レ)おはよ〜〜〜
♡)あ、ママ、おはよー♡
瞬)え、なになに、今日は姉ちゃんの朝飯?
♡)うん!
レ)助かります〜〜〜w
瞬)顔洗ってくる!♪
昨日実家に帰ってきて
ママに母の日の湯呑みをプレゼントしたら
すごく喜んでくれた。
臣くんも…お母さんに渡したかな、なんて
ふとまた思い出して蓋をしめ直す。
考えない。
まだ…気持ちが無理。
瞬)姉ちゃん今日帰んの?
♡)あ……
ご飯を頬張りながら
悪気なしに瞬が聞いてきた。
レ)随分大きな荷物だったけど…
瞬)あ、そうなの??
♡)今日もいるよっ!
今日は仕事終わったら
ボクシング行くんだ〜♪
無理矢理、話題を変えた。
瞬)は?!ボクシング!?
♡)うん!習い始めたの♪
レ)おお!マジか!!
♡)うんっ!!
強くなるんだ〜〜〜い♪
瞬)なんでいきなり?w
♡)いきなりじゃないよ〜〜
だって…
瞬)……
♡)…っ
瞬)???
臣くんが…
いつも私を心配するから…
これ以上心配かけたくなくて…
強くなりたい、…って…
♡)なんでもないよっ!
じゃあ私もう行くねっ!
瞬、洗い物よろしく〜〜
瞬)あ、うん。作ってくれてありがと。
♡)行ってきます!!
レ)行ってらっしゃーーい。
いつもより遠い、会社までの道のり。
電車に揺られながら
一生懸命心に蓋をして
違うことを考える。
ああ…早くボクシングしたいな。
体を動かしてたら…
余計なこと考えずに済むのに…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
昨夜、♡は帰ってこなかった。
でも…一回帰ってきた形跡はあったから
荷物をまとめてまた出て行ったんだろう。
『どこにいんの?
いつ帰ってくる?』
送ったLINE。
既読にはなるけど
やっぱり返事は来なくて。
出るわけないってわかってるけど
2回かけた電話は、やっぱり繋がらなかった。
臣『朝からごめん。♡、会社来てる?』
K『ちゃんと来てるよ!
昨日は実家に帰ってたって!🏠』
ああ…そうだったんだ。良かった。
臣『ありがとう。』
K『👍』
Kに聞く以外、何も出来ない情けない俺。
臣)はぁ……
とりあえず無事ならいいけど…
いつまで実家にいるんだろう。
実家から会社通うのも遠いだろうに…
そんなにこの家には
帰ってきたくないのかな…
重たい気持ちとバッグを抱えて
俺はスタジオに向かった。
♡が昨日、旅行から帰ってくるって
みんな知ってたから
集まるなり、質問攻め。
E)♡ちゃん、帰ってきた?!
健)ちゃんと話せたんか!?
隆)仲直りできた?!
臣)……
言葉の出ない俺を見て
状況を悟ったみんなは
それ以上何も聞いてこなくて
昼過ぎまでまた、リハが続いた。
隆)はぁ〜〜〜生き返る。
E)踊った後のご飯はほんと最高。
隆)うん。
臣)……
岩)♡ちゃんって……
相変わらず電話も出ないの?
臣)…うん。
岩)……
健)LINEはー?
臣)既読になるけど返事は来ない。
N)シカトかぁ……
臣)……
直)シカトっていうか…
返せないんじゃない?
臣)え…?
直)なんて返していいかわからない、とか…
臣)……
最後に言われた言葉は
「もう…一緒にいたくないっ」
臣)……
それが♡の答えなんだろうか…
健)ちょっと長引きすぎやんな〜〜
隆)うーん…
健)返事もないんやったら
♡ちゃんがどう思ってんのか
全然わからんしなぁ〜〜
岩)うんうん。
E)臣がかけてダメなら
俺らが電話しちゃう?!
N)おおおっっ
直)新しいな!!
E)でも俺、♡ちゃんの番号知らないやw
N)何やそれっww
健)あ、じゃあ…
俺…かけてみよか?
E)お!!!!
隆)健ちゃん…大丈夫?
健)俺はこーゆーの得意やから!w
よし、臣っ、任せとけっ!!
臣)……
N)ちょ、会話わかるように
スピーカーにしてよっ
健)バレへんように
みんな静かにしてやー!
隆)はい!!
E)了解っ!!
臣)……
健ちゃんがスピーカーに切り替えて
コールを鳴らす。
プルルルル…、プルルルル…
臣)…っ
ヤバい…
俺が緊張してきた。
時間はちょうど昼休み。
♡は…出るだろうか…
♡『もしもし?』
健『あ、♡ちゃん??』
♡『うん。』
健『オレオレ〜〜!!』
♡『どうしたの…?』
ああ…4日ぶりの♡の声。
それだけで
泣きそうになってる俺って…
ちょっと重症だ。
健『元気にしてるー?』
♡『……』
健『もう昼飯食ったん?』
♡『……』
健『あれ?♡ちゃん??』
♡『……』
♡が…返事をしなくなった。
健『♡ちゃん、今日は家、帰るやんな?』
♡『…っ』
健『あんまり家出しとったらアカンで〜〜w』
♡『……』
健『この不良娘がっ!ww』
♡『……』
健『…って、聞いてる?w
俺の一人言みたいになってるやんww』
♡『……聞いてる…よ。』
健『……』
♡『…家には…帰らない。』
健『何でや!』
♡『…帰りたく…ない。』
健『……』
臣)……
「帰りたくない」
♡の声がそう言った。
その言葉が…胸に突き刺さる。
健『臣が寂しくて死んだらどうすんねんw』
♡『…っ』
健『帰ったってや〜〜』
♡『……』
健『臣がどんだけ♡ちゃんのこと好きで
♡ちゃんのこと大事に想ってるか…
そんなん♡ちゃんが一番
わかってるやろー?』
♡『…っ』
健『出会う前の過去は水に流してw』
♡『……』
健『……』
♡『…健二郎くんたちも…同じなんでしょ?』
健『えっ…』
♡『遊んでるんでしょ?』
健『えっ、えっと…、遊んでへん!!
遊んでへんで!!』
♡『えっ…』
健『うん。』
♡『じゃあ…臣くんだけなの…?』
健『!!!
いや、ちがっ、遊んでる!遊んでる!!
俺らも遊びまくりや!!!!』
♡『…っ』
健『女遊びしまくりっ!!』
♡『……』
健『えっと…』
♡『最低……』
健『!!!!』
ピッ……
健)あれっ
隆)えっ!!!!
岩)切られた!!!!
N)健二郎!お前何してんだよ!
このへたくそがっ!!!
健)うわっ、アカン!動揺した!!!
E)最低って言われて切られたよ…
直)終わった…
隆)健ちゃんのばか〜〜!!
健)いや、いきなり自分のこと聞かれて
むっちゃテンパった…
隆)遊びまくりとか何言ってんだよ〜〜!
N)せめて臣だけは違うって
言ってやんないと!
健)どーしよ……
岩)じゃあ俺がかける!!
隆)おおっ!岩ちゃん!!!
直)頑張れ岩ちゃん!!
E)頼む、岩ちゃん!!
岩)……よしっ
プルルルル…、プルルルル…
岩ちゃんもスピーカーで
♡に電話をかけた。
♡『はい……』
岩『あ、もしもし?♡ちゃん?』
♡『うん……』
岩『さっきは健二郎さんがごめんね?』
♡『……』
岩『さっきのは忘れて!w』
♡『……』
岩『ええと…俺ら…さ、
確かに女の子と遊んだりするけど
臣さんは違うよ!!』
♡『……』
岩『昔は…遊んでたかもしんないけど
今は♡ちゃん一筋!!』
♡『……』
岩『俺もさ、何回も言ってるじゃん。
臣さんはほんとに♡ちゃんが
好きなんだなって!』
♡『……』
岩『♡ちゃんだって…そうでしょ?
臣さんのこと…大好きでしょ?
俺にそう…言ってくれたじゃん!』
♡『……』
岩『とりあえずさ…帰っておいでよ。
話…したくないなら
気持ちが落ち着くまでしなくてもいいから
家出だけは…やめよ?』
♡『……』
岩『俺らも…心配だし。』
♡『……』
岩『臣さんも…心配してるよ?ね?』
♡『……』
必死に話す岩ちゃんと
何も喋らない♡。
岩『♡ちゃーん、聞いてる?』
♡『うん…』
岩『そんなずっと臣さんのこと
放ったらかしてたら
他の女に取られちゃうぞ〜〜w』
♡『…っ』
岩『なんて…今のは冗…』
♡『もう電話してこないでっ!!』
岩『え…っ』
♡『もう…考えたくないの!!』
岩『いや、ちょ、待って、今のは冗談…』
♡『他の女の人のところに行くなら
行けばいいもんっ!!
いっぱいいるんでしょっ!!』
岩『待ってよ、違っ…』
♡『今は考えたくないの!
話したくないの!
家にも帰らないっ!!』
岩『…っ』
♡『もう誰も電話してこないでっ!!!
ばかぁっっ!!!』
ピッ。
岩)……切られた。
隆)……
E)……
健)最後に…余計なこと言うから…
岩)健二郎さんに言われたくないし!
N)二人とも…へったくそ…
E)じゃあNAOTOさん…リベンジします?
N)いや、今は…アレじゃない?
火に油を注ぐというか…
直)もう誰も電話してこないでって
言ってたしね…
隆)てゆーか…最後ちょっと…泣いてた?
岩)…っ
隆)……
岩)…臣さん…ごめん。
健)俺も…ごめん。
岩)泣かせ…ちゃった…。
健)……
臣)……
みんな俺を心配してくれて…
良かれと思って動いてくれたのに
「ごめん」なんて…
臣)謝んないでよ……
みんなにこんな顔させてる自分が
情けない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
電話を切ってデスクに突っ伏してると
腕に冷たい感触…
ひやっ
♡)つめたっ…
T)ははっw
びっくりした?
♡)Tくん……
顔を上げるとTくんがまた隣に座った。
慌てて涙を拭いたけど
Tくんは気付かないフリをしてくれて…
T)ほら、野菜ジュース。
♡)…っ
T)昼飯食うぞ。
♡)…っ
みんなのランチの誘いを断って
一人でオフィスに残ってたのに…
T)とりあえず何も考えずに食え、ほら。
♡)……
Tくんが買ってきてくれた
おにぎりとスープは…
すごくあったかかった。
♡)美味しい…
T)ん、良かった。
♡)……
Tくんは一緒におにぎりを食べながら
午前中の営業先での出来事とか
他愛ないことを話してくれて…
お昼休みが終わると
そのまま自分のデスクに戻っていった。
ー続ー
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