。

 

恋愛対象じゃないみたいに言われて
黙ってられるかっつーの。

 

♧)りゅ…じく…っ、離して…//
隆)やだ。
♧)////
隆)なんで?やなの?
♧)……(ふるふる)///
隆)じゃあ絶対離さない。
♧)////

 

俺のこと、ちゃんと見てよ。
ちゃんと、感じてよ。

 

隆)……ねぇ。
♧)////

 

そっと離れた隙間で見つめれば
また潤んでる瞳。

 

隆)キスしていい?
♧)!?!?

 

柔らかいほっぺに右手を添えると
♧はぎゅっと目を閉じた。

 

隆)していい?
♧)ど、ど…うして…っ
隆)プリン作ってきてくれたから。
♧)…っ

 

俺の言葉に、♧はゆっくり目を開けて…

 

♧)お礼の…キス…?//
隆)そうだよ?
♧)いつもの…逆?
隆)うん。
♧)……//

 

また黙ってしまった♧に
ゆっくりと顔を寄せて…

その柔らかい頬に、唇で触れた。

 

……チュッ。

 

♧)////

 

そのキスで、右手で触れてる
もう片方の頬が

温度を上げたのがわかって…

 

俺はなんかもう…

そのまま耳にも首筋にも…
キスを落としたくなって、仕方ない。

 

それをグッと堪えて
瞳の奥を覗けば…

 

♧)……
隆)……

 

ああ、やっぱりもう。

ダメだ、俺。

 

頬を撫でてる指先を
唇にスライドさせた。

 

隆)こっちに、していい…?
♧)え…っ

 

柔らかい唇。

 

♧)え、待って、え…っ!?///

 

キス、したい。

 

♧)だ、だめっ……
隆)なんで?
♧)なんでって…///
隆)やだ?
♧)…っ、わかん…ない…///
隆)……

 

親指で触れてる唇が
甘く俺を誘うから…

 

隆)やじゃないなら、する。
♧)…っ///

 

強引でもいい。

したくてたまらない。

 

隆)……

 

……好きだよ。

 

そんな気持ちを込めて、
キスから伝わるように…

優しく、優しく、……唇を重ねた。

 

♧)////

 

触れた瞬間、
好きな気持ちが一気に溢れて…

愛しくて愛しくて
たまらなくなって…

 

頬を手のひらで包んだまま、
また角度を変えて、ゆっくり口付けた。

 

柔らかく重なる唇から
想いが溶け出しそうで…

ああ、どうしよう。

 

ほんとに…
「好き」が…溢れる…。

 

これ以上キスしたら
いろんなものが止まらなくなりそうで…

 

手のひらに伝わる
♧の熱を感じながら、

名残惜しく唇を離せば……

 

♧)////

 

俺を見つめる潤んだ瞳から、
ポロリと…

涙がこぼれた。

 

隆)……えっ…?!

 

その涙に、一瞬思考が止まる。

 

隆)え、ちょ…っ、
♧)…わた…し…っ、帰…る…っ
隆)えっ!!

 

♧は素早く立ち上がって
荷物を掴み取って…

 

隆)ちょっと待って!!

 

俺の言葉なんて聞かずに…

自転車であっという間に消えていった。

 

隆)♧……っ

 

届くわけない、声。

 

隆)どうしよう……

 

……泣いてた。

 

俺が…泣かせた…?

 

そんなに…
キス、嫌だった?

 

隆)…っ

 

どうしよう。
すげぇ凹む。

立ち直れないかも……

 

そりゃー少し強引だったけど…

俺的には渾身の想いを込めて
キスしたんだけど…

 

隆)……

 

……嫌われたかな…、俺。

 

ほんとにどうしよう。

 

 

ーendー

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  1. マイコ より:

    いきなりクリスマス出てきてびっくりしました。゚(゚^∀^゚)゚。www
    ありがとうございます♡♡

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